• 検索結果がありません。

退学 除籍者数を少なくする取り組み ( 注文部科学省の調査 ) によると 2014 年度の国公私立大学 公私立短期大学 高等専門学校の中途退学者の総数は 全学生数 2,991,573 人のうち 2.7% にあたる79,311 人であった 中途退学の最大の要因は 経済的理由 (20.4%) で 転学

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "退学 除籍者数を少なくする取り組み ( 注文部科学省の調査 ) によると 2014 年度の国公私立大学 公私立短期大学 高等専門学校の中途退学者の総数は 全学生数 2,991,573 人のうち 2.7% にあたる79,311 人であった 中途退学の最大の要因は 経済的理由 (20.4%) で 転学"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

学業、進路・対人関係、抑鬱うつや不安、就職活動など学 生のさまざまな悩みに対応し、また悩みを1人で抱え込 んだまま退学や除籍に至るのを防ぐために、大学ではさ まざまな相談体制を整えて、学生を支援している。例え ば、学生相談室や学生相談センターを設置してカウンセ ラーや専門の教職員が対応したり、学級担任やゼミや研 究室の指導教員など学生を担当する教員を決めて学生の 出席状況や成績等を把握し、学生に働きかけたりしてい る。さらに、友人関係、生活状況、経済的な問題など、 学生のさまざまな相談に対応する体制を整えている。 文部科学省の調査(注)によると、2014年度の国公私 立大学、公私立短期大学、高等専門学校の中途退学者 の総数は、全学生数2,991,573人のうち、2.7%にあた る79,311人であった。中途退学の最大の要因は「経済 的理由」(20.4%)で、「転学」(15.4%)、「学業不振」 (14.5%)、「就職」(13.4%)と続く。 一般的に、学生のキャリア形成にとって退学や除籍は マイナスとなることが懸念され、大学にとっても好まし いことではない。そこで各大学では、大学教育や学生支 援の充実を図り、退学者数・除籍者数を減少させるため のさまざまな取り組みを行っている。 ■学生相談の具体例 ■山形大学工学部  学生個人ごとに、修学面・生活面にか かわらずさまざまな相談に乗り、責任を持って指導・助言を 行うアドバイザー教員を置いて対応している。また、工学部 学生相談室を置き、専門のカウンセラー(臨床心理士)を常 勤で配置して、学生生活の悩みや問題に対して相談に応じて いる。 ■ 名古屋市立大学経済学部  1年次から6〜7人のグルー プごとに担当教員を置き、原則的に毎月1回グループで集ま るかメールによって学生と連絡をとり、状況把握に努めてい る。特に学年必修科目の単位未取得者に対しては、指導教員 が面談を行い、学習についてのアドバイス等を行っている。 3・4年生については、必修の演習時間に学生とのコミュニ ケーションを図り、問題があれば相談に乗ることで、退学等 を回避している。 早稲田大学教育学部  WEB上に「学生生活なんでも相 談窓口」を設置し、学生生活・成績等で悩みを抱える学生が 気軽に相談できるようにしている。相談内容によっては、教 員による面談も行う。また、2013年度からは、「5月病につ いて」「発達障害について」「人間関係について」などをテー マとした「学生相談レクチャー(参加任意)」を開催している。 ◆キーワード……… P.60 ◆「ひらく 日本の大学」調査より ………… P.63 ◆大学選びのポイント……… P.65 ◆大学の取り組み 京都大学工学部 ……… P.66 長崎国際大学 ……… P.68 日本大学生産工学部 ……… P.70

学生相談

退学・除籍者数を少なくする取り組み

キーワード

クラス担任制度は、高等学校までと同じく大学入学時 に学生をクラス(クラスの単位は初年次ゼミ、語学、フ

クラス担任制度/

アカデミック・アドバイザー

(2)

Part.5

退学・除籍者数を少なくする取り組み レッシュマン・セミナー、学科・専攻単位など)に分け、 クラス担任として教員を配置すること。履修指導や学修 面の相談など学修支援に限らず、大学生活への適応など、 幅広い相談に応じる。アカデミック・アドバイザーは主 として、履修相談や成績相談など学修面の支援を行って いる。 初年次教育とは、大学での学び方を身につけることな どを目的として、主に大学1年次に行う教育のこと。例 えば、高校で学ばなかった科目について学ぶ、大学内で の人間関係の構築を図る、レポートの書き方や文献の探 し方など大学での学び方を伝える、大学で学ぶために必 要な思考方法を身につけさせるといった取り組みである。 退学者・除籍者数を減少させるために、初年次教育を核 にした取り組みを行ったり、1年次にゼミや演習といっ た少人数の授業を配置し、大学教育・大学生活への適応 を支援している。

