平 成19年12月(2007年)
一1総
説
植 物 起 源 の 食 物 ア レ ル ゲ ン:Lipid
Transfer
Proteinの
ア レ ル ゲ ン性 と生 物 学 的 特 性
山 口(村
上)友
貴 絵,中
村 美 幸,廣
瀬 潤 子*,
本庄
勉**,成
田 宏 史
Plant-Derived
Food Allergens:
Allergenicity
and Biological
Properties
of Lipid Transfer
Protein
Yukie Murakami Yamaguchi, Miyuki Nakamura, Junko Hirose,
Tsutomu Honjoh and Hiroshi Narita
The most important allergens in young children are derived from animal foods. Therefore, researches
of food allergy are mainly developed on hen's eggs and cow's milk. On the other hand, new types of allergy
such as pollen allergy, latex allergy and oral allergy syndrome have recently been increasing. These
aller-gies are characteristically caused by plant allergens and seen in adults. In the former case, sensitization
and induction are usually caused by a same allergen (Type I food allergy). However, they are caused by
dif-ferent antigens with cross-reactivity in the latter case (Type II food allergy). This review first focuses on
cross-reactivity of plant allergens to explain the increase of the Type II food allergy and then summarizes
the information and our data about the major plant allergen, Lipid Transfer Protein.
(Received September 15, 2007)
は じ め に
乳 幼 児 期 に お け る食 物 ア レル ゲ ンは 多 くの場 合,
動 物 由 来(鶏 卵 と牛 乳)で
あ り,従 来 の主 要 食 物 ア
レ ル ギ ー の研 究 は これ らを 中 心 に 展 開 さ れ て きた 。
一 方
,近 年 増 加 しつ つ あ る花 粉 症,ラ
テ ヅ クス ア レ
ル ギ ー,口 腔 ア レル ギ ー 症 候群(OAS)な
どの 新 し
い ア レル ギ ー は,植 物 由来 の ア レル ゲ ン に よ って 大
人 で 発 症 す る 事 が 多 い。 また,前 者 で は通 常 感 作 と
誘 発 が 同 じ抗 原 で あ る(1型
食 物 ア レル ギ ー)が,
後 者 で は感 作 と誘 発 が異 な る場 合 が 多 く(II型 食 物
ア レ ル ギ ー),交 差 反 応 性 が 重 要 な フ ァ ク タ ー と な っ て い る の が 特 徴 で あ る 。 本 稿 で は,植 物 ア レ ル ゲ ン の 交 差 反 応 性 を 中 心 に 新 し い ア レ ル ギ ー の 増 加 に つ い て 考 察 す る と共 に,代 表 的 な 植 物 ア レ ル ゲ ン で あ る 脂 質 輸 送 タ ン パ ク 質(Lipid Transfer Protein)に 関 す る 最 近 の 知 見 な ら び に 我 々 の 研 究 室 の 成 果 を 総 説 す る 。1.植
物 ア レ ル ゲ ン
京都 女 子大学 食 物 栄養 学 科食 品学 第 一研 究 室
*滋 賀 県 立大 学人 間 文化 学 部生 活 文化 学科 食 生活 専攻
**(株)森 永生 科 学 研究 所
1、 ラ テ ック ス ア レル ゲ ン と感 染特 異 的 タ ン パ ク 質
果 物 ・野 菜 類 に 対 す る ア レル ギ ー反 応 は,大 部 分
の症 例 が ラ テ ックス ゴム また は花 粉 類 と の交 差 反 応
を示 す こ とが 多 く,前 者 に対 し て ラテ ッ クスー 果 物
症 候 群,後 者 に 対 して花 粉 一 食 物 ア レル ゲ ン症 候 群
の 名 称 が 用 い られ る場 合 も あ る1)。ラ テ ック ス に は
一2一
食 物 学 会 誌 ・第62号
用 語 説 明 本 稿 で 使 用 す る用 語 に つ い て ま とめ た も の を示 す 。
口 腔 ア レ ル ギ ー 症 候 群(OAS:Ora1 Allergy Syndrome)
果 物,野 菜 な ど を 摂 取 した と き に,口 腔 粘 膜 あ る い は そ の 周 囲 の 粘 膜 組 織 に 生 じ る ア レ ル ギ ー 症 状 。 口 唇,口 腔,咽 頭 な ど に 刺 激 感 を 伴 い,重 篤 な 場 合 は 呼 吸 困 難 な ど の 呼 吸 器 障 害 を 起 こす 。
交 差 反 応 性
あ る特 定 の 抗 原 を 認 識 す る抗 体 が,
す る こ と。
その抗 原 と類 似す る構造 を持つ別 の抗原 を認 識
ラ テ ッ ク ス ア レ ル ギ ー 医 療 関 係 従 事 者 が,ラ テ ッ ク ス 製 の 手 袋 の 使 用 が 原 因 で ラ テ ッ ク ス 中 の タ ン パ ク 質 」/rVl_..より感 作 を 受 け て ア レ ル ギ ー 症 状 が 現 れ た こ と が 発 端 。 葺 麻 疹,喘 息 発 作,ア ナ フ ィ ラ キ シ ー シ ョ ッ ク な ど の 即 時 型 ア レ ル ギ ー 反 応 。PRタ
