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「LD」児・者の社会的文脈における他者感情推測に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)「 LD」 児・ 者の社会的文脈における他者感情推測に関する研究 キーワード: 「 LD」 ,文脈,特性,関係性,感情推測. 人間共生システム専攻 中村 真樹 1.問題と目的 近年,LD や ADHD,高機能自閉症が注目を集めている。こ れらの障害は重なり合う一連の障害であると考えられる。 本研究においてはこうした一連の障害を「LD」と定義する。 「LD」児・者は,行動の自己調整や社会的認知,社会的. 研究Ⅰ 健常児における他者の感情推測 【目的】 今回は独自の課題を作成したため,各条件で一般的に得ら れる反応を検討するため健常児を対象に実験を行なった。 【方法】. 相互交渉の困難を伴う(Fletcher,1990)が,その背景として. 1)対象:小学校の通常学級に在籍する児童 57 名。対象者. 他者の意図や感情の推測・理解の難しさがある(大西,2000)。. の内訳は, 1年生25 名(M:F=16:9), 3 年生 17 名(M:F=6:11),. 他者の意図や感情を推測することは社会性の発達と密接な. 6 年生 16 名(M:F=5:11)である(range:6:9∼12:9)。. 関連がある。社会性とは,社会の規範や慣習に適合した行. 2)課題:①表情弁別課題ー若松(1989)を参考に表情図(喜. 動をとれることをさすが(井上,1997),社会性は周囲の人. び・怒り・悲しみ・中性)を作成した。表情図は線画であり,. との対人関係を形成し,それを発達させていく中で身につ. 4枚の絵カードである。. いていくものであろう。. ②感情推測課題ー2人の人物が登場するストーリーを 8 話. さて,周囲の人との円滑な対人関係を営むには,他者の. 作成した。2人の人物のうち,1人は主人公でもう1人は. 立場や状態や気持ちを知り,それに基づいて適切な行動を. その友人という設定である。ストーリーは,主人公の特性. とる必要がある。他者感情を推測する際に重要なものとし. に関する一文《特性要因(Like・Dislike)―主人公の好み》. て文脈の利用があると考えられる。我々は日常生活で,状. と,主人公と友人の人間関係に関する一文《関係性要因. 況や表情などの文脈を利用して他者感情を推測している。. (Good・Bad)―主人公と友人の人間関係》 ,情動喚起場面《情. 従来の研究により,人は年齢とともに複数の文脈を統合し. 動要因(Positive・Negative)》に関する一文の三文から構成. て他者の感情を推測できるようになることが示されている. されており,それぞれの文に対応する図版を作成した。図. (笹屋,1997)。. 版は男子版と女子版を作成し,実験の際は登場人物の性別. 「LD」児・者の感情推測に関する研究には,表情図の認知. が被験児の性別と同一のものを使用した。要因の組み合わ. (若松,1989 Dimitrovsky,1998)や,心の理論課題を用. せは8条件あり,被験者ごとに8条件が振り分けられた. いたものがある(Campbell,1997:Dorfman,2001)。しか. (Fig.1 参照)。. し,どの研究も「LD」児・者の感情推測について能力的な. 3)手続き:. 側面から検討しており,質的な側面については検討してい. 実験者は被験者に次のように教示した。 「今から物語を聞. ない。 「LD」児・者が他者の感情の推測に困難を示すとす. いてもらい,その後質問に答えてほしいと思います。決ま. れば,日常生活に存在する様々な文脈の中から必要なもの. った答えはないので自由に答えてください」教示の後,各. に注目し利用することに難しさがあると考える。. 被験者に対して表情弁別課題と感情推測課題を行った。. そこで,本研究では,他者感情を推測する際に「LD」児. ①表情弁別課題では,4枚の表情図を被験者の前に並べ,. 者がどのように文脈を利用するのかという点を検討し,彼. 「この中で(うれしい,かなしい,おこった,ふつうの)気持. らの感情推測の特徴を明らかにする。課題としては対人場. ちをあらわしている顔はどれですか」と言語指示により選. 面を設定し,文脈としては他者の「特性」ともう 1 人の他. 択させる選択式によって回答を求めた。表情図はランダム. 者との「関係性」をおく。これらの文脈を様々に組み合わ. に被験児の前に並べられた。表情図は次の感情推測課題に. せることにより,彼らがどのような場合に他者感情推測に. おいても用いられたが,表情弁別課題が終了した後一端片. 難しさを持つのかということを明らかにする。. づけた。.

