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予防接種の意思決定支援:文献レビューと意思決定支援ツールの紹介

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*1聖路加国際大学大学院博士後期課程(St. Luke’s International University, Ph. D. Course) *2聖路加国際大学(St. Luke’s International University)

2013年11月19日受付 2014年4月24日採用

総  説

予防接種の意思決定支援:文献レビューと

意思決定支援ツールの紹介

Decision support for immnization: A literature review

and introduction to decision aids

遠 藤 亜貴子(Akiko ENDO)

*1

堀 内 成 子(Shigeko HORIUCHI)

*2 抄  録 目 的  本研究の目的は,以下の2つである。 1.予防接種に関する意思決定支援を実施した国内外の文献をレビューし,支援効果を検討する。 2.Web上で入手可能な,予防接種のための意思決定支援ツール(デシジョンエイド)を,その質の基準 も含め紹介する。 方 法  目的1については,予防接種の接種決定に際し意思決定支援を行った国内外の文献をキーワード検索 し,支援によりアウトカム(接種率,決定の質)が向上したか否かを分析した。目的2に関しては,イン ターネットでアクセスできる予防接種に特化した意思決定支援ツールの種類と内容を紹介し,それら ツールがどのような基準に基づいて開発・評価されているのか,国際的な基準作りの流れも含めて解説 した。 結 果  文献レビュー:抽出された6文献は,すべて日本以外の先進国で行われた研究であった。そのうち4 文献が意思決定支援の介入効果を測るRandomized Controlled Trial(RCT)であった。すべてのRCT研究 に接種の有無を測る指標(接種率,接種行動,接種意図等)が含まれていた。ただし,接種に至ったか 否かは副次的なアウトカムの位置づけで,むしろ心理的指標(葛藤,不安,満足度,自信等)を主要ア ウトカムとし,決定の質を測っていた。  意思決定支援ツールの紹介:予防接種のための代表的な意思決定支援ツール6つは,すべて欧米で開 発されたもので,質の国際基準(簡易版IPDAS)チェックリストに照らして評価がなされている。6ツー ルのうち,すべての評価項目を満たすツールは1つのみであった。 結 論  予防接種の決定支援を行った研究は少なく,支援効果も限定的である。支援のタイミングや支援方法 の探求,および評価のためのアウトカム指標の検討が必要である。

(2)

 意思決定支援ツールの質の標準化を目指す国際基準設定の動きがあり,今後はこの評価基準を念頭に 置いてツールの開発や活用を行っていく必要がある。

キーワード:予防接種,ワクチン,意思決定,決定支援,デシジョンエイド

Abstract Purpose

The aims of this study were:

1. to examine the effectiveness of decision support for immunization by a literature review and

2. to describe the web-based decision support instruments (decision aids) for immunization with the inclusion of the quality standards

Methods

Eligible studies using decision supports for immunization were retrieved with selected key words. Retrieved literature was analysed by whether the outcome (vaccination rate and quality of the decision) was improved by the support.

The type and content of immunization-related decision aids, accessible on the Internet, were described. The recent movement of creating international quality standards as a basis for the development and evaluation of those decision aids was also presented.

Results

Literature review: The retrieved six studies were all conducted in developed countries outside Japan of which, four were Randomized Controlled Trial (RCT) to assess the effectiveness of the intervention. All RCTs included the outcome measurement of vaccination status (vaccination rate, action, or intention). However, the participants' vac-cination status was the secondary outcome in most of the studies and the psychological indicators such as decision conflict, anxiety, satisfaction, and confidence were drawn as the primary outcome to measure the quality of the deci-sion.

Introduction to decision aids: The presented immunization-related decision aids were all developed in western countries and evaluated using the international quality standards (IPDAS checklist: the abbreviated version of In-ternational Patient Decision Aids Standards). Among six decision aids, only one instrument met all the checklist criteria.

Conclusion

Only a small number of studies were found regarding decision support for immunization, thus the impact of decision support is still limited. Further research is needed to elucidate the optimal timing of support, the effective support methods, and the appropriate outcome indicators for evaluation. The establishment of the international quality standards for decision aids is on-going movement. Those who develop and utilize decision aids need to do so in the light of the standards.

