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Vol.31 No.9 June 2015 ファームテクジャパン第 31 巻第 9 号平成 27 年 6 月 1 日発行 ( 毎月 1 回 1 日発行 )

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Vol.31 No.9 June 2015 ファームテクジャパン 第31巻第9号 平成27年6月1日発行(毎月1回1日発行)

Vol.31 No.9 June 2015

発行所 じほう (株) 平成二十 七 年六月一日発 行(毎月一日発行)

©

〒     東京都千代田区猿楽町 一 │ 五 │ 一五  猿楽町SSビル T E L 03 │ 3 2 33 │ 636 4( 編 集 ) 3 2 33 │ 6336 ( 購読) 3 2 33 │ 63 41 ( 広告営業) 101-8421 定価 ﹇本体一、九〇〇円+税﹈

(2)

ARTICLES █マスターファイル制度施行から10年/多田宗一,橋本健太郎,矢花直幸  7 █ICH ガイドラインにおける管理戦略および関連用語の概説  /今井昭生,伊井義則,隈井和正,檜山行雄,香取典子  15 【これからの日本薬局方(第4回)】  第十七改正日本薬局方における化学薬品各条作成の取り組み/奥田晴宏  37 █海外メガ企業に学ぶ研究開発戦略(第6回)人材開発/残華淳彦  45 █コンビネーション製品の概要と欧米における規制動向(第2回)/西尾治一  55

█ 蒸気滅菌の原理/Marcel Dion and Wayne Parker (監修)川上浩司,(翻訳)桑内亜紀  59 █ 第5回製剤技師認定試験 問題と解説(5)(応用編)/公益社団法人 日本薬剤学会 製剤技師認定試験委員会  71 █ 微生物試験法Q&A−現場の困った! に答える誌上セミナー(第20回)  /清水袈裟光,近田俊文,鈴木里和,松井真理,鈴木仁人,筒井敦子,柴山恵吾  75 【医薬品容器用ガラスの特性を知る(第3回)】  ガラス表面と液剤の相互作用−ガラス表面反応の洞察−/竹内 稔,Bettine Boltres  79 【医薬品包装設計へのユーザビリティ工学からのアプローチ(第12回)】  アンプルの外観類似性評価方法の検討/大倉典子  83 █ ISPE日本本部レギュラトリー委員会SAM & GMP部会 第31回大会印象記/長屋昭裕  91 【医療機器ソフトウェア−ソフトウェアライフサイクルプロセス(第8回)】一般要求事項/宇喜多義敬  95 █製剤研究者が注目する一押しトピック  97 █医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団ニュース(No.92)/津田重城,最上紀美子  101 INTERVIEW █ 日本の薬科学研究者の貢献に大きな期待 FIP/BPS議長 ジェフ・タッカー氏  29 REPORT █テルモ株式会社 甲府工場 −プレフィルドシリンジの開発・量産化を牽引−  30 █ISPE日本本部 −第13回年次大会を開催−  32 █CPhI JAPAN 2015開催 −過去最大規模で開催−  34 Study of GMP █微生物制御に関する日本薬局方 参考情報の解説/原田敏和,古賀裕香里  109 【図解で学ぶPIC/S GMP(製剤)/第24回】  サイトマスターファイルとバッチ証明書/榊原敏之  119 製剤技術 【製剤と粒子設計】高分子ミセル製剤の開発と臨床応用/西山伸宏  129 ●行政ニュース 126 研究活動における不正行為 対応ガイドライン ●News Topics 135 ◆次号予告 172

■World News Topics 141

ガイダンス関連,GMP関 連,製剤技術関連,原薬関 連,警告書関連 ◇編集顧問 大矢晴彦 横浜国立大学名誉教授 仲井由宣 千葉大学名誉教授 ◇編集委員 川嶋嘉明 愛知学院大学特任教 授・岐阜薬科大学名誉 教授 園部 尚 公立大学法人宮城大学 理事 永井恒司 (財)永井記念薬学国 際交流財団理事長 長江晴男 NPO-QAセンター 代表副理事 製剤技術とGMPの最先端技術情報誌 (Vol.31 No.9) 2015

6

CONTENTS

(3)

