• 検索結果がありません。

III. 県央地場・地域産業活性化のための課題 : 情報化時代における「革新的企業」群形成と産・学・官協力

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "III. 県央地場・地域産業活性化のための課題 : 情報化時代における「革新的企業」群形成と産・学・官協力"

Copied!
46
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Ⅱ.

県央地場 ・地域産業活性化 のための課題 一情報化 時

代 にお ける 「

革新的企業」群形成 と産 ・学 ・官協カ ー

姥 名 保 彦 (新潟経営大学教授)

景気回復過程の下で県央地場 ・地域産業 (荏) もバ ブル崩壊 とともに見舞われた経営困難か らよ う や く脱 しつつあるよ うだ。 だがそ うした経営環境の好転がその本格的な改善 に繋が るのか とい うと必 ず しもそ うで はないようだ。何故 な らば経営環境悪化の背景 には国際分業 の進展就中アジアか らの製 品輸入の増大 による競争条件の悪化 とい う構造問題が存在 しているか らだ。 しか も流通 システムにお ける激 しい構造変化が問題 を一層複雑 に しているとい う側面 も見逃せない。筆者 は、 こうした国際分 業 の進展 という構造的な要因を考慮すれば低 ・中付加価値生産分野 における経営困難 の打開 はか な り 難 しく、従 って この地域 の地場 ・地域産業 の存続を計 るためには、基本的には高付加価値生産分野 に 移行す る以外 にないとい う認識 を抱 いている。 そ こで本稿 において筆者 は、以上 の問題意識 に基ず い て、(イ)県央地場 ・地域産業 においては 「高付加価値化」が何故必要なのか、(ロ)その場合 「高付加価値 化

の意味をどのよ うに考えるべ きか、(ロ)そ して 「高付加価化

を達成するためには何が必要なのか-とい う諸点 を考察す る。 そ して以上 の考察 を通 じて、(イ)「高付加価値化」 を巡 る選択肢 としては、技術条件 ・市場構造 の変 化 を共 に考慮 に入れた多面的なアプローチが必要である、(ロ)そ うした立場か ら県央地場 ・地域産業活 性化 を考え るな らば、「革新的企業

群の形成すなわち 「情報化 l・ソフ ト化 ・サ ー ビス化」 とい う

2

1

世紀産業発展のメガ トレン ドに沿 った 「知識集積型産業」構草への移行 とい う問題 に有効 に対応 し得 る経営戦略を伴 ったニュー ・ビジネス企業やベ ンチ ャー ・ビジネス企業群 の形成を促す以外にはない、 (,,)そのための産 ・学 ・官協力 こそが この地域 にとって求 め られている-とす る筆者 の見解 を明 らかに す る。 最後 に、筆者 の見解の妥 当性を検証す るために県央地域 における主要業種 ・産業及 びその産地すな わち金属製品 ・機械産業 (三条 ・燕地域)、繊維産業 (五泉 ・見附 ・加茂)、木工 ・家具業 (加茂) に 関す る若干 のケース ・スタディーを試 みる。 // (荏) ここで県央地嘩 とい うのは、「県央

1

8

市町村」すなわち三条市、加茂市、燕市、 新津市、 白根 市、五泉市、′見附市、田上町、分水町、吉 田町、寺泊町、栄町、小須戸町、村松町、中之 島町、岩室 村、弥彦村、下 田村か らなる地域を指す。

1

県央地場 ・地域産業 と国際分業

一われわれはまず、県央地場 ・地域産業が極 めて厳 しい経営環境 に置かれてお り、且つそれが国際分業 の進展 と密接 に関 っているとい うことを明 らかに してお こう。 - 4 7

(2)

-第

1

経営環境の悪化 と国際分業

1.県央地域企業における経営上の問題点 県央地域企業 は現在如何なる経営上の問題点を抱えているのか。 この点を明快 に示 しているのが県 央地場産業セ ンターの企業 ア ンケー ト調査 (注

1

)である。 それによ れば、当面す る主要課題 として は、(イ)「売 り上 げ受注の停滞 ・減少」 (回答全体 に占める企業数の割合 は

1

9

9

1

年 には

2

5

.4%、

9

2

年 に は

5

8

.

3

%、9

3

年 には

6

6

.

0

%)

、(ロ)「競争 の激化

(同 じく

9

1

3

0

.

0

%

9

2

3

9

.

0%

9

3

5

2

.

8%)

、(/∼

)

「人件費の増加」 (同 じく

9

1

4

8

.

2

%、9

2

4

1

.

7

%、9

3

3

2

.

7

%)

-の三つが挙 げ られてい るが、 注 目 すべ きはその中で 「競争条件の激化」の比重が急速 に上昇 してお り、 しか も

9

3

年 には 「人件費の増加」 を遥かに しのぎ 「売 り上 げ受注の停滞 ・減少」 に急追 していることである。 /ー、

2.

輸入品との競合による競争の激化 ところで、「売 り上 げ受注の停滞 ・減少」がバブル崩壊不況の影響を受 けた ものであ り、 その意 味 ではそれはむ しろ循環的な要因に因 るものであるとも言えるが、それに対 して 「競争条件の激化」 は 構造的な要因に因 るものだとみなければな らない。何故な らば、それは不況の影響 というよりも輸入 品 との競合によって もた らされているか らだ。例えば、三条市及 び三条商工会議所が行 った円高 ア ン ケー ト調査 (注

2

) によれば、「輸入品 との競争激化等 により単価の引 き下 げ要請等契約条件の変更」 を企業経営上の最大の問題点 とす る企業数が最 も多か ったという結果が出されているが、 その ことか らもこの点 は裏づけ られていると言えよう。 以上の ことか らわれわれは、県央地域 において も国際分業の影響 により経営環境が構造的に悪化 し つつあるのではないか という疑念を抱かせ られる。 そこで、われわれは、国際分業の影響 とはそ もそ も如何なる影響を指 しているのか、 またそれは県央地場 ・地域産業 にとって一体何を意味す るのか と いう点を もう少 し掘 り下 げてお く必要があるだろう。

2

国際分業の展開 とその影響

1.二つのルー トを通 じての影響 国際分業の影響 に関 しては問題を二っに整理 して考えてみなければな らない。一つ は海外直接投資 による影響であ り、 いま一つは製品輸入を通 じての影響である。 (1)海外直接投資 による影響 この場合 も問題をさらに二つに分 けなければな らない。一つ は親企業の海外進出による下請 け中 小 ・零細企業の縮小 ・整理問題である。二つには直接投資に伴 う海外生産基地か らの逆輸入 による 影響である。 ① 企業進出問題 まず前者の親企業進出問題 についてはどうか。 まず全国的な状況を概観 してお くと次の通 りで ある。例えば中小企業庁が行 ったアンケー ト調査 (注3)によれば、下請 け中小企業の うち過去

1

年間に親企業か らの受注量が減少 している企業数の割合は

7

7

%

に達 しているが、その理由とし て上 げ られているのは 「親企業の売 り上 げ不振」が

7

4

.

7

%

、「親企業の海外展開で国内生産減少」

(3)

2

7.

3%

、「親企業の リス トラのため」が

2

6

.

9

%

であり、親企業 の海外展開 による国内生産 の減 少 は親企業の リス トラとほぼ同程度の高 い割合を占めている。 しか も今後、 この海外展開要因 は リス トラ要因を遥かに上回 り景気要因にも迫 らvAJとしている点 に注 目を要す る。すなわち、今後

1

年間に予想 される受注量減少の理由として指摘 されているのは、「親企業 の最終製品の需要 回 復困難」が

5

1

.

0

%

、「親企業の海外展開で国内生産減少」が

4

3

.4%、「親企業の リス トラのため」 が

3

3

.

