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こには 日本で食べられている食材や日本人のテクスチャー嗜好が背景にあると推測される 日本人は 古来 餅などの粘りのある食品を好んで食べてきた 納豆 里芋 こんにゃくなど 粘り ぬめり 弾力が特徴の食品も多い 食の表現は その言葉が使われる地域の食生活や食習慣を色濃く反映しているのであろう 3. 過去

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Academic year: 2021

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日本農芸化学会関東支部2011 年度第1回支部例会講演要旨集 日時:平成23 年 7 月 9 日 会場:明治大学生田キャンパス中央校舎メディアホール 発表:シンポジウム「食感デザインへのアプローチ」

日本人の食感表現

早川文代 ((独)農研機構食品総合研究所) はじめに 官能評価において、評価項目となる言葉は重要な役割を果たす。例えば、ハンバ ーグの評価項目に「やわらかさ」、「ふっくら感」、「ふわふわ感」等のいずれを使う かによって結果が変わることがある。実験者にとって、どのような言葉を評価項目 に選ぶかは腕の見せ所である。しかし、逆に言うと、用語の曖昧さが評価の精度や 信頼性を低下させる原因ともなっている。なかでも、テクスチャーは、用語の数 (種類)も多く、標準物質が設定しにくいので、より用語選定が難しい。 官能評価の用語設定(項目設定)の際、用語リストがあれば、参照することがで きる。いくつかの言語で、テクスチャー表現のリストを作成する試みがなされてお り、日本語でも、1960 年代に質問紙調査によって用語リストが作成されている 1)-3) しかし、その後、日本人の食生活は大きく変化したにもかかわらず、新たな用語整 理はなされていない。そこで、新たに日本語のテクスチャー用語リストを作成した。 1.日本語テクスチャー用語の収集・整理4) 2003 年に仙台、東京、大阪、鹿児島の4地点で、食品分野の研究者合計 116 人に 自由記述式の質問紙調査によって、テクスチャー表現を思いつく限り挙げてもらっ た。あわせて、専門書や辞書類からもテクスチャー表現を収集した。さらに、テク スチャーの研究者 55 人への質問紙調査を実施して用語の検証を行い、最後に、長い 経験と高度な専門知識を有するテクスチャー研究の専門家 4 人に面接調査を実施し、 リストに過不足がないかを確認した。このようにして、最終的に日本語テクスチャ ー表現リストとして445 語を得た。 2.日本語テクスチャー用語の特徴 日本語テクスチャー表現の最大の特徴は数が多いことである。英語の例で 77 語 5) フランス語では 227 語 6)、ドイツ語では 105 語 7)、中国語では 144 語 8)である。こ れらの報告は、調査方法や時期が異なるので、厳密に比較することはできないが、 それにしても、日本語のテクスチャー表現は数が多いと言ってよいであろう。 第2の特徴は、擬音語・擬態語注1が多いことである。445 語のうち、約 70%は擬 音語・擬態語であった。確かに、テクスチャー表現において、「サクサクのパイ」 「パリッとしたポテトチップス」「しっとりしたパン」等、擬音語・擬態語は頻繁に 用いられている。 粘り、弾力、ぬめりの表現が多いことも特徴の一つである。「ねっとり」や「ねば ねば」等の粘りの表現、「ぬるぬる」や「にゅるっ」等のぬめりの表現、「ぷりぷり」 や「ぷるぷる」等の弾力の表現が日本語のテクスチャー表現には多く見られる。こ 注1広辞苑では、擬音語は「実際の音をまねて言葉とした語」、擬態語は「視覚・触覚など聴覚以 外の感覚印象を言語音で表現した語」と説明されている。しかし実際には、擬音語と擬態語を厳 密に区別することは難しく、本稿ではまとめて「擬音語・擬態語」とする。

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こには、日本で食べられている食材や日本人のテクスチャー嗜好が背景にあると推 測される。日本人は、古来、餅などの粘りのある食品を好んで食べてきた。納豆、 里芋、こんにゃくなど、粘り、ぬめり、弾力が特徴の食品も多い。食の表現は、そ の言葉が使われる地域の食生活や食習慣を色濃く反映しているのであろう。 3.過去のテクスチャー用語との比較 1960 年代に行われた吉川ら 1)-3)の調査と今回の調査で、テクスチャー表現として 挙げられた用語について、出現頻度の高い上位の用語を比較した。「かたい」「カリ カリ」「ガリガリ」などは、1960 年代も現代も共通して上位に挙げられていた。 一方で、時代によって出現頻度が大きく変化した用語がいくつかみられた。例え ば、「もちもち」などは近年新しく使われるようになった表現の例である。「もちも ち」はパンのテクスチャーの流行とともに広まった言葉ではないかと推測される。 「ぷるぷる」や「つるん」は、この2、30年の増粘多糖類の開発によって、さま ざまなゲル状のデザートが登場したことと関係があろう。「のどごしがよい」にはビ ールのコマーシャルの影響があると推測される。「ジューシー」のように言葉自体が 新しいという例もある。 これらとは逆に、テクスチャー表現としては使われなくなりつつある用語もみら れた。「ネチャつく」や「ニチャニチャ」のような付着性の表現がその例である。付 着するような食べ物はあまり好まれなくなっており、その結果、用語もすたれてい る可能性がある。また、現在は「粘い」はあまり使われず、代わりに「ねばりがあ る」や「ねばる」が使われているのではないかと考えられる。 以上は一例であるが、このように、時代による表現の変化には、新しい食品の登 場、食感の流行、食嗜好の変化、言葉自体の変化等、いくつかの要因が背景にある と推測される。 4.性・年齢とテクスチャー用語9)10) 官能評価は一般消費者を対象に行われることもある。また、分析型パネルが評価 した結果を一般消費者に説明することもある。このとき、一般消費者のテクスチャ ー表現の語彙について情報があればとても便利であろう。そこで、演者らは、消費 者のテクスチャーの語彙を明らかにすることを目的として、2004 年 6 月から 10 月 にかけて質問紙調査を実施した。 首都圏および京阪神地区にある大学(食物を専攻しない学生)、大学の附属中学校、 地方自治体主催の高齢者大学および消費者団体主催の勉強会等に在籍する人、合計 3533 人に回答を依頼した(回収票数 2582、うち有効票数 2437)。用語を調査票に 列挙し、各用語について食表現であると思うか否かを質問した。 用語の認知度(「食表現だと思う」と回答した割合)が 75%を超える用語を「消 費者のテクスチャー語彙」とした。その結果、445 語のうち、消費者の語彙とされ た用語は135 語であった。 消費者のテクスチャー語彙の用語数を性別に調べたところ、男性より女性の方が 多いという結果であった(男性 104 語、女性 150 語)。これは演者らが行った別の 調査 11)でも、海外の別の調査 7)12)でも同様の結果が得られている。これらの結果か

