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極軟鋼せん断パネルダンパーの耐震性能に関する研究

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(1)

愛知工業大学研究報告 第47号 平 成24年

極軟鋼せん断パネルダンパーの耐震性能に関する研究

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1 .はじめに 1995年の兵庫県南部地震では,高速道路,鉄道の高架 橋など多数の重要公共構造物が甚大な被害を受けた.都 市と都市を結ぶ高速道路や高架橋などの重要構造物の崩 壊により都市機能の麻庫,救急車両の通行,救援物資の 運搬,復旧作業に大きな支障となった.その後, 日本の 主な新設橋梁には免震ゴム支承が設けられるのが一般と なり,耐震性が格段に向上した.しかし,近年の公共投 資削減に伴い,コスト縮減の要求は強く,より経済的な 免震,制震デバイスが求められている 1)2) 現在,広く用いられている免震ゴム支承は設置費用が 上部工の 10%"-'15%を占めており,非常に高コストであ り,また免震ゴム支承を用いていない従来の橋梁と比べ, 桁遊聞が大きくなり,大変形伸縮装置が必要となる 1)2)3) さらに,重量トラック等の交通振動により,照明柱や標 識柱の基部における疲労破壊が発生するなどの,さまざ まな問題が報告されている. そこで,それに代わり,経済的で,エネルギー吸収量 が大きい極軟鋼せん断ノ〈ネルダンパーの利用が考えられ る.著者らは,これまで,パネル隅角部に溶接交点を設

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愛知工業大学大学院建設システム工学専攻

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愛知工業大学都市環境学科土木工学専攻(豊田市) けないことなどの改善を行い,静的漸増繰り返し実験に おいて最大平均せん断ひずみ(最大水平変位とパネル部 有効高さの比)が 70%に達する極軟鋼せん断パネルダン パーを開発したの. 極軟鋼せん断パネルダンパー(以下ダンパー)を橋梁の 耐震設計を行う場合,地震時にダンパーが変形し,累積 損傷による荷重低下,すなわちエネルギー吸収量の低下 を考慮する必要がある. また,ダンパーに対しての静的漸増繰り返し実験は多 く行われているが,一定振幅および実地震波を入力した 動的載荷はほとんど行われておらず,ひずみ速度や温度 上昇に関しての研究は極めて少ない. そこで本研究では,高変形能力を有するダンパーを用 いて,低サイクノレ疲労寿命に着目し,静的および動的一 定振幅実験を行う.また,動的解析ソフト DYM05)を利 用し,ダンパーを設置した橋脚の安全性について検討を 行う.動的解析の結果のうち最も破壊しやすい3種類の 地震応答を用い,地震時の支承部に対する挙動を求め, ダンパーに地震応答履歴を用いた実験を行う.低サイク ル疲労実験と地震応答履歴載荷実験の結果から大変形, 高ひずみ速度で載荷されたダンパーの疲労特性を実験的 に明らかにする.

(2)

愛知工業大学研究報告,第 47号,平成 24年, Vol.47,Mar,2012

2

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実験計画

2

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1

実験供試体 図-1に示すように供試体のせん断パネルおよびリブの 材質は,極軟鋼の LYP100で,厚さや24mmのパネル中央 を谷型に削り (t=12mm),左右に長方形リブを溶接した.パ ネノレ下端はM24のボルトで固定されている.上部は下端 と平行移動できるリンクを設置することによってパネノレ 上端を面内で水平移動をさせている.

