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地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

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まえがき

移動体通信サービスの社会的役割の重要度は増加の 一途をたどっており、特に、防災・減災・安全対策と いったミッションクリティカルなユースケースへの対 応が非常に重要である。地震などの大規模災害時に は、地上の携帯電話システムは、基地局が停波した り、安否確認などのための輻輳が起こり、使えなくな ることが多い。しかし、通信衛星は、地上の災害によ る影響を受けにくいため、大規模災害時の重要通信の 確保に役立つことが期待される。地上/衛星共用携帯 電話システム(Satellite/Terrestrial Integrated mobile Communication System: STICS)[1]の 研 究 開 発 プ ロ ジェクトの研究開発項目のア項では、地上回線に空き 回線がないときには衛星回線を選択する、地上のセル 間を端末がハンドオーバーするときに空チャネルがな ければ衛星回線にハンドオーバーする等、地上携帯電 話システムと衛星携帯電話システムの協調制御による 周波数リソースの動的共用基盤技術の確立が目標であ り、本技術を用いた STICS が、大規模災害時でも確 実に重要な通信を確保する通信インフラとしての役割 を担うことが期待される。そこで、本稿では、STICS プロジェクトにおけるア項の協調制御の総合評価とし て、ダイナミックリソース制御、優先呼制御、呼規制 制御が動作したときの評価を、実際の大規模災害時 の通信トラヒックと基地局停波状況をモデル化した シミュレーションにより行った結果を述べる。この 実際の通信トラヒックと基地局停波状況は、2011 年 3 月 11 日に発生した仙台市東方沖の海底を震源とす る東北地方太平洋沖地震(モーメントマグニチュード

(Mw) 9.0)による東日本大震災の状況を用いた。本地 震は、発生時点において日本周辺における観測史上最 大の地震であり、震源は広大で、岩手県沖から茨城県 沖までの南北約 500 km、東西約 200 キロメートルの

およそ 10 万 km2という広範囲すべてが震源域とされ ている。また、最大震度は宮城県栗原市で観測された 震度 7 であった。

協調制御が動作した場合の STICS に関する本格的 な性能評価のために、本プロジェクトで初めに開発 したシミュレータである「地上/衛星系協調制御総合 シミュレータ」は、「トラヒック発生の模擬」と「ダイ ナミックな制御の模擬」をする機能を有し、「衛星/

地上共用携帯端末」、「地上基地局」、「基地局制御局」、

「STICS 衛星」、「衛星ゲートウェイ局」、及び「ネット ワークダイナミック制御装置」を構成要素としていた。

しかし、1 台のコンピュータによりシミュレーション が動作するものであったため、処理速度やシミュレー ションモデルの設定規模にコンピュータのハードウェ アなどによる制限が存在した。また、実際に起こる構 成要素間の制御信号等送受を模擬していなかった。こ れらのため、STICS が実用された場合の特性を評価 することができなかった。

そこで、機能別に分散化し、実利用に即したトラ ヒック処理や、セル間ハンドオーバー制御等の呼制御 を実現するための制御信号・通信信号等を送受する機 能を持つ、より実際に近いシミュレーションができる シミュレーションシステムとして、「地上/衛星系総 合ネットワーク監視管理装置」を開発した。本装置に は、平時から非常時へのシームレスな移行を含むダイ ナミックリソース制御、優先呼制御、呼規制制御の統 合的なリソースの協調制御の特性評価のシミュレー ションをできる機能を持たせた。さらに、地震など大 規模災害時には、膨大なトラヒックが発生するため、

トラヒック発生の模擬において、シミュレーション間 隔の離散化誤差の軽減処理、端末発呼の集約化処理を 行うことにより、シミュレーション実行の規模を大規 模にすることができるようにした。本稿では、この装 置を用い、協調制御技術を用いた STICS の総合評価

1

地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

岡田和則 藤野義之 三浦 周 辻 宏之 織笠光明 秋岡眞樹 小宮山典男

地上/衛星共用携帯電話システム(STICS)における地上と衛星によるリソースの協調制御につ いて、開発した地上/衛星系総合ネットワーク監視管理装置を用い、東日本大震災時の実際の通 信要求と基地局停波状況を模擬したシミュレーションにより総合評価を行った。その結果、一般 端末の通信を強制終話させることが必要になるが、優先して接続するべき優先端末の呼のほとん どを収容することが可能であることが示された。

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2 地上/衛星系協調制御技術

(2)

を、2011 年 3 月に発生した東日本大震災の環境を模 擬したシミュレーションモデルにより行い、その有用 性や課題を明らかした。

本稿の以降の構成は、以下の通りである。

2

では、「地 上/衛星系協調制御総合シミュレータ」とこれを用い た評価の概要と、本文の総合評価に用いたシミュレー ションシステムである「地上/衛星系総合ネットワー ク監視管理装置」について機能概要等を述べる。ま た、大規模なシミュレーションができるための手法で ある、シミュレーション間隔の離散化誤差の軽減処理 と端末発呼処理の集約化について述べる。

3

では、東 日本大震災を模擬したシミュレーションモデルを述べる。

4

では、シミュレーション評価結果を述べ、最後に、

5

でむすびとする。

地上/衛星系総合ネットワーク 監視管理装置       

2.1 地上/衛星系協調制御総合シミュレータと 評価の概要

ここでは、STICS のプロジェクトで初めに開発し た地上/衛星系協調制御総合シミュレータとそれを用

いた協調制御の評価結果の概要を述べる。本シミュ レータは、「トラヒック発生の模擬」と「ダイナミック な制御の模擬」をする機能を有し、構成要素として、

図 1 に示すような「衛星/地上共用携帯端末」、「地上 基地局」、「基地局制御局」、「STICS 衛星」、「衛星ゲート ウェイ局」、及び「ネットワークダイナミック制御装置」

からなるシステムを対象としていた。この地上/衛星 系協調制御総合シミュレータでは、主として 3 つの制 御を模擬する機能を搭載した。ユーザ端末の移動制御 を司るランダムウォークトラヒック生成制御機能、動 的なトラヒック変動を司るダイナミック制御機能、及 び、呼の優先制御を司る優先端末制御機能である。

