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急性期脳卒中患者におけるStroke Unit IndexとFunctional Independence Measure(FIM)—多施設データベース研究

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はじめに

 日本の脳卒中患者数は,2009 年の時点で 134 万人にのぼる1).人口の高齢化とともに今後 20 年 以内にその数は倍増すると予測されており,脳卒 中治療体制の整備は喫緊の課題となっている2) 海外において,脳卒中専門病棟には stroke unit (SU)や stroke care unit(SCU)などと呼ばれる

多様な形態がある.SU は,「脳卒中を専門に扱う 意欲に満ちた多職種連携によるリハビリテーショ

ンアプローチを提供する組織形態」3)であると定

義されている.一方,SCU は心臓冠動脈疾患集中 治療室などの集中治療室(intensive care unit; ICU)をモデルとした急性期治療に重点をおいた

脳卒中集中治療室である4,5)

 このような脳卒中専門病棟の有効性は広く世界 1)名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部:Division of Rehabilitation, Nagoya University Hospital

〒 466—8560 名古屋市昭和区鶴舞町 65 番地

2)学校法人セムイ学園東海歯科医療専門学校理学療法科:Department of Physical Therapy, Tokai College of Medical Science

3)畿央大学健康科学部理学療法学科:Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Kio University 4)千葉大学予防医学センター環境健康学研究部門:Center for Preventive Medical Sciences, Chiba University (受稿:2014 年 9 月 30 日)

急性期脳卒中患者における Stroke Unit Index と

Functional Independence Measure(FIM)

―多施設データベース研究

Stroke Unit Index and the Functional Independence Measure(FIM)in the acute stroke patients―a study using multicenter database

研 究 と 報 告

永谷 元基

1) Motoki Nagaya, PT

近藤 克則

4) Katsunori Kondo, MD, PhD

林 尊弘

2) Takahiro Hayashi, PT

松本 大輔

3) Daisuke Matsumoto, PT

Key Words stroke unit,Functional Independence Measure(FIM),retrospective study,mul-ticenter database

旨 「多職種連携によるリハビリテーションアプローチ」という脳卒中病棟(stroke unit;SU)の特徴を満たしているほど,退院時機能的自立度評価(Functional Independence Mea-sure;FIM)がよいかを検討することが,本研究の目的である.対象は,2005 年 4 月~2011 年 1 月までにリハビリテーション患者データバンクに登録された一般病棟 4,666 名のうち基準を満たし た 9 病院 3,916 名の患者とした.「リハビリテーション専門医のかかわった割合」など SU の特徴であ る 7 項目それぞれにつき中央値を求めた.中央値以上の 5 病院を SU としての特徴をもつとみなして 1 点を与え,合計 0~7 点となる SU Index(SUI)を開発した.9 病院を 3 群(高群,中群,低群)に分 けた.発症から入院までの日数 7 日以内など 3 つの選択基準を満たした 9 病院,2,920 名の患者を分析 対象とし,目的変数を退院時 FIM,説明変数を SUI,調整変数を先行研究で退院時日常生活動作(activ-ities of daily living;ADL)との関連が報告されている脳卒中の病型分類などの 8 因子として,強制投 入法にて重回帰分析を行った.その結果,8 因子を調整しても,SUI 低群に比べ,高群で退院時 FIM が 8.5 高かった(p<0.01).日本の急性期病院においても,SU の特徴を満たしていることは ADL の改善 と関連していることが示唆された.

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に認識されているが,エビデンスとして質が高 く,多くの報告がされているのは,欧州を中心と した SU のほうであり,SCU の効果に関する報告 は少ない6).また,米国の急性期病院の平均在院 日数 5.4 日に比べ,わが国の急性期病院での在院 日数は 17.9 日7)であり,急性期病院での在院日数 の長いわが国では,リハビリテーションの要素が より重要と思われる.  一方,わが国においても 2006 年 4 月の診療報 酬改定で「脳卒中ケアユニット」が新設されたが, その施設基準では必要とされる器械・器具からみ て,米国の SCU に近く,SU の特徴とされる多職 種連携によるリハビリテーションアプローチは必 要基準とされていない.海外では SU の有効性が 明らかにされているものの,病院の機能・形態や 在院日数の違いから必ずしも日本において有効で あるとは限らない.  そこで,本研究では,わが国において SU の特 徴を満たしている病院ほど,脳卒中患者の日常生 活動作(activities of daily living;ADL)の改善 に有効か否かを多施設比較研究にて検討すること を目的とした.

