保険会社における取締役の適格性に 関する一考察
小野寺 千 世
■アブストラクト
保険業法8条の2第1項は,保険会社における取締役の適格性について規 定している。本稿では,ドイツ保険監督法 7a条1項を比較法として,本規 定にいう適格性の法的概念および判断基準について明らかにすべく,考察し た。
保険業法8条の2第1項において,保険会社の取締役には,リーガル・リ スク・マネージャーとしての適格性が求められていると考えられる。すなわ ち,取締役に求められる 経営管理能力 とは,保険業固有の特色,保険業 の社会的役割の重要性をふまえた,保険会社の経営管理に必要な高度の専門 的知識経験であり, 社会的信用 とは,人物的な信頼であるとともに,将 来において保険会社の業務を健全かつ適切に運営することへの信用であると 解される。そして,適格性の有無を判断するにあたっては, 保険会社向け の総合的な監督指針 が参照されているが,判断基準の一層の明確化のため には,立法的解決も一つの方法と考える。
■キーワード
適格性,経営管理能力,社会的信用
*平成22年10月24日の日本保険学会大会(早稲田大学)報告による。
/平成23年10月21日原稿受領。
1.はじめに
金融事業を営む会社における取締役に関しては,一般事業会社における規 制とは異なり,特別な規制がある(銀行7条の2,保険8条の2,会社331 条1項・402条4項参照)。保険業を営む会社について,保険業法8条の2は,
保険会社の常務に従事する取締役(委員会設置会社にあっては,執行役)
は,保険会社の経営管理を的確,公正かつ効率的に遂行することができる知 識及び経験を有し,かつ,十分な社会的信用を有する者でなければならない
(1項)。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者又は外国の法令上これ と同様に取り扱われている者は,保険会社の取締役,執行役又は監査役とな ることができない(2項)。 と規定している。平成13年改正保険業法(法律 117号)は,保険業を取り巻く経済社会情勢の変化に対応し,保険業に対す る信頼性を維持するため,保険契約者保護のための資金援助制度の整備を行 うとともに,保険会社の経営手段の多様化等を図るため,保険相互会社への 委員会等設置会社制度の導入,保険会社の業務範囲の見直し等の措置を講じ るとともに,取締役の適格性に関する規定である保険業法8条の2を置いた。
保険業法1条は,保険業の 公共性 を保険業法の存在理由として規定して いるところ,保険業の 公共性 にかんがみて,保険会社の取締役に十分な 資質を求める旨定められていると考えられる 。
本規定によって取締役に求められる 適格性 とは何か,取締役が 保険 会社の経営管理を的確,公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経 験 および 十分な社会的信用 を有するか否かについていかに判断するの かが問題となるところ,取締役の適格性の判断は基本的には各保険会社の自 主性に委ねられており ,その法的概念は法定されていない。
1) 安居孝啓 最新保険業法の解説(改訂版) (大成出版社,2010年)73頁参照。
2) 保険会社向けの総合的な監督指針 の一部改正に対する主なコメント及び それに対する金融庁の考え方 1.金融機関の取締役の資質規定について
(2006年3月)参照。http://
www.fsa.go.jp
/news
/newsj
/17/20060331‑8/01わが国の保険業法の母法であるドイツ保険監督法は,7a条1項で業務指 揮者の適格性を規定しており,ドイツにおいても適格性の法的概念の明確化 が重要である旨指摘されている 。そこで,本稿においては,ドイツ保険監
督法 7a条1項における,保険会社の取締役等に求められる適格性の法的概
念およびその判断基準に関する議論を参照し,わが国保険業法8条の2第1 項の適格性規定の対象である 取締役 の意義を確認したうえで,保険会社 の取締役等に求められる 適格性 の法的概念およびその判断基準を明らか にすべく,検討を行う。
2.ドイツ保険監督法における業務指揮者の適格性
⑴ 諸 論
わが国の保険業法はドイツ保険監督法を母法としているところ,ドイツ保 険監督法 7a条1項は,業務指揮者がみたさなければならない一定の要件を 定 義 し,次 の よ う に 定 め て い る。 保 険 企 業 の 業 務 指 揮 者 は,信 頼 性
(Zuverlassigkeit)および専門性(Fachliche Eignung)において適格でな ければならない。専門性は,保険業に関する十分な理論的かつ実務的な知識 ならびに指揮経験が必要である。専門性は,原則として,同種・同等の規模 の保険企業における3年間の指揮業務が証明される場合に認められる。業務 指揮者は,法律または定款に基づきもしくは欧州共同体加盟国または欧州経 済領域協定締約国における支店の外国会社代表者として,保険企業の業務執 行権限および代理権限を有する自然人である。 本規定によれば,業務指揮 者は,信頼性および専門性を有していなければならないが,ここにいう 信 頼性 および 専門性 について,その法的概念の明確化が重要であること
3)
Prolss
:Versicheungsaufsichitsgesetz,12. Aufl. Kommentar
7a Rdnr.