初年次教育やゼミ・演習形式の

授業での支援

■クラス担任制度/アカデミック・アドバイザーの  具体例 ■大阪大学経済学部  学部1年生を6つのクラスに分け、 それぞれクラス担任を配置することで学生の履修状況の把 握に努め、学部2年生以降については、少人数の演習を必修 化し演習担当教員が学生の修学状況を把握して、学生に対し て適切なサポートを行う。また、学生相談室員を置き、学生 が抱える修学上の悩みなどを相談できる体制を取っている。 桜美林大学ビジネスマネジメント学群  大学として制度 化しているアカデミックアドバイザー制度を、学群としてさ らに発展させて、学生が抱える諸問題にきめ細かく対応して いる。アカデミックアドバイザー制度は、学生の大学入学時 点で18名程度のクラス分けを行い、そのクラスを基礎演習 クラスとしてクラス担当教員が授業を担当すると同時に、ア ドバイザーとして学生の諸問題に対応する制度。アドバイ ザーは学生が卒業するまで諸問題の解決や支援・指導を行 う。本学群では2年次秋学期から専攻演習(ゼミ)が始まる が、この時点でゼミの担当教員がアドバイザー機能を引き継 ぐ態勢を取る。これによって学生は、ゼミの教員のもとで就 職や進路、大学生活も含めたきめ細かい指導を受けられるよ うになっている。 ■ 関西外国語大学  クラスアドバイザー(クラス担任)に よる懇談会を年3回実施している。懇談会では、学生個々に 大学生活全般、学習面での状況を確認し、助言等を行う。ま た、各学期の早い段階で全科目の出席状況を調査し、出席不 良者に対しクラスアドバイザーとの面談指導を行い、学習意 欲の確認や大学生活全般、学習面について助言等を行ってい る。さらに、春学期終了時点で、成績不良者に対しクラスア ドバイザーとの面談指導を行い、上記と同様の助言等を行っ ている。 ■初年次教育やゼミ・演習形式の授業での  支援の具体例 岩手大学人文社会科学部  初年次教育として、1年次前 期に少人数(1クラス15名以下)の基礎ゼミナールを実施し、 学業や大学生活への転換・接続を行いやすくしている。 ■北海学園大学経営学部  初年次教育として「大学入門」 を開講。入学後、スムーズに学生生活が送ることができるよ うに「大学で必要な学修技術の獲得」を中心として、キャリ ア教育の考え方についての説明や人間関係を作る機会の支援 を行うことで初年次からの退学・除籍を少なくするよう取り 組んでいる。 武蔵大学社会学部  4年間、学生が、必ずゼミ(あるい はゼミ相当の実習)に所属するカリキュラムを設定し、学部 への帰属の基盤となるような授業を常に履修できるように している。特に、初年次教育においては、15人程度のゼミ を必修として、教員が共同で作成・出版した本をテキストと して使用しながら、「授業の受け方」「ノートの取り方」「図 書館の使い方」「レポートの書き方」「ディスカッションの仕 方」など、大学の授業や制度に不慣れな学生が、スムーズに 大学生活に定着できるように指導している。また、指導教授 制をとっており、すべての学生に専任教員の指導教授を設定 している。さらに、3・4年のゼミは、基本的にすべて専任 教員が担当し、専門的な研究の指導を行うと同時に、日常生 活や進路などについても、必要に応じて個別の相談に応じや すい体制を整えている。 ■立命館大学国際関係学部  高等教育への移行を円滑に するため、初年次に論文の書き方といった、大学の学びへ の適応を目的に、基礎演習(日本語専攻)、Introductory  Seminar(英語基準専攻)を実施。当該セミナー内で面談等 を実施するほか、上級生によるサポートも実施し、初年次段 階での課題に対応し、大学・学部へのエンゲージメントを高 められるよう、取り組みを行っている。出席状況や学習状況 が不調な学生に対しては、小規模ゼミ・クラス等を通じて、 情報を収集、共有し、特別に面談を実施し、学習を中心とし た諸課題について課題を明らかにした上で、必要とされるサ ポート(学生オフィスのカウンセラーへの紹介、学習方法等 についてのアドバイス等)を行っている。 学生の授業の出欠状況や取得単位の不足、経済的困窮

情報の共有/学部・部門間の連携

(3)

近年、学生の成績を保護者に通知して学生の学修状況 を共有する大学・学部が増加している。また、成績不振 や留年の可能性がある学生・留年生の保護者にその旨を 連絡して必要に応じて面談を行い、連携して早期対応を 心掛ける大学や、保護者懇談会を開催して学修や就職状 況等を説明したり、希望する保護者と面談を行う大学も ある。 学士課程(昼間部)の学生のうち、2012年度に日本学 生支援機構や大学等の奨学金を受給した学生は53%に上 った。また、経済的理由で除籍を余儀なくされる学生も いる。そこで大学では、経済的に困窮する学生を対象と した奨学金や、授業料減免などの制度を設けている。し かし、貸与型は卒業後の返済が負担になることから、給 付型の拡充が求められている。 ほかに、TA(ティーチング・アシスタント)、SA(ス チューデント・アシスタント)をはじめとし、学内での 業務を学生に行ってもらうことで学生を支援している大 学もある。

保護者との連携・対応

経済的支援

■保護者との連携・対応の具体例 ■島根大学総合理工学部  7月末に、毎年、大学外の施設 で保護者懇談会を実施。そこでは、進路相談(大学院進学や 就職状況)を行うとともに、学生の成績表を使って修得単位 の状況について保護者に報告し、修学に対する保護者からの 支援も依頼している。 ■長崎大学  経済学部では年に3回保護者説明会・保護者 懇談会を実施し、保護者との情報共有、意見交換を行ってい る。特に成績不振や出席不良の学生については保護者との個 別面談を実施している。また、工学部工学科社会環境デザイ ン工学コースでは、保護者に学生の成績状況を報告する際 に、教員との面談を希望するかどうかを調査し、希望する保 護者に対して面談を実施している。 ■國學院大學  毎年教職員が、保護者が組織する「若木育 成会」全国56支部に赴き、大学の近況報告や学生の成績、 就職に関する相談を保護者と行い、学生の修学状況を共有し ている。 ■西南女学院大学  入学式後に保護者とゼミ担当者との顔 合わせを行い、その後の学生生活に関する保護者からの相談 窓口を明確にしている。 ■経済的支援の具体例 ■ 横浜市立大学国際総合科学部  経済的な要因による学生 への対応として、奨学金や授業料減免制度の拡充を行ってい る。2012年度より従来の授業料減免制度に加えて新たな減 免制度(軌道修正型、緊急応急型授業料減免)を実施してい る。 ■高崎健康福祉大学  保健医療学部、健康福祉学部では、 アドバイザーを中心に早期に相談に乗る体制を整備し、経理 課と協力して、延納、分納、奨学金の紹介、納入プランの相談、 ローンの紹介などを行っている。 ■ 日本工業大学  近年、退学の理由として経済的な理由を 挙げる者が増加しているため、学内の奨学金制度を改善し、 学費支弁能力に応じた学費充当型奨学金制度とした(2013 年度)。 ■ 摂南大学理工学部  経済的理由により学費未納で除籍さ れた学生のうち、就学意欲が高い学生に対しては、一定期間 の学費納入の猶予を行い、学費の納入を完了すれば特例措置 により除籍の取り消しを行っている。 ■情報の共有/学部・部門間の連携の具体例 ■東北大学医学部  保健学科では、学生なんでも相談室(学 部独自の相談室)やチューター制度(相談相手となる教員) 等の多様な相談窓口を用意している。また、相談の指導の状 況は厚生委員会に報告することになっており、必要に応じて 組織として情報を共有して教員や事務職員が連携して学生 を支援できる体制を取っている。 駒沢女子大学  担任制度による学生支援の実効性を高め るために、学生の学修習得状況や生活状況等を蓄積するシス テム(スチューデントプロファイル)を学内に構築し、全教 員、関連部署職員が共有して、全学的なサポートを実践して いる。また、各部署のさまざまな活動(奨学金面接、学生相 談室カウンセラーによる面談、健康診断に基づく看護師の指 導等)などから多様な情報を把握し、各部署が連携し、課題 解決に向けた取り組みを行っている。 日本体育大学  クラス担任が担当学生の出欠状況を学内 ポータルサイトにより随時確認できるようにしている。あわ せて、講義担当者も欠席の多い学生を発見した場合は、直ち にクラス担任に報告する。クラス担任は学生に直ちに連絡 し、個人面談を実施し、学習環境や問題点などを抽出して学 生支援センター、学生相談室と連携しながら問題解決を図っ ている。 などさまざまな問題は、一部の教職員が気づいていても、 担当部署が状況を把握していないため、実際の対応につ ながらないことがある。そこで、学級担任、ゼミや研究 室の教員、授業の担当教員、学生課・教務課・就職課の 職員など、部門を越えて教職員が学生の情報を共有する ことで、問題のある学生を早期に発見し、早期に働きか けることによって、退学や除籍防止に努めている。