対象・方法

 リハビリテーション患者データバンク8)[厚生 労働科学研究費補助金 H19—長寿—一般—028,(リ ハビリテーション DB)]の脳卒中リハビリテー ション患者データを用いた.2005 年 4 月~2011 年 1 月までにリハビリテーション DB に登録した 病院のうち,一般病棟の症例数が 20 例以下の病 院は対象から除外し,9 病院(患者数 3,916 名) を対象に脳卒中病棟指数(SU Index;SUI)を求 めた.  SUIは,SUとしての特徴を満たしている程度を 表す指数で,本研究において開発したものであ る.海外の SU が備える 6 つの特徴6)を参考に, リハビリテーション DB の調査項目から「リハビ リテーション専門医のかかわった割合」,「カン ファレンスを行っている割合」 「理学療法士(phys-ical therapist;PT),作業療法士(occupational therapist;OT),言語聴覚士(speech therapist; ST),医療ソーシャルワーカー(medical social worker;MSW)のすべてが関与している割合」な ど SU の特徴に見合う 7 項目を抽出し作成した(表 1).対象である 9 病院の SUI に用いた 7 項目それ 表 1 海外 SU の特徴 6 項目と SUI の 7 項目の対応 海外の SU 病棟における 6 の特徴 海外の SU の特徴から試作したSU 得点の 7 項目 平均値 基準値 ① 多職種連携に基づく系統的なチームアプローチ ① PT・OT・ST・MSW のすべてが関与している割合 35.6% (37.2%)中央値 以上に 1 点 ② 多職種連携の担保(カンファレンスやミーティングの整備) ② カンファレンスを行っている割合(定期+定期随時) 85.3% (93.5%)中央値 以上に 1 点 ③ 脳卒中を専門に扱うスタッフによって構成される ③ 月間症例数 27.7 名 (20.0 名)中央値 以上に 1 点 ④ リハビリテーション専門医のかかわった割合 (主治医+コンサルタント医) 32.5% (31.8%)中央値 以上に 1 点 ④ 早期管理と早期からの安静解除 ⑤ 発症から 7 日以内にリハビリテーションを開始した患者の割合 78.6% (89.1%)中央値 以上に 1 点 ⑤ 患者,家族(介護者)のリハビリテーションへの参加 ⑥ 自主訓練を行っている割合 19.1% (21.0%)中央値 以上に 1 点 ⑥ 標準化された評価と系統的観察と看護師のリハビリテーションへのかかわり ⑦ 病棟スタッフ訓練を行っている割合 11.1% (2.63%)中央値 以上に 1 点 PT;physical therapist(理学療法士), OT;occupatinal therapist(作業療法士), ST;speech therapist(言語聴覚 士), MSW;medical social worker(医療ソーシャルワーカー), SU;stroke unit, SUI;Stroke Unit Index.

