長 崎 市 監 査 公 表 第 5 号
平 成 27 年 3 月 3 日 に 提 出 さ れ た 住 民 監 査 請 求 に つ い て 、地 方 自 治 法 第 242 条 第 4 項 の 規 定 に 基 づ き 監 査 を 行 っ た 結 果 を 同 条 同 項 の 規 定 に よ り 公 表 し ま す 。
平 成 27 年 4 月 7 日
監
査
結
果
M I C E 施 設 建 設 に か か わ る 出 張 旅 費 の 返 還 を 求 め る
住 民 監 査 請 求
( 平 成 27 年 4 月 7 日 )
目
次
第1 請求に関する概要
1 請求人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 長崎市職員措置請求書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 請求の要件審査及び受理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
第2 監査の実施
1 請求人に対する証拠の提出及び陳述の機会の付与 ・・・・・・・ 3 2 監査対象事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3 監査の対象部局(所属) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 4 関係職員調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
第3 監査の結果
1 事実関係の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2 判断 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 3 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
別 添
第1 請求に関する概要 1 請求人
・・・・・・・・・・ 井原 東洋一 ・・・・・・・・・・ 香島 巖 ・・・・・・・・・・ 相田 和子
2 長崎市職員措置請求書
⑴ 提出日
平成 27 年 3 月 3 日
⑵ 請求の要旨(要約)
長崎市議会平成 26 年第 4 回(9 月)定例会(以下「9 月議会」という。)において、 「MICE施設用地」として、長崎駅西側の日本貨物鉄道株式会社(以下「JR貨 物」という。)所有地を先行取得することを内容とする「第 110 号議案平成 26 年度 長崎市土地取得特別会計補正予算(第 1 号)」が否決された。
これは、田上富久長崎市長(以下「市長」という。)が、JR貨物所有の当該用地 を先行取得することについて、長崎市議会(以下「市議会」という。)に説明しない まま独断専行して推し進めたことで、市議会が市政運営に対し不信感を持ったことな どから、否決に至ったものである。
そして、長崎市職員である中川正仁経済局局長(以下「中川局長」という。)及び 牧島昌博経済局文化観光部観光政策課主幹(以下「牧島主幹」という。)は、予算案 否決当日である平成 26 年 10 月 1 日に、翌 2 日には市長も、東京都に出張し、JR貨 物など関係機関に出向き、「9 月議会で土地に関する予算は否決されたこと」を報告 し、「今後も継続してMICE事業の検討を行うので協力を依頼」した。
10 月 3 日に市長は直接長崎市(以下「市」という。)に戻ったが、中川局長及び牧 島主幹は、引き続き静岡県に移動して市が計画しているMICE施設と機能的に類似 している「プラサヴェルデふじのくに千本松フォーラム」を訪問した後、市に戻った。
さらに、同月 14 日及び翌 15 日に、中川局長及び牧島主幹は、東京都に出張し、国 土交通省などの関係機関に出向き、上記と同様の報告及び協力依頼を行った。
る。
ア 市長は、MICE施設の用地取得予算案を否定した市議会の議決の重大性に鑑 みれば、その手続きの在り方や必要性等を再検討すべきであったが、否決された 直後に、議決の趣旨に反し、引き続きMICE施設設置への協力依頼のために多 額の税金を使って出張し、公金を支出した。
