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転倒降伏耐震壁を有する建物に関する実験的研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)転倒降伏連層耐震壁を有する建物に関する実験的研究.       崎野研究室 高橋 鉄平. 1 研究目的. アー破壊を防ぐために基礎梁と繋梁の間に設けた水平ス.  著者等は、従来に無い新しい降伏機構を形成する連層. リットは15mm と小さくしている。2階床位置には、ダ. 耐震壁(転倒降伏耐震壁と呼ぶ)の開発的研究に着手し. イアフラムシミュレーターと呼ばれる軸力のみを伝達す. た。転倒降伏耐震壁の特色は履歴型ダンパーを内蔵して. る鋼棒が2階鉄骨梁にピンジョイントにより取付けられ. いることと、フレーム変形に適合する変形性状を有する. ている。壁板の構造は CFTW のそれとほぼ同じである. 点である。このような耐震壁を中低層のフレーム構造に (図1b 参照)。 組込んだ有壁架構を当面の研究対象としている。建物は. STBF 試験体:純フレーム試験体で、鉄骨梁と鋼管横補. 基本的には鉄筋コンクリート構造であるが、必要に応じ. 強 RC 柱で造られている RCS 架構である。この試験体は. て鉄骨を用いる合成構造建物である。. 柱頭・柱脚に塑性ヒンジを形成し、層崩壊を生じるよう.  本論においては、試設計を行った12層建物の部分架構. に設計されている(図1c 参照)。. に関する実験結果について報告する。研究の目的は次の. RCBF 試験体:鉄骨梁の代りに RC 梁を用いた純フレー. 二つである。. ム試験体である。柱脚と梁端部にヒンジが出来るように. 1)転倒降伏耐震壁が想定した降伏機構を形成するこ. 設計されている。STBF 試験体の水平耐力とほぼ同じに. との検証. なるように柱の主筋量を多くしている(図1d 参照)。. 2)12 層建物の静的及び動的挙動の解析に用いた解析.  試験体に用いた材料の性質を表1、2に示す。. プログラムの精度の検証. 表1 鉄筋の力学的性質. 2  実験計画 D10 Steel Bar Steel Tube H-175 175 7.5. 2.1 試験体  実験を行った1/4縮尺部分架構模型試験体は、12層建 物より取出した1層1スパンの転倒降伏耐震壁2体と純. 表2 コンクリートの力学的性質. フレーム2体の合計4体である。4体の試験体の詳細につ いて述べる。. Columns,Beams Wall Panel. CFTW 試験体:この試験体は、壁板の詳細と繋梁の耐力 は異なるが、他はプロトタイプ建物の1/4縮尺モデルで. σy (MPa ) Yield Strain (μ) σu (MPa ) 354 1720 496 338 1870 451 11 287 1390 455. Strength(MPa) 40 107.6. Yung's Modulus(Gpa) 28.3 39.2. 2.2 加力装置と加力方法. ある。柱はコンクリート充填角形鋼管柱(CFT柱と書く)  加力装置の概略図を図2に示す。試験体には、まず12 でできている。試設計建物における耐震壁の転倒モーメ. 層建物の1層部の軸力に対応する鉛直荷重を載荷し、実. ント耐力と同じにするために、繋梁は試設計建物におい. 験中一定に保持した。水平力は油圧ジャッキにより繰返. ては2Fと12Fに設けられた繋梁のせん断耐力の和とほぼ. し載荷を行った。正負荷重とも図2に示すように圧縮力. 同じ耐力を持つように設計されている。壁板は板厚. により載荷した。この事は、梁に圧縮軸力が導入される. 70mm の高強度プレーンコンクリートと板厚3.2mm の鋼. 事を意味する。図2に示す 1 、 2 、 3 を計測し、骨組の層. 板よりなる合成壁板となっている。後述するように、実. 間変形角と繋梁の部材角を測定した。載荷プログラムは. 験においては2階床位置に水平力を加力するため、壁板. 図3に示す正負交番漸増振幅繰返し載荷で、各変位振幅. は実際の設計におけるそれより剛強に設計している(図. ごとに3 回の繰返し載荷を行った。. 1a 参照)。. 3 実験結果. TRCW 試験体:この試験体は、耐震壁の周辺柱として. 3.1 崩壊機構. CFT柱の代りに鋼管横補強RC柱を用いたものである。 柱.  転倒降伏耐震壁の破壊性状を写真1に示す.全ての試. には施工上の上限値と言えるほどの多量の主筋を入れて. 験体は、設計時に想定した崩壊機構を生じた。RCBF 試. いる。壁脚部の水平スリット部におけるパンチングシ. 験体の梁に、コンクリートのひび割れと軽度の圧潰が観. 42-1.