(4)

Part.5

退学・除籍者数を少なくする取り組み

「ひらく 日本の大学」調査より

退学者・除籍者数を減少させる取り組みは、学生のキ ャリア形成の上でも重要であるが、大学にとっても経 営上、大切な問題である。そのため、「ひらく 日本の大 学」調査では、毎年、1年目と卒業までの退学者・除籍 者数と学生数を聞いている。 毎年、回答大学が変わっているが、ここ3年間の数 値を見ると、1年目の退学率は、2012年度、2013年度、 2014年度はそれぞれ2.0%、1.9%、1.8%となっており、 ほんのわずかではあるが減少傾向にある。卒業までの退 学率は、7.7%、8.1%、8.1%と2013年度に若干高くなり、 2013年度と2014年度は同じ数値となった。 では詳しく調査結果を見てみよう。 1年目での退学率は、先に述べたように全体で 1.8% である。設置者別に見ると、国立大 0.7%、公立大 1.0%、 私立大2.1%であり、規模別に見ると、入学定員 3,000 人 以 上1.3 %、1,000〜2,999人 1.8%、300〜999人 2.3%、 300人未満 2.7% と、入学定員が多いほど1年目の退学 率が低くなっている。一般的に、国公立大、あるいは入 学定員が多い大学の方が、学生の志望順位が高い傾向が あるが、この数値はそういった学生の志向を反映した結 果と言えるだろう。 <図1>は学部系統別に見た1年目の退学率である。 医療系は進学する学生の目的が明確であり、退学率が低 い印象があるが、薬学系は3.4%、歯学系2.5%と全体よ り高い数値になっている。文系では、経済・経営・商学 系2.2%、社会・国際系2.1%が平均よりやや高くなってい る。 <図2>は設置者別・系統別に見た1年目の退学率(注) である。公立大の薬学系で1年目の退学率が高いの

1年目の退学率、卒業年度までの

退学率は例年と変わらず

1年目の退学率は 1.8%

全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育※国公立大のみ 理 工 農 医 歯 薬 保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 1.8% 1.8% 2.1% 1.6% 2.2% 0.4% 1.5% 1.7% 1.1% 0.4% 2.5% 3.4% 2.0% 2.1% 2.1% 1.9% 0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 4.0% 全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育※国公立大のみ 理 工 農 医 歯 薬 保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 0.7% 1.0% 2.1% 0.5% 0.8% 2.0% 0.9% 1.0% 2.2% 0.6% 0.3% 1.7% 0.4% 0.8% 1.1% 2.1% 0.8% 1.3% 2.2% 0.7% 0.3% 1.4% 0.3% 0.6% 0.4% 2.2% 2.5% 1.0% 6.5% 3.6% 1.0% 0.8% 2.4% 0.9% 0.8% 2.2% 0.3% 0.7% 2.2% 0.7% 0.8% 2.1% 0.7% 0.9% 2.3% 0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 4.0% 5.0% 6.0% 7.0% 国立大 公立大 私立大 <図2>1年目の退学率(設置者別・系統別) <図1>1年目の退学率(系統別) (注)設置者別の入学者が100人以下の場合は掲載していない。

(5)

は、医学科への再受験をする学生が多いことが予想され る。今回の調査にご協力いただいた大学の回答を見ると、 私立大の退学率が高い理由として、特に理系については 入学する学生の学力不足や科目選択の問題があるようだ。 基本的に理系の科目については高校での履修や入学時に 一定の学力がないと、大学に入ってからの学修に問題が 生じやすい。大学側も入学前教育、初年次教育、リメデ ィアル教育を行っているが、それでも全員の学生を支援 するのは難しいのが現状である。 卒業までの退学率は全体で8.1%となり、設置者別に見 ると、国立大3.0%、公立大4.0%、私立大9.5%である。規 模別に見ると、入学定員3,000人以上6.1%、1,000〜2,999 人8.3%、300〜999人9.7%、 300人未満9.9%となっており、 入学定員が多いほど卒業までの退学率が低い。 学部系統別に見ると<図3>、1年目の退学率でも高 かった薬学系が10.7%となっているほか、 経済・経営・ 商学系10.2%、工学系9.1%とこの2つも高い。 <図4>は設置者別・系統別のグラフである。国立大 では歯学系6.7%、 公立大では薬学系が12.1%と高くなっ ている。そのほか国立大では、理学系4.1%と工学系4.0% が、やや高めである。公立大では、国立大と同様に工 学系で5.5%とやや高いほか、 総合・環境・人間・情報系 でも5.4%と5.0%を超えている。私立大では工学系11.8%、 薬学系11.3%、経済・経営・商学系11.0%、芸術・スポー ツ科学系10.1%、理学系9.9%が、10%近くとなっており、 これらの学部系統では10 人に1人が退学・除籍となっ ている。 また、人気系統で目的意識がはっきりした進学をして いると思われている歯学系や保健系でも8.6%、8.9%と高 い。これらの学系は国家試験への対応で、他の学部系統 より修得すべき単位数が多く、実習も多い。大学への合 格だけを目標とするのではなく、高校時代に大学入学後 の学修に十分ついていけるように学力の向上を図ったり、 大学に入ってから履修内容について十分に修得すること も重要であろう。