6

%

となっている 以上 のことか らも窺えるように、親企業の海外展開による下請 け企業 とりわけ中小 ・零細企業 への影響 は今後益 々増大 し、その結果、 これ ら企業の整理 ・縮小が大 きく進展す るものとみてお かなければな らないであろう (注

4)

0 新潟県において も親企業進出に伴 う問題 は次第 に大 きくなろうとしているようだ。例えば関東 通商産業局が行 ったア ンケJ ト調査 (注5)によれば、親企業の海外直接投資による 「関連企業

(就中 「周辺企業」すなわち下請 け企業)への発注状況の変化をみてみると、 関連企業全体 の中 で 「削減」が

3

6

%

を も占めてお り全国め場合

(

2

8

%)

を大 きく上回 っているが、 この ことか らも この問題の深刻 さが窺えよう。 (診 逆輸入問題 海外進出による影響 はこれだけではない。進出に伴 い形成 された海外生産基地か ら日本 に向け て逆輸入 される製品 も中小 ・零細企業 に対 して脅威を与えている0 企業進出に伴 い海外現地法人か らの日本への逆輸入 は一貫 して増加 している。 すなわち、近年 日本の逆輸入額 は増大,o一途を辿 ってお り

1

9

9

2

年度にはその規模 は既 に

1

6

0

0

0

億円と日本の総 輸入額の

6

.4%にも達 しているが、その後 も増勢 は衰えず

9

4

年度 にはさ らに倍増 し

3

5

0

0

0

億 円 に上 り総輸入額の

1

4

%

を も占めるに至 っている (注I

6)

。その結果それが国内総生産 に与 え る影 響 も次第 に増大 し

、9

5

年度には逆輸入による生産減少額 は

1

4

兆円を超える規模 に達 しているもの と想定 されている (注7)0 ところで、逆輸入額が最 も大 きい製品分野 は繊維産業等の軽工業であ り、 しか も軽工業の担 い 手が主 として中小企業や地場産業であることを勘案すれば、逆輸入が これ らの産業 ・企業 に与え る影響 もまた看過 しえないであろう。

(

2

)

製品輸入 による影響 しか しなが ら中小企業や地場産業 にとってより重要な問題 は製品輸入 とりわけアジアか らの製品 輸入 による影響である。何故な らばそれは、企業進出やそれに伴 う逆輸入問題のよ うにその影響が いわば局部的な ものに止 まっている訳ではな く、 その範囲が日本経済全体 に及んでお り、 しか もそ れが中小企業や地場産業が依拠す る消費財部門 とくに非耐久消費財部門に大 きく表れているために こうした部門の生産 に特化 している軽工業分野 において とりわけ問題が深刻化 しているか きだ. ① 製品輸入比率の上昇 まず問題の広が りについて。 こ-の点 は日本の製品輸入比率の大 きさと急上昇ぶ りをみれば自ず か ら明 らカモとなろう.すなわち、 日本の製品輸入比率 は

1

9

9

5

年 には

5

9

・1%に達 してお りその水準 は先進国並 の高 い水準 に達 していると言える。 しか もその上昇テ ンポは極 めて早 くその比率 は

8

5

年か ら

1

0

年間では

げ2

倍の水準 に上昇 してお り、 こうした急 テンポで引 き続 き上昇す ることはな いに,して も、その水準 は今後 さらに上昇するものと想定 しておかなければな らないであろう。 そ の意味で製品輸入問題 は今や日本経済全体に及ぶ大 きな問題 となっているのである。

-4

(4)

9-しか もその影響 は消費財部門 とりわけ軽工業品に最 も大 きく及んでいるとい うことも見逃せな い。例えば、財別輸入浸透度 (国内総供給 [国内生産 +輸入] に占める輸入の比率) の

8

5

年か ら

9

5

年 にかけての推移をみてみると、資本財、消費財 ともに上昇 しているが とりわけ非耐久消費財 のそれが最 も上昇 していることが判明す る。 すなわち、鉱工業全体 で はそれ は85年 の

8

.4%か ら

9

5

年 には

1

5

.

0

へ と上昇 しているのであるが、 この うち資本財 は

3

.

2

%

か ら

1

0

.

2

%

へ と上昇 して い る のに対 して消費財の場合には

4

.

8

%

か ら

1

6

.

9

%

へ と上昇 してお り、 さ らに消費財 の中で は耐久 消 費財が

1

.

5

%

か ら

1

0.

9%

へ、非耐久消費財が

7

.

0

%

か ら

2

0

.

8

%

へ とそれぞれ上昇 してお り就 中非耐 久消費財の急上昇ぶ りが窺える (注 8)0 そ して非耐久消費財の中で は軽工業品輸入の影響が最 も再著であることも見逃せない。例 えば 業種別 にアジア現地法人か らの 日本人向け販売比率の

9

0

年か ら

9

3

年 にか けての推 移 をみてみ る と、製造業全体では

1

1

.

8

%

か ら

1

6

.

9

%

に上昇 している中で繊維産業 は

1

0

.1%か ら

3

8

.4%へ上昇 し てお り、同産業が最 も大 きな影響を受 けているという姿が明瞭に浮かび上が っている (注

9)

0 ところで製品輸入の地域別変化をみてみると、 アジアN IES、ASEAN 4カ国及 び中国 か らなる東 アジアの シュアが最 も上昇 してお り

、9

5

年 には

3

9

.

9

%

と最大 の シェアを占めるに至 って いる (注

1

0

)

。従 って消費財を中心 とす る製品輸入の増大 は主 としてアジア地域 か らの製 品輸入 によって担われてお り、 さらにその中心 をなす軽工業品輸入 もアジアか らの ものであると考えて よいであろう。 ② 中小企業 ・地場産業への影響 ところで消費財部門 とりわけ軽工業を主体 とす る非耐久消費財部門 はその生産が主 として中小 企業や地場産業 によって担われているが、その ことは、製品輸入の影響 は中小企業や地場産業 に おいて最 も大 きくな り且つ深刻化す るとい うことを意味す る。例えば中小企業庁 のア ンケー ト調 査 (注

1

1

) によれば、過去

1

年間に

6

5

.

3

%

の企業が出荷額 を減少 させているが、 その うち

3

6

.

6%

の企業が 「輸入品の増加」 によって出荷額 を減少 させ た と して い る。 さ らに業種別 にみ る と、 「輸入品の増加」 を減少の理由に上 げた企業の比率が高 いのは織物

(

6

2

.

7%)

、 衣類

(

5

6

.4%)、 「履 き物 ・靴

」(

7

6

.

5

%)

等主 として軽工業品である。 中小企業や地場産業が輸入品 との競合激化を迫 られ るのは主 として価格面 での不利性が高 まっ ているためであると考え られ る。例えば同上 のア ンケー ト調査で も、納期や品質 については自社 製品の方が有利であるとす る企業の割合が多 いのに対 して価格面で は輸入品の方が有利であると す る企業 の割合が

9

8

%

を も占めている。 そ して こうした価格面での不利性 はアジア就中中国か ら の製品輸入 に最 も強 く表れているが (注

1

2

)

、 この ことは上述 したように と くに消費財部 門 にお いてはアジアか らの製品輸入が増大 していることを反映 した もの とみ られる。 ノ しか も輸入製品 とりわけ軽工業分野 を中心 に したアジア製品 との競合 は今後 さ らに激化す るも の と予想 され る。例 えば同 じく中小企業庁のア ンケー ト調査 (注

1

3

)

によれば、今後輸入品 との 競合が進む とみ る企業 は全体の

6

1

%

を占めるが、その中で特に履 き物 ・靴製造業では

8

7

%

、織物 ・ 衣類製造業では

7

9

%

とい う高率を記録 しているということか らもその ことは容易に理解 されよう。 (3)県央地域 の場合 こうした製品輸入 との競合 は県央地域 において も既 にみ られ る し、 それが今後激化す る可能性が 早 くも指摘 されている。例えば三条商工会議所及 び三条市が行 った伝統的な地場産業 に対す るア ン ケー ト調査 によれば、 自社 と同様な製品の輸入が既 に行われているとす る企業数 は全体の

4

3

%

に も

(5)

及 んであ り、 ほぼ半数近 くが輸入製品 と競合す る可能性があることを認 めている (注

1

4

)

0 無論、競合製品が輸入 されているか らといって、それが直ちに競争激化 に繋が るわけで はない。 例 えば前者の伝統的な地場産業 に関す る調査で も、輸入製品 との競合の影響 を実際にどの程度受 け ているのか とい う点 につ いては、現在既 に 「影響 を受 けている」 としている企業数 はまだ

2

8

.

