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(Shigen to Sozai) Vol.116 p (2000) 石炭灰フライアッシュからのゼオライトのアルカリ水熱合成と生成物の陽イオン交換特性 * 1 1 村山憲弘山川洋亮 2 3 小川和男芝田隼次 Alkali Hydrothermal Synthesis of Zeol

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(1)

Kansai University

Title

石炭灰フライアッシュからのゼオライトのアルカリ水

熱合成と生成物の陽イオン交換特性

Author(s)

村山, 憲弘, 山川, 洋亮, 小川, 和男, 芝田, 隼次

Citation

資源と素材 : 資源・素材学会誌, 116(4): 279-284

Issue Date

2000

URL

http://hdl.handle.net/10112/5454

Rights

資源・素材学会(http://www.jstage.jst.go.jp/brow

se/shigentosozai/_vols/-char/ja)

Type

Journal Article

(2)

石炭灰フライアッシュからのゼオライトの

アルカリ水熱合成と生成物の陽イオン交換特性

*

村 山 憲 弘

1

 

山 川 洋 亮

1

小 川 和 男

2

 

芝 田 隼 次

3 1.緒     言  石油危機に加えて原子力発電所の立地困難性により,エネル ギー資源として最も可採埋蔵量の多い石炭の利用が再認識され つつある。その使用量は,電気事業を中心に年々増加の一途をた どっている。石炭は,産地の違いにより差はあるものの,約 10 ∼ 20 %程度の灰分を含有する。石炭の燃焼によって,これらの灰分 が焼却残さとしてボトムアッシュ,シンダアッシュおよびフライ アッシュの形態で石炭灰として排出される。石炭灰の排出量は, 一般産業および電気事業を併せて平成 8 年度で年間 700 万 t 以上 にも昇り,その約半分はセメント原料等に利用されているもの の,残りは埋立処分されている。最近では,埋立処分地確保も困 難となり,石炭灰の中で電気事業から排出されるものに関して は,1991 年 10 月に施行された「再生資源利用促進法 ( 通称,リ サイクル法 )」で指定副産物とされている。このように,行政レ ベルにおいても石炭灰を再生資源として再利用するための環境 整備が行われている1)  石炭灰の有効利用の一環としてゼオライトへの転換が挙げら れ,いくつかの研究機関にて検討されている2) ― 6)。石炭灰中には, ゼオライトの原料となり得る非晶質のシリカ・アルミナ成分を約 70∼ 80 wt% 程度含有する。これらをアルカリ水熱反応によって 優れた陽イオン交換能力や吸着能力を有するゼオライトに転換 し,大量消費の見込まれる水質浄化剤,土壌改良材等に利用する 試みが検討されている2)。この様な用途に用いられるゼオライト には,合成時にゼオライトに担持される Na + イオンを Ca2 + イオ ンや NH4 + イオンなどで陽イオン交換することによって,新たな 機能を付加することができる。しかしながら,実験室規模での知 見はいくつか存在するものの,装置化や工業化を念頭に置いた合 成条件での研究成果や工学的な知見は数少ないのが現状である。 特に,合成条件およびイオン交換条件と生成するゼオライトの物 性との関連性から反応機構を考察した研究成果はほとんど存在 しない。  本研究では,実用化が可能な石炭灰のゼオライト化反応条件を 把握することを目的として,種々のアルカリ水熱反応条件下でゼ オライトの合成を行い,得られた生成物の物性評価を行った。生 成したゼオライトについて Ca2 + イオンを含む溶液中で陽イオン 交換反応を行い,陽イオン交換反応速度やカルシウム置換率に関 する検討を行った。さらに,最適なカルシウム型ゼオライトの製 造条件およびゼオライト施用環境での陽イオン交換挙動をそれ ぞれ把握するために,カルシウム置換型ゼオライトの化学的およ び物理的特性を検討した。 * 1999 年 9 月 27 日受付 12 月 9 日受理 1. 木村化工機 (株 ) 開発部 2. 木村化工機 (株 ) 開発部 次長 3. 正会員 工博 関西大学教授 工学部化学工学科 [ 著者連絡先 ] FAX 06-6388-8869 ( 関西大・化学工学 ) キーワード:石炭灰,カルシウムイオン,ナトリウムイオン,ゼオライト,アル       カリ水熱反応,イオン交換

Alkali Hydrothermal Synthesis of Zeolite from Coal Fly Ash

and its Cation Exchange Property

by Norihiro MURAYAMA

1

, Yousuke YAMAKAWA

1

Kazuo OGAWA

1

and Junji SHIBATA

2

1. R&D Department, Kimura Chemical Plants Co., Ltd., Amagasaki-shi 660 - 8567

2. Department of Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Kansai University, Suita-shi

564 - 8680

The synthesis of zeolite from coal fly ash by alkali hydrothemal reaction with NaOH was investigated under

various conditions and the physical properties of the products were measured in this study. The reaction rate of

cation exchange and substitution ratio of calcium ion were examined with some solutions containing calcium ion.