卒業までの退学率は8.1%

全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育※国公立大のみ 理 工 農 医 歯 薬 保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 8.1% 7.4% 8.4% 7.3% 10.2% 2.0% 6.9% 9.1% 5.0% 2.1% 7.8% 10.7% 7.0% 6.5% 9.5% 8.7% 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育※国公立大のみ 理 工 農 医 歯 薬 保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 3.0% 4.0% 9.5% 2.5% 4.5% 8.0% 2.9% 3.1% 8.9% 2.3% 2.7% 8.0% 2.0% 4.1% 3.8% 9.9% 4.0% 5.5% 11.8% 2.6% 2.3% 6.8% 1.7% 0.9% 3.0% 6.7% 2.1% 8.6% 3.2% 12.1% 11.3% 2.9% 2.7% 8.9% 1.4% 2.4% 6.8% 3.2% 3.4% 10.1%    3.1% 5.4% 9.4% 2.7% 4.2% 11.0% 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0%12.0%14.0% 国立大 公立大 私立大 <図4>卒業までの退学率(設置者別・系統別) <図3>卒業までの退学率(系統別)

(6)

Part.5

退学・除籍者数を少なくする取り組み

大学選びのポイント

入学者数、学生数、退学者数を公表することは、大学 にとってはデリケートな問題である。 近年、教育情報の公表、大学ポートレートが整備・公 表され、これらの数値を公表する大学も増えてきた。大 学が懸念するのは、大学の教育や支援の実情が十分に考 慮されず、数を公表するとその数値だけが一人歩きする ことである。退学者数、退学率を見る際には、数値だけ を見ることなく、各大学の取り組みも含めて見ることは 重要である。 その前提を踏まえた上で、各大学で数値をどの程度公 表しているのかを確認しよう。入学者数、学生数、退学 者数をどのような単位で公表しているか、つまり、大学 全体か、学部か、学科か、4年間(あるいは6年間)か、 学年ごとかを確認しよう。大学のホームページに公表さ れていなくても、例えば、オープンキャンパスや大学関 係者が高校に来たときに、何割くらいかを聞いてみるの も1つの手であろう。 公表が義務化されている情報には、学生数だけでなく、 大学が行う学生の修学や心身の健康等に関わる支援も含 まれている。例えば、退学や除籍を防ぐための学生支援 策として、現在ほとんどの大学で学級担任、クラス担任、 アドバイザーといった学生の修学を支援する教員を配置 している。また、学生相談窓口や臨床心理士など専門家 のいる相談センターを設置している。相談窓口や相談セ ンターについては、開設時間、場所、雰囲気など利用し やすいかどうかがポイントとなる。 また、大学入学後に大学生活や、正解がない課題に取 り組まなければならない、自分でやりたいことを見つけ るといった大学での学びになじめないことが授業の欠席 につながり、留年、そして退学に至る場合が多い。そこ で、初年次教育の充実、例えば、初年次に必修科目とし て少人数のゼミなどを開講し、担当教員と人間関係が構 築できる環境が整っているかも目安になる。2年次以降 も、ゼミに所属していない学生に対して支援する教員が いるか、そして明確になっているかを確認するとよいだ ろう。つまり、初年次を中心に、卒業まで学生一人ひと りに目が行き届く体制が整っていることが大切である。 そして、大学全体として、学部や部署を超えて連携し ようとしているのかも重要だ。どの程度連携しているの かはわかりにくいが、最近「エンロールメント・マネジ メント」という、大学や学部・学科選びの段階から、在 学中の成績や授業評価、卒業後の満足度調査等、学生の さまざまな情報を収集、分析し、卒業まで一貫した学生 支援をする取り組みがある。こういう言葉で大学の取り 組みを説明しているかもポイントの1つとなるだろう。 大学の教育や支援体制も重要だが、学生の学力不足や 履修科目の不足、大学で学ぶ目的がはっきりしていない ことも、退学の大きな要因である。夢と希望を持って大 学に入学しても、授業がわからなければ意欲が失われて しまう。特に積み上げ型の教育を行う理工系や、修得単 位数が多く国家試験がある医療系や資格系の学部は、学 力不足が原因となる。 たとえ、推薦入試やAO入試など学科試験を課さない 入試で合格した場合でも、大学合格だけを目標とせず、 大学入学後の学びを考えて、入学前教育を熱心に行った り、学生自身が学習をすることも重要だろう。もちろん、 大学でもこのような状況は認識しており、入学前教育や リメディアル教育にも力を入れている。その充実度も大 学選びのポイントとなる。 最後に、奨学金・給付金についてである。最近は、経 済的な不況から奨学金・給付金の充実を図る大学も増え ている。大学入試の成績によって奨学金が支給される場 合もある。経済的に不安がある場合は、大学に相談すれ ば大学内外の奨学金を紹介してくれるだろう。また、家 計の急変等、経済的困窮により、学生が学修を継続する 意思はあっても授業料を期日までに納入できないといっ た理由から除籍となる学生もいる。そういった場合でも、 学費減免や納入延期等の措置を講じてくれる場合もある ので、あきらめずに方法を探りたい。

入学者数・学生数・退学者数を

公表しているか

学生一人ひとりを

支援しようとしているか

(7)