4 (2005).
なお,ドイツ保険監督法では,2009年の改正によって,金融市場お よび保険監督の強化を目的に,監査役の適格性についても規定されることとな ったが(7a条4項),本稿では,業務指揮者の適格性に関する規定を参照する
(Henning Berger, VersR2011
Heft
10S.422 f.参照)。
が指摘されている 。
ドイツ保険監督法 7a条1項は,欧州共同体の生損保指令(第1次生命保 険指令6条1項eおよび第1次損害保険指令8条1項1号e)を受けて1994 年に保険監督法に導入された規定である。業務指揮者のコントロールについ ては,すでに,従前の保険監督法8条1項1号において,業務指揮者に 実 直性(ehrbar) がないか,または 専門性(fachlich) が十分でない,あ るいは企業の経営にとって特に必要な資格や経験がないことは,認可拒否事 由にあたると定められていた。この規定の趣旨は,他人の財産に対する責任,
とくに他人に対するリスク負担,取引の長期性並びに任務(職務)の国民経 済的意義に求められていた 。
これに対して,現行法 7a条1項の規定の趣旨は,業務指揮者の人物とし ての信頼性はもちろん,コンプライアンス・プログラムとの関係で,業務指 揮者にいわゆるリーガル・リスク・マネージャーとしての適格性を求めるこ とにある 。コンプライアンス,つまり,コーポレート・ガバナンスの構成 要素である法令を遵守した企業活動の保証が,業務指揮者の中心的な職責で ある。具体的には,業務指揮者は,保険会社の従業員の指導,予防的コント ロールおよび違反への制裁等を行うことを要し ,業務指揮者がリーガル・
リスク・マネージャーとしての職責を果たすことにより,保険企業における 内部コントロールの方法が確保されることになる。このことは株式法91条2 項・34条2文・156条2項および81条1項5文に規定する,内部統制システ ムの構築を意味する。したがって,業務指揮者の適格性の審査においては,
特別な方法でリーガル・リスク・マネージャーとしての職務上の地位である ことが考慮されていると解されている 。
4)
Prolss, a.a.O.
(Fn.
3),
7a Rdnr.4 .
5)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.3 .
6)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.3 .
7)Dreher, VersR
2004,.
1,
6ff.
(2004).
8)
Dreher, a.a.O.
(Fn.7) ,
1,
4f..カルテル法の法令遵守に関して。
⑵ 適格性規定の対象者
ドイツ保険監督法における適格性規定 7a条1項の対象者は 保険会社の 業務指揮者 である。業務指揮者は,7a条1項4文によれば自然人であり , 法律あるいは定款に基づき,業務執行の主な権限を与えられ,企業の代表者 として任用されている者である 。それとともに,株式会社の取締役および その代理人(株式法78・94条),保険相互会社および年金基金保険団体(保 険監督法34条1項2文・113条)および公法上の保険企業の業務執行機関の 構成員(保険監督法3条)ならびに欧州共同体加盟国または欧州経済領域協 定締約国における支店の外国会社代表者として,保険企業の業務執行権限お よび代理権限を有する自然人が含まれる(保険監督法106条3項2文)。
業務指揮者が長として,副として,あるいは名誉職として活動しているか は問題ではない。保険監督法53条の意味での小規模保険相互会社における名 誉職の取締役も,原則として第 7a条1項の要件をみたさなければならない と解される 。当該人物が業務指揮権限ないし代表権限を有するかどうかが 重要である 。個々の取締役が審議(諮問)の機能のみを果たす場合には,
適格性規定の適用を否定すべきであるが,これに対して,個々の構成員が同 時に代表権限を有してはいないものの,業務執行権限を有している場合には 肯定されるべきであると解されている 。小規模会社において取締役と並ん 9) 法人は業務指揮者にはなりえず,第 7
a条は,業務指揮者は自然人でなけれ
ばならないことを強行法的に規定している。ドイツ以外の国で事業を行う際,その国の法が,法人が業務指揮者になることを認めている場合でさえ,代表権 者は自然人でなければならないとする。もっとも,保険指令を基礎としている 欧州共同体加盟国の保険者が,本拠地国の原則に従って,本拠地国の法に準拠 することには注意すべきであることが指摘されている (
Jurgen Koch
;in H.M uller/ Golz/ Washause-Richter
/Trommeshauser,
100Jahre materielle Versicherungsaufsicht, S.344 ff.
