橋梁の夜景照明の視覚的効果に関する研究
高橋 彩人
1・深堀 清隆
2・窪田 陽一
3 1 学生会員 埼玉大学大学院理工学研究科博士前期課程環境システム工学系専攻環境制御システム コース (〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255,E-mail:[email protected]) 2 正会員 博士(学術) 埼玉大学大学院理工学研究科環境科学・社会基盤部門 (〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255,E-mail:[email protected]) 3 正会員 工博 埼玉大学大学院理工学研究科環境科学・社会基盤部門 (〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255,E-mail:[email protected]) 都市景観を考えていく上で,優れた夜間景観の形成が求められており,特に河川に架かる橋梁の夜景照 明は,夜間景観にアクセントを与え,ランドマークとしての効果も発揮している.本研究では,特に橋梁 の夜景照明にの照明手法に着目し,その視覚的効果について,人がどのように知覚・認知していくのか瞬 間提示実験により被験者のスケッチから検証を行った.さらに,実際の橋梁に施されている各照明手法の 照明による効果や照明による各部材の見えについてその有効距離について検証を行った.その結果,照明 手法により,各部材の出現率の傾向や視覚的効果の有効性が異なり,また照明による効果については照明 デザイナーが狙った効果やディテールの見えなどに有効距離があるということが判明した. キーワード :夜景照明,照明デザイン,瞬間提示実験,調整法 1.研究の背景と目的 現在,都市景観を考えていく上で,優れた夜間景観の 形成が求められており,橋梁や建築物のライトアップな どは特に夜間景観の向上に貢献している.特に河川に架 かる橋梁の夜景照明については,夜間景観にアクセント を与え,ランドマークとしての効果も発揮している.し かし実際に行われている夜景照明の中には問題がある場 合も多く,照明器具のメンテナンス不備,昼間の景観を 害する照明器具の配置,また不十分な計画による照明設 計など,照明による効果が十分発揮されていないものが 見受けられる.加えて必要以上に光を使うことがかえっ て光害として捉えられてしまう可能性もある.従って, 昨今の省エネルギーの要請もふまえ,必要最小限の光に より効果的なライトアップを行い,夜間の空間の分かり やすさや個性的な場所性の付与といったライトアップの 機能的メリットを最大限発揮させることが大切である. 筆者らはこれまで歴史的橋梁の構造デザインや細部意 匠などを表現する照明手法の提案1)や橋梁の夜景照明の 景観構図の類型化とその構図分類による夜景における景 観コントロールの提案2)を行ってきた.しかし,人が橋 梁の夜景照明を見たときに視覚的効果がどのように知 覚・認知されていくのかということに関する定量的な検 証が不十分であった. そこで,本研究では橋梁の夜景照明における光の知 覚・認知に着目し,夜景画像に対する瞬間提示実験で得 られた被験者のスケッチを分析することにより,照明が 人に及ぼす視覚的効果について明らかにすることを目的 としている.これまで建築の分野においては増山らによ りライトアップされた建築ファサードの見えについて現 地実験やスライド実験より視距離による見えの変化構造 を明らかにする研究3)が行われているが,橋梁を対象と した夜景照明の視覚的な有効距離についてはこれまで検 証されていない.そこで本研究では様々な照明手法に着 目し,その有効距離について明らかにし,照明による視 覚的効果と同時に考察を行うことにより,橋梁の夜景照 明の有効性について詳細に示すことを目的としている. 2.橋梁の夜景照明における各々の照明手法の有 効距離に関する現地調査 現地調査では実際に東京の橋梁を中心(表-1)にこれ まで筆者らが整理してきた照明手法1)(表-2)について 実際の夜景照明による見えについて,その効果が視点 場・視距離(50m間隔)によってどのように変化するの か調査を行った.その結果,現地調査より①グラデーシ ョンなど光の効果にはその効果が得られる有効範囲があ 景観・デザイン研究講演集 No.4 December 2008ること,②夜景照明により橋梁の各要素(部材等)の見 え方については視距離によりおよそ4段階に分類するこ とができること(表-3),③メンテナンス不備や街路照 明,照明用光源は橋梁の全体的な見えに影響を及ぼすこ となどが判明した.以上より,照明による効果は視距離 や視点場によって変化することが確認された. 3.橋梁の夜景照明に関する評価実験の方法 (1)実験全体の概要 本研究の目的である橋梁の夜景照明について知覚・認 知に着目し,人に及ぼす視覚的効果について明らかにす るためには,瞬間提示実験が適当であると考えられる. 一般に瞬間提示実験は,画像の提示時間を瞬間的なもの から次第に増大させて各々の時間における被験者の対象 認識を測定し,そこからより高度な視覚認識がどのよう に形成されていくか,その過程を知るために用いられる 実験である.そのため,本研究では夜景照明が施された 橋梁の画像を瞬間的に提示することにより,照明による 視覚的効果を判断するのに他の情緒的な要因などを排除 できると考え,各々の照明による視覚的効果の相互関係 を推測,また視距離の異なる刺激を用いることにより照 明による視覚的効果の視距離による影響を被験者のスケ ッチから分析した(実験1). しかし,照明による効果には,感覚的な効果を狙った ものもあり,これらは瞬間提示実験のみでは明らかにす ることができないと考えられる.また,視距離に着目し た場合,照明による効果や照明による各部材の見えにつ いても瞬間提示実験から明らかにすることは困難である と考えられる.そこで,本研究ではこれらの問題に対し て,橋梁を約10m間隔に撮影した画像を用いて調整法に より橋梁に施される様々な照明手法についての有効距離 を分析した. (2)夜景照明の視覚的効果に関する評価実験(実験1) a)実験概要 実験1は(株)岩通アイセル社製のカラーAVタキスト スコープ(IS-703)を用いた瞬間提示実験を行った. 実験1については,大きく2回に分けて実験を行った. 1回目の実験(実験1-1)ではなるべく多くの橋梁に関 して構造形式を考慮した上で,吾妻橋・新大橋・清洲 橋・永代橋・勝鬨橋・南高橋の合計6橋を選定した.