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フランス保険企業の事業展開とリスク マネジメント

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フランス保険企業の事業展開とリスク マネジメント

亀 井 克 之

■アブストラクト

フランス保険市場では,1960年代に直販相互保険会社(MSI)がリスク 細分型自動車保険を開発して以来,さまざまなマーケティング上のイノベー ションが導入されてきた。既存サービスとの差異化に基づくイノベーション はやがて業界標準となり,結果として市場における顧客の利便性を大きく向 上してきた。これを マーケティング・イノベーションの市場貢献モデル と呼ぶ。2006年から2007年のフランス保険企業の動きからも引き続き同様の 傾向が確認された。一方,フランス版の内部統制規範に準拠して,フランス 保険企業はリスクマネジメント体制を構築している。英米独とは異なる独自 性を発揮するフランス保険企業の動きは,我が国に示唆を与えうる。

■キーワード

マーケティング戦略,内部統制,フランス保険企業

序 言

本論では,英米独企業とは異なる独自性を発揮しているフランス保険企業 について,2006年から2007年における事業展開とリスクマネジメントの動き を考察する。まず第一に事業展開については,個人保険市場におけるマーケ ティング戦略上のイノベーションに焦点をあて, マーケティング・イノベー

*平成19年2月24日の日本保険学会関西部会報告による。

/平成20年2月24日原稿受領。

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ションの市場貢献モデル に基づいて分析する。第二にリスクマネジメント については,フランス金融市場監督機構(AMF)が2007年1月に発表した 内部統制規範に基づいて,どのような体制を構築しているかに注目する。

1.フランス保険企業の事業展開 ⎜マーケティング戦略⎜

1.1.フランス保険市場におけるマーケティング戦略展開の背景

1990年代以降,世界の金融業界において,グローバル化と他の金融分野と の統合化を二大潮流とする大型再編成が繰り広げられてきた。国境を越えた 再編成,銀行・証券・保険の枠組みを越えた再編成が日常的となり,金融コ ングロマリットと呼びうる企業群が形成された。欧州では,早くから金融再 編や金融サービス融合化が進行してきた。この中で,フランス個人市場で顕 著な動きが,バンカシュランスと呼ばれる銀行による保険業への多角化と,

アシュルフィナンスさらにはアシュルバンクと呼ばれる保険会社から銀行業 への多角化であった。また,販売面での競争激化を背景に,新たな差異化の 要素として,コミュニケーション戦略とブランド戦略の強化が顕著である。

1.2.フランス個人保険市場におけるマーケティング・イノベーション フランス個人保険市場においては,1960年に直販相互保険会社(MSI)

業態の草分けであるMACIFがリスク細分化型商品を開発して市場に参入 して以来,さまざまなイノベーションが導入されてきた。具体例として,

MACIFをはじめとするMSIによる自動車保険改革,②1980年代後半に 銀行100%出資生保子会社によるバンカシュランス(銀行窓口販売)が大成 長して生保シェア60%以上獲得,③1990年代に銀行が損害保険子会社を設立 して損保市場にも進出し,約10%のシェアを得て市場定着,④2000年以降,

保険会社が銀行子会社を設立してアシュルバンク(総合的銀行サービス提 供)を展開し保険販売チャネルを活性化するなどの動きが見られた。この結 果,50年来の激しい競争と販売チャネルの多様化を経て,市場全体として顧 客に対する利便性を大きく向上してきた。

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1.3.分析の枠組み:マーケティング・イノベーションの市場貢献モデル フランス保険企業のマーケティング戦略分析の枠組みとして,以下の通り マーケティング・イノベーションの市場貢献モデル を設定する。

Innovation and Introduction

イノベーション(それまで存在しなかった顧客サービスの導入):

マーケティング戦略上のイノベーションを市場に導入する企業は,既存 の商品・サービスに対する差異化を実現して市場に定着する。

Standard, Service and Satisfaction イノベーションの業界標準化

(市場全体として顧客に対する利便性向上・顧客満足):

革新的な商品・サービスが市場に導入されると,競合企業はそれを模倣 する。模倣・追随の結果,導入されたイノベーションは,市場における 標準的なサービスとなり,市場全体として顧客に対する利便性が向上し,

顧客満足につながる。

Communication and Credibility

コミュニケーション・ブランド戦略と信頼感向上

イノベーションの市場導入を支えるのがコミュニケーション戦略および ブランド戦略である。コミュニケーションとブランドは,それを刷新す ることによって,イノベーションの主体となり得る。これらは企業内外 のステークフォルダー間における信頼感の向上に寄与する。

1.4.フランス保険市場の概況①:フランス保険企業グループ

フランス保険市場には,表1と表2に見るように,非常に幅広い形態の企 業が存在している。伝統的な総合保険会社,金融機関の保険子会社,外国資 本 の 保 険 会 社 に 加 え て,個 人 向 け 自 動 車 保 険 市 場 に お い て は,MSI (Mutuelle Sans Intermediaire)(仲介者を利用しない直販相互保険会社)

が存在する。

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2006‑2007年の動きとして,①Coveaグループの形成,②バンク・ポスタ ルの営業開始,③MACIF,MAIF,貯蓄金庫の戦略的提携がある。

