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自治体法務NAVI Vol.47

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Academic year: 2021

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家の管理に関するアンケート」(図1参照)を実施して現 在の空き家の実態調査と管理方法に関する意見を求め た。2006年7月にまとめた空き家の数は951軒であった が、アンケート結果(図2参照)では、市内全域で1,304 軒と実に5年間で350軒ほど増加し、特に中心市街地に おいて、空き家が増加傾向にあることが分かった。  また、危険な空き家については、市が積極的に解体し てほしいという意見が非常に多かった。問2の「倒壊し そうな家屋で、防犯上危険な家屋の管理方法について」

条例制定の背景及び意義

 2006年豪雪の頃から空き家等の除雪の問題が大きくな り始めた。当時は、合併直後で新市の地域防災計画が未 策定のため「大仙市雪害対策実施要領」を作成して、空 き家等の除雪の問題解決に対応した。この実施要領は冬 季間の雪害のみの対応であり、年間を通した空き家等の 適正な管理の指導をすることができず、空き家の活用も 含め条例の制定の必要性が高まった。  2010年度に庁内で空き家管理に係る法令解釈の検討を 行い、下記の事項を法的措置の根拠とした。 【法的措置の根拠】 ◦事務管理(民法697条) ◦災害時の応急措置及び応急公用負担等(災害対策基本 法62条、64条) ◦違反建築物に対する措置及び保安上危険な建築物等に 対する措置(建築基準法9条1項、10条3項) ◦非常災害時における土地の一時使用等(道路法68条1 項)  2010年度の大雪では、多数の苦情(雪に関する苦情186 件中、空き家に関する苦情が83件)が寄せられ、議会で の質問も相次いだことから、実施要領を廃止し、条例制 定を行うこととした。  2011年10月7日に庁内4部局の8課で空き家の適正管 理に関する条例制定委員会(委員長総務部長)を設置し、 条例制定に向けて検討することになった。委員会では、 市内すべての地域の自治会長・町内会長505人へ「空き

条例に基づく行政代執行の

具体的運用について

〜大仙市空き家等の適正管理に関する条例〜

進藤 久

 大仙市総務部総合防災課長 ★ 自治体発

条例

秋田県大仙市 「空き家の管理に関する」アンケート調査票 【問1】あなたの自治会・町内会等に空き家はありますか? 1.ある 2.ない  問1で「ある」と答えた方にお尋ねします。  ① 空き家は何軒ありますか?  ② そのうち、倒壊しそうな危険な空き家は何軒です か?  ③ そのうち、所有者又は管理者がわからない軒数は 何軒ですか? 【問2】倒壊しそうな家屋で、防犯上危険な家屋の管理方法 についてお伺いします。 1.町内会・自治会等で管理する 2.危険なので町内会・自治会等で監視だけする 3.不動産業者が管理している 4.危険なので所有者に解体するように指導してほしい 5.市で解体してほしい 6.どうしてよいかわからない 図1:各地域の町内会長へ行ったアンケート

(2)

(図3参照)に関する意見では、危険な空き家に苦慮する 実態が浮き彫りになった。「4.危険なので所有者に解体 するように指導してほしい」が65件、「5.市で解体して ほしい」が33件と、市が積極的に関与してほしいとの意 見が多かった。  委員会においても、管理者の所在が不明あるいは所有 者死亡に伴い相続人が不明、管理者に積極的な管理の意 思がないなど、近隣住民が対応に苦慮する意見が多く、 柱などが腐朽し家屋が隣家に倒れかかるおそれがあると か、トタン等が周囲に飛散するおそれがあるなど危険性 が具体的に、住民の生命、身体及び財産を保護すべき立 場から、市が何らかの関与をすべきとの意見がまとまっ た。  これを受け、空き家の適正管理のために助成制度を設 け、さらに危険な空き家については行政代執行により市 が強制執行できる大仙市空き家等の適正管理に関する条 例(案)を作成した。