ン パ ク質
植 物 は生 育 環 境 の 変 化(病 原 菌 の感 染 や 傷 害,植 物 ホ ル モ ンを 含 め た 化 学 物 質 や 重
金 属 の適 用,オ
ゾ ン な どの 大 気 汚 染 物 質,紫 外 線 や 厳 しい生 育 環 境)に
基 づ く様 々
な ス ト レス を受 け た 場 合,自
己 防 衛 の た め 植 物 特 有 の生 体 防 御 反 応 を起 こす 。 この
過 程 で誘 導 され るタ ン パ ク質 群 。
汎 ア レル ゲ ン
多 くの植 物 細 胞 あ るい は動 物 細 胞 に共 通 して 含 ま れ,
る よ うな ア レル ゲ ン。
幅 広 い 交 差 反 応 性 の原 因 とな
多 く の ア レ ル ゲ ン タ ン パ ク 質(ゴ ム の 樹 木Hevea Brasiliensisに 因 ん でHev bと し て 分 類 さ れ る)が 含 ま れ て お り,表1に 現 在 ま で にWHO-IUIS(世 界 保 健 機 関 一 国 際 免 疫 学 会 連 合)に よ っ て 正 式 に 登 録 さ れ て い る ラ テ ッ ク ス ア レ ル ゲ ン を 示 した2)。一 方,植 物 に は 生 体 防 御 タ ン パ ク 質 の1つ で,ウ ィ ル ス や 細 菌 の 感 染 に よ り 病 的 状 態 に 陥 っ た 時 に 誘 導 さ れ る pathogenesis-related-protein(PRタ ン パ ク 質)と い う一 連 の タ ン パ ク 質 が あ る 。 こ れ ら は,感 染 特 異 的 タ ンパ ク 質 と も 呼 ば れ る が,今 日 で は 感 染 の 他 に 化 学 的,物 理 的 な 刺 激 に よ っ て 誘 導 さ れ る も の ま で 含 め て,各 種 の ス ト レ ス に よ り誘 導 さ れ る タ ン パ ク 質 群 が 包 括 的 にPRタ ン パ ク 質 と呼 ば れ て い る 。 表2 にPRタ ン パ ク 質 の 分 類 と 対 応 す る 植 物(食 物)抗 原 を 示 し た2)。 ゴ ム の 採 取 法 か ら 考 え れ ば 容 易 に 理 解 で き る が,Hev bタ ン パ ク 質 とPRタ ン パ ク 質 の 多 くは 共 通 し て い る 。 例 え ば,ラ テ ッ ク ス の 主 要 抗 原 中 で 果 実 類 と交 差 性 を 有 す る も の と し て ク ラ ス1型 キ チ ナ ー ゼ が 挙 げ ら れ る 。 ク ラ ス1型 キ チ ナ ー ゼ は 様 々 な 植 物 中 に 存 在 し,細 胞 壁 の 構 築 に 関 与 す る タ ン パ ク 質 で あ る 。 ク リ ・ア ポ 力 ド ・バ ナ ナ の キ チ ナ ー ゼ のN末 端 キ チ ン 結 合 性 ド メ イ ン は ラ テ ッ ク ス ア レ ル ゲ ン のHev b 6.02で あ る ヘ ベ イ ン と70∼80%の 相 同 性 を 示 し て お り3),そ の た め に ク ラ ス1型 キ チ ナ ー ゼ は ラ テ ヅ ク ス ー 果 物 症 候 群 に 関 連 し た 重 要 な 汎 ア レ ル ゲ ン と 認 識 さ れ て い る 。 ク ラ ス1型 キ チ ナ ー ゼ はPRタ ン パ ク 質 の 一 種 で も あ り,PR-3群 に 分 類 さ れ て い る4)。 ま た,花 粉 一 食 物 ア レ ル ゲ ン 症 候 群 の 主 要 抗 原 と し て はBet v 1が 代 表 格 で あ る 。 Bet v 1は シ ラ 力 バ 花 粉 の 主 要 ア レ ル ゲ ン で あ り,リ ン ゴMal d 1,サ ク ラ ン ボPru av 1,セ ロ リApi g 1な ど の 果 物 野 菜 抗 原 と交 差 反 応 性 を 示 す こ と に よ り,口 腔 ア レ ル ギ ー 症 候 群 発 症 の 原 因 と も な っ て い る5)。 中 で も,リ ン ゴ の 感 作 の 特 異 性 が 高 い と さ れ て い る6)。 さ ら にBet v 1はPRタ ン パ ク 質 に 属 し て お り,PR-10群 に 分 類 さ れ て い るz8)。 最 後 に 野 菜 ・果 物 ア レ ル ギ ー の 代 表 的 な 原 因 抗 原 と し てLipid transfer protein(LTP)を あ げ る 。 LTP は バ ラ 科 果 物 に お け る 重 要 な ア レ ル ゲ ン と し て 同 定 さ れ た タ ン パ ク 質 で あ り9,10),リ ン ゴMal d3,モ モ Pru p 3,サ ク ラ ン ボPru av 3,プ ラ ムPru s 3さ ら に は セ ロ リ,ヨ モ ギ,ト マ ト,ト ウ モ ロ コ シ,大 麦 (ビ ー ル)な ど の 野 菜 ・穀 類 の ア レ ル ゲ ン と し て 広 く 同 定 さ れ て い る 。 工TPは ラ テ ッ ク ス ア レ ル ゲ ン の 一 種(Hev b 12)と し て,さ ら にPRタ ン パ ク 質 の 一 種(PR-14)と し て も分 類 さ れ て い る11・12)。後 述 す る がLTPの 植 物 間 に お け る 相 同 性 は 非 常 に 高 く(図 1),LTPが ア レ ル ゲ ン の 場 合 複 数 の 食 物 に 反 応 し て 症 状 が よ り重 篤 に な る こ と が 多 い 。平 成19年12月(2007年)
一3一表1ラ
テ ック ス ア レル ゲ ンの一 覧(WHO-IUISよ
り)
WHO-IUIS(世
界 保 健 機 関 一 国 際 免 疫 学 会 連 合)に
よ っ て 正 式 に 登 録 さ れ て い る ラ テ ック ス ア レ ル
ゲ ンを 示 した 。
抗原
分 子 量(kDa)
生理 的 な役割