2002年6月26日のデクレ(政令)により相互保険会社間の経営統合を円滑 に行うために,SGAM(Societe de Groupe dʼAssurance Mutuelle)(相互 保険グループ会社)という組織形態が法制化された。業界初のSGAMとし て設立されたCoveaを中核組織として,MAAF,MMA,GMF,Azurの 4社が経営統合した。このうちAzur事業・ブランドはMMAに吸収された。

ラ・ポスト(郵便局)は,従来から展開していた金融サービス業務を発展 させて,バンク・ポスタル(Banque Postale)銀行を設立した。バンク・ポ スタル銀行としてのサービス提供を2006年1月1日からラ・ポスト各支局に おいて開始した。従来同様に,CNP保険の生命保険商品を窓口販売してい る。

MSI最大手のMACIF,教員向けMSIMAIF,貯蓄金庫(ケス・デパ ルニュ)という2保険会社と1金融機関が戦略的提携を結んだ。MSI2社 による銀行業参入,貯蓄金庫による損害保険商品窓口販売が念頭にある。

表1:2006年 フランス保険企業グループ(保険料収入:単位10億ユーロ)

企業名

=企業の分類(販売形態) 連結 仏国内

生保 損保 1 AXA=総合保険会社(代理店) 78.8 14.8 6.4 2 CNP=公的金融機関(郵便局,貯蓄金庫等)をチャネルとす

る会社(窓口販売) 32.0 26.0 1.9

3 Predica/Pacifica=クレディ・アグリコル銀行の生保子会社と

損保子会社(窓口販売) 23.9 22.3 1.6

4 AGF=総合保険会社,独アリアンツ傘下(代理店) 18.6 6.9 3.7 5 BNP Paribas France=BNPパリバ銀行生保事業(窓販) 15.6 10.9 0.4 6 Groupama=農業系相互保険会社を母体とする総合保険会社

(営業所での直販) 14.2 6.2 5.3

7 Generali France=伊ゼネラリの仏子会社(代理店) 14.2 10.4 3.8 8 Sogecap・ソシエテ・ジェネラル銀行生保子会社(窓販) 9.7 9.3 0.0

9 ACM=クレディ・ミュチュエル銀行保険子会社(窓販) 8.1 6.3 1.6

10 Covea(GMF‑MAAF‑MMA)=相互会社合併によるグループ

(GM FとM AAFは営業所直販,M M Aは代理店) 5.3 4.3 1.0

(FFSA,LʼAssurance Française 2006に基づく。企業の分類は筆者が作成。)

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1.5.マーケット概況②:販売チャネルの多様性(定着した棲み分け)

フランス保険市場の一大特徴は,販売チャネルの多様性にある。これは,

特に損害保険市場において顕著である。さまざまなイノベーションが導入さ れてきた結果,競争激化の末に,チャネルの棲み分けが定着している。

表2:2006年 フランス自動車保険市場ランキング(法人契約と二輪を除 く)

企業名=企業の分類(販売形態) 保険料

収入 保有契約数

1 AXA=総合保険会社(代理店) 2000 4,300,000

2 MACIF=MSI(営業所で直販) 1656 4,794,438

3

Groupama‑GAN=農業系相互保険会社を母体とする総合保 険 会 社Groupama(営 業 所 直 販)と 傘 下 の 総 合 保 険 会 社 GAN(代理店)

1350 3,774,235

4 MAAF=MSI(営業所で直販) 1238 2,811,487 5 MAIF=教員を対象とするMSI(営業所で直販) 1137 3,000,000 6 AGF=総合保険会社(代理店),独アリアンツ傘下 2,529,121 7 GMF=公務員を対象とするMSI(営業所で直販) 841 2,520,000 8 Matmut=MSI(営業所で直販) 768 2,238,000

9 MMA=総合保険会社(代理店) 643 1,712,500

10 ACM=クレディ・ミュチュエル銀行損保子会社(窓販) 533 1,550,100 11 Generali=伊ゼネラリの仏子会社(代理店) 455 1,091,000 12 Pacifica=クレディ・アグリコル銀行損保子会社(窓販) 378 1,253,797

表3:2003‑2006年フランス保険市場 各販売チャネルのシェア

(データはArgus de lʼAssurance誌Le Top20des assureurs auto en2006に 基づく。 企業の分類 については筆者作成。)(保険料収入の単位は百万C=)

生保 損保

2003 2004 2005 2006 2003 2004 2005 2006 銀行窓口 62% 62% 62% 64% 8% 9% 9% 9% 代理店 8% 8% 7% 7% 35% 35% 35% 35% ブローカー 9% 10% 13% 12% 19% 18% 18% 18% 営業職員 16% 15% 16% 15% 2% 2% 2% 2% MSI 33% 33% 33% 33% ダイレクト 5% 5% 2% 2% 3% 3% 3% 3%

(FFSA,Assurance Française各年版に基づき筆者作成)

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欧州全体を見ても,保険マーケティング上の一大トレンドは マルチチャ ネル である。これは,チャネルAからチャネルBCへの移行という意 味合いではなく,異なる顧客の購買パターンを充足すべくチャネルA,B,

Cをそれぞれ充実・併存させ,全体として収益の向上ならびに顧客満足の向 上を図るものである。フランスでは自動車保険のネット販売専業会社の運営 が行き詰りを見せたが,インターネットは,マルチチャネル化の流れの中で,

既存の販売チャネルを支援・補完するものという位置付けがなされている。

1.6.マーケティング・イノベーションの市場貢献事例 1.6.1.事例①:MSIによる自動車保険改革(1960年代〜)

