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率を求めることとした 詳細は 高槻ほか (2007) を参照されたい ア解析に使用するデータ解析に使用するデータは 前述の海面水温格子点データ (COBE-SST) と現場観測データである 前者の空間解像度は緯経度 1 度 時間解像度は月平均値となっており 海洋の健康診断表 1 の定期診断表 海面水

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2010~2012年の観測と1980~1990年代の観 測 の 比 較 か ら 、 北 西 太 平 洋 の 底 層 の 水 温 に 0.004~0.005℃の上昇がみられる。太平洋では、 1990年代以降、他の海域においても同程度の 底層の水温上昇が確認 されている。これら の 観測結果や数値モデル による解析結果から 、 北西太平洋の底層での 水温上昇は、南極周 辺 の海域における海水の 冷却が弱まり、沈み 込 む海水が減少した影響 が海底地形に沿って 数 十年かけて北西太平洋 まで伝播し、水温の 上 昇として現れたもので あることが示されて い る。 深層 循環 の 変化 は気 候 に大 きな 影 響を 与え るため、これらの底層 の水温上昇が地球温 暖 化に伴うものかどうか については、継続的 な 観測データによる検証が必要である。そして、 南極周辺の海域を起源 とした深層循環の状 態 がどのように変化する のか、長期的に監視 を 続ける必要がある。

参考文献

Antonov, J. I., D. Seidov, T. P. Boyer, R. A. Locarnini, A. V. Mishonov, H. E. Garcia, O. K. Baranova, M. M. Zweng, and D. R. Johnson, 2010: World Ocean Atlas 2009, Volume 2: Salinity. S. Levitus, Ed., NOAA Atlas NESDIS 69, U.S. Government Printing Office, Washington, D.C., 184 pp.

Fukasawa, M., H. Freeland, R. Perkin, T. Watanabe, H, Uchida, and A. Nishina, 2004: Bottom water warming in the North Pacific Ocean. Nature, 427, 825-827.

IPCC, 2001 : Climate Change 2001 : Synthesis Report. A Contribution of Working Groups I, II, and III to the Third Assessment Report of the

Intergovernmental Panel on Climate Change [Watson, R.T. and the Core Writing Team (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 398 pp. Johnson, G. C., and J. M. Toole, 1993: Flow of deep

and bottom water in the Pacific at 10°N. Deep Sea Res., Part I, 40, 371-394.

Johnson, G.C., S. Mecking, B.M. Sloyan and S.E. Wijffels, 2007: Recent Bottom Water Warming in the Pacific Ocean. J. Climate, 20, 5365-5375. Kawabe, M., and S. Fujio, 2010: Pacific Ocean

Circulation Based on Observation. J. O., 66, 389-403.

Kawano, T., M. Fukasawa, S. Kouketsu, H. Uchida, T. Doi, I. Kaneko, M. Aoyama, and W. Schneider, 2006: Bottom water warming along the pathway of lower circumpolar deep water in the Pacific Ocean. Geophys. Res. Lett., 33, L23613, 10.1029/2006GL027933.

Locarnini, R. A., A. V. Mishonov, J. I. Antonov, T. P. Boyer, H. E. Garcia, O. K. Baranova, M. M. Zweng, and D. R. Johnson, 2010: World Ocean Atlas 2009, Volume 1: Temperature. S. Levitus, Ed., NOAA Atlas NESDIS 68, U.S. Government Printing Office, Washington, D.C., 184 pp. Masuda, S., T. Awaji, N. Sufiura, J. P. Matthews, T.

Toyoda, Y. Kawai, T. Doi, S. Kouketsue, H. Igarashi, K. Katsumata, H. Uchida, T. Kawano, and M. Fukasawa, 2010: Simulated Rapid Warming of Abyssal North Pacific Waters. Science, 329, 319-322. 40 第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 1.1 海水温 1.1.3 日本近海の海面水温

日本近海の海面水温

診断概要

診断内容 日本周辺には、東シナ海、日本海やオホーツク海など陸地や島で囲まれた縁辺海があり、 また太平洋側においても亜熱帯循環域や亜寒帯循環域に大きく分けられ、海面水温の上昇 は一様ではない。ここでは日本近海を13海域に分け、それぞれの平均海面水温について、 100年間にわたる長期変化傾向を診断する。 診断結果 日本近海の13海域平均海面水温を加重平均した全海域平均海面水温(年平均)の上昇率 は+1.08℃/100年で、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.51℃/100年)よりも大き な値である。海域別にみると、黄海、東シナ海、日本海南部、四国・東海沖北部では日本 の気温の上昇率(+1.15℃/100年)と同程度となっている。日本海北東部では、海域平均 海面水温(年平均)に統計的に有意な長期変化傾向は見出せない。 海 面 水 温 の 基 礎 知 識 に つ い て は 、 「 第 1 章 地 球 温 暖 化 に 関 わ る 海 洋 の 長 期 変 化 」 の 「1.1 海 面 水 温 1.1.1 世 界 の 海 面 水 温 」や 「 第 2 章 気 候 に 関 連 す る 海 洋 の 変 動 」 の 「2.2 日 本 近 海 の 海 洋 変 動 2.2.1 日本 近海 の海 面水 温」 を参 照さ れた い。

1 日本近海の海面水温の監視

( 1 ) 100年 以 上 の 期 間 に わ た る 日 本 近 海 の 海面 水温 の解 析 気象 庁 は、 船 舶か ら 通 報さ れ た海 面 水温 を 含む 海 上気 象 観測 資 料 を品 質 管理 し て客 観解 析を 行 うこ と によ り 、1891年から現在までの 100年以上にわたる1度格子の海面水温格子点