Also, some physical properties of calcium type zeolite were measured.

Zeolite P which had large cation exchange capacity (about 500 meq / 100 g as CEC) was synthesized from coal

fly ash under the particular synthesis condition; reaction temperature of 393 K, reaction time of 5 hrs, NaOH

concentration of 1.5 mol / dm

3

and solid-liquid ratio of 200 g / 800 cm

3

. The crystal type of synthesized zeolite

changed from zeolite P to hydroxysodalite with an increase in concentration of NaOH. The reaction rate was

obviously increased when the reaction temperature was over boiling point of water. It was confirmed that the cation

exchange reaction of zeolite synthesized in this study could be almost reversible between calcium ion and sodium

ion. Optimum condition for zeolite synthesis with high CEC and calcium substitution, and some factors affecting

zeolite synthesis and cation exchange reaction were discussed.

(3)

村山憲弘・山川洋亮・小川和男・芝田隼次 2.試薬および実験方法  2・1 石炭灰の物性測定  実験で使用した石炭灰は,(株 ) 電発コールテック製フライアッ シュである。このフライアッシュは,石炭火力発電所より発生し たもので JIS 規格の品質基準を満たしている。蛍光 X 線分析法 (EMAX ― 3770,堀場製作所製 ) にてフライアッシュの化学組成分 析を行った。走査型電子顕微鏡 (S ― 2400,日立製作所製 ) を用い て,フライアッシュ粒子の SEM 写真撮影を行った。粒度分布の測 定には,散乱式粒度分布測定装置 (LA ― 90,堀場製作所製 ) を用い た。フライアッシュ中に含まれる結晶性物質の同定は,粉末 X 線 回折法 (JDX ― 3530S,日本電子製 ) にて行った。  2・2 石炭灰のゼオライト化反応と生成物の物性測定  1.5∼ 5.5 mol / dm3水酸化ナトリウム水溶液に石炭灰フライアッ シュ乾燥粉末を添加し,固液比が 200 g / 800 cm3および 300 g / 700 cm3となるようにスラリーを調整した。1200 cm3のオートクレー ブを用いて,加熱攪拌下にてフライアッシュのゼオライト化反応 を行った。反応温度を 368 ∼ 413 K とし,所定温度に到達してか らの保持時間を反応時間とした。攪拌速度は 650 rpm とした。  得られたゼオライト生成物について,化学組成分析,粒度分布 測定および X 線回折分析を,石炭灰の場合と同様の方法で行った。 陽イオン交換容量 (Cation Exchange Capacity,以下 CEC) は,以下 に示す原田・青峰の方法に準じて行った。  生成したゼオライトの乾燥粉末 2 g に,0.5 mol / dm3酢酸カルシ ウム水溶液 50 cm3を加えて攪拌し,ゼオライト生成物に保持され ている Na + イオンを Ca2 + イオンに置換した。このイオン交換操作 を 3 回繰り返して Ca2 + イオンに飽和置換した。次に,80 wt% エ タノール水溶液にて,付着した Ca2 + イオンを完全に洗浄した後 に,1.0 mol / dm3 塩 化 ア ン モ ニ ウ ム 水 溶 液 50 cm3 を 用 い て, NH4 + イオンによる再置換操作を 5 回行った。この時に陽イオン交 換された Ca2 + イオンの量を,原子吸光光度計 (AA ― 880 Ⅱ 日本 Jarrell Ash製 ) により測定し,ゼオライト乾燥粉末 100 g 当たりの 当量数に換算し CEC を算出した。  2・3 ゼオライト生成物の陽イオン交換反応  アルカリ水熱合成によって得られたゼオライトの陽イオン交換 反応速度と陽イオンの置換率を検討した。