Hevbl Hev b 2 Hev b 3 Hev b 4 Hev b 5 Hev b 6.01 Hev b 6.02 Hev b 6.03 Hev b 7.01 Hev b 8 Hevbg Hev b 10 Hev b 11 Hev b 12 14.6 34-36 24 100-115 16 20 4.7 14 46 14 46 25.8 32 9 ゴ ム ラ テ ヅ ク ス の 生 合 成 に 関 与 生 体 防 御 タ ン パ ク 質(PR-2) ゴ ム ラ テ ッ ク ス の 生 合 成 に 関 与 Hev b 1と 相 同 性 生 体 防 御 タ ン パ ク質 ソ バ ・キ ウ イ 等 と交 差 ア ポ 力 ド と 交 差 HCWに 関 連 ゴ ム ・ ラ テ ッ ク ス の 凝 集 に 関 与 ア ポ 力 ド ・バ ナ ナ と交 差 HCWに 関 連 生 体 防 御 タ ン パ ク質(..,) 障 害 誘 導 性 タ ン パ ク 質 と 相 同 性 生 体 防 御 タ ン パ ク 質,天 然 ゴ ム 生 合 成 の 阻 害 馬 鈴 薯 ・ トマ ト ・ア ポ 力 ド等 と 交 差 構 造 タ ン パ ク 質 バ ナ ナ と 交 差 糖 分 解 酵 素 ク ラ ス 皿 型 キ チ ナ ー ゼ 生 体 防 御 タ ン パ ク 質(PR-3) バ ナ ナ ・ア ポ 力 ド と 交 差 生 体 防 御 タ ン パ ク 質(PR-14) 脂 質 輸 送 タ ン パ ク 質HCW:health care worker(医 療 従 事 者)
2.交 差 反 応 性 の 意 味
で は なぜ 植 物 に お い て は この よ うな 種 を 超 え た 広
範 な 交 差 反 応 性 が 見 られ る の で あ ろ うかPす
で に 述
べ た よ うに,PRタ
ンパ ク質 は 植 物 が環 境 か ら の様 々
な ス ト レス に応 答 し て作 り出 す 生 体 防 御 タ ン パ ク質
で あ る。 した が っ て,PRタ
ン パ ク質 の機 能 発 現 は
植 物 に と っ て は 極 め て重 要 で あ り,そ のた め に 必 要
な構 造 は進 化 の 過 程 で種 を 超 え て植 物 内 に保 存 され
て 来 た 可 能 性 が あ る。 そ の 共 通 構 造 が ア レル ギ ー に
お け る交 差 反 応 の エ ピ トー プ(抗 原 決 定 基)と
な っ
て い るわ け で あ る。 そ うす る と,最 近 の新 しい ア レ
ル ギ ー の増 加 は 単 に ア レル ギ ー に 対 し て 医 師 や 患 者
が 敏 感 に な って きた だ け で あ ろ うか と い う疑 問 が 生
じ る。例 え ば,リ
ン ゴ,ア ポ 力 ド,バ ナ ナ,ト マ ト,
キ ウ イ な どは 熟 成 を 促 進 す るた め,追 熟 ホ ル モ ン と
し て エ チ レ ン処 理 を 施 す こ とが あ り,前 述 の ク ラス
1型 キ チ ナ ー ゼ は エ チ レン処 理 に よ っ て誘 導 され る
事 が わ か って い る13)。ま た ク ラ ス1型
キ チ ナ ー ゼ が
多 い と病 害 虫 に対 す る抵 抗 性 を 付 与 で き るた め,品
種 改 良 や 遺 伝 子 操 作 に よ っ て こ の タ ン パ ク質 の 高 発
現 株 が 選 ば れ て い る。つ ま り,病 原 菌 ・害 虫 ・農 薬 ・
気 候 ・品 種 改 良 ・
遺 伝 子 組 み 換 え な どの環 境 変 化(ス
ト レス)に 植 物 が応 答 し てPRタ
ンパ ク 質 を 誘 導 産
生 す る と と も に,環 境 破 壊 に よ っ て傷 つ い た 植 物 が
子 孫 を 残 そ う と花 粉 量 を増 や し,広 範 な 交 差 反 応 性
を も った ア レル ゲ ン の絶 対 量 自体 の 増加 を 経 て,新
し い ア レル ギ ー の 増 加 につ なが っ て い る の で は な い
だ ろ うか と考 え られ る。 ス ギは 環 境 の悪 化 に 自 ら の
生 命 の 危 機 を感 じ,種 を保 存 す る た め に 大 量 の花 粉
を飛 ば す 。 そ の花 粉 で ヒ トは ア レル ギ ー に な る。 ア
レル ギ ー 反 応 が ヒ トの悲 鳴 であ る とす れ ば,そ れ は
ス ギ の 悲 鳴,ひ
い て は地 球 の悲 鳴 で あ る の か も しれ
な い 。
ll.脂 質 輸 送 タ ン パ ク 質:Lipid transfer protein (LTP}
先 に述 べ た よ うにLTPの
交 差 反 応 性 は 植 物 ア レル
ゲ ン の特 微 を 代 表 す る も の で あ り,Lrpは
植 物 生 理
4一
食 物 学 会 誌 ・第62号
表2感
染 特 異 的 タ ンパ ク質 と帰 属 す る ア レル ゲ ン
推 奨 され て い る感 染 特 異 的 タ ン パ ク質(PRタ
ン パ ク質)の
分 類 と対 応 す る植 物 抗 原 を 示 した 。
分類
分 子 量(kDa)
性 質(起
源 植 物 名;ア
レル ゲ ン登 録 名)
PR-1 PR-2 PR-3 .., PR-5 PR.6 PR-7 ... .・ ・ PR-10PR-11
PR-12
PR-13
PR-14
15^-17 25∼35 25∼35 13∼15 22∼24 6 69 28 39^-40 17∼18 41∼43 5 14 9 -12 未 知 抗 力 ビ 性,ク ラ ス1,II,皿 型 β一1,3一 グ ル 力 ナ ー ゼ (ラ テ ッ ク ス;Hev b 2) 抗 力 ビ 性,ク ラ ス1,II, IV型 キ チ ナ ー ゼ (ア ポ 力 ド;Pers a 1,ラ テ ッ ク ス;Hev b 11) 抗 力 ビ 性,ク ラ ス1,II型 キ チ ナ ー ゼ (ラ テ ッ ク ス;Hev b 6) 抗 力 ビ 性,ソ ウ マ チ ン 様 タ ン パ ク 質 (サ ク ラ ン ボ;Pru av 2,リ ン ゴ;Mal d 2) プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー エ ン ド プ ロ テ ア ー ゼ ク ラ ス 皿 型 キ チ ナ ー ゼ (ラ テ ッ ク ス,ヘ パ ミ ン) ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ イ ソ 酵 素 未 知,Bet v 1相 同 タ ン パ ク 質(シ ラ 力 バ 花 粉;Bet v 1,ヘ ー ゼ ル ナ ッ ツ;Cor a 1,リ ン ゴ;Mal d 1, サ ク ラ ン ボ;Pru av 1,モ モ;Pru p 1,ア ン ズ;Pru ar 1,ナ シ;Pyr c 1,セ ロ リ;Api g 1,ニ ン ジ ン;Dau c 1)
