子どもを対象とした建築系ワークショップ事例に関する研究ー組織形態と運営手法に着目して [ PDF
4
0
0
全文
(2) 表 2. 各団体の組織形態及び活動概要について. B. C. D. E. 1993. 1998. 1999. 2001. 2004. 2008. 2011. ⃝. ⃝. ⃝. ⃝. ⃝. ⃝. ー. A. 団体名 活動開始年（年） JIA 支部・地域会. 組 織. ・建築士会 ・学校 ・地域. 連携団体等. 構 成. NPO. 要. 協賛金. その他 建築・まちづくり手 法を利用した教育プ （生まれ故郷を自慢でき る大人になってもらう ログラムの一環. 目的. ため）. 動 概. ー. ⃝ ・助成金・会員会費 ・依頼者の資金. 運営資金. 活. ・地域のボランティ ア団体と連携 ・企画は主に学生で 行う. 年間多数. 頻度 ＊1. 活動回数 （回） （主催及び共催）. 固定プログラム有無. ＊2. 1 回／年. ・小学校 ・同父兄会 ・中学校 ・専門学校. JAGDA、DSA、JCD、 SDA 等デザイン関連 団体会員と合同開催. ー. ⃝. ・建築士会、建築事 建築家が講師を務 場合によって、教師 務所協会と協力開催 め、スタッフと学生 ・市 の参加もあり ボランティア（TA） （教育委員会より） （市の事業に商工会議所 によって組織される からの依頼があり参加）. ー. ・JIA 支部の活動資金 ・主に自己資金 ・JIA 支部の活動資金 ・助成金（年度による）・活動依頼者 建築・まちづくり手 建築・まちづくり 法を利用した教育プ の早期教育のため ログラムの一環. 1∼2 回／年. 年間多数. G. F. 建築・まちづくり手 法を利用した教育プ ログラムの一環. 1 回／年. ー. ⃝. 依頼者資金. ・受講料・協賛金（助 成会員の会費、寄付金）. 建築・まちづくり 職場体験（仕事を 知ってもらうため） の早期教育のため. 1 回／年. 1 年カリキュラム （前・後期各 10 回 ×2＝ ２０回実施）. 63. 16. 26. 58. 12. 4. 4. △. ⃝. ⃝. ◎. ー. 但しイベント内に限る. ⃝. 【表中注釈】 ＊1 : 活動回数は、各団体の活動の中でも建築家及び、建築家を含む活動メンバーの活動による子ども WS 事例、また、小学生から中学生を対象に実施されたものの回数を示す。 ＊2: ◎: 繰り返し実施するプログラムで実施 ⃝: 活動の大枠は同じで、その年に応じて内容に特徴を持つもの △: 活動の大枠が決まっているものと、オリジナルの内容で実施 ー : 特に指定がないもの. G は、建築家が私塾として企画し、大学教育者や助手、. 3-3-2. 活動頻度と回数、固定プログラムについて. スタッフによって企画運営を行い大学生がティーチン. 活動頻度として、年 1 回の開催を基本としている団. グアシスタントとして子どもたちのサポートを行う。. 体が、B・C・E・F の 4 団体、その中の 3 団体が固定. 3-2. 活動資金について. プログラムを有していることが分かる。また F は毎年. D・E では、JIA からの助成金を資金に充て、D では. 同様のプログラムで実施しており、B・C においては、. 活動依頼者の資金を使用する場合もある。また、F は. 活動の大枠は決まっているが、その年度毎で内容に特. ※3. 内で. 徴を持たせて実施している。E では特にプログラムの. の活動であり、活動依頼者の資金を使用している。A. 内容は指定しておらず、運営会議における話し合いに. は、助成金と依頼者の資金に加え同団体会員の会費を. よってその年度のテーマが決定される。なお、活動回. 活動費に充てる。同様に、G では同団体の会員協賛金. 数と活動年数に多少差がある理由として、年度によっ. に加え、受講料を活動費としている。活動に際して受. て 1 年に 1 回以上実施されたものや、活動が実施され. 講料を取り、活動の資金に充てているのは、7 団体で. ていない年があったことが挙げられる。. 市と商工会議所が主催する職業体験イベント. ※4. や別. 次に、A と D では 1 年間に多数実施されており、特. 事業との連携による助成金、B では協賛金を資金に充. に D では実施総数は 58 回 ※ 6、平均して年に 4 〜 5 回. てて活動している。. 程度の頻度で活動している。同団体の活動が多数実施. 3-3. 子ども WS の活動概要について. される理由として、資材を繰り返し使用することで. 3-3-1. 目的について. 経済効率も良く、期間も 2 〜 3 時間程度で実施できる. 子ども WS の活動目的を、7 団体中 A・C・E の 3 団体が、. 固定プログラム ※ 7（図 1、2）の開発により活動が容. G のみである。そして C は、同団体の自己資金. “建築・まちづくり手法を利用した教育プログラムの. 易となっているためである。このプログラムは、転用. 一環”そして D・G が“建築・まちづくりの早期教育. のしやすさから、近年では他団体による活動も活発に. のため”としている。. なってきている（他団体主催 : 32/58 回中）。また、A. また、A・E は共に米国で開発された教育プログラ. では、固定プログラムもあるが、依頼者の要望や活動. ム. ※5. を基にした独自のプログラムを開発し、活動を. 行っている。F は、“職業体験”というイベント. ※3. の必要性に応じて、実施期間を問わず継続的に活動し. 自. 体の目的の内で“建設ブース”を担当し活動をしてい る。この他に、高校生を対象としたジュニアオープン デスク事業を毎年実施しているが、小学生を対象とし た継続的な活動は行っていない。そして、B では、現 代の子どもたちの地域に対する愛着の低下を危惧した ことから、“生まれ故郷を自慢できる大人になっても らうため”という目的を掲げ、活動を続けている。. 図 1. 子ども WS（D）中の様子開始直後. 31-2. 図 2. 子ども WS（D）途中経過.