条例制定の内容と特徴

 条例制定の目的は、空き家等の問題に対する市の対策 や手続を体系化することにより、倒壊等の事故、犯罪、 火災等を防止し、もって市民の安全で安心な暮らしを実 現しようとするものである。  なお、対策には立入検査、措置命令、行政代執行といっ た行政処分も視野に入れていることなどから条例形式を とった。条例の基本理念は、防災・防犯の観点から危険 排除を大きな目的とし、さらに危険な空き家で解体の指 導・勧告に応じた場合には、50万円を限度に解体費の2 分の1の補助金を支給する助成制度も加えた。

条例に基づく初の行政代執行

 かねてから小学校に隣接する危険な空き家5棟に対 し、地域住民や小学校長からの解体の要望書が出ていた。 この空き家は2010年の大雪によって一部倒壊し、写真1 のように2011年の春には風によって屋根のトタンや土木 工事資材の廃材が隣の小学校敷地まで飛散し、非常に危 険な状態になっていた。  2011年5月には、学校からの要請によって市の職員30 人で飛散した廃材を回収、資材庫の中に入れロープで結 んで飛散を防ぐための応急措置をしていた。支所の防災 0 100 200 300 (地域) 大曲 95113 90 173 134 143 93 159 4471 64 80 51 79 神岡 西仙北 中仙 協和 南外 仙北 太田 2011年 0 5 10 (地域) 大曲 神岡 西仙北 中仙 協和 南外 仙北 太田 指導してほしい 市で解体を 分からない 11 5 0 5 6 3 1 3 0 7 10 6 6 6 0 6 9 9 4 2 2 1213 8 4 0 0 4 1 4 2 0 0 4 2 2 1 0 0 8 56 4 0 0 写真1:すでに半壊して危険な空き家の1棟

(3)

ならない。この2週間の空白期間を埋めるため、事前に 所有者に弁明書(経済的理由で勧告に応じることができ ない旨)の提出を助言しておき、2月6日に受理した。  これを受け、2月8日に1週間後を履行期限とした措 置命令書を送付、不履行を確認した後で、いよいよ行政 代執行による解体工事発注の手続に入った。解体工事の 予算は予備費とし、建築住宅課へ工事手続の発注業務を 委託した。建築住宅課では立入調査結果に基づいて工事 の見積設計(設計図、内訳書、数量調書の作成)を実施し、 工事額を254万1,000円で市長協議を行った上で、条例13 条の規定に基づく代執行の手続に入った。2月22日に2 月29日を履行期限とした行政代執行法3条1項に基づく 戒告の行政処分を行った。  本件については緊急性を要するとして随意契約にて2 社による見積り合わせを行った結果、3月1日に178万 5,000円で工期が3月2日から3月30日までの工事契約 を締結した。同日、3月5日に解体と廃材撤去を行う旨 の代執行令書を届けたが、その際に所有者自身が必要な 財産(自家用車が1台車庫に入っていた)を持ち出して いただくため、3月2日に敷地に除雪機械を入れて排雪 作業を行う許可をもらった。 担当職員が再三にわたり所有者に解体を要請したが放置 されたままであった。

条例に基づく行政代執行の

具体的運用について

(1)行政代執行を実施するに当たっての準備  条例制定後の2012年1月になって、立入調査・助言指 導・勧告・命令・助成制度・代執行を行うための様式や 事務手続等の基準を示した施行規則を作成した。  また、災害時危険家屋の応急危険度判定士の資格を持 つ建築住宅課の職員10人で、空き家の不良度判定調査の 研修会を行った。  この空き家5棟の不良度判定も行ったが、いずれも解 体すべきとの判定結果を受け、1月26日に施行規則と代 執行を視野に入れた空き家条例による解体と廃材撤去の 勧告を行うための市長決裁を経て、翌27日に空き家の所 有者へ履行期限を2月3日と定め、勧告をした。 (2)代執行費用の積算と契約  次に行う条例12条の命令は行政処分となるため、所有 者に行政手続条例に基づく弁明の機会を付与しなければ 自治体発