ク ラ ス1型 キ チ ナ ー ゼ ァ ィ フ ェ ン シ ン チ オ ニ ン
非 特 異 的 脂 質 輸 送 タ ン パ ク 質(Lipid transfer protein:nsLTP)
(リ ン ゴ;Mal d 3,モ モ;Pru p 3,オ レ ン ジ;Cit s 3,ア プ リ コ ッ ト; Pru ar 3,チ ェ リ ー;pru av 3,ダ イ ズ;Gly m 19,ラ テ ッ ク ス;Hev b 12)
学 的,タ
ンパ ク質 化学 的,免 疫 学 的,食
品 化 学 的 に
極 め て 興 味 あ る研 究 対 象 とな っ て い る14)。そ こで,
以 下 で は,LTPに
関 す る最 近 の報 告 にわ れ わ れ の研
究 成 果 を 加 え て,LTPの
構 造 ・機 能 上 の特 徴 な どを
解 説 す る。
1.LTP
脂 質 は 植 物 生 理 学 的 に 多 くの重 要 な 機 能 を 示 し,
生 物 や 無 生 物 的 な ス トレ ス に対 し て植 物 器 官 内 に ク
チ ン(空 気 中 に生 育 す る植 物 の 器 官 に存 在 す る脂 肪
酸 ポ リエ ス テ ルや 脂 肪 酸 ア ル コー ル,オ キ シ脂 肪 酸
か ら成 る疎 水 性 重 合 体 で,そ
の 間 に は ロ ウ 物 質 が
ぎ っ し り詰 ま っ て い る)や ス ベ リン(フ
ェ ノー ル化
合 物,グ
リセ ロ ー ル,二 価 脂 肪 酸,オ
キ シ脂 肪 酸 の
誘 導 体 か らな る複 雑 な重 合 体)の
よ うな保 護 組 織 を
形 成 す る。 ま た,脂 質 や そ の誘 導 体 は 細 砲 か ら送 り
出 され る シ グナ ル と関係 し て い るた め 細 胞 内 外 の脂
質 交 換 が 必 要 と な っ て くる。 親 水 性 で あ る細 胞 内外
間 に お け る脂 質 移 動 は,脂 質 結 合 性 の タ ンパ ク質 や
リポ タ ン パ ク質 な どに よ っ て行 わ れ る。
LrPは
脂 質 結 合 能 を 有 す る こ とか ら,当 初 細胞 内
膜 脂 質 の 輸 送 に 関 係 す る 低 分 子 の 疎 水 性 タ ン パ ク質 グ ル ー プ と し て 同 定 さ れ た15)。 動 物 で は リ ン 脂 質 な ど に 対 し て 特 異 的 に 結 合 す る タ ン パ ク 質 も報 告 さ れ て い る が,植 物LTPの 脂 質 結 合 特 異 性 は 低 い た め, 正 式 に は 非 特 異 的 脂 質 輸 送 タ ン パ ク 質(nonspecific LTP:nsLTP)と 呼 ば れ る 。 図2にLTPに よ る 脂 質 輸 送 活 性 の 定 量 法 を 示 し た16)。 し か し な が ら,工TPは 植 物 の 外 層 に 存 在 し て い る こ と,シ グ ナ ル ペ プ チ ド を 伴 っ た プ レ タ ン パ ク 質 と し て 生 合 成 さ れ る こ とが 判 明 し た た め,現 在 で は 細 胞 外 脂 質 で あ る ク チ ン や ス ベ リ ン の 形 成 や 病 原 菌 の 侵 入 に 対 す る 植 物 の 保 護 V'関 係 し て い る と 推 測 さ れ て い る17)。 一 方,近 年LTPが 細 胞 膜 表 層 の エ リ シ チ ン 受 容 体 と 結 合 し,そ の 生 物 活 性 を 調 節 し て い る こ と が わ か っ て き た18)。エ リ シ チ ン は 植 物 病 原 ●phytophthoya 属 とpythium属 に よ っ て 分 泌 さ れ る 分 子 量10kDaの 単 量 体 タ ン パ ク 質 で あ り,こ の 受 容 体 を 介 し た 複 雑 な 情 報 伝 達 力 ス ケ ー ドを 刺 激 し て 植 物 を 活 性 化 す る 事 が で き る19-22)。エ リ シ チ ン に は 工TPと ア ミ ノ 酸 配 列 の 相 同 性 は な い 。 し か し,3対 のS-S結 合 に よ っ平 成19年12月(2007年)
5 て 作 ら れ る 安 定 な α一ヘ リ ッ ク ス 構 造 が,LTPの よ う な 疎 水 性 の 高 い 空 洞 を 形 成 し て い る た め,こ の 空 洞 部 分 に ス テ ロ ー ル 類 や 脂 肪 酸 を 特 異 的 に 結 合 す る こ と が で き る23-26)。 ま た こ の 部 分 が 受 容 体 と の 結 合 部 位 で あ り,後 述 す る1∫rp1の ヘ リ ッ ク ス 構 造 と ち ょ う ど重 ね 合 わ す こ と が 可 能 で あ る 。さ ら に最 近 で はLTPと
脂 質 成 分 の複 合 体 が 病 原 菌
に 対 す る 耐 性 を 誘 導 す る 活 性 を も っ て い る 可 能
性27),LTPが
力 ル モ ジ ュ リン結 合 活 性 を も っ て い る
こ と28)な どが 明 らか に な り,LTPの
生 理 機 能 に 関 し
て は まだ ま だ 今 後 の研 究 に 任 され て い る と ころ が 大
で あ る。HPは
単 な る脂 質 の 運 び 屋 で は な く,植 物
一6一
食 物 学 会 誌 ・第62号
大 麦LTP
+0μ9/mL
十1.5μg/mL
-「△・・4 .5μg/mL
-一(〉 ・15μg/mL
十45μg/mL
時 間(分)