まず、ランダムウォークトラヒック生成制御機能で は、端末が通信サービスを利用しながら、ランダム ウォークモビリティモデルに従って移動した際のトラ ヒックを生成する。ランダムウォークは、ブラウン運 動などの物理的な事象のモデル化、株価の値動きなど の数理ファイナンス領域でのモデル化、さらに、移動 通信ユーザの移動モデル化などに広く応用されている 基本的なモデルである。

本モデルを用いてユーザ移動を模擬しトラヒック生 成を行った。その結果、実際の震災時のトラヒックを

2

図 1 地上/衛星系協調制御総合シミュレータの対象モデル

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2 地上/衛星系協調制御技術

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おおよそ模擬できることを確認した。

次に、ダイナミック制御機能では、上記のランダム ウォークトラヒック生成で生成したトラヒック変動に 対して、動的にリソース割当て制御を行うことによっ て、地上系と衛星系間の周波数共用を模擬するシミュ レーション機能を提供した。災害時のような急激的な トラヒック変動に対しては、事前予測を含む効率的な 通信資源制御が必要であり、それによって、通信機会 の最大化、及び通信品質劣化の最小限化を実現しなく てはならない。STICS では、トラヒックのダイナミッ ク性を表す要素として、チャネルの利用状況情報(使 用率)、利用チャネルの時間的推移情報(変動率)、及 び周波数割当て状況と実トラヒックの大域的な差異情 報(異常検出)の 3 指標を定義し、その指標に基づい て通信資源の最適化制御を行うことが検討[2][3]されて いた。そして、本シミュレータを用いて、使用率と変 化率による上記の周波数資源の協調制御を行い、衛星 回線の動的制御を行うことによって、行わない場合と 比較して、呼損数が 5%程度改善されることを確認し た。

さらに、優先端末制御機能では、緊急呼のような優 先度の高い端末の呼処理を特定のポリシーに従って処 理することが可能なシミュレーション機能を提供して いる。一般的に、携帯電話システムは、国際標準化団 体である 3 GPP(3rd Generation Partnership Project)

の標準仕様に従って、世界的に商用サービスが展開さ れている。その 3 GPP における優先呼の取り扱いや 発信規制に関する標準化状況を概観すると、これまで は、緊急呼のような優先呼は基本的に規制の対象外と なっており、規制については全呼規制、国際呼規制、

ホーム網以外の呼規制の 3 カテゴリに大別され、規制 サービスはベンダ依存といった状況であった[4]。しか し、最近は重要通信の確保が重要なトピックとして再 認識されており、新たな呼の優先制御サービスとして、

eMLPP (enhanced Multi-Level Precedence and Pre- emption service)が検討・標準化されている[5]。この eMLPP は、呼に対して優先度を割り当てることのみ ならず、高優先度呼を Pre-empt してまでも強制的に 接続させるサービスも規定している。このサービスは、

強制的な制御を含むこともあり、まだ実用レベルとし て行う段階には至っていない。しかし、特に災害時に、

緊急呼を優先して確保することの重要性を考えると、

STICS では、強制的な制御も含めた検討が必要であ ると考えた。地上/衛星系協調制御総合シミュレータ では、優先度制御ポリシーを定義して、呼の優先制御 を行い、シミュレーションにより、STICS において も優先制御機能が実現可能であることを確認した。

そして、最終的に、地上/衛星系協調制御総合シミュ

レータを用いて、STICS が、災害発生時等で地上回 線が輻輳している場合に、ユーザの緊急通話要求に応 えるため、地上回線から衛星回線に円滑にハンドオー バーし、災害発生時等の輻輳を軽減可能であること確 認した。

2.2 地上/衛星系総合ネットワーク監視管理装 置の構成

地上/衛星系協調制御総合シミュレータは、1 台の コンピュータでシミュレーションを行うものであった ため、大規模なシミュレーションはできず、シミュレー ションする対象地域が限定されていた。また、ハンド オーバー制御等を実現するため制御信号・通信信号等 の送受の模擬はできないものであった。そこで、端末 発呼処理の集約化、さらに、トラヒック発生の模擬に おいて、シミュレーション間隔の離散化誤差の軽減処 理を行い、災害時の実トラヒックに近づける改善を 行った。さらに、構成要素を機能ごとに分散化し、実 利用に即したトラヒック処理、セル間ハンドオーバー 制御等の呼制御を実現するための制御信号・通信信号 等を実際に送受するという機能、さらに、平時から非 常時へのシームレスな移行を含むダイナミック制御、

優先呼制御、呼規制制御の協調制御機能を実装し、よ り実体に近いシミュレーションシステムとして、地 上/衛星系総合ネットワーク監視管理装置を構築した。

地上/衛星系総合ネットワーク監視管理装置の構成 を図 2 に示す。ネットワークダイナミック制御装置、

基地局制御局、地上基地局の模擬を行う「総合監視管 理模擬装置」、衛星局及び衛星ゲートウェイ局の模擬 を行う「衛星/衛星フィーダリンク局模擬装置」、端 末を模擬する「実通信端末装置」に、それぞれ機能を 分散化することにより、端末からの発呼に対して地上 基地局、衛星局の状況に応じて各機器が協調動作を行 い、呼制御動作が実際に処理可能なシステムの構築を 行った。周波数共用を行ってリソース最適割当てを実 現するための衛星搭載技術として、16 素子以上の給 電部を備え超マルチビーム形成(100 ビーム以上)を可 能とする衛星系チャネライザ/デジタルビーム形成回 路(DBF)を開発したが、その DBF チャネライザとの インタフェースは衛星/衛星フィーダリンク局模擬装 置が担うこととした。そして、トラヒックの状況に応 じて、衛星リソースダイナミック制御アルゴリズムに 従い、DBF チャネライザに対してリソース設定コマ ンドを送出する。

2.3 機能概要

ここでは、地上/衛星系総合ネットワーク監視管理 装置の呼制御協調動作機能、DBF チャネライザによ

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65 2-7 地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

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る衛星リソースダイナミック制御機能、大規模シミュ レーションのための処理機能について概要を述べる。

