近似創成ピン歯をもっ傾斜歯車減速装置の特性について
長 寄 羊 ‑ *,永井良介**, 藤 井 亮 *
C h a r a c t e r i s t i c o f Reduction Gears with l n c l i n e d Planetary Gear and Approximate Pin Generating
Y o i c h i NAGASAKI* , Ryosuke NAGAh* , Makoto FUJII*
The reduction gear with inclined p1anetary gear in that the back1ash can be decreased by axially adding pre10ad differs chiefly from differentia1 reduction gear (Type 2K‑H) in genera1 use. The necessity for using the generating circu1ar arc tooth profi1e is caused because this gear.is made meshing each other of externa1 gear. First of all
,
easy approximate pin generating tooth profi1e to process was produced,
and,
next,
in order to clarify the characteristic of prototype of the reduction gear with inclined p1anetarγgear, the authors have carried out an experimenta1 investigation about the torsiona1 rigidity, temperature rise, efficiency, and the noise, etc.Key word: Gear
,
Noise,
Efficiency,
Torsional Rigidity,
Planet gear,
Reduction Gear,
Circular Arc Tooth Profi1e1 . 緒言
傾斜歯車減速装置において、かみ合う歯車の歯形は、
一方では半円筒状(凸円弧歯)でもう一方は半円溝状(凹 円弧歯)であり、凸円弧歯の部分に創成円筒ピンを使用 している。入出力軸中心線に対し、僅かに傾斜した軸を 有する2組の半円溝状の円弧歯を持つ遊星歯車が、数枚 差歯数の半円筒状の円弧歯を持つ固定歯車及び同歯数の 半円筒状の円弧歯を持つ歯車の両方に、すりこぎ運動を しながら、同時にかみ合い、自転、公転する。このよう な構造をもっこの装置は、軸方向に予圧を加えることに より、バックラッシを少なくすることが可能である。し かしながら、本装置では、構造上の理由(外歯車同士を かみ合わせる)から、創成円弧歯形を用いる必要性が生 じる。したがって、本研究では、歯形の加工が容易な近
似創成ピン歯を製作し、傾斜歯車減速装置の試作機を用 い、実験を行い、この装置のねじり、温度、効率および 騒音などの特性を明らかにすることを行った。
2. 傾斜歯車減速装置
2. 1 傾斜歯車減速装置の構造
図1に本実験に用いた近似創成ヒ。ン歯をもっ傾斜歯 車減速装置の平面図を示す。本装置は、図のように入 力軸、歯車1(固定歯車)、歯車2(遊星歯車)、歯車3(遊 星歯車)、歯車4(出力歯車)、出力軸およびそれを支え る軸受とケーシングからなり、中央の遊星歯車(歯車 2、歯車3)の回転軸(傾斜軸)が入力軸に対し僅か に傾いている。この装置のケース寸法 (WXHXD) は100X 136 X 85mmである。
*
近畿大学工学部機械工学手ヰ Department ofMechanical Engineering, Sch∞
o11f Engineering, Kinki University* *
近畿大学大学院工業協│糊矧ヰ Graduate Schoo1 oflndustrial Techno1ogy, Kinki University 5354 近畿大学工学部研究報告 NQ39
歯 車2
図1 近似創成ヒ。ン歯をもっ傾斜歯車減速装置 2. 2 速比 (U)
本実験に用いた近似創成ピン歯をもっ傾斜歯車減速 装置は、
2K‑H
型遊星差動歯車減速装置と同様の構 造をもっていて、速比 (U)は(出力軸回転数以入力軸 回転数)となり次式(1 )のようになる。U=l一( Z I " Z 3 ) / ( Z 2 ・ Z4)= 1 I 30
・・ ( 1 )また、入力軸と傾斜軸のなす角(軸角)は
e =
30 のものを使用した。2. 3 理論効率