 原薬等登録原簿(マスターファイル,以下MF)制度は, 平成17年4月に改正薬事法(現医薬品医療機器法)に基づ き導入された。  この制度は,現在,医薬品医療機器法第80条の6第1 項で,「原薬等を製造する者(外国において製造する者を 含む。)は,その原薬等の名称,成分(成分が不明のもの にあっては,その本質),製法,性状,品質,貯法その 他厚生労働省令で定める事項について,原薬等登録原簿 に登録を受けることができる。」と規定され,任意に登 録することができる制度である。  国内の原薬等製造業者が,MF登録申請する場合,製 造業者自らが申請することになる。一方,外国の原薬等 製造業者がMF登録申請する場合,日本国内に住所を有 する当該登録申請等に係る事務を行う者(原薬等国内管 理人)を選任し,外国の原薬等製造業者は原薬等国内管 理人を通じてMF登録申請を行うことになる。  MF制度については,平成26年11月17日薬食機参発 1117第1号薬食審査発1117第3号「原薬等登録原簿の利 用に関する指針について」(以下,MF通知)の中で,医 薬品,医療機器及び再生医療等製品の承認審査等におい て,申請者以外の者(MF登録者)が保有する製造方法等 の審査に必要な情報を利用し,また,当該MF登録者の 知的財産を保護することを目的とすると同時に,審査事 務の効率化を図るものであることが示されている。  この制度が導入されてから10年を経過したが,いくつ かの問題点が生じている。そのうちの1つが,MFの登 録内容である製造方法と原薬製造所における製造方法間 の齟齬の問題である。

はじめに

 本稿では,MF制度の概要とMF登録内容の齟齬の問 題から見えてくる課題,PMDAで実施している対策な どについて述べる。

(1)MF制度と承認審査

 MFに登録された製造方法などの詳細な情報は,製造 販売業者が製剤の承認申請において,MFを引用した場合, 承認申請書及び添付資料の一部に代わるものとして審査 を受けることとなる。  このMFの資料には,原薬に関する,製造方法ならび に規格及び試験方法に関する資料,安定性に関する資料 などがある。  製造方法などのなかには,知的財産の該当する内容を 含み,MFの登録内容のうち,MF登録者が,製剤の承 認申請者である製造販売業者に開示できない情報もある。 PMDAで行う製剤の承認審査では,MFの登録内容に関 わる審査において,疑義が生じた場合は,MF登録者(外 国製造業者の場合は原薬等国内管理人を通じて)に照会 を行うこととなっている(図1)。

(2)MFの利用

 MFの利用は,医薬品医療機器法施行規則に規定する 手続及び様式に従って,PMDAに登録の申請,登録事 項の変更の申請,登録事項の軽微な変更の届出を行うこ とができる。  以下に掲げる医薬品,医療機器及び再生医療等製品の 製造(輸出されるものを含む)の用に供される原材料等に ついて登録の対象とすることができる。ただし,「医療 機器原材料」及び「容器・包装材」のうち,医療機器に

1.MF制度の概要と登録状況

マスターファイル制度施行から10年

Issues revealed in a decade of Master File system enforcement

医薬品医療機器総合機構 規格基準部

多田宗一,橋本健太郎,矢花直幸

S

OICHI

T

ADA

, K

ENTARO

H

ASHIMOTO

, N

AOYUKI

Y

ABANA

Division of Pharmacopoeia and Standards for Drugs, Offi ce of Standards and Guidelines Development, Pharmaceuticals and Medical Devices Agency(PMDA)

(4)

 近年の特徴としては,MFの登録件数が,200~400件 台前後を推移しているなかで,インド,中国,韓国など アジア地域の製造業者からのMFの登録が増加傾向にある。