3%

に 止 まっている (注

1

5

)

0 しか しなが ら、今後競合が激化す るとい う可能性 は否定で きない。すなわち、同上 の伝統的地場 産業調査では、「当面 は心配 はないが、長期的にみた場合影響が大 きい」 とす る企業数 が

5

2

.

7%

に も達 してお り∴それに 「壊滅的な打撃を こうむる」 とす る企業数

1

4

.

1

%

(注

1

6

)

とを合わせ る と、 全体の

7

割近 くが将来 について悲観的に観ているということが判明す る。 以上 の ことか らも解 るように、県央地域 において も輸入製品 との競合問題が今後本格化 し且つ深 刻化す る可能性 は極 めて高 いと考えておかなければな らないであろ う0

2.

低 ・中付加価値生産分野 における構造調整の不可避性 県央地域 における地場産業及 び地域産業 における国際分業の影響が輸入製品 との競合問題を中心 に して既 にかな り大 きくな ってお り、 しか もそれが今後一層深刻化 しかねないということは、特 にアジ ア製品 との厳 しい競争 とりわけ激 しい価格競争 に晒 されている低 ・中付加価値分野 に属す る製品の生 産 ・販売 に従事す る企業 の経営基盤が大 きく動揺 させ され るとい うことを示唆 している。 この点 は既 に県央地域 の企業経営 に も投影 されている。すなわちそれは、上述 した三条商工会議所 及 び三条市が行 ったア ンケー ト調査 によ1/て も、地場産業 の中で も 「売 り上 げ不振」 を経営上 の最大 の問題点ない し課題 とす る企業数が

5

7

%

(注

1

7

)

と 「高齢化問題」 と並んで最大の割合を占めている とい うことか らも窺 えよ う。 また、 日本金属- ウスウエア工業組合の調査で も注 目され る結果が示 さ れている。すなわち、- ウスウエア製品の国内 ・輸 出を合わせた出荷額 は

1

9

9

0

年 の

3

2

4

億 円か ら

9

5

年 には

2

2

0

億円に迄減少 しているが、他方輸入品 は

、9

3

年以降韓国、中国、 タイ等か らの ものが増大 し、

9

0

年 の

7

5

億円か ら

9

5

年 にかけては

2

倍近 い

1

4

9

億円へ と増加 し、国内出荷額 の

1

9

8

億円に迫 る勢 いであ り、従 って上記 出荷額 の減少 は輸入品の急増 に因 るもの七あるとされている (注

1

8

)

0 このように、県央地場 ・地域産業の低 ・中付加価値生産分野 においては、国際分業進展の下での製 品輸入増 を背景 に経営環境 の悪化が進行 し、企業の存続 自体が困難化す るとい う事態 を迎 えつつある とい うのが今 日の状況なのである。 従 って、県央地場 ・地域産業 はその存続を計 ろうとす るな らば否 応な くよ り高級 な製品の生産分野すなわち高付加価値生産分野へ と移行せざるを得ないあであ り、 そ うした意味で低 ・中付加価値生産分野の構造調整が不可避 となっていると言わなければな らないので ある。 (注

1

)㈲新潟県県央地域地場産業 セ ンター 『三条 ・燕産地企業 の現状 と課題』。 (注

2)

三条市 ・三条商工会議所 『円高影響調査集計報告』

(

1

9

9

5

4

月)0 (注

3)

中小企業庁 『企業の海外展開等 による下請 け中小企業への影響調査結果』

(

1

9

9

4

1

1

月)0 (注4)海外直接投資の影響 は下轟 け問題だけではな く雇用問題 を も深刻化 させ る。例えば、通産省 / の予測 によれば直接投資 に伴 う工塊の海外移転 によ って国 内製造業 の雇用 は

2

0

0

0

年 迄 に約

1

2

0

万人喪失す るとされている。 しか も他方での新規雇用機会の創出 は必 ず しも楽観 で きな いとされている。何故 な らば この点で最 も期待 されている情報産業が実際には

1

9

9

1

年か ら

9

4

-5

(6)

1-年 にかけて

1

0

2

万人 もの雇用を減 らしているか らだ。 (朝 日新聞

1

9

9

6

1

1

3

日よ り)。 (注

5)

関東通商産業局 『空洞化実態調査報告書

(

1

9

9

4

1

2

月)。 (注

6)

三村智彦 「急進./製造業のアジア ・ネットワーク」(東洋経済 [

1

9

9

6

.5.

2

8

]p.

2

6

より。 (注

7)

同上。 (注

8)

通産省 『通商 白書

(

1

9

9

6

年版)

p.

1

5

0

より。 (注

9)

同上 p

.

1

5

2

参照。 (注

1

0

)

同上

p.

1

5

1

より。 (注

1

1

)中小企業庁 『輸入品 との競合による中小企業への影響調査結果

』(

1

9

9

4

1

1

月)0 (注

1

2

)

姥名保彦 『地域経済の空洞化 と東アジアーアジアとの共生のために

-』

(

1

9

9

6

3

月) p

.

1

4

1

より。 (注

1

3

)

中小企業庁 『中小企業円高影響調査の結果について

(

1

9

9

5

5

月)0 (注

1

4

)

三条商工会議所 ・三条市 『伝統地場製品技術継承 ・企業活性化 に関す る調査結果報告書 ・提 言書

(

1

9

9

6

3

月)

p

.

1

0

8

参照。 (注

1

5

)

三条商工会議所 ・三条市 『同上

』p

.

1

1

0

参照。 (注

1

6

)

三条商工会議所 ・三条市 『同上

』p.

1

1

4

より。 (注17)三条商工会議所 ・三条市 『同上』p

.

1

2

4

参照。 (注

1

8

)

新潟 日報

1

9

9

6

9

2

1

日より。

2

流通 システムの構造変化 と県央地場 ・地域産業

以上で県央地場 ・地域産業の経営困難が国際分業の進展 による影響 とりわけアジアか らの製品輸入 に よる競争激化 と大 きく関わ っているという点を明 らかに してきたが、 ここで見落 とせないのが流通 シス テムがそれをさらに促進 しているという点である。 この ことを解明す るためにわれわれはまず県央流通 システムが現在 どのような変容を遂げつつあるのか、 さらにそれがどのような意味で地場 ・地域産業の 競争条件激化 に関わるのか という点を検討 しておかなければな らない0

1

流通 システム変化 の実態

1

.三条地域 県央地域 における流通 システムの典型 はいわゆる 「三条卸」 に代表 される産地問屋である。三条卸 とは、 この地域が金属加工業の産地で.あるという性格 に由来 して金属加工製品すなわち 「金物」を中 心 とす る卸業の ことである。 そこで ここではいわゆる金物卸業がどのように変化 しつつあるかを観 る ちとによって三条地域 における流通 システムの変化を窺 う羊とがで きるであろうO ところで、金物卸業 における最近の変化を最 もよ く示す ものとしてわれわれは金物卸商共同組合が 組合員 に対 して行 ったア ンケー ト (注

1

)を挙げることができる. そこで以下では同調査 に基づいて 三条地域 における金属加工製品の流通 システムがどのような変化を遂 げつつあるのかをみてみること に しよう。 `

(7)

(1) 販売先業態の変化 まず、われわれ は販売先 の変化 について現在及 び今後 の両面か ら検討 してみよう。 現状 の販売先業態 については、「建築金物及 び利器工具専門小売 り店」 を対象 とす る組合員数 が 全体の

6

3

.

5

%

を占めてお り最 も多 く、次いで 「金属金物専門小売店」 が同 じく

5

6

.

8%

、 「市 内同業 卸」が同

5

1

.

9

%

、「量販店 (ホーム ・セ ンター、デスカウン ト・ス トアー等

)

が同

4

0

.

7%

をそれぞ れ 占めてお り、既 に現状 において も量販店業態 はかな りの割合 に達 しているいることが注 目される。 こうした中で今後の販売先業態 についてみると、量販店が さらに増大 しその結果従来 の販売業態 が一層後退す る可 能性があることが判明す る。 すなわち、増加傾向にある業態の うち第

1

位が 「量 販店」であ り第

2

位が 「通信販売」であるのに対 して、減少傾向にある業態の うち第

1

位 は 「家庭 金物専門小売店」であ り、「消費地卸」、「市内同業者」、「建築金物及 び利器工具専 門小売店」 が そ 〉れに続 いている。 (2)仕入れ先業態の変化 こうした販売先業態 における変化 は仕入先業態の変化 に結 びっ く可能性を秘めている。 まず現状の仕入先業態をみ ると、「地元の生産者」 を対象 とす る組合員数 が全体 の

3

3

.