そ れぞれの橋梁について視点場・視距離や被験者の負担等 をも考慮したうえで,計20枚の画像を実験で使用した. 提示時間については20,500,2000msecとした. また,実験1-1では橋梁数を多く設定したため,問題 点として各橋梁に関してそれぞれ視点場数が十分確保で きなかった.また最大提示時間を2000msecとしたが,一 般的に橋梁を眺める時間としてはあまりに提示時間が短 いと判断したため,2回目の実験(実験1-2)では6橋の うち,清洲橋,永代橋,勝鬨橋について視点場数を増や し,計19枚の画像に対して実験を行い,その提示時間を 2000msec,5000msecとした. b)実験の実施 ・実験1-1 被験者:埼玉大学学生27名(男性22名,女性5名) ・実験1-2 被験者:埼玉大学学生18名(男性15名,女性3名) 一部の被験者には,実験1-1,実験1-2ともに行って もらった. c)実験方法 実験に関してはこれまでの既存研究4)を基に,特に提 示時間やスケッチ方法について参考にしながら行った. 実験は暗室で行い,被験者の眼とモニターまでの距離, 及び視点位置を固定するため被験者の顔を顔面固定機で 固定し,さらにモニターに実験画像を提示する前に注視 点画像を提示した.また,提示時間による光色に対する 知覚の仕方を見るために,被験者には事前に用意した色 鉛筆(12色)を使用してモニターに映し出された画像に ついてスケッチにより表現してもらった.画像の提示に ついては,視距離が長い方から短い方に順番に,提示時 間は短い時間から長い時間に順番に,一方橋梁について はランダムに提示した.また,画像提示毎に,ただちに スケッチを行ってもらった. d)実験結果の分析方法 実験 1 ではスケッチを分析することにより照明による 視覚的効果が提示時間によりどのような変化が見られる のか検証を行った.そこでスケッチより橋梁の各要素 (部材)について,その出現率や橋梁がどの程度詳細に 再現されているかという再現性に着目した.出現率とは, ある画像に存在する特定の要素をスケッチした人の全被 河川名 橋梁名 亀島川 南高橋 神田川 柳橋 隅田川 吾妻橋 新大橋 清洲橋 永代橋 中央大橋 勝鬨橋 構造形態をシルエットで見せる 昼間影となっている箇所の照射 リベットに影を付ける 主塔の照射 ライン照明による照射 垂直成分の連続性を強調する 構造形態を輪郭を縁取る トラス部材を内部から照射 橋門の照射 表-2 着目した照明手法 表-1 調査対象の橋梁 表-3 視距離による見えの分類 分類1 照明による効果が特によく認識できる 分類2 照明による効果が(なんとなく)認識できる 分類3 照明されていることが認識できる 分類4 光が見えたとしてもどこに対する光なのか認識できない
験者数に対する割合である.出現率に関しては,スケッ チから明らかに要素(部材)について描いていると判断 できるものを抽出した.また,スケッチの再現性では図 としての表現や線としての表現などの違いは照明による 視覚的効果の影響を反映しているものであると考え,こ こでは再現性が高い(詳細にスケッチされている等), もしくは出現率が高くなるほど照明による視覚的効果が 高いと仮定した.さらに再現性については,各照明手法 の効果についてそれぞれスケッチの表現方法から「明ら かに照明よる効果がよりはっきり表現されている」, 「照明による効果が表現される」,「照明による効果が 表現されているとは言えない」,「まったく表現されて いない」などというように 3 から 4 段階に分類し,それ らの分類を基に評価基準を設定し照明による光の効果に ついての分析を行った.なお,スケッチの中には当然判 断しづらい要素もあり,これらの要素についてはなるべ く分析の対象としないようにした. (3)照明効果の有効距離に関する評価実験(実験2) a)実験概要 実験2では,調整法によって橋梁に施される様々な照 明手法に関してその効果の有効距離を検証することを目 的としている.また,実験1では情緒的な要因について はできるだけ排除するようにしたが,実験2では十分な 時間画像を見てもらうため,照明によって得られる感覚 的な効果についても考慮した. b)実験の実施 被験者:埼玉大学学生25名(男性23名,女性2名) 一部の被験者には実験1と実験2ともに行ってもらった. c)実験方法 実験2では,照明デザインが特に明確になっている清 洲橋,永代橋,勝鬨橋を対象とし,それぞれ,視距離を 420m(39),940m(72),780m(74)の範囲とした(カ ッコ内は実験で採用した視点場数(画像数)となってい る). 実験方法としては, 10m間隔で撮影した画像(ただし 一部の区間で撮影が困難な視点場があるため,視距離に よっては画像がない箇所が含まれる)をモニターに映し 出し,被験者にそれらの画像を視距離の短い方から見て もらい調整してもらいながら(上昇系列),以上に示す 質問に対する答えであると思われる画像を選択し,事前 に用意した用紙に回答してもらった. 質問ではそれぞれの照明効果や部材が上昇系列で提示 される画像のどの画像まで視認できるかを答えてもらっ た.質問内容は大きく 3 つの項目からなる.1 つ目は橋 梁全体に関する質問として,橋梁の奥行き感(立体感) について,2 つ目は照明デザインの効果に関する質問で 照明デザイナーが意図した効果に関する質問,3 つ目は 橋梁の各部材の照明による見えに関する質問を行った. それぞれの質問について回答してもらう際には,その 都度,最も視距離が短い画像から見てもらった.また, 実験の前に各部材の名称などの専門用語や表現について は,写真や補足説明などを用いて説明を行ない,実験中 も必要に応じて被験者の質問に対応するようにした. d)実験結果の分析方法 それぞれの質問に対して各被験者から得られた視距離 に関するデータについて分布をとり,各視距離ごとに被 験者が効果を視認できると判断した割合からロジスティ ック曲線を求め,照明による効果の有効距離の目安を求 めた.また,この有効距離を推測する際には,図-1 の ようにそれぞれの質問に関して 75%値と 50%値を算出し た. 75%値に関しては照明による効果がよりより確実に 認識される範囲であり,50%値に関しては照明による効 果があるかないか中間的な境界と解釈することができる. 4.実験結果及び考察 (1)照明による効果の有効距離に関する実験結果 a)実験結果について 実験結果については,図-5及び図-6に示したような結 果が得られた.これらは横軸に視距離,縦軸に橋梁名も しくは各照明手法となっている.それぞれの棒グラフに ついては,橙色の部分が75%値,水色の部分が50%値と なっている.また,透明になっている部分が50%未満の 範囲で今回の実験で対象とした視距離の区間(撮影対象 区間)を表している. 図-5は,橋梁の奥行き感に関して示した図であり, 図-6は各照明手法別にその有効距離に関して示した図で ある.また,図-6の各照明手法に関しては既存研究や雑 資料1) 5) 6)より複数選定した. b)橋梁の奥行き感(立体感)について(図-5) 図-1 清洲橋の照明による奥行き感の視認性について のロジスティック曲線 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 50 100 150 200 250 300 350 400 視距離(m) 割 合 ロジスティック曲線 各視距離における被験者の割合 75%値 50%値 90