デ ー タ ( COBE-SST : Centennial in situ

Observation-Based Estimates of the variability

of sea surface temperature and marine meteorological variables - Sea Surface Temperature 。 COBE-SST の 詳 細 つ い て は 「1.1.1 世 界 の 海 面 水 温 」を 参 照 さ れ た い ) (Ishii et al., 2005) を整備した。更に、こ の デ ー タ を 用 い て 日 本 近 海 に お け る100年 あ た り の 海 面 水 温 上 昇 率 を 、 +0.97℃ /100年と 見積 もっ た( 倉賀 野ほ か,2007)。 しか し 、こ の 海面 水 温 格子 点 デー タ は全 球 規模 の 気候 変 動の 監 視 や数 値 モデ ル の境 界値 とし て 用い る こと を 目 的と し てお り 、大 きな 空間 ス ケー ル で解 析 さ れて い る。 こ のた め、 日本 近 海の 細 かい 空 間 スケ ー ルと 海 域特 性に 起因 す る海 域 ごと の 海 面水 温 の長 期 変化 傾向 の相 違 を診 断 する た め には 適 切で は ない 。そ こで 、 日本 近 海を 海 域 特性 に 応じ て 区分 し、 そ れ ぞ れ の 海 域 に お け る 現 場 観 測 デ ー タ を 使っ て 海域 平 均海 面 水 温を 算 出し 、 その 上昇 41 41

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率 を 求 め る こ と と し た 。 詳 細 は 、 高 槻 ほ か (2007)を参照されたい。 ア 解 析に 使 用す るデ ー タ 解析 に 使用 す るデ ー タ は、 前 述の 海 面水 温 格 子 点 デ ー タ (COBE-SST)と現場観測デー タ で あ る 。 前 者 の 空 間 解 像 度 は 緯 経 度1度、 時間 解 像度 は 月平 均 値 とな っ てお り 、「 海洋 の 健 康 診 断 表 」1の 定 期 診 断 表 「 海 面 水 温 の 長期 変 化傾 向 (全 球 平 均) 」 、「 全 球の 海面 水 温 の 変 動 」 、 及 び 総 合 診 断 表 の 「1.1.1 世 界の 海 面水 温 」は 、 こ れを 用 いて 診 断し てい る 。 後 者 は 、 ICOADS ( International

Comprehensive Ocean and Atmosphere Data Set)(Woodruff et al., 2011)及び神戸コレ ク シ ョ ン (Manabe, 1999 ; 岡 田 ・ 坂 井 , 1 http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/shindan/index.html 2003)を中心とした歴史的な観測データ及び 全 球 通 信 シ ス テ ム (GTS)を通じて収集され た海 上 実況 気 象通 報 な どか ら 、北 緯20~50度、 東経110~160度の範囲の海面水温観測値を抽 出し た もの で 、2011年までの全データ数は約 2050万通である。抽出されたデータ数の年別 推 移 を 図1.1.3-1に示す。1900年以前及び1945 年 を 除 く1942~1948年 は年2万通 未満 であ る が 、 第 二 次 世 界 大 戦 前 の1911~1941年は 年5 万通 以 上、1953年以降は年10万通以上のデー タが 得ら れて いる 。 イ 海 域区 分 日本 周 辺に は 、東 シ ナ 海、 日 本海 や オホ ー ツク 海 など 陸 地や 島 で 囲ま れ た縁 辺 海が あ り 、 また 太 平洋 側 にお い て も亜 熱 帯循 環 域や 亜寒 図 1.1.3- 1 年 ご と の 海 面 水 温 の 現 場 観 測 デ ー タ 数 の 推 移 ( 単 位 : 1000通 ) 上 図 は 全 期 間 、 下 図 は 1890-1950年 の 期 間 を 拡 大 し た も の 。 42

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率 を 求 め る こ と と し た 。 詳 細 は 、 高 槻 ほ か (2007)を参照されたい。 ア 解 析に 使 用す るデ ー タ 解析 に 使用 す るデ ー タ は、 前 述の 海 面水 温 格 子 点 デ ー タ (COBE-SST)と現場観測デー タ で あ る 。 前 者 の 空 間 解 像 度 は 緯 経 度1度、 時間 解 像度 は 月平 均 値 とな っ てお り 、「 海洋 の 健 康 診 断 表 」1の 定 期 診 断 表 「 海 面 水 温 の 長期 変 化傾 向 (全 球 平 均) 」 、「 全 球の 海面 水 温 の 変 動 」 、 及 び 総 合 診 断 表 の 「1.1.1 世 界の 海 面水 温 」は 、 こ れを 用 いて 診 断し てい る 。 後 者 は 、 ICOADS ( International