8%

を 占め てお り、次 いで丁県外 の生産者」が同 じく

2

0

.

7

%

、「地元 の同業者」が同

2

0

.

3

%

、「県外 の同業者」 が同

1

9.

9

%

、「貿易商社」が同

2

.4%、「その他」 (海外の生産者等か らなる)が同

2

.

2

%

をそれぞれ 占 めてお り、 この ことや、らも窺えるよ うに、現状 においては、国内仕入れ業態が圧倒的な比重 を占め てお り従 って海外業態の比重 は低 いのである。 しか しなが ら、今 後 については様相が異 なるものと想定 され る。何故 な らば、海外業態の比重が 高 まる傾向にあ り、 それ と対照的に地元の業態が大 きく後退す る可能性があるか らだ。すなわち、 増加傾向にある仕入先業態をみると、第

1

位 は 「その他」であ り第

2

位 も 「貿易商社」が占めてお り、「異業種卸」、「県外の生産者」がそれを追 ってお り、逆 に減少傾 向にあ る業態 と して第

1

位 が 「地元 の生産者」、第

2

位が 「地元の同業者」 となっている。 要す るに、三条地域 における金属製品流通 システムは、販売先業態 における量販店 の台頭 に伴 う 1 価格引 き下 げ要求 .(注

2)

の増大 に対応す るために、仕入れ先業態を地元か ら海外 にシフ トさせつ つあるとい う訳である。か くして産地問屋の 「産地離れ」が惹起 されているのである。

2.

燕地域 燕地域 における流通 システムについて も事情 は三条地域 と同様の傾向にあるとみ られ る。 この点 を 燕商業卸団地協同組合が組合員 に対 して行 ったア ンケー ト調査 (注3)によって点検 してみよ う。 まず輸入取引に対す るスタンスを調べてみ ると、(イ)「積極的にす る」 と答えた企業数 は、間接輸入 の場合 には

3

0

社 中

2

社、直接輸入の場合 に●は

3

0

社中

5

社であ り、(ロ)「必要 に応 じて」 と答えた企業数 は、直接輸入の場合 には同 じく

1

4

社、間接輸入の場合には同 じく

1

5

社 に上 っている。 つ まり直接輸入 の場合 は

3

0

社中

1

6

社が間接輸入で は

3

0

社中

2

0

社が輸入 に対 して肯定的に回答 してお り、 この ことか ら も、同地域 の卸業 にとって輸入が既に経営上不可欠の要素 とな っているということが窺えるのである (注4)

さ らに輸入取引の内容 をみると、品 目では鍋及 びケ トル、茶器 の完成品が主 たるものであ り、輸入 先で は韓国、中国、東南 アジア等が中心 をな してお りヨーロッパ、 アメ リカがそれに次 いでいる。 このよ うに、かっては洋食器の輸出に代表 されるように金属製品の輸出に極 めて積極的であ った燕

-5

(8)

3-地域 における卸業者です ら今 日では輸入特 にアジアか らの金属製品輸入 に対 して積極的な姿勢 に転 じ てお り (注

5

)、 しか もこうした傾向は今後一層強 まるもの と想定 され るのである。

2

節 変化の背景

で はこうした流通 システムにおける変化 は何故生 じたのか。 それは要す るに消費市場 の構造変化 とそ れに対す る小売業 の対応 とりわけ大規模小売 り業者の新 たな行動 にあると考え られ る。

1

.消費者ニーズの変化 一多様化 と個性化 われわれはまず消費者 ニーズが大 きく変化 しつつあることを指摘 しなければな らない。 その変化 と は多様化 と個性化である。 まず前者か ら検討 してみよう。 (1)多様化 多様化 とは要す るに消費者 ニーズが一方で 「低価格志向」へ向か う.と同時 に他方では 「品質重視 志 向」へ と向か うことによって、 ニーズが両極分解 しつつあることを指 している。 この点 は中小企 業庁が行 った 「消費者購買動向調査」 の結果 によって も端的に示 されている (図表

1

参照 [本稿 ( 第 Ⅲ部)末尾掲載、以下同 じ])。 で は何故 こうした両極化が生 じたのか。 この点 について新潟産業大学の岡本光治助教授 は 「選択 的消費

の拡大 にあるとされている。すなわち、

(消費者が)生活の足元 を見直 した結果、商品の 価値 と値段のバ ランスを冷徹 にみるようにな った。本当に欲 しいモノには支出を惜 しまないが、 ど うで もいいモノは安価な商品ですませて しまう選択的消費が拡大 している」 と述べてお られる (注 6)。

(

2

)

個性化 個性化 とは何か。 それは 「個性化志向」や 「安全志向」の高 まりを通 じて消費者 ニーズが差別化 の皮合いを強めっっあるとい うことである。 この点 も上述 の 「消費者購買動向調査」 の結果か ら読 み とることがで きる (図表

1

参照)0

2.

大規模小売業者の新 たな行動 こうした消費者 の 「低価格志向」 に対 して流通業者 はどのように対応 しようとしているのか。彼 ら は結局製品輸入の拡大 によってそれに対応 しようとしてお り、そ して とりわけ大規模小売業者がそれ を主導 しているもの とみ られ る。 例えば、中小企業庁 は大規模小売 り業者が価格を引 き下 げるに至 っ た要因を調べているが、それによれば、50%の業者が 「低価格輸 入品十 の増加 を挙 げてお り、 また 「自 ら積極的に価格引 き下 げを行 っている」小売 り業者 は中小小売 り業では15%に止 ま って い るの に 対 して大規模小売業の場合 には31%に達 しているとされている (注7)0 これ らの ことか らも明 らかなように、県央流通 システムにおける変化すなわち産地問屋の 「産地離 れ」 とい うような事態 は消費市場構造 の変化就中消責者の低価格志向 とそれに対す る小売業者 の対応 とりわけ大規模小売 り業者 の新 たな行動すなわち輸入を通 じて低価格製品をアジアか ら大量 に仕入れ るとい う行動 によって引 き起 こされた ものであると考えてよいであろう。 その意味では県央流通 シス テムにおける変化 も単 に一時的な ものではな く構造的な性格を伴 った ものであると考えておかなけれ ばな らない。 そ して こうした流通 システムにおける構造変化 は上記第

1

章で述べた国際分業の影響 と

(9)

くにアジアか らの製品輸入 による競争条件 の変化を反映 した ものであ り同時 にそれをさらに押 し進 め るとい う役割を も果た しているのである。 その意味で県央流通 システムの構造変化 はこの地域 におけ る低 ・中付加価値生産分野 の構造調整を一層促進 していると言わなければな らないであろう。 (注

1

)三条金物卸商協同組合

2

1

世紀 に向けての三条金物卸商の活性化 プラン

(

1

9

9

5

3

月)。 (注

2

)北越銀行 ・ホクギ ン経済研究所が行 った新潟県卸売 り業 の当面す る課題 に関す る調査 によれ ば、「低価格志向 ・値引 き要請」が最大 の課題だ とす る業者 の割 合が最 も大 き く

7

1

.

0%

に達 しているとされ る (図表

2

参照)0 (注 3)燕商菓卸団地協同組合 『物流効率化推進事業報告書

(

1

9

9

5

年度)と (注

4)

輸入 に肯定的な画答社 に醜 しては、輸入額 は約

1

6

億円に達 してお り、 それは対売 り」二げ高比 で約

2

.

3

%

を占めている (同上報告書 p

.

1

2

より)。 (注

5)

輸 出取引については

、3

0

社中

1

4

社が肯定的であるが亘の うち積極的なのが

2

社 にす ぎず輸入 に比べて消極性が 目立 っている (同上報告書 p

.

1

1

より)0 (注

6)

新潟 日報

1

9

9

6

8

'

6

日よ り。 (注

7)

中小企業 白書

(

1

9

9

6

年版)

p.

