中国の第13次5ヵ年計画の
石炭事業への影響等調査
平成29年6月15日
平成28年度JOGMEC石炭開発部成果報告会
海外炭開発高度化等調査
④
本日の報告内容
11.中国のエネルギー中長期計画
2.第13次5ヵ年計画の課題と基本方針
3.2016年の経済情勢とエネルギー(石炭)需給
4.2017年のエネルギー及び石炭関連の基本方針
5.まとめ
2016年に閉鎖、生産停止となった中国の炭鉱 (出所) 中国のウェブサイトより、貴州省の盛遠炭鉱(左)と内モンゴル自治区の炭鉱(右)1.1 中国のエネルギー中長期計画の構成
22016
~2020年
2030
年
2050
年
「エネルギー生産・消費革命 戦略」(2016~2030年) ※2014年6月 「エネルギー生産・消費革命」 習近平主席により提起 ※2017年4月末「戦略」通達 エネルギー発展の新段階: 総量拡大から 質・効率の向上へ転換 ※第13次計画で「エネルギー発展戦略行動計画」(2014~2020年)の目標値を修正「国民経済社会発展
第13次5ヵ年計画」
全体計画エネルギー発展
第13次5ヵ年計画
エネルギー 鉄鋼 電力 建材 石炭化学 2017年1月 2017年1月 2017年12月石炭
石油
ガス
その他
2017年1月 2016年3月 エネルギー源別・産業別の第13次5ヵ年計画 (出所)本調査 図1 中国のエネルギー中長期計画1.2 エネルギーミックスの見通し(~2030年)
3一次エネルギーに占める比率は、消費、生産ともに
天然ガスおよび非化石エネルギーは上昇↑
石炭は大幅に低下↓ (但し、総量ではほぼ横ばい)
49.0 58.0 64.0 16.0 17.0 18.1 15.0 10.0 5.9 20.0 15.0 12.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2030 2020 2015 石炭 石油 天然ガス 非化石エネルギー 58.7 68.1 72.2 7.6 7.2 8.5 6.8 5.9 4.9 26.9 18.5 14.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2030 2020 2015 石炭 石油 天然ガス 非化石エネルギー (出所)2015年、2020年は「国民経済社会発展第13次5ヵ年計画」、2030年は「エネルギー生産・消費革命戦略」(2016~2030 年)及び「中国エネルギー展望2030」、「2050年世界と中国のエネルギー展望」(中国石油経済技術研究院)をもとに推定 図2 2030年までの消費構成(左図)と生産構成(右図)の見通し(参考) 石炭消費予測の比較
4 エネルギー革命戦略 ➡ 2020年以降も2030年まで20億toe程度で、ほぼ横ばい 中国エネルギー研究会 ➡ 2021年に20.3億toeでピーク、2030年は18.2億toeに減少 IEA(新政策シナリオ) ➡ 2014年の20.27億toeから徐々に減少、2030年に19.5億toeに減少 17.47 19.02 19.28 19.67 19.55 19.17 19.3 20.3 18.2 20.27 19.82 19.5 20.6 17 18 18 19 19 20 20 21 21 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030 石炭消費(実績) 中国エネルギー研究会 IEA 革命戦略にもとづく推定 第13次5ヵ年計画目標 (億toe) (出所)中国エネルギー統計年鑑2016、IEA: “WEO 2016”、エネルギー発展第13次5ヵ年計画、「中国エネルギー展望2030」、エ ネルギー生産・消費革命戦略(2016~2030)、「2050年世界と中国のエネルギー展望」(中国石油経済技術研究院)にもとづく推 定値5
2.1 第13次5ヵ年計画の課題と基本方針
国民経済社会発展第13次5ヵ年計画:
GDP: 2020年92.7兆元(2015年価格) ➡ 経済成長率年率6.5%以上 都市化率:2015年 56.1% ➡ 2020年60% GDPに占めるサービス産業の割合: 2015年 50.5% ➡ 2020年56% ※生産過剰解消、内需拡大、持続可能な経済成長 ※2017年秋 党大会 ➡ 社会・経済の安定最優先! 16.4 24.2 41.3 60.3 64.4 8.3 9.1 10.0 10.1 11.4 12.7 14.2 9.7 9.4 10.6 9.5 7.9 7.8 7.3 6.9 6.7 0.0 3.0 6.0 9.0 12.0 15.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (単位:%) (単位:兆元) GDP… 前年比 第10次5ヵ年計画 年平均増加率: 9.8% 第12次5ヵ年計画 年平均増加率: 7.9% 第11次5ヵ年計画 年平均増加率: 11.3% 図4 中国のGDPと前年比伸び率の推移 (出所)国民経済社会発展第13次5ヵ年計画第12次計画期に表出した課題:
経済成長鈍化、エネルギー消費伸び低下 ➡ 石炭・鉄鋼 生産能力過剰 PM2.5など、深刻な環境汚染の解消 主要産業の需給バランス是正 需給変動に対する供給側の対応力強化 規制緩和、価格制度改革の推進2.2 エネルギーの第13次5ヵ年計画
6基本方針: エネルギー消費総量の抑制
エネルギー消費原単位の引き下げ(省エネ推進)
エネルギー自給率80%以上を確保(エネルギー安全保障)
課題: 「新常態」 ➡ 粗放型のエネルギー消費拡大を改める必要
2020年のエネルギー消費: 35億toe以下(2015年:30.1億toe、伸び率:年率3%以下) 2020年のエネルギーミックス: 石炭58%以下 非化石エネ+天然ガスで25%重点:過去の5ヵ年計画では需給バランス(供給確保対策)が中心
第13次計画
➡
エネルギー構成の高度化
クリーンエネルギー利用拡大
等
エネルギー 消費 石炭消費 石炭一次エネルギーに占める割合非化石 天然ガス エネルギー生産 エネ行動計画 <33.6億toe <42億トン <62% 15% >10% 29.4億toe エネ13次計画 <35億toe <41億トン <58% >15% >10% >28億toe 表1 エネルギー第13次計画の目標値修正状況 (出所)エネルギー発展第13次5ヵ年計画、エネルギー発展戦略行動計画(2014-2020年)2.3 石炭産業の第13次5ヵ年計画
7 項目 単位 2015年 2020年 20/15年率% [ ]5年累計 「集約化」に関連する主な目標 1. 石炭生産量 億トン 37.5 39 0.8% 2. 石炭消費量 億トン 39.6 41 0.7% 3. 老朽化生産能力の淘汰 億トン/年 ― 8 -4. 先進的生産能力の増加 億トン/年 ― 5 -5. 大型石炭基地のシェア % 93 95 [+2] 6. 大型炭鉱の生産シェア % 73 80 [+7] 7. 炭鉱数 ヵ所 9,700 6,000 [-39%] 8. 石炭企業数 社 6,000 <3,000 [-50%] 9. 大型石炭企業のシェア (年産5,000万トン以上) % 55 60 [+5] 「効率化」に関連する主な目標 11. 採掘機械導入率 % 76 85 [+9] 12. 掘削機械導入率 % 58 65 [+7] 13. 生産性 トン/人/年 840 1,300 9.1% (出所)石炭産業発展第13次5ヵ年計画 表2 「集約化」と「効率化」に関連する主な目標基本方針:「集約化」と「効率化」
(1) 供給能力の安定 (2) 産業構造の高度化 (3) 安全生産体制の改善 (4) 科学技術のイノベーション (5) 鉱区の生態環境改善 (6) 石炭産業改革の継続2020
年の主要目標:
老朽化能力を8億トン/年淘汰 減量置換などにより先進的な生 産能力5億トン/年増加 炭鉱数を6,000ヵ所に削減 石炭企業を3,000社に半減 年産5,000万トン/年以上の大型 石炭企業のシェア 60%以上(参考) 石炭産業の第13次計画 生産の集約
8
石炭生産の95%を14の大型石炭基地に集約
老朽化炭鉱の淘汰を強化
過剰能力の地域別削減方針を指示