Comprehensive Ocean and Atmosphere Data Set)(Woodruff et al., 2011)及び神戸コレ ク シ ョ ン (Manabe, 1999 ; 岡 田 ・ 坂 井 , 1 http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/shindan/index.html 2003)を中心とした歴史的な観測データ及び 全 球 通 信 シ ス テ ム (GTS)を通じて収集され た海 上 実況 気 象通 報 な どか ら 、北 緯20~50度、 東経110~160度の範囲の海面水温観測値を抽 出し た もの で 、2011年までの全データ数は約 2050万通である。抽出されたデータ数の年別 推 移 を 図1.1.3-1に示す。1900年以前及び1945 年 を 除 く1942~1948年 は年2万通 未満 であ る が 、 第 二 次 世 界 大 戦 前 の1911~1941年は 年5 万通 以 上、1953年以降は年10万通以上のデー タが 得ら れて いる 。 イ 海 域区 分 日本 周 辺に は 、東 シ ナ 海、 日 本海 や オホ ー ツク 海 など 陸 地や 島 で 囲ま れ た縁 辺 海が あ り 、 また 太 平洋 側 にお い て も亜 熱 帯循 環 域や 亜寒 図 1.1.3- 1 年 ご と の 海 面 水 温 の 現 場 観 測 デ ー タ 数 の 推 移 ( 単 位 : 1000通 ) 上 図 は 全 期 間 、 下 図 は 1890-1950年 の 期 間 を 拡 大 し た も の 。 42 帯循 環 域に 大 きく 分 け られ る こと か ら、 海面 水温 の 変動 傾 向が 類 似 して い る海 域 を抽 出し て海 域区 分を 設定 する こと とし た。 この た め、1951~2000年の50年間の海面水 温 格 子 点 デ ー タ を 用 い て ク ラ ス タ ー 解 析 を 行っ た 。ク ラ スタ ー 解 析の 手 法は ウ ォー ド法 (ク ラ スタ ー 内の 各 点 から ク ラス タ ー重 心点 まで の 距離 の 二乗 和 が 最小 に なる よ うに クラ スタ ー を分 類 する 方 法 )を 用 いた 。 この と き 、 周 期 が1年以下の 短期 変動の影響を除 くため に、 あ らか じ め海 面 水 温格 子 点デ ー タに12か 月移 動平 均を 施し た資 料を 用い た。 クラ ス ター 解 析の 結 果 と、 デ ータ の 分布 状 況 を 考 慮 し て 、 図1.1.3-2で示す13の海域を設 定 し た 。 オ ホ ー ツ ク 海 域 は1960年 代 以 前 の デー タ数 が少 ない ため 解析 の対 象外 とし た。 ウ 月 平均 の 海域 平均 海 面水 温の 計算 前節 で 設定 し た13個の海域を対象として、 1900年から2011年までの月平均海面水温平年 差を 次の 手順 によ って 求め た。 図 1.1.3- 2 海 域 区 分 と 海 域 名 称 43 43

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まず 、 対象 海 域の 現 場 観測 海 面水 温 デー タ それ ぞ れに つ いて 、 そ の観 測 日及 び 観測 位置 にお け る海 面 水温 格 子 点デ ー タか ら の偏 差を 求 め る 。 次 に 月 ご と 、1度格子ごとに偏 差の 平 均 値 を 求 め る 。 更 に1度格子の偏差の 平均 値を 対 象海 域 全体 で 平 均し て 、月 平 均の 海域 平均 偏 差と す る。 こ の よう に する の は、 海域 内の 現 場観 測 海面 水 温 デー タ を単 純 に算 術平 均す る と、 そ れぞ れ の デー タ の観 測 日や 観測 点の 偏 りに よ って バ イ アス 誤 差が 生 じる 可能 性が ある ため であ る。 1941年以前の現場観測海面水温データには、 観測 手 法の 違 いに よ る 系統 的 な誤 差 があ るた

め、 ここ では 、Folland and Parker(1995)によ

る補 正 値を 加 えて い る 。ま た 気候 値 から の偏 差 が 標 準 偏 差 の3.5倍 を 超 え て い る 観 測 デ ー タ は 除 外 し て い る 。1度格子内で観測 値のば らつ き が極 端 に大 き い 場合 は 現場 観 測海 面水 図 1.1.3-3 日 本 近 海 の 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均 ) の 長 期 変 化 傾 向 ( ℃ /100年 ) 図 中 の 無 印 の 上 昇 率 は 統 計 的 に99%有意 な値を、 『* 』および『 **』を 付加し た値はそれ ぞれ 95% 、 90% 有 意 な 値 を 示 す 。 上 昇 率 が 『 [ # ] 』 と あ る も の は 、 統 計 的 に 有 意 な 長 期 変 化 傾 向 が 見 出 せ な い こ と を 示 す 。 統 計 期 間 は1900年から2012年 。 44

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まず 、 対象 海 域の 現 場 観測 海 面水 温 デー タ それ ぞ れに つ いて 、 そ の観 測 日及 び 観測 位置 にお け る海 面 水温 格 子 点デ ー タか ら の偏 差を 求 め る 。 次 に 月 ご と 、1度格子ごとに偏 差の 平 均 値 を 求 め る 。 更 に1度格子の偏差の 平均 値を 対 象海 域 全体 で 平 均し て 、月 平 均の 海域 平均 偏 差と す る。 こ の よう に する の は、 海域 内の 現 場観 測 海面 水 温 デー タ を単 純 に算 術平 均す る と、 そ れぞ れ の デー タ の観 測 日や 観測 点の 偏 りに よ って バ イ アス 誤 差が 生 じる 可能 性が ある ため であ る。 1941年以前の現場観測海面水温データには、 観測 手 法の 違 いに よ る 系統 的 な誤 差 があ るた