2・2 より得られたゼオ ライトを蒸留水にて洗浄した後乾燥させ,ナトリウム型ゼオライ トの乾燥粉末を得た。ナトリウム型ゼオライト乾燥粉末 1.0 およ び 2.0 g を,0.5 および 1.0 mol / dm3塩化カルシウム水溶液 20 cm3 と接触させて,Na + および Ca2 + イオン間の陽イオン交換反応を 行った。この置換操作を数回繰り返した後,得られたゼオライト のカルシウム置換率を測定した。カルシウム置換されたゼオライ トを同様の方法で NH4 + イオンにて再置換操作を行い,この時に 陽イオン交換された Na + および Ca2 + イオンの測定値から,ゼオラ イトに保持されている乾燥粉末 100 g 当たりの Na + および Ca2 + オンの当量数をそれぞれ算出した。また,陽イオン交換された Na + イオンと Ca2 + イオンの総量に対する Ca2 + イオン量の比 (Ca2 + / Na ++ Ca2 + ) をカルシウム置換率a とした。  2・4 カルシウム型ゼオライトの物性測定  Ca2 + イオンで置換したカルシウム型ゼオライトについて,化学 組成分析,粒度分布測定を行った。また,ゼオライト乾燥粉末 5.0 gに蒸留水を 12.5 および 20 cm3を加えてスラリーを調製し,ス ターラーによる攪拌下での pH の経時変化を測定した。 3.実験結果および考察  3・1 石炭灰の物性  ゼオライトの原料である石炭灰の SEM 写真を Fig.1 に示す。石 炭灰は,石炭に含まれるアルミノシリケートなどが石炭の燃焼時 に溶融し,その後に急冷されることによってガラス化したもので ある。Fig.1 より,石炭灰は完全な球状粒子で表面が円滑であるこ とがわかる。石炭灰の化学組成を Table 1 に示す。石炭灰中には シリカ・アルミナが約 70 wt% 含まれている。その他にも,カル シウムや鉄,ナトリウム等の酸化物が存在している。石炭灰の CECを測定すると約 18 meq / 100 g であったが,これは交換性陽 イオンではなく,石炭灰より溶出した Ca2 + イオンに起因するもの である。石炭灰粒子の粒度分布を Fig.2 に示す。石炭灰のメジア ン径は約 15.4 mm であり,比較的幅広い粒度分布 (0.1 ∼ 70 mm 程 度 ) を持っている。  3・2 ゼオライト生成物の物性  生成したゼオライトの粒度分布を Fig.2 に示す。ゼオライトの メジアン径は約 24.4 mm となり,石炭灰より増大する現象が見ら れた。また,粒度分布も全体的に右へとシフトし,ゼオライトの 生成に伴って粒子径が石炭灰よりも大きくなることがわかる。こ れは,ガラス質の石炭灰から溶出したアルミノシリケートが,多 孔質で嵩高いゼオライト結晶として石炭灰粒子の表面で析出し成 長することに起因すると考えられる。また,粒子の大きさに関わ らず,全ての石炭灰粒子上にゼオライト結晶が析出していること が推定される。  石炭灰およびゼオライト生成物の X 線回折パターンを Fig.3 に 示す。石炭灰中には結晶性物質として主に石英が存在している。

Table 1 Chemical composition of coal fly ash and synthesized zeolites.

Fig.1 SEM photograph of coal fly ash.

(4)

石炭灰をアルカリ水熱反応によって処理すると,新たにゼオライ トの一種である P 型ゼオライトやヒドロキシソーダライトの回折 ピークが発現している。ゼオライト合成時の水酸化ナトリウム濃 度の増加に伴って,生成するゼオライト結晶型が P 型ゼオライト の結晶からヒドロキシソーダライトとの共晶域を経て,ヒドロキ シソーダライトの結晶へと変化する傾向が認められた。また,こ れらのゼオライト結晶は,合成反応時に結晶転移したものではな く,初晶から生成していることを確認した。  生成したゼオライトの化学組成分析結果を Table 1 に示す。ゼオ ライトの生成によって,ナトリウムあるいはカルシウム含有量が 増加することがわかる。これは,ゼオライト骨格内のアルミニウ ム部位に起因する永久負電荷を中和するために,ゼオライト結晶 内に交換性陽イオンが取り込まれたためである。  ゼオライト生成物の SEM 写真を Fig.4 に示す。石炭灰の粒子表 面に析出したゼオライトは,合成時の水酸化ナトリウム濃度の違 い,すなわち,結晶型の違いによって表面構造が異なることがわ かる。P 型ゼオライトは非常に微細な結晶で無数に析出している のに対して,ヒドロキシソーダライトは比較的大きなフロック状 の結晶として成長している。共晶の場合は両方の結晶とは異なり, やや平滑な結晶として析出している。  ゼオライト合成の反応時間と陽イオン交換容量 (CEC) との関係 を Fig.5 に示す。水酸化ナトリウム濃度が 1.5 mol / dm3で CEC は