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供詩体寸法 2・2実験装置 実験で用いる実験載荷装置を図・2に示す.実験供試体 の下端部を実験装置に固定し,供試体上部は,載荷板と の聞に隙聞を空けた.隙聞を大きくすると制御が困難に なるため隙間の広さを調節できるような構造とした.水 平カは 1000kN動的アクチュエータにより与えた.また, 供試体上部と下部にレーザー変位計を設置し,その差を ダンパーの水平変位とした. 動的アクチュエ}タ 供試体 図

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2

実験装置 3. 低サイクル疲労実験 ダンパーについては低サイクル疲労に関する実験デー タが非常に少ない.そこで,本研究では前述で選んだ供 試体に対し,静的および動的一定振幅実験を行い,低サ イクル疲労寿命を明らかにする. 3・1載荷パターン 静的実験では平均せん断ひずみ速度γvをO.4%/secと し,正負に 20%,30%, 40%,および 50%のせん断ひず み振幅を与える.これらの供試体名は ST とし,そのあ とに振幅の数字を付ける.動的実験では,静的実験と同 じ, 20%~50% の 4 種類のひずみ振幅を与え,それぞれ に載荷振動数 0.5Hz(周期 2秒)および1.0Hz(周期 I秒)の 2 種類の動的載荷を行う.これらの供試体を D05 と D10 とし,そのあとに振幅の数字を付ける.静的および動的 実験の供試体を合計 12体用意する.実験計画を表-1に 示す. 3・2荷重一平均せん断ひずみ履歴曲線 静的および動的実験から得られた結果から得られた, 荷重ー平均せん断ひずみ曲線のうち,せん断ひずみ 30% および 40%の例を図・3 に示す.静的実験では,いずれ も始めの半サイクルで,荷重が除々に増加し,その後の サイクノレにおいてもほぼ一定の荷重値を保っている.動 的載荷では,各サイクノレごとに荷重が低下した.静的実 験は動的実験に比べ,荷重の除下および再載荷の過程で 直線に傾きがみられ,若干菱形となっているが,動的実 験はほぼ矩形を成している. 表一1 低サイクル疲労実験実験計画 静 的 、,章、,、, ,、曲 0.4 (ST) ST司40 40 ST-50 50 005-20 20 40 動 的 005-30 0.5 30 60 (005) 005-40 40 80 50 100 20 80 的 │ 俳30│ 30 120 (010) I 010-40 40 160 50 200 3・3ピーク荷重履歴曲線 静的および動的実験の各サイクノレでの最大荷重をピー ク荷重とする.ピーク荷重の変化の様子を図 4に示す. 同図から静的載荷 (ST-20~ST -50)では,繰り返し回数が 増加しでも荷重は一定を保っているのに対し,動的載荷 では最大荷重まで荷重が増加した後は,急速に低下して いる.この原因はパネルが摩擦により発熱し,剛性が低 下したためと思われる.パネル表面温度は高いもので 600度程度まで上昇した.また,荷重の最大値は動的載 荷の方が約 20覧大きかった.図-4の動的載荷の荷重の低 下の傾き,すなわち荷重低下速度Fv(kN/sec)と平均せん 断ひずみ速度γvとの関係を求め,図示すると図 5のよ うになる.同図から動的載荷における荷重の低下率 Fv は,平均せん断ひずみ速度γVが 50免(/sec)以上で直線的 な関係にあることがわかった. 3・4低サイクル疲労特性 静的および動的一定振幅実験において,本研究では最 大荷重の 70%まで荷重低下した時を破壊と見なし,その 時点の繰り返し回数N70を疲労破壊の回数と定義する.

(3)

極軟鋼せん断パネノレダンパーの耐震性能に関する研究 各実験で得られた繰り返し回数N70をプロットしたものを 図 6に 示 す . 同 図 に 示 す よ う に 各 実 験 点 に 対 し て Manson-Coffin則による近似式を最小自乗法により求め た こ れ を 式 (1)~ (3)に示す.近似式と各実験点はよく一 致している.同一せん断ひずみ振幅を与えた場合,載荷速 度が大きいものほど,疲労サイクル数は低下している. 800