京都大学工学部

単位取得状況、出席、成績、入試などの各種データに基づいた

留年・退学に関する防止策や支援策を実施

自由な校風で知られる京都大学でも近年、学生の留年や退学・除籍を防止するための対 策に力を入れている。中でも工学部では、留年・退学に関するデータをもとに、留年につ ながりやすい重要科目を指定し、その重要科目の出席状況を把握することによって、支援 が必要な学生の早期発見と個別指導につなげている。これらの工学部の取り組みについて、 伊藤紳三郎工学部長と雪本伸雄教務課長補佐に話を伺った。  京都大学工学部は地球工学科、建築学科、物理工学科、 電気電子工学科、情報学科、工業化学科の6学科から成 る。工学部の学生は、1年から2年次にかけて主に全学 共通の教養科目(全学共通科目)とその一部である自然 科学の基礎科目を履修するとともに、並行して各学科が 開講する専門基礎科目を履修する。2・3年次では、専 門科目を学び、4年次になると研究室に配属されて特別 研究(卒業研究)に取り組むという、徐々に専門性を高 めるくさび型のカリキュラムを採用している。  このため、以前は1・2年次の全学共通科目の履修や 単位取得が、学生の自主性に任されていた面が強く、4 年次での研究室配属前に初めて所定の単位が不足してい ることがわかり、研究室配属ができずに留年する学生が いたり、さらにはそのまま退学に至る学生もいた。  そこで工学部では、2011年度に留年や退学防止の対策 を講じるため、どの科目の単位を取得できなかった場合 に留年に至る学生が多いかを調査した。学科ごとに、1 年次で履修する専門基礎科目のうち、Aという科目が修 得できない場合の留年率と、Aが修得できないとBの科 目も修得できずに留年率が格段に高くなる、というよう な特定の科目と留年率との相関を明らかにした。また単 位が修得できない学生についても、全く授業に出席しな い、時々休む、夏休み近くなると欠席が増えるといった、 いくつかのパターンがあることがわかった。  留年や退学に至る理由について雪本課長補佐は、「本 学では難関の大学入試を突破してくるだけあって、入学 後、学力不足が原因で授業についていけないという学生 はまずいません。また、学費の免除制度や奨学金制度が 整っていることもあり、経済的理由で退学する学生もほ とんどいません。留年・退学する学生の大部分は、本学 に合格したことで目標を見失ってしまう、入学後の目標 が見つからない、サークルやアルバイトにのめり込んで しまうといったことがきっかけで授業に出なくなりはじ め、授業に出なくなることで授業がわからなくなり、そ のままずるずると授業に出席しなくなってしまうといっ たことが留年や退学につながっています」と分析する。  また伊藤学部長も「京大生の学力が高いとはいえ、学 ぶべきことが決まっている受験勉強と、履修科目の選択 をはじめ、何をどのように勉強するかを自分で考える大 学での学びは異なりますから、1年生ではその違いにと まどう学生もいます」と話す。  そこで工学部では、高校から大学への円滑な接続には 1年次での学びを重点的に支援することが重要だと考え た。2011年度(試行期間を含む)から、学科ごとに1年 次配当の専門基礎科目の中から単位が修得できないと留 年につながりやすい科目について、2科目を「重要科目」 に指定し、この科目について学生の出席状況や成績をモ ニタリングすることにした。さらに、学生の出席状況が 随時わかる出欠管理システムを導入し、2回連続して欠 席すると事務室から連絡し、3回連続して欠席すると学 科主任やクラス担任の教員が学生に連絡して、欠席の理 由を確認したり、出席を促す指導をするといった対策を 取っている。「授業に出て学問に触れれば興味のある分 野を見つけることができますが、そもそも授業に出なけ れば興味があることや面白いことは見つかりません。ま

学科ごとに留年につながる重要科目を設定し

出席状況の把握と個別指導で留年・退学を防止

1年生を重点的に支援することが

大学での学修を軌道に乗せる鍵

(8)

Part.5

退学・除籍者数を少なくする取り組み たどんなに学力があっても、工学部の科目は積み上げ型 の内容が多く、難しい内容です。たまに出席するのでは 授業についていけなくなります。ですからまずは授業に 出席するよう促すことが大切なのです」(伊藤工学部長)  1年次への重点的取り組みは2014年度から始めたが、 2011年秋から試行した取り組みでは、2013年秋の段階で の「重要科目」の欠席率は工学部全体で20%程度減少し た。特に、時々欠席する学生に対して効果があったという。  もう1つ、工学部が留年や退学を防止するために重視 しているのが、学修へのモチベーションの向上である。 そのために「工学序論」と題する科目を設け、まず入学 直後に社会における工学の役割を伝える講義を行ってい る。さらに、8月初めに工学の多様な分野から国際的に 活躍する研究者6名による集中連続講義(2日間)を行 い、工学を学ぶ意義を再確認し、将来の進路を意識する 機会としている。なお、講義は聴講するだけでなく、内 容を踏まえた小論文を提出させ、出席状況と併せて成績 評価を行っている。  その他の学生支援としては、1年次などコース分けの ない学年ではクラス担任を置き、学生に対して学修相談 や履修指導等を行っている(学科・コースにより学年 等は異なる)。1クラスが60名程度の規模になる場合は、 アドバイザー、チューターなどと名付けた教員も配置し、 教員1人が3〜5名の学生を受け持ち、学生の携帯電話 の番号や電子メールのアドレス等を交換して、問題があ る場合にはすぐに連絡できるようにしている。  学年が進級しコース分けが行われた後はコースの教員 が、4年次になって研究室に配属されると研究室の指導 教員が同様の役割を担う。また、グループ面談や個別面 談を行い、学生の問題把握と指導につなげる学科もある。  なお、京都大学工学部では、教育上の問題があればま ず本人に連絡している。「工学部の場合、学生の約88% が修士課程に進学します。修士課程では自主的に研究し なければなりませんから、自主性を育むためにも、すぐ に保護者に連絡することは控えています。保護者から個 別に成績について問い合わせがあった場合も、まずは本 人とよく話すようにお願いしています」(雪本課長補佐)  本人に連絡がつかなかったり呼び出しに応じなかった りした場合のみ、保護者に連絡する。保護者へは3年次 の終わりに成績を通知したり、コース配属できなかった 場合に連絡したりする学科もあるが、なるべく学生自身 が状況を打開するよう促している。  もう1つ、科目履修状況の確認も重視している。とい うのも、「登録科目数と成績や単位取得との関連を調べ たところ、登録科目数の多い学生は成績が低迷し、単位 取得率が下がることがわかりました。さらに、1年次前 期で単位をしっかりと修得できなかった学生は、その 後も単位を修得できない傾向があります」(伊藤学部長) ということがわかったからだ。そこで、履修状況を確認 し、学生への指導をするとともに、2014年度から1年間 の取得単位に上限を設ける「キャップ制」を導入した。  工学部の一連の取り組みに共通するのは、データに基 づいて対策を講じている点である。工学部では10年以上 前から学部全体の教育を審議する教育制度委員会で履修 登録科目数と平均点との関連、入試の成績と学部の成績 の関連などさまざまなデータを分析し、結果を工学部 FD(ファカルティ・ディベロップメント)シンポジウ ムで発表して教員間で課題や問題を共有し、キャップ制 の導入や履修指導といった改革を行っている。  現在、2016年度をめざして、総合的な成績評価を測る 基準であるGPA(グレート・ポイント・アベレージ)制 度の導入を検討している。「これまで学生がGPAという 数値目標に縛られるのはよくないという立場からGPA の導入を見送ってきました。また、GPAには、GPAを 上げるために難しい科目に挑戦する学生が減る可能性が あるなどの課題もあります。しかし、GPAは主にアメ リカの大学で一般的に導入されており、留学の際に学力 を保証する指標となることから、日本でも導入する大学 が増加しています。そこで、さまざまなデータを踏まえ、 学生の学修意欲の向上につながるようなGPA導入の在 り方を検討しているところです。今後も、京都大学らし さを維持しつつ、学生に対するきめ細やかな支援の在り 方を探っていきたいと思います」(伊藤学部長)