約 500 meq / 100 g と極めて高い値をとり,2.5 mol / dm3では CEC

が約 340 meq / 100 g まで減少するものの十分に大きい値である。 それ以上の水酸化ナトリウム濃度になると,CEC の値が激減する 傾向を示している。また,全ての系において,反応時間が 5 時間 付近で CEC の値が一定値に到達することがわかった。  以上の結果から,水酸化ナトリウム濃度の増加とともに CEC の 値は減少し,一方,生成するゼオライト結晶は,P 型ゼオライト からヒドロキシソーダライトへと共晶域を経て変化することがわ かった。P 型ゼオライトの生成量が多いほど,高い CEC の値が得 られる。このことは,ヒドロキシソーダライト ( 細孔径:3 ∼ 4 A) と比較して P 型ゼオライト ( 細孔径:4 ∼ 5 A) の方が細孔径が大 きいことや結晶形状の違いに起因すると考えられる。ここで得ら れた結果は,反応条件や石炭灰の種類が異なるもののいくつかの 報告7)8) でみられる傾向と概ね一致している。したがって,高い CECを得るためには,合成時の水酸化ナトリウム濃度が最も重要 な因子であり,ヒドロキシソーダライトの生成をできる限り抑え て P 型ゼオライトの生成率を高めることが重要である。  3・3 陽イオン交換容量と水酸化ナトリウムとの関係  石炭灰と水酸化ナトリウム水溶液との固液比と CEC の関係を Fig.6に示す。ゼオライト合成時において,反応時間の増加による CECの増加割合が,固液比が 200 g / 800 cm3の時には 5 時間付近 でほぼ平衡となるのに対し,300 g / 700 cm3の時には 8 時間経過

Fig.3 X-ray diffraction of coal fly ash and synthesized zeolites.

Fig.5 Relationship between reaction time and cation exchange capacity at various NaOH concentrations.

Fig.4 SEM photographs of zeolites synthesized from coal fly ash at the different NaOH concentrations (reaction temperature, time:393K, 5hrs)

(5)

村山憲弘・山川洋亮・小川和男・芝田隼次 時でも CEC は増加していることがわかる。水酸化ナトリウム濃度 や反応温度の差異にかかわらず,このような傾向が見受けられた。 一方,水酸化ナトリウム濃度が一定であるにもかかわらず CEC の 値は,固液比が 300 g / 700 cm3の時の方が高くなっている。これ は,石炭灰の単位重量当たりの水酸化ナトリウム量が多くなる, 言い換えると,石炭灰粉末に接触するアルカリ溶液中の Na + およ び OH ― イオンの絶対量が多くなると,ヒドロキシソーダライトが 生成しやすくなり,その結果として CEC の値が低下するためと考 えられる。  反応温度と CEC の関係を Fig.7 に示す。水の沸点である 373 K 付近を超えると,CEC の値および反応速度が著しく向上する結果 が得られた。沸点を超えた反応温度で反応速度が大幅に向上する のは,温度上昇に伴う石炭灰の溶解速度の増加や反応器内に作用 する圧力の影響8)が考えられる。また,反応温度が 393 K の時に, 同一反応時間において最も高い CEC の値が得られた。393 K 以上 になると,CEC の値および反応速度は再び徐々に低下する傾向が 見られた。  Fig.5 ∼ 7 の結果から考察すると,ゼオライト合成時の水酸化ナ トリウム濃度以外にも,石炭灰の単位重量当たりのアルカリ量が, ゼオライトの生成速度や結晶型に大きく影響を及ぼすことがわか る。そこで,石炭灰の単位重量当たりの水酸化ナトリウム重量 (NaOH[g] / Fly Ash[g]) を水酸化ナトリウム比とし,この量を一つ