(出所)石炭産業発展第13次5ヵ年計画 図5 2020年の14大石炭生産基地の生産目標と地域別石炭需給バランス 生産能力を規制 炭鉱新規建設は 同等規模の老朽 化炭鉱の閉鎖を 前提 重慶市 重慶 東部地域 生産量: .7 トン 費量: 2.7 トン 入量: 1.0 トン 1 億 消 1 億 移 1 億 西部地域 生産量: 3.1 トン 費量: 4.5 トン 出量: .6 トン 2 億 消 1 億 移 8 億 中部地域 生産量: 3.0 トン 費量: 0.6 トン 出量: .4 トン 1 億 消 1 億 移 2 億 輸入量: .42 億トン ①魯西基地: .0 トン 冀中基地: .6 トン 河南基地: .35 トン 両淮基地: .3 トン 蒙東基地: .0 トン 晋北基地: .5 トン 晋中基地: .1 トン 晋東基地: .4 トン 雲貴基地: .6 トン 寧東基地: .9 トン 1 億 ② 0 億 ③ 1 億 ④ 1 億 ⑤ 4 億 ⑥ 3 億 ⑦ 3 億 ⑧ 3 億 ⑨ 2 億 ⑩ 0 億 東北地域 生産量: .2 トン 費量: .6 トン 入量: .4 トン 1 億 消 3 億 移 2 億 ⑭ ⑪陝北基地 : .6 トン 神東基地 : .0 トン 黄 2 億 ⑫ 9 億 ⑬ 隴基地 : .6 トン 新疆基地 : .51 億トン ⑭ 2 億 ⑤ ② ⑥ ⑦ ⑧ ⑫ ⑪ ⑩ ⑬ ③ ④ ① ⑨ 炭鉱新規開発は 市場需要を見て 柔軟に対応 既存の生産能力 を削減(参考) 石炭多消費産業の状況
9 (出所)図6、表3ともに本調査 表3 4大石炭産業の石炭消費量の変化 比率(%) 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2015 2013-15 2010-15 電力 171,296 194,913 207,311 217,887 206,970 203,414 51.2 -3.4 3.5 鉄鋼 54,127 58,057 62,111 63,820 65,494 62,463 15.7 -1.1 2.9 建材 40,354 44,701 46,395 50,429 51,575 48,476 12.2 -2.0 3.7 化工 22,592 24,913 26,350 26,554 27,989 31,042 7.8 8.1 6.6 合計 288,369 322,583 342,167 358,690 352,028 345,395 87.0 -1.9 3.7 その他 67,209 70,475 76,488 66,325 59,806 51,678 13.0 -11.7 -5.1 中国 355,578 393,058 418,655 425,015 411,834 397,073 100.0 -3.3 2.2 産業 石炭消費(万トン) 年率(%)
2015
年の4大石炭多消費産業の石炭(原炭)消費量 34.5億トン
➡
中国の石炭消費量(39.7億トン)の87%
石炭消費に占めるシェア
電力(発電と熱供給) 20.3億トン(51.2%)
鉄鋼 6.2億トン(15.7%)
建材 4.8億トン(12.2%)
石炭化学(従来型・新型)3.1億トン(7.8%)
いずれの産業も設備過剰が深刻
電力 51.2% 鉄鋼 15.7% 建材 12.2% 化工 7.8% その他 13.0% 2015年 39.7億トン 図6 石炭多消費産業の消費シェア (参考資料) 石炭多消費産業別の 第13次計画を参照10
3.1 2016年のマクロ経済動向
GDP
は速報値ベースで74兆4,127億元(実質成長率6.7%)
石炭産業(炭鉱開発・選炭)の固定資産投資額3,038億元(前年比24.2%減)
表4 2016年の中国の主要経済指標 (出所)中国国家統計局「統計速報」、「中国統計年鑑2016」 2015 2016 2015 2016 名目GDP 689,052 744,127 6.9 6.7 ↙ 第1次産業 60,862 63,671 3.9 3.3 ↙ 第2次産業 282,040 296,236 6.2 6.7 ↗ 第3次産業 346,150 384,221 8.2 7.8 ↙ 固定資産投資 551,590 596,501 10 8.1 ↙ 国有 178,933 213,096 10.9 18.7 ↗ 民間 372,657 365,219 10.1 3.2 ↙ (石炭産業) 4,007 3,038 0.9 -24.2 ↙ (電力・熱供給) 20,171 22,638 3.9 11.7 ↗ (不動産投資) 95,979 102,581 1.0 7.5 ↗ 輸出入(億元) 245,503 243,344 -7.1 -0.9 ↗ 輸出 141,167 138,409 -1.9 -2.0 ↙ 輸入 104,336 104,936 -13.3 0.6 ↗ 項目 金額(億元) 年率(実質、%) 変化11
3.2 2016年のエネルギー需給動向