MSI(Mutuelle Sans Intermediaire) とは,個人向け損害保険市場 に力点を置く直販相互保険会社であり,営業所における直販形態をとる。

1960年設立された中小企業向けの自動車相互保険会社MACIFが,⒜

販売面において,リスク細分化料率に基づいて,優良ドライバーに対する低 料率適用を軸とする自動車保険の 価格破壊 的なイノベーション,⒝事故 処理面において,衝突事故当事者間が交わす 事故状況確認書 (Constat amiable)の導入と 組合員直接補償 (  IDS:Indemnisation Directe des Societaires)による 保険金支払いの迅速化 に関するイノベーションを 

導入。

教員向けのMSIであるMAIFなどがMACIFを模倣した。一般的な総 合保険会社も追随した。激しい競争の結果,料率と事故処理の両面で,フラ ンスの自動車保険は顧客へのサービスを大きく向上した。保険金支払いにつ いては, 事故状況確 認 書 と 契 約 者 直 接 補 償 (IDA:Indemnisation Directe des Assures)は業界標準のサービスとなった。 

相互保険会社として連帯感に訴えるコミュニケーションを展開した。

1.6.2.事例②:生命保険市場におけるバンカシュランスの貢献(80年代〜) まず,欧州におけるバンカシュランスは,国によってスタンスが異なる。

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銀行が保険会社との提携あるいは買収を行うドイツ型,金融コングロマリッ トの頂点に位置する持ち株会社の傘下に銀行と保険会社が存在するベネルク ス型があるが, 銀行が保険市場に参入する というニュアンスが最もあて はまるのは100%出資保険子会社を設立する以下のフランス型の展開である。

銀行の100%出資生命保険子会社が,⒜生命保険の優遇税制を活用した 消費者にわかりやすい簡潔な内容の貯蓄型商品を窓口販売,⒝支払う保険料 に占める事業費の割合などを明示するというイノベーションを導入した。

商品内容簡潔化は業界常識,事業費明示は銀行の生保窓販の常識化した。

簡潔な商品内容と貯蓄型商品の利回りの明示,事業費の明示に焦点をあ て,キャンペーンを伴ったコミュニケーション戦略が展開された。

1.6.3.事例③:損害保険市場におけるバンカシュランスの貢献①:

事故処理コールセンター・新品交換補償・ローンとのセット販売(1996年) バンカシュランスに関連して, フランスでは生命保険市場のシェア60%

を銀行(の生命保険子会社)が占めている という言説がよく引き合いに出 される。しかし,シェア拡大に寄与したのは,銀行従来の商品に保険の税制 をあてはめただけの長期貯蓄型の生存保険商品であった。フランスの事例で は,損害保険市場シェアの9%を獲得するに至った銀行の損害保険子会社に よる窓口販売の方にこそ,市場への貢献の観点から注目すべきである。

さて,フランスの銀行の中で,最も早く損害保険事業に参入したのは,

100%出資の損害保険子会社ACM(Assurances Credit Mutuel)を設立し たクレディ・ミュチュエル銀行であった。しかし,1996年にクレディ・アグ リコル銀行が,100%出資の損害保険子会社パシフィカ(Pacifica)を設立 して,以下のイノベーションを市場に導入して,はじめて 銀行窓口におけ る損害保険商品の窓口販売 が,社会的に認知されるようになった。

パシフィカが損害保険市場に以下のイノベーションを導入した。

⒜ 電話プラットフォーム :クレーム・サービスに特化した事故処理受 付センター設立。事故処理受付に特化したコールセンターの設立はフランス

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の損害保険業界で初の試み。⒝ 新品による交換補償 :住宅総合保険で,

家具や電化製品購入からの経過年数に関わらず,使用不能事故に際して新品 と交換するというサービス。時価による補償では,買換えに必要な補償額が 得られず,契約者が不満を抱くことに対応。⒞ ローンとのセット販売 : 自動車保険と自動車ローン,住宅総合保険と住宅ローンのセット販売。

伝統的な保険会社も,⒜⒝⒞を模倣し,これらは業界標準となった。

多くの自動車保険契約が満期を迎える12月末日を控えた秋に,自動車保 険の販売キャンペーンが展開される。ローンとのセット販売が強調された。

1.6.4.事例④:損害保険市場におけるバンカシュランスの貢献②:

生活上の事故補償 (GAV)保険の開発(2000年)

2005年 以 降,銀 行 は 損 害 保 険 市 場 に お い て, 多 種 類 の 商 品 獲 得 (multidetention)をマーケティング戦略上の目標に掲げるようになった。

これは複数の契約を保有する顧客は他社の契約に乗り換えにくいという現状 に基づいている。銀行支店内での保険アドバイザーによる顧客へのアプロー チとして,自動車保険と住宅総合保険の2商品に力点が置かれてきた。これ らに加えて 傷害保険 , 法的保護 等,他の商品が積極的に勧誘され始め たのである。

フランスでは,個人向けの損害保険商品は,自動車保険のみならず,住宅 総合保険などの商品も1年毎に契約を更新される。料率見直しは毎年実施さ れる。契約が満了する2ヶ月前までに,書留郵便で解約を通知しない限り,