橋梁の奥行き感についてはすべての橋で共通して質問 を行った.結果を比較すると清洲橋と勝鬨橋の75%値は 約100mとなっている.一方,永代橋に関しては75%値が 250mと他の橋梁に比べ,長くなっていることが分かる. 奥行き感に関しては橋梁の構造形式によっても異なって くると考えられるが奥行き感に影響を及ぼすものとして, 横構などの部材の見えや反対側の部材の見えが影響して くると考えられる.清洲橋に関しては,主塔に対する照 明が,橋梁全体としての奥行き感に影響を及ぼしている と考えられる.しかし,チェーンケーブルなどは橋梁の 外側にのみ照明が施されているため,片側のチェーンケ ーブルについてはほとんど認識することができないため より奥行き感が失われていると考えられる.現在の夜景 照明では橋梁の側面を照明することに集中しているが, ここでの奥行き感などを照明の効果によって得るために は,橋梁の内部の横構や各部材について橋梁の内側を照 明することによってより奥行き感が得られると考えられ る.また,奥行き感に関しては照明による効果の他に物 理的な要因として視線入射角が影響するものと考えられ る.特に,永代橋では他の橋梁に比べて同じ視距離にお ける視線入射角が浅いため,より奥行き感が捉えられや すいと考えられる.また,勝鬨橋に関しては,他の橋梁 に比べ,橋長が長いため,全体的に奥行きに比べ水平成 分が強調されているため,奥行き感については短くなっ ていると考えられる. c)アーチリブをライン照明で照射する(図-3,図-4, 図-6) この照明手法は下路アーチ橋のアーチ構造をもっとも 効果的に表現することができる手法であると考えられる. 現地調査等からこの照明手法についてはアーチリブの強 調の他にも部材の面に光が当たることによるグラデーシ ョンも得られると考えられるため,これについても質問 事項に記載した.実験結果より,アーチリブの強調に関 しては永代橋・勝鬨橋ともに極めて高い効果が得られて いることが分かる.また両橋梁を比較すると,勝鬨橋に 比べ永代橋に関してはグラデーションの効果が得られて いることが分かる.また,永代橋に関してはアーチリブ の強調に関してもすべての被験者が940mまで感じられる と答えているが,勝鬨橋に関しては75%値が470mとなっ ている.これらの差については,いくつかの要因が考え られる.まずは,光源のW 数の違いが考えられる.永代 橋ではFLR(ラピッドスタート型蛍光灯) の40W,勝鬨 橋ではFLR の20W 若しくは32Wが使用されており,永代 橋の方がW 数が高い.また光色として,永代橋では青色 (図-3),勝鬨橋では緑色(図-4)が使用されているが, これについても明らかに青色の方が明るいと感じられて いる.さらに照射される面の広さとして永代橋は,アー チリブ全体に光が広がっているのに対して,勝鬨橋の場 合,光の広がり方も小さく,これらが要因として挙げら れる. d)イルミネーションで構造形態を縁取る(図-2,図-3, 図-4,図-6) イルミネーションによる照明手法の場合,他の照明手 法と異なり,光源を直接見せる形式であり,また連続し て配置されているため,認識される距離は長くなる傾向 にあると考えられる.実験結果からも,イルミネーショ ンの見えは極めて高いことが分かる.また,特に清洲橋 におけるチェーンケーブルの曲線成分の強調に関しては 桁の水平成分の強調に比べてその効果が長い傾向にある ことが分かった.これについては,曲線という特徴的な 形状により,より強調されているように感じられると考 えられる.また,清洲橋に関しては,光色にピンク色が 使用されており,より背景とのコントラストが強くなっ ていると考えられる.永代橋と勝鬨橋に関しては,とも に桁の水平成分を強調しているが実験結果からは有効距 離がほぼ同程度であった.また,水平成分の強調に関し ては75%値と50%値の間隔が両橋梁ともに200m以上あり, これは被験者によってその効果が得られる範囲に差があ るということがいえる.また,永代橋の光色は白色,勝 鬨橋の光色は青色であるが光色の違いによる有効距離の 差については実験結果からは得られなかった. e)昼間影となっている部分を照射する(支承)(図-2, 図-3,図-6) 支承など昼間影となっている部分を照明することによ り,昼間とは異なった姿を表現するができる.ここで取 り上げているように清洲橋や永代橋の支承に関しては昼 間は完全に桁の影になっているが,照明を施すことによ り,単に明るくなるだけでなく,ディテールに影ができ ることによって強調され,より支承の存在感を高めてい ると考えられる.この実験では,支承のディテールと支 承の見えについて質問を行った.ここでのディテールと は,清洲橋に関しては半円版を組み合わせたような支承 の形状,永代橋に関しては三角形を組み合わせたような 支承の形状とした.その結果,支承のディテールの見え については50%値はともに100m付近であった.また,75% 値に関しては若干清洲橋の方が長いという傾向が見られ た.支承の見えについては,50%値に関しては清洲橋が 350m,永代橋が500mと永代橋の方が長いという結果にな った.また,支承のディテールの見えと支承の見えにつ いては両橋梁ともに有効距離にかなりの差が見られた. この差から,ディテールはそれほど広範囲では確認する ことができないが支承の見えについては照明による効果 が特に広範囲に渡って得られると考えられる. f)昼間影となっている部分を照射する(桁裏)(図-6)