2016/15 億tce 億toe 比率(%) 億tce 億toe 比率(%) 変化 合計 36.1 25.3 100 34.3 24.0 100 ↙ 石炭 26.1 18.3 72.2 24.0 16.8 70.1 ↙ 石油 3.1 2.2 8.5 2.9 2.0 8.3 ↙ ガス 1.7 1.2 4.8 1.8 1.2 5.2 ↗ 非化石エネルギー 5.2 3.7 14.5 5.6 3.9 16.4 ↗ 一次エネルギー 2015 2016 2016/15 億tce 億toe 比率(%) 億tce 億toe 比率(%) 変化 合計 43.0 30.1 100 43.6 30.5 100 ↗ 石炭 27.4 19.2 63.7 26.9 18.8 61.7 ↙ 石油 7.9 5.5 18.3 8.1 5.7 18.6 ↗ ガス 2.5 1.8 5.9 2.7 1.9 6.2 ↗ 非化石エネルギー 5.2 3.6 12.1 5.9 4.1 13.5 ↗ 一次エネルギー 2015 2016 エネルギー消費:推定43.6億tce(30.5億toe)、2015年比1.4%増加 エネルギーミックス:石炭比率は61.7%に低下、非化石13.5%に上昇 エネルギー生産:34.3億tce(24.0億toe)、2015年比5.1%減少 エネルギーミックス:石炭70.1%、石油8.3%、天然ガス5.2%、非化石
16.4%
表5 一次エネルギー消費量とエネルギー源別構成比 (出所)表5、表6ともに本調査 表6 一次エネルギー生産量とエネルギー源別構成比消費
生産
12
3.3 2016年の石炭需給 生産・消費・輸出入
2016年速報値は、生産(34.1億トン)、消費(37.8億トン)とも3年連続減 ➡ 減産・消費抑制政策の影響 輸入は25.2%増の2.6億トン ➡ 「276日政策」による供給不足を補う (出所)中国エネルギー統計年鑑、中国税関統計、中国国家統計局の2016年速報値 図7 中国の石炭生産・消費・輸出入 39.7 38.7 37.5 42.4 41.2 39.7 2.0 億トン 億トン13
3.3.1 2016年の石炭需給 月別生産量
4月から「276日政策」実施、4~10月の生産量が前年比3,000~4,500万トン/月減少 供給逼迫により、9~11月増産緊急通達、11月基準を満たす炭鉱に「稼働330日」許可 (出所)中国国家統計局の月別生産統計(年間売上2,000万元以上の工業企業が対象) 図8 中国の月別石炭生産量(2015、2016年)14
3.3.2 2016年の石炭需給 日平均生産・消費
2016年7月から生産量と消費量の差が拡大 ➡ 在庫減少へ 2017年1-4月 生産:前年同期比+2.5%(4月は+9.9%) 消費:火力発電量+7.2%、銑鉄生産量+4.2%等 堅調と推定される 図9 2016年の月別の石炭生産量と消費量(日平均) (出所)2017年2月国家発展改革委員会能源研究所 張有生副所長のJOGMECにおける講演資料 猛暑・渇水による火力 発電量大幅増加等15
3.3.3 2016年の石炭需給 月別輸入
6月以降、月間石炭輸入量が2,000万トン超 ➡ 供給不足を輸入で補う 2017年も輸入拡大傾向、1~4月は2016年同期比33.2%増の8,949万トン 図10 中国の月別石炭輸入量(2015、2016年) (出所)中国税関統計16
3.3.4 2016年の石炭需給 月別在庫
2015年の石炭在庫は年間を通じて3億トン以上 2016年7月以降、在庫が急減 ➡ 「276日政策」の影響 図11 中国の石炭在庫(2015、2016年) (出所)中国石炭資源網データベース 統計局の資料では、これより 2.3億トン程度多いが、増減の 動きは同様17
3.3.5 2016年の石炭価格 国内一般炭
BSPI 5,500kcalは7月頃から価格急騰、11月に600元台 ➡ 「276日政策」の影響 供給逼迫により、9月以降、増産指示。11月以降は高止まり。 (出所)国家発展改革委員会、秦皇島石炭網 図12 発電用炭価格指数と環渤海5,500kcal価格18
3.3.6 2016年の石炭価格 国内原料炭
8~11月価格急騰 ➡ 能力削減、276日政策、鉄鋼・コークス増産などが影響 国際市況も高騰。9月以降、増産指示。11月をピークに僅かに低下 2017年3月末の豪州QLD州サイクロン上陸による国際市況高騰の中国国内価格への影 響は軽微 (出所)中国石炭資源網(CR原料炭価格指数・総合価格指数の月平均価格) 図13 中国の原料炭価格(2015年~2017年4月)19