の指標とした。水酸化ナトリウム比と CEC の関係を Fig.8 に示す。 これより,水酸化ナトリウム濃度が一定であっても,水酸化ナト リウム比が増加すると CEC は激減する傾向が認められた。同様 に,水酸化ナトリウム比が一定であっても,水酸化ナトリウム濃 度の違いによって CEC が大きく異なることがわかった。  これらの結果から,以下に示すことが考察される。ゼオライト 化反応における水酸化ナトリウムの役割としては,アルミノシリ ケートの溶解,ナトリウムアルミノシリケートゲルの生成,ゼオ ライト結晶核の供給が考えられる4)10)。石炭灰のゼオライト化反応 においては,主に水酸化ナトリウム濃度が反応速度や生成物の物 性に対して大きく影響を及ぼす。しかし,水酸化ナトリウム濃度 が同じであっても,固液比を変化させてフライアッシュ粒子近辺 の Na + および OH ― イオンの絶対量を変化させると,反応速度が低 下したり結晶型が変化する。アルカリ源として水酸化ナトリウム を用いた場合,供給される Na + イオンおよび OH ― イオンの量はほ ぼ等しくなる。ところが,実際にはゼオライト化反応の溶解反応 時にはアルミノシリケートイオンの生成に必要とされる OH ― イオ ンが,結晶化反応時には核形成に必要とされる Na + イオンがそれ ぞれ別々に関与する3)4)と考えられる。以上のことを加味すると, ゼオライト合成においてアルカリ源である水酸化ナトリウムは, Na + イオンと OH ― イオンがそれぞれ独立して作用し,かつゼオラ イト形成のための各イオンの消費量も各々異なることが示唆され る。  3・4 ゼオライトの陽イオン交換挙動  回分式実験にて測定した陽イオン交換反応におけるカルシウム 置換率の経時変化を Fig.9 に示す。置換反応開始から,約 120 min 付近でカルシウム置換率はほぼ飽和に達する。固液比が同じ場合 には塩化カルシウム濃度が高いほど,カルシウム置換率が向上し ている。また,スラリー中の Ca2 + イオンの絶対量が同じ場合には 固液比が小さい程,イオン交換速度やカルシウム置換率が大きい ことがわかる。  Ca2 + および Na + イオン間でのゼオライトの可逆的な陽イオン交 換反応を検討した。カルシウム置換およびナトリウム逆置換にお ける置換操作回数とカルシウム置換率との関係を Fig.10 に示す。 置換回数の増加に伴ってカルシウム置換率およびナトリウム逆置 換率は共に向上することがわかる。同じ置換回数では Ca2 + イオン の方がゼオライトに対して選択的に保持される傾向が認められ る。また,P 型ゼオライトと類似の結晶構造を有するゼオライト であり,天然に産出されるフィリップサイト11)よりも,Ca2 + イオ

Fig.6 Effect of ratio of solid and liquid on cation exchange capacity.

Fig.8 Relationship between amount of NaOH to fly ash and cation exchange capacity.

Fig.7 Relationship between reaction time and cation exchange capacity at various reaction temperatures.

(6)

