電動機指導についての実践的研究(その2)
一単相誘導電動機の授業実践と考察一
i 技術科電気研究室 新 妻 陸 利
土浦第一中学校 五 頭 昇
附属中学校 桑 名 艇 光
§1 はじめに
(1),(3)中学校における電動機学習の現状と問題点については,前回までに発表してある。
このような現状をふまえ,問題点の解決をはかるために,古物の電気洗濯機用電動機(コソデソサ ラソモータ)を数多く集め,その回路学習と運転を中心とした授業を試みた。土浦市立第一中学校で の試行的研究をもとにして指導計画を立て12)今回は,茨城大学教育学部附属中学校において授業実践 を行った。
§2 授業の概要
1。対象 茨城大学教育学部附属中学校第2学年男子生徒(4学級) 87名 2.授業担当者 新妻陸利,桑名艇光(各2学級1クラスずつ担当)
a 授業時間 昭和51年3月上旬〜中旬(各6時間ずつ)
,2)4.学習指導案
5.準備 1クラス8班編成(各班5〜6名位)とし,各班ごとに電動機と回路計を1台ずつ用意した。
電動機には,自動反転式洗濯機に使用されている単相誘導電動機,いわゆるコンデソサラソ モータ(主コイルと補助コイルの区別がなく,3本のリード線が出ている洗濯槽用コソデソ サモータ)を用意した。
6 授業の記録
ア 第1時 目標 。 洗濯機に使われている電動機の導通試験から,内部の接続のようすを予想 でき,電動機と電源の配線を考え発表できる。
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 1 洗濯機を運転し
てみよう。
・ 空まわし 。 洗濯機の裏ぶたが外してあるところから内部を観 。ベルト車につい
・ 動力源 察し,モータ,ベルト車,ベルトがあり,パルセー ては2年「機械」
タが回転しているようすを調べる。 で学習してい鳥
隔
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 2 電動機の導通試 。 3本の端子間の抵抗値を測定し,2つの端子間は 。回路計で測定す
験をし内部の接続 同じ値を示し,他の端子間はおよそ2倍の値を示す る。
を考えてみよう。 ことに気づく。
。 第1図のよう 。 測定値から内部の接続のようすを予想する。 。各班の接続図と
に抵抗でかいた (例) も誤りはなかっ
班には白熱電燈 第1図 たが,コイルを
のフィラメント 倶 4 かいたグループ
や螢光燈安定器
C f cは少ない。
を思い出させか 』
,bきなおさせる。
a 電動機と電源の 。 OHPで発表する。
配線を考え始動さ ・ 電動機と電源スイッチの配線を考える。 。スイッチには5
せてみよう。 。 配線図のように配線し点検する。 Aヒューズを入
。 電動機のスイ 。 電動機を始動させ観察する。 れておき,プー
ッチを入れる場 (始動状態の例) リーは危験なの
合の注意をする。 ・うなるだけ ・ゆっくり回る ・回した方へ回る。 で外しておく。
。 各班の始動状態を発表する。
・ 始動の状態が悪い。
・ どうしてよく回らないのだろうという疑問をも つo
イ.第2時 目標 ・ 洗濯機の電動機を回転させるためには,コンデソサが使われていることを 知り,スイッチとコソデソサと電動機の接続法を考え実験することができる。
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 1.洗濯機の裏側を ・ 裏側をもう一度観察し,直方体や円柱状のコンデ
もう一度よく観察 ソサが接続されていることに気づく。
してみよう。
2 コンデンサの導 了
。 回路計を使って導通試験をする。
通試験をしてみよ ・ 針が右に振れて元に戻る。もう一度行ったら振 。 針が振れない
う。
れない。テスト棒を反対にしたら,また大きく振 ときはテスト棒
・ この結果から れた。 を反対にするよ
コンデンサの性 ・ 電気を蓄えたり,放出する働きがある。 う指示する。
質としてどんな
ことがいえるか。
、
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 a 電動機,コンデ 。 いろいろな配線を考え学習カードに記入する。 。 ◎よくまわる
ソサ,スイッチを 。 回転しそうな配線図を選び配線する。 ○まわる 接続し,電動機を 。 スイッチを入れ回転させ回転状況を観察する。 ×回らない
回転させてみよう。 (例) 第2図 ・ 各班とも実に
∫
熱心に話しあい
。 よく回る場合
→N x 実習をしている。
の配線を確認し
嫡配線図に印をつ 。 回転しないと
けておこう。
→司
図 ◎ き電動機が熱く
。 安全を確かめ なった班がある。
てスイッチを入 一
れるようにしよ
→
卜1 ◎
う。
。 よく回る場合の配線図をTPにかいておく.