(2001)参照)。10)
Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.5 .
11) これと異なる規定を置いていた従前の保険監督庁の通達は修正されている
(Koch, a.a.O.(
Fn.9) , S.
341,
342.
)。12)
Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.343 .
13)Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.344 .
で業務執行者が任用される限り,その者は業務指揮者として権限を与えられ ていると考えられる 。
ドイツにおいて,保険会社は保険監督庁に対して,業務指揮者に関する報 告を行わなければならない(第一回目については保険監督法5条5項5号・
113条1項,事業継続中の変更については 13d条1,2号・113条1項)。第
7a条1項の要件がみたされない場合には,その者の任用許可が拒絶される
こととなる(保険監督法8条1項1号)。業務指揮者に関する十分な報告あ るいは資料が提出されない場合にも,許可を拒絶される(保険監督法8条1 項6文)。事業継続中に,許可の拒絶が第8条1項1号によって正当と認め られる事実が認識される場合には,監督庁は業務指揮者の解任を求め,その 職務執行を禁止し(保険監督法87条6項),最終的には事業の認可を取消す 事由ともなりうる(保険監督法87条1項1号)。主たる代表者が第 7a条1 項の要件を充たさない場合には,監督庁は事業の認可を拒絶することができ る(保険監督法 13b条2項1文ないし3文)。
結局,保険監督庁は不都合な場合には企業のみならず,個々の取締役会構 成員に対しても間接的に指示する権限を有することが注目される(保険監督 法81条2項1文)。監督庁は業務指揮者の人的に誤った行動について相当の 処分をする機会を有しているが,この場合,懲戒を与えることは監督手段と しても許されない 。
⑶ 適格性の基準
信頼性(Zuverlassigkeit)
業務指揮者は,信頼性を有していなければならない(7a条1項1文)。信 頼性を有しないということは,人物的に信頼できないということであり , 将来法令に従って業務を執行することが必ずしも保障されないということで
14)
Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.344 .
15)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.26 .
16)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.9 .
あると解されている 。信頼性の確認は,単なる推定では十分でなく,また,
過去の事実を収集するだけでも足りない。保険企業の執行に関連のある将来 的予想が重要であるとされている 。当該人物が,ある事実から,企業を適 法に,誠実に,かつ適切に指揮することができないという結論が導かれる場 合には,信頼性が否定されることになる 。もっとも,信頼性を積極的に証 明することが必要であるが,明確な証明は困難であることが指摘されてい る 。専門性とは異なり,信頼性の判断においては,例えば,企業の規模あ るいは引き受けられる任務によって差異をつけることは,原則として許され ないとされる 。
信頼性の判断のために,監査役は,一定の資料を提出し(保険監督法5条 5項5号・13d条1号),場合によっては,官庁あるいは第三者からの情報 を収集することもある 。業務指揮者の活動における信頼性の判断材料とさ れる事実を具体的に見てみると,まず,無犯罪証明書,刑法違反その他の規 則違反,秩序違反等に関する最新のデータ等があげられる。過去の行状が業 務指揮任務にとって重要であるということである。刑法283条ないし283d条 による違反行為(破産犯罪)の有罪宣告がなされた場合には,一定の期間内
(判決の法的効力日から5年間),取締役としての職務につくことを裁判上あ るいは監督官庁によって禁じられるため(株式法76条3項3号,保険監督法 34条2文),保険企業の業務指揮者としての活動も禁止されることになる 。 また,重大な規則違反行為とは,財産上の不法行為や ,業務執行に関連す
17)
Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.347 (2001) .
18)
Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.9 , Berg, in
;Handbuch fur die offent-liche Verwaltung, Band.
2, Neuwied/ Darmstadt, Rdnr.
246f.
(1984) 19)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.9 .
20)
Reinfrid Fischer, in:Boos
/Fischer
/Schulte-Mattler, Kreditwesengesetz
33Rdnr.
31 (2000).
21)
Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.30 .
22)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.9 .
23)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.10 .