(1)齟齬の事例

 製剤の承認申請に伴い,MFの審査において,CTDな どの関係資料との確認,またGMP適合性調査において, MFの登録内容と原薬製造所における製造方法などの確 認が行われる。これらの審査・調査のなかで,MFの登 録内容と原薬製造所の製造実態との齟齬のある事例が見 つかっている。また,すでに製造販売している品目につ いても,同様の齟齬が認められる事例があった。  こうした場合,MF登録者である原薬等製造業者(原 薬等国内管理人を含む),また承認申請者あるいは承認 取得者である製造販売業者から審査管理課に,齟齬の経 緯,再発防止策などを説明するため,顛末書が提出され ている。  平成17年4月にMF制度が導入されてから10年を経過 したが,MFの登録内容の不備から承認審査に支障を来 す事例,製造所での変更管理がMFに反映されない事例 が認められており,運用面でいまだ十分とはいえない状 況にある。  このような状況における問題点を探るため,上記顛末 書の情報提供を受け,齟齬の発見の端緒,齟齬が生じた 原因,再発防止策などの内容を整理してみた。そのなか から,いくつかの事例を紹介する。 【事例1】 〔発見の端緒〕原薬等製造業者がGMP定期適合性調査に 向けて,MFの内容と実際の製造方法を確認したところ

2.MF登録における齟齬の問題

係るものへのMF登録について,実施は未定となっている。 ア 医薬品原薬,中間体及び製剤原料(バルクのうち特 殊な剤型等) イ 新添加剤及びこれまでと配合割合が異なるプレミッ クス添加剤 ウ 医療機器原材料 エ 再生医療等製品原材料(細胞,培地,培地添加物, 細胞加工用資材等) オ 容器・包装材

(3)MF登録者が開示すべき情報

 MFには知的財産を含む内容があり,前述のMF通知で, そのうち開示すべき情報を示している。また同通知で, MF登録内容に変更があった場合は,その原薬を使用す る製剤の製造販売業者に,事前に通知することを求めて いる。これには開示すべき情報の変更も含まれている。 MF登録者が国内製造業者である場合は,MF登録者と 製造販売業者の関係で,情報の共有が求められるが,外 国製造業者がMF登録者の場合は,MF登録者,製造販 売業者の他に原薬等国内管理人の間で,MFに関する情 報の共有が求められる。

(4)MFの登録状況

 制度発足時から2年間は,登録件数も1,000件(新規登 録+変更登録)を超えていたが,3年目を迎えた平成19 年度は606件となり,平成20年度にはさらに減少し,407 件であった。その後,平成21年に711件の登録があったが, これはMF制度発足時には,製造方法など具体的な内容 を記載することなく,いわゆる「簡易登録」を行うこと が可能で,当初「簡易登録」したMFについて,平成22 年3月31日までの記載整備の期限があったことから,登 録件数が増加したものと考えられる(表1)。 表1 MFの登録状況    (登録または変更登録件数の合計) 年度(平成) 登録件数 17 1,766 18 1,207 19 606 20 407 21 711 22 402 23 273 24 341 25 387 26 443 製剤メーカー(製造販売承認申請者) 有効性・安全性・品質(一部) 有効性・安全性・品質(一部) 審査当局 品質・製造 方法データ 品質・製造 方法データ 原薬メーカー 非開示情報 (製法など) MF 登録番号 MF 登録 完全なデータとして審査 図1 MFを引用した製剤の製造販売承認申請のイメージ マスターファイル制度施行から10年 マスターファイル制度施行から10年

(5)

 ICHの品質に関するガイドラインでは,ICH Q8「製 剤開発に関するガイドライン」以降,管理戦略という用 語が出現するようになり,製品品質を保証するためには 製造行為に対して戦略的な思考が必要であると認識され るようになった。ところが,戦略そのものはscienceや technologyではなく思考方法(方法論)であるがために, 定義を普遍的な公式/数式に導くことができない結果, 文言で「管理戦略」を定義化しても,読み手にとって定 義の解釈に差異が生じてしまう可能性が出てきた。ICH Q8では「製品開発戦略は企業や製品によって異なる。 開発の手法及び範囲も一様ではなく,承認申請添付資料 でそれらを概説する必要がある」と述べているが,これ は管理戦略の内容が企業や製品によって異なることを示 しているのであって,ICH Q10で定義されている管理戦 略の定義の解釈に自由度を与えているわけではない。  本厚生労働科学研究「医薬品のライフサイクルを通じ た品質確保と改善に関する研究︲製剤のライフサイクル にわたる品質保証に関する研究︲研究分担者 国立医薬品 食品衛生研究所 香取典子」では,ICH Q8以降新たに出 現した用語の中から,管理戦略という用語が「医薬品の ライフサイクルを通じた品質確保と改善」を実現する上 で特に重要なkeywordと考え,用語の定義の解釈を中心 に医薬品ライフサイクルにおける管理戦略の役割につい て検討を行ってきた。