橋梁の桁裏部分についても昼間は完全に影となってお り,その構造を見ることはほとんどできない.勝鬨橋に 関しては,桁裏部分に照明が施されており,照明によっ て光が当たる部分と影の部分のコントラストにより,桁 裏の構造が効果的に表現されている.実験結果から桁裏 部分の照明については,有効距離が極めて短いというこ とが判明した.そのため,桁裏を照射することによって 得られる効果は極めて短いといえる. g)桁をライン照明で照射する(図-2,図-6) 清洲橋では,桁の水平成分の強調に関しては,他の永 代橋や勝鬨橋などのように直接光源を見せるのではなく, ライン照明を部材に照射することによって,その反射す る光をみせる方法が採られている(図-2).実験結果か ら,イルミネーションによる照明手法の方がその効果が より得られていることが分かる.また,清洲橋の場合, 照射される面が小さいため,照明による効果が得られに くいということも考えられる.桁のディテールに関して は,50%値でおおよそ100mであり,水平成分の強調に比 べてもさらに低い結果となった.桁のディテールに関し ては,桁裏側の構造の見えなどについて質問を行った. また,ライン照明による桁の見えについても今回実験で 設定した全範囲においては得られておらず,清洲橋にお けるライン照明による効果はそれほど高いとはいえない. h)主塔を照射する(図-2,図-6) 清洲橋の主塔に関しては特に横材の見えに着目した. ここでの横材のディテールに関しては,横材のアーチ部 材やその他の細部の部材の形状とした.また,清洲橋の 主塔については,清洲橋の主塔をゲートのように見せる という狙いがあるため,その効果についても質問を行っ た.実験の結果から主塔をゲートのように見せるという 効果に関しては50%値で180mという結果となり,横材の 見えの250m(50%値)に比べ短かった.これより,横材 が認識できたとしても必ずしもゲートのように感じられ るわけではないということがいえる.また,横材のディ テールに関しては,50%値で100mとそれほど長くないと いうことも分かった.これらより,横材に対する照明は, 広範囲に渡って照明による効果が得られるわけではなく, 横材の見えとゲートのように見せる効果には直接的な関 係がないといえる. i)運転室,橋台を照射する(図-4,図-6) 勝鬨橋は,他の橋梁にはない特徴として,跳開部が挙 げられる.その跳開部の両脇には,運転室や橋台があり, これらが照明されることにより,跳開部の存在感を増し ている.ここでは,運転室,橋台の照明による見えに関 する質問を行った.運転室のディテールに関しては,運 転室の窓枠等の見えとした.実験の結果,運転室のディ テールの見えに関しては,50%値については280mであっ た.また,運転室の見えに関しては,50%値が500mであ り,今回設定した全範囲でその効果が得られたわけでは なかった.一方,橋台に関してはその見えに関しては全 範囲で照明による効果が得られていることが分かる.こ れらの差としてもっとも考えられることとしては照明に より照射される面の大きさの違いが考えられる.また, 特に運転室に関しては,遠景においては背景の影響も考 えられ,背景のビル群と融合してしまうということも考 えられる. j)リベットを照射する(図-6) リベットは橋梁の特徴的な要素のひとつであるといえ る.照明により,リベットに影ができることにより,そ の存在感を増す効果がある.そのため,ここではリベッ トの見えについても質問を行った.ここでは,清洲橋で あれば主塔,永代橋,勝鬨橋に関してはアーチリブのリ ベットについて回答してもらった.その結果,3橋とも に50%値に関しては約100mとほぼ同様の結果となり,照 明手法や光色,光源の種類による大きな変化は見られな かった. (2) 夜景照明の視覚的効果に関する実験結果について ―各部材の出現率について―(実験1) a)実験結果について 実験結果については,図-7に示したような結果が得ら れた.ここでは橋梁の各部材の出現率に着目した.また, 視点場として代表的な地点として,近景,中景,遠景と し,ここでは2回の実験が比較できるように実験1-1と 実験1-2ともに対象とした清洲橋,永代橋,勝鬨橋につ いて取り上げた.それぞれの図に関しては横軸に画像の 提示時間,縦軸に被験者の割合を示している.つまり, 折れ線が上に来ているものほど,スケッチの中で表現さ 図-3 永代橋における夜景照明 図-4 勝鬨橋における夜景照明 図-2 清洲橋における夜景照明
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 清洲橋 永代橋 勝鬨橋 橋梁名 視距離(m) 図-6 各照明手法の有効距離 図-5 橋梁の奥行き感について 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 『アーチリブをライン照明で照射する』 永代橋 (グラデーションの効果) (アーチリブの強調) 勝鬨橋 (グラデーションの効果) (アーチリブの強調) 『イルミネーションで構造形態を縁取る』 清洲橋 (曲線成分の強調) 永代橋 (水平成分の強調) (点光源の見え) 勝鬨橋 (水平成分の強調) (点光源の見え) 『昼間影となっている部分を照射する(支承)』 清洲橋 (支承のディテールの見え) (支承の見え) 永代橋 (支承のディテールの見え) (支承の見え) 『昼間影となっている部分を照射する(桁裏)』 勝鬨橋 (桁裏構造の強調) 『桁をライン照明により照射する』 清洲橋 (水平成分の強調) (桁のディテールの見え) (ライン照明の見え) 『主塔を照射する』 清洲橋 (主塔をゲートのように見せる) (横材のディテールの見え) (横材の見え) 『運転室,橋台を照射』 勝鬨橋 (運転室のディテールの見え) (運転室の見え) (橋台の見え) 『リベットを照射』 清洲橋 (リベットの強調) 永代橋 (リベットの強調) 勝鬨橋 (リベットの強調) 『照明手法』 橋梁名 (照明による効果) 視距離(m) 75%値 50%値 実験範囲