3.4 2016年石炭産業の供給側の構造改革
5つの重点のうち、最重要取り組みは
「過剰生産能力の削減」
①過剰な生産能力の解消、②在庫の解消、③レバレッジ(企業債務)の解消、 ④企業コストの引き下げ、⑤不足の補充(中国語で「三去一降一補」と呼ばれる) 供給側構造改革の関連措置「5つの制度」を確立(2017年に2項目を強化) (出所)本調査 低品位炭の生産・ 流通・輸入・使用を 厳格に規制 クリーンエネルギー 代替を積極推進 2017年過剰生産 削減計画で強化 供給側構造改革2016年の 関連措置 276日政策 需給調整手段 減量置換・ 置換枠取引制度 石炭・電力 中長期契約制度 在庫の 上限・下限 価格異常変動 対応制度 石炭市場価格の異常変動 抑制に関する覚書 2016年の5,500kcal炭の基準価格設定 基準価格535元/トン 2018年まで、炭鉱の新規建 設を原則認可しない。 新規建設の場合、能力削 減・置換を実施 石炭火力発電所の最低在庫 15日以上30日未満など 330日制から276日制への変更 により約6億トンの減産効果 図14 石炭産業構造改革関連施策20
(参考) 276日政策(需給調整政策)
BSPI 5,500kcal 11月に2014年初以来の600元台 価格高騰が止まらず 石炭供給逼迫、7月頃から石炭価格高騰 (出所)各種資料より作成 図15 「276日政策」と政府の需給調整状況 4月1日 山西省で先行実施 5月1日 全国で実施 9月8日 3レベルの増産指示 炭鉱稼働率16%引き下げ 日平均20/30/50万トン増産 月3,066万トン増産 9月29日 大手炭鉱に増産許可 11月16日 安全生産条件・法律法 規の規定を満たす炭鉱に、 暖房供給期終了まで稼働330日で の生産を許可 月5,000万トン増産※炭鉱稼働日数330日➡276日
2017年5月末時点、276日政策は棚上げ <276日政策実施の要件> ①生産能力と需給のバランスが崩れた場合 ②自然災害、突発事故などに見舞われた場合 ③季節的需要への対応が必要な場合39% 61% 生産能力 30% 70% 21
(参考) 2016年の過剰な石炭生産能力削減
過剰生産能力の削減実績
石炭2.9億トン/年超(目標2.5億トン/年) 粗鋼生産能力6,500万トン/年(目標4,500万トン/年) ※15年能力11.3億トン/年 労働者70万人を配置転換 中央財政から1,000億元(約1.6兆円)の補助金、2016年は418.69億元を使用波及効果
石炭:年間売上2,000万元以上の企業の利益950億元(2015年の約2.1倍) 鉄鋼:中国鉄鋼工業協会会員企業の利益約350億元(2015年は847億元の損失) 石炭:全国の30万トン/年以下の炭鉱約1,500ヵ所を閉鎖・撤退 鉄鋼:宝鋼と武鋼を経営統合、中国宝武鋼鉄集団を設立、老朽化設備廃棄進む (総資産7,300億元(約11.9兆円)、従業員数22万8千人、粗鋼生産量世界2位) 企業 利益 産業 構造 図16 2016年に閉鎖・撤退した炭鉱の炭種別内訳 (出所)中国石炭資源網 原料炭 1.33億トン/年 一般炭2.10億トン/年 原料炭 606炭鉱 一般炭 1,415炭鉱 炭鉱数22
4.1 2017年のエネルギー、石炭関連の基本方針
「サプライサイドの構造改革を深化させる年」
(中央経済工作会議) ① ゾンビ企業の処理徹底 ② 環境保護、エネルギー消費、品質、安全に関する法律・法規を厳格に適用 ③ 企業の統合・再編の推進 ④ 企業債務処理、労働者の配置転換を着実に実行 ⑤ 淘汰した過剰生産能力の復活阻止「2017年エネルギー工作指導意見」
一次エネルギー消費目標
一次エネルギー消費30.8億toe(44億tce)に抑制 エネルギーミックス(石炭60%↓、非化石14.3%↑、天然ガス6.8%↑)一次エネルギー生産目標
一次エネルギー生産25.7億toe(36.7億tce)前後(2016年比2.4億tce増↑) 原炭生産36.5億トン前後(2016年比2.4億トン増) 天然ガス生産1,700億㎥前後(2016年比332億㎥増) 原油2.0億トン前後23
4.2 2017年の石炭・鉄鋼の生産能力削減
「2017年は石炭・鉄鋼生産能力削減の正念場」
削減目標: 石炭1.5億トン/年以上、鉄鋼5,000万トン/年前後 2017年4月末の削減状況 ➡ 鉄鋼3,170万トン(年間目標の63.4%) 石炭6,897万トン/年(年間目標の46%)➡