契約は 暗黙の了解に基づいて自動的に更新 される。住宅総合保険も毎年 の契約更新の対象で,料率面と商品内容面の双方で競争の対象となっている。

2000年にFFSA(フランス保険協会)が 生活上の事故に対する補償 (GAV:Garantie des Accidents de la Vie)の商品開発を業界に提案し た。従来の商品ではカバーされていなかった,家庭内事故,自然災害,医療 事故による重大な身体障害に対して 継続的な補償 をする傷害保険商品で ある。最初に具体的な商品を開発したのはプレディカであった。クレディ・

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アグリコル銀行におけるGAVの窓口販売は成功を収め,他の銀行もこれに 追随するようになった。その結果,GAV市場の7割を銀行の損害保険子会 社による窓口販売が占めるに至った。

一方,伝統的な保険会社は,①既存の疾病傷害保険に,GAV同様の保障 を導入済みであること,②保険料の平均額は146ユーロであり,手数料収入 の面から,代理店にとって魅力的な商品ではないことなどから,同商品開発 に注力せず,銀行による市場シェア獲得を許してきた。しかし,2005年以降,

伝統的保険会社はGAV市場で巻き返しに注力し,同商品は市場に定着した。

自動車保険と住宅保険は,必要性から消費者が自ら 買う 商品である。

それに対して,GAVの場合,販売チャネルが表6に示すような特長と有用 性を説明して,顧客に積極的に働きかけて 売る 必要のある商品である。

パシフィカが協会提案に基づき 生活事故補償 を商品化し窓販開始。

表4:2004年 生活上事故補償 (GAV)保険販売シェア:銀行の独占的状況 パシフィカ(クレディ・アグリコル銀行窓販) 36.0%

エキュルイユ損保(貯蓄金庫の窓販) 14.7% ソジェシュール(ソシエテ・ジェネラル銀窓販) 9.6%

クレディ・リヨネ銀行窓販 9.6%

郵便局における窓販 4.0%

ナテクシス保険(バンク・ポピュレール銀窓販) 3.7%(銀行合計 77.6%) 保険会社の営業職員,代理店,ブローカー (保険会社合計22.4%) (出典:LʼArgus de lʼAssurance,6933, 10juin2005)

表5:2006年 GAV市場:市場拡大と GAV市場定着:伝統的保険会社の巻 き返し

保険料 収入

前年比

保有契 約数 パシフィカ(クレディ・アグリコル銀行) 118.1 13.0% 802,000 エキュルイユ損保(貯蓄金庫) 45.7 27.4% 339,096 グルパマ(営業所における直販) 36.1 18.4% 241,000 ソジェシュール(ソシエテ・ジェネラル銀行) 31.5 20.0% 248,000 GM F(営業所における直販) 19.5 32.8% 121,000

AXA(代理店による販売) 7.0 16.0% 60,000

(出典:LʼArgus de lʼAssurance,7028, 1juin2007)(収入の単位は百万C=)

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他の銀行,伝統的保険会社も追随し,同商品は市場に定着した。

私生活上のリスクに対するGAV商品の有用性を市場が理解した。

1.6.5.事例⑤:保険会社によるアシュルバンクの市場貢献①:

銀行手数料の開示,マルチリレーショナル(2000年)

かつてフランスでは,保険会社による銀行業への多角化は アシュルフィ ナンス と呼ばれ,保険代理店や営業所において提携クレジット会社のロー ンや,投資商品を販売することに限定されていた。2000年10月に独アリアン ツ傘下AGFが,ダイレクト銀行子会社バンクAGFを開業した。以下に示 す通り,普通預金口座開設を中心とする総合的金融サービスの提供を目的と した新たな銀行業参入戦略は アシュルバンク と呼ばれるようになった。

バンクAGFは既存銀行のサービスとの徹底的な差異化を実現した。

⒜ パッケージ提供 :給与振込み・自動引き落とし・カードならびに小切 手決済などが行えるが無利息の 預金口座 と有利息の 貯蓄口座 との組 み合わせを マルチサービス口座 としてパッケージ提供した。

⒝ 各種サービスの料金体系明示 :口座開設者に (サービス)料金一 覧 配布し,どのサービスにはいくら料金がかかるのか徹底的に明示した。

表6:GAV 生活上の事故補償 商品の特徴

GAVの保障するリスク:私生活上の事故,医療事故,テロ,自然災害,テクノ ロジー関連の事故をカバーする。GAVは被保険者の高度障害,心理的・精神的 な被害,死亡に対して補償を行う。保険金は,被保険者に対して直接支払われ,

有責第三者に対する求償は保険会社が行う。GAVは既存の保険商品の保障と重 複していない。(私生活上のリスクは既存の保険商品ですべて保障されているわ けではない。)個人疾病傷害保険,団体保険は,定額かつ,一時的な保障である。

一方,GAVは,重大な事故の際に,家族の生活維持を長期的に保障する。社会 保障の補足的保障契約は,治療費のうち社会保障でまかなわれない部分や,一 時的な所得の喪失に対して保障を行うが,継続的な影響については保障しない。

住宅総合保険は,住宅損害と住宅関連の第三者への損害を保障するが、住宅内 の傷害事故は保障していない。学校保険は,物的損害と社会保障によってまか なわれない部分の治療費を保障する。学校での生活や通学途上の重大事故の持 続的な影響については補償していない。

(出典:LʼArgus de lʼAssurance,6933, 10juin2005)

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⒞ マルチリレーショナル (ダイレクト銀行でありながら,既存の伝統 的な保険販売チャネル活用可能):通常のダイレクト銀行の場合,口座開設