れている割合が高いということを示している.また,実 験1-1と実験1-2のそれぞれの結果を分けて示した. b)各部材の出現率における傾向について 各部材の出現率が提示時間とともにどのように変化す るかに関しては,図-4の実験結果から表-4に示したよう にいくつかの傾向が見られた. c)清洲橋における各部材の出現率について(図-7) 清洲橋に関しては,要素(部材)として主塔,チェー ンケーブル,ハンガー,桁,橋脚(支承)に着目し,こ の他に街路照明についても要素して扱った. 実験結果から,近景においては部材の出現の仕方によ り大きく5つの傾向(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅵ,Ⅶ)に分けられ た.傾向Ⅰに関してはチェーンケーブルが当てはまる. 傾向Ⅱに関しては,主塔が挙げられる.傾向Ⅲとしては, 桁が挙げられる.さらに傾向Ⅵとしては,ここでは街路 照明が挙げられる.また,傾向Ⅶとしては,はハンガー や支承が挙げられる. 中景,遠景に関しては,近景の場合ほど提示時間によ る出現率の明確な変化は見られなかったが,各部材ごと に出現率にばらつきが見られた.チェーンケーブル・ハ ンガー・支承については中景・遠景ともに近景と同様の 傾向を示している.桁については提示時間の増加ととも に出現率が低下する傾向Ⅷとなった.また,出現率が 20%から40%の間を推移する傾向Ⅳとして,主塔が挙げら れる.また,主塔は遠景においては傾向Ⅶを示した.ま た街路照明については,中景・遠景では,傾向Ⅶに属す ると考えられる. これらの傾向から特に傾向Ⅰのチェーンケーブルに関 しては他の部材に比べ,視覚的効果が極めて高いという ことがいえる.主塔に関しては視距離によって異なった 傾向をしており,視距離によって視覚的効果が異なると いうことが分かる.また,傾向Ⅶに属するハンガーに関 しては照明が施されていないため出現率は低くなると考 えられるが,支承に関しては照明が施されているのにも 関わらず極めて低い結果となっている.この原因として チェーンケーブルなどの視覚的効果が高いものに意識が いくために支承まで把握できないということが考えられ, 支承に関しては視覚的効果が低いといえる.さらに,清 洲橋の場合,支承が主塔の一部として表現されていると 考えられる.また,桁についてはスケッチする上で見極 めるのが特に困難であった.今回はスケッチを分析する に当たり,判断しづらいものについてはなるべく要素と みなさないようにしたが,特に清洲橋の桁に関しては困 難であった.そのため,実際どの程度正確に認識されて いるのか不明な点もある.また,支承に関しては,近景 の時と同様に中景・遠景においても出現率が低くなって いる.また,街路照明については,近景においてはある 程度,視覚的効果があるといえるが中景・遠景について は傾向Ⅶに属し,視覚的効果は低いと考えられる. d)永代橋における各部材の出現率について(図-7) 永代橋に関しては,要素(部材)としてアーチリブ, 垂直材,横構,桁,橋脚(支承)に着目し,この他に街 路照明についても要素して扱った. 実験結果から,部材の出現の仕方にいくつかの傾向が 見られた.ここでは,傾向Ⅰとしてアーチリブが挙げら れる.アーチリブに関しては視距離によらず傾向Ⅰを示 し視覚的効果が極めて高いといえる. 垂直材に関しては,清洲橋における主塔と同様の傾向 を示しており,近景においては傾向Ⅰ,中景においては 傾向Ⅳ,遠景においては傾向Ⅷに属している.これらか ら,視距離によって視覚的効果が大きく異なっていると いえる.桁に関しては,傾向Ⅲを示しており,清洲橋に おける桁と同様の傾向を示している.横構は,傾向Ⅵを 示しており,提示時間の増加とともに認識されている. 横構に関しては直接照明されておらず,街路照明や垂直 材に対する照明が間接的に当たっていると考えられるが ある程度の視覚的効果が得られていると考えられる.ま た,横構に関しては,中景・遠景では認識できないため, まったく表現されなかった.支承・街路照明に関しては, 傾向Ⅶを示した.特に支承に関しては清洲橋と同様の傾 向Ⅶを示しており,視覚的効果は極めて低いといえる, この原因として,清洲橋と同様に他の部材(ここではア ーチリブ)の視覚的効果の影響が考えられる. e)勝鬨橋における各部材の出現率について(図-7) 勝鬨橋に関しては,要素(部材)としてアーチリブ, 垂直材,横構,桁,橋脚(支承),運転室,橋台に着目 し,この他に街路照明についても要素して扱った. 勝鬨橋では,アーチリブと桁が近景・中景においては 傾向Ⅰを示し,遠景においては傾向Ⅱを示した.これら より,アーチリブ,桁に関しては中景までは極めて視覚 的効果が高く,遠景においても提示時間の増加とともに 出現率が高くなっているため,視覚的効果が高いといえ るが傾向Ⅱを示した原因としてビル群の漏れ光などの背 景の影響も考えられる.垂直材に関しては傾向Ⅳを示し ているが,永代橋に比べ出現率が低くなっている.この 原因として垂直材に対する照明が施されていないという 傾向Ⅰ 提示時間に関係なく,極めて高い出現率となるような傾向を示すもの 傾向Ⅱ 提示時間が長くなるにつれ,出現率が特に高くなるような傾向を示すも 傾向Ⅲ 提示時間による出現率の大きな変化なく,出現率が40%から80%の間を推移するような傾向を示すもの 傾向Ⅳ 提示時間に関係なく,出現率が20%から40%の間を推移するような傾向を示すもの 傾向Ⅴ 提示時間が短い時には出現率は極めて低いが提示時間の増加とともに出現率が特に高くなるような傾向を示すもの 傾向Ⅵ 出現率が5000msecになると出現率が高くなるような傾向を示すもの 傾向Ⅶ 提示時間に関係なく,極めて低い出現率となるような傾向を示すもの 傾向Ⅷ 提示時間の増加に伴い,出現率が低下する傾向を示すもの 表-4 出現率の傾向について
ことが考えられる.横構は,永代橋と同様に傾向Ⅵを示 しているが出現率は若干低いといえる.勝鬨橋において も横構は直接照明されておらず,街路照明が間接的に当 たっていると考えられるが垂直材に対する照明は施され ていないため,出現率が低くなったと考えられる.また, 中景・遠景では認識できないため,まったく表現されな かった.ここで,近景における運転室,橋台については 唯一傾向Ⅴが挙げられる. また,運転室,橋台は中景においては5000msecにおい て出現率が挙がる傾向Ⅵを示し,遠景においては傾向Ⅶ を示しており,運転室,橋台に関しては視距離によって 特に視覚的効果が大きく変化していることがわかる. また,勝鬨橋に関しては,中景・遠景では各部材の出 現率が2極化していることが分かった.原因として,光 色の違いが考えられる.アーチリブには緑色,桁には青 色が使用されており,背景の光とは異なる色が用いられ ているためその影響が高いと考えられる.一方,運転室 や橋台に関しては光色が白色であるため,特に,遠景に おいては背景の光に埋没しているように認識されると考 えられる. (3) 夜景照明の視覚的効果に関する実験結果について ―各照明手法の視覚的効果について―(実験1) a)実験結果について 実験結果については,図-11に示したような結果が得 られた.