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食品材料としての小麦胚芽に関する研究 : I 市販小麦胚芽食品中のトリプシン・インヒビターの存在とその熱的性質

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Academic year: 2021

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(1)

一16一 食 物 学 会 誌 ・第33号

食 品 材 料 と して の 小 麦 胚 芽 に 関 す る研 究

1

市 販 小麦 胚 芽 食 品 中 の ト リプ シ ン ・イ ン

ヒ ビタ ー の 存 在 とそ の熱 的 性 質

西 出 佳 子*,野

美 子**

Studies

on Wheat

Germ

as a Food

Material

1.

Presence

and

Thermal

Properties

of Trypsin

Inhibitor

in Wheat

Germ

Foods

on the

Market.

Yoshiko Nishide and Mitsuko Nomoto

1.緒 言 我 国 で は,1年 間 に 約500万 トンの 小 麦 が 利 用 され て お り,副 産 物 と して10数 万 トンの 小 麦 胚 芽 が 得 られ て い る。 現 在,こ の 胚 芽 は,主 と して 家 畜 の 飼 料 に利 用 され て い るが,胚 芽 中 に は,良 質 の タ ンパ ク質 を は じめ 多 くの 特 異 成 分 を含 み,栄 養 学 的 に優 れ て い るの で 種 々 の 食 品材 料 と して の応 用 が 検 討 され て い る1>。 例 え ば,現 在 で は,脱 脂 胚 芽 を 熱 処 理 して 加 工 食 品 (主 に菓 子 類)に 添 加 きれ た り,ま た,健 康 食 品 と し て そ の ま ま 利 用 され て い る。 一 方,小 麦 胚 芽 の タ ンパ ク質 の ア ミノ酸 組 成 は 優 れ て い るが,そ の正 味 タ ンパ ク利 用 率 は極 め て 低 い2)。 そ して,こ の一 原 因 が,タ ンパ ク分 解 酵 素 の 働 き を阻 害 す る タ ンパ ク性 物 質(プ ロテ ア ー ゼ ・イ ン ヒ ビ タ ー) の存 在 に よ る と考 え られ て い る。 実 際 に,胚 芽 中 に は 4種 類 の阻 害 物 質 が 認 め られ3),そ の 内2種 類 の 阻 害 物 質 が 単 離 され,そ れ らの 性 質 が 明 らか に され て い る4)。 そ こで,本 研 究 に お い て は,小 麦 胚 芽 の食 品材 料 へ の応 用 につ い て 検 討 す るた め,ま ず,現 在 市 販 の 小 麦 胚 芽 食 品 お よ び,小 麦 胚 芽 添 加 食 品 に つ い て,ト リプ シ ンに 対 す る阻 害 活 性 の存 在 の 有 無 を 調 べ,次 に,小 麦 胚 芽 中 の トリプ シ ン ・イ ン ヒ ビ ター の 熱 的 安 定 性 に つ い て 検 討 した 。 II.実 験 方 法 *近 畿大 学医学部 **本 学食 品化学研究室 1.試 料 実 験 に 供 し た 小 麦 胚 芽 は カ ナ ダ ウ ェ ス タ ン種 小 麦 胚 芽 を 日 清 製 粉 株 式 会 社 よ り 入 手 し た 。 小 麦 胚 芽 食 品 お よ び 小 麦 胚 芽 添 加 食 品(ビ ス ケ ッ ト)は 市 販 品 を 購 入 し, 用 い た 。 ト リ プ シ ン(2×cryst, from bovin pancre・ as)は, Sigma Chemical Co.製 品 を 使 用 し た 。 ト