め、 ここ では 、Folland and Parker(1995)によ

る補 正 値を 加 えて い る 。ま た 気候 値 から の偏 差 が 標 準 偏 差 の3.5倍 を 超 え て い る 観 測 デ ー タ は 除 外 し て い る 。1度格子内で観測 値のば らつ き が極 端 に大 き い 場合 は 現場 観 測海 面水 図 1.1.3-3 日 本 近 海 の 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均 ) の 長 期 変 化 傾 向 ( ℃ /100年 ) 図 中 の 無 印 の 上 昇 率 は 統 計 的 に99%有意 な値を、 『* 』および『 **』を 付加し た値はそれ ぞれ 95% 、 90% 有 意 な 値 を 示 す 。 上 昇 率 が 『 [ # ] 』 と あ る も の は 、 統 計 的 に 有 意 な 長 期 変 化 傾 向 が 見 出 せ な い こ と を 示 す 。 統 計 期 間 は1900年から2012年 。 44 温デ ー タの も とと な る 海上 実 況気 象 通報 など に 立 ち 戻 っ て 品 質 管 理 を 行 っ た 。 な お 、1度 格 子 内 の 観 測 デ ー タ が2通以下の場合は 海域 平均 を算 出す る際 に除 外し てい る。 この よ うに し て求 め た 海域 平 均偏 差 に、 海 面水 温 格子 点 デー タ の 海域 平 均値 を 加え るこ とで 、 月平 均 の海 域 平 均海 面 水温 と した 。そ して1981~2010年の30年平均値からの差を、 月平 均 の海 域 平均 海 面 水温 の 平年 差 とし 、小 数 第2位までを海 域平 均海面水温とし た。こ のよ う にし て 求め た1981~2010年の30年間の 各月 の 平均 値 から の 差 を海 域 平均 海 面水 温の 月 平 均 の 平 年 差 と し 、 小 数 第2位を四捨 五入 して 小数 第1位まで求めている。 また 、13の海域平均海面水温を海域の面積 に応 じ て加 重 平均 し た 全海 域 平均 海 面水 温を 求め た。 エ 年 平 均 及 び 季 節 平 均 の 海 域 平 均 海 面 水 温 年平 均 の海 域 平均 海 面 水温 の 平年 差 は、 当 該年 に 含ま れ る月 平 均 の海 域 平均 海 面水 温の 平年 差 を平 均 する こ と で求 め てお り 、そ の 際 、 月 平 均 の 平 年 差 が5か 月以上算出され ている こと を条 件と した 。 季節 平 均の 海 域平 均 海 面水 温 の平 年 差は 、 当該 季 節に 含 まれ る 月 平均 の 海域 平 均海 面水 温の 平 年差 を 平均 す る こと で 求め て おり 、そ の 際 、 月 平 均 の 平 年 差 が2か月以上算出 され てい るこ とを 条件 とし た。 なお 、 日本 近 海に お け る海 面 水温 は 、南 西 諸島 を 除い て2月下旬から3月下旬に最も低く なり 、8月下旬から9月上旬に最も高くなるこ と か ら 、1-3月 を冬、 4-6月を春 、7-9月を夏 、 10-12月を秋としている。 オ 上 昇率 の 求め 方と 有 意性 の検 定方 法 年平 均 と季 節 平均 の 海 域平 均 海面 水 温の 平 年 差 を 一 次 回 帰 分 析 す る こ と に よ り 、100年 間あ た りの 上 昇率 を 求 めた 。 もと め られ た長 期変 化 傾向 が 統計 的 に 有意 で ある か どう かの 検定 は 、一 次 回帰 分 析 によ る 検定 と 母集 団か ら大 き く外 れ た値 が 含 まれ て いる 場 合や デー タの 無 い期 間 の影 響 を 受け に くい 方 法と され て い るMann-Kendallトレンド検定を用いた。 こ の2種類の検定をそれぞれ1%、5%、10% の 異 な る3つの危 険率 について行い、 有意性 を判 定 した 。 本文 中 で はそ の 有意 性 に応 じて 以 下 の よ う な 表 現 を 使 用 し た 。2種類の 検定 に お い て 、 ど ち ら も 危 険 率1%で統計的 に有 意な 場 合は 、 「上 昇 ( 下降 ) して い る」 と表 現 し 、 同 様 に5% 、10%で有意な場合 はそれ ぞれ 、 「上 昇 (下 降 ) 傾向 が 明瞭 に 現れ てい る」 、 「上 昇 (下 降 ) 傾向 が 現れ て いる 」と 表現 し た。 ま た、 危 険 率が10%より大きい場 合は 、 「変 化 傾向 は み られ な い」 と 表現 し た 。 (2 )日 本近 海の 海面 水温 の長 期変 化傾 向 図1.1.3-3 に 日 本 近 海 の 海 域 平 均 海 面 水 温 (年 平 均) の1900年から2012年までの長期変 化傾 向 を示 す 。各 海 域 にお け る上 昇 率は 、+ 0.63~ + 1.72℃ /100年 で あ る 。 世 界 全 体 で 平 均 し た 海 面 水 温 の 上 昇 率 は 、 +0.51℃ /100年 であ り (気 象 庁,2013)、日本近海の海面水 温の 上昇 率は それ より も大 きい 。 気 候 変 動 に 関 す る 政 府 間 パ ネ ル (IPCC) の報 告 によ る と世 界 の 年平 均 気温 の 長期 変化 傾 向 は一様でな く、 アジアの内陸部 などで 上 昇 傾 向 が 大 き い (IPCC, 2007) 。 日 本 の 年 平 均 気 温 の 上 昇 率 ( +1.15℃ /100年(気 象 庁,2013))や日本近海の海面水温の上昇率 は、 この 影響 を受 けて いる 可能 性が ある 。 45 45