2.3.1 呼制御及び優先呼制御動作機能

実通信端末装置からの発呼に対して、トラヒックシ ミュレーションの結果をもとに地上基地局/衛星局の 回線使用状況に応じた動的な呼制御動作を行う。

発呼処理フローを示す。

①実通信端末装置が地上基地局エリア内の場合、実 通信端末は地上基地局へ向けて発呼要求を行う。

地上基地局の回線に空きがあれば発呼成功となる。

②その地上基地局の回線に空きがない場合、地上基 地局は接続を拒否する。

③接続拒否となった場合、または地上基地局エリア 外の場合、実通信端末は衛星局に向けて発呼要求 を行う。衛星局の回線に空きがあれば発呼成功と なる。

④衛星局の回線に空きがない場合、実通信端末が一 般端末であれば接続を拒否し、発呼失敗となる。

実通信端末が優先端末であれば一般端末の通話を 切断して発呼成功となる。

⑤回線確立後は実通信端末からの音声信号を地上基 地局/衛星局が各装置間で転送処理を行うことで 音声通話を実現する。

⑥地上基地局を経由して通話中の実通信端末が地上 基地局エリア外に移動した場合、衛星局を使用し た回線にハンドオーバーを行い、回線維持を行う。

これらの処理により、実際の音声通信の経路を動的 に切り替えることができるようになっている。

災害時などに行政、消防等公共機関における緊急通 信の手段として優先端末が存在する。優先端末は各 キャリアからの通信規制を受けない端末であり、先の 東日本大震災時にも緊急通信手段として優先端末が活 用されたと考えられる。災害時のトラヒック状況を模 擬するには、この優先端末についても模擬することが 必要と考え、シミュレータに優先端末機能を付加する こととした。

シミュレータでの優先呼制御動作は、シミュレー ション時に以下の動きが選べるものとした。

①優先端末の発呼を接続するために、地上局が収容 限界時には接続中の一般端末を強制切断して優先 端末の発呼を受け入れる。

②優先端末の発呼を接続するために、地上局が収容 限界時には接続中の一般端末を強制的に衛星回線 へハンドオーバーし、優先端末を地上局に接続す る。

③優先端末の発呼を衛星回線へ接続する。この時衛

図 2 地上/衛星系総合ネットワーク監視管理装置の構成

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2 地上/衛星系協調制御技術

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星回線が収容限界の場合は優先端末の発呼を拒否

(呼損)する。

④優先端末の発呼を衛星回線へ接続する。この時衛 星回線が収容限界の場合は衛星回線接続中の一般 端末を強制切断し、優先端末の発呼を受け入れる。

2.3.2 DBF チャネライザによる衛星リソースダイナ ミック制御機能

衛星リソースダイナミック制御のアルゴリズムを 図 3 に示す。衛星回線の使用率及び変化率(単位時間 の衛星呼の増加量)を監視し、数分後の衛星回線の使 用率を予測する。予測値の閾値判断により、衛星収容 回線数の制御(拡大/縮小)を行う。このアルゴリズ ムに従い、シミュレーション内で、衛星リソース制 御が行われる。衛星ゲートウェイ局から DBF チャネ ライザ制御 PC を介し、衛星リソース制御(拡大/縮 小)のタイミングで実際の DBF チャネライザに対し て、リソース設定コマンドを送出し、DBF チャネラ イザを動作させ、実際にダイナミック制御が可能であ ることを実証できるようになっている。

2.3.3 大規模シミュレーションのための処理機能 災害時のトラヒックは、安否確認などのため急激で 大量である。このようなトラヒックを扱う大規模なシ ミュレーションを実現可能にするため、シミュレー ション間隔の離散化誤差の軽減処理と端末発呼の集約 化処理を行った。

2.3.3.1 シミュレーション間隔の離散化誤差の軽減処理 シミュレーション間隔が分単位だと最小時間間隔は 1 分である。電話の通話時間(保留時間)は通常、平均 120 秒の指数分布に従うといわれている。これに対し て、最小時間間隔を 1 分とすると、120 秒は 2 分なので、

シミュレーションの分解能が粗いことになる。指数分 布から計算した保留時間は、シミュレーション間隔単 位に切上げとなるため、図 4 に示した赤線がシミュ レータ上の保留時間の分布となり、指数分布グラフか らはみ出した分だけ、呼量が多く計上されることにな る。

そこで、シミュレーション間隔を 1 秒とすることで 精度の高いシミュレーションが可能となるが、計算機 の制約(データ量、メモリ使用量、演算時間等)により、

長期間に渡るシミュレーションが難しくなってしまう。

指数分布グラフからはみ出す部分が誤差要因である ので、誤差を相殺するため、各端末の保留時間を指数 分布に基づき算出したのち、シミュレーション間隔の 半分の時間を保留時間から減算する処理を追加した。

図 5 のように保留時間が指数分布のグラフを中心と した分布になることから、シミュレーション間隔離散 化の誤差を吸収できると考えた。ただし、保留時間が シミュレーション間隔未満の端末については、保留時

図 3 衛星リソースダイナミック制御アルゴリズム

図 4 保留時間の分布と離散化誤差 保留時間〔秒〕

図 5 シミュレータ保留時間分布 保留時間〔秒〕

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67 2-7 地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

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間が 0 秒以下になり単純に補正できずに誤差が発生す る。そこで、シミュレーションの大規模化のための本 処理の妥当性について検証した。

妥当性の検証に使用したモデルを図 6 に示す。地上 の 1 セルに端末を配置しシミュレーションを行い、実 際の発呼台数と発呼失敗台数から呼損率を計算し、実 際の発呼台数に保留時間の平均である 120 秒を掛けた ものを呼量として、アーラン B 式により求めた呼損 率と比較する。シミュレーション開始時は、発生呼数 が少なく、チャネルはほとんどが空いているという特 殊な状態になっているので、これを除いてシミュレー ション観測する必要がある。そこで、本検証では、発 呼失敗(呼損)が初めて発生した状態から 120 秒経っ たときから 3,600 秒間をシミュレーション期間とする。

検証の結果を表 1 に示す。シミュレーション間隔 60 秒の場合、アーラン B 式から求めた呼損率に比べ、

2~ 5% 程度呼損率が高くなっていた。その他のシミュ レーション間隔であれば、ほぼアーラン B 式と一致 することが確認できた。したがって、シミュレーショ ン間隔 30 秒以下であれば、シミュレーションは妥当 な結果が得られると考えられる。次節のシミュレー ションモデルでは、より精度が高くなるように、シミュ