2

7

4

よ り。

3

高付加価値化」 を巡 る論点 と選択肢

1

高付加価値化論 に関す る論点整理

以上で明 らかに したように、輸入品 との競合激化や産地問屋の 「産地離れ」 などによる経営環境の悪 化 に悩 まされている県央地場 ・地域産業 としては経営困難を打開 し活性化す るためには否応 な く高付加 \ ノ 価値生産分野への移行を余儀な くされているのであるが、'その場合考えておかなければな らないのは、 そ もそ も 「高付加価値化

七 は如何なる意味を持 っているのか とい うことである。 こうした観点か ら高 付加価値化論 を捉えようとす るのであれば、われわれは問題を一旦次の二つの考え方 に整理 してみる必 要 があろう。一つ は依然 として専 ら生産 ・供給 サイ ドか らアプローチす る考え方であ り従来型 の もので ある。 もう一つ は新 しい発想であ りそれは消費 ・需要 サイ ドを重視 しそ とか らアプローチす るものであ る。 1.生産 ・供給サイ ドアプ ローチ (1)技術高度化 による新製品開発論及 び新産業創出論 現在機械産業を中心 にt て競争力概念が価格競争力か ら品質競争力へ と変化 しつつあ り、従 って こうした品質競争力を強化す るな らば 日本の比較優位構造 における一層の高度化 も可能であるとい う見解が打 ち出 され七いるが、その代表例 は通産省の通商 白書

(

1

9

9

5

年版)のそれである。そ して、 こうした観点 に立 って提起 されたのが機械系技術高度化 による 「高付加価値化」論であ り'それを受 けた新製品開発論や新産業創出論である。 例えば新潟県 において も、機械系技術を軸 に して同県 の産業構造 を高度化 し且つ高付加価値化 し て行 くべ きであるとす る考え方が有力である。 その代表的な もの としては、㈱産業立地研究所が打 - 5 5

(10)

-ち出 した 「機械系技術を核 に した将来の新潟県の産業像」を挙 げることがで きよう (図表

3

参照)0 また同研究所 は、県央地域 とりわけ三条 ・燕地域 においては特 に産業機械関連事業 ・製品分野が有 望 であると指摘 しているが この点 も具体性 に富んでお り注 目される (注

1

)。 (2)技術高度化論 の問題点 だが、 こうした機械系技術高度化 による 「高付加価値化」論 を新潟県 に機械的に持 ち込むだけで 果た して問題が解決す るだろうか。 そ もそ も機械系技術高度化 による品質競争力強化を通 じて比較優位構造高度化が可能 になるのは 機械産業 における高度な水平分業の達成 によってであるが、そ うした水平分業 は実 は企業内分業 に よって主導 された製品内分業 によって初めて可能 になるなるのであって、 しか も企業内分業 はそ も そ も企業の海外進出すなわち多国籍企業化を通 じて促進 されるのである (注

2

)。 従 って主 と して 多国籍企業 ない しはその関連企業か ら成 り立 っている地域ない しはローカルで はあ って も独立系企 業 を主体 に して高度な機械工業が既 に集積 している地域 (もっともこうした地域 は数少 ないが) に おいては品質競争力の強化を通 じた比較優位構造 の高度化 も可能であるか もしれないが、 そ うした 条件を備えていないか、 もしくはそれが不十分な地域ではその ことを達成す ることは必ず しも容易 な ことで はないと言えよう。 で は新潟県 とりわけ県央地域 にはそ うした条件が備わ っているのだろうか。結論的に言 って、県 央地域 における産業集積及 び技術集積の特性か らみてそ うした条件 には必ず しも恵 まれているとは 言 い難 い。 まず県央地域を敢 えて類型化すれば、金属 ・機械系技術の集積地域であるとともに 「消 費財集積地域」 (注3) に も属す るとい うことを理解 しておかなければな らない。 しか もその技 術 集積 は主 として 日用品を対象 とす る金属加工技術を中心 とす るものであ り、 またその技術水準 は底 辺的な生産 ・加工技術 (注4)である。従 って、製品 ・技術面で こうした集積特性 を持っ地域 にお いては、高度な機械工業やそれを支える高度機械技術を直線的且つ無媒介的に導入す るだけで は、 期待通 りの効果を上げ得ないのであ って、む しろその地域が持っ特性を最大限 に生 か しなが らしか も技術の高度化 とそれを通 じての製品の高付加価値化 を計 るとい う方が効果的であ り、 その意味で 複眼的思考が求 め られていると言 えよう。 このように、単純且つ一元的な技術高度化論 には限界が存在 しているのであるが、 その ごとが合 意 していることは、専 ら生産 ・供給サイ ドにのみ依拠 した 「高付加価値化」論 だけでは 「高付加価 値化

の達成がかえ って遠 の くということである。

2.

消費 ・需要サイ ドアプ ローチ か くしてわれわれは 「高付加価値化」 に対 してより迂回的で且つ多面的なアプローチを必要 として いるとい うことになる。 そ こで次 に新 しいアプローチすなわち消費 ・需要 サイ ドか らのアプローチが 登場 して くるのである (注5)0 (1)消費 ・需要サイ ドアプローチの根拠 まず消費 ・需要 サイ ドアプローチの根拠 は何か。 それは既 に指摘 した 「消費市場構造 の変化」 に 求 め られ得 よう (注6)0「消費市場構造の変化

すなわち消費構造の多様化 と個性化 とは、-方で 、 消費者の 「低価格志向」 を強めるとともに他方ではその 「品質志向」や 「安全性志 向」 を強めてい し るとい うことであるが、 ここでは後者 に注 目 し且つそれに依拠 して 「高付加価値化」 を考 えてみよ うとい う訳である。

(11)

(2)生産 システムの ソフ ト化 消費構造 における多様化 と個性化 は当然の ことなが ら消費財の生産 システムにおける変化 を迫 る ことになる。 生産 システムにおける変化 とは一体何か。 それは一言で言えば生産 におけるソフ ト的 要素が強 まるとい うことである。 すなわち、消費財生産分野 においては、新 たな需要 に対応す るた めにはデザイ ン性、 ファッション性 そ して ブラン ド性等 の ソフ ト的要素 を強めることが求 め られ る のである。 ところで こうした ソフ ト的要素 を強めるとい うことは結局製品の高級化すなわち 「高付 加価値化」 を計 るとい うことを意味 している。か くして消費構造 の変化 は生産 システムにおけるソ フ ト化 を通 じて 「高付加価値化」 に繋がるのである。 (3) ニ ッチ化 と小規模化 さらに消費構造の変化 は生産 システムの変化を もた らすだけではな く生産方式の変化 を ももた ら す とい うことも指摘 しておかなければな らない。すなわちそれは、市場のニ ッチ化を通 じて これ迄 の大量生産方式か ら多品種少量生産方式への移行を促すのである。 ところで こうした多品種少量生 産方式 は生産主体の小規模化 に繋が る。か くして小規模企業の優位性が クローズア ップされ るので あ る。何故 な らば、専 ら画一的な商品を大量 に生産す るということに対 しては優位性 を発揮 しうる 大企業 も小規模で且つ多様 な商品を生産す るといノう点で は必ず しもそれを発揮 しうるとは限 らず、 こうした生産 に対 して は小回 りの きく中小企業や地場産業の方が機動性を発揮 しうるためにかえ っ て有利であると考 え られ るか らである (注

7)

0

(

4

)

求 め られ る新流通 システム ′ ところで、消費構造 の変化 は生産 システム ・方式の変化のみな らず供給 システム ・方式 における 変化 に も繋が るとい う点を見逃 してはな らない。流通 システムが消費者 の 「低価格志 向」 に傾斜 し それに対応する商品の供給 に特化 して しまうな らば、 それは他方での 「品質志向」や 「1 差別化志向」 とい う消費者の もう一方 のニーズに応える商品の供給が後退 して しまうことにな り、 その結果、生 産 と消費の関係 において新 たに ミスマ ッチが発生す ることになる。 すなわち、 それは流通 システム \ / において生産 と消費 における変化を反映 した新 たな流通 システムが求 め られてお りさ らにそ うした 流通 システムの変化 に対応す る流通手段が必要 とされているとい うことを意味 している。 か くしてわれわれは、消費市場の構造変化を背景 とす る消費 ・需要サイ ドアプローチによる 「高 付加価値化」論 の有効性 とまたその担 い手 としての亘小企業や地場産業 の重要性、 さらには新流通 システムの必要性などを明 らかに し得たのである。

3.

