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コンクリート系非構造壁の取り付け部に介在させる摺動材を用いた摩擦制振システムの開発研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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66-1

コンクリート系非構造壁の取り付け部に介在させる摺動材を用いた

摩擦制振システムの開発研究

牧野 起八 1.序 外壁や間仕切り壁に利用されるプレキャストコンク リートパネル(以下,PC版)などの非構造部材は設計 上その耐力が無視されるが,建物の耐震性能に影響を 与える事例が報告され,非構造部材の取り扱いについ ては様々な研究がなされてきた1) この状況を受けて,筆者らは PC 版と躯体構造との接 合に摩擦接合を適用し,PC 版を摩擦ダンパーの構成要 素として利用することで,建物の耐震安全性を高める 工法等の検討を行ってきた. 提案する工法は,図 1 のように主体構造に接合する PC 版の取り付け部にモルタルブロックを介在させて 摺動材とし,摩擦接合を適用した状態で地震時に滑り を生じさせることでエネルギー吸収を図ろうとするも のである.この際 PC 版は比較的大きな剛性を有してい るため,躯体構造は鉄骨構造などの比較的低剛性の構 造形式を対象とした方がより高い制振効果を期待でき る.また,ダンパーの配置は一般的に集中型と分散配 置型に分類されるが,本工法は低耐力のダンパーを建 築計画に制限を与えることなく設置できる分散配置型 に適している.摩擦接合は部材の着脱・交換や材料の 再利用が行いやすい点から地球環境負荷低減に有効な 技術であり,建物の寿命が社会的要因等で決まる場合 には特に有効な技術であるといえ2),PC 版を摩擦ダン パーとして利用する際に損傷を制御できれば,そのリ ユースも可能になる.筆者らは文献 3)で,モルタル製 の摺動材を試作した試験体を用いて動的な水平載荷実 験を行い,その制振要素としての性能を調べた.その 試験体もほぼ完全剛塑性型の履歴特性が得られ,結果, 実験を行ったどのまた一 つの摺動材当り約 20kN まで減衰力を負担できる ことが分かり,制振要素 としての利用可能性が確 認 さ れ た . し か し な が ら文献 3)では摺動材シ ステム部分のみを対象と していたため,本論文で は主体構造を想定したフレームに PC 版を接合した状 態で同 PC 版の取り付け部に摺動材システムを設置し て水平載荷実験を行い,その挙動と構造性能を調べた. 2.コンクリートパネルを用いた実験の概要 2.1 本工法の概要 本工法は PC 版の下部ファスナー部分にモルタル製 の摺動材を設置し,その摺動材に 2 面摩擦接合を適用 して PC 版が損傷しない範囲で摺動材に滑りを生じさ せるというものである.PC 版の取り付け形式の原理図 を図 2 に示す.壁版上部に自重と面内水平力を受ける ファスナーを,下部に摺動材の減衰力を受けるファス ナーを設ける.本工法の利点として,壁版を剛に固定 しないため地震時の損傷を抑えられる可能性があり, また摺動材を梁上に設置することから施工性やボルト 張力の管理・点検が行い易いことが挙げられる. 2.2 試験体の概要 図 3 に摺動材の,図 4 に PC 版の形状及び配筋を示す. 摺動材に使用したモルタルは圧縮強度 78.0N/mm2,ヤ ング係数は 3.19×104 N/mm2である.摩擦面は鋼製型枠 の脱型面を使用した.図 3 に示す試験体に空けた直径 45mm の円孔内に外径 45mm の鋼管(内径 33mm)を嵌 め込んでボルト孔とし,下部ファスナーに取り付ける 水平力伝達ボルトを収める.水 平力伝達ボルトには M30 の高力 ボルトの頭部を切り落としたも のを使用した.鋼管と水平力伝 達ボルト間の 3mm のクリアラン スは,PC 版の回転や浮き上がり に対する拘束力が強すぎると面 図 1 提案するモルタル製の摺動材を用いた工法 自重受けファスナー 水平力受けファスナー 梁 1次ファスナー 摺動材システム 梁 摺動材システム拡大 A’ A-A’断面図 A 図 2 取付形式の原理図 △:自重支持点 ○:ピン :ローラー :上下方向ダボ