24)
Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.347 , Kaulbach, ZVersWiss
1976, SS.697‑699 ,
る重大な規則違反行為である 。さらに,過去の営業停止,支払不能処分,
および民事訴訟法807条(金銭債権に基づく強制執行中の動産に対する強制 執行)による一定の法律上の効力のある業務上の処分も重要な判断要素であ る 。故意または過失による保険監督法違反行為があった場合も同様であ る 。これに対して,業務指揮者の行為について前科がないこと,その他の 誤った行為がないことは,業務指揮者の信頼性を推認させる事実とされる 。
身体あるいは精神的欠陥が生じている場合にも,信頼性は否定されるべき である 。例えば,賭博癖がある,あるいはアルコール中毒である場合には 信頼性は否定される 。年齢の上限は法定されておらず(ドイツ・コーポレ ート・ガバナンス・コード5.1.2条2項),その限りで,取締役会活動が可能 な身体的,精神的状態にあることが重要となる 。
また,信頼性に関しては,利益相反の可能性も問題とされる 。業務指揮 者のコントロールの範囲で利益相反が起こり得ることに注視すべきことが指 摘されている 。業務指揮者がその活動をするにあたり利益相反の発生を避
Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.32 .
25)
Kaulbach, a.a.O.
(Fn.24) , Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.34 .
26)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.10 .
27)
Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.347 .
28)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.10 .
29)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.11 .
30)Berg, a.a.O.
(Fn.18) Rdnr.244 ff..
31)
Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.12 .
32) ドイツにおいても,取締役は企業の利益に義務づけられており,企業の利益 を犠牲にして個人的利益を追求することは許されないとされている(ドイツ・
コーポレート・ガバナンス・コード4.3.3条)。企業の指揮や企業の監視に関す るガバナンス・コード委員会の行動規制を遵守する会社においては,取締役は 利益相反を監査役会の会長に遅滞なく知らせ,他の取締役に知らせなければな らない(ドイツ・コーポレート・ガバナンス・コード4.3.4条)。上場会社は,
この開示の遵守を事業年度毎に明らかにしなければならない(株式法161条)。
上場会社以外の会社においては,コードを遵守するかどうかは最終的には自由 である。
33)
Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.13 .
けられない限り,信頼性の要件はみたされないこととなる。例えば,保険会 社の取締役が,双方代理として,あるいは保険ブローカーとして活動する場 合には,必然的に利益相反の状況に陥ることから,信頼性は否定される 。 第三者が業務執行に影響を与えるおそれがある,あるいは,第三者による業 務執行への影響を排除する必要がある状況にある場合には,業務指揮者の信 頼性が否定される 。例えば,業務指揮者が,監査役と親戚あるいは姻戚で ある場合には,利益相反を生じる可能性があり,親戚・姻戚関係自体が信頼 性を否定することとなるとの見解がある。これに対して,業務執行者と監査 役との家族関係は,その任用に際して照合されるが,当然に利益相反の状況 を生じさせるものではないとの見解もある 。すなわち,このような関係を 利益相反と考える根拠は,株式法にも保険監督法にも見当たらず,他の監査 の対象となる会社についても,そのような制限はなく,保険会社についての み異なったことが適用されるべき明白な事由はないとする 。
専門性(Fachliche Eignung)
業務指揮者は信頼性だけでなく,専門性をも有していなければならない
(保険監督法 7a条1項1文)。監査役は適格性の証明のために,説得力のあ る経歴を提示しなければならず,必要とあれば補足の資料によって,専門性 を明確に示さなければならないとされている 。このことは,名誉職の業務 指揮者ならびに小規模な保険会社の業務指揮者にも例外なく当てはまる。
専門性に関しては,当該人物がその職責を果たせるかどうかだけが問題と されるわけではない。その者が必要な専門的能力を有しているかどうかが重 要である 。専門性は,保険業務における十分な理論的かつ実務的知識を要
34)
Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.14 .
35)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.11 .
36)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.16 .
37)
Hoppmann, Vorstandskontrolle im Versicherungsverein auf Gegen- setigkeit, S.312 ff.
(2000).
38)
Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.39 .
39)Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.17 .