(希望)者は電話やインターネットで問い合わせたり,取引を完結する必要 がある。バンクAGFの場合,代理店等の既存の保険販売チャネルに,口座 開設や取引について直接問い合わせることが可能である。

フランスで普通預金口座の有利息化の流れが打ち出される契機となった ほか,不明瞭だったサービス手数料体系については,伝統的な各銀行がバン AGFの試みを模倣し,手数料体系の情報開示が業界標準となった。

バンクAGFの開業は入念なメディアプランニングに基づく一大プロモ ーションを伴った。結果として,①手数料体系が不明瞭であることなど既存 の銀行におけるサービスが不十分な点が問題提起され,②保険会社による普 通預金口座開設という新しいサービスの社会的認知,③保険販売チャネルの 活性化,④保険会社のブランドに対する信頼感向上につながった。

1.6.6.事例⑥:保険会社によるアシュルバンクの市場貢献②:

普通預金口座の有利息化(2006年)

フランスでは,1960年代に小切手を普及させるために①預金者の小切手に よる支払いに対して手数料をとらない,その代わりに②小切手支払いのベー スとなる 預金口座 には利息をつけないという 2無 政策が定着した。

環境の変化に伴い,銀行は,①小切手支払いに対して手数料をとり,② 預 金口座 には利息を付けるという 2無 政策と反対の状況を望み始めた。

バンクAGFのパッケージ商品 マルチサービス口座 は,無利息の 預 金口座 と有利息の 貯蓄口座 をセットで提供するという内容であった。

これは 預金口座 に利息を付けることがタブー視されていた2000年当時,

預金口座 を 貯蓄口座 とセットで開設すれば,結果的に預金口座開設 者にとって,有利息と同様の状況になるという点をアピールしたものであっ た。それに対して2006年1月からAXAがアクサ・バンクを通じて提供開始 した総合的銀行業務サービスでは 預金口座 そのものに利息が付けられた。

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大手行以外の一部銀行が実施し始めていた 預金口座 有利息化をアシュル バンクが後押しする形となって,以下に要約される市場貢献を果たした。

アクサ・バンクが有利息の普通預金口座 オリゴ の提供を開始した。

アシュルバンク系のグルパマ・バンクとバンクAGFが追随し,普通預 金口座の有利息化を定着させようとする銀行業界一部の動きを後押しした。

1ユーロの預金から利息がつくことや預金口座開設者に対する損害保険 料の割引・各種ローンの利息の割引などの優遇措置をプロモーションによっ てアピールした結果,アシュルバンクの有用性に対する認知度が向上した。

1.6.7.事例⑦:保険会社によるコミュニケーション戦略の市場貢献

フランス個人保険市場では,さまざまなイノベーションが導入された結果,

競争が激化し,それに伴い商品とサービスは著しく洗練化された。料率やサ 表7:2006年末段階のアシュルバンク3行の動向

バンク AGF(Banque AGF) 2000年10月創業。AGF100%出資。

顧客数215,000人。黒字化2003年に達成。販売チャネル: アシュルフィナンス と呼ばれる営業職員2500人,代理店2500,ブローカー1000人。代理店3分の1 で銀行業務。戦略:口座開設促進の段階を終え既存顧客への各種ローンと貯蓄 口座提供に注力。

グルパマ・バンク(Groupama Banque) 2002年11月創業,当初ソシエテ・ジェ ネラル銀行と共同出資。顧客数362,500人。顧客数50,000人で黒字化の見込み。

販売チャネル:営業職員5600人,子会社GAN営業職員750人・代理店900。商品 アステリア(Asteria) の内容:①預金口座,②預金額1ユーロから1.2%の 利息。③口座開設者には生涯にわたりグルパマ商品保険料5%割引特典。戦 略:新規口座開設者数獲得,自動車ローン・独自の住宅ローン提供。

アクサ・バンク(AXA Banque) BNPパリバ銀行が1995年に開業したダイレク ト銀行子会社バンク・ディレクトを2002年9月にAXAが買収。2003年5月 ア クサ・バンク ブランドに改組し,個人向け総合的銀行サービス提供を代理店で 開始。顧客数555,000人。黒字化2006年に達成。販売チャネル:営業職員4300人,

代理店3800人,生保専任代理店500人。

商品 オリゴ(Oligo) の内容:①預金口座,②預金額1ユーロから1%の利 息が付く。利息は1日単位で計算され,毎月支払われる。③銀行カード使用の 拠り所となる,④個人向けの保険契約(自動車保険,住宅保険,傷害保険,法 的保護保険)をこの口座から自動引き落としにした場合,保険料を3%割り引 く。⑤サービスにより月額5.6から11.6ユーロの口座維持手数料。

戦略:貯蓄口座,消費者ローンの提供促進。独自の住宅ローン提供。

(Argus de lʼassurance,70231, 13avril2007に基づいて筆者作成。)

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ービスなど技術的な側面での差異化がもはや難しくなってくると,各社共,

新たな差異化の要素としてブランドやコミュニケーション戦略に注目するよ うになった。1990年代半ばからMAAFがコミュニケーション戦略を推進し 始めたのがきっかけとなり,フランス保険業界全体で取り組みが活発化した。