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平均せん断ひずみ速度と街重低下速度の関係

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累積型性ひずみ 一般的に履歴型ダンパ}は,弾性域では損傷は小さく 無視でき,塑性域において劣化する.よって各供試体の 荷重平均せん断ひずみ履歴曲線から,破壊までの累積塑 性せん断ひずみを求めた.平均せん断ひずみ振幅との関 係を調べると図一7のようになる.同図から静的実験は指 数関数的に,動的実験は直線的関係が得られた.また, 同図においてDI0の実験で,累積塑性ひずみはほぼ一定 値を示している.よって本ダ、ンパーの疲労損傷度の限界 値はこれらの平均値として約1800%と見なすことにする. 800 事600 車400 U h 200 800

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疲労曲線 3・6累積エネルギー吸収量 載荷実験によって得られた荷重一平均せん断ひずみ履 歴曲線から累積エネルギー吸収量l:Eを求め,せん断ひ ずみ振幅γ aとの関係を図示すると図-8のようになっ た.本せん断パネルに対して,累積エネノレギー吸収能力 は,載荷加振周波数f=1.OHzの平均値を累積エネノレギー 吸収量の代表値と考え, 890kN. mと見なす.この値は, f=1. OHz付近では,せん断ひずみ振幅,せん断ひずみ速 度に関係なく,ほぼ一定値である.

(4)

愛知工業大学研究報告,第47号,平成24年,Vol.47, Mar, 2012 母

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累積エネルギー吸収量

3.7

破壊モード 載荷実験の破壊時付近の供試体の例を写真 1に示す. 静的実験では,繰り返し増加とともに座屈変形量が大き くなり,パネル隅角部の一つから亀裂を生じ, リブの溶 接部に亀裂が広がり,荷重が低下した.動的実験では, パネルに局部座屈は生せず,繰り返しの増加とともにパ ネル面全体から発熱し,パネルの横方向に赤熱した帯が 現れ,その位置で横方向に破断した.以上のように破壊 モードは静的と動的実験で、異なった (a)ST -30 (22サイクル) (b) D1 0-30(終局) 写真一1破壊モード

4

.

橋梁への実用性についての解析 動的解析ソフト IDYMOJ5)を用いて,橋梁の支承部にダ ンパーを設置する場合を想定し,レベルE地震動に対して 解析を行う.動的解析によって得られたデータから,橋梁 への実用性を検討する.レベノレE地震動は千年に 1度レベ ノレの直下型大地震を想定している.

4

.

1

対象橋梁とそのモデル化 本解析で対象となる橋梁は,橋の動的耐震設計法マニュア ノ レ5)の例題である鉄筋コンクリート橋脚を有する5径間連 続鋼 Iげた橋とする.この橋脚は我国で最も一般的に用い られているものである.対象橋梁の橋軸方向からの概略図 とそのモデルを図 9に示す.橋脚柱部では弾塑a性モデル を,その他は弾性モデルを用いた1質点モデルとした. 4

2極軟鋼せん断パネルダンパーのモデル化 支承部に設置するダンパーの解析モデルは、過去に行 われた静的漸増繰り返し実験から得られた履歴曲線から 図 10に示すような完全弾塑性モデル化したものとする. パネル1枚のせん断抵抗力は600凶,最大変位84mm(最大 平均せん断ひずみは70%である.) (め橋梁の概略図 (b) 橋梁のモデル 図-9 橋梁の概略図およびモデル 800 n u n u n u ハU ハU A 件 d n 守 ( z d 制定 -800 -80 -40 0 40 80 平均せん断ひずみ(%) 図

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パネルダンパーのモデル化

4

3

解析結果およびダンパーの設計 解析を行う際,ダンパーの厚さや高さ,パネルの枚数 を変更することによって様々な抵抗力を再現した.動的 解析を行うことによってダンパーの抵抗力の適用範囲を 決定し設計を行う.解析結果から,道路橋示方書めで記さ れた以下の項目について,本ダンパーを設置した場合の橋脚 およびダンパーへの安全性の音羽岡を行う. (a) 橋梁の照査項目 1. 橋脚の最大応答変位(塑性率) 2. 橋脚の残留変位(無次元化した残留変位) 3. 橋脚のせん断力 (b)パネルダンパーの照査項目 1 ダンパーの限界平均せん断ひずみ 2. ダンパーの限界累積塑性ひずみ