件としている(保険監督法 7a条1項2文)。事業経営の性質や範囲,具体 的には業務の対象となる保険部門が考慮されるべきである 。もっとも一般 に,期待される知識および能力は,原則として部門を越えて考慮する必要は ない。また,小規模な会社について,規模の異なる営業組織を考慮する必要 はない 。
専門的知識と並んで,指揮経験も必要とされている(保険監督法 7a条1 項2文)。ある人が同種・同規模の保険企業における指揮活動について証明 する場合,通常十分な専門性が認められると規定されている(保険監督法
7a条1項3文)。どのような地位についていたかが決定的な基準ではなく,
これは単なる状況証拠にすぎないのであって,むしろ,いかなる指揮経験が あったかが重要であると指摘されている。すなわち,当該人物が,企業の規 模や業務の性質を考慮したうえで,いかに事業計画をし,運営し,かつコン トロールし得るか,また,共同経営者とともに業務を執行し,監督を行い,
代表し得るか等の能力が証明されなければならないとする 。3年の実務経 験は,今後の業務指揮活動の直接的要件とされるべきではないが ,同規 模・同種の保険会社において3年指揮した業績を証明することによって,原 則として,専門性の法的推定の要件をみたすこととなる(保険監督法 7a条 1項3文)。
業務指揮者が,業務指揮者間の職務分担により,全くあるいは一部しか保 険の知識を生かすことができないこともありうる。すなわち,権限が分掌さ れている企業において,すでに他の業務指揮者が保険の知識を有しており,
業務指揮者の候補者が特定の分野(例えば,投資,人事あるいは情報処理の 領域等)における知識を有し,その分野の業務指揮権限を引き受ける場合に は,保険の知識を必ずしも要しない。もっとも,各々の業務指揮者は,他の
40)
Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.39 .
41) た だ し,規 模 が 異 な る 場 合 に は 全 く 参 照 で き な い と い う わ け で も な い
(Koch, a.a.O.(
Fn.9) , S.
351)。42)
Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.351 , Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.23 .
43)Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.44 .
業務指揮者の共同監視の義務を果たすことができるだけの,専門分野以上の 広い能力を有していなければならないとされる 。3年の指揮活動は,結果 的に専門性が否定されるような瑕疵を明らかにすることを可能とするに過ぎ ない 。欧州共同体加盟国の保険企業に関する相当な知識を有していること は,ドイツ国内の保険企業における専門知識を有していることと同じである と解される 。欧州共同体加盟国内の保険監督法が欧州共同体指令と適合す るものとなっているからである。もっとも,専門知識は,監督法に関する知 識のみならず,法的知識や市場に関する知識を広く有していることも必要で ある。したがって,業務指揮者は欧州共同体加盟国における過去の活動に加 えて,ドイツの経済システムやその基礎となる法原則を理解していることを 証明しなければならない 。欧州共同体加盟国以外の国における企業活動は,
比較できる要素ではないことから,通常,いわゆる法的推定の要件をみたす ことはできないと解されている 。その他,業務指揮者は,欧州共同体加盟 国の国籍を有していれば足り,必ずしもドイツ国籍を有していることを要し ない 。また,ドイツを居住国とすることも強制されない。業務指揮者が,
その職務を果たすことができるかが重要であって,基本的にはドイツ語の熟 知も必要な適格性に属するが,場合によっては,国際的に使用されている言 語の熟知で足りると解されている 。
⑷ 小 括
ドイツ保険監督法 7a条1項は,業務指揮者をリーガル・リスク・マネージ
44)
Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.351 .
45)
Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.45 .
46)Zerwas
/Hanten, BB
1998, SS.2481 ,
2482.
47)Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.351 .
48)
Zerwas
/Hanten, a.a.O.
(Fn.46) , SS.2481 ,
2482.
49)Koch, a.a.O.
(Fn.9) , S.351 .
50)
Prolss, a.a.O.
(Fn.
3),
7a Rdnr.21 .
ャーと位置づけ ,業務指揮者に適格性を求めることによって,保険企業に おける内部コントロール方法が確保されることになると考えている 。した がって,業務指揮者の審査においては,リーガル・リスク・マネージャーと しての任務状況が特別に重視されることとなる 。すなわち,業務指揮者の 信頼性については,人物としての信頼,道徳的誠実性はもちろんのこと,と りわけ将来において保険企業を適法に,誠実に,かつ適切に指揮することが できることを推認させる事実が証明されなければならないとする 。業務指 揮者の専門性については,それを有していなければならないことは規定上明 らかであり,同種・同規模の保険企業における3年間の業務指揮経験等,説 得力のある経歴を提示して,専門性を明確に示さなければならないとされて いる 。
そして,保険監督庁は,業務指揮者が適格性を有していない場合には,任 用を許可しないことによって,企業に対してだけでなく,個々の取締役に対 する監督権限をも有しているといえる(保険監督法81条2項1文) 。
3.保険業法における取締役の適格性
⑴ 諸 論
保険株式会社の取締役には会社法上の取締役・執行役の法定欠格事由に関 する規定(会社331条1項・402条4項) が適用され(保険12条),また保
51)
Prolss, a.a.O.
(Fn.3) ,
7a Rdnr.3 .
52) このことは株式法91条2項ならびに保険監督法34条2文・156条2項および 81条1項5文に規定されている,内部統制システムの構築を意味する。
53)
Prolss, a.a.O.