(2) ダイアフラムシミュレーター. 繋梁. 鋼管横補強RC柱 □- 175×175×6. CFT柱. 0 0 0 1. 0 0 0 1. □- 175×175×6. 16-D10. 壁版 t=73.2. 壁版 t=73.2. 繋梁. 1500. 1500. (a) CFTW 試験体. (b) TRCW 試験体. 鉄骨梁. RC梁. H- 175×175×7. 5×11. 6-D13. 鋼管横補強RC柱. 鋼管横補強RC柱. □- 175×175×6. 0 0 0 1. 0 0 0 1. □- 175×175×6. 12-D10. 8-D10. 1500. 1500. (c) STBF 試験体. 寸法単位:mm. (d) RCBF 試験体 図1 試験体の形状・寸法および配筋詳細. 察された。また、CFTW 試験体の壁板コンクリートに数 本の非常に細い斜めひび割れが観察された。溶接部の亀 裂はどの試験体にも観察されなかった。 H形鋼製の繋梁、. + 2 2 H = P + N cos N = 529kN =. 1. N 1. 2. CFT柱の角形鋼管には顕著な局部座屈は観察されなかっ た。また、STBF、RCBF 試験体の鋼管横補強 RC 柱に用. P. いられた鋼管には顕著な膨らみ出しは観察されなかっ た。特筆すべき事は、耐震壁試験体は、試設計建物の静 的解析より得られたせん断力よりもはるかに大きなせん. −P. 3. h. 断力を受けた結果、柱脚における鋼管横補強RC 柱に関 しては、2/100 radでパンチングシアー破壊の徴候が見ら れたのに対し、CFT柱はせん断破壊の徴候は見られず安. 図2 加力装置. 定した挙動を示した事である。. 24. 2.0.  全ての試験体の水平力と層間変形角の関係を図4に示 す。CFTW 試験体と TRCW 試験体の比較により、CFT 柱 の方が鋼管横補強 RC 柱より、耐力、剛性、エネルギー 吸収能力の観点から優れている事が分る。いずれの試験 体の水平力も、プロトタイプモデルの静的解析より求 まった一点鎖線で示す水平力をはるかに上回る水平力に 耐えている事が分る。すなわち、連層耐震壁の反曲点位 置を2層床位置に想定して加力しても設計時に想定した. 42-2. 層間変形角(×10 -2rad). 3.2 荷重―変形関係. 21 18. 1.5. 15 12. 1.0 0.5. 9 6 3. 0 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0. サイクル数. 図3 載加プログラム.