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66-2 外曲げによる破壊を起こしてしまうため 3),設けたも のである.またボルト孔の底と水平力伝達ボルトの端 部間にも約 10mm のクリアを設け,架構フレームの層 間変形による垂直変位に追従できるようにした.ファ スナーの固定は既成の PC 版にファスナーの取り付け 位置にコア抜きを行い,ファスナーとして使用する山 形鋼を面座金及び丸座金を介して PC 版の両側からボ ルトで締め付けた.摺動材の 2 面摩擦接合の概要を図 5 に示す.摺動材の横に溝形鋼を設置して溝形鋼と図 6 の鋼板をボルト接合し,摺動材を挟み,ボルトで締め 付けることで 2 面摩擦となるようにする.鋼板の摩擦 面は黒皮面を未処理のまま使用した.2 面摩擦とするた めの垂直抗力付与は,M12 の普通鋼製ボルト,鋼製角 座金,普通鋼製のナット,丸座金及びバネ座金を用い て行った. 2.2 載荷方法及び変位測定方法 表 1 に試験体の種類を,図 7 に載荷装置を示す.載 荷は図 7 のように架構を組み,梁端部を動的アクチュ エーターに接合して,変位制御により加振波形を与え た.加振波形は振動数が 0.2Hz で,表 1 に示す加振片 振幅の正弦波を順に各 10 サイクル繰り返し計 50 サイ クルの加振を行った.なお,表 1 の加振片振幅は図 7 中の梁中央部で測定した値である.また,2 面摩擦のた めの垂直抗力の付与に用いたボルトの張力はボルトに 貼り付けたひずみゲージの値で管理し,載荷中の値の 変化も測定した.ここで各試験体に与えた張力は小さ な設定値を与えて載荷を行い,載荷終了後に次の設定 値まで増し締めを行うという手順で付与した. 2.3 ダンパー耐力と PC 版の浮き上がりの関係 通常非構造壁の設計においては,壁版に作用する地 震力は慣性力(水平震度 K=1.0)のみで設計される4).し かし本研究で対象とする PC 版には一定の耐力を期待 して摩擦ダンパーを設置するため地震時の慣性力に加 えて摺動材による減衰力も作用する.PC 版に作用する 減衰力の大きさは摺動材に与えるボルト張力の大きさ により決定される.PC 版に作用する地震力,摺動材の 減衰力と慣性力による転倒モーメント(OTM),自重に よる抵抗モーメント(RM)は図 8 のように作用する.な お,それらのモーメントは載荷方向側の自重支持点を 中心に作用する.OTM>RM となると PC 版を架構フレ ームに固定している 2 箇所の面内水平力受けファスナ ーに上下方向の偶力が作用する.本実験において,こ の 偶力が 作用 するの は1 箇所当 りの ダンパ ー耐 力 図 3 摺動材の形状及び配筋(単位:㎜) 4-D6 hoop 2-D6@75 長穴 100×16 φ45 鋼管 530 65 65 100 100 100 100 150 150 75 75 90 30 30 図 7 載荷装置(単位:mm) 変位 測定位置 載荷位置 ひずみ 測定位置 Ⅰ’ Ⅰ Ⅱ Ⅱ’ Ⅰ-Ⅰ’断面図 Ⅱ-Ⅱ’断面図 + Q - Bブロック Aブロック L-175×175×t15 L-200×150×t20 L-100×100×t15 □-175×175×t6.0 自重受けファスナー 水平力受けファスナー 表 1 試験体の種類 ボルト張力 加振片振幅 (kN/本) (mm) BT1 1.0 12,24,36,24,12 BT3 3.0 12,24,36,24,12 BT6 6.0 12,24,36,24,12 BT10 10.0 12,24,36,24,12 試験体名 図 4 PC 版の形状及び配筋(単位:㎜) 1 7 0 0 11 0 0 2 8 0 3 0 0 5 4 0 3 0 0 2 8 0 2 1 0 5 7 0 50 270 15 0 30 0 8 00 30 0 15 0 ※ ○部分をコア抜き 摩擦面 1 摩擦面 2 摺動材 図 5 2 面摩擦接合の概要 鋼管 (内径φ33) ボルト孔 M12(張力導入) 水平力伝達ボルト (HT-M30) ・OTM=(RHc×2)×L1-PHk×L3 RHc=Q/2+PHk/2 ・RM=W×(L2÷2) Q/2 Q/2 RHc RHc W OTM L1 L3 L2 回転中心点 RM Q/2 Q/2 L4 W PHk RHc RHc 偶力 P OTM-RM PHk a) OTM≦RM の場合 b) OTM > RM の場合 ・OTM-RM=P×L4 W W : 自重 PHk : 慣性力 Q : 一部の層せん断力 RHc : ダンパー耐力 P : 偶力 図 8 PC 版に作用する地震力 回転中心点 65 115 135 115 75 75 530 400 5-14@100 65 115 300 2-16 115 82.5 82.5 40 50 24 0 図 6 摩擦面 2 に使用した 鋼板(単位:㎜)