(2) P o s it iv e. L ik e. 関 係 性 要 因. N e g a t iv. D is lik e. e. 情 動 要 因 N e g a t iv e. G ood 関 係 性 要 因. L G N 条 件 :( 例 ) 好 き な ブ ロ ッ ク を 仲 良 し の 友 達 に と ら れ る. P o s it iv e. B ad. 特 性 要 因. L G P 条 件 :( 例 ) 好 き な キ ャ ン デ ィ ー を 仲 良 し の 友 達 に も ら う. 情 動 要 因. G ood. L B P 条 件 :( 例 ) 好 き な プ ー ル に 仲 が 悪 い 友 達 か ら 誘 わ れ る. L B N 条 件 :( 例 ) 好 き な ト イ レ 掃 除 を 嫌 い な 友 達 に 頼 ま れ る. P o s it iv e. 情 動 要 因 N e g a t iv e. D G P 条 件 :( 例 ) 嫌 い な キ ャ ン デ ィ ー を 仲 良 し の 友 達 に も ら う. D G N 条 件 :( 例 ) 嫌 い な ブ ロ ッ ク を 仲 良 し の 友 達 に と ら れ る. P o s it iv e. D B P 条 件 :( 例 ) 嫌 い な プ ー ル に 仲 が 悪 い 友 達 か ら 誘 わ れ る. 情 動 要 因. B ad. N e g a t iv e. Fig. 1. DBN 条 件 ( 例 ) 嫌 い な ト イ レ 掃 除 を 仲 が 悪 い 友 達 か ら 頼 ま れ る. 各 条 件 に お け る 要 因 の 組 み 合 わ せ の 設 定 と 状 況 文 の 例. ②感情推測課題は,1条件ずつストーリーを教示し,合. T a b le 1   分 析 Ⅱ の カ テ ゴ リ ー 基 準. わせて図版も提示した。なお,課題の成績が記憶力の影響 定 義. をうけないようにするため,図版は出したままにしておいた。. 反 応 例. 1 .一 致. 質 問 ① で 選 択 した 表 情 図 と ,質 問 ② の 言 語 に よ る 回 答 が 一 致 して い る 場 合. 質 問 ① で 「H 」を 選 び ,質 問 ② で 「う れ し い 気 持 ち 」と 答 え る. 2 .不 一 致. 質 問 ① で 選 択 した 表 情 図 と ,質 問 ② の 言 語 に よ る 回 答 が 一 致 しな い 場 合. 質 問 ① で 「H 」を 選 び ,質 問 ② で 「悲 し い 気 持 ち 」と 答 え る. 答を促した。条件文の説明の後,質問(①から③)を行った. 3 .c o m p le x ・c o n f l i c t. 質 問 ① の 表 情 図 の 中 に は な い 複 雑 な 感 情 を 言 語 的 に 述 べ た 場 合. 「困 っ た 」「し か た が な い 」「微 妙 」な ど. (Fig.2)。質問①は表情識別課題の表情図を選択させて回答. 4 .行 動. 気 持 ち で は な く,行 動 を 答 え た 場 合. 「早 くそ う じ を し よ う 」 (状 況 文 E ). 5 .無 回 答 ・ そ の 他. 答 え な い ,あ る い は 意 味 不 明 な 回 答 を した 場 合. 「青 春 的 」. 課題の提示順序は条件ごとにルーティン法によってカウン ターバランスされた。被験者が「分からない」と答えた場 合は, 「思っていることを話してくれたらいいですよ」と回. を求めた。