(5)

極軟鋼せん断パネルダンパーの耐震性能に関する研究 安全性の照査結果の一例として, II種地盤に対して道 路橋示方書で与えられた3つの地震波について,橋脚の 塑性率を図・11に,橋脚の残留変位を図・12に示す.図中 に示された破;線および数値は道路橋示方書めによって定 められた算定式による許容値となっており,ここでは1 つの地盤種に対して3波のうち 1つでも許容値を超えた 時点で橋梁が危険であると判定する.橋梁のせん断力に ついても同様の照査を行った. また図岨13はH種地盤において,各抵抗力の解析によ って得られた支承部の応答変位の最大値をプロットした ものである.図中に示された破線は、パネノレ1枚のサイ ズを相似的に拡大することによって得られる抵抗力と最 大変位であり,実線はダンパーの高さを1.3倍にして, 最大変位を調節したものである. 4000

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1

3

パネルダンパーの 平均せん断ひずみの照査(II種地盤) ダンパーの抵抗力を小さくした場合,支承部の最大応 答変位がダンパーの最大変位を超えてしまうとダンパー は破壊されてしまう.よってこれをダンパ」の抵抗力適 応範囲の最小値とする.以上4つの項目から安全性の照 査を行った結果,本研究のダ、ンパーは, 1種地盤では抵 抗力 (F) が 1600kN~F 豆 2900kN, II種地盤では2300kN 孟F孟3100kN、E種地盤では2600kN三日豆 3100kNが適 用範囲となった. 最後に解析結果から得られた応答履歴からダンパーの サイズを変更することで最大平均せん断ひずみを調節す る.一例として,対象とするダンパーは最大せん断ひず みを 50犯と仮定して求めた累積塑性ひずみとダンパーの 抵抗力の関係を図 14に示す.一定振幅実験の結果から 本ダンパーの限界累積塑性ひずみの損傷度の限界値は約 1800九であった.応答解析の結果,最大でも累積塑性ひず みは500%程度と小さく,数回の地震動に耐えられるため, 安全性は十分に確保されていると考えられる.図-14か ら,地盤種によってグラフの傾向に大きな差が表れた. I種地盤では累積塑性ひずみはダンパーの抵抗力の増 加とともに直線的に低下している. II種地盤では共振に より累積塑性ひずみにバラツキが見られた.血種地盤で は全体的に累積塑性ひずみが低く,一定値を保った.こ れはE種地盤では地盤が軟らかく,地盤自体がダンパー と同じ働きをしているためと考えられる. 600 百里 赴 400 恥 合

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パネルダンパーの累積塑性ひずみ 5.地震動応答変位履歴実験 ダンパーのモデル化の妥当性やパネルに内部摩擦によ る温度の影響などがあるかを実験的に確かめる.また一 定振幅実験で、得られた疲労式の妥当性を破壊度によって 検討する.

(6)

愛知工業大学研究報告,第47号,平成24年,

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, 2012 5・1載荷パターン 図-14の各地盤種の累積塑性ひずみから,最も条件の厳 しいパターンを選び,解析を行い,得られた応答変位履歴 を載荷パターンとした.1種地盤ではダンパーの抵抗力が 1600kNと 1-1, II種地盤では抵抗力が2600凶と ll-l,III 種地盤では抵抗力が2600kNと班ー2の組み合わせを採用し た.また載荷終了後に残留変位をOmmlこ戻し,冷却して から実験を繰り返す.荷重が最大荷重の 70%低下した時 点で実験を終了とし,繰り返し載荷回数を求める. 5・2 実験のグループ分け グループを2つに分け,それぞれに対して実験を行い, 結果を考察する.これらのグループを表-2に示す. (1)グループ 1(地盤種の違いによる影響) 5.1節で述べた各地盤種ごとの違いによる影響を調べ る.解析において累積塑性ひずみが最も高かったものを 選んだ.また,地盤種ごとの最大せん断ひずみが同一振 幅70%になるように入力地震波を調節し実験を行う. (2)グループ 2(最大振幅の違いによる影響) グ、ノレープ1の中で最も高い累積塑性ひずみ 507%をも っ地盤種 (ll・1)を選び,最大振幅の最大せん断ひずみ が 50%,70%, 80%になるように入力地震波の振幅を調 節して実験を行う. 司60 陶30 0 30 60 90 平均せん断ひずみ(%) (a)W01-70 1回目 n u Q ノ n u r b % ( ハ U 3 み ず ひ n u 断 ん ゆ せ 一 隅 均 平 内 U r b n u n y nununununununununu. nunununununununU 8 6 4 2 2 4 6 8