基地局 容量

平均発呼台数 (設定)

シミュレーション 間隔

発呼台数 (定常)

呼損台数

(定常) 呼損率

アーランB 呼損率

100 180 60 10334 7642 73.95007 72.53

30 10092 7235 71.69045 71.87 10 10256 7347 71.63612 72.16 5 9890 6993 70.70779 71.26 1 10027 7180 71.60666 71.53

300 60 17235 14621 84.83319 83.5

30 17079 14242 83.38896 83.2 10 16770 13838 82.5164 82.89 5 16823 14016 83.31451 82.9 1 16839 13947 82.82558 82.93

200 180 60 9917 4711 47.50429 43.89

30 9664 4092 42.34272 42.44 10 9569 3806 39.77427 41.71 5 9396 3749 39.89996 40.65 1 9682 3978 41.08655 42.29

300 60 16630 11338 68.17799 65.81

30 16498 10909 66.12317 65.54 10 15982 10198 63.80929 64.43 5 16088 10226 63.5629 64.61 1 15859 10219 64.4366 64.07

300 180 60 9400 1893 20.1383 15.28

30 8859 1008 11.37826 11.43 10 8814 871 9.882006 11.04

5 8881 921 10.37045 11.27

1 8590 786 9.150175 9.02

300 60 16127 8190 50.7844 48.1

30 16015 7604 47.48049 47.28 10 15355 6826 44.45458 45.19 5 15220 6602 43.37714 44.63 1 15116 6656 44.03281 44.31

図 6 シミュレーション間隔の離散化誤差の軽減処理評価モデル 地上セル 1 セル(端末はすべてセル内と

する)

基地局容量 100,200,300 回線の 3 通り

端末数 3,000 台

平均発呼台数 60 秒あたり 180,300 台の 2 通り

平均通話時間 120 秒

シミュレーション期

3,600 秒

シミュレーション間

60,30,10,5,1 秒の 5 通り 表 1 シミュレーション間隔の離散化誤差の軽減処理評価検証結果

68   情報通信研究機構研究報告 Vol. 61 No. 1 (2015)

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2 地上/衛星系協調制御技術

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レーション間隔は、30 秒ではなく 10 秒とした。

2.3.3.2 端末発呼処理の集約化

シミュレーションの大規模化に伴い、エリア内の端 末数が非常に多くなる。この結果、計算機の制約(デー タ量、メモリ使用量、演算時間等)により、シミュレー ションの実行が難しくなってしまう。そこで、複数の 端末を 1 台とみなしてしまい、シミュレーションの軽 量化を行うこととした。ポアソン分布による発呼台数 計算では、1 台単位で発呼数を決定するため、端数が 生じる。端数を切り捨てると、発呼数自体が減ってし まい、呼量が想定よりも少なくなってしまう。端数を 切り上げると、発呼数が多くなるため、平均保留時間 を調整することにより、全体の呼量を等しく保つこと とする。

以下に一例を示す。

平均保留時間 T 秒として、発呼端末数が 55 台だっ たとすると、その呼量は

 55 × T = 55 T

である。端末集約数を 10 台としたとき、端数を切 り上げると、60 台となるので、

 60 × T = 60 T

となる。実際の発呼台数/集約後の発呼台数によっ て平均保留時間を短くし、呼量を維持する。

 60 × T × 55/ 60 = 55 T

本処理の結果、発呼・終話が集約数単位で発生する ため、図 7 の集約処理後のグラフのように通信中の端 末数の推移がバタついて観測される。そこで、集約数 1

のデータを真として、通信中の端末数が±何 % の範 囲にどれだけのデータが含まれるかを評価し、妥当性 を確認した。

図 8 に端末発呼処理の集約化の検証評価モデルを示 す。地上 1 セルに端末を配置しシミュレーションを行 い、集約数ごとの集約数を変化させ、通信中端末数の

図 7 集約処理の影響

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500

0 100

通信中端末数

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500

0 100 200 300 400 500

時刻

通信中端末数

集約処理

集約数 1 のデータを真として、通信端末数 が±何%の範囲にどれだけの割合のデータ が含まれるか評価する。

図 8 端末発呼の集約化検証評価モデル 地上セル 1 セル(端末はすべてセル内と

する) 基地局容量 5,000 回線

端末数 5,000 台

平均発呼台数 1 秒あたり 100,10.5 台の 2 通り

平均通話時間 120 秒

シミュレーション期

500 秒

シミュレーション間

1 秒

集約数 100,50,20,10,5,1 の 6 通り Title:K2015S-02-07.indd p69 2015/10/27/ 火 20:21:20

69 2-7 地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

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データの信頼区間を評価する。(集約数 1 のデータを 真として、通信端末数が±何%の範囲にどれだけの割 合のデータが含まれるか評価する。)

端末発呼の集約化検証評価結果の一例を図 9、10 に 示す。信頼区間の計算結果を図 11、12 に示す。図 11、

12 において、横軸が真値からの誤差範囲、縦軸がそ の範囲内に含まれるデータの割合である。

平 均 発 呼 台 数 の 半 分 以 下 の 集 約 数 で あ れ ば、

± 10 % の範囲に約 90 % のデータが含まれることが 確認できる。したがって、平均発呼台数を目安に、そ の半分以下の集約数であれば、ある程度妥当なシミュ レーション結果が得られると考えられる。この結果に 基づきシミュレーションモデルの設定を行った。

東日本大震災を模擬した シミュレーションシナリオ

前節で述べたシミュレーション間隔の離散化誤差の 軽減処理、端末発呼処理の集約化により、大規模なシ ミュレーションを実行することが可能となる。そこで、

STICS の有用性や課題を明らかにするため、東日本

大震災により近い環境を模擬したシミュレーションを 行う。また、この大規模災害を模擬した輻輳状況にお いて、実通信端末の呼制御が動作し、地上/衛星間を 動的に切り替えて音声通信が行えることを確認する。