条例

秋田県大仙市 図4:行政代執行の実施計画書 処理手順 担 当 2012年1月 2月 3月 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 月 火 水 木 金 土日月 火 水 木 金 土日月 火 水 木 金 土日月 火 水 木 金土 日月 火 水 木 金 土日月 火 水 木 金 土日月 火 水 木 金 土日月 火 水 木 金 土日月 火 水 木 金 土日月 火 水 木金土日月 火 水 木 金 苦情の申出 総務課 調査票作成 現場調査 所有者の把握 建築 住宅課 物件情報調査 台帳登録 立入調査 解体 業者 危険度判定 処理検討会 助言・指導 勧 告 総合 防災課 履行の監視 弁明書受理 審 査 採 決 解体見積依頼 予備費流用 解体作業委託 空き家 所有者 不履行確認 措置命令 履行の監視 戒 告 履行の監視 代執行 解体の助言・指導 施行規則の市長決裁 老朽危険度判定 解体工事設計依頼 解体工事設計 予備費流用 解体委託契約 業者見積依頼 指導 市長協議 21日 履行期限   2月3日 履行期限   2月 29日 履行期限   2月 14日 空き家の解体処理   3月5日〜3月 30日 解体費徴収金   調定   4月 16日 業者   解体費請求・支払   4月 16日 車及び個人の財産持ち出し   2日 立入調査 実施 通知書 3条 勧告 条例9条 命令 条例12条 弁明書 行服22条 戒告 施行規則 9条 代執行 令書 施行規則 10条 納入 通知書 財務規則 審査 決裁 空き家の立入調査実施 解体の勧告   1月 27日 代執行   戒告   2月 22日 代執行令書通知   3月1日 納入通知書   納期限5月 15日 措置命令   2月8日 弁明書 提出 弁明の機会の付与

(4)

の宣言の下、工事立会人・記録員らが見守る中パワー ショベル2台が敷地内に入り、解体工事が始まった。  3月16日には小学校の卒業式があり、15日までには鉄 骨造の事務所も解体され、空き家5棟の解体工事を無事 に終えた。雪解けと同時に敷地内の廃材撤去作業も行わ れ29日にはすべての工事が完了した。工事完了検査を終 え、解体工事代金178万5,000円が業者に支払われたこと を確認、財務規則に基づいて同額を行政代執行費徴収金 として調定決議し、所有者へ4月16日に納入通知書によ り解体費の請求書を送付した。納期限は1か月後の5月 15日とした。 (4)行政代執行費徴収金の滞納処分  納期限を過ぎても工事代金の徴収金の納付の確認がで きなかったので、5月17日に27日を納期限とした督促状 を送ったが、未納の場合は、翌28日には所有者が所有す る空き家の建つ2,438.68平方メートルの宅地の差押処分 を行う予定である。  行政代執行費については、国税の滞納処分の例により 行うことができるので、総合防災課の職員には現金出納 員と滞納処分職員証を交付して、市税に倣い差押調書を 作成して所有者に送達し、法務局に差押えの嘱託登記を 行うものである。  この土地には、3つの金融機関が市より先に抵当権を 付けており、市が単独で換価処分することはできない。 この後、第1抵当権設定の金融機関へ裁判所に競売事件 の申立てを働きかける予定である。うまく競売が行われ が、不落という結果になっていたらしい。しかし、きれ いな更地に生まれ変わった今、少しでも高い値段で売却 されることを期待している。配当があればおのずと代執 行費を回収することができることになる。  仮に全く配当がなかった場合は、この所有者は無財産 となり国税徴収法153条1項2号の規定による執行停止 処分の対象となり、同条4項の規定により3年で消滅時 効となり不納欠損処分となる。結果、市が解体費を負担 した形になるが、178万円で小学生の安全を確保したと いうことで市民からは理解を得られるものとしている。 今後、裁判所の動向を見守りたい。

空き家の究極の解決策は、解体することにあり

 昨年の夏頃から危険な空き家の対策として交渉を続け ていた市民が、4月17日に条例10条の助成金制度を活用 して自主的に解体をした。また、くしくも4月3日から 4日にかけての爆弾低気圧による暴風により、空き家の 屋根トタン剥離被害が多数発生して危険な空き家が生ま れた。これまで50軒以上の所有者と交渉して解体を指導 したところ、すでに10軒が解体した。このうち6軒は、 助成制度を活用して解体に応じた。  今後は、空き家マップを活用して市民とともに常に空 き家の監視をしながら、少しでも安全・安心なまちづく りのために条例に定める空き家等の適正管理に努めたい。