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季 節 別 の 上 昇 率 は 、 釧 路 沖 、 日 本 海 中 部 、 黄海 、 東シ ナ 海北 部 、 東シ ナ 海南 部 、四 国・ 東海 沖 北部 、 関東 の 南 では 冬 季に 、 日本 海南 部、 先 島諸 島 周辺 、 四 国東 海 沖南 部 では 秋季 に最 も 大き く なっ て い る。 日 本海 中 ・南 部、 黄海 、 東シ ナ 海、 関 東 の南 で は夏 季 に最 も小 さく なっ てい る( 図1.1.3-4)。 以 下 に 、 海 域 ご と の 変 化 傾 向 の 特 徴 を 述 べ る。 ア 北 海 道 周 辺 ・ 日 本 東 方 海 域 の 変 化 傾 向の 特徴 北 海 道 周 辺 ・ 日 本 東 方 海 域 に お け る 海 域 平 均海 面 水温 ( 年平 均 ) は、 釧 路沖 で は明 瞭な 上 昇 傾 向 が 現 れ ( +0.98℃/100年)三 陸沖で 上 昇 傾 向 が 現 れ て い る ( +0.63 ℃ /100 年 ) (図1.1.3-3)。 図 1.1.3-4 日 本 近 海 の 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 季 節 平 均 ) の 長 期 変 化 傾 向 ( ℃ /100年 ) 図 中 の 無 印 の 上 昇 率 は 統 計 的 に99%有意 な値を、 『* 』および『 **』を 付加し た値はそれ ぞれ 95% 、 90% 有 意 な 値 を 示 す 。 上 昇 率 が 『 [ # ] 』 と あ る も の は 、 統 計 的 に 有 意 な 長 期 変 化 傾 向 が 見 出 せ な い こ と を 示 す 。 統 計 期 間 は1900年から2012年 。 46

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季 節 別 の 上 昇 率 は 、 釧 路 沖 、 日 本 海 中 部 、 黄海 、 東シ ナ 海北 部 、 東シ ナ 海南 部 、四 国・ 東海 沖 北部 、 関東 の 南 では 冬 季に 、 日本 海南 部、 先 島諸 島 周辺 、 四 国東 海 沖南 部 では 秋季 に最 も 大き く なっ て い る。 日 本海 中 ・南 部、 黄海 、 東シ ナ 海、 関 東 の南 で は夏 季 に最 も小 さく なっ てい る( 図1.1.3-4)。 以 下 に 、 海 域 ご と の 変 化 傾 向 の 特 徴 を 述 べ る。 ア 北 海 道 周 辺 ・ 日 本 東 方 海 域 の 変 化 傾 向の 特徴 北 海 道 周 辺 ・ 日 本 東 方 海 域 に お け る 海 域 平 均海 面 水温 ( 年平 均 ) は、 釧 路沖 で は明 瞭な 上 昇 傾 向 が 現 れ ( +0.98℃/100年)三 陸沖で 上 昇 傾 向 が 現 れ て い る ( +0.63 ℃ /100 年 ) (図1.1.3-3)。 図 1.1.3-4 日 本 近 海 の 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 季 節 平 均 ) の 長 期 変 化 傾 向 ( ℃ /100年 ) 図 中 の 無 印 の 上 昇 率 は 統 計 的 に99%有意 な値を、 『* 』および『 **』を 付加し た値はそれ ぞれ 95% 、 90% 有 意 な 値 を 示 す 。 上 昇 率 が 『 [ # ] 』 と あ る も の は 、 統 計 的 に 有 意 な 長 期 変 化 傾 向 が 見 出 せ な い こ と を 示 す 。 統 計 期 間 は1900年から2012年 。 46 図1.1.3-5に北海道周辺・日本東方海域の平 均海 面 水温 平 年差 の 長 期変 化 を示 す 。ど ちら の海 域 にお い ても 十 年 から 数 十年 程 度の 時間 規模 の 変動 が 大き い 。 北太 平 洋で は 、約20年 周期 で 北太 平 洋中 部 ( 東日 本 周辺 ま で及 ぶ広 い範 囲 )の 海 面水 温 が 高く ( 低く ) なる と、 北 太 平 洋 東 部 や 赤道 域で低く(高く )なる とい う 自然 変 動現 象 ( 太平 洋 十年 規 模振 動: PDO)がみられる(総合診断表「2.1.1北太平 洋 の 海 面 水 温 ・表 層 水 温 」 参 照 ) 。 北 海 道 周 辺・ 日 本東 方 海域 の 海 域平 均 海面 水 温の 十年 から 数 十年 程 度の 時 間 規模 の 変動 に は、 この よう な 変動 が 大き く 影 響し て いる と 考え られ る。 三陸 沖 では 、1940年前後の欠測期を境に水 温が 上 昇し て いる 。 こ の傾 向 は、 江 ノ島 (宮 城県 ) や宮 古 の沿 岸 水 温観 測 デー タ にも みら れる (高 槻ほ か,2007)。 季 節 別 で は 、 釧 路 沖 の 冬 季 の 海 面 水 温 は 上昇 し てお り 、釧 路 沖 の春 季 、三 陸 沖の 冬 季 、 三陸 沖 の秋 季 では 、 上 昇傾 向 が明 瞭 に現 れて いる 。( 図1.1.3-4) イ 関東 沖海 域の 変化 傾向 の特 徴 関 東 沖 海 域 に お け る 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均 ) は 、 関 東 の 南 で 上 昇 し て お り ( + 0.96℃ /100年)、 関東 の東では上昇傾向が現 れて いる (+0.67℃/100年)。 1.1.3-5に関東沖海域の平均海面水温平年 差の 長 期変 化 を示 す 。 関東 の 東の 海 域平 均海 面水 温 の変 動 は、 関 東 の南 に くら べ て大 きく なっ て おり 、 十年 か ら 数十 年 程度 の 時間 規模 の変 動 がみ ら れる 。 関 東の 東 は黒 潮 続流 の流 域に あ たり 、 黒潮 の 流 路が 北 上す る と黒 潮系 の暖 か い海 水 の占 め る 割合 が 増大 し 、海 面水 温は 上昇 する 。関 東の 東の 海域 平均 海面 水温 の変 動 には 、 黒潮 流 路 の変 動 や( ア )で 述べ た太 平 洋十 年 規模 変 動 が大 き く影 響 して いる と考 えら れる 。 一方 、 関東 の 南で は 、 関東 の 東に 比 べ年 々 の変 動 幅が 小 さく 、1960年代後半から1970年 代に か けて 低 温期 が み られ 、1950年代前半と 1990年代後半以降に高温期がみられる。また、 1940年代の欠測期をはさんで、昇温がみられ る。 な お、 こ の海 域 内 に位 置 する 八 丈島 の沿 岸水 温 は、 黒 潮の 変 動 の影 響 が強 く 、海 域平 均 海 面 水 温 の 傾 向 と 異 な る ( 高 槻 ほ か , 2007)。 季 節 別で は 、関 東 の 南で は 全て の 季節 にお いて 海 面水 温 が上 昇 し てお り 、冬 季 の上 昇率 が最 も 大き い 。関 東 の 東で は 、秋 季 の海 面水 温に 明 瞭な 上 昇傾 向 が みら れ 、春 季 には 上昇 傾向 が 現れ て いる も の の、 夏 季と 冬 季に は変 化傾 向が みら れな い。 ウ 日本 海の 変化 傾向 の特 徴 日 本 海 に お け る 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均 ) は 、 日 本 海 中 部 ( +1.72℃ /100年)及 び 日 本 海 南 部 ( +1.26℃/100年)で上昇して い る。 こ れら は 、世 界 全 体で 平 均し た 海面 水温 の 上 昇 率 ( +0.51℃/100年)のおよそ2~3倍 の大 き さで あ り、 特 に 日本 海 中部 の 上昇 率は 日 本 近 海 で 最 も 大 き な 上 昇 率 と な っ て い る (図1.1.3-3)。 日 本 全 国 の 年 平 均 気 温 の 上 昇 率 は +1.15℃ /100年で、日本海南部の海域平均海面水温の 上昇 率 とは 同 程度 だ が 、日 本 海中 部 の上 昇率 は気 温の 上昇 率よ り大 きく なっ てい る。 日本 海 中部 で 気温 よ り 上昇 率 が大 き い理 由 はよ く わか っ てい な い が、 ユ ーラ シ ア大 陸の 中 国 東 北 部 で は 、 年 平 均 気 温 の 上 昇 率 は 約 2℃/100年、冬季の気温の上昇率は約3℃/100 47 47