3.1 シミュレーションシナリオ概要

東日本大震災を模擬したシミュレーションシナリオ の設定にあたり、各設定パラメータの根拠として使用 している各参照種資料を表 2 に示す。その他明確でな いパラメータについては仮定を行い設定した。シナリ オ設定パラメータのサマリを表 3 に示す。

3.2 シミュレーションエリア

シミュレーションエリアを、シミュレータの画面を 用いて、図 13 に示す。

シミュレーションエリアは、人口密度に比例させる ため、かつ、計算負荷軽減のため、人口分布が近い近 隣の 2 次メッシュ 4 つで 1 エリアとし、合計 28 エリ アで東日本大震災を想定して、震度の最も大きかった

3

図 11 信頼区間計算結果(平均発呼台数 100 台 / 秒)

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5 0.55 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

信頼区間(真値からの誤差)

1台集約 10台集約 20台集約 50台集約 100台集約

信頼係数(信頼区間に含まれるデータの割合)

図 9 通信端末数推移(平均発呼台数 100 台 / 秒、集約数 1 台)

図 10 通信端末数推移(平均発呼台数 100 台 / 秒、 集約数 20 台)

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500

0 100 200 300 400 500

時刻

通信中端末数

時刻〔秒〕

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500

0 100 200 300 400 500

時刻

通信中端末数

時刻〔秒〕

図 12 信頼区間計算結果 ( 平均発呼台数 10.5 台 / 秒)

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5 0.55 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

信頼区間(真値からの誤差)

1台集約 5台集約 10台集約 20台集約 50台集約 100台集約

信頼係数(信頼区間に含まれるデータの割合)

70   情報通信研究機構研究報告 Vol. 61 No. 1 (2015)

Title:K2015S-02-07.indd p70 2015/10/27/ 火 20:21:20

2 地上/衛星系協調制御技術

(9)

資料

No. 資料名 作成者 根拠として使用した項目

資料① 地域別統計データベース(市区町村別人口分布)

e-stat 政府統計の総合窓口より 総務省 ・端末配置

・平常時平均発呼台数

・地上基地局収容回線数 http://www.e-stat.go.jp/SG1 /chiiki/CommunityProfileTopDispatchAction.do?code=2 

資料② 「重要通信の高度化の在り方に関する研究会」について重要通 信の高度化の在り方に関する研究会(第 1 回)

資料 1-3、pp.21 総務省 ・優先端末数

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/jyuyou-t/pdf/071122 _1 _si1 -3.pdf  資料③ 大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検

討会(ネットワークインフラ WG)、

大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検 討会ネットワークインフラWG ( 第 2 回 )、資料 2-1、pp. 3

NTT ドコモ ・シミュレーション期間

・発呼規制率

・震発生後平均発呼台数 http://www.soumu.go.jp/main_content/000117676.pdf

資料④ トラヒックから見た我が国の通信利用状況【平成 20 年度】

pp.50 総務省

総合通信基盤局 ・平常時平均発呼台数 http://www.soumu.go.jp/main_content/000052399.pdf

資料⑤ 東日本大震災における通信の被災状況、復旧等に関する取組 状況、首都直下地震に係る首都中枢機能確保検討会(第2回)、

資料1、pp. 7 総務省 ・基地局停波要因割合

・ シミュレーション終了時刻で の基地局停波割合

http://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/kinoukakuho/2 /pdf/1.pdf  資料⑥ 東北地方太平洋沖地震への対応状況(復旧計画)について

(2011 /3 /30 ) NTT ドコモ ・3 /13 時点での基地局停波割合

http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/ir/binary/pdf/library/presentation/110330 /notice_110330 -2.pdf  資料⑦ IIP ネットワーク設備委員会・通信確保作業班 第1回会合

(2011.10.19 ) の補足説明、情報通信審議会 情報通信技術分科 会 IP ネットワーク設備委員会(第 18 回) 通信確保作業班(第 2 回)合同会合、• 資料 18 -1 -3、pp.1 -7

NTT ドコモ ・地上基地局収容回線数

http://www.soumu.go.jp/main_content/000136724.pdf

表 2 シミュレーションシナリオ設定に関する参照資料一覧

項目 設定概要 設定根拠

シミュレーションエリア ・栗原市周辺及び沿岸部・1 エリアにつき 2 次メッシュ 4 つ 東日本大震災時の最大震度エリアを想定、1 エリア のサイズは人口分布を模擬できるサイズ

シミュレーション期間 ・3 /11 の 14 時~ 3 /12 の 2 時  (地震発生時刻 14 時 46 分)

 シミュレーション間隔 10 秒

シミュレーション終了時刻は資料③より発呼規制解 除時刻とした。

地上基地局配置 ・ 各シミュレーションエリアにつき 1 つ の基地局で代表させた。

現実の基地局配置に関する具体的な情報が不明なこ とから、1 エリアにつき 1 つの基地局を配置し、そ のエリアの基地局の統計として処理することとした。

端末配置 ・端末配置は人口分布による。

・優先端末割合は一般端末の 0.072 %

・集約数は 10 台

人口分布は資料①より 優先端末の割合は資料②より

平均発呼数 ・通常時は人口分布による。

・災害発生後は資料③をトレース 平常時の平均発呼台数は資料④より

災害発生後は資料③より 地上基地局

収容回線数 ・ 平常時ピークの平均発呼台数において、

呼損率が 3 % となる収容回線数の 1.5 倍

呼損率 3 % となる収容回線数は、アーラン B 式よ り計算し、この 1.5 倍程度を収容できると類推した

(資料⑦)。

地上基地局 収容回線数変化

・ 地震発生直後の倒壊、伝送路断、津波 による流出、長期停電によるバッテリー 切れでの停止を模擬

要因別の基地局停止割合は資料⑤より、資料⑥の別 紙 3-2 の面積比で基地局停止割合を想定、時間変化 は要因ごとに仮定した。

表 3 シナリオ設定パラメータのサマリ Title:K2015S-02-07.indd p71 2015/10/27/ 火 20:21:20

71 2-7 地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

(10)