(5)

自治体発

条例

秋田県大仙市    ○大仙市空き家等の適正管理に関する条例 (平成23年12月26日 大仙市条例第59号)  (目的) 第1条 この条例は、法令に定めるもののほか、空き家等の管理の適正化を図ることにより、倒壊等の事故、犯罪、火災等を未然に防止し、もって市民の 安全で安心な暮らしの実現に寄与することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。  ⑴ 空き家等 市の区域内に所在する建物その他の工作物(既に倒壊したものを含む。)で常時無人の状態にあるもの及びその敷地並びに空き地(原 則として農林業用地を除く。)をいう。  ⑵ 危険な状態 次に掲げる状態をいう。   ア 老朽化若しくは台風等の自然災害により、建物その他の工作物が倒壊し、又は当該建物その他の工作物に用いられた建築資材等が飛散し、若し くは剥落することにより、人の生命若しくは身体又は財産に害を及ぼすおそれのある状態   イ 不特定の者に建物その他の工作物若しくはその敷地に侵入され、犯罪、火災等を誘発するおそれのある状態   ウ ねずみ族、昆虫等が相当程度に繁殖し、人の生命、身体若しくは財産又は周囲の生活環境に害を及ぼすおそれのある状態  ⑶ 所有者等 所有者、占有者、相続人、相続放棄者、財産管理人その他の空き家等を管理すべき者をいう。  (民事による解決との関係) 第3条 この条例の規定は、危険な状態にある空き家等の所有者等と当該空き家等が危険な状態にあることにより害を被るおそれのある者との間で、民 事による事態の解決を図ることを妨げない。  (所有者等の責務) 第4条 所有者等は、所有等に係る空き家等が危険な状態にならないように自らの責任において当該空き家等を管理しなければならない。  (情報提供) 第5条 何人も、空き家等が危険な状態であると認めるときは、市長に対し、当該危険な状態に関する情報を提供することができる。  (実態調査) 第6条 市長は、必要に応じ、空き家等の有無を調査するものとする。 2 市長は、前条の情報提供を受け、又は空き家等が危険な状態にあると思料するときは、当該空き家等の所有者等の所在、危険な状態の程度等を調査 することができる。  (立入調査) 第7条 市長は、この条例の施行に必要な限度において、職員に必要な場所に立ち入らせ、必要な調査をさせることができる。 2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を証明する書類を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。 3 第1項の規定による立入調査は、これを犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。  (助言又は指導) 第8条 市長は、空き家等が現に危険な状態にあり、又は危険な状態になるおそれがあると認めるときは、当該空き家等の所有者等に対し、必要な措置 について、助言し、又は指導することができる。  (勧告) 第9条 市長は、空き家等が現に危険な状態にあり、かつ、当該危険な状態が相当程度であると認めるときは、当該空き家等の所有者等に対し、期限を 定めて必要な措置を講ずるよう勧告することができる。  (助成) 第10条 市長は、第8条の助言若しくは指導又は前条の勧告に従って措置を講ずる者に対し、別に定めるところにより助成することができる。  (公表) 第11条 市長は、空き家等の所有者等が第9条の勧告に基づく措置を期限までに講じないときは、次に掲げる事項を公表することができる。  ⑴ 所有者等の氏名及び住所(法人の場合にあっては、その名称、代表者及び主たる事務所の所在地)  ⑵ 空き家等の所在地及び種別  ⑶ 勧告の内容  ⑷ 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項  (命令) 第12条 市長は、第9条の勧告に従わない者に対し、期限を定めて必要な措置を講ずるよう命令することができる。  (代執行) 第13条 市長は、前条の命令を受けた者が当該命令に従わない場合において、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履 行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の定めるところにより代執行を行うことができる。  (関係機関との連携) 第14条 市長は、緊急を要する場合は、市の区域を管轄する警察その他の関係機関と必要な措置について協議することができる。  (委任) 第15条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。    附 則  この条例は、平成24年1月1日から施行する。 参考条文

参照

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