保険会社や銀行の保険子会社のCMや広告が,メディアで大きな存在感を 示し、各社のブランド・アイデンティティは明確に確立されるに至った。

ブランド戦略の古典的事例として,1996年AXAUAPを吸収合併した 際,ブランドをAXAに統一した例がある。1998年に独アリアンツ傘下に入 ったAGFでは,2000年に,新ロゴを採用してブランドを刷新し,全土に 3000ある代理店のすべての外観をリニューアルした。AGFによるブランド 刷新は,バンクAGFを設立してアシュルバンクを展開する前提となった。

2004年にはMAAFによる画期的なコミュニケーションの刷新があった。

最も代表的な事例としては,1998年にMAAFの傘下に入ったMMA 1999年3月に行ったブランド刷新がある。MMAは10年前の低迷状態から 2007年の保険会社好感度調査で1位となるまでにイメージを向上した。同社 による起死回生の成功を収めたブランド刷新は以下に要約する通りである。

鮮やかな青,緑,柿色のボールの中にMMAの3文字を白抜きする新 ロゴマーク導入,猫のキャラクター採用,商品ラインアップを簡潔化してキ ャンペーンを展開,全国の代理店1,000店の外観をリニューアルした。

メロディといっしょに流れる ゼロ・ブラブラ,ゼロ,トラカ,MMA

(MMAなら心配ゼロ)のキャッチフレーズは小学生までが口ずさめるまで に浸透し,リニューアルされた代理店のロゴマークは街角でひときわ目立つ。

コミュニケーション戦略の効果として,沈滞していた代理店は活性化し,

顧客の信頼感は向上した。好感度第一位の保険企業として定着した。

なお,一方で,導入されたイノベーションが市場に定着しない場合もある。

2006年2月にMAAFは食品会社ユニリバー社との提携に基づき 健康に関 するリスク予防 の啓蒙と 疾病傷害保険 の販売促進についてのタイアッ プ・コミュニケーションを開始した。これは,果物やヨーグルトなどコレス

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テロール削減に有効な商品を一定量購入した消費者に,次年度の疾病傷害保 険の保険料を40ユーロを限度に割り引くという内容であった。ユニリバー社 の該当商品のパッケージには,MAAFのロゴマークが付けられ,MAAF の営業所やWEBサイトではユニリバー社の製品が宣伝された。AGFは,

乳製品最大手ダノンと組んで同様の試みを開始した。 健康 や 食品 に 関連したリスク予防の啓蒙的行動を, 疾病・傷害 保険の販売促進に活用す るというのは,フランスの保険業界で初めての試みとなった。しかしながら,

顧客の健康リスク 予防 活動を特定商品の販売促進に活用することについ て,各方面から疑問が投げかけられ,消費者情報誌ク・ショワジールは,欺 瞞的広告の疑いでMAAFを告訴した。最終的な判決が下され,MAAF 試みは正当であると認定されたが,2008年に入って,こうしたプロモーショ ンの動きはWEBサイト上などから消滅している。

2.フランス保険企業におけるリスクマネジメント ⎜内部統制⎜

本論第2節では,企業のリスクマネジメントを構成するさまざまな要素の 中でも,特に内部統制とその組織体制づくりに焦点をあてる。

2.2.フランスにおける企業統治・内部統制の特徴

成毛(2003)は以下の諸点から,フランス企業統治の 実態 は,米国型 よりもむしろ日本における企業統治の実態に近いと指摘している。①仏企業 のトップマネジメントの権限は米国企業のそれよりも強力であり,取締役会 や監査役による経営監視機能は形骸化している。②少数の大株主に保有され て い た と い う 伝 統 的 な 資 本 構 造 も あ っ て,米 国 の よ う な 株 主(share- holder)重視型ではなく,利害関係者(stakeholder)重視型である。③金 融市場が果たす経営監視機能の役割はあまり重要視されていない。④短期的 な企業収益最大化ではなく,より中長期的な企業の成長・業務の継続性を重 視している。⑤企業統治の規範面では,法律は基本的な原則のみを規定し,

具体的な規制については業界による自主規制に委ねる。(成毛,2003)

(15)

さらに成毛(2003)では,フランス企業における構造改革や企業不祥事発 生を背景とした企業統治改革・内部統制の取り組みの特徴として次の2点を 指摘している。①国の経済全体の中長期的な成長,利害関係者(stakehol- der)総体の利益重視といった企業統治が目指す基本的価値についてはフラ ンス型の優れた点として維持されている。②一方,経営チェック機能の形骸 化という弱点については,米国流の企業統治改革手法を一部採用する形で,

企業統治メカニズムの頑健さを保証するための改善が施されている。(成毛,

2003)

2.3.フランス企業の伝統的な特徴と組織形態

フランス企業は伝統的に次のような特徴を有していた。

①グラン・ゼコル(大学校)というフランス特有の超エリート学校出身者 によって,政官財のトップ層が占められていることから,官民人的交流(少 数エリートによるサークル的構造)を通じた国家主導型企業経営である。

②取締役会のみの一元的構造において,PDGと呼ばれる取締役会会長兼 代表執行役に,米国企業の会長兼CEOよりも強大な権限が集中している。

フランス株式会社は,①取締役会のみの一層制組織においてPDGが取締 役会の会長と代表執行役を兼務,②取締役会のみの一層制組織において取締 役会の会長とは別の人物が代表執行役を務める,③監査役会と執行役会の二 層制組織という3つの形態から一つを選択できる。フランス保険最大手の AXA,人保険最大手のCNP保険は共に二層制組織を採用している。