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ぞれにつき中央値を求め,中央値以上の値を示す 病院に 1 点を与え,7 項目の合計から SUI を求め た(表 2).SUI は点数が高いほど SU としての特 徴を備えていることを意味する.  次に,2005 年 4 月~2011 年 1 月までに分析対 象とした 9 病院から退院しリハビリテーション DB に登録された 9,031 名のうち,以下の選択基 準を満たした 2,920 名を分析対象とした.データ の選択基準は,「在院日数 7 日以上 60 日以下」, 「発症から入院までの日数 7 日以内」,「退院時 ADL が入院時よりも悪化していない[退院時機能 的自立度評価表(Functional Independence Mea-sure;FIM)―入院時 FIM が 0 以上]」の 3 項目 とした(図 1).以下にデータ除外基準の理由につ いて述べる.  「在院日数 7 日以上 60 日以下」としたのは,あ まり早い時期に退院したものは,極重度で死亡し たもの,特別な理由ですぐに転院する場合などリ ハビリテーション以外の要因が大きいと考えられ るからである.また,在院日数が長期化するもの は,合併症などの治療に時間がかかってしまった 場合などが考えられる.これらは特殊な状況で外 れ値となる可能性が高くなるため,対象から除外 した.  「発症から入院までの日数 7 日以内」としたの は,発症から入院までにあまりに時間がたってい るものには,軽度であったものや,転院してきた ものなど,やはり例外的なものが多く含まれるた め対象から除外した.  さらに,「退院時 FIM―入院時 FIM が 0 以上」, つまり,入院時よりも ADL が低下したものは, 合併症や脳卒中の再発などが原因として考えられ る.これらも特殊な状況を多く含むと考えられた ため,対象から除外した.  症例数が可能な限り均等になるよう 3 群(高 群:6 点,中群:4 点,低群:3—1 点)に分けた (表 2).6 点の病院が 3 病院で患者数 1,492 名, 5 点の病院はなく,4 点の病院が 2 病院で患者数 964 名,3 点の病院が 2 病院で患者数 387 名,2 点の病院が 1 病院で患者数 36 名,1 点の病院が 1 病院で患者数 41 名であった.その結果,SUI は 高群 1,492 名,中群 964 名,低群 464 名であっ た(表 3).上記選択基準を満たした 2,920 名の 属性は,平均年齢 73.1±12.5 歳,男性 1,643 名, 女性 1,277 名であった.  解析は,「退院時 FIM」を目的変数,SUI を説明 表 2 病院ごとの SUI と SUI 別の各項目の中央値 病院名 (人)件数 カンファレンスの 割合(%) リハビリテー ション専門医 のかかわった 割合(%) 病棟ス  タッフ訓 練の割合 (%) 急性期で PT・ OT・ST・MSW のすべてが関与し ている割合(%) 月間 最多 症例数 (人) 発症から7日以内 にリハビリテー ションを開始でき た患者の割合(%) 自主訓 練の割 合(%)SUI A 1,248 64.4 39.0 27.7 59.3 51.0 93.9 47.8 6 B 495 93.5 47.3 2.6 54.9 20.0 89.1 1.8 6 C 390 95.6 69.0 19.7 37.2 18.0 89.1 21.0 6 D 969 87.6 0.0 2.3 37.6 54.0 93.2 21.7 4 E 206 100.0 99.5 1.9 24.3 49.0 83.5 34.5 4 F 443 100.0 0.0 0.5 3.6 23.0 89.6 4.1 3 G 22 59.1 31.8 40.9 31.8 4.0 6.7 27.3 3 H 50 100.0 2.0 0.0 38.0 16.0 87.8 0.0 2 I 93 67.7 4.3 4.3 33.3 14.0 74.4 14.0 1 中央値 93.5 31.8 2.6 37.2 20.0 89.1 21.0 標準偏差 16.8 35.2 14.8 16.3 18.5 27.6 16.0 件数の合計 3,916 SUI 別小 計 6 点 2,133 84.5 51.8 16.7 50.5 29.7 90.7 23.6 4 点 1,175 93.8 49.8 2.1 30.9 51.5 88.4 28.1 3 点 465 79.5 15.9 20.7 17.7 13.5 48.1 15.7 2 点 50 100.0 2.0 0.0 38.0 16.0 87.8 0.0 1 点 93 67.7 4.3 4.3 33.3 14.0 74.4 14.0

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変数とし,先行研究で退院時 ADL と関連が報告

されている 8 因子〔脳卒中の既往9,10),1 日当た

りの訓練単位数10),年齢9—11),入院時 National

Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)10,11)

発症前 modified Rankin Scale(mRS)10,11),入院

時 motor FIM9—11),入院時 cognitive FIM9—11),脳

卒中の病型分類9—11)〕を調整変数として,重回帰

分析(強制投入法)を行った.各項目間の多重共 線性については,最大 variance inflation factor は 4.2 と,10 以下であり問題がないことを確認し た.統計ソフトは SPSS16.0J を用いて,有意水準 は 5%未満とした.なお,本研究に用いたデータ は匿名化処理をし,個人情報を含まないデータで ある.

結 果

 係数をみると,SUI が高い病院の患者ほど,年 齢が高く,脳卒中の既往が多く,発症前 mRS が 重度で,入院時 motor FIM も入院時 cognitive

FIM も低く,1 日当たりの単位数が多く,脳卒中 の病型分類が脳梗塞の者が多かった.

 退院時 FIM を目的変数とした重回帰分析の結 果 で は, 年 齢 が 高 く, 発 症 前 mRS や 入 院 時 NIHSS が重度なほど退院時 FIM は低く,入院時 motor FIM,入院時 cognitive FIM,SUI が高いほ ど退院時 FIM が高くなる係数が得られた(表 4). (調整済み R2=0.753,p<0.01).これらの変数 が同等のとき,SUI の特徴をあまり満たさない病 院(低群,SUI 1—3 点)で治療するのに比べ,SUI の特徴を多く満たす病院(高群,SUI 6 点)で治 療することで退院時 FIM が 8.49(SUI 高群の非 標準化係数)改善すると解釈できる(表 4).ま た,SUI 高群の標準化係数は「1 日当たりの訓練 量が 6 単位以上」のそれよりも高かった(表 4).

