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学位論文題名Anisotropic Ground States of the Quantum Hall System with Currents

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 津 田 和 実

     学位論文題名

Anisotropic Ground States of the Quantum Hall     System with Currents

(電流が流れている量子ホール系の異方的基底状態の解析)

学位論文内容の要旨

一研究の背景

  1999 年、非常に移動度の高い試料を用いた極低温(150 mK 以下)での量子ホール系(磁場 中の2 次元電子系)の実験において、2 っの実験グループにより独立に縦抵抗の強い異方性が 報告された[1] 。彼らは正方形の試料に対し2 っの直交した方向に1‑20 nA 程度の微小電流を流 して縦抵抗(およびホール抵抗)の測定を行い、その結果、ランダウ準位占有率v =9/2 、11/2 等の半占有率の近傍で縦抵抗の強い異方性を観測した。この異方的状態を理論的に説明する電 子状態として現在までに、電子が一方向には一様にもう一方向には周期的に並んだ「ストライ プホール状態(ストライプ状態)」 [2] 、及び電子密度が両方向に周期的だがその周期の大きさ に強い異方性を持っ「異方的電荷密度波状態(ACDW 状態)」[3] の2 っが主に提案されている。

し かし 、どちらが実験で実現されている電子状態な のか未だはっきりしていなかった。

   ストライプ状態は一方向にはギャップレス、もう一方向にはエネルギーギャップを持った異 方的なフェルミ面を持っ。電流を流した際に、ギャップレス方向にフェルミ面がずれるとエネ ルギーの散逸が生じ縦抵抗が生じるが、ギャップのある方向にフェルミ面がずれてもエネルギ ーの散逸を生じず縦抵抗は発生しないと期待される。このことから、ストライプ状態は縦抵抗 の強い 異方性をうまく説明する。ー方、 ACDW 状態は半占有率で 2 枚のエネルギーバンドを 形成し エネルギーギャップを持つ。このエネルギーギャップの大きさは温度に換算して10K 程度であり、100 mK 程度の極低温においては実験で見っかっているような強い異方性は期待 できない。しかしながら、電流の流れていない場合における両状態のエネルギーの研究では、

ハート リーフオック近似と呼ばれる平均場近似の範囲内でACDW 状態の方が低いエネルギー 値を示 すことが分かっており、実験結果をうまく説明できないにもかかわらず理論的には ACDW 状 態の方がエネルギー的に安定な状態であると いう点が今まで問題となっていた。

ー本研究内容

   量子ホール系の実験では、縦抵抗の測定の際に系に微小電流を流している。古典的なホール 効果に見られるように、磁場中では電 流を流すと電流に垂直な方向に電荷の蓄積が生じ、

その結果、系のエネルギーは上昇する。従来の理論研究ではこの電流によるエネルギー補正 の効果は一切考慮されていなかった。 そこで本研究では、ストライプ状態及びACDW 状態に 対する有限電流の効果を解析した。この解析は我々が独自に開発した von Neumann lattice 形 式と呼ばれる計算方法を応用することで初めて可能となったものである [4] 。その結果、古典的 なホール効果から期待されるとおり、系に電流が流れることにより電流に垂直な方向の試料端 に電荷が蓄積し、この蓄積された電荷間のクーロン相互作用を通じて電流の大きさに依存した

1408

(2)

エ ネ ル ギ ー 補 正 が 生 じ る こ と が 分 か っ た 。 こ の エ ネ ル ギ ー 補 正 は 両 状 態 に 対 し て わ ず か に 違 う 大 き さ で 現 れ 、 こ の 補 正 を 含 め た 両 状 態 の 全 エ ネ ル ギ ー の 大 き さ は あ る 電 流 の 値 (臨 界電 流 値)

を 境 に 逆 転 す る こ と が 分 か っ た 。 臨 界 電 流 値 は そ の 値 よ り も 小 さ い 電 流 で はACDW状 態 の 方 が 、 そ の 値 よ り も 大 き い 電 流 で は ス ト ラ イ プ 状 態 の 方 が エ ネ ル ギ ー が 低 く な る こ と 示 す 。 臨 界 電 流 値 は 我 々 の 理 論 計 算 か ら0.04‑0.05 nAと 見 積 も ら れ る 。 こ の 結 果 か ら 、 実 際 に 実 験 で 使 わ れ て い る よ う な 大 き さ の 電 流 (1‑20 nA)で は ス ト ラ イ プ 状 態 の ほ う が 低 い エ ネ ル ギ ー を 持 っ と い う こ と 、 ま た 、 臨 界 電 流 値 近 傍 で 両 状 態 間 の 相 転 移 が 起 こ る 可 能 性 が あ る こ とが わか っ た。