はじめに

 戦略とは,もともと戦いに勝つための方法や計画を指 す用語であったが,現代では戦いに限らず「ある目標を 達成するために練られる長期的な視点から立案される計 画」の意味でも用いられるようになり,ビジネス等の世 界では広く一般的に使用される用語となった。辞書で解 説される戦略の意味を以下に紹介する。 広辞苑: 戦術より広範囲な作戦計画。各種の戦闘を総合し,戦 争を全局的に運用する方法。(後略) Strategy: オックスフォード現代英英辞典:

a plan that is intended to achieve a particular purpose

オックスフォード新英英辞典:

a plan of action designed to achieve a long-term or overall aim

ロングマン英英辞典:

a planned series of actions for achieving something  これらの解説から,戦略とは「大きな目標を達成する ために,スケールの大きな視点で立案される,広範囲な 作戦計画,全局的に運用する方法」ととらえることがで きる。  なお,「(戦略は)戦術より広範囲な作戦計画」という

1.管理戦略の定義について

ICH ガイドラインにおける管理戦略および

関連用語の概説

Review of control strategy and related terms in ICH guidelines

エーザイ株式会社 日本リージョナルクオリティ統括部1),小野薬品工業株式会社 信頼性保証部2)

塩野義製薬株式会社 信頼性保証本部 品質保証部3),国立医薬品食品衛生研究所4)

今井昭生

1)

,伊井義則

2)

,隈井和正

3)

,檜山行雄

4)

,香取典子

4)

A

KIO

I

MAI1)

,Y

OSHINORI

I

I2)

,K

AZUMASA

K

UMAI3)

,Y

UKIO

H

IYAMA4)

,N

ORIKO

K

ATORI4)

Japan Regional Quality, Quality CFU, Eisai Co., Ltd. 1),Reliability Assurance Division, Ono Pharmaceutical Co., Ltd. 2)

Corporate Quality Assurance Department, Corporate Quality Management Division, Shionogi & Co., Ltd. 3)

(6)

specifications, and the associated methods and frequency of monitoring and control.

 前述した辞書的な意味から考えると,戦略とは,大き な目標を定めそれを達成するために計画を立て実行して いく。目標達成過程での状況変化(環境変化)に応じて作 戦の変更を逐次行っていく。目標達成のために利用可能 なリソース(人,物,金,情報)を有効的に活用していく。 これらが辞書的な意味から思い描かれる戦略のイメージ である。  ところが,ICH Q10の管理戦略の定義には,目標達成 に向けて作戦を実行していくという将来に向けた時間軸 の概念は入っていない。 最新の製品及び製造工程の理解から導かれる,製造プ ロセスの稼働性能及び製品品質を保証する計画された 管理の一式  管理戦略とは,その時点における「計画された管理の 一式(A planned set of controls)」であり,ICH Q10の 定義における「その時点」とは,プロセスバリデーショ ン実施以降の商業生産開始の時点と継続的改善を実施し た時点(図1のStage 3&4)を指している。戦略を「大き 解説に見られるように,戦略(strategy)は,戦術(tactic) と比較されることが多い用語である。戦術(tactic)が局 所的な計画を指すのに対して戦略(strategy)は計画全体 を指す表現であり,戦術(tactic)よりもスケールの大き な視点を示している。  ICH Q10では管理戦略を以下のように定義している。 管理戦略: 最新の製品及び製造工程の理解から導かれる,製造プ ロセスの稼働性能及び製品品質を保証する計画された 管理の一式。管理は,原薬及び製剤の原材料及び構成 資材に関連するパラメータ及び特性,設備及び装置の 運転条件,工程管理,完成品規格及び関連するモニタ リング並びに管理の方法及び頻度を含み得る。 Control Strategy:

A planned set of controls, derived from current product and process understanding, that assures process performance and product quality. The controls can include parameters and attributes related to drug substance and drug product materials and components, facility and equipment operating conditions, in-process controls, finished product