栗原市とその周辺及び、津波による大被害のあった沿 岸部のシミュレーションを行う。

3.3 発呼状況、シミュレーション期間、発呼規制 東日本大震災の発呼状況を模擬するため、資料③ の「東北地域における音声トラヒック状況」を参照し て発呼させた。大規模災害時の発呼は、地震発生時か ら急増し、システムを保護するために発信規制が掛か り、ピークを経て時間と共に減少するのが典型であ る。資料③のトラヒック状況も同様であり、地震発生 は 14 時 46 分で、発呼のピークは 15 時から 16 時頃、

発信規制が 80%掛かった状態でも通常時の 12.6 倍と なり、その後、発呼は減少し、通常時の昼間の発呼よ り少なくなり、さらに、深夜となる翌日の午前 2 時に は、発信規制は完全に解除された。そこで、本シミュ レーション期間は、地震発生前の 3 月 11 日 14 時から、

発呼規制が解除される 3 月 12 日 2 時までとした。発 呼規制は、3 月 11 日 15 時から開始とし、発呼規制率 は 80 % で、シミュレーション間隔は 10 秒とした。

3.4 地上基地局配置

地上基地局の配置図を図 14 に示す。計算負荷の軽 減のため 1 エリアにつき当該エリア全体を包含する基 地局を 1 つ配置し、当該エリアの地上基地局の統計と して処理することとした。各地上基地局の容量をエリ アの人口分布に応じて調整を行うことで、シミュレー ションの有効性は変わらないと考えられる。

3.5 端末配置

総務省の平成 22 年度人口分布(資料①)をもとに、

各エリアに端末を配置した。端末集約数は 10 として、

シミュレーションエリアの人口分布に基づき、一般端 末として合計 2,532,670 台相当(10 × 253,267 端末)を 配置した。

シミュレーション間隔あたりの平均発呼台数が人口 分布によって異なるが、大部分のエリアにおいて 20 台~数千台である。また、地震発生後には更に数十倍 の平均発呼台数となることから、2.3.3.2の「平均発呼 台数の半分以下の集約数であれば、± 10 % の範囲に 約 90 % のデータが含まれる」という結果より、集約 数 10 でも妥当な結果が得られると考えられ、計算負

図 13 シミュレーションエリア (No.14 が栗原市中心部に該当 )

0 1 2 3 4

5 6 7 8

9 10 11 12

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

25 26 27

図 14 地上基地局配置

72   情報通信研究機構研究報告 Vol. 61 No. 1 (2015)

Title:K2015S-02-07.indd p72 2015/10/27/ 火 20:21:20

2 地上/衛星系協調制御技術

(11)

荷軽減のために集約数 10 の設定とした。シミュレー ションエリアごとの端末配置数を表 4 に示す。

また、優先端末については、資料②に基づき、各エ リアの一般端末数の 0.072%として約 1,800 台を配置した。

3.6 平均発呼台数

平常時に発呼数がピークとなる時間 (17 時後半)に 配置端末のうち約 1.1 % の端末が通信中であると仮定

すると、通信中の端末数分の呼量が運ばれていること になる。平均保留時間が 120 秒であることから、この 呼量を 120 で割ると、1 秒当たりのピーク時の平均発 呼台数が求まる。地震発生前(平常時)の各エリアの 平均発呼台数は、そのピーク時平均発呼台数を基準と して、資料④の時間帯別発呼数の比に応じて設定した。

資料④においてピーク時を含む 17 時から 18 時の時間 帯の通信回数比率は 8.8 % で、地震発生時(14 時 46 分)

を含む 14 時から 15 時の時間帯の通信回数比率は 6.3%

であるため、ピーク時を含む時間帯の平均発呼台数の 6.3 /8.8 を地震直前の平常時の平均発呼台数とした。

地震発生後は、資料③の「東北地域における音声ト ラヒック状況」を参照し発呼数の割合をトレースした 結果に基づき変化させる。同資料により、最大時は地 震発生前の約 60 倍の平均発呼台数とし、発呼規制も 80 % とする。各エリアの平常時ピークの平均発呼台 数及び地震後最大時の平均発呼台数を表 5 に示す。

3.7 シミュレーションエリアの地上基地局収容 回線数と停波による変化

各シミュレーションエリアの地上基地局の収容回線 数は、人口分布に基づくものとする。資料⑦より、通 常使われる回線数の 1.5 倍程度を収容できると想定し た。平常時、発呼台数がピークとなる時間帯の平均発 呼台数において、平均保留時間の 120 秒を掛けて呼量 を求め、呼損率が 3 % となる収容回線数をアーラン B 式から計算し、その値を 1.5 倍した値を各シミュレー エリア

No. 端末配置数

[ 台相当 ] エリア

No. 端末配置数 [ 台相当 ]

0 86420 15 65340

1 46320 16 27530

2 16620 17 36770

3 23430 18 143420

4 14860 19 62020

5 32250 20 12550

6 74470 21 65300

7 14600 22 131930

8 48340 23 167620

9 36600 24 16190

10 70790 25 427930

11 65920 26 760040

12 14120 27 2730

13 11380 合計 2532670

14 57180

表 4 各シミュレーションエリアの端末配置数

エリア No.

平均発呼台数 ( 平常時ピーク )

[ 台 /10 s]

平均発呼台数 ( 地震後最大 )

[ 台 /10 s]

エリア No.

平均発呼台数 ( 平常時ピーク )

[ 台 /10 s]

平均発呼台数 ( 地震後最大 )

[ 台 /10 s]

0 79 3262 15 60 2466

1 42 1748 16 25 1043

2 15 627 17 34 1388

3 22 887 18 131 5413

4 13 534 19 57 2341

5 30 1217 20 11 462

6 68 2811 21 60 2465

7 13 551 22 121 4981

8 45 1843 23 153 6286

9 34 1382 24 15 619

10 65 2672 25 392 16152

11 60 2487 26 699 28767

12 13 552 27 3 118

13 10 430

14 52 2158

表 5 各シミュレーションエリアの平均発呼台数 Title:K2015S-02-07.indd p73 2015/10/27/ 火 20:21:20

73 2-7 地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

(12)

ションエリアの地上基地局収容回線数とした。このよ うに計算した各シミュレーションエリアの地上基地局 収容回線数を表 6 に示す。

地震発生後、長期の停電などの要因で基地局が停波 していく。本シミュレーションでは、この基地局停波 を地上基地局収容回線数の減少により模擬することと した。資料⑥の 3 月 13 日(日)18 時時点の携帯電話