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66-3 (RHc)を約 2kN とした時である. 3. 実験結果及び考察 図 9 に各試験体の滑り荷重 Q-水平変位δ関係,滑 り係数と累積水平変位Σδの関係,各制振ブロック(以 下,図 7 に示す A ブロック・B ブロックと呼ぶ)のボ ルト張力保持率と累積水平変位Σδの関係を示す.な お,滑り荷重 Q は作用させた水平力からフレームの負 担せん断力を除いた値,水平変位δは梁で測定された 値,ボルト張力保持率は各制振ブロックの初期導入張 力に対する載荷時に計測したボルト張力の比,滑り係 数は滑り荷重 Q を 4 本のボルト張力の総計で除した値 とする.全試験体とも正荷重側サイクル・負荷重側サ イクルともに負変位時ほど滑り荷重が小さい.これは ボルト張力保持率―累積水平変位Σδの関係により, 特に B ブロックのボルト張力保持率が正荷重側サイク ルの最大振幅時では約 1.4 程度,負荷重側サイクルでは 約 0.5~0.7 程度と大幅に変動していたためと考えられ る.B ブロックを締め付ける 2 本のボルトのうち,正 変位側のボルトの張力が大きく増減していたことから, B ブロックと溝形鋼を同じ高さにするために厚さ 1mm のプレートを溝形鋼と鋼板との間に挟んで調整したが, それが十分ではなく,結果正変位側に強固に摺動材が 締め付けられ,B ブロックのボルト張力が大幅に変動 したと考察される.PC 版はフレームの中心軸外に設置 されていたため,全試験体とも載荷中には PC 版に面外 方向に揺れが生じた.また BT1 試験体については B ブ ロックが面外にうねるように摺動した.BT1 試験体は 履歴曲線の荷重が二つの棚を経て増加しているが一段 目の棚は摺動材の円孔と水平力伝達ボルト間の 3mm のクリアランスによるもので,二段目の棚は前述の B ブロックが載荷方向の軸外にうねるように摺動したた めに A ブロックよりも摺動振幅が小さくなったことに 起因すると思われる.BT3 及び BT6 試験体については この現象は殆ど見られなかったが,減衰力を発揮する 際の荷重の上がり方がやや緩やかになっている.これ は PC 版の浮き上がり力により水平力伝達ボルトが回 転しながら摺動材の円孔に接触したためでと考察され る.BT10 試験体では載荷中に滑り荷重が PC 版と B ブ 図 9 実験結果 a) BT1 試験体 b) BT3 試験体 c) BT6 試験体