図2 脂 質 転 移 活 性 の 測 定Paridonら の 方 法 に よ り大 麦 か ら 精 製 し たLTPの 脂 質 転 移 活 性 を 測 定 し た16)。蛍 光 ラ ベ ル さ れ たdonner vesicle (1-hexadecanoyl-2-(1-pyrenedecanoyl)sn-glycero-3-phosphocholine)と 蛍 光 ラ ベ ル の な いacceptor vesicle(L一 α一ホ ス フ ァ チ ジ ル コ リ ン)を 調 製 し,そ の 中 に 純 化 し た 大 麦LTPを 添 加 し て 経 時 的 に 蛍 光 強 度 の 測 定 を 行 っ た 。doner中 で は 消 光 し て い る が, acceptorに 運 ば れ る と 蛍 光 が 生 ず る 。 LTPの 濃 度 増 加 に 伴 い 蛍 光 強 度 の 上 昇 が み ら れ る こ と に よ り,脂 質 輸 送 活 性 が 測 定 で き る 。 細 胞 を 活 性 化 す る 調 節 因 子 で あ る よ うだ 。 こ こ で 見 逃 し て は な ら な い の は,LTPが ア レル ゲ ン と し て ヒ ト の 細 胞 に 対 し て 過 敏 な 反 応 を 引 き起 こ す 現 象 と,微 生 物 が 分 泌 す る エ リ シ チ ン に 対 す る 植 物 細 胞 の 応 答 の ホ モ ロ ジ ー で あ る 。 つ ま り,こ こ に 工TPが ア レ ル ゲ ン と な りや す い 理 由 が あ る の か も し れ な い し,LTPの エ リシ チ ン 受 容 体 に 対 す る 結 合 能 の 分 析 や そ の メ 力 ニ ズ ム の 解 析 が 新 た な ア レ ル ゲ ン の ス ク リー ニ ン グ 法 の 開 発 や ア レ ル ギ ー 発 症 の メ 力 ニ ズ ム の 解 明 に 役 立 つ か も し れ な い 。 2.LTPの 構 造 LTPに は 分 子 量 約9kDaのLTP 1と,分 子 量 約7 kDaのLTP2と 呼 ば れ る 異 な る 分 子 量 タ イ プ が 同 定 さ れ て い る29-31)(表3,図1)。 これ ら は 全 て の 植 物 の 種 や 果 肉,葉,根,花,花 粉 な ど の 器 官 に 存 在 す る 。LTP 1とUP2は シ ス テ イ ン の 配 列 に お い て 共 通 部 分 が あ り(図3),そ れ ら の シ ス テ イ ン は 全 て がS-S結 合 に 関 与 し て い る 。 も う一 つ の 一 次 構 造 上 共 通 の 特 徴 は ト リ プ ト フ ァ ン が 存 在 し な い こ と で あ る 。 一 方,両 者 は シ ス テ イ ン配 列 以 外 の 部 分 に お け る相 同 性 は 低 い 。 工TP2よ り もLTP1の 方 が 存 在 量 が 多 く,研 究 デ ー タ も 多 い 。 タ マ ネ ギ の 種 子 に 存 在 す る 抗 菌 性 のAce-AMP1は ]LT'Pと 同 じ シ ス テ イ ン 配 列 を 持 つ32)。 し か し,最 も 類 似 す るLTP1と の 相 同 性 は25%で あ り(シ ス テ イ ン は 除 く),2つ の ト リ プ トフ ァ ン が 存 在 す る の で, LTPI様 タ ン パ ク 質 で あ る と 考 え ら れ て い る 。 同 様 に,力 ベ イ ラ ク サ の 花 粉 ア レ ル ゲ ン で あ るPar J 1と Par J 2もLrp1様 タ ン パ ク 質 で あ る と考 え ら れ て い る 。 こ れ ま で に ア レ ル ゲ ン と し て 同 定 さ れ て い る
平 成19年12月(2007年)
一7表3同
定 され て い る植 物LTP
現 在 同定 され て い る植 物 のLTPの
学 名,デ
ー タ ベ ー ス省 略 名,ア
レル ゲ ン登 録 名 お よびLTPタ
イ プ を示 した 。
植物名
学名
デ ー タ ベ ー ス 登 録 名 ア レ ル ゲ ン 登 録 名 LTpタ イ フ。 小 麦 大 麦 ト ウ モ ロ コ シ 米 リ ン ゴ オ レ ン ジ プ ラ ム ア フ。リ コ ッ ト モ モ サ ク ラ ン ボ ブ ド ウ ナ シ ブ タ ク サ ヨ モ ギ オ リー ブ 力 ベ イ ラ ク サ ア フ フ ナ Tyiticum aestivum Hoydeum vulgaye Zea mの 戸∫ Oryza sativaMalus domestics
Citrus
sinensis
Prunus domes tics
Pyunus aymeniaca
Prunus pers
ica
Pyunus avium
Vitis
vinifera
Pyyus communis
Ambrosia artemisiifolia
Artemis
ia vulgayis
Oleae
euyopaea
Parietaria
judaica
Brassica raga
NLTA
WHEAT
NLTI
HORVU
NLTP
MAIZE
NLTP14RYSA
NLTP MALDO
NLTP
CITSI
NLTI
PRUDO
NLTI
PRUAR
NLTI PRUPE
NLTP
PRUAV
NLTP4
VITSX
NLTP
PYRCO
NLT6 AMBAR
NLTP ARTVU
ALL OLEEU
NL21 PARJU
NL11 _PARJU
Tヒia14 Zea m 14Mal d3
cat S 3
Pru d 3
Pru ar 3
Pru p 3
Pru av 3
Vitvl
Pyr c 3
Amb a 6
Art v 3
01ee7
Parjl
Par j 2
LTPl LTPl LTP1 工,TP1 LTPl LTPl LTPl LTPl LTPl LTPl LTPl LTPlLTPl
LTPI
LTPl
LTP-like
LTP-like
LTP2
図3
LTPのS-S結
合 位 置
LT'Pに 存 在 す る シス テ イ ンのS-S結
合 部 位 を示 した 。