2016年の削減能力の大部分は生産停止状態の能力
・石炭:95%が生産停止・資源枯渇炭鉱、正常生産炭鉱は5%(中国の報道) ・鉄鋼:2016年12月下旬までに淘汰確認した能力4,500万トン/年のうち、 73.5%が生産停止設備、正常生産設備は21%(鉄鋼工業協会)➡
企業債務処理、労働者の配置転換・再雇用
など難題への対処がカギ
2017年第1四半期の企業債務、炭鉱労働者の社会保障など
・鉄鋼工業協会会員企業の利益 ➡ 2017年第1四半期232.8億元 (前年同期は▲87.5億元) ・山西省炭鉱 給与未払い ➡ 2017年3月末時点、2016年末比で58.4%減 社会保険未納額 ➡ 2017年3月末時点、2016年末比で10.8%減24
5. まとめ
中国のエネルギー・石炭政策の動向
産業構造の変化に伴い、エネルギー消費の伸びは鈍化
エネルギー安全保障、環境改善、再エネ関連産業強化等を軸として、石炭
への依存度は徐々に低下(石炭消費量は当分の間、横ばい~微減)
環境対応、品質対応もあり、今後も一定量の輸入は継続が見込まれる
第13次5ヵ年計画期の石炭政策の最大の課題は、石炭産業の構造改革
・・・企業、炭鉱を集約・大型化、需要変化への対応力強化
需給調整(操業制限等)による価格の安定化・・・今後は自律的需給調整に委
ねるとしているが、政府主導による操業調整等は必要
中国の生産能力削減により、国際市況の高止まり、炭種によっては需給タイ
ト化の可能性もあり、動向に引続き注視が必要
25
26
参考資料① エネルギー生産・消費革命戦略
エネルギー発展の新段階に対処:総量拡大から質・効率の向上へ転換
2030年の主な目標:
再生可能エネルギー、天然ガス、原子力の利用拡大 化石エネルギーの利用を大幅削減 新たなエネルギー需要増には主にクリーンエネルギー、低炭素エネルギーで対応 2030年前後にCO2排出をピークアウト(COP21の公約) エネルギー消費原単位を世界平均レベルに(2015年0.50toe/万元、世界の1.5倍) 発電電力量に占める非化石エネルギー比率を50%に2050年の目標:
エネルギー消費総量ほぼ安定、非化石エネルギー比率50%超
エネルギー 消費 石炭消費 一次エネルギーに占めるシェア石炭 非化石 天然ガス エネルギー生産 2020年計画 (第13次計画) <35億toe <41億トン <58% >15% >10% >28億toe 2030年(革命戦略) <42億toe n.a. n.a. >20% >15% n.a.
(出所)国民経済社会発展第13次5ヵ年計画、エネルギー生産・消費革命戦略
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参考資料② 2017年の過剰生産能力削減計画
「鉄鋼・石炭産業の過剰生産能力解消・苦境脱出・発展実現
に向けた2017年の取り組みに関する意見」
(2017年5月)
淘汰した生産能力の復活阻止
ゾンビ企業の徹底処理
労働者の配置転換・再雇用
石炭: 2017年の削減対象炭鉱は、8月末までに生産停止、11月末までに撤退
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能力削減目標 1.5億トン/年以上
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法律・法規、安全、品質・環境保護の基準を満たさない炭鉱の徹底処理
例)高硫黄(>3%)、高灰分(>40%)の低品位炭を産出する炭鉱
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老朽化生産能力の淘汰(地域別基準を提示:山西=30万トン/年以下は淘汰)
鉄鋼:「地条鋼」の生産設備を6月末までに撤去
(注)地条鋼:鉄スクラップなどを中周波誘導電気炉と呼ばれる電炉で溶かして製造した 成分や品質の安定しない、粗悪な鉄鋼・鋼材•
能力削減目標 粗鋼生産能力5,000万トン/年前後
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法律・法規、安全、品質・環境保護の基準を満たさない生産設備の徹底処理
に全力を挙げるよう指示
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