ンに対する選択性は弱い傾向が認められた。  以上の結果から,Na + および Ca2 + イオン間の陽イオン交換反応 において,ゼオライトは Ca2 + イオンに対して選択性を持つ傾向が 認められるものの,基本的には可逆的に陽イオン交換反応が起こ ることがわかる。したがって,高い置換率のゼオライトを得るた めには,陽イオン交換時に溶液中に放出される対イオンの除去が 重要である。  3・5 カルシウム型ゼオライトの物性  ナトリウムおよびカルシウム型ゼオライトの粒度分布を Fig.2 に示す。粒度分布およびメジアン径においては,本質的な変化は 見受けられなかった。また,SEM 写真上での粒子形状の差異も認 められない。したがって,Na + および Ca2 + イオンの陽イオン交換 反応によって,ゼオライト粒子の物理的な形状はほとんど変化し ないことがわかる。  ナトリウム型およびカルシウム型ゼオライトを蒸留水と混合攪 拌したスラリーの pH の経時変化を Fig.11 に示す。ゼオライト自 体が強いアルカリ性を示し,ナトリウム型ゼオライトの方がカル シウム型よりもアルカリ性が強いことがわかる。また,スラリー の初期 pH を酸性とした場合には中和反応が生じる。これは,水 溶液中で H + イオンとの陽イオン交換反応が起こることによって H + イオンが奪われること,あるいは未反応のアルミノシリケート に含まれる OH ― イオンに起因することが考えられる。  カルシウム型ゼオライトは主に土壌改良材として用いられる が,この場合には石灰分の供給や NH4 + イオンの流亡を抑制する 目的から,高い CEC およびカルシウム置換率が要求される。ま た,土壌 pH の値が高くなったり Na + イオン自体が土壌に混入さ れると植生に悪影響を及ぼす場合が多い。したがって,高い CEC を有するゼオライトを合成し,Ca2 + イオンを高い置換率で陽イオ ン交換させることが,土壌 pH およびナトリウム害の観点から重 要である。種々のカルシウム型ゼオライトおよび他のゼオライト に関するカルシウム置換率と pH を Table 2 に示す。カルシウム置 換率a の増加によってスラリーの pH が低下する傾向が見られた。 また,他のゼオライト市販品と比較してカルシウム置換率a およ びCEC(Na + + Ca2 + とほぼ等しい)の値が非常に高いことがわかる。  本研究により,石炭灰フライアッシュから品質の優れたゼオラ イトを合成するための製法を確立し,合成反応およびイオン交換 反応に関する因子を明らかにすることができた。 4.結     言  石炭灰フライアッシュに種々の条件下でアルカリ水熱合成を適 用し,生成するゼオライトの物性と合成条件との関連性を調べた。 また,得られたナトリウム型ゼオライトの Ca2 + イオンとの陽イオ ン交換反応を行い,交換速度や Ca2 + イオンの置換率等のゼオライ トが有する陽イオン交換特性について検討を行った。得られた結 果を以下に要約した。  1) 生成するゼオライトの CEC や結晶型は,水酸化ナトリウム 濃度に大きく依存する。水酸化ナトリウム濃度の増加に伴って,P 型ゼオライトから共晶域を経てヒドロキシソーダライトに変化す る。また,反応温度を沸点以上にすると,反応速度が大幅に向上

Fig.10 Behavior of cation exchange reaction on calcium substitution and sodium reverse substitution.

Fig.11 Change in pH of Na and Ca type zeolite slurries at various initial pH. Table 2 Amount of exchangeable cations, calcium substitution ratio

a and pH for various zeolites. Fig.9 Time course of calcium substitution reaction of Na type

(7)

村山憲弘・山川洋亮・小川和男・芝田隼次 する。  2) 石炭灰の重量に対する水酸化ナトリウムの量,言い換える と Na + および OH ― イオンの絶対量が多くなると,ヒドロキシソー ダライトが生成しやすくなり,生成するゼオライトの CEC は低下 する。また,OH ― および Na + イオンは,ゼオライト化反応におい て各々異なる作用を呈することが考えられる。  3) Na + および Ca2 + イオン間の陽イオン交換反応は,Ca2 + イオ ンに対する選択性が認められるが,本質的に可逆的である。カル シウム置換率を向上させるためには,対イオンである Na + イオン の除去が重要である。  4) 既存の市販品と比較して,優れた CEC およびカルシウム置 換率を有するゼオライトを製造するための合成条件を明らかにし た。 引 用 文 献   1) 日本フライアッシュ協会・環境技術協会:石炭灰ハンドブック ( 第 2 版 ), (1995)   2) 逸見彰男:産業廃棄物のゼオライト転換による再資源化・有効利用技術開発 , ニュー・テクノロジー & サイエンス , (1994)   3) 西川泰義・川口敦代・松本茂野・山本秀樹・芝田隼次・村山憲弘・小川和男:資 源・素材学会 1998 年春季大会講演要旨集 , Ⅱ素材編 , p. 197 ― 198, (1999)   4) 西川泰義・村山憲弘・山本秀樹・芝田隼次・小川和男:資源と素材 , Vol. 115, p. 971 ― 976, (1999)   5) 小川和男・村山憲弘・山川洋亮・芝田隼次:特願平 11-056829   6) Lin, C. F and His, H-C:Environ. Sci. Technol., Vol. 29, p. 1109 ― 1117, (1995)   7) 加藤秀男・春名淳介:特開平 6-321524

  8) 陶山容子・片山恵一・目黒 勝:日化 , No. 2, p. 136 ― 140, (1996)   9) 池田博史・小川和男:特許第 2867240 号

 10) 冨永博夫:ゼオライトの科学と応用 , 講談社 , (1987)

Table 1 Chemical composition of coal fly ash  and synthesized zeolites.
Table 2 Amount of exchangeable cations, calcium substitution ratio   a and pH for various zeolites.

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