1TPは ほ と ん ど がITP1グ ル ー プ で あ る が10,33-40),ア ブ ラ ナ 花 粉 だ け がLTP2で あ る と報 告 さ れ て い る41)。 共 通 に 存 在 す る シ ス テ イ ン 配 列 はLTPと 相 同 性 の な い 植 物 ア レ ル ゲ ン で あ る 疎 水 性 タ ン パ ク質 の 大 豆 タ ン パ ク質(HPS)や2Sア ル ブ ミ ン42,43)や 穀 類 のa一 ア ミ ラ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー44)に も み ら れ,こ れ ら は そ れ ぞ れ の 植 物 に お け る 主 要 ア レ ル ゲ ン と言 わ れ て い る45-47)。以 上 の こ と か ら,新 規 の 植 物 ア レ ル ゲ ン と な り得 る か ど う か は,LTPと ア ミ ノ 酸 配 列 に お い て 相 同 性 が あ る こ と よ り も む し ろ,LTPと 同 じ シ ス テ イ ン 配 列 の 存 在 が 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 小 麦,ラ イ 麦,米,大 麦LTPIの 三 次 構 造 は 核 磁 気 共 鳴 やX線 構 造 解 析 に よ っ て 決 定 さ れ て い る 。構 造 の 特 徴 と し て,4本 の ら せ ん と4対 のS-S結 合 に よ っ て 安 定 に 保 た れ た サ ク ソ フ ォ ン状 の 折 りた た み 構 造 が あ げ られ る。 こ の 構 造 の 内 部 に は ト ン ネ ル 状 の 空 洞 部 分 が 存 在 し て い て(図4),そ の 部 分 は 疎 水 性 ア ミ ノ 酸 で 占 め ら れ て い る 。 疎 水 性 ア ミ ノ 酸 は ペ プ シ ン に よ る切 断 部 分 な の で,疎 水 性 ア ミ ノ 酸 が 酵 素 の 影 響 を 受 け に くい 位 置 に あ る こ と は 重 要 で あ る 。 こ の よ う な 構 造 を 持 つ た め,Lrp1は ペ プ シ ン 消 化 に 対 す る抵 抗 性 が 高 い48,49)。LTP1の 空 洞 部 分 は ス フ ィ ン ゴ脂 質 や プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン,ア ン ホ テ リ シ ンBな ど の 疎 水 性 分 子 と 結 合 し や す い50,51)。ま た, こ の 結 合 に はC末 端 近 傍 の チ ロ シ ン が 関 与 し て い る た め,空 洞 部 分 に 疎 水 性 分 子 が 結 合 し た 場 合,ト リ フ.シ ン や キ モ ト リ フ.シ ン に 対 し て 抵 抗 性 を 示 す52)。 こ の よ う に,こ の 特 徴 的 な 折 りた た み 構 造 がLTPに 対 し て 低 分 子 の ア レ ル ゲ ン タ ン パ ク 質 と し て の 重 要 な 特 徴 で あ る 熱 安 定 性,プ ロ テ ア ー ゼ 抵 抗 性 を 付 与一g一 し て い る48,53)。こ れ に 対 し てLTP2の 高 次 構 造 は ま だ 解 明 さ れ て い な い 。 前 述 し た タ マ ネ ギ 種 子 か ら単 離 さ れ た 抗 菌 作 用 の あ る タ ン パ ク 質 で あ るAse-AMP32)はLTPIと 同 じ 折 りた た み 構 造 を 持 っ て い る が54),シ ス テ イ ン 配 列 を 除 い て ア ミ ノ 酸 配 列 はLTP1と 異 な り脂 質 結 合 能 は な い 。 従 っ て,工,TPが 持 つ 脂 質 結 合 能 自 体 は ア レ ル ゲ ン 性 と は 無 関 係 の よ うで あ る 。
Ill. LTPに
関 す る 我 々 の 成 果
2002年
の4月 か ら,食 物 ア レル ギ ー の発 症 数,重
篤 度 な どを考 慮 し,特 定 原 材 料5品
目(卵,乳,小
麦,そ ば,落
花 生)に つ い て は,す べ て の流 通 段 階
で の 表 示 が 義 務 付 け られ た(「食 品 衛 生 法 施 行 規 則 及
び 乳 及 び 乳 製 品 の成 分 規 格 等 に関 す る省 令 の一 部 を
改正 す る省 令 等 の 施 行 につ い て 」)。これ に伴 い,11
月 に は 厚 生 労 働 省 か ら これ らを 定 量 す る方 法 と して
森 永 生 科 学 研 究 所55)お よ び 日本 ハ ム56)が 開 発 した
食 物 学 会 誌 ・第62号
ELISA法
が通 知 法 と して 認 定 され た(食 発 第1106001
号)。 しか し,当 初 の 通 知 法 に は 抗 原 の変 性 状 態,抽
出効 率 が 考 慮 され て お らず,発 酵 食 品 の よ うに 加 水
分 解 を 受 け た タ ンパ ク質 に対 す る定 量 性 が 低 い とい
う問 題 点 が あ った 。 これ に対 して本 研 究 室 で は,卵
白 タ ンパ ク質 で あ る オ ボ ム コ イ ドを タ ー ゲ ッ トと し
て免 疫 学 的 定 量 系 の確 立 を試 み た 。 オ ボ ム コ イ ドは
3個 の 類 似 した構 造 を もつ ドメ イ ン か ら構 成 され て
い て,各
ドメ イ ンに3対
のS-S結 合 が存 在 し て い る
た め,熱 や ト リプ シ ンに対 し て抵 抗 性 が あ る。 この
性 質 に 着 目 して,変 性 剤 存 在 下 で使 用 可 能 なELISA
系 を確 立 し,よ
り抽 出効 率 の よい 検 出 系 の 開 発 に 成
功 して い る57・58)。
一 方,こ
れ ま で に 述 べ て きた よ うに,LTPは
植 物
共 通 に 存 在 す る汎 ア レル ゲ ン と し て 注 目さ れ て お
り,構 造 上 の特 徴 か ら熱 安 定 性 が 高 い こ とや 消 化 酵
素 に対 す る抵 抗 性 の 高 い こ とが性 質 と して あ げ られ