(3) 転倒モーメント降伏機構を生じており、せん 断破壊を生じていない事が分る。一方、STBF 試験体とRCBF試験体との比較により、梁降伏 機構骨組の方が、柱崩壊機構骨組よりも履歴 繋梁. の形状がやや良好である事が分る。すなわち、 柱の塑性ヒンジより梁の塑性ヒンジの方が、 エネルギー吸収性状の観点から若干優れてい るという事が分かる。 3.3 試験体各部の変形  各サイクル除荷点における各試験体の柱の 縮み量(2本の柱の平均値)とサイクル数の関. 柱. 係を図5に示す。いずれの試験体についても縮. 壁版 (a) CFTW 試験体. み量は小さく、骨組あるいは耐震壁が大きな 繰返し変形を受けても、軸力保持能力につい ては十分な健全性を有している事を示してい る。各サイクル除荷点における耐震壁左右柱 の軸方向変形の差をスパン長さで除した値(2 階位置における耐震壁頂部の回転角)とサイ 繋梁. クル数の関係を図6に示す。いずれの耐震壁に ついても回転角は非常に小さい事が分る。こ れが、提案する耐震壁の特徴で、耐力は、曲げ 破壊あるいは回転降伏する耐震壁の場合と同 様に、転倒モーメントにより支配されている が、節点変位で見た水平変位モードは、純フ レームやせん断破壊する耐震壁と同様に水平. 柱. 変位のみで回転角を殆ど生じていない。. 壁版 (b) TRCW 試験体.  図 7 に繋梁のみの部材角と耐震壁の層間変. 写真1 転倒降伏耐震壁の破壊性状. 形角の関係を示す。繋梁には、層間変形角の約 10 倍程度の部材角が生じている。このことに 800. より、繋梁は小さな層間変形角で早期降伏し、. は、疲労破壊、溶接部の亀裂が生じない様に細. 600. 200 0 -200 -400. 心の配慮が必要である。. 究で用いた解析手法による解析結果と実験結. -800 1. 2. -2. 100. -50. -150. 0. 1. 2. 150. STBF. 0. 山モデルとし,コンクリートの応力-歪関係を. -1. 層間変形角(×10-2rad). 50. -100. 合わせて図4に示す。また、各試験体のエネル. 0. 水平力(kN). 水平力(kN). 100. 化については,鋼材の応力-歪関係を大井・秋 崎野・孫モデルとした.解析結果を実験結果と. -1. 150. 果の比較を行う。解析手法は、線材要素を用い. モデルにより評価されている。材料のモデル. 実験値 解析値 設計用せん断力. 層間変形角(×10-2rad).  本節においては、文献2で報告する解析的研. 性を考慮している。断面の剛性はファイバー. 0 -200. -600. -800 -2. た有限要素法によるもので、幾何学的非線型. 200. -400 実験値 解析値 設計用せん断力. -600. 4  解析結果と実験結果の比較. TRCW. 400. 水平力(kN). 事がわかる。従って、実際の設計にあたって. 800. CFTW. 400. 水平力(kN). 地震時における履歴型ダンパーの役割をする. 600. 実験値 解析値. RCBF. 50. 0. -50. -100. 実験値 解析値. -150 -2. -1. 0. 1. 層間変形角(×10-2rad). 2. -2. -1. 0. 1. 2. 層間変形角(×10-2rad). 図4 荷重-変形角関係(実験結果と解析結果の比較). 42-3.

(4) 0.3. 点からは、解析結果は純フレームについては過大 評価しているが、耐震壁に関しては比較的精度良 く評価している事が分る。. 軸方向平均ひずみ(%). に示す。エネルギー吸収能力の評価精度という観. 0.3. CFTW. 0.2. 軸方向平均ひずみ(%). ギー吸収量に関する実験値と解析値の比較を図 8. 0.1. 0. -0.1. -0.2. 5  結論. -0.3.  本研究で提案する転倒降伏機構を有する耐震壁. 0.75 1.0. 1.25 1.5. 0.25 0.5. 0. -0.1. -0.2. -0.3. (2)耐震壁の繋梁は、 小さな層間変形でせん断降伏 し、繰り返し載荷時において大きなエネル ギーを吸収することから、履歴型ダンパーと. 横補強RC柱に塑性ヒンジが形成されるように 設計する事も推奨できる。. 0.1. 0. -0.1. -0.2. -0.3 0.25 0.5. 0.25 0.5. 0.75 1.0. 1.25 1.5. 1.75 2.0. 2. 1. 0. -1. -10. 