考 察

 本研究では,多施設参加データベースを用い て,SUI と退院時 FIM との関連を検討した.その 図 1 データ選択基準

ADL;activities of daily living, FIM:Functional Independence Measure. 全体 N=9,031 一般病棟 N=4,666 登録症例数20例以上で7変数に欠損のない病院 N=3,916 在院日数:7日以上60日以下 N=3,374 発症から入院までの日数:1日以上7日以下 N=3,212 ADL:維持,改善 N=3,026 退院時合計FIM入力 N=2,920 亜急性期病棟:N=178,回復期病棟:N=1,956, 療養病棟:N=8,欠損値:N=2,223 FIM欠損値:N=105 ADL悪化:N=106 病棟スタッフ訓練欠損 病院名J:N=49,病院名K: N=25,病院名L:N=623,/症例数20例未満 病院名 M:N=3,病院名N:N=3,病院名O:N=14,病院名 P:N=20,病院名Q:N=1,病院名R:N=1,病院名 S:N=2,病院名T:N=3,病院名U:N=6 在院日数6日以下:N=183,在院日数61日 以上:N=336,欠損値:N=23 発症から入院までの日数1日未満:N=40, 発症から入院までの日数8日以上:N=117, 欠損値:N=5

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表 3 対象者の属性 脳卒中患者 2,920 名 平均年齢 73.1±12.5 歳 平均在院日数 25.7±13.5 日 平均入院時 FIM 合計 56.3±33.0 点 平均退院時 FIM 合計 84.8±37.5 点 (平均値±標準偏差) 性別 男 1,643名1,277名 56.3%43.7% 年齢 5 区分 55 歳未満 225 7.7% 55—64 歳 458 15.7% 65—74 歳 750 25.7% 75—84 歳 974 33.4% 85 歳以上 510 17.5% 欠損値 3 0.1% 脳卒中の既往分類 脳卒中の既往なし 1,852 63.4% 脳卒中の既往 1 回 586 20.1% 脳卒中の既往 2 回以上 263 9.0% 脳卒中の既往不明 199 6.8% 欠損値 20 0.7% 発病前 mRS 発病前 mRS0(症状なし) 1,695 58.0% 発病前 mRS1(日常生活可) 445 15.2% 発病前 mRS2(軽度) 261 8.9% 発病前 mRS3(中等度) 231 7.9% 発病前 mRS4(やや高度) 196 6.7% 発病前 mRS5(高度) 69 2.4% 欠損値 23 0.8% 入院時 motor FIM4 群 14 点未満 1,021 35.0% 14—32 点 632 21.6% 33—58 点 610 20.9% 59 点以上 608 20.8% 欠損値 49 1.7% 入院時 cognitive FIM4 群 5—11 点 780 26.7% 12—22 点 581 19.9% 23—32 点 717 24.6% 33—35 点 810 27.7% 欠損値 32 1.1% 1 日当たりの単位数 3 単位未満 877 30.3% 3 単位以上—6 単位未満 672 23.0% 6 単位以上 591 20.2% 欠損値 780 26.7% 確定脳卒中病型大分類 脳梗塞 1,939 66.4% 脳出血 740 25.3% くも膜下出血 97 3.3% 欠損値 144 4.9% 入院時 NIHSS 4 群 入院時 NIHSS 3 点未満 938 32.1% 入院時 NIHSS 3 点以上—6 点未満 568 19.5% 入院時 NIHSS 6 点以上—13 点未満 719 24.6% 入院時 NIHSS 13 点以上 674 23.1% 欠損値 21 0.7%

SUI SUI 低群(1—3 点)SUI 中群(4 点) 464964 15.9%33.0% SUI 高群(6 点) 1,492 51.1% mRS:modified Rankin Scale, NIHSS:National Institute of Health Stroke Scale, FIM:Functional Independence Measure, SUI:Stroke Unit Index.