。 コyデソサのつなぎ方を正しくすればよく回った り,逆回転することもできそうだ。
ウ.第3時 目標 。 正しく回転させるための配線と逆回転させるための配線ができ,そのとき の回路図がかける。
・ 切り替えスイッチを使った回路図がかけ,洗濯機の自動反転のしくみを知
る。
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 1.前時に学習した ・ よく回ったときの配線図を発表しあい,回路を確
よく回る場合の配 かめ合う。
線図を発表しあい, 第3図
そのときの回路図 c
がかけるようにし
(A) a
よう。 ¢ ⑭
o コソデソサの
b接続の仕方に着 。 一一部の班で切
目させて,逆回 C り替えスイッチ
転を考えさせる。
キなわち,2つ
(B)
Ca ⑧ の使用にょって
のコイルのうち 逆回転ができる
片方にコソデン
bことに気づく。
、
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 サが直列に接続 ・ 第3図のように,a−b問にコソデソサを入れ,
されることに着 そのいずれかと,共通端子cとを電源につなぐと
目させる。 よく回転する。また,a−bのどちらを竜源につ
なぐかによって回転方向が変る。
2 切り替えスイッ 。 生徒たちのほとんど全員が切り替えスイッチの回 チを使った回路を 二 Hを考えることができる。
考えてみよう。 第4図
@ C
ひ___←● a
c
⑧
b
・ 切り換えスイ 。 洗濯機の自動反転のしくみに気づく。
ッチを使って電
動機を回転させ ・ 古い洗濯機の
せみよう。 タイマとスイッ
。 洗濯機のタイ ・ 生徒たちは,タイマの音を覚えていて,うなずき チ,竜動機を外
マによるスイッ ながら説明を聞く。 しておいて用い
チの切り替えを
る。見せる。
エ.第4時 目標 ・ アラゴの円板の回転原理を知り,洗濯機用単相誘導電動機の内部構造を調 べ,対比することによって電動機が回る理由を考え発表できる。
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 1.電動磯はなぜ回
るのか,アラゴの 。 アルミニウム円板にふれないで回す方法を考える。 。 班の話しあい 円板の実験をして 。 円板の近くに永久磁石をもっていって動かしてみ は活発である。
みよう。 る。 。 アラゴの円板
・ さわらないで回った。磁石を動かした方に回っ は簡易電力量計 た。反対方向に回すと反対方向に回る。 の円板部分をそ
・ 磁石を止めたら円板も止る。 のまま用いる。
。 なぜ回るかに ・ なぜ回るのか説明で,フレミングの右手の法則,
ついてアラゴの 左手の法則についてはよくわからないという反応が 円板とTPにょ ある。
り説明する。
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 2電動機の構造を 。 回転子とアラゴの円板についてはすぐわかったが,
調べてみよう。 永久磁石に対応する固定子とコンデソサについては
。 アラゴの円板 わかりにくいようである。
と電動機の対比 ・ 回転子………・・…・……アラゴの円板 をさせる。 ・ 固定子とコソデソサ…………磁石を動かす
。 回転磁界につ いて簡単に説明 する。
尤第5時 目標 。 電動機の性能を調べる方法を知り,洗濯機用単相誘導電動機の負荷試験を 観察し測定することにより,電動機の性能と電動機使用上の注意を理解でき
る。
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 1.電動機の性能を 。 電動機の説明書で調べる。
知るにはどうした 。 電動機の銘板を調べる。 。 負荷試験にっ らよいか。 ・ 電動機の負荷試験をする。(教師が説明) いては教師の方 からヒソトを出す。
2 電動機の負荷試
験をしよう。 。型番 。極数p……4 。周波数f……50〔Hz〕
。 電動機につい 。プーリー半経r……α03〔m〕
て調べよう。 。次の測定と計算をする。
。 測定しよう。
荷重W 電圧E 荷重 電圧 電流 電力 回転数 すべり トルク 出力 力率 効率 電流1 電力P W E 1 Pi
NS
TPo
回転数N 〔kg〕 〔V〕 〔A〕 卿の 〔rpm〕 〔%〕 〔N・m〕 〔W〕
〔%〕 〔%〕。 計算しょう。 0 1.00
2.4111 1400