2

6

剛 健 (c) W03-70 1回目 表

-

2

実験計画(グループ分け) グルーコ 名前 地震波せん断力│最大振幅 累積塑性ひずみ (kN) r(%)

r

r p(%) W01-70 1 -1 1600 445 W02-70 II -1 2600 70 507 W03-70 m-2 2600 251 W02-50 II -1 2600 50 362 2 W02-70 II -1 2600 70 507 W02-80 II -1 2600 80 580

5

3

履歴曲線 グループ1およびグループ2の実験結果から得られた 履歴曲線のうち I回目,および 2回目をそれぞれ図 15お よび図-16に示す.またW02-70の供試体はどちらのグル ープにも属するため図-15においては省略する.1回目の 載荷では解析値と実験値の荷重に多少の差が生じていた が, 2回目の載荷以降は解析値と実験値でほぼ一致した. よって静的漸増繰り返し実験の結果からモデル化は妥当 であると思われる. 5

4ピーク荷重履歴曲線と温度雇歴曲線 (1)ピーク荷重履歴曲線 1回の実験ごとの最大荷重をここではピーク荷重と呼 ぶ.ピーク荷重曲線は地震応答の回数に対するピーク荷 重の変化である.グループ lのピーク荷重を図一17に, グループ2を図-18に示す. 800 600 400 ~ 200 竺

o

健之00 ・400 -600 -800 -90 一一実験値 三 骨平析{菌j -60 -30 0 30 60 90 平均せん断ひずみ(%) (b) W01-70 2回目 n u n y hU 6 則 ゆ み 3 ず ひ O 断 ん 却 制 値 値 一 一 主

語 ⋮

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ト 。 l l 卜 Q ノ ハ UnununununununUAU ハ U A U A U n U A U n u n u n U 8 6 4 2 2 4 6 8 ( る ) 剛 健 (d) W03-70 2国自 国一15 グループ1の履歴曲線

(7)

極軟鋼せん断パネルダンパーの耐震性能に関する研究 800 600 400

3

200 二 0

t

l

i

・200 -400 -600 明800 -90 800 600 400

3

200 竺 0 ~-200 -400 -600 ・800 ・90 国60 -30 0 30 60 平均せん断ひずみ(%) (a)W02-50 1回目 同60 -30 0 30 60 平均せん断ひずみ(%) (0)W02-70

1

回目 -60 -30 0 30 60 平均せん断ひずみ(%) (e)W02-80 1回目 90 90 90 800 600 400

200

7

o

fJi・200 -400 -600 -800 -90 -60 -30 0 30 60 平均せん断ひずみ(%) (b) W02-50 2回目 明60 開30 0 30 60 平均せん断ひずみ(%) (d) W02-70 2回目

;

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j

J

J

-60 圃30 0 30 60 平均せん断ひずみ(%) (f) W02-80 2回巨 90 90 90 圏一

1

6

グループ

2

の履歴曲線 グノレーフ。1,2いずれも荷重をかけ始めた1回目の地震 応答で,荷重が徐々に増加している.しかし,その後の 地震応答ではほぼ一定の荷重値を保っている.これは一 定振幅実験の静的載荷のピーク荷重履歴と同じ傾向であ る.しかし,一定振幅実験ではパネル表面温度は 6000C 程度上昇したが,地震動応答変位履歴実験ではパネル表 面温度は最大でも 1200C程度しか上昇せず,ピーク荷重 の結果から,パネルの摩擦による材質の軟化は起きず, 荷重低下の影響は大きくなかった.