多面的 ・多元的アプ ローチの必要性 だが、 ここで次の二つの点 について留意 してお く必要がある。一つ は、生産 ・供給 サイ ドアプロー チ論 と消費 ・需要サイ ドアプローチ論 は決 して二者択一論ではないということである。 それはあ くま で も問題 を整理す るための便宜的な区分であ って、実際には両者 は決 して分離 されている訳ではない。 そ もそ も市場 は需要 と供給 との関係 によって 成立 しているのであってそのどち らか一方だけで成 り立 つ訳で はない。 に もかかわ らずそれを敢 えて区分 して論ず るのは論点 を明確 にす るためにす ぎない。 実際 に問題 になるのは両者 の関係或 いは組み合わせであるが、それは状況や条件次第 によって様 々に 異 なるのであ ってその意味で相対的な ものである。従 って、 ここで消費 ・需要 サイ ドアプローチを取 り上 げたのは、現在の消費市場 の状況 と県央地域が 「消費財集積地域」 に属す るとい う条件を考慮す れば、消費 ・需要サイ ドアプローチを決 して無視す ることはで きないとい う意味においてであるとい

-5

(12)

7-うことを強調 しておかなければな らないのである。 さらに、今 日においては生産 と消費の結合 はそ も そ も市場 においてのみ行われる訳ではないということも見落 してはな らない。技術条件の変化が市場 を通 じての結合を一層容易に し且つ促進 してお り、 しか もその結合を通 じて新 しい産業を生み出 して いるのだ。すなわちわれわれは、消費構造の変化に基づ く生産 システム ・方式の ソフ ト化 ・小規模化 は 「情報技術」の発展 によって促進 されてお り、またそ うした過程 は新たに 「情報技術」 をキーテク ノロジーとす る産業すなわち 「情報技術融合型産業」 さらには 「知識」 に基礎を置いた産業すなわち 「知識集約型産業」の勃興 に繋がるということを見落 としてほな らないのだ (注

8)

。 その意味でわれ われにとっては、生産 ・供給サイ ドと消費 ・需要サイ ドの双方 における変化すなわち技術条件及び市 場構造の変化を共 に考慮 に入れたアプローチが求め られているということになる (注 9)0 もう一つ は、消費財の生産を重視す るということは他の財の生産を無視す るということではないと い うことだ。最終製品 としての消費財生産のためには生産財、資本財 さらには中間財の投入が不可欠 であ り、従 ってそれに伴 う産業連関や技術連関が発生することになるが、そ うした連関 は地場産業や 地域産業 によって担われ得 るのである (注

1

0

)

。そ して こうした可能性をより一層高 め るためには、 従来 の産地内における 「社会的分業」 に加えて産地間の 「広域的分業」孝 も視野 に入れてお く必要が あろう。 このように、消費財の生産 ・供給を重視す るとともに、それが持つ技術 ・産業連関効果を も 考慮 しなければな らないという意味において多元的なアプローチ も求め られているのである。 か くして 「高付加価値化」のためには、技術条件 ・市場構造の変化及び技術 ・産業連関を も考慮 に 入れた多面的で且っ多元的なアプローチが求めれれているということをわれわれは強調 しておかなけ ればな らないであろう。 それでは、「高付加価値化」を以上 に様な意味で捉えるとすれば、県央地場 ・地域産業 「高付加価 値化」のための課題 は何か ということが次に問われることになるが、その点 に関 してわれわれは以下 でい くつかの問題提起を試みてみよう。

2

「高付加価値化」 に向けての選択肢

1.

「高付加価値化」のための課題 県央地場 ・地域産業 「高付加価値化」のための課題 は以上で述べてきた文脈 に沿 って考えれば以下 の通 りである。 第

1

に、当面 は 「モノづ くり基盤」を強化 し、 また高度技術の導入を計 る努力を続 けなが らも、他 方では将来を見据えた高付加価値化を計 るためには 「ソフ ト競争力」を強めなければな らないという ことだ。すなわち、(イ)製品の生産及び開発面 においては、一方で旧来の付加価値源泉である 「モノづ くり」を主体 とした競争力強化のための努力を引 き続 き払 うとして も、他方では将来の付加価値源泉 であるソフ ト基盤を強化す るために今後 は商品のデザイン性や ファッション性 さらにはブラン ド性を 高めることによってその高級化を計 ること、(ロ)技術内容の高度化のために高度技術の導入 に引 き続 き 努 めるとともに、他方では技術水準 自体を低辺的な生産 ・加工技術水準か らより高度な レベルに迄引 き上 げるために今後 は設計 ・システム技術や製品開発技術など技術分野 において もソフ ト面を強化す ること-など、一方で 「モノづ くり基盤」「強化のための技術開発や製品開発 に当面努 めると共 に、他 方で は将来の付加価値源泉である 「ソフ ト競争力」を も強めるという中長期的な努力 も必要であると

(13)

い うことだ。 第

2

に、技術面でID 「ソフ ト競争力」強化 に関連 して、特 に情報 ソフ ト産業及 びそれに関連す る情 報サー ビス業 の育成 ・発展 に努 めるべ きであるということを強調 してお きたい。 既 に述 べ たよ うに (第

3

章第 1節

3.

参照)、生産 システムを消費構造の変化 に対応 させ る上 で 「情報技術」 の果 たす役 割 は大 きくしか 転それは今後 ます ます増大す るものと想定 され る。 そ うした意味で も 「情報技術」 の 発展 を計 ることは県央地域 にとって も必要な ことであるが、その際、一方ではこれまた先述 したよう にこの地域が金属 ・機械系技術の集積地域であるという地域特性を持 っているとい う利点を技術基盤 として活用す ることによっで情報通信産業の発展を計 るべ きであ り、他方では生産 ・消費のマ ッチ ン グのために 「情報技術」 を活用す るための ソフ ト開発及 びそれに関連 した情報サー ビス業の育成 に努 めるべ きである。 このよ うに、 この地域が持っ技術特性及 び製品特性の双方 を有効 に活用す ることに よって-ー ド、 ソフ ト両面 における 「情報技術」発展 を計 ることによ って さ し当 た って県央地域型 「情報技術融合型産業」 の発展をめざす ことが求 め られているのである。 第3に、地域 のオ リジナル しこブラン ドを確立 し且つそれを高 める必要がある。 高付加価値化 を計 る 性そ して ブラン ド性 を高 めることによって初 めて可能 になるのだが、その ことは県央地域 の場合 も例 外で はない。だが、 この地域 の場合に特 に重要 なのはブラン ド性である。 何故 な らばそれは従来 は産 地問屋、商社、 デパー トさらにはアパ レル等専 ら流通業者や発注元に委ね られてきたために、産地メー カーの独 自ブラン ド性が弱 く商品 イメージの低下 を招 いて きたか らである。従 って商品の高級化 を計 るためには産地 メ丁カーサイ ドを中心 に地域全体 としての ブラン ド性を高めることが不可欠なのであ る。産地問屋の 「産地離 れ」が惹起 されている今 日この点 は特 に強調 されて然 るべ きであろう。 第

4

に、以上で述べた ことは、今 日における 「高付加価値化」 とはやはり最終的には前述 した (第

3

章 [注

8

及 び

9]

参照)「情報化 ・ソフ ト化 ・サーギ ス化」 とい う

2

1

世紀産業社会 の メガ トレン ド に沿 って形成 される 「知識集積型産業」構造への移行 とい う文脈 において理解 され るべ きであるとい うことを意味す るのだが、 その ことは県央地域 における今後の事業展開 もまたこうした観点 に立 って 捉 え られ る必要があるということを示唆 しているとい うことだ。その場合強調 しておかなければな ら ないのは、 こ′う した分野 における 「革新的 ビジネス十 (一往11)す なわ ち 「ニ ュー ・ビジネス (New Business;N.B)」及 び 「ベ ンチ ャー ・ビジネス (VentureBuisiness;V.B)」の重要性 で あ る。 何故 な らば、「知識集約型産業」構造 は前述 したように (第

3

章第

1

3.