ここでも,図-7と同じように視点場として近景, 中景・遠景とし, 2回の実験が比較できるように清洲橋, 永代橋,勝鬨橋を対象とした.ここで,挙げた5つの項 目は,照明手法の中でも特にスケッチによる表現の仕方 に多くのパターンが見られたものである. b) チェーンケーブルをイルミネーションで縁取る(清 洲橋)(図-11) ここでは,チェーンケーブルが曲線として表現されて いるかという点に着目した.その結果,スケッチの表現 方法から大きく3つに分類した.1つ目は照明によりチェ ーンケーブルの曲線形状が曲線として表現されているケ ースである.2つ目はチェーンケーブルが曲線としてで はなく直線として表現されているケースであり.3つ目 図-7 各橋梁の部材の出現率について 近景(50m) 清洲橋 中景(330m) 遠景(500m) 永代橋 近景(50m) 中景(540m) 遠景(880m) 勝鬨橋 近景(50m) 中景(400m) 遠景(790m) 1 主塔 ケーブル ハンガー 桁 橋脚(支承) 街路照明 1 アーチリブ 垂直材 横構 桁 橋脚(支承) 街路照明 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 20 アーチリブ 垂直材 横構 桁 運転室 橋台 街路照明 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec)
としてまったく表現されていないケースである.このよ うに曲線と直線の違いは視覚的効果の違いを表している といえる.曲線として認知するためには,チェーンケー ブルをより注視する必要があると考えられるため,曲線 として表現される方がより形状を認識させる視覚的効果 が高いといえる. 実験結果から,全視点場においてチェーンケーブルが 曲線として表現されるケースが高いという結果になり, チェーンケーブルの曲線形状をイルミネーションにより 表現することは視覚的効果として高い効果が得られてい るということがいえる.また,視覚的効果が得られてい る要因として光色が考えられ,チェーンケーブルのピン ク色については周囲の背景とのコントラストを確保する という意味では,より高い効果を生んでいると考えられ る. さらに,チェーンケーブルに対する照明が点光源を連 続的に配置したものとなっているため,イルミネーショ ンの表現方法としてチェーンケーブルを点線で表現する 場合と線として表現する場合が見られた.これは,特に 近景においては提示時間の増加に伴い,点線から線とし て表現される傾向が見られた.また,特に視距離に関し ては,視距離が長くなるにつれ,線として表現される傾 向がみられ,これらよりイルミネーションとして構造形 態を縁取る効果が得られていることが分かった. c)主塔を照射する(清洲橋)(図-11) 清洲橋の主塔に関しては,実験結果から特に横材の表 現についても注目した.その結果,スケッチの表現方法 から大きく3つに分類した.1つ目は横材を含んで主塔が 表現されているケース,2つ目は主塔は表現されている が横材までは表現されていないケース,3つ目としてま ったく表現されていないケースである.横材に関しては, 近景についてのみ認識することができるため,中景,遠 景に関してはまったく表現さていないという結果となっ た.近景においては実験結果から,提示時間の増加とと もに特に横材を含んで主塔が表現される割合が高くなっ ていることが分かる.特に,提示時間の増加とともに, 他の部材に比べ横材を詳細に表現する傾向が見られた. そのため,横材に関しては,提示時間の増加と共に,も っとも意識がいく部分であると考えられる. 中景,遠景になると主塔は表現されない割合の方が高 くなる傾向が見られた.これらについては,清洲橋の輪 郭であるチェーンケーブルの視覚的効果が高いために, 橋梁の内部部材まで意識がいかず,認識されにくいとい うことが考えられる. d) アーチリブを照射する(永代橋)(図-11) 永代橋のアーチリブに関しては,スケッチの表現方法 から大きく3つに分類することができた.1つ目はアーチ リブが図として表現されているケースである(図-8). アーチリブが図として表現されているということはそれ だけ視覚的効果が高いといえる.2つ目はアーチリブが 線として表現されているケースである(図-9).これに 関しては,アーチリブは認識されているがそれほど視覚 的効果は高くないといえる.3つ目としてまったく表現 されていないケースである. 実験結果から,近景においては特に強調して表現され ていることが分かる.また,アーチリブを図として表現 している中にも,さらにグラデーションやアーチリブ側 面の垂直補鋼材などが表現されているケース(図-8)も 見られた. また,中景,遠景になるにつれ,線として表現される ケースが増える傾向が見られるが,提示時間の増加に伴 い,図として表現される割合が増えており,提示時間が 増加とともにアーチリブをより注視する傾向がみられた. e) 垂直材を照射する(永代橋)(図-11) 永代橋の垂直材に関しては,スケッチの表現方法から 大きく3つに分類した.1つ目は垂直材が連続的に表現さ れ,垂直成分が強調されているように表現されていると いうケース(図-8),2つ目は垂直材は表現されている が連続的ではなく,垂直材の垂直成分やその存在が正確 に認識さえているとは言えないとは言えないケース,3 つ目としてまったく表現されていないケースである. 実験結果から,視距離によってその表現方法が異なっ ていることが分かった.近景においては,垂直材は連続 的に表現されており,垂直材の存在感が表現される割合 が高かった.しかし,視距離が長くなるにつれ,垂直材 の出現率が低くなり,垂直材の表現方法も垂直材がはっ きり表現されていないものが増加する傾向がみられた. これについては,先に述べたようにアーチリブの視覚的 効果の影響や背景の影響が考えられる.特に垂直材の場 合,背景の光の影響により,部材が煩雑に見える場合が ある.また,,この部材の煩雑さについては視線入射角 の影響も考えられる. また,図-7の永代橋と勝鬨橋の垂直材の出現率につい て比較すると永代橋の方が明らかに高くなっていること が分かる.特に近景においては,5000msecに着目すると 永代橋が90%近くなっている一方,勝鬨橋に関しては10% と極めて低い数値となっていることが分かる.これらか らも,垂直材を照明することにより視覚的効果が得られ ているということがいえる. f)跳開部(運転室・橋台・可動部の桁)を照明する (勝鬨橋)(図-11) 跳開部については勝鬨橋の特徴であるといえ,運転室・ 橋台の照射と,跳開部(可動部)の桁のイルミネーショ ンによる照明が施されている.そこでスケッチから跳開