図1より、固定歯車1、出力歯車4及び傾斜軸Sか ら傾斜遊星歯車2、3に作用するトルクを T1、T4及び Tsとし、角速度内、 ω4とし、かみ合い効率を η。、理 論効率をηとすると、正回転時及び逆回転時における 理論効率は次式のように表される。ここで、固定歯車
1、傾斜歯車2,3、出力歯車4の歯数をZl、Z2、Z3 及びZ4とする。
速比 1130でのかみ合い効率 ηo二0.992における正回 転時の効率は約89%となる。
式(2)は正回転時、式(3)は逆回転時の理論効率であ る。
T . O J . 1 ‑i
f¥η = ̲
'"t̲よ v … (2 ) r~ω 1-i o
T/。
η 九 ω4η
o( i
o‑1)
=一一一= …
(3)T 、 ω i o‑ η 。
Z
,Z
今ただし、 in=‑Jー ー と
Z2Z4
2. 4 歯形
本装置は、歯切りを容易にするため、固定歯車1及 び出力歯車4と傾斜歯車2,3の各々の歯車対が外歯 車同士のかみ合いになるように、各歯車のピッチ円す い角を決めている。この場合、一方の歯車対はピッチ 円すい角の頂点を一致させることが出来るが、他方の 歯車対は出来ない。よって、歯形は、一方では円筒ピ ンを使用する(凸円弧歯)と半円状の溝(凹円弧歯)を、他 方では歯のかみ合い時に干渉を生じない近似創成ピ ンと半円状の溝(凹円弧歯)を使用することが必要とな る。
2. 5 歯形寸法
表1に近似創成ヒ。ン歯をもっ傾斜歯車減速装置の歯 車要目を示す。近似創成ピン歯は、まず半円状の溝(凹 円弧歯)の断面形状およびCADのLisp言語を使用し、
歯のかみ合いに基づくシミュレーションにより創成ピ ン歯を求め、次にこの創成ピン歯から加工を容易にす るため近似創成ピン歯を求めた。
表1 近似創成ピン歯をもっ 傾斜歯車減速装置の歯車要目 固定 傾斜遊星歯車 出力 歯車1 歯車2 歯車3 歯車4
円弧歯形 凸 凹 凹 凸
モジュール 1.2 1.2 1.2 1.2 (円弧半径) (1.25) (1.25) (1.25) (1.25) 歯数
Z I
=58Z 2
=60Z 3
=58Z 4
=58傾斜角
。
3 3。
e )
歯幅 8 6 6 8
(mm)
材 質 SUJ 2
熱処理 焼入れ
表面 研 磨
仕 上 げ
図2に3次元CADを用いシミュレーションにより製 作した創成ピン歯を、図3にその寸法を示す。
図2 倉IJ成ピン
4.実験結果と考察 4. 1 ねじり特性
図6にねじり試験結果を示す。図の横軸に負荷トル クを、縦軸にねじり角をとり、両者の関係を表した。
図より、負荷トルクを増加させると、ねじり角の増加 の割合が小さくなっていて、非線形の硬化性ばね特性 を示していることが分かる。負荷トルクを徐々に増加 させると 15(N"m)、で0.12(rad)のねじり角を生じ、そ の後負荷トルクを減少させるとねじり角も減少し、増 加時の経路とは異なっていることが分かる。また、反 対向きに負荷を加えても同様の傾向になっているこ とが分かる。このことから、負荷トルクとねじり角と の関係において、ヒステリシスループを描くことが分 かる。また、パックラッシが約0.09(rad)あることも分 かった。以前の傾斜歯車減速装置に関する研究におい ては、パックラッシが約0.23(raωで、あったので、パッ クラッシが少なくなったことが分かる。
2 0
負荷卜 )~QT(N" m)
告の
﹄﹀ ト
fpD早
‑20
3.実験装置と実験方法
図4に歯車試験機の概略を示す。本実験には、動力吸 収式の歯車試験機を使用した。動力として、 400W、 1800rpmのモータを使用し、負荷トルクは、電磁ノ《ウダ ーブレーキで加えることができる。傾斜歯車減速装置の 入出力側にそれぞれトルクメータを取り付けている。傾 斜歯車減速装置の上面中央にパテでアルコール温度計 (精度::t10C)を取り付けている。また、歯車の潤滑には、
グリース(L135V)を使用した。負荷トルクは 9.8(N"m)
"‑'39.2(N"m)まで、9.8(N"m)ずつ変化させ、入出力軸のト ルク、温度および騒音を測定した。ねじり試験は、図5 のように、出力軸を固定し、入力軸に天秤を取り付けて、
天秤におもりをのせ、天秤の傾きから、ねじり角を求め た。
近似創成ピン歯の寸法 図3
傾斜歯車減速装置 アルコール
負荷トルクとねじり角の関係
4. 2 温度特性
図7(I)に近似創成ピン歯をもっ傾斜歯車減速装置 の温度測定結果を示し、図7(II)に以前の円弧歯形を もっ傾斜歯車減速装置に関する研究の温度測定結果 を示す。横軸に運転時間を、縦軸に温度上昇をとり、
両者の関係を表した。また、室温と装置の温度差を上 昇温度とした。図7(I)より、負荷トルクの大きさに 関係なく、運転時間120分で、ほぼ一定の温度になって いることが分かる。また、負荷トルクの増加に伴い、