図1 管理戦略のStage 生産部門 生産部門 管理戦略 Stage 3 管理戦略 Stage 4 管理戦略 Stage 2 管理戦略 Stage 1 技術移転 技術移転 管理戦略 フィードバック PV 工業化部門 研究部門 生産部門 継続的な改善 ICH Q10で定義される管理戦略 管理戦略のステージ 説明 Stage 1 (医薬品開発) 目標品質プロファイルを目指した処方・製法検討により得られる目標品質を満た すために必要となる文書化された管理の一式。 Stage 2 (工業化研究) 医薬品開発から導かれる実生産スケールを考慮した,製造ロット毎の製品品質を 保証する計画された管理の一式。 Stage 3 (商業生産開始) 医薬品開発を通じて集積した知識や情報(適用できる場合は,類似製品に対する過 去の製造実績)から導かれる,製造プロセスの稼働性能及び製品品質を保証する計 画された管理の一式。 Stage 4 (継続的な改善) 最新の製品及び製造工程の理解(日常的な工程確認や製品品質の照査の結果)から 導かれる,製造プロセスの稼働性能及び製品品質を保証する計画された管理の一式。 ICH ガイドラインにおける管理戦略および関連用語の概説

(7)

 日本薬局方医薬品各条(以下,各条)の第一の目的は, 医薬品の規格を公的基準として公開し,わが国で流通す る医薬品の品質を保証することである。通常,化学薬品 各条は先発医薬品の規格と実績値をもとに作成される。 その記載事項は,先発医薬品と同等の品質であることを 確認して承認される後発医薬品に対しても適用可能であ ることが求められることから,作成過程でパブリックコ メントが実施され,必要があれば原案は修正される。さ らに最新の科学水準から判断して不適当と判断された規 格は修正される。各条の作成過程は,言い換えると,先 発医薬品に固有の規格をわが国で流通しているすべての 医薬品に普遍化する過程であるといえる。  本稿では第十七改正日本薬局方(以下,JP17)のうち, 特に化学薬品(低分子化学合成医薬品)各条の概要を紹介 するとともに,特に国際調和規格であるモンテルカスト のJP17の取り組みに関して解説する。なお,解説に際 しては,2015年3月までに公開されている各条原案を参 照した。したがって,表1,2,参考1,2の記載内容 は最終的なJP17とは異なる可能性があることに留意い ただきたい。

はじめに

 日本薬局方(以下,日局)は,薬事法で定められた大臣 告示文書である。JP17を作成するにあたって,「第十七 改正日本薬局方作成基本方針」が厚生労働省審査管理課 から事務連絡されている。この中で日本薬局方は,学問・ 技術の進歩と医療需要に応じて,わが国における医薬品 の品質を適正に確保するために必要な規格・基準及び標 準的試験法等を示す公的な規範書であると位置づけられ るとともに,公共,公開の書であること,先進性及び国 際的整合性の維持・確保に応分の役割を果たし,貢献す ることが謳われている。  この方針の基に,JP17作成の5本の柱が掲げられ,重 要医薬品を全面収載することとなっている。 (1)保健医療上重要な医薬品の全面的収載 (2)最新の学問・技術の積極的導入による質的向上 (3)国際化の推進 (4)必要に応じた速やかな部分改正及び行政によるその 円滑な運用 (5)日本薬局方改正過程における透明性の確保及び日本 薬局方の普及  重要な医薬品の収載に際して,優先的に新規収載をす べき品目として,①医療上汎用性があり,かつ必要性が

1.日本薬局方の性格

第十七改正日本薬局方における

化学薬品各条作成の取り組み

Japanese Pharmacopoeia from Now On PART Ⅳ

Eff orts of Preparation for Monographs of Chemical Drugs in the 17th Edition of

Japanese Pharmacopoeia

国立医薬品食品衛生研究所 副所長

奥田晴宏

H

ARUHIRO

O

KUDA

Deputy Director General, National Institute of Health Sciences

これからの日本薬局方

(8)