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北 海 道 周 辺 ・ 日 本 東 方 海 域 日 本 海 関 東 沖 海 域 日 本 南 方 海 域 九 州 ・ 沖 縄 海 域 図 1.1.3-5 日 本 近 海 13海 域 の 海 域 平 均 海 面 水 温 平 年 差 ( 年 平 均 ) の 長 期 変 化 青 丸 は 各 年 の 値 、 青 太 線 は5年 移 動 平 均 値 、 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 。 平 年 値 は1981年~2010年の 30年間の平均値。 48

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北 海 道 周 辺 ・ 日 本 東 方 海 域 日 本 海 関 東 沖 海 域 日 本 南 方 海 域 九 州 ・ 沖 縄 海 域 図 1.1.3-5 日 本 近 海 13海 域 の 海 域 平 均 海 面 水 温 平 年 差 ( 年 平 均 ) の 長 期 変 化 青 丸 は 各 年 の 値 、 青 太 線 は5年 移 動 平 均 値 、 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 。 平 年 値 は1981年~2010年の 30年間の平均値。 48 年であることから、大 陸の気温の上昇の影 響 を受けている可能性が ある。また、海洋の 循 環(対馬暖流の流路や 流量など)の変化や 、 海洋と大気の間の熱の やり取りの変化など の 影響も考えられる。 図1.1.3-5に日本海の海域平均海面水温平年 差の長期変化を示す。 日本海北東部では、 十 年から数十年の時間規 模の変動が大きく、 特 に1920年代の水温が高いことから、冬季を除 いた各季節及び年平均 において統計的に有 意 な長期変化 傾向はみ ら れない。1920年代の高 温傾向は、この海域や オホーツク海に面し た 沿岸水温観測点の一部 にもみられる(高槻 ほ か,2007)。しかし、冬季の海域平均海面水 温は上昇している(図1.1.3-4)。 日本海中部 や南部 の海 域平均海面 水温は 、 1940年代の欠測期をはさんで昇温がみられる。 また、20年程度の周期の変動がみられる。日 本海中部の海域の夏季 の海面水温は、他の 季 節とは異なって年々の 変動が大きい。この 海 域の平均海面水温は、 海域に近接する地点 の 沿岸水温や地上気温と 比較すると、夏季は 相 関が高く、秋季や冬季 は相関が低い傾向が あ るが、冬季は表層の貯 熱量や対馬暖流の勢 力 との相関が高い。これ は、夏季は冬季に比 べ 海洋表層の混合層が浅 くなり、海面水温に 大 気の状態が反映されや すいことの現れと考 え られる(高槻ほか,2007)。 季節別では、日本海中 部及び日本海南部で 、 夏季を除くどの季節に おいても海域平均海 面 水温が上昇しており、 夏季においても上昇 傾 向が現れている。また、日本海中部では冬季、 日本海南部では秋季に 上昇率が大きくなっ て おり、日本海中部にお ける季節別の上昇率 は 冬季(+2.40℃/100年)、春季(+1.79℃/100 年 ) 、 秋 季 ( +1.99℃/100年)において、日 本近海の季節別の上昇 率の中で最も大きな 値 となっている(図1.1.3-4)。 エ 日本南方海域の変化傾向の特徴 日 本 南 方 海 域 に お け る 海 域 平 均 海 面 水 温 は 上昇しており、上昇率 は、四国・東海沖北 部 で +1.24 ℃ /100 年 、 四 国 ・ 東 海 沖 南 部 で + 0.74℃/100年である(図1.1.3-3)。 これらは、 世 界 全 体 で 平 均 し た 海 面 水 温 の 上 昇 率 ( + 0.51℃/100年)より大きくなっている。 四国・東海 沖北部 の海 域平均海面 水温( 年 平均)の上昇率は、日 本の気温の上昇率( + 1.15℃/100年)と同程度だが、四国・東海沖 南部の海域の上昇率は日本の気温より小さい。 その理由はよくわかっ ていないが、四国・ 東 海沖南部から低緯度の フィリピンの東にか け ての海域でも、海面水 温の上昇率が本州周 辺 海域に比べて小さい傾 向にあることから、 緯 度帯の違いが関係して いる可能性がある。 ま た、他の海域に比べる と大陸から離れてい る ことも影響している可能性がある。 図1.1.3-5に日本南方海域の海域平均海面水 温平年差の長期変化を 示す。日本南方海域 で は、日本東方海域、関 東の東、日本海に比 べ 年 々 の 変 動 幅 が 小 さ い 。1960 年 代 後 半 か ら 1970年代にかけて低温期がみられ、1950年代 前半と1990年代後半以降に高温期がみられる。 四国・東海 沖北部で は 、1940年代の欠測期を はさんで、昇温がみられる。 季節別にみ ると、 四国 ・東海沖南 部の春 季 を除くどの季節におい ても海域平均海面水 温 が上昇しており、その 上昇率は四国・東海 沖 北部では冬季に、四国 ・東海沖南部では秋 季 に最も大きくなっている(図1.1.3-4)。 オ 九州・沖縄海域の変化傾向の特徴 九州・沖縄 海域に おけ る海域平均 海面水 温 (年平均)は上昇して おり、その上昇率は 黄 海で+1.20℃/100年、東シナ海北部で+1.22℃ /100年、東シナ海南部で+1.15℃/100年、先島 諸島周辺で+0.71℃/100年である(図1.1.3-3)。 黄海と東シナ海の上昇 率は、世界全体で平 均 し た 海 面 水 温 の 上 昇 率 ( +0.51℃/100年)と 比べ2倍以上大きい。 黄海と東シ ナ海の 海域 平均海面水 温は日 本 の 気 温 の 上 昇 率 ( +1.15℃/100年)と同程度 49 49