我 々 の 研 究 結 果 は 、 実 験 で 観 測 さ れ て い る 異 方 的 状 態 は 「 ス ト ラ イ プ 状 態 」 で あ り 、 電 流 効 果 を き ち ん と 取 り 入 れ る こ と で 実 験 と 理 論 は 整 合 性 が 取 れ る と い う こ と を 示 し て い る 。 こ れ に よ り 異 方 的 状 態 に 対 し て 今 ま で 理 論 的 に 問 題 と な っ て い た 点 が 解 決 さ れ る と 期 待 す る 。

ー ま と め

  本 研 究 で はvon Neumann lattice形 式 に よ る 新 た な 計 算 方 法 を 開 発 し 、 量 子 ホ ー ル 系 に お け る 異 方 的 状 態 に 対 す る 電 流 の 効 果 を 理 論 的 に 解 析 し た 。 そ の 結 果 、0.04‑0.05 nA程 度 の 臨 界 電 流 値 を 境 に 相 転 移 が 起 こ り 、 こ の 値 よ り 小 さ い 電 流 で はACDW状 態 、 大 き い 電 流 で は ス ト ラ イ プ 状 態 が 基 底 状 態 と な る こ と を 示 し た 。 こ れ に よ り 、 実 験 で 観 測 さ れ て い る 異 方 的 状 態 は

「 ス ト ラ イ プ 状 態 」 で あ り 、 電 流 効 果 を き ち ん と 取 り 入 れ る こ と で 実 験 と 理 論 は 整 合 性 が 取 れ る と い う こ と を 示 し た 。

【1] M. P. Lilly, K .B. Cooper, J. P. Eisenstein, L. N. Pfeiffer, and K. W. West, Phys. Rev. Lett.

     82, 394 (1999); R. R. Du, D. C. Tsui, H. L. Stormer, L. N. PfeifFer, K. W. Baldwin, and K.

      W. West, Solid State Commun. 109, 389 (1999).

 [2J K. Ishikawa, N. Maeda, and T. Ochiai, Phys. Rev. Lett. 82, 4292 (1999); N. Maeda, Phys      Rev. B 61, 4766 (2000).

[3l R. Cote and H.A. Fertig, Phys. Rev. B 62, 1993 (2000).      .

f 4J K. Tsuda, N. Maeda, and K.Ishikawa, Phys. Rev. B 76, 045334 (2007)

―1409―

(3)

学位論文審査の要旨

主 査    教 授    石 川 健 三 副 査    教 授    河 本    昇 副 査    教 授    大 川 房 義 副 査    准 教 授    中 山 隆 一 副 査    准 教 授    鈴 木 久 男

     学位論文題名

Anisotropic Ground States of the Quantum Hall     System with Currents

(電 流が流れ ている量 子ホール 系の異方的 基底状態の解析)

強 磁 場 中 の 2 次 元 電 子 系 で あ る 量 子 ホ ール 系 は、 多 く の特 異 な物 理 を 発現 さ せ る興 味深い電 子系であ る。近年、 量子ホー ル系の実 験で、極 めて異方的な性質をもつ電子多 体系 が 発見 さ れ た。 こ の 状態 の電気抵 抗は、通 常の量子 ホール系 とは大き く異なり、

電流 を 流す 方 向 に大 き く 依存 する。ま た高移動 度の半導 体で、極 低温下の 状況で初め て発 現 する 。 こ れら の こ とか ら、この 異方的な 状態は、 電子間の 相互作用 により形成 され た 新た な 凝 縮状 態 で ある と考えら れている 。しかし ながら、 この異方 的状態が如 何なる凝 縮状態で あるのか、 未解決の ままであ った。

本 学 位 論 文 の 著 者 津 田 和 実 君 は 、 量 子 ホ ー ル 系 に お け る 異 方 的 電 子 多 体 状 態 を 理 論 的に 研 究し 、 今 まで 理 論と 実 験 との 間 に あっ た矛 盾が、有 限電流の 効果を取 り 入れ ることに より解消 されること を示した 。この理 論的研究 は、強相 関量子ホール系 にお ける有限 電流効果 を初めて計 算し、ま た有限電 流による 相転移の 存在を初めて示 した ものであ る。得ら れた臨界電流の値は、 0.04 ― 0.05nA 程度であり、実験で使われて いる 電流値1 ― 20nA より小さ ぃことを確 認した。 この結果、異方的状態について、初め て首 尾一貫し た説明が 可能になっ た。

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(4)

     こ れを 要 す るに 、 著者 は 量子ホ ール系に おける非 等方的な強 相関多電 子状態の 相や有 限電流効 果を理論 的に解明 し、新た な知見を 得たものである。その成果の一部 はすで に公表さ れ、おお きな関心 を持たれ ている。 著者の研究並びにその成果は、場 の 理 論 並 び に 凝 縮 系 の 物 理 の 理 解 に 対 し て 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も のが あ る 。 よ って 著 者 が北 海 道大 学 博 士( 理学)の 学位を授 与される資 格あるも のと認め る。

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参照

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