データに基づいた根拠の提示で

教員の同意を得て実施し、教育改善を図る

教員1人が3~5名の学生を担当

携帯電話の番号・メールアドレスも把握

(9)

長崎国際大学

「いったん入学させたら安易に離学させない」という方針のもと

さまざまな対応を行い、離学率を減少

長崎県佐世保市のハウステンボスの近くにある長崎国際大学は、2000年に開学した。 人間社会学部国際観光学科・社会福祉学科、健康管理学部健康栄養学科、薬学部薬学 科の3学部4学科から成り、約2,000名の学生が学んでいる。建学の理念は「人間尊重」、 モットーとして「いつも、人から。そして、心から。」を掲げ、これを実現すべく全ての 学生を丁寧に育成する教育を実践している。  長崎国際大学は、「異文化を理解し国際社会に貢献で きる人材の育成」を教育の目標の1つに掲げ、開学以来、 留学生を積極的に受け入れている。開学当初直面したの が、留学生の日本語能力の不足やカリキュラムに対する 理解の不足などによる、留学生の退学や除籍であった。 2003年度に離学率が6.3%になったため、2004年に離学 防止委員会を設置し、留学生の募集条件を見直した。  同時に、ゼミで日本人を含む学生の修学状況や生活状 況を把握して個別指導を行う、カウンセラーを配置する、 国際交流・留学生支援センターを設置する等の対策を講 じた。これによって2008年度には離学率は2.9%にまで低 下したが、2009年度から、日本人学生を含めて再び離学 者が増加する傾向が見られた<図>。  そこで2012年、安部直樹学長からの諮問を受けて、副 学長を議長に計15名からなる離学防止諮問会議を設置し て検討を重ね、2014年3月に答申を出した。離学の原因 を調査・分析した結果、理由は①修学不適応、②在籍目 的の喪失、③学ぶ内容について想像との違い、④成績不 振、⑤経済的困窮の5つに類型化された。  このうち、①には、近年増加している発達障がいのあ る学生も含まれる。②③④の3つは、どれも大学で学ぶ 内容への理解不足や、学力不足によるミスマッチが根底 にある。例えば国際観光学科の場合、ホテル業界や旅行 業界のイメージはあるが、観光学概論や観光史といった 専門科目を学ぶことを想像できずに入学する学生がいる。 社会福祉学科は主にソーシャルワーカーの育成をめざし、 社会福祉士等の資格取得をめざす学科だが、入学前はホ ームヘルパーのイメージが強く、ソーシャルワーカーに 必要な法律の知識や、ケア・支援の方法論を学ぶことに 困惑する学生もいる。また健康栄養学科の場合、栄養学 は文系の学問だと思い、生物や化学の基礎知識をあまり 持たずに入学する学生がいる。こういったことが入学後 の学生の成績不振につながっていくのだ。  しかし、安部学長は、「修学不適応、ミスマッチ、学 力不足、経済的な困窮といった学生でも、絶対に安易に 離学させてはいけない」と力説する。「本学を離れるこ とによって、よりよい人生を送れるのならよいのですが、 必ずしもそうではありません。学力不足や学修意欲を失 ったり、障がいを抱えて学修に困難を抱えていたとして も、学生をいったん受け入れたからには大学で学生の力 を伸ばし、社会に送り出すことが本学の責務です」  そこで「修学状況の早期の把握」「入学時点でのミス マッチの防止」「フォローアップ体制の充実」「修学魅力 の充実」「経済的困窮への対応」といった多彩な施策を 講じている。また、一度単位を取れないと翌年の負担が <図>離学率の動向

大学での学びへの理解不足や

学力不足が、離学の大きな原因

多様な角度からの多様な施策で

きめ細やかに学生を支援

7.0% 6.0% 5.0% 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% (率) 4.8% 5.9% 5.8% 6.3% 4.1%3.7% 3.2% 3.6% 2.9% 4.1% 3.5% 3.7% 2.4% 2.2% 2 013 年 2 01 2年 2 011 年 2 010 年 2 009 年 2 008 年 2 00 7 年 2 00 6 年 2 00 5 年 2 004 年 2 003 年 2 00 2年 2 001 年 2 000 年 ︵年度︶ 離学率

(10)