 JP17では,新たに化学合成医薬品原薬(抗生物質を含 む)として60原薬,化学合成医薬品製剤(抗生物質を含む) では,118製剤が新たに収載される予定である(表1)。 収載された製剤の内訳は,錠剤が約50%を占め,次いで 注射剤,カプセル剤,顆粒剤の順であり,この4種類で 75%を超える(表2)。新規に収載された錠剤には,口腔 内崩壊錠4製剤(うち1つは腸溶性製剤)およびチュアブ ル錠1製剤が含まれ,第十六改正による製剤総則で登場 した剤形が収載されている。なお,配合剤が6製剤含ま れている。  また,カプセル剤14製剤のうち,4製剤が徐放性ある いは腸溶性製剤であり,機能性を付与した製剤が約3割 を占めた。  各条の審議は,原案作成会社が提出した原案と提出さ れた各原薬あるいは製剤の実測データに基づいて行われ る。審議の際に各品目に共通して考慮した事項のうち, 代表的な事項を以下に記載する。

(1)製剤均一性試験

 製剤均一性試験とは,個々の製剤の間での有効成分含 量の均一性の程度を示すための試験である。含量均一性 試験は製剤個々の有効成分の含量を測定し,それぞれの

2.新規収載化学薬品

高いと考えられる医薬品(対象患者が多く,医療現場で 広く用いられている医薬品等),②優先審査がなされた 画期的な医薬品,③代替薬がない医薬品(希少疾病用医 薬品等),④米国薬局方(USP)や欧州薬局方(EP)等に収 載され,国際的に広く使用されている医薬品が位置づけ られた。また,従来は,再審査が終了し,有効性・安全 性の評価が定まった医薬品が原則として収載されてきた が,今後承認される新規開発医薬品については,承認後 一定の期間を経た後に収載することとした。例えば品質, 安全性及び有効性に係る一定の情報を収集することが可 能となり次第,速やかに収載検討対象とするとされ,必 ずしも再審査の終了を待たずともよいこととされている。  最新の学問・技術の積極的導入による質的向上は,医 薬品を各条に収載する際の課題であり,具体的課題とし ては以下の事項に取り組むこととした。  ・確認試験,純度試験,定量法等への最新の分析法の 積極的導入  ・製剤の新規収載に伴う既収載原薬の見直し  ・第十六改正での製剤総則改正に伴う製剤試験の設定  ・製法に依存する不純物の規格設定の考え方の明確化 や試験項目の合理的設定(ヒ素,重金属,類縁物質 等)  ・試験に用いる試料量,試薬・試液量及び溶媒量の低 減化  ・有害試薬の可及的排除  ・動物を使用しない試験法(代替試験法)の検討  ・先端技術応用医薬品に対応した医薬品各条設定の検 討  ・通則に規定する「別に規定する」の適用による適切 かつ柔軟な各条規格の設定(例:統一した規格試験 を設定できない工程由来不純物などや製剤試験の一 部,知的所有権の一部で保護するべき内容)  一方,日本薬局方が公的なものであるため,広く一般 に実施可能なものである必要があり(最先端の分析法は 必ずしも国内で一般化していない場合もある),最新の 科学の取り込みと国内における実施可能性のバ ランスを図りつつ,JP17の新規各条は作成さ れている。 表2 JP17新規収載製剤(化学薬品)の内訳   錠剤 注射剤 カプセル (細粒を顆粒剤 含む) 点眼液剤 シロップ 軟膏 収載 数 57 18 14 11 5 3 3 (%) 48.3% 15.3% 11.9% 9.3% 4.2% 2.5% 2.5%   テープ剤 液剤 眼軟膏 ローション剤 クリーム パップ剤 総数 収載 数 2 1 1 1 1 1 118 (%) 1.7% 0.8% 0.8% 0.8% 0.8% 0.8%   表1 JP17新規収載医薬品の内訳 収載局方 原薬 製剤 添加物 合計 化学薬品#4バイオ 医薬品 合計 化学薬品#4バイオ医薬品 総計 第一追補#1 29 24 5 42 40 2 1 72 第二追補#2 16 15 1 37 35 2 53 日局17#3 22 21 1 44 43 1 1 67 総計 67 60 7 123 118 5 2 192 #1第一追補 日局16第一追補収載各条 #2第二追補 日局16第二追補収載各条 #3JP17 日局16第二追補までに収載されていない各条 #4抗生物質を含む 第十七改正日本薬局方における化学薬品各条作成の取り組み これからの日本薬局方 第4回

参照

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