参照)技術条件や市場構造変化 とい う条件の下で促進 され る以上、そ こではN.BやV.B台頭の可能性が強 まり且つ その場 合小規模 企 業参入の有利性が高 まるか らである。従 って同分野 にけるN.B企業やV.B企業の育成 ・発展 が課題 と なるが、 その場合 これ ら企業 における 「経営」の意味が大 きく変化す るということも見落 としてはな らない。すなわちそれは、 これ迄のような 「ものづ くり」 に基盤 を置いた 「下請 け ・外注型 の産業 ク / ラスター型」経営か ら研究開発 に基礎を置いた 「情報ユニ ッ ト型 ものづ くり」経営及 び 「研究開発 シ ステム ・ネ ッ トワーク型」経営へ と脱皮 しつつあると指摘 されている (注

1

2

)

。従 って、 こう▲した情 報 ユニ ッ トや研究開発等新 しい経営戟略を伴 った 「自立型企業」 (注

1

3

)

としての

N・B

企業 やⅤ

・B

企業 の育成 ・発展 こそが今 日求 め られているのだ とい うことが強調 されなければな らない。 第5に、N.B企業やV.B企業 は新 しいタイプの地方企業の育成 ・発展 と深 く係わ って い るとい うこ とも指摘 しておかなければな らない。N.BやV.Bは単 に小規模企業の有利性を高 めて い るだ けで はな く地方企業 に も活躍の場 右提供す る。何故な らば、従来 の大規模大量生産方式 は海外や全国市場 を対 - 59

(14)

-象 としている以上大企業 とりわけ中央や大都市 に拠点を置 く大企業 に有利 な方式であるが、新 たに登 場 しつつ ある多品種少量生産方式 は国内市場特 に地方市場 の開拓を も視野 に入れた ものであるだけに 小規模企業 のみな らず地方 に依拠す る企業の有利性を も高 める方式であると言 える。 その意味で地方 企業 の出番が来ているのである。 しか しなが らわれわれは同時 に、 この場合の地方企業 とい うのは従 来型 の大企業下請型企業 や伝統的な地場産業型企業で は必ず しもないとい うことに も留意 しておかな ければな らない。すなわちそれは、地方 に立地す るというメ リッ トを生か しなが らも独 自の経営戦略 を持 ち且つ地方の枠を越 え全国そ して場合 によれば世界を も対象 に して市場 を開拓す る意欲 と条件を 持 った地方企業でなければな らないのであ り、 その意味ではそれ は新 しいタイプの地方企業 と呼ばれ るべ きであろ う (注

1

4

)

。従 って、地方企業 による新製品開発や新分野進出は新 しい経営戦 略 の下 で 行われ ることが求 め られてお り、 それは地方企業 自体が

N.

B

企業化ない しは

V.

B

企業化 す るとい うこ とを も意味 している。地方 における

N.

B

企業や

V.

B

企業の形成 はそ うした意味で 「経営革 新」 を通 じ ての地方企業 の育成 ・発展 と表裏 の関係 にあるということをわれわれは改めて強調 しておかなければ な らない。

2.

サポーティ ング ・システム と地域産業政策 (1)サポーティ ング ・システム 最後 に、 サポーティ ング ・システムの意義 と役割 さらにはそれを支える地域産業政策の課題 につ いて考えておかなければな らない。地域 における経営資源の再編成 は本来市場 メカニズムによって 行われ るべ きものであるが

それが地域社会 にとっては必ず しも望 ま しい結果を もた らす とはか ざ らない。 そ こで、市場 メカニズムによる再編成を地域社会の発展 に繋 げるためには、再編成 を誘導 す るための システムが必要 になるがそれが 「サポーティ ング ・システム」である。 そ してその シス テムを有効 に機能 させ るための手段が地域産業政策である。 そ うした観点 に立 って、上記五つ課題 を達成す るためのサポーティ ング ・システム及 び地域産業政策の課題 を提起す るとそれは以下 の通 りである。 まずサポーティ ング ・システムとしては、(イ)「モノづ くり基盤」強化のためだけで はな く 「ソフ ト競争力」 (注15)を も高めるための地域 システムの形成、」ロ)「知識集積型産業」 へ の移行 を促進 す るための技術的 ・知的イ ンフラ整備 (注

1

6

)

、(Jl)オ リジナル ・ブラン ドの浸透 と一 体化 したマ ー ケテイ ング ・システムの開発 (注17)、(ニ)製販一体化ない し提携のための流通 システムの形成 (注 18)、(ホ)イ ンターネ ッ トの活用 による国際直販 システムの開発 (注19)、(-)技術開発、製品開発及 び 市場開発を総合的 に推進す るために産業集積地域間提携 による 「地域共同開発 ネ ッ トワーク ・シス ' テム」 (注

2

0

)

の形成 一などが求 め られている。 (2)地域産業政策の課題 - 「革新的企業」群形成 と産 ・学 ・官協力 さらに地域産業政策 の課題 としては、(イ

)

N.

B

企業及 び

V.

B

企業支援政策 (注

2

1) を展開す ること、 (ロ)さ らに、「産 ・学 ・官協力」 を単 にモノづ くり基盤強化のための 「技術協力」 と して捉 え るので はな く 「産業 ・社会協力」 (注

2

2

)

として再定義 し、 そ うした観点 に立 って

N・

Ⅴ企業 や

VTB

企業 の中で も特 に上述 した新 しい経営戦略を伴 った企業群すなわち 「革新的企業」群の形成 を促すため の産 ・学 ・官協力を推進す ること-の必要性 をとりあえず強調 してお こう。 (注1)㈱産業立地研究所 『集積 ・地場産業活性化対策調査事業 一産地活性化 のための支援機関の活

(15)

用方策調査』

(

1

9

9

6

3

1

9

日)

p.

9

4

-

9

5

参照。 (注

2)

こ うした分析 は当の通商 白書 自身が行 ってい るところで あ る (通商 白書 [

1

9

9

5

年版]

p.

5

2

-

7

9

参照)0 (注

3)

一般 に産業集積地域 は次の四つに類型化 される。第

1

は、企業城下町型の集積地域であ り、 そ こでは大企業である親企業 と下請 け中小 ・零細企業か らなる垂直的な取引関係が支配的で あ り、 そのため親企業の海外進出などの影響 を最 も受 けや くす、従 って こうした垂直的な関 係 を水平的なそれへ と転換す る必要 に迫 られてお り企業間 ネッ トワークによ って受注先 の多 様化及 び共同受注を達成す ることが課題 とされている地域である。 日立市 などがその典型で ある。第

2

は、基盤的技術集積地域であ り且つ取引関係 も垂直的な関係 と独立系企業 の取引 ネ ッ トワークの双方か ら成 っている地域であるが故 に、独立系企業を中心 とす る研究開発 を 通 じての高付加価値化が可能 な地域である。 浜松市 などがそれである。第

3

は、消費財集積 地域であ り、 そ こで は産地問屋などを媒介 とす る社会的分業 に依拠す る取引が支配的であ っ たお 、産地問屋の 「産地離れ」 などが進展 しているために、技術開発や製品開発 と並んで新 たに地域独 自の市場開発が求め られている地域である。 県央地域 はこの類型 に属す る。最後 は、都市型集積地域であ り、 そこで は上記三つの集積類型が累層化 してお り取引関係 も垂直 的な関係 と独立型企業 の取引 ネ ッ トワークが混在 してお り、技術開発、製品開発及 び市場開 発 に対 して も比較的に全体的に取 り組み得 る条件を有す る地域である。東京都 の大 田区など に代表 され る地域である。 (以上 はあ くまで も 「類型化」であって、 それぞれ の地域 が 自 ら が属す る類型 だけで単独 に成立 している訳ではな く、実際には産業集積が累層化 していると いうことに留意 してお く必要がある。) ′ (注4)技術水準 は一般的に三段階に区分 される。最 も基礎的な技術 は生産 ・加工技術であ り、 それ は(イ)切削 ・研削、溶解除去等の除去加工、(ロ)鋳造 ・鍛造、塑性等の変形加工、卜)溶接、 メ ッ キ等の付着加工 -などか らなる。,中段 は設計 ・システム技術であ り、 それは(イ)製品設計、(ロ) 機械設計、電子設計等の機能設計、(/,)生産設計 -などか らなる。最上段 は製品開発技術であ り、 それは主 に製品計画及 び研究か らなる。 (新潟県、三条 ・燕地域新地場産業集積圏構想 策定協議会 『三条 ・燕地域新地場産業集積圏構想報告書

』(

1

9

8

7

3

月)

p.