質問②と③は,言語による回答を求めた。 【結果】 分析Ⅰ)質問①:他者の表情表出の理解 各被験者の回答を H: Happy,S: Sad,A: Anger,. 教示文(LBN条件). N: Neutral の4カテゴリーに分類した。被験児の分類さ. L たろう君はキャンディーが好きです(好き=Like 特性要因). れた反応数について,条件(8:LGP 条件・LGN 条件・LBP. B たろう君はじろう君と仲が悪いです(仲が悪い=Bad 関係性要因). 条件・LBN 条件・DGP 条件・DGN 条件・DBP 条件・DBN. P たろうくんはじろうくんにキャンディーをもらいました. 条件)ごとに学年(3:1・3・6)×カテゴリー(4:H・S・A・ N)の対数線形モデル分析を行った。その結果,年齢が上がる につれて「N」の反応が増えることが示された。 質問②について,反応内容を以下に述べるカテゴリーに分. 質 問 ①たろう君はじろうくんにどんな顔をすると思いますか (表情表出に関する質問). 分析Ⅱ)質問②―表情表出と他者感情の推測の関係. (感情推測に関する質問). 類した。分類にあたっては2名の評定者で行い,評定者間. ②たろう君はどんな気持ちだと思いますか. で一致しない回答に関しては協議の上意見の一致を図り,. ③たろう君はどうしてそんな気持ちだと思いますか. 分類した(Table1参照)。その結果,年齢が上がるにつれて complex な気持ちを述べるようになることが示された。. Fig. 2 実験の流れ. 分析Ⅲ)質問③―感情推測の根拠 被験児が感情推測の根拠をどこに求めているか,分析Ⅱ. 照)。その結果,年齢が上がるにつれて「関係性」や「道徳. と同様に反応内容を以下に述べる内容に分類した。分類は,. 的な価値観」に目が向くようになり,様々なものを感情推測. 分析Ⅱと同じ 2 名の評定者で行い,評定者間で一致しない. の根拠として重視するようになることが示された。. 回答は,協議の上意見の一致を図り分類した(Table 2参.

(3) Table 2 分析Ⅲの分類基準. 1.特性重視. 条件(8:LGP 条件・LGN 条件・LBP 条件・LBN 条件・. 定義. 反応例. DGP 条件・DGN 条件・DBP 条件・DBN 条件)ごとに群(2:. 主人公の特性を重視. 「 キャンディーが好きだから」. 統制群・臨床群)×カテゴリー(4:H・S・A・N)の対数線. 1b.特性重視で関係 主人公の特性を重視するが,関 「 仲が悪いんだけど,キャンディ 性考慮. 係性にもふれる. ーが好きだからうれしい」. 2.関係性重視. 主人公と友人の関係性を重視 「 Aくんと仲良しだから」. 形モデル分析を行った。 分析の結果 LBN 条件のみ群×カテゴリーの交互作用が 有意であった。臨床群の「H」が見られず(z=−. 2b.関係性重視で特 主人公の関係性を重視するが,「 キャンディーは嫌いだけど,仲. 2.058,p<0.05),「A」も少ない傾向にあった(z=−1.721,p. 性考慮. <0.10)。また「S」が多かった(z=−2.077,p<0.05)。. 特性にもふれる. 良しの Aくんにもらってうれしい. 主人公の特性と人間関係を同じ「 キャンディー好きだし,仲良し 3.特性+関係性 くらい重視. の Aくんにもらってうれしい」. 人にかりるのはいけないから」 文脈によらずに世間の常識や 「. 主人公の特性や関係性などの 「 コーラ味のキャンディーが好き 5.新しいエピソード文脈を利用せず,自分で話をつ なのにコーラ味じゃないキャン ディーをもらったから」. 