温度上昇の割合が大きくなっていることが分かつた。
負荷トルク 39.2(N"m)で、最高値10.60Cを示した。以前 の円弧歯形をもっ傾斜歯車減速装置に関する研究に おいては、負荷トルク 39.2(N"m)で、最高値が15.50Cで あったので温度上昇が低くなっていることが分かる。
図6 出力トルクメータ
電磁パウダー
ブ日¥
測定位置 歯車試験機
図4
汽
爪 IIムム措~/.(
ねじり試験法 図5
56 近畿大学工学部研究報告 NQ39
民U n 吋 円
J﹄ ハ u n u G U
凋斗
η / ﹄
︿O
し峠 斗幽 岡山
回転数
=1800rpm
o
50∞
100 2∞
200j聾孟時男(mi
r i >
図7(I) 近似創成ヒ。ン歯をもっ傾斜歯車減速装置 における運転時間と温度上昇の関係
20 18 16 14
ど
12町
10l~同 回目 B
A O A 守 ワ
ι
50
∞
150 2∞
250 選却寺問(mir占図7 (ll) 円弧歯形をもっ傾斜歯車減速装置における 運転時間と温度上昇の関係 4. 3 効率特性
図8に効率測定の結果を示す。横軸に負荷トルクを、
縦軸に効率をとり、両者の関係を表した。図より、負 荷トルクの増加に伴い効率も徐々に増して、負荷トル ク39.2(N'm)で、最大効率 89.1(%)を示している。以前 の円弧歯形をもっ傾斜歯車減速装置に関する研究に おいては、負荷トルク 39.2(N'm)で、最大効率82.3(%) を示したので、効率が高くなっていることが分かる。
負荷トルクの大きさに関係なく円弧歯形よりも近似 創成ピン歯のほうが約5(%)効率が高くなっており、ま た、理論式から求めた理論効率係句 89%)とほぼ一致し ていることも分かる。
96 92 88
~ 84
~
1 f埜k叩
76 72 68
。
回 転 数=1800rpm
39.2 49 9.8 19.6 29.4
負荷トルクT(N'm)
図8 負荷トルクと効率の関係 4. 4 騒音特性
図9に騒音測定の結果を示す。横軸に負荷トルクを 縦軸に騒音レベルをとり、両者の関係を表した。図よ り、負荷トルクの増加に伴い騒音は僅かに増し、負荷 トルク 39.2(N'm)、で78(dB)を示した。以前の円弧歯形 をもっ傾斜歯車減速装置に関する研究においては、負 荷トルク 39.2(N'm)で、最大値77(dB)で、あったので、ほ ぼ変化していないことが分かる。
84
82
t
=1 600 rpm宙百 即
ム 7日 請盟tf 78 74 72 7日
q 9.8 19.6 29.4 351.2 49 負荷卜 JレタT{N‑m)
図9 負荷トルクと騒音の関係 5.結言
近似創成ピン歯を製作し、これを試作機に用い、ね じり試験および運転試験を行い、ねじり特性、効率、
温度上昇および騒音について測定し、考察を行った。
その結果、近似創成ピン歯をもっ傾斜歯車減速装置は、
硬化性ばね特性を示し、負荷トルクとねじり角との関 係においてヒステリ、ンスループを描き、パックラッシ が約O.09(rad)あることが分かった。温度上昇は負荷ト ルク39.2(N'm)で、最高値10.60Cを示した。以前の円弧
負荷トルク 39.2(N"m)で、最高値が 15.50Cで、あったの で温度上昇が低くなっていることが分かつた。また、
本装置の効率は 89.1%と理論効率とほぼ一致してお り、負荷トルクの大きさに関係なく円弧歯形よりも近 似創成ピン歯のほうが約 5(%)高くなっていることが 分かつた。しかし、現段階では、パックラッシが約 O.09(rad)あるため、歯形の設計を変更し、歯形の改良 をおこない、バックラッシを少なくすることが必要で ある。
6.参考文献
(1) NIKKEI舵CHANICAL、No.492,1996(10.28), 12‑13. (2)八重島公朗・両角宗晴、傾斜歯車減速機に関する
研究(第1執理論解析)、機論、 60‑57,2C (1994‑4), 283‑288.
(3)八重島公朗・両角宗晴、傾斜歯車減速機に関する 研究(第 2報,最適化自動設計システム)、機論、
60‑572, C(1994 ‑4), 289‑285.
(4)八重島公朗・両角宗晴、傾斜歯車減速機に関する 研究(第3報,試作および測定)、機論、60‑572,C (1994
‑4), 296‑299.
(5)両角宗晴,遊星歯車と差動歯車の理論と設計計算 法、日刊工業新聞社、 69‑74.
(6)藤井亮・田中卓次・長寄羊ー・応和靖浩・上村一 郎・三宅正貝Ij、円弧歯形をもっ傾斜歯車装置に関す る研究、機講論、 No.985‑2(1998‑10)、91‑92.
(7)長寄羊ー・永井良介・藤井亮、近似創成ピン歯を も っ 傾 斜 歯 車 減 速 装 置 の 特 性 、 機 講 論 、 No. 045‑2 ( 1 ) (2004‑11)、259‑260.