イ MICE施設用地の取得予算案が市議会で否決されたにもかかわらず、その直 後に、用地取得の付随的行為である出張のために公金を支出して行うことは、巨 額の予算策定や契約締結を議会のコントロール下に置く地方自治法の趣旨に反す るものである。上記出張は、市長の個人的信念に基づくもので、公務性は乏しい と言わなければならない。
以上のことから、市が負担した市長らの旅費 391, 620 円は不当な公金の支出であ り、この公金を支出させたことで市長は市に損害を与えており、市長個人の責任は 免れない。
よって、市長に対し、市に支出額の返還をさせるなど、必要な措置を勧告するこ とを求める。
( 注) 「MICE(マイス)」とは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Ince
ntive tour(報奨・招待旅行)、ConventionまたはConfe
rence(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字を
とった造語で、ビジネストラベルの一形態を指す」(JTB総合研究所観光用語集)。
⑶ 長崎市職員措置請求書に添付された事実証明書
長崎市職員措置請求書(以下「措置請求書」という。)とともに、事実証明書とし て、長崎市議会平成 26 年第 4 回(9 月)定例会議事録など 9 点が提出された。
3 請求の要件審査及び受理
第2 監査の実施
1 請求人に対する証拠の提出及び陳述の機会の付与
法第 242 条第 6 項の規定に基づき、平成 27 年 3 月 12 日に、請求人に陳述の機会を 与えた。その際に、以下の新たな証拠書類の提出がなされ、これに基づき、長崎市議 会平成 26 年第 5 回(11 月)定例会に提出された交流拠点施設用地取得議案における「交 流拠点施設」というものについては、「MICE施設」そのものを指していることが明 らかである旨の補足説明がなされた。
⑴ 平成 26 年 12 月 16 日付け「長崎都市計画(長崎国際文化都市建設計画)教育文化 施設の変更(市決定) (102 号 長崎市交流拠点施設)」に関する資料
⑵ 平成 27 年 1 月 16 日付け「長崎都市計画(長崎国際文化都市建設計画)教育文化 施設 102 号 長崎市交流拠点施設の事業計画の認可について」に関する資料
2 監査対象事項
⑴ 指定された職員 長崎市長
⑵ 請求人が求める措置内容
措置請求書及び請求人の陳述内容等から、請求人が求める措置内容を次のように 解した。
ア 請求対象とした旅費を市に返還させること
9 月議会において、長崎駅西側のJR貨物所有地を市が「MICE施設を念頭 に置いた交流拠点施設用地」として先行取得することについての補正予算案が否 決されたにもかかわらず、その直後に、市長らは今後に向けた関係機関との協議 等のために出張している。市議会の議決の重大さに鑑みれば、その手続きの在り 方や必要性等を再検討すべきであったにもかかわらず、否決された直後に事業継 続へ向けての協議のための出張をしたことは、市長の個人的信念に基づき行われ たものであり、公務性は乏しい。
3 監査の対象部局(所属)
経済局 文化観光部(観光政策課)
4 関係職員調査
観光政策課から関係書類を提出させ、確認する必要がある事項については質問書に より回答を求めるとともに、法第 242 条第 7 項の規定に基づき、平成 27 年 3 月 16 日 に、中川局長及び牧島主幹並びに今回の請求対象である旅費に係る経理事務担当所管 の股張観光政策課長から聴き取り調査を行った。
なお、提出された関係資料及び関係職員調査により事実確認ができたため、関係人 に対する調査は実施しなかった。
第3 監査の結果 1 事実関係の確認
⑴ 出張旅費の予算について
請求人が指摘する出張旅費を含むコンベンション施設整備推進費に係る予算は、 第 37 号議案平成 26 年度長崎市一般会計予算として長崎市議会平成 26 年第 1 回(2 月)定例会に提出されたが、審議の結果、その全てが認められなかった。その後、 平成 26 年 3 月 31 日に開催された長崎市議会平成 26 年第 2 回( 3 月) 臨時会において、 第 58 号議案平成 26 年度長崎市一般会計補正予算(第 2 号)のうちコンベンション 施設整備推進費として再提出され、審議の結果可決された。