6.無回答・ その他 答えないか意味不明な回答 7.場面重視. の反応がある。 「H」の反応は「トイレ掃除が好きなんだか ら頼まれたらうれしいだろう」ということで主人公の「特. ルールなどにもとづいた回答. けくわえる. (例: 「好きなトイレ掃除を仲の悪い友達に頼まれる」)では 臨床群の「H」の反応が皆無だが,統制群の一部には「H」. 主人公の特性や関係性などの 4.道徳的価値観. 分析Ⅰでは LBN 条件のみ両群の差があった。LBN 条件. 感情推測の根拠として場面その 「 もらったからうれしい」 ものを重視. 研究Ⅱ 「LD」児・者の感情推測の特徴 【目的】 研究Ⅱでは「LD」児・者と健常児を比較し,他者感情の 推測における「LD」児・者の特徴を明らかにすることを目 的とする。 【方法】 1)対象者:. 性」を重視した結果であると思われる。分析Ⅰの結果から は,統制群が「特性」にひきずられて他者の感情を推測する 傾向にあることが示された。この結果は,研究Ⅰにおいて健 常児が特性を重視するという結果と一致する。 分析Ⅱ)質問②ー表情表出と他者感情の推測の関係 各被験児の反応をカテゴリーに分類し,群×カテゴリーの 対数線形モデル分析を行った。 100. H S A N. 反 80 応 率 60 ︵ 40 % ︶ 20 0 統制群. 群. 臨床群. Fig. 3 分析① 表情反応率の群間比較( LBN条件). 臨床群: 「LD」児・者 26 名。対象者は皆集団適応に困難が. 分析の結果 LGP 条件のみ群×カテゴリーの交互作用が. あるという主訴で何らかの療育活動に参加しており,認知的. 有意であった。この条件では全体的に「1.一致」が多かった. な偏りがあると推測される点で共通している。. が(z=7.559,p<0.01),臨床群では「1.一致」が少ない傾向. 統制群:統制群は,臨床群と等しい言語精神年齢(VMA)の者. があった(z=−1.764,p<0.10)。分析Ⅰでは LBN 条件で交. が研究Ⅰの被験児から選ばれた。統制群は,CA=VMA とし. 互作用があったが,分析Ⅱでは両群の差がなかった。. た。対象者の構成を Table 3 に示す。両群の VMA の平均値. 分析Ⅱでは,LGP 条件で臨床群が表情表出と言語的な回. について t 検定をした結果有意な差はなかった。. 答が一致することが少なかった。研究Ⅰより LGP 条件は. 2)課題:研究Ⅰに同じ。. 「H」反応を出しやすい条件であることが分かっている。 現に統制群は,LGP 条件では表情と背景にある気持ちが完. Table 3 対象者のプロフィール 全に一致している。LGP 条件での両群の違いは,臨床群が              CA             VMA      n  平均値 SD   範囲   平均値  SD  範囲 「ものをもらうのはよくない」など道徳的な価値観に基づ 統制群 26  9:5   2:4  6:9∼12:9  9:5   2:4  6:9∼12:9 いて他者の感情を推測する場合があることがプロトコルか 臨床群 26  13:8  7:7  7:3∼30:6  10:5  4:5 5:6∼24:2 ら読み取れた。この場合,「ものをもらう」という状況は葛 * VMAは WISCⅢあるいはWAIS- Rによる推定. 3)手続き:研究Ⅰに同じ。. 藤場面になるため臨床群の中に「H」反応を控える被験者. 【結果と考察】. がいたのではないか。. 分析Ⅰ)質問①ー他者の表情表出の理解. 分析Ⅲ)質問③―感情推測の根拠.