2.4.フランス企業の構造改革

かつてのフランス3大国有保険会社,UAP,AGF,GANはすべて統治 構造を大きく変化させた。UAPは1996年にAXAに吸収合併されて世界最 大級の保険グループとなり,AGFは外国企業によるTOBの対象となって 1998年独アリアンツの子会社となり,GANは1997年7月の民営化方針に伴 い,翌年7月に,87%の株式を獲得したグルパマの子会社となった。

(16)

2.5.フランスにおける企業統治・内部統制に関する法規制

表8はフランスにおける企業統治・内部統制に関する法規制の要約である。

2.6.フランス金融安全法における内部統制の規定

金融安全法第117条(商法L225.37条ならびにL225.68条)は,2003年の 企業業績に関する決算報告から, 企業の取締役会会長または監査役会会長 が,①取締役会または監査役会による業務の準備と組織作りの条件,②企業 によって採用されている内部統制の手続きについて,年次報告書の付属書類

表8 新経済規制法と金融安全法

新 経 済 規 制 法(Nouvelle Regulation Economique:NRE)(2001年 5 月15日 付)

①取締役会の員数上限を24名から18名に引き下げ義務付け(合併企業の場合は 30名から24名に引き下げ),②取締役会のみの一層制組織の企業において,取締 役会会長と代表執行役との分離を選択可能に,③取締役を兼任できる企業数の 上限を8社から5社に引き下げ義務付け,④取締役個人別の報酬額,ストック・

オプションの付与・行使状況に関する情報開示義務付け。

金融安全法(Loi de Securite Financiere:LSF)(2003年8月1日付)

①金融規制監督機関の統合・再編:証券取引委員会(COB),金融市場評議会

(CMF),財 務 管 理 評 議 会(CDGF)の 3 機 関 を 統 合 し 金 融 市 場 監 督 機 構

(AMF) 設立。保険監督委員会(CCA),相互保険組織・共済組合監督委員会 (CCMIP)を統合し保険会社・相互保険組織・共済組合監督委員会(CCAMIP) 設 立。*CCAMIPは2005年 にACAM(Autorite de controle des assurances et des mutuelles:保険会社・共済監督局)に改組,②金融・保険商品販売におけ  る消費者保護強化:取引勧誘に関する規制,金融投資顧問業者に対する規制,

保険契約者の保護,消費者金融における過剰与信防止,③企業統治の改善:会 計 監 査 人 高 等 評 議 会(HCCC)(Haut Conseil du Commissariat aux Comptes)新設。会計監査人の独立性に関する規制強化(会計監査人が同一企  業を連続監査できる年数を7年から6年に短縮。監査対象企業に対するコンサ ルティング・サービス提供の禁止),④内部統制の強化:内部統制に関する取締 役会会長また執行役会会長による報告義務付け,会計監査人による内部統制過 程に関する報告義務付け,⑤自社株取引:役員による自社株式取引に関する情 報開示義務付け,⑥役員報酬額開示義務の緩和:新経済規制法で導入された役 員個別報酬額開示義務の対象から,非上場企業を外す。上場企業の非上場子会 社については変更なし,⑦その他:資産管理会社の議決権行使に関する報告義 務付け。投資家擁護団体に関する規制緩和。連結決算の対象として,株式持分 や議決権といった支配関係からの従来の把握方法に加えて,契約上の関係など 実質的な影響関係をも考慮することを規定。

(17)

という形式で株主総会に報告すること を規定した。さらに金融安全法第 120条(商法L225‑235条)は, 会計監査人は,年次決算書に関する報告書の 中で,第117条に規定された取締役会または監査役会会長による報告書につ いての意見を表明し,場合によっては,会計・財務情報の作成と取り扱いに 関する内部統制の手続きについても意見を表明すること と規定している。

2.7.フランス版 内部統制規範 (2007年1月)と法規制の関係

フランスでは2007年1月にAMF(金融市場監督機構)が 内部統制手続 き の 枠 組 み (Le dispositif de Controle Interne:Cadre de reference を発表し,同会計年度からこれを上場企業に推薦した。表9は米国と比較し た内部統制に関する法律と規範との関係を示す。

2.7.フランス版 内部統制規範 の拠り所

フランス版内部統制規範は,米国規範COSOと英国規範ターンバル・ガイ ダンスに準拠して作成された。COSOからは,①統制の環境,②リスクの 評価,③統制の活動,④情報とコミュニケーション,⑤監視という5つの基 本要素が取り入れられた。また欧州委員会の企業会計に関する第4次,第7 次指令に適応した。これは2002年に会社法制の現代化と企業統治の強化を目 的に採択され, 上場企業は,毎年,財務情報の作成過程で,内部統制とリ スクマネジメントのシステムの主要な特徴を記述する 旨規定している。

2005年9月に採択された決算書の法的統制に関する第8次指令は,監査委員 表9

米国 フランス

内部統制に 関する法律

サ ー ベ ン ス・オ ク ス リ ー 法

(2002年)

*会計・財務分野に限定

金融安全法(2003年)

*会計・財務分野に限定されな

内部統制に 関する規範

COSO 内部統制−統合的フ レームワーク (1992年)

AMF 内部統制手続きの枠 組み (2007年)

(18)