6

1

参照)0 (注

5)

通産省の産業構造審議会報告書

2

1

世紀 の産業構造』

(

1

9

9

4

6

月) は、 今後 の産業構造 の 在 り方 を考える上でその観点 を供給 サイ ドか ら需要サイ ドに転換すべ きであるとい う見解を 打 ち出 してお り注 目される (同報告書

p.

1

6

-

1

7

参照)。 しか しなが らそれ は結局 の ところ社 会的ニーズ論 の域 を出てお らず .(同上

p.

1

9

-

2

7

参照、)、従 って同報告書が打 ち出 した産業構 造論 は要す るに社会 システム論 の枠 に止 まっている (同上

p.

6

6

-

6

8

参照)。 無論、ノ社会 シス テム型産業すなわち環境保全や福祉 ・医療等 に携わる産業の重要性 につ いて は決 して否定 さ れ るべ きではない し、そ うした考え方 を提起 した こと自体画期的な ことだ と評価すべ きであ る。 しか しなが らその ことの重要性 を指摘す ることを以て需要構造 の変化 に全て応えた とす るのは些か短絡 に過 ぎると言わなければな らないであろ う。何故 な らば同報告書 は、社会的 ニーズの重視 とい う観点か ら確かに需要構造 における変化 を捉 えてはいるが、 それ はその変 化 の一側面 にす ぎず、 その変化の最 も重要 な側面すなわち消費構造の変化 とい う問題 には一 切触れてはいないか らである。 その意味では同報告書 は需要サイ ドアプローチに立 っている とはいえそれは必ず しも十分 な もの とは言えないのである.なお、 この[産構審報告書 に則 し - 61

(16)

-て新潟県 も 『新潟県

2

1

世紀産業 ビジ ョン』

(

1

9

9

6

6

月) をとりまとめて い るが、 その意 味 で この報告書 も産構審報告書 における問題点をそのまま引 き継 いでいると言 えよう。 (注

6)

「消費市場構造 の変化」 の背景 にはさらに日本経済の 「成熟化」 とい う構造変化が存在 して いるという指摘 も見逃せない。例 えば ロン ドン ・エコノ ミス ト誌 は日本の産業構造 の将来像 について こうした 「成熟化」論 に関連 させて興味深 いコメン トを行 っている。すなわち同誌 は、後述す る ([注

9

]参照)野村総合研究所の リポー トを紹介 しなが ら

、2

1

世紀初頭 には情 報サー ビス業、物流業、廃棄物処理業、住宅産業 さらには レジャー産業 などが最 も伸 びる産 業であると想定 され るが、 これ らの産業 に共通 した特質 は(イ)製造業か らサー ビス業への シフ ト、(ロ)消費市場への依存度の上昇であ り、 それは日本経済の 「成熟化」の反映 に他 な らない としている。

(

TheEc

onomi

s

t"

An UnMI

TI

gat

e

d s

uc

c

e

s

s

'

'Augus

t

3

1

t

h,

1

9

9

6p.

5

5-5

6

参照)。 また 「成熟化」 を背景 とす る産業構造の変化 とい う問題 は先進 国共通 の もので あ るということも強調 しておかなければな らない。すなわちアメ リカで もこうした傾向は顕著 に強 まっている。例えば同国 におて も今後の成長産業 としてやはり健康 ・保険業、 さらにコ ンピュータ ・システム ・アナ リス ト及 びプログラマーなどが挙 げ らて い るが (図表

4-

[1

]

参照)、 そ うした変化の根拠 を考え るとすれば、それはやはり急 テ ンポで進 むサ ー ビス経済 化 (図表

4-

[2

]参照) とい う問題抜 きには考え られない。 さらに敷衛 すれ ば、 同誌 が強調 す る消費市場 を重視す るとい う視点 はアジア市場 の発展 を考慮すれば今後極 めて重要 な意味 を持っ ことになる。何故 な らば、周知のようにアジアにおいてはその経済発展を背景 に所得 水準が大 巾に上昇 しているが、 それ は消費市場の拡大 ・深化を通 じて この地域 における一大 消費市場の発展 に繋がろうとしているか らである。 (例えば タイにおいて は、 中間所得層 の 増大 を反映 して個人消費支出総額 と一人当た り年間個人消費支出が大幅 に増加 している [図 表

5

参照]。 また中国 も所得水準の上昇を背景 に して市場が大 きく伸 びて い るが、 こ う した 拡大す る市場 を目指 してイタ リア ・グッチ、仏 ・エルメス、 スイス ・バ リー等 ヨーロッパの 高級 ブラン ド各社が進出を急 いでいると伝え られる [日本経済新聞

1

9

9

6

1

2

2

6

日参 照]。 そ して、 こうした消費市場の発展の下でアジアの小売業界 は

"

Own-

br

andgoodsde

pe

nd

i

ngonl

oc

almar

ke

tc

ondi

t

i

ons

"

を巡 る激 しい競争 に既 に突入 して い ると指摘 されて い

[

TheEc

onomi

s

t "

Thel

e

s

s

ont

hel

oc

al

sl

e

ar

ntal

i

t

t

l

et

ooqui

c

kl

y"<Se

pe

mbe

r

2

8

t

h,

1

9

9

6

> p.

8

1

-8

2

参照]。)従 って今 日においては消費市場 を重視 す るとい う場 合 われ われ は単 に国内だけで はな くアジア全体を も視野 に入れ るべ きである。 その ことは日本経済 の 「成熟化」 も国際的な文脈 において捉える必要があるということをわれわれに教示 してい る。 このようにわれわれは、消費 ・需要 サイ ドアプローチが単 に国内的な問題であるだけで はな く国際的な含意 を も持 っているのだ とい うことに対 して注意 を払 ってお く必要がある。 (「国際的含意」 とい う場合それは逆 にアジアか らみた日本市場の魅力 とい う問題 に も結 びつ く。 この点 に関 して、例えば叶芳和氏 は、 日本 は自らの国内市場 をアジア諸国の製品輸入か ら守 らなければな らないとい う観点か ら、「国内での ビジネスチ ャンス」 拡大政策 を急 ぎ、 特 に 「輸入急増 に直撃 される地域の産業振興

が今後の重要 なテーマ となるのでそれを 「新 しい産業構造 ビジョン」策定の課題 とすべ きだ と主張 されているが [叶芳和 「アジアの産業 化が 日本市場 を狙 う

<東洋経済>

1

9

9

6

.9.1

4》p.

7

8-8

2

参照]、 こ うした観点 か らも 「国際的含意」 は考慮 されなければな らないのだ。)

図表 2 業界 の顕著 な動 き上位 5 項 目 ( ) は比率 単位 :% 1 2 3 4 5 全 体 低価格化 ( 71 . 0 ) 販売先不振 ( 6 5 . 5 ) 商品多様化 ( 5 8
図表 4 アメ リカにおける産業構造の変化
図表 6 「 情報技術」の発展 ( 1) コンピューター化
図表 7 ア ジア 6 カ国の競争力 と 「 情報技術」 の発展 ( 1 ) アメ リカとアジア諸国の競争力比較
+4

参照

Outline

関連したドキュメント

また,文献 [7] ではGDPの70%を占めるサービス業に おけるIT化を重点的に支援することについて提言して

といったAMr*&#34;&#34;&#34;erⅣfg&#34;'sDreα

テキストマイニング は,大量の構 造化されていないテキスト情報を様々な観点から

Google マップ上で誰もがその情報を閲覧することが可能となる。Google マイマップは、Google マップの情報を基に作成されるため、Google

本事業は、内航海運業界にとって今後の大きな課題となる地球温暖化対策としての省エ

コーポレート・ガバナンスや企業ディスク そして,この頃からエンロンは徐々に業務形態

 グローバルな視点を持つ「世界のリーダー」を養成

少子化と独立行政法人化という二つのうね りが,今,大学に大きな変革を迫ってきてい