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高齢者への地震動による心理学的・生理学的影響

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Academic year: 2021

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高齢者への地震動による心理学的・生理学的影響

1.はじめに

建部謙治圃青木徹彦

宮冶員・天野寛

E

井出政芳

地震時の人への影響に関する研究は、須藤らによって地震に対する意識調査及び心理に ついて学生を対象に行われており、また中島らによって人間の心理・行動に関するアンケ ートが行われている。しかし、高齢者層を対象とした地震動による心理・生理的影響につ いては十分な研究がされているとは言い難い。一方、高齢者を対象にした建部らの研究で は、振動予告による問題や、年齢層別、性別の違いによる人体への影響を明らかにするこ とを目的として観測地震波を用いた振動実験が行われた。しかし、地上波を使用したため 体感振動が弱い、振動実験に対する予期不安による影響の問題が報告されており、それら の改善を行った上で更に精度の高いデータを得る必要がある。また、緊急地震速報の猶予 時間による人への影響についても十分な研究がなされていない。 そのため、本研究では集合住宅高層階を想定した地震動が、高齢者に対して心理的・生 理的にどのように影響するのかを明らかにすることを目的とする。また、緊急地震速報の 告知から振動体験までの猶予時間による心理的・生理的変化を明らかにし、緊急地震速報 の受信から経過時間に余裕がある場合の効果を検討する上での基礎資料を得る。 本研究ではまず昨年の研究からの実験改善点の抽出を行い、実験計画及び実験測定項目 を決定する。その後、予備実験を実施、実験計画に問題がないことを確認したうえで、必 要に応じて実験計画の見直しを行う。その後本実験を実施し、得られた計測データから生 理学的、心理学的な分析・考察を行う。

2.

実 験 概 要 2.1実 験 環 境 実 験 用 居 室 は 、 振 動 台 縦 3.6m X横 3.6m上 に 積 載 荷 重 約 2tの 実 験 用 居 室 を (L:3.6m/W:3.6m/H:2.4r.n)を製作、居室はダイニングを想定し、食器棚やテーブル・椅子 等の家具等を配置して臨場感を演出した。実験に使用する地震波は、地上での震度 7の兵 庫県南部地震で計測された地震波をベースに、 RC造10階を想定した約 l分の揺れ時間の地 震波を作成した。 2.2実験手順と測定項目 実験用居室内には一人ずつ入室してもらい、実験を行う。緊急地震速報から振動体験ま での猶予時間を 0秒と 15秒の 2種類として被験者群を分けた。測定は、生理測定、心理測 定、感覚測定、ビデオ撮影の4項目である。 ① 生 理 測 定 生理測定は被験者の恐怖感やストレスの数値化を行うために被験者の血圧・心拍数及び 唾液アミラーゼ、の計測を行う。まず、予期不安解消のため振動実験開始の 15分後に l匝 目の計測を行い、次に振動実験直後に 2回目の計測を行う。また、後日の安静時に 3回 目の計測を行う。なお、被験者63名のうちの 10名は心電園の計測を行う。 ② 心 理 測 定 振動体験時の被験者の生理的変化や行動と性格との関連性の分析を行うため、振動体験 107

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の別日に被験者の気分状態を評価するエゴ、グラム及び POMS、STAI の心理テストを行う。 また、振動体験前後にSTAI及び地震に関する意識調査 (4段階と 8段階)を行う。 ③ 感 覚 測 定 振動実験の揺れを体験した後に揺れに対する評価を 5段階評価で回答してもらう。感覚 測定は 5項目である。 ④ピデオによる行動観察 本実験の概要を以下に示す。

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日時:2011年11月21日'"'-'12月13日

O

場所:愛知工業大学耐震実験センター

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地震波:1回の揺れ時聞が約 1分、高層階居住を想定した地震波を体験する。 O被験者姿勢:椅子座