部の表現方法に着目し,実験の結果から3つに分類した. 1つ目は運転室や橋台といったオブジェクトの再現性や 跳開部の桁が表現されているケース(図-10),2つ目は 運転室や橋台などは表現されていないが跳開部のの桁は 表現されているケース,3つ目はまったく表現されてい ないケースである. 実験結果から特に近景においては提示時間の増加とと もに運転室や橋台を含んだ再現性が高くなっていること がわかった.また,20msecにおいても約60%の被験者が 跳開部の桁を表現していた.中景では運転室や橋台に関 してはほとんど表現されていないが,跳開部の桁は表現 されていることがわかった.また,遠景になると跳開部 の再現性はきわべて低くなっていることがわかった.こ れらについては背景の影響が考えられる.遠景になると 跳開部がちょうど背景のビル群と重なって見えるため, 跳開部が背景に埋没して見られると考えられる. g) 橋梁の立地条件等を考慮した夜景照明における各照 明手法の適用に関する考察 これらの実験結果から,橋梁の夜景照明に関して,以 下のようなことがいえると考えられる.まず橋梁の夜景 照明においては橋梁の立地条件や背景構図などを考慮す る必要がある.現地調査からも橋梁によって鑑賞地点と なりうる視点場が様々に存在していた.特に隅田川の橋 梁のように河川敷に公園や遊歩道があり,重要な視点場 からランドマークとしてじっくり鑑賞したり河川敷を歩 きながらシークエンス景観として鑑賞する場合と,神田 川の柳橋や亀島川の南高橋のように視点場が橋詰広場や 隣の橋梁からあまり意識せずにながめる場合(都会の夜 景において添景となるような場合)が挙げられる.この ように橋梁の立地条件によって相応しい照明手法は異な ると考えられる.特に実験1の結果から,アーチリブや チェーンケーブルのような橋梁の輪郭を縁取るような提 示時間が極めて短い段階で認知できるような照明手法に ついては日常何気なく眺めているような神田川や柳川に かかる橋梁に適用するとより効果的であると考えられる. 一方,橋梁の内部構造や下部構造に対する照明など提示 時間が長くないと認知されないような照明についてや視 距離によってその見え方が変化するような照明について は隅田川の橋梁に適用すると効果的であると考えられる. また,この他にも橋梁に対する照明のコンセプトを決め る必要がある.橋梁の夜景照明において,主に何を強調 したいのか(全体像,輪郭,詳細の部材など)により, 照明手法やその組み合わせについても十分に検討する必 要がある.複数の手法の組み合わせはお互い効果を相殺 する場合があるからである. このように実験1から橋梁 の立地条件等を考慮した夜景照明における各照明手法の 適用の仕方を示すことができる. (4) 実験結果のまとめ 本研究では,夜景照明の視覚的効果に着目した実験 (実験1)と各照明手法の有効距離に関する実験(実験 2)を行ってきた. 各照明手法の有効距離に関しては実験結果より,照明 手法によって大きくその有効距離が異なり,また,照明 による橋梁の各要素の強調や,各部材のディテールの見 えなど視距離により照明される部材の見え方が異なって くるということが分かった.特にこれらの実験結果は, 今後橋梁に照明を施す際にその有効範囲をみるのに参考 になると考えられる. また,視覚的効果に関しては,人の橋梁の夜景照明に 対する知覚,認識の仕方を検証することによりどのよう な光がより視覚的効果があるのか明らかにすることがで きた.またスケッチから見受けられた傾向として,まず 橋梁の輪郭が知覚され,その後,橋梁の内部の照明され ている部材,最後にその他の部材が認識されるという傾 向が見られた.また,提示時間が短い段階で出現した部 材に関しては,提示時間が増加とともに,より細部まで 認識されるという傾向がみられた.これらより,視覚的 効果が高い要素に関してはより注視する傾向がみられる が,そうでない要素については認識されたとしてもそれ ほど注視されていないといえる思われる.また,光色の 視覚的効果に与える影響の高さや,視覚的効果が高い要 素が他の要素の照明による効果に及ぼす影響ついても明 らかになった.また,実験1から橋梁の立地条件等を考 慮した夜景照明における各照明手法の適用方法についも 示すことができた. 図-8 スケッチ例 1 (永代橋:近景、提示時間:5000msec) 図-9 スケッチ例 2 (永代橋:中景、提示時間:500msec) 図-10 スケッチ例 3 (勝鬨橋:近景、提示時間:5000msec)
図-11 各照明手法の視覚的効果について 近景(50m) 中景(330m) 跳 開 部( 運 転室・橋台) を照射する 垂直材を照 射する 1 垂直材が強調して表現されている(垂直材が連続的に並ばれ、垂直成分が強調されている) 垂直材が表現されている(垂直材が連続的には並ばれておらず、垂直成分が強調されているとはいえない) まったく表現されていない 主塔を照射 する チェーンケ ーブルをイ ルミネーシ ョンで縁取 る 遠景(500m) アーチリブ を照射する 1 運転室や橋台を含んだ跳開部が表現されている 跳開部が表現されている まったく表現されていない 清洲橋 1 アーチリブが強調して表現されている(アーチリブが図として表現されている) アーチリブが表現されている(アーチリブが線として表現されている) まったく表現されていない 1 主塔について横材まで表現されている 主塔が表現されている(塔柱のみが表現されている) まったく表現されていない 近景(50m) 中景(540m) 遠景(880m) 永代橋 勝鬨橋 近景(50m) 中景(400m) 遠景(790m) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 20 500 2000 割合(%) 2000 5000 提示時間 (msec) 1 チェーンケーブルの曲線形状が表現されている チェーンケーブルが曲線として表現されていない まったく表現されていない