使用可能エリアと使用不可エリアを示した地図(別紙 3 -1(岩手県)と 3 -2(宮城県))のサービスエリアに対 する不通エリアをトレースして、それ以外のエリアの 面積との比率を計算して求め、その割合だけ収容回線 数を減ずることとした。計算して求めた不通エリアの 面積比率を表 7 に示す。

さらに、今回のシミュレーションの期間は 3 月 12 日(土)2 時までであるため、その時点での収容回線数 の減少分を以下のように計算する。資料⑤の 7 ページ の「携帯電話基地局の停波基地局数の推移」に停波基 地局数の変化が表示されているので、これを各シミュ レーションエリアにも適用できると仮定する。それ によると 3 月 13 日の停波基地局数が約 6,700 局、3 月 12 日の停波基地局数が約 4,000 局であるので、シミュ レーション終了時の地上基地局収容回線数の減少分の 数値は、表 7 の数値の 4,000 /6,700 とする。

また、地上基地局の停波要因を資料⑤に基づき示す。

各シミュレーションエリアを、最大震度領域、沿岸部、

その他内陸部の 3 種に区分し、各停波要因ごとに収容 回線数の減り方を次のように仮定した。

①地震:最大震度領域で、地震発生直後に失われた とする。

②津波:沿岸部で、地震発生 2 時間後を津波到来と し、そのタイミングで失われたとする。

③伝送路断:全エリアで、地震発生直後から余震等 により時間経過後徐々に失われたとする。

④停電:全エリアで、地震発生 3 時間後から各基地 局のバッテリー容量の差により時間経過で徐々に 失われたとする。

各シミュレーションエリアの停波要因の違いによる 区分を図 15 に示す。また、各区分における地上基地 局収容回線数の設定例を図 16~ 18 に示す。最後に全 エリア

No. 収容回線数

[回線] エリア

No. 収容回線数 [回線]

0 1410 15 1080

1 760 16 460

2 280 17 620

3 410 18 2300

4 250 19 1030

5 550 20 210

6 1220 21 1080

7 250 22 2130

8 810 23 2670

9 620 24 280

10 1160 25 6640

11 1080 26 11630

12 250 27 70

13 190 合計 40380

14 940

表 6 各シミュレーションエリアの収容回線数

エリア No.

不通エリア 面積比 (3/13 18時点)

[%]

エリア No.

不通エリア 面積比 (3/13 18時点)

[%]

0 19.6 15 96.0

1 21.7 16 91.0

2 86.3 17 98.6

3 87.8 18 80.6

4 97.1 19 95.6

5 42.1 20 97.1

6 55.8 21 95.8

7 86.5 22 97.7

8 98.4 23 99.8

9 51.8 24 99.8

10 66.3 25 91.6

11 93.4 26 28.7

12 100.0 27 100.0

13 83.1 全体 67.0

14 82.8

表 7 各シミュレーションエリアの不通エリア面積比

図 15 シミュレーションエリアの停波要因による区分

最大震度領域:14

沿岸部:4,8,11,12,16,20,22,23,24,26,27 その他内陸部:0,1,2,3,5,6,7,9,10,13,15,17,18,19,21,25 最大震度領域

①地震

③伝送路断

④停電

沿岸部

②津波

③伝送路断

④停電 その他内陸部

③伝送路断

④停電

74   情報通信研究機構研究報告 Vol. 61 No. 1 (2015)

Title:K2015S-02-07.indd p74 2015/10/27/ 火 20:21:20

2 地上/衛星系協調制御技術

(13)

エリアの地上基地局を合計した収容回線数減の設定を 図 19 に示す。

3.8 衛星リソースダイナミック制御の設定 衛星の収容回線数については、STICS プロジェク トのイ項で開発された DBF チャネライザを想定して、

通常時は 4 MHz × 7 ビーム繰り返しとする。災害時 に被災ビームへのリソース割当てをダイナミック制御 により増加させるときは、被災地ビーム以外の 6 ビー ムにもリソースを最低限(500 kHz)残す必要があると 考え、被災地ビームには、最大 25 MHz まで割り当て ることとした。

衛星リソースダイナミック制御として、衛星回線の 使用状況から 100 秒後の使用状況を予測し、あらかじ めリソースの拡大を行う。ダイナミック制御の設定を 表 8 に示す。2,500 回線を 100 % として、予測した所 要回線数がリソース拡大閾値を超えた場合に、該当す る衛星収容回線数に設定することとした。

協調制御の総合評価 シミュレーションの結果

本節では、地上/衛星系総合ネットワーク監視管理 装置を用いて、

3

に述べた東日本大震災を想定したシ ミュレーションモデルにより、協調制御が行われた場 合の STICS のシミュレーション評価結果を述べる。

4.1 結果概要

地震発生後の状況をシミュレータの画面により、

図 20 に示す。各エリアの地上基地局が、使用中で あることを示す赤色一色になり、すべての基地局が 100 % 使用中で、呼損率を示すピンク色の棒グラフも 長く、輻輳状態となっていることが分かる。通信中の 端末のうち衛星局を使用して通話している端末の割合 の青色の棒グラフが少しずつあり、一部分は衛星局が あることによって救われていることが分かるが、衛星 リソースをシミュレーションエリアに集中させていて も衛星局の使用率は 100 % となっており、地上基地

4

衛星収容回線

(1 回線あたり 10 kHz 換算)

[ 回線 ] リソース拡大閾値 [%]

400

800 30

1600 60

2500 100

表 8 衛星リソースダイナミック制御の設定

図 16 地上基地局収容回線数の設定例 ( 最大震度領域:エリア 14)

40 50 60 70 80 90 100

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

③徐々に伝送路断

④徐々にバッテリー切れ

①震災発生 基地局倒壊

地上基地 収容回線数割合[%]

図 17 地上基地局収容回線数の設定例 ( 沿岸部:エリア 16)

40 50 60 70 80 90 100

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

③徐々に伝送路断

④徐々にバッテリー切れ

②津波による流出

地上基地 収容回線数割合[%]

図 18 地上基地局収容回線数の設定例 ( その他内陸部:エリア 2)

