博 士 ( 理 学 ) 田 沼 延 公
学 位 論 文 題 名
チ ロシンホ スファターゼ PTP8C による サイトカインシグナルの選択的抑制
学位論文内容の要旨
サイ卜カインは、造血系・免疫系・神経系をはじめとした幅広い細胞系列に作用し、
それらの機能・増殖・分化・死を制御している。 サイトカインの生理作用は、細胞 表面に存在する特定の受容体を介したシグナルが最終的に核に伝えられることによっ て発揮される。 このサイトカイン受容体からの細胞内シグナル伝達において、もっ とも重要な役割を果たしているのが、JAK―STATシグナル伝達経路である。 当研究室 では、従来、細胞膜貫通型として知られていたチロシンホスフんタ―ゼPTP£に、新規 細胞質型isoform PTP£C、が存在することを報告した。 本研究は、PTP£Cの機能につ いて知見を得ることを目的とした。 その結果、ある種のサイトカイン受容体を介し たJAKーSTAT経路の活性化を、PTP£Cが負に調節する機能をもっことを見出した。 ま た、PTP£Cの遺伝子発現調節機構についても若干の解析を試みた。 得られた知見の う ち 、 主 要 な も の を 以 下 の 4点 に ま と め 、 本 論 文 の 要 旨 と す る 。
1.PTPe遺伝子5 端領域を単離し、解析を行った。 その結果、PTPe 2isoformの mRNAが、単一遺伝子から、alternati veなプ口モ―夕―の利用によって生じている ことが明らかになった。
2.PTP£Cの発現が、Ml細胞を含むいくっかの白血病細胞のマク□ファ―ジ分化過程 で上昇することを明らかにした。 マウス腹腔マクロフア―ジにおいても、PTPEC が高発現していた。 また、マクロファージにおけるPTP£Cの遺伝子発現に、転写 因 子NF―IL6が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。
3. イン夕―ロイキン(IL)−6によルマク口ファ―ジ様の細胞へと分化誘導可能なマ ウスMl白血病細胞に、野生型PTPeCおよびその不活性変異体を遺伝子導入し、分化 プログラムヘの効果を検討した。 強制発現させたPTP£Cは、その酵素活性依存的 に、IL―6によるMl細胞の分化を強く抑制した。 PTPeCによる分化抑制機序を解析 したことろ、JAK―STAT経路の抑制との間に、強い相関が認められた。 IL−6によ
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るJAK―STAT経路のシグナルを、PTP£Cは、JAK活性化のレベルで抑制した。
4.IL−6以外 のサ イト カイ ンシ グナ ルに おぃ て も、PTPeCが 抑制効果 を示すかどうか を調 べた 。 その結果、PTP£Cは、IL―6受容体以外にも、IL―10受容 体を介したSTAT の活 性化 を抑 制し た。 こ れに 対し 、イ ン夕 ― フェ □ン (IFN)‑a/p受容体.IFN‑y受 容体 を介 したJAK−STATシグ ナル に対して は、調べたすべての点において、PTPEC発現 の効 果は 認められなかった。 よって、PTP£CによるJAK−STATシグナ ルの抑制は、あ る 種 の 受 容 体 を 介 す る も の に 選 択 的 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 菊池九二三 副 査 教 授 谷 口 和 彌 副 査 教 授 矢 澤 道 生 副 査 教 授 畠 山 昌 則
学 位 論 文 題 名
チ ロ シ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ PTP8C に よ る サイトカイン シグナルの選択的抑制
サ イトカインは、造血系・免疫系・神経系をはじめとした 幅広い細胞系列に作用し、
そ れら の 機能 ・増 殖・ 分化 ・死 を制 御し てい る。 サイトカインの生理作用は、細胞 表 面に 存 在す る特 定の 受容 体を 介し たシ グナ ルが 最終的に核に伝えられることによっ て 発揮 さ れる 。 この サイ トカ イン 受容 体か らの 細胞内シグナル伝達において、もっ と も重 要 な役 割を 果た して いる のが 、JAK‑ STATシ グナ ル伝 達経 路で ある 。 当該研 究 室で は 、細 胞膜 貫通 型と して 従来 知ら れて いた チロシンホスフアターゼPTPeに加え て 、 新 規 の 細 胞 質 型 isoform PTP£ Cが 存 在 す る こ と を 報 告 し た 。 本 論 文 で は 、 こ のPTPsCの 生 理 機 能 を 明 ら か に する こ とを 目的 とし た。 そ の結 果 、 あ る 種 の サ イ ト カ イ ン 受 容 体 を 介 し たJAK‑ STAT経 路の 活性 化を 、PTP 8Cが負 に 調節 す る機 能を もつ こと を見 出し た。 ま た、PTP£Cの遺伝子発現調節機構につい て も さ ら に 解 析 を 試 み た 。 本 論 文 の 要 旨 は 以 下 の4点 に ま と め ら れ る 。
1.PTPe遺 伝 子5t端 領 域 を 単 離 し 、 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、PTPs 2isoform のm RNAが 、 単一 遺伝 子か ら、altern ativeなプ ロモ ータ ーの 利用 によって生じ て いる こと を明 らか にし た。
2.PTPsCの 発 現 が 、M1細 胞 を 含 む い く っ か の 自 血 病 細 胞 の マ ク ロ フ ア ー ジ 分 化 過程 で上 昇 する こと を明 らか にし た。 マ ウス腹腔マク ロファージにおいても、
PTPsCが 高 発 現 し て い た 。 ま た 、 マ ク ロ ファ ージ にお け るPTP eCの遺 伝子 発 現 に 、 転 写 因 子NF‑ IL6が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と を 明 ら か に し た 。
イン ター ロイ キン(11) ‑6に よル マク ロフ ァー ジ様 の細 胞へ と分化誘導可能な マ ウスMl自 血病 細胞 に、 野生 型PTP eCおよびその不活性 変異体を遺伝子導入し、
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分 化プログラムへの効果を検討した。強制発現させたPTPeCは、その酵素活性 依 存的に、11‑6によるM1細 胞の分化 を強く抑 制した。 PTPsCによる分化抑 制機序を解析したところ、JAKーSTAT経路の抑制との間に、強い相関が認められ た 。11‑6に よるJAK‑ STAT経 路 のシ グ ナル を 、PTP8Cは、JAK活性化の レベ ルで抑制した。
4.11‑6以外の サイトカイ ンシグナ ルにおい ても、PTPeCが 抑制効果 を示すか ど うかを調べた。 その結果、PTP£C|ま、ILー6受容体以外にも、11‑ 10受容体を介 したSTATの活性化を抑制した。 これに対し、インターフェロン(IFN)‑酬p受 容体. IFN‑Y受容体を介したJAK‑ STATシグナルに対しては、調べたすべての 点において、PTPsC発現の効果は認められなかった。 よって、PTPt;Cによる JAK‑ STATシグナルの抑制は、ある種の受容体を介するものに選択的であること が明らかになった。
以上を要するに,申請者はチロシンホスフアターゼPTP£Cについて,細胞内情報 伝達系における新しい負の選択的抑制機構を明らかにしたもので,情報伝達研究およ びチロシンホスファターゼ研究において貢献するところ大なるものがある。よって,
申 請 者は 北 海 道大 学 博 士( 理 学) の 学 位を 授 与さ れ る 資格 ある者 と認める。
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