⑵ 交流拠点施設用地取得に係る 9 月議会の議決について
MICE施設を念頭に置いた交流拠点施設用地として、JR貨物所有地を市が 68 億円で先行取得することについての第 110 号議案平成 26 年度長崎市土地取得特別会 計補正予算(第 1 号)(以下「9 月補正予算案」という。)が 9 月議会に提出された。
⑶ 9 月補正予算案を否決された後の市の対応について
環境経済委員会において、平成 26 年 9 月 26 日に 9 月補正予算案が否決されたこ とを受け、市は同日、市長、副市長及び関係職員により、市としてのその後の対応 について協議を行った。
そして、この協議において、市議会の議決を重く受け止めたうえで、市議会で否決 されたのは、MICE事業そのものを認めないというものではなく、MICE事業に ついての市議会や市民への説明が不足していること、用地取得に関するJR貨物との 協議経過についての説明が市議会になされていなかったことなど、説明不足が主な要 因であり、市民や市議会への説明を尽くせばMICE事業への理解を得られると考え、 今後は、市議会や市民への説明に努めていくことが必要であるとの結論に至った。そ して、事業継続を断念することなく、用地取得については継続して関係機関に協力を 求めていくとともに、MICE事業については今後も検討を進めていくとの方針が確 認された。
⑷ 9 月議会終了直後の出張について
上記方針決定に基づき、市はこれまで協力を得てきた関係機関に直ちに赴き、直接 面会したうえで、市議会で否決されたことについての報告と今後に向けての協力依頼 を行うことが必要であると考え、関係機関と日程調整を行い出張している。
ア 1 回目の出張
出 張 者
出張期間
( 出張命令日)
出 張 先 支出旅費額
中川局長
10/ 1∼10/ 3
( 9/ 30)
東京都(PCO3 社、JR貨物、内閣府、
首相官邸、国土交通省)
静岡県沼津市(プラサヴェルデふじのくに
千本松フォーラム)
103, 170 円
牧島主幹 103, 170 円
市 長
10/ 2∼10/ 3
( 9/ 30)
東京都(JR貨物、内閣府、首相官邸、国
土交通省)
80, 880 円
出張先における主な業務内容 ・PCO3 社
日本コンベンションサービス㈱、㈱コングレ、㈱コンベンションリンケージ の 3 社を訪問し、同年 9 月 2 日に開催された環境経済委員会の自主的な調査に 参考人として出席してもらったことに対するお礼と、9 月補正予算案が否決さ れたことについての報告を行った。そのうえで、MICE事業を理解してもら うために市民や市議会に引き続き説明を行っていくこと及び今後もMICE事 業の検討を行っていくことを伝え、専門的な見地からの協力を依頼した。
注:PCOとは、コンベンション等を専門的かつ総合的に組織・企画・運営し、そ
のサービスを提供する法人のこと。
・JR貨物
田村社長等に面会し、JR貨物との交渉経過を環境経済委員会で説明したこ と、9 月補正予算案が否決されたことを報告した。そのうえで、MICE事業 を理解してもらうために市民や市議会に引き続き説明を行っていくこと及び今 後もMICE事業の検討を行っていくことを伝え、交流拠点施設用地取得に向 けての協力を依頼した。
・内閣府
・首相官邸
これまでMICE事業に関連して様々なアドバイスを受けていた衛藤内閣総 理大臣補佐官及び和泉内閣総理大臣補佐官と面会し、9 月補正予算案が否決さ れたことについての報告を行うとともに、MICE事業を理解してもらうため に市民や市議会に引き続き説明を行っていくこと及び今後もMICE事業の検 討を行っていくことを伝え、協力を依頼した。
・国土交通省
JR貨物は国が 100%株主であり、その所管官庁が国土交通省であることか ら、同省を訪問して本田事務次官と面会し、9 月補正予算案が否決されたこと についての報告を行うとともに、MICE事業を理解してもらうために市民や 市議会に引き続き説明を行っていくこと及び今後もMICE事業の検討を行っ ていくことを伝え、交流拠点施設用地取得に向けての協力を依頼した。
・プラサヴェルデふじのくに千本松フォーラム