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だが、先島諸島周辺で は日本の気温よりも 小 さな上昇率となってい る。先島諸島周辺で 日 本 の 気 温 の 上 昇 率 よ り 小 さ い 理 由 は よ く わ かっていないが、先述 の四国・東海沖南部 と 同様に、先島諸島周辺 からフィリピンの東 に かけての海域で海面水 温の上昇率が本州周 辺 海域に比べて小さい傾 向にあることから、 緯 度帯の違いが関係している可能性がある。 図1.1.3-5に九州・沖縄海域の海域平均海面 水温平年差の長期変化 を示す。南方の海域 ほ ど変動幅が小さい傾向 があり、黄海を除く 3 つの 海 域で 、1930~1940年頃に低温、1940~ 1950年のデータ欠損の後、1950~1960年には かなりの変動(昇温、 降温、昇温)があり 、 その後しば らく横ば い が続き、1990年代から 高温期となる。黄海で は、10~20年程度の周 期が明 瞭で 、1910年頃に極小、1920年頃に極 大、1940~1950年に昇温の後、1960年頃に極 大、1970年頃に極小、1980年代以降高温期と なっている。石垣島の 沿岸水温は、先島諸 島 周辺海域と 比べ、1930年以前は沿岸水温のほ うがやや低いが、相関 が高く、長期変化傾 向 もよく一致している(高槻ほか,2007)。 季節別では 、黄海 の夏 季を除くど の季節 や 海域においても海面水 温が上昇しており、 黄 海の夏季においても上 昇傾向が現れている 。 黄海及び東シナ海では 、冬季に上昇率が最 も 大きく、先島諸島周辺 では秋季に上昇率が 最 も大きくなっている(図1.1.3-4)。

2 診断

日本近海における、2012年までのおよそ100 年間にわたる海域平均 海面水温(年平均) は 上昇しており、その上昇率は+1.08℃/100年で ある。 北 海道 周 辺 ・ 日本 東 方 海 域に お け る1900年 か ら2012 年 ま で の 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均)は、釧路沖では明 瞭な上昇傾向が現れ 、 三陸沖では長期的には 上昇傾向が現れてい る が、数年から数十年の 周期の変動もみられ 、 1950年から1980年代半ばにかけては下降傾向 がみられる。 関東 沖海 域 にお ける 海 域平 均海 面 水温 (年 平均)は関東の南で上 昇しており、その上 昇 率は+0.96℃/100年である。関東の東では上 昇傾向が現れている。 日 本 海 に お け る 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均)は上昇しており、 その上昇率は、日本 海 中部で+1.72℃/100年、日本海南部で+1.26℃ /100年である。日本海北東部では、海域平均 海面水温(年平均)に 統計的に有意な長期 変 化傾向は見出せないが、冬季(1-3月)の海域 平均海面水温は上昇し ており、その上昇率 は +0.79℃/100年である。 日本南方海域における100年間にわたる海域 平均海面水温(年平均 )は上昇しており、 そ の 上 昇 率 は 、 四 国 ・ 東 海 沖 北 部 で +1.24 ℃ /100年、四国・東海沖南部で+0.74℃/100年で ある。 九州・沖縄 海域に おけ る海域平均 海面水 温 (年平均)は上昇して おり、その上昇率は 、 黄 海 で +1.20 ℃ /100 年 、 東 シ ナ 海 北 部 で + 1.22℃/100年、東シナ海南部で+1.15℃/100年、 先島諸島周辺で+0.71℃/100年である。 日本近海に おける 海域 平均海面水 温(年 平 均)の上昇率は、世界 全体で平均した海面 水 温 の 上 昇 率 ( +0.51℃/100年)より大きく、 特に日本海や四国・東 海沖北部、先島諸島 近 海を除く九州・沖縄海域では、およそ2~3倍と なっている。また、日 本海中部の上昇率は 日 本近海で最も大きく、 日本海南部、四国・ 東 海沖北部、黄海、東シ ナ海の上昇率は、日 本 の 気 温 の 上 昇 率 ( +1.15℃/100年)と同程度 となっている。 2007年2月に公表されたIPCC第4次評価報告 書第1作業部会報告書(IPCC,2007)は、世 界全体で平均した気温 や海面水温の上昇傾 向 は明白であり、人為起 源の温室効果ガスに よ る地球温暖化の影響が 現れている可能性が 非 常に高い(90%を超える確率で高い)ことを 指摘している。日本周 辺海域における海面 水 温にも地球温暖化の影 響が現れている可能 性 があると考えられる。 しかし、評価してい る 50