(Fn.
3),
7a Rdnr.3 .
54)Prolss, a.a.O.
(Fn.
3),
7a Rdnr.9 .
55)Fischer, a.a.O.
(Fn.20) ,
33Rdnr.39 .
56) 保険監督庁は,取締役の誤った行動について相当の処分をする機会を有して いるが,この場合,懲戒を与えることは許される監督手段とはされていない
(Prolss, a.a.O.(
Fn.3) ,
7a Rdnr.26 .
)。57) 犯罪者については,会社法・一般法人法・金融商品取引法および破産法等の 倒産法制上の罪を犯した者のほうが,罰金刑でも欠格事由となる点で,それ以
険相互会社についても同様の規定がおかれている(保険53条の2第1項・53 条の26第4項)。
また,保険会社の取締役は,一般事業会社におけるとは異なり,法定欠格 事由の不存在だけでなく,保険業に関する知識・経験に裏付けられた経営管 理能力と十分な社会的信用を必要とされる(保険8条の2第1項)。さらに,
会社法では欠格事由でなくなった破産宣告を受け復権していない者は,保険 会社については取締役になることができないとされている(保険8条の2第 2項) 。取締役の適格性規定は保険業の 公共性 にかんがみた規制の1 つであると考えられる。その趣旨は,一般に,保険業の社会的役割の重要性 と,その経営管理に高度の専門性が必要とされること,および保険会社の信 用は,他の一般の会社と比べて,経営管理者個人の社会的信用に負うところ が大きいとの考慮にあるものと解される,と説明されている 。
取締役の適格性を欠くときには,免許の妨げとなり(保険5条1項2号参 照),また解任命令の事由ともなりうる(保険133条1号参照)。
⑵ 適格性規定の対象者
保険業法は,保険業の高度な公共性に鑑み,保険業を行う者の業務の健全 かつ適切な運営および保険募集の公正を確保し,保険契約者等の保護を図る
外の者より厳しい取り扱いを受ける。なお,会社法上の罪を犯しても,執行猶 予の判決を受け,執行猶予期間を満了したときは,刑の言い渡しが効力を失い,
その時に欠格者でなくなる(江頭憲治郎 株式会社法(第4版) (有斐閣,
2011年)362頁注⑵参照)。
58) 会社法においては,経営者が会社債務につき個人保証することが多い中小企 業において会社と同時に同人も破産手続き開始の決定を受けた場合に免責を得 るまでに時間がかかることが多いこと等の事情を考慮し,破産宣告を受け復権 していない者は欠格者とされていない(江頭・前掲注57)の文献参照)。これに 対して,保険会社を破綻させないことが保険業法の目標であることから,破産 宣告を受け復権していない者を欠格者としていると考えられる(出口正義 保 険業法 (損害保険事業総合研究所,2010年)25頁)。
59) 出口・前掲注58)24頁。
ために,保険会社の常務に従事する取締役には,その適格性について極めて 高いものが求められる。保険業法8条の2の対象となる者は,保険会社の常 務に従事する取締役(委員会設置会社にあっては,執行役)である。しかし ながら,保険業法において 常務に従事する 取締役の定義は規定されてい ない。
保険業法8条2項には,保険会社の常務に従事する取締役・執行役(以下 取締役等 という)は,内閣総理大臣の認可を受けた場合を除き,他の会 社の常務に従事すること禁止するとの規定がある 。ここにいう 常務に従 事する とは,事実上保険会社の日常業務に従事するという意味であり,社 長,専務取締役,常務取締役等,その名称の如何または代表権の有無を問わ ず,これに該当するかどうかは具体的事情により判断されるべきであると解 されている 。あるいは,通常業務について指揮・執行権を有する者が対象 から外れることはありえないのであって,代表権のある取締役はもちろん代 表権のない取締役でも社長,副社長,専務,常務として対外的に常務に従事 すると見られる者は,その対象となるとの見解もある 。
60) 兼業禁止に違反すると過料に処せられる(保険333条1項の2号)。兼業禁止 規定の趣旨については,一般に,保険会社の常務に従事する取締役が他の会社 の事業に関係することによって生ずるおそれのある保険契約の締結,保険会社 の資産運用等の面における弊害を防止し,保険業の健全性を維持するとともに,
保険会社の取締役を保険業に専念させ精力が分散されることのないように図っ たものである(石田満 保険業法2011 (文眞堂,2011年)24頁)。これに対し て,職務専念という点については,その観点からは,会社の支配人の場合(会 社12条1項)と異なり,個人的に事業を営むことが禁止されていないのである から,職務専念がこの規定の趣旨であると解するのは適当ではないとの批判が ある(関西保険業法研究会 保険業法逐条解説Ⅱ 文研論集126号(1999年)
146頁[小林量])。
61) 石田満 保険会社の取締役等の兼職制限 保険業法の研究Ⅱ 31頁(文眞 堂,1992年)。なお,証券会社における常務役員の兼職制限に関して,鈴木竹 雄=河本一郎 証券会社法(新版) (有斐閣,1984年)346頁参照。