5

5

累積塑性ひずみ 各試験体の荷重せん断ひずみ履歴曲鵡から得られた 累積塑性ひずみを図 19に示す. グループ1では地盤種によって累積塑性ひずみに差が生 じたこれは各供試体では正側に相当する最大変位を70 %に調整しであるが,負側に相当する最大変位にはバラ ツキおよび,地盤種ごとに波の繰返し回数に差があるた めと考えられる. グループ2では最大振幅が大きくなるにつれて,累積 塑性ひずみも大きくなった.これは最大振幅が大きくな ることによる劣化が起きたためである.W02-50の累積塑 性ひずみは 1848犯であり,一定振幅実験で得られた累積 塑性ひずみは,本ダンパーの限界値である 1800切にほぼ 一致した. 5・6 累積エネルギー吸収量 各供試体の荷重一平均せん断ひずみ履歴曲線から得ら れた累積エネルギー吸収量を図-20に示す. グループ 1,グループ 2共に累積塑性ひずみと同じ傾 向が見られた.

(8)

愛知工業大学研究報告,第47号,平成 24年,

V

o

l. 47,

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a

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, 2012 800

iωor~で\

一 喝-W01・70 ー 占-W02-70 ー-O-W03-70

6 9 12 15 18 載荷回数制) 圏一17グループ 1のピーク荷重 3 -E A プ z , 〆 ク A V 一 凸 V A H V A U B の V A H V A H V 6 5 0 5 B 0 ・ 5 0 的 目 目 立 M 7 5 虫色吟 J﹄

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担 割 醇 時 グループ2 250

制01.70...心2.70リ,,03.7日 1樋地盤 E湿地盤 E積地盤 明日2-50",02.10w02.8口 拒幅E日目儒幅70岨振幅自白唱 図-19 累積塑性ひずみ

5

7

載荷回数 各供試体の載荷回数を表-3に示す.全ての供試体で 5 回以上の載荷に耐えることができた.グループlでは累 積塑性ひずみの結果と同様,負側に相当する最大変位に はバラツキおよび,地盤種ごとに波の繰返し回数に差が あるためと考えられる.グループ2では最大振幅が大き くなるにつれて載荷回数が低下した.これは,ダンパー へ与える正負最大振幅の大きさに大きく影響し,損傷を 受けると考えられる. 表-3 載荷回数 1囲の地震の グループ 地震波 載荷回数 破壊度 D=ljN WOl-70 6 0.17 W02-70 8 0.13 W03-70 7 0.14 W02-50 16 0.06 2 W02-70 8 0.13 W02-80 5 0.20 800 ~600 制 権400

江J200 --O--W02-50 一 也-W02-70 ---O-W02回80

%

3 6

9

12 15 18 載荷回数制) 圏一18グループ2のピーク荷量 1500 グループl グ }G~ プ E

1250

L中00 酬 甚 T50 ~ 1 500 'サ

250 H a

叫 印 刷7日 山 口 指樋50%1IE幅7u弛指幅8[1% 明日1-7口 叫口2.70'!厄H日 I極地盤宜極地鍾 m極地盤 図-20累積エネルギー吸収量 5・8 Miner則による被壊度の検討 地震波などのランダム波に対しての疲労寿命の評価と して

M

i

n

e

r

則を用い,次式

(

1

)

(

2

)