て い る。 また,低
分 子 で可 溶 性 で あ る た め 食 品 か ら
の 抽 出 が 容 易 で あ る こ とが予 測 で き る。 そ こで 我 々
は 一 昨年,小 麦LTPに
着 目 して ポ リク ロー ナ ル抗 体
を 用 い た 発 酵 食 品 中 の小 麦 使 用 量 の評 価 系 を 確 立 し
た59)。
本 法 に よ る発 酵 食 品 の 定 量 結 果 を表4に
示 す 。
比 較 と して,通 知 法 で あ る森 永 生 科 学 研 究 所 製 の小
麦 グ リア ジ ン キ ッ トに よ る定 量 を 行 った 。 こ の定 量
系 は 発 酵 過 程 を 経 る食 品 中 で は グ リア ジ ンが 加 水 分
解 され て い る場 合 が 多 い た め,正 確 な値 を 出 す こ と
が 困 難 で あ る。 ビー ルAは
普 通 の 大 麦 ビー ル で あ る
が,ビ ー ルBは
小 麦 添 加 ピー ル で あ る。通 知 法 で は
大 麦 に対 す る交 差 反 応 性 のた め,ビ ー ルAに
定 量 値
が 出 て し ま う。一 方,小 麦LTP定
量 系 で は ビー ルA
表4
発 酵 食 品 中 小 麦Lrpの
定 量
小 麦LTP定
量 系 と通 知 法 小 麦 グ リア ジ ン キ ッ トを 使
用 して 発 酵 食 品 を 定 量 した 結 果 を示 す 。
サ ン プ ル 名 小 麦 タ ン パ ク 質(μg!9)LTP定
量 系 グ リア ジ ン定 量 系
図4
LTPの
三 次 構 造
小麦LTP1の
三 次 構 造 を 示 した 。4本 の α一ヘ リ ック
ス構 造 か ら成 り,中 心 部 分 に は疎 水 性 ア ミノ酸 で 占
め られ た トンネ ル 状 の空 洞 が 存 在 す る。 そ の空 洞 部
分 に2つ
の リ ゾ ホ ス フ ァチ ジ ル コ リン(*)が
結 合
して い る。 (N:N末
端,C:C末
端)
醤 油
A
B
C
D
56 73 ビ ー ル A B 86 0.16 :1検出限界以下
平 成19年12月(2007年)
で は 検 出 限 界 以 下 で 測 定 で き な い が,ビ ー ルBで
は
小 麦 タ ンパ ク質 換 算 した 値 で 通 知 法 よ り約50倍
高
い値 が 得 られ た。そ の 上,醤 油 で も定 量 可 能 で あ る。
つ ま り,本 法 は 通 知 法ELISAよ
り大 麦 に 対 す る交 差
反 応 性 が 低 く,か つ 醤 油 の よ うな発 酵 食 品 に も応 用
可 能 な小 麦 使 用 量 の評 価 系 で あ る こ とが 示 さ れ た 。
さ らに 我 々 は小 麦ITPに
対 す る モ ノ クmナ
ル 抗 体
を 作 製 し,よ
り特 異 性 が 高 く,量 的 に安 定 な 定 量 系
を 確 立 中 で あ る(特 願2005-348804)。
な お,通 知 法
は 現 在 で は我 々の オ ボ ム コ イ ドの系 同 様,変 性 剤 存
在 下 で 定 量 す る よ うに 改 良 され て い る60)。
大 麦 に含 ま れ るLTPは
ビー ル の 泡 の安 定 性 に 寄 与
す るな ど,ビ ー ル の 品 質 に重 要 な タ ンパ ク質 で あ り,
加 熱 や タ ン パ ク質 分 解 酵 素 に 耐 性 を 持 つ ビー ル ア レ
ル ゲ ン と し て 問 題 と な っ て い る61・62)。
そ こ で まず ,
食 物 ア レル ギ ー 患 者 血 清 の 大 麦L1'Pに 対 す るIgEの
存 在 を ウ ェ ス タ ン解 析 に よ り調 べ た(図5)。
抽 出 さ
れ た 大 麦 タ ンパ ク質 の 中 で もLrpが
最 も強 く反 応 を
示 した こ とか ら,1∫rpが 強 い 抗 原 性 を 示 す こ とを 確
認 で きた 。 また,大 麦LTPに
対 す る ポ リク ロー ナ ル
抗 体 を 用 い た サ ン ドイ ッチELISAを
構 築 し,様 々 な
国 の ビー ル 中 の大 麦LTPの
定 量 を行 った(図6)。
同
一gじ 国 で もLTP量
に は バ ラつ きが あ り,製 造 国 とLrp
量 との 関 連 性 は見 られ な か つた。 麦 芽 含 有 量 の異 な
る ビー ル を 測 定 した 結 果 を 図7に 示 す 。 麦 芽 の 含 ま
れ な い ビー ルDで は大 麦LTP量
は 検 出限 界 以 下 だ っ
た が,大 麦 麦 芽45%と
表 示 され て い るCで
は100%
含 有 のAに
対 して 約 半 分 と,麦 芽 含 有 量 に 比例 す る
結 果 とな った 。 しか し,同
じ麦 芽 含 有 量100%のA
とBで
は,LTP量
に 差 が 出 て い るが,こ れ は 実 際 の
麦 芽 使 用 量 と製 造 工 程 が 両 社 で 異 な るた め で は な い
か と考 え られ る。 この よ うに,LTP定
量 値 が 麦 芽 の
使 用 量 に よ っ て 明 らか に変 化 を 示 した こ とか ら,本
定 量 系 は ビー ル に 含 まれ る大 麦LTP量
を 正 確 に 示 す
評 価 系 で あ り,さ らに は,ビ
ー ル の品 質 管 理 へ の応
用 が 可 能 で は な い か と考 え て い る。 実 際,あ
る ビー
ル に 関 し て 同一 品 の 製 造 日の違 い ,工 場 間,ロ ッ ト
間 で の違 い は ほ とん どみ られ な か った 。 また,消 費
者 か ら あ る ビー ル を 飲 ん だ ら轟 麻 疹 が 出 た と の ク
レー ム に 対 し て本 法 に よ る同 ロ ッ ト ビー ル のLTP量
の正 常 性 を 伝 え,少
な く と も主 要 一一ル ア レル ゲ ン
に関 して 異 常 は な い と の科 学 的 根 拠 を 示 す こ とが で
きた 。 本 法 に関 して も現 在 モ ノ クmナ
ル 抗 体 化 が
進 行 して い る。
患 者 血 清N。.