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結果,退院時 FIM に関連する個人因子を調整して も,SUI が高い病院ほど退院時 FIM が高くなる関 連性が認められた. 1.SU としての特徴を備えるほど退院時 FIM が 高くなる理由 1)先行研究との比較  重回帰分析で得られた,年齢が高く,発症前 mRS,入院時 NIHSS が重度なほど退院時 FIM は 低く,入院時 motor FIM,入院時 cognitive FIM

が高いほど退院時 ADL が高くなるという関連は 先行研究と一致した結果であった9—11)  海外において,SU での治療は一般的な病棟で の治療よりも介護が必要な症例の割合や死亡率, 施設入所率などの長期予後を改善することが,2 本のシステマティック・レビューによって示され ている12,13).本研究で検討した ADL に関しても, SU での治療は一般的な病棟での治療に比べ有意 に改善することが 3 本の RCT で報告されてい 表 4 退院時 FIM を目的変数とする重回帰分析 非標準化係数 B 標準化係数ベータ 有意確率 定数 0.00 年齢 54 歳未満(reference) 55—64 歳 -4.71 -0.05 0.01 65—74 歳 -9.42 -0.11 <0.01 75—84 歳 -15.84 -0.20 <0.01 85 歳以上 -20.59 -0.21 <0.01 脳卒中の既往 なし(reference) 1 回 -0.42 0.00 0.71 2 回以上 0.15 0.00 0.93 不明 -0.97 -0.01 0.58 発病前 mRS 0(症状なし)(reference) 1(日常生活可) -5.89 -0.06 <0.01 2(軽度) -10.23 -0.08 <0.01 3(中等度) -15.97 -0.12 <0.01 4(やや高度) -20.40 -0.14 <0.01 5(高度) -25.29 -0.11 <0.01 入院時 motorFIM 14 点未満(reference) 14—32 点 9.01 0.10 <0.01 33—58 点 19.06 0.20 <0.01 59 点以上 25.63 0.25 <0.01 入院時 cognitiveFIM 5—11 点(reference) 12—22 点 12.47 0.14 <0.01 23—32 点 21.97 0.26 <0.01 33—35 点 28.07 0.31 <0.01 1 日当たりの単位数 3 単位未満(reference)3 単位以上—6 単位未満 4.00 0.05 <0.01 6 単位以上 4.71 0.06 <0.01 脳梗塞(reference) 脳出血 -1.10 -0.01 0.28 くも膜下出血 18.55 0.09 <0.01 入院時 NIHSS 3 点未満(reference) 3 点以上—6 点未満 -1.58 -0.02 0.23 6 点以上—13 点未満 -8.30 -0.10 <0.01 13 点以上 -25.33 -0.30 <0.01 SUI 低群(1—3 点)(reference)中群(4 点) 0.04 0.00 0.98 高群(6 点) 8.49 0.11 <0.01

従属変数:退院時FIM合計,調整済みR2 0.753.mRS:modified Rankin Scale, NIHSS:National Institute of Health

(7)