Part.5

退学・除籍者数を少なくする取り組み 増加し、修得できない単位が増えるため、単位修得に問 題のある学生の早期発見と早期支援を重視している。  「修学状況の早期の把握」については、初年次ゼミから、 ゼミの教員が修学状況や生活状況を把握して、次の学年 のゼミ担当教員へ丁寧な申し送りをしている。また、毎 年度初めに、全学生を対象に大学で作成した「心の健康 調査」を実施。質問は悩みの有無を含めて62項目にのぼ り、心のサポートが必要だと判断した学生は呼び出して 話を聴く、カウンセリングの受診を勧めるなどの対応を している。心の問題に踏み込む内容を問うには外国語よ り母語が適しているため、留学生のために日本語に加え て中国語、英語、韓国語、ベトナム語版を用意している。  「入学時点でのミスマッチの防止」については、入学 前教育で不足しがちな教科の学力を育成する、大学入試 の段階で学科の内容を丁寧に伝えるようにしている。  「フォローアップ体制の充実」については、まず「学 生指導記録」を導入した。従来も学生が退学や休学を申 し出た場合には本人に理由を書かせ、それをゼミの担当 教員が認め、さらに学科長、学部長が認め、最終的に学 長が決裁することで、安易な離学を防止してきた。「学 生指導記録」は、学生の修学状況を時系列でまとめたも ので、この内容を踏まえて学生に適切な支援を行う。ま た、ゼミの教員のほかに各学科に学生相談員の教員を配 置し、保健管理センターにはカウンセラーを週4日配置 するなど、学生が相談できる窓口を複数用意することで、 学生が話しやすい相手を選べるようにしている。  大学の授業ではアクティブラーニングを積極的に実施 しているが、アクティブラーニングを行う授業では、大 学院生のTA(注1)や学部の上級生によるSA(注2)を各クラ ス3〜4名配置している。学生は教員には話せないこと もTAやSAには話すことがあり、TAやSAは授業中の学 生の様子を教員に伝えるため、学生の状況のきめ細やか な把握につながっている。  友人を作るのが苦手な学生に対しては、カウンセラー が常駐する居場所づくり活動として「NIUランチアワー」 を設け昼食を摂りながら、学生同士や時には教職員との コミュニケーションの場を提供し、クリスマス等のイベ ントも行っている。  「修学魅力の充実」については、授業をわかりやす くすることこそ学びの楽しさにつながるとの考えから、 FD(ファカルテイ・ディベロップメント)活動と一体 となった授業改善に努めている。アクティブラーニング の導入も、講義を聴くことが苦手な学生が、より興味 をもって学ぶための工夫の1つである。また、学生の提 出物や成績などを一括管理するポートフォリオを導入し、 学生個人の学修状況を把握した上で授業改善を行ってい る。  「経済的困窮への対応」については、奨学金の整備、 授業料の減免、金融機関と提携して卒業後に返済を開始 する教育ローンの紹介、児童養護施設出身者数名に対す る授業料免除制度などがある。なお、TAとSAの活用は、 学生の経済的支援も兼ねている。  さらに、学生や保護者との連携も重視している。学生 に対しては年に2回「学長カフェ」を開き、1学科2名 程度の学生の代表が直接安部学長らと懇談して、要望を 伝える。保護者に対しては、2006年から毎年懇談会を 開催しており、例年800名もの保護者が参加するという。 また、出身者の多い沖縄でも開催している。懇談会では 就職状況等全体の説明をした後、各学科に分かれて学科 の現状を説明し、さらにゼミの教員との個人面談を行う。 なお、待ち時間には、長崎国際大学が茶道を人間教育の 核に据えていることから、学生が点てるお茶を自由に楽 しんでもらう。「お茶席では、保護者の方には学生に自 由に何でも質問していただいています。教員には聞きづ らいことも学生には聞けますし、保護者にも好評です」 (安部学長)  各学部でも独自の取り組みを行っている。例えば、人 間社会学部では、注意が必要な学生を抽出し、ゼミ教員、 科目担当教員、カウンセラーで情報を共有しているほか、 修得単位数に応じて学生をイエローゾーン、レッドゾー ンに分け、特にレッドゾーンの学生には金曜1限に教員 同席の下で自習をする「補講クラス」への参加を義務づ け、出席率が低い場合にはゼミ教員、さらには学科長に よる面談を実施している。その結果、2012年度より留学 生、日本人学生ともに退学者が減少した。  答申後1年目の2014年度はこうした施策を実践した。 2015年度以降、効果や課題を検証して、改善を加えてい く予定である。 (注1)ティーチングアシスタント (注2)スチューデントアシスタント

学生や保護者との直接対話や

学部ごとの取り組みも実施

(11)

日本大学生産工学部

クラス担任制で学生をサポート

学部独自の奨学金で経済的理由による退学、除籍を防ぐ

日本一の学生数を誇る日本大学の中で、生産工学部を含む理工系学部は他学部に比べて 退学者や除籍者が多い傾向にあった。そこで生産工学部では、退学者や除籍者を減らすた め、クラス担任制を軸にさまざまな取り組みを行っている。生産工学部の取り組みについ て、学務担当の⻆田和彦教授に話を伺った。  千葉県習志野市の津田沼と実籾にキャンパスをもつ日 本大学生産工学部は、機械工学科、電気電子工学科、土 木工学科、建築工学科、応用分子化学科、マネジメント 工学科、数理情報工学科、環境安全工学科、創生デザイ ン学科の9学科を設置し、現在約6,500人の学生が学ぶ。  生産工学部をはじめとする理工系学部では、他学部に 比べ、退学者・除籍者が多い傾向にあった。  退学・除籍の主な理由は、他大学と同様、学生の学力 不足、学科で学ぶ内容とのミスマッチ、経済的理由であ ったことから、それらの原因に応じた取り組みと、学生 が相談しやすい体制作りをめざした。  学力に不安に感じる学生への入学前の支援としては、 推薦・AO入試等早期合格者に対して、大学で学ぶ基礎 内容の教材の添削指導をしたり、希望者には有料で数学・ 物理・化学のDVD教材と添削課題の案内を行っている。 他にも、入学予定者全員を対象に、3月末にキャンパス で4日間の数学集中授業(希望制)を実施しており、例 年500名程度の参加があるという。  入学後も、5教科のプレースメントテストを利用し、 数学ではテストの結果が芳しくなかった学生に補習授業 の受講を勧め、学力不足によるつまずきを防いでいる。  また、1年生が学ぶ実籾キャンパスには数学と物理の アカデミックアドバイザー(注)が常駐する。学生は自由 にアドバイザーのいる部屋を訪れ、学習全般についてや 授業内容について質問することができる。  「学生に好評であることから、2015年度からは英語の アドバイザーも加わります」(⻆田教授)  学科で学ぶ内容のミスマッチについては、入学前の説 明会およびガイダンス等で各コースの学習内容を紹介し たり、2014年度から卒業研究の発表会に合格者を招く学 科もあるなど、入学前から大学で学ぶ内容について学生 の理解を深める取り組みを行っている。  入学後、4年間を通した学生支援の基盤となるのがク ラス担任制だ。退学・除籍の防止や、原因の解消には学 生一人ひとりの事情を理解することが重要との考えから、 1970年代初頭から学部全体で導入している。  9学科それぞれで専門科目を担当する教員3〜4人を クラス担任とし、教員1人あたり40人程度の学生を受け 持つ。クラス担任は基本的に4年間持ち上がりで同じ学 生を担当する。  クラス担任は、4月と9月に行われるガイダンスの際、 学生と面談して個人指導や履修相談を行う。面談は希望 者対象だが、特に成績が芳しくないなど問題のある学生 に対しては、面談に来るよう促している。また、毎年9 月に行われる父母懇談会で修学状況や学生生活に関して、 保護者と面談を行っている。  「問題を抱える学生にはガイダンスの時期以外にも電 話をしたり、本人や保護者と面談を行ったりしています。 専門家の支援が必要な場合は、学生の相談窓口であるサ ポートセンターを紹介しています」(⻆田教授)  クラス担任は授業の担当教員との連携も行う。2014年 度から導入した出席管理システムでは、授業担当者がウ ェブ上で出席状況を確認することができる。クラス担任 は、授業の担当教員から欠席の多い学生について連絡を 受け、個別に対応することもある。  さらに、クラス担任は3年生全員が2週間から1カ月 間、企業や官公庁で実習を行う「生産実習(いわゆるイ