この施設は、駅に近接し、運営はPCOが行うなど、市の計画と類似してい るということで視察し、施設構成や運営などについて説明を受けた。
イ 2 回目の出張
出 張 者
出張期間
( 出張命令日)
出 張 先 支出旅費額
中川局長
10/ 14∼10/ 15
( 10/ 3)
東京都(国土交通省、内閣府)
52, 200 円
牧島主幹 52, 200 円
出張先における主な業務内容 ・国土交通省
市としては年度内に契約できない場合は賃借料がかかり、また当該用地の評 価額の上昇が見込まれることから、この段階では今後の市議会への提案につい ては決まっていなかったが、用地取得に関してはスケジュール感が重要な要素 であるとの認識のもと、年度内の用地取得に向けての協議を行った。
・内閣府
平成 25 年度まで、前任者に様々な調整等窓口の役割を担ってもらっていたこ ともあり、平成 26 年 4 月の人事異動に伴い着任した後任の鹿野参事官と面会し、 同年 4 月以降のMICE事業全体の検討経過の報告及び 9 月補正予算案が否決 されたことについての報告を行うとともに、今後のMICE事業への協力を依 頼した。
2 判断
本件監査における監査委員の判断は、次のとおりである。
⑴ 判断に当たっての考え方について
住民監査請求制度とは、地方公共団体の住民が当該団体の長等の違法若しくは不 当な財務会計上の行為をなすこと又は怠る事実について、これを予防し又は是正す ることで、住民全体の利益を守ることを目的とするものである。
したがって、住民監査請求の対象は、違法若しくは不当な①公金の支出、②財産 の取得・管理・処分、③契約の締結・履行、④債務その他の義務の負担の4種類の財 務会計上の行為と、違法若しくは不当に公金の賦課・徴収を怠る事実又は財産の管 理を怠る事実に限られている。
今回の請求人の主張には、( ア) 「MICE施設用地の取得予算案が市議会で否決 された直後に、MICE施設設置への協力依頼のための出張」をしたことは不当で あることと、( イ) 「上記不当な出張のため多額の公金を旅費として支出し、市に損 害を与えたこと」の2つが含まれている。
( ア) については、いつ、どのような出張をするかは、財務会計上の行為にあたら ず、かつ、政策的な判断により決定された方針に基づいて命令されたものであり、 この出張が不当であるかどうかは、住民監査請求制度の趣旨から、監査の対象とは ならない。
( イ) については、「旅費の支出」は財務会計上の行為であるので、今回の支出が不 当なものかどうか、その支出が市に損害を与えているかどうかが、監査の対象とな る。
よって、本監査においては、「旅費の支出」に不当性があるのかどうかについての み判断することとした。なお、出張行為そのものは財務会計上の行為にはあたらな いが、旅費の支出の原因となる事実であることから、それが正しく履行されている かどうかについても併せて判断することとした。
⑵ 旅費の支出の不当性の判断について
本件における請求人の主張に関する事実は、9月補正予算案が市議会で否決された 直後に、市が、「用地取得については継続して関係機関に協力を求めていくことや MICE事業継続の検討を今後も進めていく」との方針を決定し、その方針に基づ き、市長をはじめ関係職員が公費により2回の出張を行ったというものである。
た。
まず、出張旅費の支出手続きについて検証したところ、正当な出張命令書に基づ き、一連の財務会計上の手続きである支出負担行為や支出命令、精算報告などは適 正に処理されていた。さらに金額面でも、経済的な方法により旅費が算出されてお り、過大に支出されている事実は認められなかった。よって、財務会計上の行為と しての旅費の支出には不当性は認められなかった。
また、2回の出張行為そのものについては、市が決定した方針に沿って出張命令が 出され、その命令に従って出張が行われたことが出張後の報告書(復命書)で確認 でき、出張目的は達成されたものと認められた。よって、原因となる事実としての 出張行為にも不当なものは認められなかった。
上記のとおり、出張の目的が達成されており、かつ、旅費の支出が適正かつ経済 的になされていることが確認できたことから、市に損害を与えている事実は認めら れなかった。
3 結論