多年生キク科植物ナノレトサワギクの比較形態学的研究
教科・領域教育専攻 自然系 (理科) コース 山 口 綾
はじめに
S e n e c i o
11UJf,わg αs c a r i e n s i sP o i r .
は,南部アフリ カマダガスカル原産の多年生キク科植物である.本種は模式産地で、あるマダガスカルのほか,南 アフリカのクワズーノレ・ナターノレ州,アフリカ 南東部のスワジランド,南アメリカのコロンピ ア,北太平洋のハワイ,オーストラリア南東部 のニュー・サウス・ウエールズチトほ北東部のク インスランド州などでも採集されているが,南 アフリカやスワジランド以外は帰化したもので あると考えられている.
わが国では,
1 9 7 6
年に徳島県鳴門市瀬戸町日 出湾の埋立地に生育しているのが,鳴門市里浦 小学校(当時)の木下覚教諭により発見された.埋立地の土砂の飛散防止と緑化のために吹き付 けられた,クローパーやシナダレスズ、メガヤな どの種子に混入し, 日本に入ってきたものと考 えられている.それから30年ほど経過しr兵庫 県,大阪府,岡山県などに広がっている.
ナルトサワギクは,木下ら(1
9 9 9 )
により,徳島県立博物館に収蔵されていたアノげンチン 産の標本をもとにS.11UJf,わ
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であると 同定されたが, S. 1m幼r g a s c a r i e n s i s
は南部アフ リカのマダガスカルが原産地で、あるため,南部 アフリカ産のS.m a d a g a s c a r i e n s i s
をもとに比較 することも必要である.そこで,本研究では,南部アフリカのS.11UJf,わgω
c a r i e n s i s
と日本のナ ノレトサワギクの形態を比較し ナノレトサワギク指導教員 米 津 義 彦
をS.11UJf,おgω
' c a r i e n s
おとする見解の是非を検討 した.また,
1 9 9 8
年に開通した国道1 1
号高松東道 路(高松自動車道)の津田の松原サービスエリ ア (SA)付近で,新たにナノレトサワギクに類似した個備学が発見された.外見的にはナノレトサ ワギクに類似した新たな個体群が,徳島県内に 生育するナノレトサワギクと閉じものであるかど う か に つ い て 南 ア フ リ カ 産 の S.
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と併せて比較し,検討を行った.1 .
材料と方法3 6 6 ‑
(1)採集地
南 ア フ リ カ 共 和 国 ム プ マ ラ ン ガ 州 Nelspruit市 内 側elspruit),Nelspruit近郊の In~刷lyama lodgeの庭園内(Ingwenyama lodge) ,徳島県板野郡板野町の高松自動車道 板野インターチェンジの法面(板野IC),香川 県さぬき市津田町の国道
1 1
号高松東道路の 路側帯(津田の松原SA)の4ヶ所で採集した.南アフリカの2ヶ所で、は痩果のみ, 日本の2 ヶ所で、は植物体と痩果を採集した.なお,南 アフリカでの採集は米津義彦耕受により行わ れ た
。)染色体標本の作梨
新しく伸長した根端を,
1 8
0C ' " ' ‑ ' 2 0
oC
の 0.002M 8‑ヒドロキシキノリン:0.05%コル ヒチン瀦夜=1: 1 (v/v)瀦夜中で約2時間処理した後, 20/0酢酸オノレセイン染色同押しつぶ し法によって染色体標本を作製した.
(3)外部形態・痩果の形態の測定
外部形態の測定は,葉身およひ事頁状花を対 象とした.葉身は欠損の少ないものを l個体 につき3枚ずつ選び,長さと幅,裂片数を測 定した.頭状花は1個体につき5個ずつ選び,
高さと幅,花弁数を測定した.痩果の形態の 測定は,現地で採集した痩果をそれぞ、れ
3 0
個選び,長さを測定した.
(4)痩果表面の形態
痩果表面の形態は,走査電子顕微鏡 (JEOL
‑T3 3 0 )を用いて加速電圧 5 k V
で観察し,
FUJlF江,M
ACROS NEOPAN 1 0 0
を用いて写 真撮影を行った.2 .
結果と考察外部形態・痩果の形態の測定結果を, Radford ら(2000)の結果と比較するため,四分位数範囲 をとったところ,葉身の幅を除いて, Radford らο000)の結果と一致した. Radfordらο000) の測定結果と比べて,葉身の幅は全体的に広い 傾向が見られた.染色体数においては,これま でに報告されていた結果 (2n=20)と一致した.
Radfordら(2000)は,痩果表面の形態を調べ ることで
S e n e c i o
属植物の分類が可能であると しているが,今回調査した痩果表面の形態は,すべてが細長い溝と溝の間に毛を持つ構造をし ており, Radfordら(2000)のS.
m
ほおgωc a r i e n s
お の結果と一致した.Radfordら(2000)の測定結果との比較により,
調査した4ヶ所の個体はS.mada~ωcariensおで あり, 日本のナルトサワギクは,木下らが同定 したように, S.
n
仰わgαs c a r i e n s
おであると考え られる.また,新たに発見された津田の松原SA
の個体についても, S.
m a d a g a s c a r i e n s i s
であると考えられる.
Ra
dfordら(2000)は,痩果表面の形態に関し て,溝の表面構造の違いについては角財Lておら ず,細長い溝と溝の聞に毛を持つものが S.ma
わgωc a r i e n s
おであるとしている.したがって,今 回 調 査 し た す べ て の 個 体 を
S.
mada~ω'cariensおであるとしたが,津田の松原
SA
の痩果の溝の表面には乳頭状の突起物があ り,他の3ヶ所ものもと少し異なっていた.こ の違いを考慮すると,津田の松原SA
の個体は,鳴門市及びその周辺の個体とは由来が異なる可 能性が示唆される.
最近の分子生物学的な研究方法の進展により,
核ヰコ葉緑体の特定の DNAの塩基適酬の鮒庁に よって,同種内の個体間変異を調べることが可 能になっている.津田の松原
SA
の個体に関し でも,分子生物学的な手法によって調査を行う ことにより,その起源が明らかになることが期 待される.図. 痩呆表面の走査型電子顕微鏡写真 A: Nelspr凶t, B: Ingwenyama hodge
,
C:板 野IC
,
D:津田の松原SA.引用文献
1)木下覚・小山博滋・村i誠・太田道人1朔 帰 化 植 物 ナ ルトサワギクの学名.Ac胞 Phyto臥 G
∞
bot,50 (2) : 243‑246.2) Radfo r,dI.,J. Muller, ,.PFi宜α;S., and Mic凶el,P.W, 2,収)(). Genetic relationships between AJ山 岡lianfirew民主jand South A創 伺n and 1¥匂dag出 伺n populations of Senecio mιわrgascari訟nsisPoir. and c10田ly陀加edSenecio甲 ∞i白 .
Aust. Syst. Bot; 13 :409‑423.