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被験者概要:63名(内訳:若年者32名、高齢者31名。内、男性42名、女性21名) "''0 1 . , ,0 140 1拡3 110 持110……一… 一一一 … 川 内 山 市 吋 山 吉 正 明2 事ま 持 告主張期Jfn庇 “ 純 白 … … … “ “ 静 . . . - 働 即 日 一 一 一 岬 間 一 ご す 出Y車 、 ? 。 0:; 読書f蕗3 手ぷき~Mま ZA~ 主主体器均 ffilffr""6",j 図1 血圧平均値 一伊叩tI苦:tt書官 正守山首~) r輯怜主義絞殺 ~n わ3} 4~ 3幸 .1::-;: ? もT 3~ 著書主主 3話 ~9 j~ : g1 訳 、 苦事鈴官竜 空軍筑後 民号式'l~'1主 持 平 均5TA白、的〉 図2 STAI平均値 1)捻れOi")叱容さ ちJ 3蓄アolTl議さ; 12l4-6 j主体平均空$5議終{綴(n崎将 図3 意識アンケート平均値 図 4 感覚評価平均値 3.実験結果 3.1血圧・心拍・唾液アミラーゼ 被験者全体の唾液アミラーゼの値については振動体験後に上昇する傾向にある。平均血 圧値は振動体験後において拡張期 (pく0.05)、収縮期 (pく0.01)で図1に示すように優位に 上昇する。平均心拍数については実験前後において上昇する傾向が見られた。また、 STAI の平均得点は振動体験後において、図2に示すように有意に下降 (pく0.01)する。 図 3は実験前後の被験者全体の意識調査アンケートの平均値を示している。「緊急地震速 報の必要性J、「地震に対する恐怖感j、「地震対策の必要性」、「防災訓練の必要性」、の項目 108

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という考 で意識の向上が見られた。 えが改まる傾向にある。 図4は被験者全体の振動体験に対する感覚評価を調査した結果である。「揺れの大きさ」 については「とても大きしリ、「揺れの強さ」については「とても大きい」、「恐怖感Jにつ いては「かなり感じる」という回答が多い傾向にあり、「体感時間

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については被験者の性 格によりばらつきがある傾向にある。 また「地震時にガスコンロやストープの火が消せる」

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分析・考察 図5は収縮期血圧を年齢層別に比較したものである。若年者群

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、高齢者群

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ともに振動体験後の収縮期血圧が有意に上昇している。また、高齢者群の上昇 量は若年者群と比較して有意に高く

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、若年者群に比べて生理的な影響が大きい事 が考えられる 図

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は猶予時間別の

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(状態不安)の平均得点を比較したものである。振動までに

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秒の猶予があった被験者群について値が有意に下降

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している。このことから十 分な猶予を持って緊急地震速報が伝われば心理的な負担を減らせる事ができると考えられ る。 2 、ι 2 3 1 謝験続 1S草皆殺 tfl~)l} 相酔-]軍事きお坊主} ,m.o 3:!告患 主宰品 ます晶 ,,'&,j} .1:;君 主芯出 l3J)) -+同脱出産'止す,古事総t、電雪量E諸笛;f:;;:J;:!:)叩噌ト誌I.I'E';l],滋織 L害電車急逝ft';-;:,_'r.~:_) E竺れ 主4S 王aD人 王25

25 E主20 主15 : , t ,lU Z亡.5 lOD 総数量持 議獄絵 @ぁl~華字務総Jll)sτ崩君事量H専点 普賢望号苦言 綴l'li設 E台湾官1淳書#1事 ~'J 平均耳立法〈総輸 tü 猶予時間別

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平均得点 綴れの強e 抑制吋要望?生 {f:l獄42) 図6 年齢層別血圧平均値 揺れの大ぎ~ 3 伸神科開略奪紫綬 l.llご32) …-Rl':録達語 {約三J1) 図 5 !2i5 -4男女SIJ不均感覚詳1遜 館事・3生答申霊殿i)IJ罪事党詳繕 男女別感覚評価平均値 図7は年齢層別の感覚評価を比較したものである。高齢者群より若年者群の恐怖感が有 意に強く