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ら、女性の方がテクスチャー表 現に関する語彙は豊富だと推察 される。 性差の大きい用語について、 認知度を図1に示した。このよ うな認知度の違いは、食経験や 食嗜好の違いに起因する可能性 が あ る 。「 ぼ そ ぼ そ 」 お よ び 「もそもそ」は、先の調査 11) でも女性の認知度の高い用語で あった。女性は、食物の受容性 の判断において、このようなテ クスチャーに敏感であり、これ らの用語に反応した可能性が考えられる。また、「もったり」「くたくた」のように、 調理過程から見られる状態を描写したテクスチャー用語については、女性は調理経 験が豊富で、その結果、女性の認知度が高くなったという可能性がある。 消費者のテクスチャー語彙の用語数を年齢層別に調べたところ、中学生が最も少 なく、次いで若年層が少ないという結果であった(中学生81 語、若年層 108 語、中 年層 156 語、壮年層 142 語、高齢者層 152 語)。しかし、単に、年齢とともに認知 する用語が増えていくのではなく、年齢層によって語彙を構成する用語は異なって いた。例えば、「シュワシュワ」等は中学生や若年層の語彙にのみ見られる用語であ った。 年齢層差の大きい用語を図2およ び 3 に示した。「シュワシュワ」や 「ぷにぷに」は低い年齢層で認知度 が高い傾向にあった。「シュワシュワ」 が形容する食べ物の代表例は炭酸飲 料、「ぷにぷに」が形容する食べ物の 例はグミやゼリーなどのデザート類 であろう。このような食品は、低い 年齢層で食経験が多い可能性がある ため、食経験が用語の認知度に影響 しているとも考えられる。一方で、 「糊状の」のような「○○状の」と いった表現は、年齢層が低い人には 語彙として定着しにくいと考えられ た。また、「こちんこちん」は年齢層 が高い方が用語の認知度が高かった。 図には示していないが、「ぷりんぷり ん」「かちんかちん」「ぶりんぶりん」 も同様の傾向であった。背景には、 非表示 非表示 非表示

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このような用語が形容する食品に対しての食経験に差がある、あるいは、食表現に おいては、語基に「ん」がついて繰り返されてできる「○○ん○○ん」という形の 擬音語・擬態語は、語感が若年者には受け入れられにくいという可能性が推測され る。 以上のように、テクスチャー用語のなかには、認知度に、人の性差、年齢層差が みられるものもある。食べ物も言葉も生活に密着したものなので、テクスチャー表 現に性、年齢の特徴があるのは当然のことであろう。 おわりに 本発表では、テクスチャーの官能評価の用語選定と定義づけの際に参照できるよ う作成した用語リストとその特徴を紹介した。テクスチャー評価の実施の際の一助 となれば幸いである。 また、テクスチャー表現は、単に食品の性質を表すだけでなく、言葉を使う人た ちの食生活や食嗜好を反映している。テクスチャー用語リストは、日本人の食文化、 食習慣、食嗜好等を考察する一つの手掛かりとなり得るとも考えている。言葉は文 化の粋ともいうべきもので、食感覚の表現はその文化圏、言語圏の食の特徴を強く 映しているのである。 引用文献 1) 吉川誠次ほか,第6回官能検査大会報文集,38-67 (1965) 2) 吉川誠次ほか,品質管理,19,66-70 (1968) 3) 吉川誠次ほか,品質管理,19,147-155 (1968) 4) 早川文代ほか,食科工,52,337-346 (2005)

5) Szczesniak, A. S. and. Kleyn, D. H., Food Technol, 17, 74-77 (1963) 6) Nishinari et al., J. Texture Stud, 39, 530-568 (2008)

7) Rohm, H. , J. Texture Stud, 21, 363-373 (1990) 8) 早川文代ほか,食科工,51, 131-141 (2004) 9) 早川文代ほか,食科工,53,327-336 (2006) 10) 早川文代ほか,食科工,54,488-502 (2007) 11) 早川文代ほか,家政誌,50,481-490 (1999)

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ご略歴 氏名(フリガナ) :早川 文代(ハヤカワ フミヨ) 現所属・身分 :独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所・主任研究員 出身地 :兵庫県 最終学歴 :お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間環境学専攻 博士課程修了(平成8 年 3 月) 専門分野 :官能評価学、調理科学 趣味 :二人の娘たちと遊ぶこと。 (育児に追われて他の趣味はお休み中) 自由記述 :少しずつ実験や調査を重ねて、より豊かな食生活の実現に少 しでも貢献できたらいいなと思っています。

参照

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