る14—16).Evans ら15)は発症から 3 か月,6 か月後

の Barthel Index において,SU での治療は一般的 な病棟に比べそれぞれ平均 9%,15%上回ってい

たと報告し,Kalra16)は,退院時(平均在院日数

SU:6 週,一般病棟:20 週)の Barthel Index に おいて,SU での治療は一般的な病棟に比べ平均 3%上回っていたと報告している.これらの報告 の 3 か月以内の 3~9%と比べると,われわれの退 院時 FIM(平均在院日数 23.2 日)で 8.49/126= 6.7%(95%信頼区間:4.6~8.8)改善するとい う結果は同等だった.  わが国における SU としての効果をみたものと して,峰松17)の報告がある.峰松は,全国 117 施 設,2,585 例を対象とした前向き研究から,SU で の治療(急性期集中治療型,急性期+安定期リハ ビリテーション型)はそのほかの病棟に比べ 3 か 月目の転帰良好群(mRS 0—2)が 1.29 倍多かっ たとしている.しかし,SU 病棟体制の特徴の 1 つ であるリハビリテーションにかかわる特徴(⑥「専 門職に加え,患者,家族(介護者)のリハビリテー ションへの参加」,⑦「看護師のリハビリテーショ ンへのかかわり」)が峰松の研究において考慮され ているのか否かは明らかではない.  今回対象とした 9 病院はいずれもリハビリテー ションに取り組んでいる病院である.SUI が高い 病院ほど退院時 FIM が高くなる関連がみられた ことは,リハビリテーションを提供している病院 においても SU としての特徴をより備えるように することで,たとえ訓練量が同じでも退院時 FIM を高くできる可能性を意味する.今回対象となっ た 9 病院中,わが国の診療報酬上の「脳卒中ケア ユニット」を満たす施設は,SUI 高群の 1 施設の みであった.「脳卒中ケアユニット」でなくとも脳 卒中を専門に扱う多職種連携によるリハビリテー ションアプローチを提供する SU での治療は,わ が国の急性期病院においても有効であることが示 唆された.  わが国の診療報酬上の「脳卒中ケアユニット」 の施設基準である「脳卒中ケアユニット入院医療 管理を行うにつき必要な器械・器具を有している こと」は,米国の SCU に近い特徴を備えており, 整備には費用がかかる.一方,多職種連携による リハビリテーションアプローチとしての SU にか かわる要件は少ない.SCU の効果に関するエビデ ンスは少ないのに対し,エビデンスとして質が高 く,多くの報告がされているのは,欧州を中心と した SU のほうである.そのため,わが国の脳卒 中医療体制においても,SCU と同等かそれ以上 に,SU の普及が望まれ,診療報酬上の要件の見 直しは検討に値すると思われる. 2)SUI が高いほど退院時 FIM が高くなる機序  SU は,「脳卒中を専門に扱う意欲に満ちた多職 種連携によるリハビリテーションアプローチを提 供する組織形態」3)であると定義されている.そこ で「リハビリテーション専門医のかかわった割合」, 「カンファレンスを行っている割合」,「PT・OT・ ST・MSW のすべてが関与している割合」など表 1 で示した特徴をもつ病院で SUI が高くなるよう にした.急性期病院において,多職種で積極的に リハビリテーションを行うことは,早期から医 師,看護師によるリスク管理の下,早期に離床さ せ PT,OT などがリハビリテーションを行うこと で,肺炎,深部静脈血栓などの合併症を予防する と期待できる14).脳卒中患者の抱える病態や障害 は多岐にわたるので,かかわる多職種の多面的な 視点から最もよいケアを総合的に提供されること も重要である.  Kaste18)は,患者の状態の変化に応じて,各患 者におけるリハビリテーションの進行状況が分析 され,リハビリテーションプログラムを調整され ている脳卒中チームの毎週のミーティングは,結 果の違いに貢献する重要な要因だとしている.ま た,SU と一般病棟との間の治療成績の差は,チー ム・マネジメントの質の差19)と考えられ,「リハ ビリテーション専門医のかかわった割合」,「カン ファレンスを行っている割合」,「PT・OT・ST・ MSW のすべてが関与している割合」などがその 要素を反映して,ADL を高めたと考えられる. 2.SUI が高いと訓練量増と同等以上の効果  表 4 に示したように,SUI 高群の標準化係数は 1 日当たりの訓練量が「6 単位以上」群のそれよ りも大きい.今回の結果に基づけば,SUI 高群で は,SU の特徴が少ない 1~3 点の病院で訓練量を 3 単位以下から 6 単位以上に増やす以上の効果が あると解釈できる.Indredavik ら9)は,SU と一般 的な病棟を比較した結果,理学療法および作業療 法の訓練量に差がなかったにもかかわらず,ADL や自宅退院率が改善した理由として,看護師のリ