(3) ている。そして、G では、年間を通したプログラムを. 4-1-1. 単独型手法における分類. 前期・後期各 10 回ずつ、年間計 20 回に分けて実施さ. 表 3 の①より、2) を除く 5 つの手法によって単独. れている. ※8. 。基本のプログラムは決まっているが、活. で実施されていることが分かる。2) については、他. 動毎に独自の要素を加えることで、年間実施の特徴を. の手法と複合して実施される場合が多く対象事例中、. 生かした体系的に学べるプログラムを実施している。. 47 事例である。. 3-4. 子ども WS 活動回数の変化における傾向. まず、1) は、7 団体中 3 団体が実施しており、1 日. 7 団体における子ども WS 活動回数における経年変. もしくは数日間で実施され、長期間で実施されている. 化を図 3 に示す。実施回数は、2004 年までは増加傾. ものはない。また、小学 3 年生以上を対象に実施され. 向であるが、近年減少傾向にあることが分かる。実施. ている。この手法では、事前に用意された何種類かの. 回数に変動がみられる原因の１つとして、2002 年に. 組立式の模型に工夫を加えながら完成させるものや、. 本格的に実施された、総合的な学習の時間（以下 : 総. 計画の段階から独自のアイデアによって設計するもの. 合学習）の授業数が近年削減されていることが考えら. などが活動例として挙げられる。次に 3) では、2 団. れる。A においては、その傾向が顕著にみられ、1998. 体が実施しており、8.5 割が高学年を対象にして実施. 年には総合学習に基づいた内容で実施されている活動. されている。また、学年単位やクラス単位で実施する. がみられる。しかし、2007 年以降は学校での総合学. ことが多く、丸 1 日の日程を全て使って実施されるこ. 習における活動が途絶えており、子ども WS における. とが多い。また、4) では 2 団体で実施され、高学年. 減少傾向の一端となっていることが考えられる。. に実施される場合と、全校生徒を対象に実施される場 合がある。この手法で実施している団体では、“力の 流れ”や“ものの美しさ”を理解できる高学年を対象. G. に企画しているが、実際には幼稚園から大学生と広い. F. 表 3. 子ども WS 手法別に見る分類 実施学年 そ の 他. 中 学 生. 中 学 生. 高 学 年 低 学 年. 長 期 間. 子ども WS の手法. B. 開催期間 数 日 間. C. １ 日 間. 実施団体数. ① 単 独 型 手 法. D. 担当する人数. E. A 建築（建物）の設計（デ ザイン）を考え模型や プレゼンテーションを 行う. 1). 建築（設 計）WS. 2). まち歩き 地域のことをしるため WS に行うフィールドワー ー ー ー ー ー ー ー. 3 6 5. 0 0 7 0. 小学 3・4 年生 : 4. ー 2. ー. ー ー. 住んでいるまちなど、. 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12. ク. 図 3. 子ども WS 活動回数の変化. 住んでいるまちなど、. 3-5. 小結. 3). 各団体によって、組織形態や活動概要は様々である. まちづくり 地域のことをしるため に行うフィールドワー WS. 2 11 0. 4 2 12 0. ー. 1 5. 空間体験 人間が入れるものを計 画（デザイン）・作成 WS. 2 10 1. 0 0 9 0. 小学生全学年 : 2. ー 13. 小学生全学年＋中学 生:1 小学生全学年 : 2 小学 2∼6 年生 : 1 小学 3∼6 年生 : 1 ２歳∼小学 6 年生 : 1. 6 1. ク. が、継続的な活動が実施されている場合、建築家のみ. 4). で組織される場合もあるが、建築の分野だけではなく 他デザイン団体や地域団体等と連携、さらに学生等の 異世代間との交流が図られる傾向が見られる。また、 現在の子ども WS における活動を全体的にみると全盛. デザインを通したもの 5) ものづくり づくり （※建築・まち以外の WS もの）. 3 10 28 2 12 15 1. アイデア形成やまちに ついて考えるきっかけ となる活動. 3 2 0 7 0 0 0. 6) その他 目的. 期に比べ減少傾向にあるといえる。 4. 子ども WS の手法における分析（表 3、図 4） . 1). 4-1. 子ども WS の手法における分類 7 団体がこれまでに実施した子ども WS を 6 つの手 法により分類した。