九州新幹線鹿児島ルートがもたらすもの
中3 R.K.はじめに
平成16 年 3 月 13 日に九州新幹線鹿児島ルートの鹿児島中央~新八代間が開業いたし ました。これにより新八代で乗り換え(同一ホームの向かい)が必要になりましたが、 大幅な時間短縮に成功しました。さらに平成 22 年度には新八代~博多が開業し、山 陽新幹線との直通運転が行われることが予想され、実現すれば新大阪~鹿児島中央が 乗り換えなしで行くことができます。ここでは鹿児島ルートにおける時間短縮や経済 効果について見ていきたいと思います。時間短縮
新幹線ができて最初に効果に出るのは時間短縮です。開業前の場合鹿児島線の特急つ ばめの場合速くても博多~西鹿児島(現鹿児島中央)に行くのに 3時間 40 分必要でした。 鹿児島本線の新八代以南(八代~川内は現肥薩おれんじ鉄道)は曲がりくねって、単線 区間が長く、八代~鹿児島中央に行くのに 2 時間ぐらいかかっていました。しかし、 この先行開業により2時間ぐらいかかっていたのが何と 35分(最速)で行くことができ るようになり、博多~鹿児島中央が 2 時間台で行けるようになりました。さらに、リ レーつばめとつばめの乗り換えを同一ホームで行うことにより、乗り換え時間を 3 分 に抑えることができました。そして全線開業すれば、博多~鹿児島中央を 1 時間 20 分で結ばれます。この九州新幹線の車両(800 系)は最高時速が 260km/h と、500 系・ N700 系(東海道・山陽新幹線のぞみ)の 300km/h、700 系(東海道・山陽新幹線のぞみ、 ひかり、こだま)の 285km/h、E2 系(東北新幹線はやて)の 275km/h と、他の車両より 最高時速が低いですが 300km/h を出すことができれば、1 時間ぐらいで結ばれます。利用状況
せっかく建設した新幹線でも、利用されなければ意味がありません。ここではどれだ けの人がどのような目的で利用するのかということに関して見ていきたいと思います。 開業してからの年数 利用者数(前年度比) 開業1 年目(H16 年度) 約 323 万人(2.28 倍) 開業2 年目(H17 年度) 約 337 万人(1.04 倍) 開業3 年目(H18 年度) 約 335 万人(0.99 倍) 開業 2 年目はビジネス利用だけではなく、通勤・通学での利用者が大幅に増加し、3 年目は観光・ビジネス利用だけでなく、通勤・通学など日常生活での利用者が定着しま した。 次は居住地別の利用者数です。 開業 1 年時点の鹿児島県内客の利用割合は、開業 3 ヶ月時点の 42%から 46.6%と、ポ イントが上昇したものの、依然として他県から鹿児島県の入れ込み客の方が多いです。構成比が高まったのは、鹿児島県在住者の県内移動です。開業 2 年には鹿児島県の県 内移動が全体の五分の一にまでなりました。そして、鹿児島県在住者の利用割合が半 分を上回りました。そして、九州外からの入れ込みは少なくなりました。 では目的別に見るとこうなります。 これは鹿児島県内のものですがその他の割合が増加しています。新幹線の多様な利用 が定着したのがいえます。その他とは通勤・通学・通塾、飲み会、試験受験等が挙げ られます。 上の表は頻度別に表したものです。初めての人が減少し、定期的利用が増えています。 ほぼ毎日利用する人とあわせると 40%を超えています。通勤・通学など日常的利用が
定着してきています。 下の表は九州新幹線の定期券エクセルパスの利用者を表したものです。利用者が増え ているのがわかります。よって、九州新幹線の日常的な利用が増えていると言えます。
経済効果