図5 大 麦LTPの 抗 原 性(ウ ェ ス タ ン 解 析) 左 側 はa:分 子 量 マ ー 力 一,bl大 麦 抽 出 液(タ ン パ ク質 と し て10オg), c:大 麦LTP(タ ン パ ク 質 と し て2オg) を そ れ ぞ れ 電 気 泳 動 後CBB染 色 に よ る 検 出 を 行 っ た 。 右 側 は 大 麦 抽 出 液(タ ン パ ク 質 と し て10オg)をPVDF 膜 に 転 写 後,ア レ ル ギ ー 患 者 血 清 に 対 す る 反 応 性 を 調 べ た 。一10一
食 物 学 会 誌 ・第62号
図6
ビー ル の 定 量
抗 大 麦LTPポ
リ ク ロー ナ ル抗 体ELISA定
量 系 にお い て,大 麦LTPを
標 準 品 と して 検 量 線 を作 成 し,市 販 ビー
ル 中 の大 麦LTPの
定 量 を 行 った 。
麦 芽含有量
図7
麦 芽 含 有 量 の異 な る ビー ル の 定 量
抗 大 麦LTPポ
リク ロー ナ ル 抗 体ELISA定
量 系 に お い て,大
麦 麦 芽 含 有 量 表 示 の 異 な る市 販 ビー ル 中 の 大 麦
LTPの
定 量 を 行 っ た 。
平 成19年12月(2007年)
先 に 述 べ た 食 品 へ の 表 示 義 務 項 目5品 目 以 外 に, 表 示 推 奨 項 目 と し て20品 目 が 挙 げ ら れ て い る 。 こ の 中 に,オ レ ン ジ,キ ウ イ,バ ナ ナ,モ モ,リ ン ゴ の5つ の 果 物 が 挙 げ ら れ て い る 。 リ ン ゴLTPは,モ モ,プ ラ ム,サ ク ラ ン ボ な ど の バ ラ 科 果 実 類 と 高 い 相 同 性,交 差 性 を 示 し,重 要 な ア レ ル ゲ ン と な っ て い る こ と は 先 に 述 べ た 通 り で あ る15)。 ま た 推 奨 項 目 に 挙 げ ら れ て い る 果 実 の 中 で リ ン ゴ は,加 工 食 品 に 使 用 さ れ る こ と が 比 較 的 多 い 。 オ レ ン ジ は 柑 橘 類 の 中 で も,生 の ま ま 食 す る こ と も 多 く,ジ ュ ー ス や ジ ャ ム に も 利 用 頻 度 が 高 い 。オ レ ン ジLTPの 研 究 に 関 し て は,モ モLTPに 対 す る ウ サ ギ 抗 血 清 が オ レ ン ジ LTP Y'.交差 し,オ レ ン ジ を 摂 取 し て 何 らか の ア レ ル ギ ー 症 状 が 出 る 患 者 血 清 に お い て オ レ ン ジLZ'Pを 認 識 す るIgEが 存 在 す る と い う報 告 が あ り63),オ レ ン ジLTPと バ ラ科 果 実LTPと の 関 係 は 興 味 深 い と こ ろ で あ る 。 そ こ で 本 研 究 室 で も 果 物 ア レ ル ゲ ン の 解 析,あ る い は 食 品 中 の ア レ ル ゲ ン 定 量 を 目 的 と し て, 現 在 リ ン ゴ お よ び オ レ ン ジLTPの 純 化 に 成 功 し,こ れ ら に 対 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 の 作 製 が 遂 行 中 で あ る 。 LTPは 果 物,野 菜,穀 類 な ど植 物 共 通 に 存 在 す る タ ン パ ク 質 で あ る 。最 終 的 に は1∬'Pを タ ー ゲ ッ ト と し た 総 合 的 な 食 品,ア レ ル ゲ ン評 価 系 へ と拡 大 し て い き た い と 考 え て い る 。謝
辞
本 研 究 室 に お け るLTPプ
ロ ジ ェ ク トの遂 行 に関 与
下 さ った 滋 賀 県 立 大 学 廣 瀬 潤 子 助 教,本 学 ラ ボ ラ ト
リー ス タ ッフ木 津 久 美 子 さ ん,本 学 院生 中 村 美 幸 さ
ん,Lrp関
係 卒 研 生(三
島真 由 子 さ ん,井
口智 恵 さ
ん,枝 裕子 さ ん,松 井 藍 さ ん,山 本 ひ ろ 美 さ ん,芝
田沙 織 さん,中 原 絵 実 さ ん,佐 藤 利 香 さん)並
び に
株 式 会 社 森 永 生 科 学 研 究 所,サ
ン ト リー株 式 会 社 に
厚 く御 礼 中 し上 げ ます 。
(平成19,9,15.受
付)
引 用 文 献
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