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66-4 ロック側の山形鋼間の摩擦力を超え,山形鋼が滑った. 滑り係数は BT1 試験体については多少ばらつきがあっ たものの,BT3 及び BT6 試験体は全サイクルを通して 正側で 1.2~1.5 程度,負側で 1.0~1.3 程度とほぼ一定 であった.表 2 に各試験体における平均滑り荷重,摩 擦係数,ボルト張力のサイクルにおける平均値を,図 10 に各試験体の正荷重載荷時におけるサイクル毎の梁 振幅に対する摺動材の振幅のロスを示す.なお算出に は対象としている履歴曲線の対応する変位振幅で除す 方法を用いた 5).表 2 中に示す各項目の変動係数は小 さく,繰り返しの挙動は安定していると言える.しか し載荷方向による影響が見られ,正荷重側の方が平均 値・変動係数ともに大きく表れた.図 10 より BT1 試 験体の摺動ロスは円孔と水平力伝達ボルト間のクリア である 3mm 程度となり,そこから導入張力が大きい試 験体になるほどロスは大きくなった.BT3 試験体はサ イクルを繰り返す毎にロスが大きくなる傾向が見られ た. 2.3 節で述べたように,抵抗モーメントでキャンセル しきれない転倒モーメント(OTM と RM との差)は 2 箇所の面内水平力受けファスナー間の偶力で受け止め られ,更にこの偶力は架構フレームの柱軸力となる. 図 11 に BT3 及び BT6 試験体に関する柱軸力と推定柱 軸力の,全サイクルにおける平均値を示す.ここで, 柱軸力は測定された柱ひずみにより求めた値であり, 推定柱軸力は OTM と RM との差を面内水平力受けフ ァスナー間の距離で除すことにより求めた値である. 測定された柱の軸力は計算により求めた軸力と同程度 の値となり,PC 版が回転しようとすれば,ファスナー 部で滑りが生じない限り,接合した架構フレームの断 面力が増加することが確認された.したがって,面内 水平力受けファスナーの接合部や架構フレームに無理 が生じない範囲でダンパー耐力を決定する必要がある. 4. まとめ 本論文で主体構造を想定したフレームに PC 版を接 合した上で同 PC 版の取り付け部に摺動材システムを 設置して水平載荷実験を行い,その挙動と構造性能を 調べた.得られた知見を以下に示す. 1)全試験体とも正荷重側サイクル・負荷重側サイクル で負側変位になるほど滑り荷重が小さくなった.この 主たる要因は B ブロックのボルト張力の変動によるも のと思われる.これは摺動材と溝形鋼を同じ高さに調 整する方法を検討することで改善しうる. 2)梁振幅に対する摺動材の振幅のロスは摺動材に与え る張力が大きい試験体になるほど大きくなった. 3)本システムでは転倒モーメントが抵抗モーメントを 上回ると摺動材の減衰力の発揮が遅れてしまい,また 上回ったモーメントは架構フレームが負担することが 分かった.したがって面内水平力受けファスナーの接 合部や架構フレームに無理が生じない範囲でダンパー 耐力を決定する必要がある. 参考文献 1) 今村晃 他:外装材が鉄骨構造の耐震性能に及ぼす影響―火力発電所建物への 影響―,日本建築学会構造系論文集,第 632 号,pp.1849-1856,2008.10 2) 山口謙太郎 他:循環型の建築構造,技報堂出版,2008.3 3) 牧野起八 他:コンクリート系非構造壁の端部に装着する摺動材を用いた摩擦 制 振 シ ス テ ム の 開 発 研 究 , 日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演 梗 概 集 , C-1 , pp1075-1076,2010.9 4) プレコンシステム協会:プレキャストコンクリート・カーテンウォール 計算 例 PART2. 取付け金物の計算 改訂版,1999.6 5) 小野聡子 他:アルミ溶射摩擦ダンパーの静的履歴特性に関する研究(その 2), 日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.589-590,1993.9 0 2 4 6 8 10 12 柱軸力 (k N) 測定で得 られたひず みにより求 めた軸力 計算により 求めた推 定軸力 図 11 浮き上がり荷重 正荷重時 負荷重時 BT3 試験体 正荷重時 負荷重時 BT6 試験体 表 2 平均ボルト張力,摩擦係数,滑り荷重(全サイクル) BT1 0.97 0.073 0.88 0.043 0.605 0.078 0.587 0.055 4.7 0.116 4.1 0.046 1.14 BT3 2.77 0.071 2.60 0.047 0.659 0.071 0.628 0.035 14.6 0.084 13.1 0.036 1.11 BT6 6.12 0.063 5.66 0.058 0.605 0.085 0.541 0.045 29.6 0.075 24.5 0.065 1.21 滑り荷重 正荷重側 負荷重側 負荷重側 比率 (正/ 負) 平均値 試験体名 ボルト張力(合計) 平均値 (kN) 変動 係数 平均値 (kN) 変動 係数 平均値 摩擦係数(=滑り係数/2) 変動 係数 変動 係数 正荷重側 負荷重側 変動 係数 平均値 (kN) 変動 係数 平均値 (kN) 正荷重側 図 10 梁振幅に対する摺動材振幅のロス 0 2 4 6 8 10 12 14 0 10 20 30 40 50 BT1 BT3 BT6 cycle 梁振 幅― 摺 動 材振 幅 (mm) 謝辞 本研究は,文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C),課題番号:20560524, 研究者代表:山口謙太郎)の助成を受けた.また,九州大学河野昭彦教授,長崎 総合科学大学安井信行准教授らを中心に行われている,外壁ファスナーの制振装 置化に関する研究打ち合わせで得た情報を参考に実施した.載荷実験は北九州市 立大学国際環境工学部の構造物多軸試験システムを使用して実施した.末尾なが ら記して謝意を示す.

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