これは鹿児島県が行った調査に基づき計算したものです。 <アンケート概要> 県外Û鹿児島 新幹線 航空機 高速バス ①約 90 万 7000 人増加 ②約 11 万 1000 人減少 ③約 6000 人減少 JR の新八代―鹿児島中央の 乗客数 JAL グループ、ANA グル ープ公表の輸送実績より 九州運輸局の輸送人員を 基に 5 社にヒアリング ①+②+③(増加流入・流出客数)=79 万 1000 人・・・・・④ 居住地別旅客数 利用者数(千人) 割合(%) 鹿児島県内移動 126 15.9 鹿児島県外移動 230 29.1 鹿児島県全体 356 45.1 福岡県 215 27.2 熊本県 88 11.2 佐賀県 13 1.7 その他九州 22 2.8 九州外 95 12.0 他県全体 434 54.9全体 791 100.0 ④ ´ 他県割合54.9% ≒ 県外者 増加客数 43 万 4000 人 ④ ´ 県内割合 29.1% ≒ 県内客 増加客数 23 万 1000 人 そして、県内への入れ込み客増加による経済効果は 増加入り込み客数 約 43 万 40000 人 入り込み客の1 人当たりの消費額 22100 円 (内訳)土産品 8500 円 宿泊費 6700 円 飲食費 4900 円 二次交通費 1800 円 施設入場料等 200 円 22100 円´434000≒96 億円 この消費増加に伴う生産誘発効果を加えた、開業後 1 年間の経済波及効果は 165 億 7000 万円です。 つぎに県外へ出かける鹿児島県内在住者が増加したことによる県外への消費流出額で す。 増加客数 約 23 万人 1 人あたりの消費流出額 21000 円 (内訳)宿泊費 4500 円 飲食費 4500 円 買い物代 12000 円 鹿児島県外消費流出総額は 21000 円´23 万≒48 億 4000 万円です。 次に全線開業時に予想される地域経済への効果です。 県内総生産のインパクト
(単位がない場合は億円) 新幹線が整備(開業)された場合、県内の総生産は開業 5 年目において約 8 兆 5700 億円で、新幹線整備によるインパクトは約 1100 億円と計測されています。 これは、九州新幹線を整備しない場合の県内総生産の 1.28%に相当します。 また、開業10 年目には県内総生産は約 10 兆 2800 億円で、インパクトは約1700 億円になると計測されています。 これは、整備されない場合の1.68%に相当します。 インパクト率から見ても新幹線開業による地域経済への効果は開業から時間が経過 するにしたがって規模が拡大しているのがわかります。
新幹線くまもと創り
H22 年度の全線開業が決定しましたが、これは熊本県の魅力を全国にアピールする 絶好のチャンスなのです。 全線開業すれば博多から熊本へは 35 分、関西からは 3 時間弱で結ばれます。それ による、時間短縮効果により、商圏の飛躍的な拡大や、観光客をはじめとした、交流 人口の増加が期待される一方で、都市間の競争の激化も予想されます。 このような状況の中、県勢浮揚のためには、熊本県(以後“県”とします)の魅力や、 潜在能力を最大限に発揮するための戦略を構築し、民間と行政の役割と連携を明確に しながら、必要なプロジェクトを積極的に推進していくことが不可欠であると考えて います。 そのため、先行開業を見据えて設置していたこれまでの“新幹線くまもと創り推進 協議会”や“新幹線新駅振興会議”等の組織を再編統合し、新たに全線開業に向けた 取り組みを推進するため、県内各界から参画をいただいて“新幹線くまもと創りプロ ジェクト推進本部”を設置しています。 併せて、熊本地域や各地域振興局毎に、地元市町村、関係機関、民間等で構成する “新幹線くまもと創りプロジェクト地域推進本部”を設置し、各地の特色・特性を生 かした“地域戦略”を策定し、民間と行政それぞれが力を合わせてプロジェクトを推 進します。 全線開業がもたらす効果が県下全域に及ぶように、民間と行政のパートナーシップ の下、熊本県下全域で“新幹線くまもと創り”に取り組み、活力ある熊本県を創り上げようとする組織です。