から

1

回の地震波に対 して破壊度を算出し,照査を行う.破壊度Dが1に達し た時,ダンパーは破壊すると考える. Di=njNi. .. (1) D= I: Di' . . (2) Di=破壊度 ni=振幅γ1の回数 Ni=疲労サイクノレ数である. 一定振幅実験から得られた3つの疲労式から破壊度の 計算をした.ダンパーの破壊となる D=1.0を地震動応答 履歴実験から得られた載荷回数で割ることによってl回 の地震動に対する破壊度を算出した.これを実験値(表 2 参照)とし,疲労式による結果と比較したものを図 21に 示す.実験値と疲労式から得られた理論値を比較した結 果,疲労式から得られた破壊度は実験値とどれもほぼ一 致する結果が得られたが, W02-50, W02-70では,疲労式 で推定した破壊度よりも実構造物で生じるであろう実験 値で得た破壊度が下回り,安全側に評価することができ

(9)

極軟鋼せん断パネルダンパーの耐震性能に関する研究 た.しかし, WOl-70, W03一70および, W02-80では,疲労 式による破壊度の推定値は実験値よりも下回っており, 危険側に評価してしまう可能性がある.よってMin巴r則 を用いた破壊度の検討を行う場合には ST(静的実験)で 評価することはできず,D05(動的実験)から得られた疲労 式で評価する必要がある.

0

,25 日2 BD15 笹 口1 口口5 E 6. 結論 \~O j…70

W

E

ー?目 'N03-70

W

口2-5日

W

02-70

W

02:-80 図-21破壊度の検討 本研究は高変形性能を有する極軟鋼せん断パネノレダン パーを用いて,静的および動的一定振幅実験と,橋梁の 適応性に着目し,耐震性能を調べたものである.解析お よび実験によって得られた結論は以下のようにまとめら れる. 1) 一定振幅実験において,荷重一せん断ひずみ履歴曲 線の各サイクノレのピ}ク荷重は,静的載荷では一定 値を保ったのに対し,動的載荷では繰り返しととも に直線的に低下した.これはパネノレが摩擦により発 熱し,岡日性が除々に低下したためと思われる.また, 初めの 2,3サイクノレで達する最大荷重は動的載荷 の方が20%程度大きくなった. 2) 静的および動的一定振幅実験において,本パネルダ ンパーの疲労損傷度の限界累積塑性ひずみで約 1800弘となった. 3) 静的および動的一定振幅実験において,せん断ひず み振幅と繰り返し回数との聞に Manson-Coffin則 の関係から3つの疲労式を導くことができた. 4) 想定地震動を入力した解析結果では,固定支承で安 全性を満足することができなかった橋梁に対して 極軟鋼せん断パネルダンパーを設置したことによ って安全性を確保することができた. 5) 地震動応答履歴実験では,最も厳しい条件として与 えた最大振幅せん断ひずみ 80%に調整したレベル E地震動に対して,載荷回数は 5回まで耐えること ができた. 6) 疲労性能の照査では,累積塑性ひずみで評価した場 合,限界累積塑性ひずみだけでは判断できず,平均 ひずみ振幅の影響が大きい. 7) 疲労式を用いたMiner則で評価した場合, ST(静的 実験)から得られた疲労式で評価を行うと,破壊度 を危険に評価してしまう場合がある.よってD05(動 的実験)から得られた疲労式で破壊度を評価する必 要がある. 参考文献 1) 川島一彦:兵庫県南部地震と今後の耐震設計,特集 最新の耐震設計と施工例,土木技術, 52巻2号, 1997年2月 2) 山本亮明,青木徹彦,鈴木森品:基部に極軟鋼を用 いた銅製橋脚の耐震性能に関する研究,愛知工業大 学“研究報告"

N

o

.

40 (2005) 3) 日本免震構造協会:免震積層ゴム入門,平成9年 9 月 1日 第1版第一刷発行 4) 張超鋒,青木徹彦高変形能を有する極軟鋼せん断 パネ/レダンパーの開発,銅構造論文集,第四巻第72 号、 2011年12月 5) 橋の動的耐震設計方マニュアノレー動的解析および 耐震設計の基礎と応用ー財団法人 土木研究セン ター,平成18年5月 6) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説, V耐震 設計編, 2003年3月

参照

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