1) 建築（設計）WS、2) まち歩き. 3). WS、3) まちづくり WS、4) 空間体験 WS、5) ものづく. る“単独型手法”と、複数の手法を経て実施される“複 合型手法”の 2 つの手法に分けることができる。. 8 ー. ② 複 合 型 手 法. a. 2)＋1). 1 2 0 2 0 4. 0. ー. b c. 6)＋1) 1)＋2)＋6). 1 0 0 2 0 0. 0. 小学 1・3∼6: 1. 1 0 0 2 0 0 0. 小学 1・3∼6: 1. 1 1. d e. 2)＋3) 2)＋5)＋3). 1 0 16 0 0 0 0 1 0 0 11 0 11 0. 小学生全学年 : 16. ー ー. ー. ー ー. f. 4)＋3). 1 48 0 0 0 25 0. 小学生全学年 : 10 小学 1∼5 年生 : 3 小学 3∼5 年生 : 2 小学 3 年・中学生 : 1 幼稚園児∼高校生ま で:1. g. 2)＋4)＋3). 1 0 2 0 0 1 1. ー. り WS、 6) その他の 6 つの項目とする。子ども WS の事 例を分類する上で、1) 〜 6) の手法が単独で実践され. 中学生以上 : 1. ー 7 1 1. 6 5. ー 7. 小学生全学年 : 1 5) 2)＋5) h 2 7 0 5 3 6 0 小学 3∼6 年生 : 1 1 1 【表 3 中の言葉定義】・開催期間…数日間 :2 日∼1 週間未満、長期間 : 1 週間以上 ・学年…低学年 : 小 学 1∼3 年生、高学年 : 小学 4∼6 年生. 31-3.
(4) 対象で実施されている。これは、製作物の規模が大き. を１人が担当し実施される傾向がみられる。例外とし. いためグループによる協同作業が多いことが理由とし. て a が 7 人となっており、これは、団体主催で実施す. て挙げられる。また、5) は、3 団体で実施され、これ. る場合は、活動に適切な募集定員を設定できるが、学. らの手法の中で最も多く扱われる手法であり、実施学. 校の授業と連携すると、平日の活動となり人員確保が. 年においても低学年と高学年の実施数にあまり差が見. 困難なため可能な人数で対応していると考えられる。. られない。実施期間は製作するものの規模によって変. 4-3. 小結. わり、長期間のものでは、夏休み期間も使い約 3 ヶ月. 本章では、複合型手法において、2) は、初期段階. 間を実施期間に充てている例もある。. で実施されており、さらに、手法を複合させることで. そして 6) では、子どもたちのアイデアを感化させ. 活動内容の程度の操作を図ることが可能である。さら. る様な専門家による講義、海外の子どもたちとテレビ. に、活動を実施する際の団体側の人員における、単独・. 会議の実施、住宅の見学等、特徴的なものがみられる。. 複合型手法を実施. その他に、地域に残る歴史建造物の保存活動が 10 年. する際の必要な人. 近くにわたって行われている例や、中学生以上を対象. 員からみた特徴と. にして実施されているパソコンを使った設計シミュ. して、同様の傾向. レーションが実施される例もみられた。. が見られることが. 4-1-2. 複合型手法における分類. 分かった。そして、. 表 5 の②（以下 : 複合型）を分類し、a 〜 h の記号. 実施学年におい. で示す。また、この複合型を実施しているのは 7 団体. て、手法によって. 中 6 団体であり、4-1-1 で触れたが、2) は、他の 5 つ. は、対象学年が設定されているものもあるが、要望が. の手法と関連性を持たせることができ、他の手法を達. あれば、特に学年を限定してない。また、中学生を対. 成する過程として扱われると考えられる。また、開催. 象としているものは全体の 3％であり、現状としては. 期間も数日間以上と一定時間を確保して実施されてい. 実施されるものが限られていることが分かる。. ることが分かる。これらの関係を図 4 に表す。. 5. まとめ. 2) は、複合型手法の初期段階で実施され、そこで. 組織形態では、建築家のみで実施されるものと、他. 得た情報を報告書や壁新聞等の“もの”としてまとめ. 分野と連携し実施されるものあるが、実施の活動の際. るものが h、そして“建築づくり”での要素として取. には、地域や小学校など建築以外の分野との連携が、. り入れられるのが a である。そして、2) で学んだこ. 子ども WS の活動を円滑に進める際に不可欠である。. とを“もの”や“空間づくり”を通してそれらの関係. また、活動中の問題点に改善策を与えることによって、. 