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だが、先島諸島周辺で は日本の気温よりも 小 さな上昇率となってい る。先島諸島周辺で 日 本 の 気 温 の 上 昇 率 よ り 小 さ い 理 由 は よ く わ かっていないが、先述 の四国・東海沖南部 と 同様に、先島諸島周辺 からフィリピンの東 に かけての海域で海面水 温の上昇率が本州周 辺 海域に比べて小さい傾 向にあることから、 緯 度帯の違いが関係している可能性がある。 図1.1.3-5に九州・沖縄海域の海域平均海面 水温平年差の長期変化 を示す。南方の海域 ほ ど変動幅が小さい傾向 があり、黄海を除く 3 つの 海 域で 、1930~1940年頃に低温、1940~ 1950年のデータ欠損の後、1950~1960年には かなりの変動(昇温、 降温、昇温)があり 、 その後しば らく横ば い が続き、1990年代から 高温期となる。黄海で は、10~20年程度の周 期が明 瞭で 、1910年頃に極小、1920年頃に極 大、1940~1950年に昇温の後、1960年頃に極 大、1970年頃に極小、1980年代以降高温期と なっている。石垣島の 沿岸水温は、先島諸 島 周辺海域と 比べ、1930年以前は沿岸水温のほ うがやや低いが、相関 が高く、長期変化傾 向 もよく一致している(高槻ほか,2007)。 季節別では 、黄海 の夏 季を除くど の季節 や 海域においても海面水 温が上昇しており、 黄 海の夏季においても上 昇傾向が現れている 。 黄海及び東シナ海では 、冬季に上昇率が最 も 大きく、先島諸島周辺 では秋季に上昇率が 最 も大きくなっている(図1.1.3-4)。

2 診断

日本近海における、2012年までのおよそ100 年間にわたる海域平均 海面水温(年平均) は 上昇しており、その上昇率は+1.08℃/100年で ある。 北 海道 周 辺 ・ 日本 東 方 海 域に お け る1900年 か ら2012 年 ま で の 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均)は、釧路沖では明 瞭な上昇傾向が現れ 、 三陸沖では長期的には 上昇傾向が現れてい る が、数年から数十年の 周期の変動もみられ 、 1950年から1980年代半ばにかけては下降傾向 がみられる。 関東 沖海 域 にお ける 海 域平 均海 面 水温 (年 平均)は関東の南で上 昇しており、その上 昇 率は+0.96℃/100年である。関東の東では上 昇傾向が現れている。 日 本 海 に お け る 海 域 平 均 海 面 水 温 ( 年 平 均)は上昇しており、 その上昇率は、日本 海 中部で+1.72℃/100年、日本海南部で+1.26℃ /100年である。日本海北東部では、海域平均 海面水温(年平均)に 統計的に有意な長期 変 化傾向は見出せないが、冬季(1-3月)の海域 平均海面水温は上昇し ており、その上昇率 は +0.79℃/100年である。 日本南方海域における100年間にわたる海域 平均海面水温(年平均 )は上昇しており、 そ の 上 昇 率 は 、 四 国 ・ 東 海 沖 北 部 で +1.24 ℃ /100年、四国・東海沖南部で+0.74℃/100年で ある。 九州・沖縄 海域に おけ る海域平均 海面水 温 (年平均)は上昇して おり、その上昇率は 、 黄 海 で +1.20 ℃ /100 年 、 東 シ ナ 海 北 部 で + 1.22℃/100年、東シナ海南部で+1.15℃/100年、 先島諸島周辺で+0.71℃/100年である。 日本近海に おける 海域 平均海面水 温(年 平 均)の上昇率は、世界 全体で平均した海面 水 温 の 上 昇 率 ( +0.51℃/100年)より大きく、 特に日本海や四国・東 海沖北部、先島諸島 近 海を除く九州・沖縄海域では、およそ2~3倍と なっている。また、日 本海中部の上昇率は 日 本近海で最も大きく、 日本海南部、四国・ 東 海沖北部、黄海、東シ ナ海の上昇率は、日 本 の 気 温 の 上 昇 率 ( +1.15℃/100年)と同程度 となっている。 2007年2月に公表されたIPCC第4次評価報告 書第1作業部会報告書(IPCC,2007)は、世 界全体で平均した気温 や海面水温の上昇傾 向 は明白であり、人為起 源の温室効果ガスに よ る地球温暖化の影響が 現れている可能性が 非 常に高い(90%を超える確率で高い)ことを 指摘している。日本周 辺海域における海面 水 温にも地球温暖化の影 響が現れている可能 性 があると考えられる。 しかし、評価してい る 50 領域が狭いことから、 自然変動の影響を受 け やすく、海面水温の上 昇が必ずしも全て温 暖 化の影響といえる訳ではない。

参考文献

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参照

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