(4) 各被験児の反応をカテゴリーに分類し,群×カテゴリーの 対数線形モデル分析を行った。. 常児との違いがないが,感情推測の根拠に関して特徴があ ることになる。特に「LD」児・者に特徴的なのは,どの条. 分析の結果,LGP 条件,LBP 条件,LBN 条件,DGN 条. 件でも実験者が提示した主人公の「特性」や「関係性」を. 件,DBP 条件,DBN 条件で群×カテゴリーの交互作用が有. 利用しないで自分で新しい情報を付け加えて他者の感情を. 意であった。条件ごとに詳細を示す。. 推測する場合があったことである。この傾向は DGN 条件. LGP 条件:臨床群の「1.特性重視」が少ない傾向があった. で顕著であるが,DGN 条件は「表情表出」に関しても反応. (z=−1.685,p<0.10)。. が 4 等分されており,理解しにくい条件であると考えられ. LBP 条件:臨床群の「1b.特性重視で関係性考慮」が少な. る。よって「LD」児・者は日常場面で理解しにくい場面に. い傾向があった(z=−1.673,p<0.10)。. 遭遇した時に,自分で情報を付け加えることで他者の感情. LBN 条件:臨床群の「2b.関係性重視で特性考慮」が少な. を推測している可能性がある。彼らは他者の感情を推測す. い傾向があった(z=−1.831,p<0.10)。. る際に,情報を付け加えるという方略を用いることで他者の. 特性 関係性 特性+関係性 道徳的価値観 新しいエピソード 無回答・その他 場面. 100 カ テ ゴ ︵リ %ー ︶の 割 合. 80 60 40. 感情を推測している可能性がある。分析Ⅲでは LGN 条 件,DGP 条件では両群の差が見られない。この 2 条件では 臨床群が統制群と同じく他者の特性を重視したと言えよう。 LGN 条件と DGP 条件は特性要因と情動要因が矛盾する条 件である。しかし,同じく特性要因と情動要因が矛盾する LBN 条件と DBP 条件では両群の差がある。つまり,臨床群. 20. は「関係性要因」が「B」である時に統制群と異なる反応を. 0 統制群. 臨床群 群 Fig. 4 分析③ 感情推測の根拠についての群間比較 (LBN条件). するということが言えるのではないか。 分析Ⅰで交互作用がある LBN 条件は,「LD」児・者も混 乱しやすい条件であると考えられる。全体的に「LD」児・. DGN 条件:臨床群の「5.新しいエピソードの産出」が多. 者は「特性」や「関係性」に感情推測の根拠が偏らず,「道. かった(z=1.970,p<0.05)。. 徳的な価値観」や「新しいエピソード」の反応が多く,ば らつく傾向がある。一方統制群は「特性」を感情推測の根 特性. 100 カ テ ゴ 80 リ ー 60 の 割 40 合. 関係性 特性+関係性 道徳的価値観 新しいエピソード. 群には「H」反応がいくつか見られた。 さて,本研究では他者の「特性」と「関係性」を他者の感. 無回答・その他 場面. ︵ 20 % ︶. 拠とすることが多い。そのため分析Ⅰでも LBN 条件で統制. 情を推測する際に必要な文脈として設定したが,分析Ⅲから は「LD」児・者が他者の「特性」に左右されにくいことが. 0 統制群. 臨床群 群. Fig. 6 分析③ 感情推測の根拠についての群間 比較(DGN条件). 分かった。一方で彼らは「関係性」には目を向けており,感 情推測の根拠として関係性を重視することが明らかになっ た。このことはかれらが対人関係困難を主訴とすることや,. DBP 条件:臨床群の「1.特性重視」が少ない傾向があり(z. 臨床群の CA が高いことも影響を与えていると思われる。. =−1.753,p<0.10), 「6.無回答」が多い傾向があっ. 最も特徴的であったのは,「LD」児・者が「特性」や「関. た(z=1.651,p<0.10)。. 係性」という実験者が提示した文脈によらずに自分で新し. DBN 条件:臨床群の「1.特性重視」が少なく(z=−2.423,. い情報を付け加えて他者の感情を推測するという方略を用. p<0.05), 「6.無回答」が多い傾向があった(z=1.781,. いたことである。彼らは他者の表情の理解や,表情と背景に. p<0.10)。. ある感情が必ずしも一致しないということの理解はしてい. 分析Ⅰ,Ⅱでは LBN 条件と LGP 条件以外の条件で違い. るが,感情推測の根拠については特徴が見られた。自分で新. がない。この結果は従来の研究(Dmitrovsky,1998:. しい情報を付け加えて他者の感情を推測するという特徴は,. Fletcher,1990)と異なるが,これは VMA をマッチングさ. 外からは捉えにくいので,日常場面で彼らが理解されにくい. せたことと,今回視覚的な刺激を用いたことで臨床群にと. ことの原因になると思われる。彼らの対人場面における困. って取組みやすかったと考えられる。. 難は,本研究で明らかになった他者の感情推測の特徴に関係. 分析Ⅲで随所に違いが見られたことは, 「LD」児・者は 表情の理解や表情の背景にある気持ちの理解に関しては健. している可能性がある。今後は「LD」児・者の対人関係性 の特徴について検討していくことが必要であると思われる。.

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