62) 関西保険業法研究会 保険業法逐条解説Ⅱ 文研論集89巻(1989年)242頁
[森田章]。
これに対して,社外取締役である場合には,常務に従事するとはいえない として規制の対象外と解される 。解釈論としては,本規定にいう 保険会 社の常務に従事する取締役(委員会設置会社にあっては,執行役) に,委 員会設置会社の社外取締役を含めて解することは難しいと思われる。ただし,
監査役会設置会社の場合にはそのようにいえなくもないが,委員会設置会社 の社外取締役は,執行役の業務執行の評価および監視・監督の中核を担う役 割が期待されていることから(会社404条〜409条参照),当該会社または他 の会社の常務に従事していないとして規制の対象外とされるべきかどうかは 疑問であるとの指摘があり ,立法論としては,社外取締役も適格性規制の 対象とすることが考えられる。
以上のように,保険業法の適格性規定の対象は,委員会設置会社において は執行役とされていることから,その対象を業務執行権を有する者とするド イツ保険監督法と同様であると評価できる。他方で,適格性規定の対象は,
委員会設置会社以外の保険会社では常務に従事する取締役であって,必ずし も業務執行権,代表権を有するかを問わないと解されるから,ドイツ法に比 較して,対象者の範囲は広いといえよう。あるいは,委員会設置会社におい ては執行役を対象としていることが,執行役は業務執行に関する意思決定の 権限を広く委譲されることに着目しているとするならば,ドイツ法とは異な り,業務執行権限にではなく,業務執行の意思決定権限を有する者を対象と すると解することになるが,いずれの観点から対象者が規定されているかは 必ずしも明らかではない。
⑶ 取締役の適格性の基準
2008年10月,大和生命保険株式会社が,会社更生法と更生特例法の適用を 東京地裁に申請したが,この経営破たんの一因として,ハイリスク・ハイリ ターンの投資姿勢を貫いていたことが指摘され,それを裏付ける材料として,
63) 小林・前掲注60)148頁。
64) 出口・前掲注58)18頁。
経営トップの代表取締役社長が生命保険業界出身の人物ではなく,証券会社 の出身であったことがあげられている 。このことは,まさに保険会社にお ける取締役の適格性の問題であり,取締役の適格性の有無が保険会社の存続 に関わる重要な問題であることを表すものと思われる。わが国の保険業法8 条の2によって取締役に求められる 適格性 とは何か,取締役が 保険会 社の経営管理を的確,公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経 験 および 十分な社会的信用 を有するか否かについていかに判断するの かが問題となるところ,取締役の適格性の判断は基本的には各保険会社の自 主性に委ねられている 。適格性の具体的な判断基準は法定されておらず,
各保険会社における業務の特性等を含め,その時々の取締役個人の適格性を 総合的に判断することとなり,その判断は必ずしも容易ではないと思われる。
保険会社向けの総合的な監督指針Ⅱ―1―2⑵⑩ (以下, 監督指針 とい う)において,金融庁が保険会社における取締役の適格性を判断する際の基 準が示されているところ,保険会社としては,取締役の選任過程において,
事実上この監督指針に適格性の判断基準を求めることになると考えられる。
監督指針は,保険業法8条の2に規定する 経営管理を的確,公正かつ効 率的に遂行することができる知識及び経験 , 十分な社会的信用 に関して,
以下の要素をあげている。すなわち,経営管理能力とは,①保険業法等の関 連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し,実行す るに足る知識・経験,②保険会社の業務の健全かつ適切な運営に必要となる コンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験,③その他当該 保険会社の行うことができる業務を適切に遂行することができる知識・経験 である。本指針によって,一定の基準は示されているものの,抽象的であり,
必ずしも具体的ではない。①〜③は,保険会社における実務経験を提示する ことによって証明できるとも考えられる。しかしながら,ドイツ保険監督法
65) 小藤康夫 大和生命の経営破たんと生保の株式会社化 生命保険論集172号
(2010年)3頁。
66) 前掲注2)参照。
7a条1項3文においては3年という基準が規定されているのに対して,何 年の実務経験があることによって経営管理能力の要件をみたしうるのかは必 ずしも明らかではない。このことは,企業の規模や事業の種類等をいかに考 慮すべきかとも関連すると思われる(ドイツ保険監督法 7a条1項3文参 照)。また,特定の分野における知識を有している場合,保険業以外の企業 における実務経験,あるいは外国企業における実務経験についてはいかに解 することになるのか等,より具体的な場合が問題となろう。