6.70 0 46.3 0 すべりs 1 100
2.4142 1360
9.3α29 41.3 59.2
2{瓦1トルクT
出力 Po 2 100
2.5180 1350 1α0 0.59 83.4 720 46.3
力率,効率 ※計算式は省略ω O トルク, 力率,
a 負荷状態にょっ
,
効率などについ て出力Poの値な 。ああまり負荷をかけすぎない。 ての理解があい
どが変ることから 。 電動機に合った使い方をする。 まいである。
電動機使用上の注 。 銘板に合った使い方をする。
意を考えよう。
。 銘板について 。 銘板をメモして,説明を聞く。(銘板例省略)
説明する。
一67一
ガ 第6時 口標 。 単相誘導電動機や単相整流子電動機の種類と特徴・用途についてまとめる ことができる。
。 三相誘導電動機やその他の電動機の特徴や用途についてまとめることがで き,電動機の移り変りについて知る。
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考 1.前時の負荷試験 。 負荷試験の結果のグラフを見て,電動機の性能に
のまとめをしよう。 ついて考える。
゜ グラフの見方 ノついて説明す
第5図 @ 臼 ●
る。
。 負荷を大きく
していくとどう N
なるか。 良
。 このグラフか
力率らどんなことが T、
わかるか。
ノノ効準,
・ OHPを使用
s して考えさせた
0 1 2 w〔樽, 驕B り説明したりす
。 負荷を大きくしていくと 。 全負荷の実験
・ 回転数が下がってくる。 もしておくと,
・ すべりが大きくなる。 もっと他の内容
・ 効率がよくなってくる。 のことも指導で
(やがてそれ以上は上がらなくなる) きたのではない
・ 出力も大きくなってくる。 か。例えば,こ 2 電動機の種類と 。 家庭用電動機,工場で使う動力の電動機,直流電 の電動機の負荷 特徴,用途にっい 動機などがある。 は何kg程度が
てまとめてみょう。 ・ 単相誘導電動機についてまとめる。 よいなど。
・分相始動 ・コソデソサ始動 ・反発始動
・くまどりコイル ・コンデソサ 。 家庭用100V
※特徴と用途は省略 電源で使える単
。 三相誘導電動機についてまとめる。 相誘導電動機や
・ 安価,じょうぶ,工作機械,ポソプなど 整流子電動機,
教師の指導 生 徒 の 活 動 ・ 反 応 備 考
。 整流子電動機……力が強い,回転数を変えられる。 工場などでよく
。 直流電動機についてまとめる。 使う三相誘導電
。 同期電動機についてまとめる。 動機を重点に取 り上げる。
a 電動機はどのよ 。 電動機の発展 。 あまり時間が
うに発展してきた ・直流電動機→・同期電動機→・三相誘導電導機→ なく触れた程度
のだろうカ㌔ 単相誘導電動機 に終る。
z 評価
(1)事前調査 昭和51年3月5日……質問紙法 ア・既習内容の定着度
回路計,電気回路と電熱器具,照明器具,屋内配線 イ.電動機についての知識,経験
(2)授業中の評価,昭和51年3月 ア,話し合いや発表,実験実習の観察 イ.班ごとにまとめたTP,レポート
ウ・学習カードに記録された事項 翫1〜翫6
(3)事後の評価 昭和51年6月8日
電動機の指導内容の理解度を中心にしてのペーパーテスト
(4)事後の調査 昭和51年7月5日 ア.電動機学習の内容に関すること イ・電動機学習と反省と感想
以上の評価を基にして考察してみる。
§3 授業の成果と問題点の考察
1.電動機の回路学習について
第1時から第3時までの電動機の回路学習の授業の成果を整理してみる。
(D 各班ごとに電動機が与えられ,その接続を考え,スイッチを操作して電動機を回転させること は,生徒達にとって大きな興味関心事であり,喜んで積極的に授業に参加していた。
(2)授業の記録にあるような電動機の回路図を,生徒達自身の学習活動にょり理解し,正確にかけ るようになることが指導のねらいである。3か月後に実施したテストの一部を示すと,
。 第3図の(A)が正確にかけた者 84,7%
。 第3図の(B)が正確にかけた者 80.6%
。 第4図が正確にかけた者 847%
、
となっており,電動機の回路学習がねらい通りの成果をあげているといえる。
(31これまでの学習において質問事項をあげてみると,
。 タイマーによる自動反転切替えのしくみは?
。 電動機はなぜ回るのか?
。 他の電気機器やおもちゃにも同じ電動機が使われているのか?