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ハビリテーションへのかかわりの重要性を指摘し ている.例えば,SU の特徴を多くもつ病院では, PT,OT,ST による訓練量が同じでも自主訓練や 看護師など病棟スタッフによる訓練によって訓練 量が補われていたり,上述したように患者の状態 に応じた適切な訓練内容にするなど,効率的な医 療やケアが提供された可能性が考えられる. 3.SUI 各項目の選択理由と限界  本研究では,海外の SU が備える 6 つの特徴6) を参考に,リハビリテーション DB の調査項目か ら SUI として 7 項目を選択した(表 1).以下に その理由と限界について述べる.  「多職種連携に基づく系統的なチームアプロー チ」に対応する項目として,各病院における「PT・ OT・ST・MSW のすべてが関与している患者の割 合」とした.しかし,多職種関与だけでは多職種 の連携のよさを必ずしも意味していない.患者像 によってはかかわる職種が限られる場合もあるが, 今回は PT・OT・ST・MSW のすべてが関与して いることを,多職種の前提条件として考えた.今 後は連携の程度を評価する尺度の開発が望まれる.  SU の特徴とされている「多職種連携の担保(少 なくとも週 1 回以上のカンファレンスやミーティ ング,専門性を高めるための教育,トレーニング などシステムウェアの整備)」に対応する項目とし て,各病院における「定期的にカンファレンスを 行った患者の割合」を用いた.専門性を高めるた めの教育,トレーニングなどシステムウェアの整 備に関しては,リハビリテーション DB での調査 項目に該当すると思われる項目はなかった.その ため,スタッフへの教育機会までは今回は考慮し ていない.  「脳卒中を専門に扱うスタッフによって構成さ れる」に対応する項目として,症例を多数扱って いる病院であれば,そのスタッフは脳卒中治療に ついての専門性が高いと考え各病院の「年間症例 数」,および「リハビリテーション専門医のかか わった割合」を用いた.  「早期管理(早期からの安静解除,尿道カテーテ ルの回避や高血圧,低酸素血症,感染症疑いへの 対応)」に対応する項目を,各病院における「発症 から 7 日以内にリハビリテーションを開始した患 者の割合」の高さで判断した.尿道カテーテルの 回避や高血圧,低酸素血症,感染症疑いへの対応 に関しては,リハビリテーション DB の項目には 該当する項目はなかった.  「専門職に加え,患者,家族(介護者)のリハビ リテーションへの参加」に対応する項目として, 各病院における「自主訓練を行っている割合」を 用いた.なぜなら,家族(介護者)のリハビリテー ションへの参加に関しては,リハビリテーション DB での調査項目に,ほかに適当だと思われる項 目はなかったからである.  「看護師のリハビリテーションへのかかわり」に 対応する項目を,各病院における「病棟スタッフ 訓練を行っている割合」とした.看護師のリハビ リテーションへのかかわりで最もよく行われるも のは,病棟での ADL 介助や訓練を患者に促すこ とだからである.リハビリテーション DB の病棟 スタッフとは看護師だけを示すとは限らないが, 看護師が主であるとみなして,「病棟スタッフ訓 練を行っている割合」を「看護師のリハビリテー ションへの関わり」に対応する項目とした.「標準 化された評価と系統的観察」に対応する項目はリ ハビリテーション DB にはなかった.今後は,ク リニカルパスの有無などを問う項目が望まれる.  今回用いた SUI には,上記のような限界がある が,それでも訓練量を増やすのと同等以上の ADL 向上との関連を捉えられた.今後,先行研究で SU の特徴とされているものをより反映した SUI を開 発し病院評価などに用いるためには,リハビリ テーション DB に,「各病院単位でのリハビリテー ションを含めた標準化された治療プロトコルの有 無」,「各病院単位でのスタッフ教育歴」,「家族の 面会回数」などの調査項目を今後追加することが 望まれる.また,本研究では急性期病院における SUI と退院時 FIM の検討を行ったが,回復期リハ ビリテーション病棟退院時や 6 か月後などより長 期の転帰についても追加の検討が望まれる. 4.本研究の意義と限界  本研究の意義は,脳卒中を専門に扱い多職種連 携によりリハビリテーションアプローチをする SU としての特徴を備えている病院ほど,多くの 要因を調整後に退院時 FIM が高いという結果を 得たことである.  一方,本研究の限界として,以下の 4 点が挙げ られる.1 つは,今回の結果は,リハビリテーショ ン DB に症例登録している急性期病院を対象とし

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ているので,今回の知見を一般化することには注 意が必要である.2 つ目に,今回用いた SUI はリ ハビリテーション DB の登録項目のなかから海外 の SU の特徴に見合う項目を選んだので,SU の特 徴をすべて捉えていない.今後さらにリハビリ テーション DB 登録項目が増えれば再検討する余 地がある.3 つ目に,今回,アウトカムを退院時 FIM としたが,先行研究にならい,アウトカムと して死亡率や在院日数に関しても追加の分析が望 まれる.ただ,急性期病院での在院日数は,患者 の機能的なレベル以外に病院の地域性(回復期リ ハビリテーション病棟の平均待機期間)や退院方 針(早く転院させるか自宅退院できそうなものは 長く入院させるか)など多くの要因の影響を受け ている可能性があり,それらを考慮した解析が必 要である.また,死亡率に関しては,日本の回復 期リハビリテーション病棟は急性期病院と別の医 療機関であることも多いため,転院後の死亡率も 把握できなければ,長期生存率を分析することは 困難である.4 つ目に,本研究で用いた SUI は各 条件ともその条件を満たすと 1 点を与えており, 7 項目の重み(関連の強さ)は同じとみなしてい る.SUI の 7 項目のうちでどの項目が強く退院時 FIM に影響を及ぼしているか,またそれらの項目 に相乗効果があるのか,等間隔性などの尺度特性 や信頼性,妥当性についての検討が望まれる.