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、体感時間も有意に長く

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感じている。このことから高齢者群 の方が振動時に心理的余裕があることが考えられる。 図8は男女別の実験環境に対する感覚評価を比較したものである。男性群より女性群の 方が揺れの強さを有意に強く

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感じており、恐怖感も強い傾向にある。このこと 109 図8 年齢層別感覚評価平均値 図7

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から男性よりも女性の方が振動体験時に心理的な負担が大きいことが考えられる。 相 惨 働 総1忌

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伐品約 間争師向ζE君主"u'著書} 76 74 間 や 怖 事 ? r n E 4 芳 218 n 70 防署"~'Ë記者(~芝 5,主主) 6$ 身 内 一 様 な ど ) を 市 北 司 会 1 4 2 C 巡 同 り る ゑ い ず k h d h u u に 山 凶 蹴 岳 市υ ち が む ム 決 せ る 世 M U F 7 事 由 同 叶 0 4 岳 叫ー模苦患者〈型軽 君主義〉 6>> 動 h q q h γ m 内 も し ね い R 怒 b J T 向 、 ず か ら 瞬 時 れ る 日 強 h H u r l w t F 3 立 日 明 、 域 内 コ 64 主喜重Ji泣 さま勤務 OS.6 A二軍;)平均必}百数l 明開神書聖母語遺言<~宅 Mi主) 性格 (AC)別心拍数平均値 図9は地震時にとる行動の優先順位の平均を年齢層別に比較したものである。高齢者群、 若年者群ともに振動体験後に動かない(何もしない)の優先順位が上昇する傾向にある。 強い振動体験によって、即座に避難行動を取ることが困難で身の安全をはかる為にその場 で様子を見るべきと判断したものと考えられる。 図10は若年者群の ACの値が高い場合と低い場合の平均心拍数を比較したものである。 ACとはエゴグラムの性格診断で分かる従順な子供の心のことで、 ACが高いとストレスを抱 え込みやすい性格と言える。 また、 ACの値が高い場合振動体験後に心拍数が上昇する傾向にあり、 ACの値が低い場合 は心拍数が下降する傾向が見られる。このことから ACの値が高い被験者群には振動体験に よるストレスが、 ACの値が低い被験者群よりも大きく影響し、結果として心拍数の上昇に 繋がっていることが考えられる。 図10 年齢層別地震時優先順位 図9 5. まとめ 今回、高齢者への心理学的・生理学的影響を明らかにする目的で、建物の高層階居住を 想定した振動実験を行った。主な結果は以下の通りである。 生理的変化については、血圧値が振動体験後に上昇し、収縮期血圧の変化量が多い傾向 にある。 心理的変化については、 STAI (状態不安)の被験者全体の傾向を見ると振動直前から振 動直後にかけて状態不安得点が下降する。 また、高齢者の特徴としては、若年者より血圧が高い傾向にあり、実験後の上昇量も高 い傾向にある。若年者より唾液アミラーゼの値が高く、上昇量も多い傾向にあるが、一方 で個人差が大きい。振動体験による恐怖感については若年者よりも小さい傾向にある。こ のように高齢者は心理的な変化が少ない反面、生理的な変化が若年者よりも大きい結果と なった。よって、心理的な余裕が若年者よりもあるため、生理的負担を補うためにも地震 時の対応を周知させることが重要である。 猶予時間による特徴としては、状態不安を示すSTAIの値は直前の場合に若干上昇する傾 向にあるが、猶予時間 15秒の場合は下降する。 性格による特徴としては、従順な子供の心を示す ACの値が高いと振動体験後に心拍数が 上昇する傾向にあり、 ACの値が低いと心拍数が下降する傾向にある。 110

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