駅及びその周辺の整備
まず、熊本の陸の玄関として、ふさわしい熊本駅の周辺の魅力を創造するために、 民間都市機能の誘導を図ります。県と熊本市が協力し、さらに地元との協働により、 熊本駅周辺における良好な都市空間形成を図り、魅力ある創造を目指します。 駅舎デザインですが、新幹線は“デザインコンセプト期待する県市民の意見”、“熊 本駅周辺地域都市空間デザイン会議の意見”、“熊本駅周辺地域まちづくり協議会”、及 び“デザイン素案に対する県市民の意見”などの内容を考慮して決定しました。一方 在来線は、熊本らしい個性を生かした“森と水”を実感でき、地域住民と訪れる人に 優しいユニバーサルデザインを導入します。これらが駅舎の設計に反映されるように JR 九州に提案しています。 <H18 年度の取り組み> 熊本駅周辺地域都市空間デザイン会議を立ち上げ、良好な町並み形成の指標とな る都市空間デザインガイドを作成。 熊本駅周辺地域整備基本計画 整備基本計画の内容を踏まえながら、さらに利便性や魅力を高めていく視点、 あるいは駅周辺の大規模空地の利用方策等、整備基本計画に描ききれていない部分に ついて検討を深める視点から“熊本駅周辺整備に関するトップ会議”を開催 次に新玉名(仮称)駅周辺開発についてです。4 年半後の九州新幹線鹿児島ルート全線開 業を見据えて、この地域に県北唯一の新幹線駅が設置されることを踏まえた地域づく りを行う必要があります。 <課題>
駅前広場や駅周辺道路等の県市協定の着実な推進。 福岡・熊本都市圏の通勤・通学を見据えた雇用・定住促進策 <ねらい及び効果> 玉名市が行う新玉名(仮称)駅周辺地域開発構想や定住化構想の策定に対し技術的・財 政的支援を行い、県市協定の着実な推進を図ります。 <H18 年度の取り組み内容> 6 月に鉄道・運輸機構に駅舎イメージを提言(玉名市) 新玉名(仮称)駅周辺地域開発構想の策定(玉名市) 定住化構想の策定(玉名市) 新駅周辺の道路網整備(県、玉名市) <H19 年度以降の展開> 新玉名(仮称)駅周辺地域開発構想の推進 新玉名(仮称)駅周辺地域等の交通・道路整備 新幹線を活用した定住促進のための取り組みなど さらに、JR 宇土駅を見ていきましょう。 <現状・課題> 宇土駅周辺は交通の要衝であり、駅東南部は公害型住宅団地や商業施設の立地など 市街化が進行していますが、駅西側に広がる旧来からの中心市街地とは JR に分断さ れる状況にあり、一体的な市街地形成がなされていない状況です。 また、宇土駅と国道3 号に囲まれた駅東側エリア、工事跡地等の未利用地が広がっ ているので、国道 3 号から駅へアクセスできない状況にあります。 <ねらい及び効果> 駅東側(国道 3 号側)と西側(中心市街地)の両方に向いた宇土市の玄関口を形成を 行うことにより、交通網の整備改善と商業系土地利用の推進を図ります。 <取り組み内容> 幹線道路の整備(国道 3 号からのアクセス確保) 自由道路の整備(駅東西の連携強化) 駅西側多目的広場の整備、都市計画道路の高質化(駅西側における玄関口づく り) <H18 年度の取り組み内容> 市道宇土駅東中央線(仮称)整備に係る用地保障等 宇土駅自由道路(仮称)の地質調査・実施設計等 宇土駅西多目的広場の測量設計・用地保障等 市道宇土駅本町線改良に係る測量設計 <H19 年度以降の展開>
取り組み内容を継続して実施。H20 年度完了予定
デュアル・モード・ビークル
(Dual Mode Vehicle ;DMV)