性を考える“まちづくり”として実施されるのが、d・e・. 現在の各団体の活動の骨格が形成されていることが分. g である。それに付加要素として独自の手法が実施さ. かった。そして、子ども WS の手法に関して、6 つの. れるものが c となる。また、b と f では、2) の要素こ. 手法と、いくつかの手法を複合させたものを団体毎に. そ含まれていないが、f は、g の様に 2) と複合して実. 特色を持ちながら実施しており、中でも生活の最も身. 施されている例や、b の事例では c が実施される前の. 近にある“地域”を知ることは、全ての子ども WS の. 段階で実施さ れており、 “地. 5) ものづくり WS 6) その他. 3) まちづくり WS. d. f. 域”を知るこ. h. e. c. b. 2) まち歩き WS. g. 4) 空間体験 WS. a. 1) 建築（設計）づくり WS. 【記号について】 a : 1)＋2) b : 6)＋1) c : 1)＋2)＋6) d : 2)＋3) e : 2)＋3)＋5) f : 4)＋3) g : 2)＋4)＋3) h : 2)＋5). 図 4. 子ども WS 手法における関係図. とが、子ども WS の 手 法 に おいて基本と なっていると 推測できる。. 4-2. 子ども WS における団体側の人員について 手法毎に１人が担当する子どもの人数を比較する と、3) や 4) など協同作業で実施されるものに比べ、1) や 5）など個人作業が多いものは、1 〜 2 人の子ども. 図 5. 子ども WS の活動風景. 手法の過程において、重要な要素であると推測できる。 【謝辞】本研究にあたり、アンケート調査及びヒアリング調査にご協力いただいた 皆様、ならびに活動に参加させて頂きました団体の皆様、そして、本研究にご協 力いただきましたすべての方々に、この場を借りて感謝の意を示します。 【本文注釈】※ 1:「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自 ら参加・体験して協同で何かを学びあったり作り出したりする学びと想像のスタイ ル」 「ワークショップ−新しい学びと創造の場−」１. ワークショップの定義より/ 中 野民生著 /2001 年 1 月19日 ※ 2: 世界建築家連合の人工環境教育作業部会に よる、世界各国の建築家各国で教師や生徒達との協力を成功させる事を目的とし、 ① 学校における建築家 ② カリキュラムの要素 ③ 教師のトレーニング の３要 素から構成 ※ 3:『ミニさっぽろ』仮想の街「ミニさっぽろ市」の市民となり職業・ 消費者体験を実施（2008 年より) ※ 4:同団体が行政機関等のデザイン業務に関 する受託によって得た資金 ※ 5:アン・テーラー博士が建築家ジョージ・ヴラス トス氏の協力を経て 1987 年に開発した総合学習プログラム。 「ARCHITECTURE AND CHILDREN（建築と子供たち )」また A では、ドリーン・ネルソン氏により開発され TM た教育方法『まちづくり教育（City Building Education ） 』も理念として独自の 活動を展開 ※ 6: 対象外も含めると 62 回実施 ※ 7:まちをつくろう! 空間ワーク ショップ。地域内の小学校図工科教師と D との共同開発。角材とジャンボ輪ゴム のみで空間を構成するプログラム。 ※ 8: 本研究では各期毎で 1 回としている。. 31-4.
(5)
関連したドキュメント
生活のしづらさを抱えている方に対し、 それ らを解決するために活用する各種の 制度・施 設・機関・設備・資金・物質・
基本目標２ 一 人 ひとり が いきいきと活 動するに ぎわいのあるま ち づくり1.
基本目標２ 一 人 ひとり が いきいきと活 動するに ぎわいのあるま ち づくり.
県民のリサイクルに対する意識の高揚や活動の定着化を図ることを目的に、「環境を守り、資源を
「事業活動収支計算書」は、当該年度の活動に対応する事業活動収入および事業活動支出の内容を明らか
1989 年に市民社会組織の設立が開始、2017 年は 54,000 の組織が教会を背景としたいくつ かの強力な組織が活動している。資金構成：公共
「事業活動収支計算書」は、当該年度の活動に対応する事業活動収入および事業活動支出の内容を明らか
原子力損害 賠償・廃炉 等支援機構 法に基づく 廃炉等積立 金に充てる ための廃炉 等負担金の 支払 資金貸借取 引 債務保証