40 50 60 70 80 90 100

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

③徐々に伝送路断

④徐々にバッテリー切れ 地上基地 収容回線数割合[%]

図 19 地上基地局収容回線数の設定例 ( 全エリア合計 ) 上基地局 収容回線数割合[%]

40 50 60 70 80 90 100

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

①震災発生 基地局倒壊

③徐々に回線断絶

④徐々にバッテリー切れ

②津波による流出

Title:K2015S-02-07.indd p75 2015/10/27/ 火 20:21:20

75 2-7 地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

(14)

局からあふれた呼をすべて救うことはできていないこ とが分かる。

4.2

から以後、地上基地局から順を追って、シミュレー ション結果と考察を述べる。

 

4.2 地上基地局の状況

地震発生後の発呼数の急増時に、一般端末の発呼の 約 80%に発呼規制が掛かったときの地上基地局の発 呼数、通話端末数等の時間推移を図 21 に示す。

地上基地局の収容回線数に対する通話端末数は地震 発生直後から 21 時までほぼ一致して 99 % 以上となり、

一般端末に約 80 % の発呼規制を掛けた状態において も、地上基地局は輻輳状態が続いていることが分かる。

地上基地局の発呼数に対する接続失敗数(呼損数)

の率である呼損率と回線使用率の時間推移を図 22 に 示す。一般端末の発呼規制により発呼を制限している にも関わらず、地震発生後から数時間(14 時 46 分~

18 時 30 分)は 70~ 80 % 超が輻輳により呼接続失敗 となっている。この接続失敗した端末が衛星へ発呼 を行うことになる。基地局停波による収容回線数の

減少は、この数時間にはあまり起こっていない。し かし、翌日の 2 時頃(地震発生から約 11 時間後)には、

40,000 台から 24,000 台程度に減少している。発呼数 が深夜のため大きく減少しているので、呼接続失敗数 は見られない。しかし、地震発生時刻が、もし、6 時 間早く午前 8 時頃だった場合、地震発生から 11 時間 後は 19 時になるので、発呼数はまだ多く、かつ、収 容回線数も少なくなってきているという状態で、輻輳 状態はより激しい状態になったと考えられる。

4.3 衛星局の状況

衛星局に対する優先端末の接続失敗数、通信端末数 の時間推移を図 23 に示す。図 21 に示す地上基地局で 接続失敗となった端末が衛星局に対して発呼を試みる 結果、地震発生直後の一般端末の発呼規制が 80 % の 時においても、10 秒あたり 10,000 超の発呼が衛星局 に対して発生する。その結果、衛星リソースダイナ ミック制御で被災地ビームのリソースを最大値である 2,500 にしたとしても、衛星回線はすぐに埋まってし まい、優先端末の接続失敗も発生することになる。

図 20 地震発生後の状況

各エリアの地上基地局 使用率(赤が使用中)

衛星リソース割当て状況(外側円) (黄色がこのシミュレーションエリアに割り 当てられる回線数)

衛星局使用率(内側円) (赤が使用中)

各エリアの呼損率(ピンク色) 各エリアの話中端末の内、

衛星局を使用して通話している端末の割合(青)

図 21 地上基地局の発呼数、通話端末数等の時間推移

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 90000

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

[]

発呼規制開始

収容回線数に対して

ほぼ同じだけ通話端末数があり、

輻輳状態である

収容回線数 通話端末数 呼接続失敗数 発呼数

図 22 地上基地局の呼損率、回線使用率の時間推移 0

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

[%]

76   情報通信研究機構研究報告 Vol. 61 No. 1 (2015)

Title:K2015S-02-07.indd p76 2015/10/27/ 火 20:21:20

2 地上/衛星系協調制御技術

(15)

衛星局の優先端末の呼損率と回線使用率を図 24 に 示す。衛星局の回線使用率は 100%で使い切っていて、

優先端末の呼損率は高い状態が深夜近くまで続いて いるのが分かる。特に、地震発生から 20 時頃までは、

優先端末からの呼のうち、90 % 超が呼損となっている。

災害を防ぐことや生命や財産に関わる重要な優先端末 の通信が確保できないのは、問題である。優先端末の 発呼を救うためには、発呼規制により一般端末の発呼 を更に減らすか、衛星において優先端末からの呼を区 別して、一般端末の通話を強制終話させ、優先端末の 呼を接続する制御が必要であると考えられる。

一般端末の発呼規制を 90 % とした場合の衛星局に 対する優先端末の発呼状況及び呼損率を図 25、26 に 示す。80 % 規制時と状況はほとんど変わっておらず、

わずかに呼損率が下がるものの、90 % 前後の呼損率 であり、90 % 程度の発呼規制では優先端末の発呼を 救えないことが分かる。

4.4 一般端末の強制終話の効果と発生状況 一般端末の発呼規制率を 80%とし、衛星局におい て優先端末からの呼を区別し、衛星回線を使用してい る一般端末を強制終話させる場合の優先端末の接続 失敗と通信端末数等の時間推移を図 27 に示す。地震

図 23 衛星局における優先端末の呼接続失敗数等の時間推移

(一般端末発呼規制 80%、衛星局において優先呼を区別しない場合)

図 24 衛星局における優先端末の呼損率と回線使用率の時間推移

(一般端末発呼規制 80%、衛星局において優先呼を区別しない場合)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

[%]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

[

]

図 25 衛星局における優先端末の呼接続失敗数等の時間推移 (一般端末発呼規制 90%、衛星局において優先呼を区別しない場合)

0 500 1000 1500 2000 2500

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

[

]

図 26 衛星局における優先端末の呼損率と回線使用率の時間推移 (一般端末発呼規制 90%、衛星局において優先呼を区別しない場合)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

[%]

図 27 衛星局における優先端末の呼損発生状況

(一般端末発呼規制 80%、衛星局において優先呼を区別して一般端末を強制 終話させる場合)

0 500 1000 1500 2000 2500

14:00 17:00 20:00 23:00 2:00

[

] 呼接続失敗数が 0 になっており、

優先呼を全て救えている Title:K2015S-02-07.indd p77 2015/10/27/ 火 20:21:20

77 2-7 地上/衛星共用携帯電話システムにおける協調制御技術の総合評価

参照

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