デュアル・モード・ビークル(以後“DMV”とします)とは、JR 北海道がマイクロ バスを改造して、2004 年 1 月に開発し、今年 4 月から試験営業を始めました。線 路でも、道路でも走行できるので、駅から離れたところでも乗り換えなしでいける のが特徴で、道路ではタイヤで走行し、線路ではタイヤの内側に格納した鉄輪を下 ろします。価格は鉄道の一般車両の六分の一未満で済み、定期検査費も四分の一程 度に抑えられます。静岡県や茨城県でも導入の動きが進んでおり、あの宮崎県の東 国原英夫知事が、北海道で試験営業の視察をするなど、ローカル沿線の活性化を図 る起爆剤として期待が高まっています。しかし、DMV の運行コストは低いですが、 定員が16人と少なく、現在の法律では線路と道路をともに運転できる免許がなく、 乗降口が駅のプラットホームより低く乗り降りしにくいなど課題も多いのです。 九州で具体的な動きが進むのは熊本阿蘇地区の南阿蘇鉄道(立野~高森、17.7km) です。経営する第 3 セクターと九州運輸局、県などが 5 月、導入の可能性を探る協 議会を設立しました。11 月に夜間試験走行を行い、来年 2 月に客を乗せた実証実験 を計画しています。 沿線地域の過疎化や少子化などで、南阿蘇鉄道の乗客は 1998 年の約 374000 人 から昨年度は約 249000 人まで減少し、運賃収入も約 1 億 2000 万円から約 6800 万円に落ち込み赤字経営が続いています。 ただ、車窓からの眺めは評判で、沿線には数多くの観光地があり、3 セク社長の 藤本正一・同県高森町長は“駅で乗り換えせずに観光地にいけるようになれば、乗
客は増えるはず。九州初の DMV 運行を是非実現したい”と意気込んでいます。 そのほかにも来年 3 月に一部廃止となる長崎県の島原鉄道や、台風で運行がストッ プしたままの高千穂鉄道に DMV を導入し、橋が流された区間は道路を走行する形 で検討されています。
住みやすい熊本実現
<現状> 少子高齢化・人口減少時代の到来(労働力人口の減少) 2007 年問題(H19 年からの団塊の世代の大量退職と U ターン、移住ニーズ高 まり) 定年帰農、スローライフ、二地域居住新たなスタイル志向の高まり <ねらい及び効果> 県外からの定住(移住・交流居住)人口の拡大 <取り組み内容> 定住希望者の拡大へ向けて、各地域でのさまざまな居住体験プログラム等の実 施(ショートステイ、ロングステイ、二地域居住体験など) 県と市町村による“定住(移住・交流居住)促進連携会議”の開催 相談窓口機能の充実、空き地バンクの整備等を推進 ふるさと回帰フェア 2006 での PR(東京都) 定住環境に関して、熊本のよい部分、悪い部分を部会として調査を行う予定KANSAI 戦略
H22 年度九州新幹線鹿児島ルートが開業しますが、首都圏や福岡への取り組みだ けでは不十分で、片道 3 時間以内の日帰り圏になる関西・中国地方への取り組みを レベルアップする必要があります。そして、交流人口・マーケットの拡大をねらって います。 <取り組み内容> 関西・中国地方をターゲットに、来訪者や移住者の増加、商圏の拡大のため、熊本 のイメージを高め、ブランドを確立し、マーケティング戦略に沿って情報発信を始め としたさまざまな取り組みを展開します。 新幹線くまもと創り“KANSAI 戦略会議”の発足 関西をターゲットとした調査 関西有識者との意見交換会を開催 関西等でイベントなどの開催 以上により、関西等をターゲットとした方向性(戦略)と具体的な取り組みの提唱を行 います。 <H19 年度の展開> “KANSAI 戦略骨子”の策定
“KANSAI 戦略会議”分科会の立ち上げ 関西等における企業・団体調査 関西等におけるテーマ毎の意見交換 “KANSAI 戦略(案)”の策定 第 2 期観光パートナーシップアクションプランとの連携