0. 10. -0.2. -0.3 0.25 0.5. 0.75 1.0. 1.25 1.5. 1.75 2.0. TRCW 1. 0. -1. -20. -10. 0. 10. 20. 繋梁の部材角(×10-2rad). 図7 層間変形角と繋梁の部材角の関係 25. CFTW 面積(kN・m). 面積(kN・m). 20. 15. 10. 5. TRCW. 15. 10. 5 実験値 解析値. 実験値 解析値. 0. 0 0.25 0.5. 0.75 1.0. 1.25 1.5. 1.75 2.0. 0.25 0.5. 層間変形角(×10-2rad). 法と解析法) 、日本建築学会九州支部研究報告 第. STBF. 2. 面積(kN・m). 2. 面積(kN・m). 0.75 1.0. 1.25 1.5. 1.75 2.0. 層間変形角(×10-2rad) 2.5. 2.5. 42号、2003. 1.5. 1. RCBF. 1.5. 1. 0.5. 0.5. 実験値 解析値. 2003. 実験値 解析値 0. 0. 同解説、1999. 0. -0.1. 20. 25. 壁を有する建物に関する解析的研究(その1 設計. 4)日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算基準・. 0.1. 繋梁の部材角(×10-2rad). 2)日高桃子、崎野健治、山口達也:転倒降伏耐震. 結果) 、日本建築学会九州支部研究報告 第42号、. TRCW. -2 -20. 20. 壁を有する建物に関する解析的研究(その2 解析. 0.2. 2. CFTW. 特性実験結果を比較的精度よく予測できる。. 3)山口達也、日高桃子、崎野健治:転倒降伏耐震. 1.75 2.0. 図6 2階位置における骨組の回転角. り、耐震壁および純フレームに関する復元力. 本建築学会九州支部研究報告 第42号、2003. 1.25 1.5. 層間変形角(×10-2rad). -2. 1)崎野健治、日高桃子:転倒降伏耐震壁の提案、日. 0.75 1.0. 0.3. 層間変形角(×10-2rad). (4)線材要素を用いた有限要素法による解析によ. 参考文献. -0.2. 層間変形角(×10-2rad). CFTW. 0.2. 層間変形角(×10-2rad). を防ぐ建物の骨組においては、梁よりも鋼管. 0. -0.1. 1.75 2.0. 0.3. (3)鋼管横補強RC 柱を用いた骨組は、性能設計に に優れた特性を持つ。従って、耐震壁が層崩壊. 0.1. 図5 柱の縮み量. しての性能を持つ事が期待できる。 おいて重要となる損傷度合の観点からは非常. 1.25 1.5. 2階位置における骨組の回転角(×10-2rad). に対する補強法は今後の検討課題である。. 0.75 1.0. 層間変形角(×10-2rad). ンチングシアー破壊の徴候が見られた。これ. 1.75 2.0. RCBF. 0.2. 層間変形角(×10-2rad) 2階位置における骨組の回転角(×10-2rad). いた場合は、層間変形角が2/100 rad の時にパ. 1.25 1.5. -0.3 0.25 0.5. なく、変形性能に富む塑性ヒンジが柱に形成 される。一方、柱として鋼管横補強RC 柱を用. 軸方向平均ひずみ(%). STBF. 0.1. けられる壁脚部においてせん断破壊すること. 0.75 1.0. 層間変形角(×10-2rad) 0.3. 0.2. 軸方向平均ひずみ(%). として CFT 柱を用いれば、水平スリットが設. -0.2. 1.75 2.0. 0.3. ンジと繋梁の変形性状により支配される。柱. 0. -0.1. 層間変形角(×10-2rad). と鋼管横補強RC 柱を用いた純フレームに関して4 (1)耐震壁の変形性状は、 柱脚に形成される塑性ヒ. 0.1. -0.3 0.25 0.5. 体の実験を行い、以下の結論を得た。. TRCW. 0.2. 0.25 0.5. 0.75 1.0. 1.25 1.5. 1.75 2.0. 層間変形角(×10-2rad). 0.25 0.5. 0.75 1.0. 1.25 1.5. 1.75 2.0. 層間変形角(×10-2rad). 図8 エネルギー吸収量(実験結果と解析結果の比較). 42-4.

(5)

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