つぎに,社会的信用に関しては, 反社会的行為に関与したことがないか。
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する 暴力団員(過去に暴力団員であった者を含む。)ではないか,又は暴力団と 密接な関係を有していないか。 金融商品取引法等我が国の金融関連法令又 はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し,又は刑法若しくは暴力行為 等処罰に関する法律の罪を犯し,罰金の刑(これに相当する外国の法令によ る刑を含む。)に処せられたことがないか。 禁錮以上の刑(これに相当す る外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。 過去におい て,所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守 に係る業務改善命令,業務停止命令,又は免許,登録若しくは認可の取消し 等の行政処分を受けており,当該処分の原因となる事実について,行為の当 事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で,故意又は重大な過失
(一定の結果の発生を認識し,かつ回避し得る状態にありながら特に甚だし い不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。 過去において,金融監 督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。 過去において,金融 機関等の破綻時に,役員として,その原因となったことがないか,があげら れている。
監督指針によれば,取締役の信用をきわめて厳格に判断することになる。
ただし,これらの要素は例示であって,他の要素によって信用をいかに判断 するかは必ずしも明らかではない。例えば,本指針において,信用性と利益 相反との関係についてはふれられていない。保険会社においては,利益相反
による弊害を的確に防止することの必要性が指摘されている 。保険会社に おいて管理すべき利益相反とは,顧客の利益を不当に害する取引等をいうと されているが,具体的にどこまでの範囲を利益相反ととらえ,取締役の信用 性を否定することになるかが問題となろう。列挙されている要素以外の事実 によって,社会的信用の要件をみたすか否かをどのように判断するかという 問題の解決のためには,社会的信用とはいかなる概念であるかを明らかにす ることが必要である。保険業の公共性は,保険会社の信用を取締役個人の社 会的信用に結びつけるものと思われる。ドイツ保険監督法 7a条1項にいう 信頼性の議論を参照すると,保険業法8条の2第1項によって求められる取 締役の社会的信用は,人物としての信用にとどまらず,将来において保険会 社を適法,誠実,適切に経営することへの信用であると解される。したがっ て,将来における保険会社経営への信用を担保することのできない事実が提 示された場合にあっては,当該取締役の社会的信用性が否定されることにな ろう。なお,社会的信用の判断においては,過去に活動をした企業の規模,
事業の性質や範囲を考慮する必要はないものと思われる。
4.むすびに代えて
保険業法8条の2第1項に規定する取締役の 適格性 は,基本的には,
ドイツ保険監督法 7a条1項にいう業務指揮者の 適格性 の意味と同様に 解することが妥当と思われる。すなわち,保険業法8条の2第1項において,
保険会社における取締役は,リーガル・リスク・マネージャーとしての役割 を求められている。そして,保険業法8条の2第1項が保険業の公共性にか んがみた規制の1つであると考えられることから,当該規定にいう 経営管 理能力 とは,保険業固有の特色,保険業の社会的役割の重要性をふまえた,
保険会社の経営管理に必要な高度の専門的知識経験であり, 社会的信用 とは,人物的な信頼であるとともに,将来において保険会社の業務を健全か
67) 金融審議会金融分科会第二部会報告〜銀行・保険会社グループの業務範囲 規制等のあり方について〜 8頁(2007年12月)参照。
つ適切に運営することへの信用であると解される 。経営管理能力・社会的 信用の判断に際しては,過去の実務経験・行為等が,その有無を証明する材 料として使われることになる。
保険業法8条の2第1項に基づく保険会社における取締役の適格性の判断 にあたっては,監督指針が参考になるものと考えられるが,監督指針は,あ くまでも金融庁の監督事務の基本的考え方,監督上の評価項目,事務処理上 の留意点である。その判断基準は,保険業の公共性にかんがみると,保険契 約者等にとってもわかりやすいものであることが望ましい。判断基準の一層 の明確化のためには,立法的解決も一つの方法と考える。
なお,適格性の規制対象については,さらに検討することが必要であり,
今後の課題とする。
(筆者は東海大学法学部教授)
68)