会の設置を義務付けた。監査委員会の業務としては, 企業の財務情報作成 プロセスの監視,内部統制,内部監査,場合によっては,リスクマネジメン トの有効性についての監視 とし, 会計監査役に代表される法的な統制担 当者が法的な統制過程で指摘した問題点,特に財務情報作成プロセスに関わ る内部統制上の大きな欠陥について監査委員会に報告すること と規定して いる。

2.8.フランス版 内部統制規範 (2007年1月)の内容

AMFによる規範 内部統制手続きの枠組み は, 内部統制の一般的原 会計・財務情報の内部統制に関わる適用案内 会計・財務上の内部統 制に関する質問票 リスクの分析と制御に関する質問票 から構成される。

同規範は, 内部統制の構成要素 として,①責任の所在を明確にした適 切な組織体制,②的確で信頼性がある情報の普及,③リスクを調査し,分析 し,管理するシステム,④ 統制の諸活動 (各プロセスに固有の問題点に 対応し,企業目標の実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを制御する目的 で立案される),⑤ 諸方策についての継続的な監視 の5点を示している。

会計・財務面における内部統制に関する質問票 では,会計・財務情報 に影響を及ぼすリスクを特定するための方策の有無や,ヒューマン・エラー や詐欺のリスクを減らすことを目的とした特別の手続きの有無を問うている。

リスクの分析と制御に関する質問票 は, リスクマネジメントの一般的原 則 , 主要リスクの特定 , 主要リスクの分析 , 主要リスクの管理に関す る手続き , リスクの監視とリスクマネジメントの手続き の5項目に及ぶ。

2.9.フランス保険企業の内部統制体制

最後に,フランス保険企業がどのような内部統制体制を構築しているか俯 瞰してみよう。2006年におけるCNP保険の内部統制ならびにリスク管理体 制では,まず監査役会に組織された 監査委員会 と,執行役会メンバーと リスク・コンプライアンス部部長で構成される リスク委員会 とが,CNP

 

(19)

保険が直面する重大なリスクを調査・確認し,リスクの予防,抽出,処理の ための方策を確立する。同社は図1に示すように2つのレベルから成る組織 体制を採っている。①第1レベルでは各事業部門の責任者が,各事業に固有 のリスクを制御するか,あるいはリスクが企業全体に及ぶ場合は部門横断的 な制御手法を遂行する。②第2レベルでは,全社的なリスクの管理を整備し,

同時に第1レベルのリスク管理が有効であるか統制する。第2レベルを担う のが リスク・コンプライアンス部門 傘下の リスク・コントロール課 と 内部統制課 ,そして 内部監査部門 である。内部監査部門は,グル ープの内部統制の方策を定期的に評価する任務を有し,内部統制プロセスと リスクマネジメントプロセスとが適切に存在していることを検証する。

AXAでは 自らのリスクをうまく管理できてはじめて,顧客のリスクを きちんと管理できるようになる という問題意識の下,内部統制・リスクマ ネジメントの組織体制を整備している。グループCROが統率して全社的な リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト を 推 進 す る グ ル ー プ・リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト 部 門

(GRM) と,再保険を集中的に管理する AXAセッシオン の2組織で ある。執行役会で任命された 各事業CRO が責任者を務める 各事業リ スクマネジメント部門 が組織され,各事業部門固有のリスクを管理する。

図1:CNP 保険の内部統制・リスク管理体制 監 査 役 会

執行役会 会長

リスク・コンプライアンス部門 内部監査部門 (12人)

リスクコントロール課(4人) 内部統制課(8人)

=第2レベル

リスク測定と管理 内部統制の評価 統制の方策強化 =第1レベル

(20)

結 語

本論における分析を通じて,①保険契約者に対する利便性向上を主眼とし たマーケティング戦略の有用性,②フランス保険企業が,一連のイノベーシ ョン導入を契機とした激しい競争を通じて商品とサービスを洗練させたこと,

③ブランド戦略・コミュニケーション戦略の展開によって,フランスの保険 企業は,圧倒的に強固なブランド・アイデンティティを構築していること,

④内部統制・企業統治に関連して,フランス当局は,自国の企業風土に適し た法規制や規範を発表してきたこと,⑤フランス保険企業は内部統制・リス クマネジメントの具体的な組織体制作りを推進していることが確認できた。

独自性を発揮するフランス保険市場・企業の動向は,窓口販売解禁や内部 統制体制の構築に取り組む我が国企業への示唆に富むと考える。

(筆者は関西大学総合情報学部教授)

参考文献

奥山裕之(2004) フランスの金融安全法 レファレンス 2004年2月号。

(http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200402 637/063703.pdf) 亀井克之 損害保険市場におけるマーケティング・イノヴェーション−フランス保

険市場におけるMSIの戦略− 保険学雑誌 第570号,2000年9月。

亀井克之 欧州保険会社による銀行業参入・アシュルフィナンスの新展開−バンク AGFのマーケティング戦略を中心に− 保険学雑誌 第584号,2004年3月。

亀井克之 フランスにおける保険マーケティングの新展開 損害保険研究 第68 巻第1号,2006年5月。

亀井克之 フランスにおける 内部統制規範 と企業統治 損害保険研究 第68 巻第3号,2006年11月。

成毛建介(2003) フランスにおける企業統治の特徴と改革の動きについて 海外 事務所ワーキングペーパーシリーズ 2003‑1,日本銀行。

(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/kako/data/owp03j01.pdf)

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