リ プ シ ンの 基 質 と し て の カ ゼ イ ン は,E. Merck A. G.,Darmstzdt, Germanyの 製 品 を 実 験 に 供 した 。 2. トリ プ シ ン に 対 す る 阻 害 活 性 の 測 定 法 2-1 ト リ プ シ ン 活 性 の 測 定 ト リ プ シ ン の 活 性 は,萩 原 ら の 方 法 を 改 良 し て 用 い た5)。 す な わ ち,3mlの カ ゼ イ ン溶 液(pH 8.0,1%) に0.05Mリ ン酸 緩 衝 液(pH 8.0)0.5mlと ト リ プ シ ン溶 液(25mg%)0.2mlを 加 え,こ の 混 合 液 を30 分 間37℃ に 保 っ た 。 こ の 反 応 液 に0.13M三 塩 化 酢 酸 (0.93M酢 酸 と0.26M酢 酸 ナ ト リ ウ ム を 含 む)を 加 え た 。 こ の 混 合 液 を37℃ で30分 間 保 っ た 後,R過 し た 。 R液imlに0.55M炭 酸 ナ ト リ ウ ム溶 液5mlと5倍 に 希 釈 し た 市 販 フ ェ ノ ー ル 試 薬lmlを 加 え37℃ で30 分 間 放 置 し た 後,波 長660nmで そ の 吸 光 度 を 測 定 し た 。 2-2 阻 害 活 性 の 測 定 試 料 液 の ト リ プ シ ン に 対 す る 阻 害 活 性 の 測 定 は,前 述 の ト リ プ シ ン 活 性 の 測 定 時 の 緩 衝 液 の 代 りに 試 料 液 を 加 え て,ト リ プ シ ン の 残 存 活 性 を 測 定 し て 求 め た 。

(2)

昭和

5

3

1

1

(

1

9

7

8

年) 阻害活性はコントロールに対しての阻害百分率(1

%)

で示した。その算出は次式に従った。 1

(%)=勺竺

x100

この式でT本およびTは,試料液を加えた時のトリプ シンの活性と緩衝液のみを加えた時のトリプシンの活 性を示している。

1

1

1

.

結果および考察

1. 市販食品中のトリプシンに対する阻害活性 市販食品中の小麦睦芽が, トリプシンに対する阻害 活性を有しているかどうかを次の方法で測定した。 小麦匹芽食品は

5

g

,小麦匹芽添加食品は

5

0

g

を秤 取し, これに

0.1M

塩化ナトリウム溶液 50mlを加 え,混合,摩砕した。

2

時間放置後遠心分離

(

1

1

0

0x

g,

1

5

分)を行ない, 得られた上清を試料液として実 験に供した。 その結果表

u

乙示すごとく,市販小麦匪芽に

1

6

.

6

~35.0% の阻害活性を認めた。これに対して,小麦匹 芽添加のビ‘スケットには1O .1~18.0% の阻害活性が認 表1 市販食品中のトリプシン阻害活性 Sample Germ A Germ B Biscuit A Biscuit B Biscuit C Biscui t (control) Inhibitory Activity(

1

%)

3

5

.

0

1

6

.

6

1

8

.

0

1

3

.

6

1

0

.

1

8

.

1

められ,小麦匹芽無添加のビスケットに比較して2倍 近い値を示した。すでに報告されているように,小麦 穀粒の各部位にはトリプシンに対する阻害活性物質が 存在しているが,特に目玉芽部に強くその活性が認めら れている。しかし,ここで示した実験結果より,市販小 麦匪芽製品中にトリプシンに対する阻害活性が認めら れたことは,小麦睦芽が食品として利用される場合に 熱処理がされているものの,その製品化される過程に おいて小麦匪芽中のインヒビターはその阻害活性を失 うことはなく,その製品中にはなおトリプシンに対す る阻害活性が残存しているということを示している。

2

.