結 語

 本研究では,SU としての特徴をより多くもつ ことが,急性期脳卒中患者の ADL 改善に有効か 否かを検討するために,多施設データを用いて検 討した.その結果,訓練量など退院時 FIM に関連 する因子を調整しても,SUI が高い病院の患者ほ ど退院時 FIM が高いという有意な関連が認めら れた.海外において明らかになっている SU での 治療効果が,わが国においても示唆された.早期 からの多職種による組織的なリハビリテーション のかかわりが ADL を高めたと考えられ,今後日 本でも SU の特徴をより多く備えた病院の普及・ 整備が期待される. 文献 1) 厚生労働省:平成 20 年患者調査:脳血管疾患の総患 者数. http://www.Mhlw.Go.jp/toukei/saikin/hw/hoken/ kiso/21.html(アクセス日 2011 年 7 月 30 日) 2) 長谷川泰弘:Stroke Unit の効果―欧州におけるエビ デンス.PT ジャーナル 42:467—472,2008 3) Stroke Unit Trialists’ Collaboration:Collaborative

systematic review of the randomized trials of orga-nized inpatient(stroke unit)care after stroke. BMJ

314:1151—1159, 1997

4) 加藤貴行:脳血管障害のリハビリテーション. Geron-tology 13:25—30,2001

5) 上野友之,他:Stroke Unit と Stroke Care Unit.

medicina 43:206—210,2006

6) 永谷元基,他:Stroke unit をめぐるエビデンス.総 合リハ 42:199—204,2014

7) OECD Health Data 2009 http://stats.oecd.org/ index.aspx?DateSetCode=HEALTH%20STAT#(ア クセス日 2013 年 10 月 6 日)

8) リハビリテーション患者データバンク.

http://rehadb.umin.jp/(アクセス日2011年8月20日) 9) Indredavik B, et al:Treatment in a combined acute and rehabilitation stroke unit:which aspects are most important? Stroke 30:917—923, 1999 10) Jongbloed L:Prediction of function after stroke:a

critical review. Stroke 17:765—776, 1986

11) Kwakkel G, et al Predicting disability in stroke:a critical review of the literature. Age Ageing 25: 479—489, 1996

12) Meijer R, et al:Prognostic factors for ambulation and activities of daily living in the subacute phase after stroke:a systematic review of the literature.

Clin Rehabil 17:119—129, 2003

13) Stroke Unit Trialists’ Collaboration:Organised inpatient(stroke unit)care for stroke. Cochrane Database of Systematic Reviews 3 2001, issue 3. article No. CD000197. DOI:10.1002/14651858. CD000197

14) Langhorne P, et al:Do stroke units save lives?

Lancet 342:395—398, 1993

15) Evans A, et al:Randomized controlled study of stroke unit care versus stroke team care in differ-ent stroke subtyoes. Stroke 33:449—455, 2002 16) Kalra L:The influence of stroke unit rehabilitation

on functional recovery from stroke. Stroke 25: 821—825, 1994 17) 峰松一夫:平成 18 年度厚生労働科学研究費補助金循 環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業.脳卒中地 域医療におけるインディケーターの選定と監査シス テム開発に関する研究.平成 18 年度総括・分担研究 報告書.国立循環器病センター,2007

18) Kaste M:Where and should elderly stroke patients be treated? A randomized trial. Stroke 26:249— 253, 1995

19) 近藤克則:医療・福祉マネジメント―福祉社会開発に 向けて.p87,ミネルヴァ書房,2008.

表 3 対象者の属性 脳卒中患者 2,920 名 平均年齢 73.1±12.5 歳 平均在院日数 25.7±13.5 日 平均入院時 FIM 合計 56.3±33.0 点 平均退院時 FIM 合計 84.8±37.5 点 (平均値±標準偏差) 性別 男 女 1,643名1,277名 56.3%43.7% 年齢 5 区分 55 歳未満 225 7.7%55—64 歳458 15.7%65—74 歳75025.7% 75—84 歳 974 33.4% 85 歳以上 510 17.5% 欠損値 3 0.

参照

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