入学前からの手厚いサポートで

学力不足・学びのミスマッチを防ぐ

4年間を通したクラス担任を軸に

退学者・除籍者減少に取り組む

(12)

Part.5

退学・除籍者数を少なくする取り組み ンターンシップ)」での支援や、就職支援の 委員も務めるなど、4年間を通じて手厚い支 援を行っている。  クラス担任制に加え、特に大学生活に不安 を抱きやすい1年生には重点的に支援を行っ ている。1年生に対しては、教養・基礎科目 系の教員も各学科3〜4人ずつ担任に加わり、 専門のクラス担任と連携しているほか、学部 4年生と大学院生によるピアサポーターが学 生を支援する。ピアサポーターは、1年生10 人に対し1人程度、学科から推薦された学生 約150人が配置され、週に1回必修科目の授 業が終わった後などに、1年生の相談に乗っ ている。  「深刻な相談が寄せられた場合は、ピアサポーターは クラス担任に話をつなげます。相談というほどでなくて も、先輩と気軽に話せる機会として好評です」(⻆田教授)  なお、ゼミの教員も学生の支援にあたる。  「ゼミでは、教員と学生が密に交流し、学生が必要と する支援を提供しやすい場ですが、閉じた研究空間でも あります。そこで、クラス担任がゼミ教員と連携し適宜 情報を共有することで、より適切に学生を支援していま す」(⻆田教授)  これらの充実した体制で学生へ支援を行っているが、 学科で学ぶ内容に違和感を覚えるなど学科に適応できな い場合は、修得単位数など一定の条件のもと、進級時に 試験を受けて転学科できる制度も用意している。  このように学生が相談しやすい体制を整えても、経済 的な要因から退学・除籍に至る学生も少なくない。   経済的に困窮する学生に対しては、奨学金を給付し支 援している。生産工学部の学生が受けることができる給 付奨学金の例は<表>の通りだ。全学的に提供されてい る奨学金は成績優秀者を主な対象とするが、経済的に困 窮する学生へは学部独自の奨学金が充てられている。生 産工学部では「第2種奨学金」と、卒業生の組織である 校友会からの寄附による「校友会奨学金」がこれに当たる。  「第2種奨学金」は、毎年9名程度に対し前期または 後期に30万円を給付、「校友会奨学金」は、前期または 後期に、毎年20名程度に対し、経済的困窮程度に応じて 30万円、20万円、10万円を給付する。どちらも厳密に募 集人員は決まっておらず、奨学金を申請する学生にヒア リングし、奨学金が本当に必要かどうかを審査した上で、 給付を決めている。  「日本学生支援機構から有利子の奨学金を貸与されて いる学生もいますので、不公平にならないよう、安易な 給付はしません。より多くの学生が奨学金を受けられる ようにしたいと考えています」(⻆田教授)  また、どちらの奨学金も募集期間が前期・後期と分か れてはいるが、家計の急変に対応して随時応募を受け付 けている。卒業要件を満たしながら学費未納のため卒業 できない学生に対し、給付することもあるという。  「ここでもクラス担任や指導教員と連携を取りながら、 学生の支援を行っています。家計の急変などの事情があ る学生には、クラス担任が奨学金を紹介することもあり ます」(⻆田教授)  また、生産工学部では、平成25年度より学科主任と教 養・基礎科学系の主任をメンバーとする「退学及び留年 者削減検討委員会」を設置し、学部全体の取り組みの検 討や学科ごとの取り組みの情報共有を行っている。多様 な取り組みによって、退学者・除籍者数は確実に減少し つつあり、特に1年生の退学率減少に手応えを感じてい ると⻆田教授は語る。  「2015年度からは、成績や面談及び父母懇談会の記録 など学生一人ひとりの情報を集約する『学生カルテ』と いうシステムが稼動します。4年間の指導状況を記録す ることで、クラス担任制や現在の取り組みとあわせ、学 生個人に合わせたより綿密な支援が可能になる(学生・ 大学・父母等との連携)と考えています」 <表>生産工学部奨学金 名称 対象 金額 日本大学 生産工学部 奨学金 第1種奨学金学業成績、人物ともに優秀 な学生 年間60万円 第2種奨学金 優秀な資質を持ちながら経 済的理由等により学業の継 続が困難になった学生 前期または後期に30万 円 第3種奨学金外国人留学生で学業、人物 ともに優秀な学生 年間60万円 校友会奨学金経済的理由により修学が困難な学生 前期または後期に30万円、20万円、10万円 日本大学 特待生 甲種特待生 2年生以上で学業成績、人 物ともに特に優秀な学生 授業料1年分相当額と 図書券 乙種特待生 2年生以上で学業成績、人 物ともに優秀な学生 授業料1年分相当額 日本大学エヌドット奨学金 1年生(留学生を除く)で 入学時の成績、人物ともに 優秀な学生 年間36万円 (日本大学生産工学部ガイドブックより抜粋)

学部独自の2つの給付型奨学金で

経済的に困窮する学生を支援

参照

関連したドキュメント

Photo Library キャンパスの夏 ひと 人 ひと 私たちの先生 文学部  米山直樹ゼミ SKY SEMINAR 文学部総合心理科学科教授・博士(心理学). 中島定彦

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

 活動回数は毎年増加傾向にあるが,今年度も同じ大学 の他の学科からの依頼が増え,同じ大学に 2 回, 3 回と 通うことが多くなっている (表 1 ・図 1

ダブルディグリー留学とは、関西学院大学国際学部(SIS)に在籍しながら、海外の大学に留学し、それぞれの大学で修得し

国公立大学 私立大学 短期大学 専門学校 就職