など,この3時間の学習活動が,この後に実施する学習内容への足がかりになっていることがうか がえる。
2 電動機の回転原理と構造について
第4時に行ったアラゴの円板の実験と電動機の内部構造についての成果を整理してみる。
(1)アラゴの円板の実験の結果について,3か月 第6図 後のテストによると,磁石をアの方向へ動かす ア
欠
・ o ■ ●
とアルミニウム円板はABどちらの方向へ回る ㌶ ,A かという問いに対し正答は8&9%,磁石を止め
. 「軸○るとどうなるかの問いに対しても正当率は944
繊石 、〜イ
%を示した。したがって,アラゴの円板の現象面
はよく理解したといえる. ルミ=ウム円萩
(2)アラゴの円板が回るのは,電磁誘導電象によると答えられた者は3α6%(不明確なものを含 めると598%)であった。
また,3か月半後に実施したアソケートによると「アラゴの円板がなぜ回りますか」の問いに対
し,
ア よくわかった 46%
イ 少しだけわかった 6a1%
ウ 全然わからない 27.6%
工 無記入 5.7%
の回答であった。
以上の(1),(2)の結果から,アラゴの円板の指導は,(1)の現象面と,回る理由として電磁誘導にょ るあたりまでは指導の成果が認められる。
(3}電動機の内部構造として回転子,固定子,コソデソサの定着度は,それぞれ,7α8%・7乞8
%,9&6%であった。また,アラゴの円板で磁石を動かしたのと同じ働きをするのはどれとどれ かの問いに対しては,正答率4a1%(不明確なものを含めると653%)になった。
これらの結果から,(3}に述べた程度の指導は可能であると考えられる。
a 電動機の負荷試験について
電動機の性能について実感として,しかも数量的に把握させるために負荷試験を実施してみた。そ の内容をテストした結果次のようになった。
(1)負荷を大きくしていくとそれぞれの値はどう変るかに対しての正答率は
。 使用電力は多くなる 9&6%
・ 回転数は少なくなる 90.3%
。 すべりは大きくなる 7α8%
また,負荷試験の結果から使用上の注意を書かせたところ正答率は69・4%,不明確な答を含め ると7α3%になった。
(2)負荷試験の結果の処理として, 「トルク」 「力率」 「効率」などの用語の意味の正答率は,
2a4%(不明確を含めると3&9%……以下同じ),4.2%(1L1%),4a1%(4&7%)
という低率であった。また事後の調査でも同様の結果であった。
したがって中学生に負荷試験を指導する場合には,思いきって内容の重点化をはかる必要があると 考える。
4.電動機の種類と特徴について
電動機の第6時の指導として,電動機の種類と特微・用途,電動機の移り変りについて指導したが 負荷試験のまとめも本時に行ったので,あわただしい指導しかできなかった。
電気洗濯機,電気掃除機,ジユーサなどに用いられている電動機の種類については50%以上 の正答率を示したが,その他の電動機については30〜40%であった。したがって,種類・特徴
・用途等の指導では,電動機の各種類を指導するのでなく,生徒たちの身近かな種類にしぼり,他 は,各人の興味や関心に応じた発展学習にまかせるべきと考える。
§4 お わ り に
生徒達が意欲をもって電動機学習に取り組ませるようにするために,このような実践を試み,前述 のような成果を得,問題点も把握できた。
電動機の回路学習では,生徒たちは主体的に学習に取り組みそのねらいを達成できたし,電動機の 回路図も理解してくれた。
問題は,第4時以降の指導をどうするかによって,中学校における電動機学習は,質量共に大きな 違いが出てくることである。その学習内容を決める大きなポイントは,電動機学習にどの位の時間配 当ができるのかということである。技術・家庭科の授業時数が削減されようとしている時に,電動機 学習にのみ配当時間を増やすことは無理であり,4〜6時間位の配当が限度であろう。したがって,
回路学習以後に学習する内容としてもあまり深入りはできないと思う。
このように配当時間数や今回の授業を通してどの程度まで指導できるかを考えた場合,電動機の回 転原理はアラゴの円板の実験を通して簡単に触れる程度,構造についても,電気洗濯機用電動機を分 解しておいて見せる程度,負荷試験についても,プーリーにベルトをかけ,ばねばかりで引張り,電 流や電力の増加,回転数の減少程度を見せ,すべり,トルク,出力,効率,力率などの計算をさせる ことは無理であろう。また,その他の電動機の種類や用途は,家庭用電気機器やおもちゃなどを動か
して話し合わせる程度になろう。
このように数時間扱いの電動機学習には,まだ数多くの問題点が残されているため,さらに実践的 研究を積み重ねる必要がある。
なおこの論文の一部は,第19回日本産業技術教育学会(広島大学)において発表したものである。
、