小麦旺芽の熱処理による阻害活性の変化 小麦睦芽を食品材料として利用するのに,これらト リプシン・インヒピターの熱的性質を明らかにするこ とは極めて重要なことである。そこで,小麦怪芽中に 存在するトリプシン・インヒビターが,熱処理により

17

-その阻害活性をどの程度失活するのかを検討した。 小麦匪芽

5

g

をシャーレーに入れ, 100~180・C の種 々の温度で30分~5 時間熱処理した。この熱処理小麦 脹芽は,前述の小麦匪芽食品と同じ操作を行ない,得 られた抽出液についてトリプシンに対する阻害活性を 測定した。図

1

は,無処理の物の阻害活性率を

100%

とし,縦軸に残存活性率を,横軸に処理時聞をとって 示した物である。 ""' 訳 、、./ 〉、 令固さ

'

>

..... (.)

1

0

0

<d 50 b.O z z d g

1 3 time(H) 5 図 1 小麦匹芽中のトリプシン阻害活性の熱安定性 その結果,

3

0

分の熱処理についてみると,

1

0

0

o

C

1

2

0

0

C

ではほとんど阻害活性は低下していないが,

1

4

0

℃になると約

6

0

%

'

1

6

0

・Cでは約

90%

失活し,

1

8

0

・Cで はわずかに阻害活性が認められる程度であった。ま た,時間経過にともなってみてみると,

1

0

0

0

C

ではそ の阻害活性の変化は認められず,

1

2

0

0 Cでは

5

時間で 約

20%

の低下しか示さなかったが,

1

4

0

C

では

3

時間,

1

6

0

0

C

では

1

時間の熱処理により

90%

失活した。しか し,完全に失活させるためには,

1

8

0

C

2

時間の熱 処理が必要であった。従って,小麦匪芽中のインヒビ ターは熱に対して安定であり,安易にその阻害活性を 失わないことが明らかとなった。

3

.

熱処理による小麦旺芽の外観の変化 以上の結果より,小麦匪芽を食品として利用する場 合に熱処理を行うには,少なくとも

1

6

0

0

C

以上必要と 思われる。そこで,無処理の小麦匪芽を

1

0

0

"

-

'

1

8

0

C

(3)

1 8-各種温度で30分間熱処理し,この熱処理小麦匪芽と市 販の小麦匹芽食品とを比較した結果は,図2に示すご とくである。 図2 熱処理による小麦匪芽の外観の変化 これからわかるように, 100~140oC ではあまり外観 の変化は認められないが, 160・

c

・180・Cでは著しい褐 変現象が起り,商品としての価値が失われることが明 らかで、ある。

I

V

.

総 括

現在市販の小麦匪芽食品および小麦匪芽添加食品に ついて, トリプシンに対する阻害活性の存在の有無を 調ぺた結果,強い阻害活性が認められ,また,H壬芽無 添加食品と比較しでも,その存在は明らかであった。 そこでさらに,小麦匪芽中のインヒビターの熱的安 食物学会誌・第33号 定住について検討したところ, 熱に対して安定であ り , 100oC, 1200 Cの熱処理に対して,ほとんど活性は 低下しない。そして, 100%失活させるためには, 160 ℃以上の熱処理が必要であるが,この温度では著しい 褐変現象が起り,食品材料としての商品価値が失われ てしまうのである。 これらの結果より,我々がこれらの匪芽食品を摂取 した場合に,当然トリプシン・インヒビターも体内に 入るが,その際,インヒビターが消化酵素に対して何 らかの阻害を示すであろう乙とが予測される。この事 実は,食品学的見地からのみならず,栄養学的立場か らも検討する必要があると考えられる。 最後に,本実験にあたり御指導下さいました本学の 光永俊郎助教授に深く感謝致します。

参 考 文 献

1) Shurpalekar, S. R. and Haridas, Rao P., Advωlces in Food Res.23, 187 (1977)。

2) A質問, F. and Creek, R. D., Cereal Chem.

42

494 (1965)

3) Mitsunaga

T.

J

.

Nutr. Sci. Vitamiη01.

20

153 (1974)

4) Mitsunaga

T.

in press.

5) Hagihara, B., Matsubara, H., Nakai, M. and Okunuki

K.

J

.

Biochem., 95

271 (1961)。

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