5.清洲橋・永代橋・勝鬨橋の各照明手法に関す る考察 これまで得えられてきたことから表-5のようにまと めることができる.全体を通して,特に輪郭(清洲橋の チェーンケーブル,永代橋・勝鬨橋のアーチリブ)は実 験2による有効距離の長さ,及び実験1から得られた視覚 的効果の高さなどから照明による効果が特によく得られ ているといえる.また,これらに関しては光色による効 果が高いと考えられるが輪郭を効果的に示すことによっ て橋梁の存在感をより強調する効果があると考えられる. また,特に中景・遠景においては輪郭の視覚的効果が 高いため,橋梁の他の部材に関する照明による効果があ まり得られていないといえる.特に清洲橋や永代橋の支 承や勝鬨橋の跳開部(運転室,橋台)などは実験2から は遠景においても認識することができるにも関わらず, 実験1の図-4からはそれらの部材等の出現率が低い結果 となっており,特に支承などは提示時間に関係なく低い 結果となっている.このように視覚的効果に着目すると 一見効果的な照明手法も他の照明との組み合わせにより, 効果の程度が変化していると考えられる.また,街路照 明に関しては特に実験1の結果から,多くの場合視覚的 効果に着目した場合にはそれほど影響はないと考えられ る.街路照明は背景の光と融合した形で表現される場合 が多く,背景の一部の光として認識されることが多いと 考えられる. 6.結論と今後の課題 本研究では,橋梁の夜景照明について,人がどのよう に光を知覚,認識していくのか検証し照明の視覚的効果 について明らかにしてきた.また,それぞれの橋梁に施 されている照明手法についてその効果の有効距離や照明 による各部材の視距離による見えの変化についての検証 を行ってきた.これらの実験から以下のことが得られた. ・照明による効果が得られる範囲にはそれぞれ有効距離 があり,照明手法によって有効距離が大きく異なる. ・各部材のディテールの見えなど視距離により照明され る部材の見え方が異なる. ・照明手法により視覚的効果の程度が異なる. ・複数の手法の組み合わせはお互い効果を相殺する. ・橋梁の立地条件等を考慮した夜景照明における各照明 手法の適用方法についても示すことができた. また,本研究の今後の課題としては昼間における橋梁 の見えとの比較については検証の必要性が挙げられる. 昼間における実験と今回の実験結果を比較するにより, 照明による効果をより明確に知ることができると考えら れる.また,今回は一部の構造形式,照明手法に関する ものであるため,この他にも,さまざまな構造形式の橋 梁や照明手法に関して同様の実験を行うことにより,照 明による効果についてより一般的な傾向を明らかにする ことができると考えられる. 参考文献 1) 狩野哲志:都市河川に架かる歴史的橋梁の構造形態を配 慮した夜景照明手法, 土木学会 景観・デザイン研究論 文集, No.1, pp.173-184, 2006 2) 狩野哲志:夜間景観における都市河川橋梁とその背景の 相互作用, 埼玉大学 学位論文, 2007 3) 増山正明:ライトアップされた建築物における建築ファ サードの見えの変化に関する研究((5)照明計画) 照明 学会 第34回全国大会講演論文集,pp.147-148,2001 4) 奥俊信:瞬間視実験に基づく街路景観構成要素の分析 街路景観の視覚特性ならびに心理学効果に関する実験的 研究 第1報,建築学会 論文報告集,No.321,pp.117-124, 1982 5) 土木批評 第4回 ライトアップ 東京・隅田川橋梁群, 日経 BP社 日経コンストラクション, 1995/9/22号, pp63~ 73,1995 6) 東京都中央区教育委員会, 中央区文化財調査報告書 第5 集 中央区の橋・橋詰広場―中央区近代橋梁調査―, 1998 表-5 各橋梁の夜景照明の特徴についてのまとめ 橋梁名 近景 中景 遠景 全体 清洲橋 ・近景においては,特に各部材についてディ テールの見えまでが対象となり、照明による効 果が得られる. ・視覚的効果は特にチェーンケーブル・主塔・桁 が高く、橋梁全体の形態を正確に把握しやすい と考えられる. ・中景においては,部材のディテールについて はほぼ確認できない.また,主塔や桁について の照明による効果はこの範囲まで得られる. ・視覚的効果としてはチェーンケーブルや桁に 対する照明は高いが主塔に関してそれほど高 いとはいえない. ・各部材に対する照明による効果についてはあ まり期待できないが照明による各部材の見えに ついては桁をのぞいて有効であるといえる. ・視覚的効果としてはチェーンケーブルのみが 高いといえる. 清洲橋は、チェーンケーブルのように視覚的効 果が高い要素があるために遠景おいても輪郭 を把握することができる。また、清洲橋の特徴で もある主塔に関しては視距離により照明による 効果及び視覚的効果が異なるため、各視距離 で様々にみることができると考えられる. 永代橋 ・近景においては,特に各部材のディテールの 見えやアーチリブに対するグラデーションなど光 の効果まで対象となり、照明による効果が得ら れる. ・視覚的効果は,アーチリブ,垂直材が特に高く 桁や支承にはそれほど意識は行かないといえ る. ・部材のディテールについてはほぼ確認できな いが,アーチリブや桁に対する照明による効果 については十分得られる. ・視覚的効果としてアーチリブや桁に関しては依 然として高いが垂直材は低下し、橋梁の内部構 造の把握が困難となっている. ・アーチリブの強調や水平成分の強調などの照 明による効果は遠景に老いても十分得られる. ・視覚的効果としてはアーチリブに関しては高い が垂直材,桁に関しては低下している. 永代橋に関してもアーチリブの視覚的効果が高 いため、輪郭は把握しやすいと考が、単純な構 造をしているため、視距離による見えの変化 は、他の2橋に比べ、乏しいといえる. 勝鬨橋 ・近景においては,特に各部材のディテールの 見えまで対象となり、照明による効果が得られ る. ・視覚的効果は,アーチリブ,桁が特に高いとい えるが跳開部の運転室や橋台については提示 時間の増加とともに高くなっている. ・各部材の照明による効果の多くは中景まで得 られる. ・視覚的効果として2極化し,アーチリブや桁に 関しては依然として高いといえる. ・照明による効果はあまり得られないが、アーチ リブ、桁、橋台などの見えに関しては照明により 得られる. ・視覚的効果としてはアーチリブや桁に関しては 高いといえるが他の部材は極めて低いといえ る. 勝鬨橋についてもアーチリブや桁などは視覚的 効果も高く、輪郭は把握しやすいといえ、またそ の他の要素により、照明による効果の有効距離 が異なるため、視距離によって様々に鑑賞でき ると考えられる.