Key words: Immunization, Vaccine, Decision making, Decision support, Decision aid

Ⅰ.背   景

 日本では,ここ数年の間に小児を対象としたワクチ ンが次々に導入され,それに伴い既存ワクチンの接種 時期に変更が加えられるなど,制度自体が一つの転換 期を迎えている。小児期の予防接種に関しては,たと え10代を対象としたHPV(ヒトパピローマウイルス) ワクチンであっても接種決定者は主として子の親であ ることから,いかに親の意思決定をサポートするか が対策上の鍵となる(Ogilvie, Anderson, Marra, et al. 2010, p.9)。  親にとっての予防接種の情報源は,近年ではイン ターネットを含め多岐に渡るが,これらが必ずしも一 元化された情報を提供しているとはいえず,接種決定 に至るプロセスやスケジュール立てを支援する取組み も医療施設や行政機関ごとに差がある。特に乳児期は, 接種対象ワクチンの数も多く,個々のワクチンとその 対象疾患の情報提供だけでも時間を要するため,短い 診療時間や訪問時間内で決定支援まで行うことは難し い現状がある。予防接種制度が複雑化する中,親の意 思決定を支援する効果的なシステムの構築が急がれる が,本稿前段ではこれまでに国内外で予防接種に関し てどのような意思決定支援の取り組みがなされている のか,「予防接種に関する意思決定支援を実施した」文 献に焦点を当ててレビューを行った。  また,医療上の処置(検査,治療,手術等)に対す

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る患者の意思決定を支援する方法の一つとして,先進 国ではインターネットを活用したデシジョン・エイド

(Decision Aid)(意思決定支援ツールの意,以下DA)

の使用が近年広がりを見せている。これらWeb版DA の中で,予防接種に関するものには大きく分けて,1) 親を対象とした「子どもへの接種決定を支援するDA

(患者向けDA」(Patient Decision Aid,以下PtDA),と

2)医療者あるいは医療施設で働く勤務者向けの「医療 者自身への接種決定を支援するDA」,3)医療者(主に 医師)を対象とした「患者への接種判断を支援するた めのDA」,の3種類が存在する。このうち1)の親を対 象とした子への予防接種決定に関するWeb版PtDAで は,MMRワクチン(麻疹,流行性耳下腺炎,風疹の 混合ワクチン)やHPVワクチンなど,接種決定に迷う ワクチンに特化した詳細なPtDAが存在する一方,月 年齢に沿って接種すべきワクチンの特定やワクチンと 対象疾病の情報提供を主内容としたシンプルなPtDA まで,その詳細度には幅がある。本稿後段では,親も しくは接種対象者本人のための詳細なDAに絞り,現 在予防接種分野でどのようなWeb版DAが使われてい るのかも合わせて紹介する。

Ⅱ.用語の定義

 意思決定支援(介入)とは:どのような選択肢がど ういう理由で存在するのかを示し(場合によっては 何 もしない という選択肢も含む),個々の選択肢に関 する情報を提供し,対象者が一人であるいは誰かと一 緒に,選択肢それぞれの特性を踏まえて検討すること を後押しする。選択肢を選択した後にどのようなこと が起こるのか,の見通しを短期・中期・長期的に示 し,対象者が個々の事情や価値観に照らして意思決定 できるように援助する。意思決定支援は,対象者や場 所,その他使われる媒体などによって,臨床でのコン サルテーション,DAの活用,コーチングの導入など, さまざまな形態をとる。

 Elwyn, Frosch, Volandes, et al. 2010, p.705の定義に 研究者が加筆翻訳

 DA (Decision Aid)とは:意思決定支援のための ツールで,冊子やDVD,Web版の媒体まで形式は様々 である。単なる情報提供用の資料とは異なり,DAを 使用することで,決定が必要な問題が明確化され,選 択肢とその結果についての詳細情報が提供され,個人 の価値基準も整理されるため,結果的に対象者の意 思決定への参加が促進される。DAはそれ自体で医療 者のコンサルテーションにとって代わるものではなく, あくまで補完のために用いられるものである。

 Ottawa Hospital Research Institute (2013), Patient Decision Aids, What are patient decision aids?の定義に 研究者が加筆翻訳

Ⅲ.文献レビュー

1.リサーチクエスチョン  予防接種の接種決定に際し意思決定支援を行うと, アウトカム(接種率,決定の質)が向上するか。 2.検索方法  国内文献は,医中誌Webで「両親,保護者,父母, 母」,「小児,乳児」,「予防接種,ワクチン」,「意思決定, 決定,選択,デシジョン,デシジョンメーキング」,「意 思決定支援,デシジョン・エイド」をキーワードに全 年で検索した。41文献がヒットし,うちタイトルとア ブストラクトから関連が見込まれ本文の入手が可能な 文献は2件のみであった。しかしこの2文献は,親の 意識や意思決定要因を検討した質的研究及びアンケー トによる横断調査で,意思決定支援を行った研究では なかった。結果,国内文献は該当0件であった。   海 外 文 献 はPubMed,PsycINFO,CINHALとCo-chran Library databaseで,それぞれ全年で「parent/

caregiver/carer/guardian」,「Infant/infancy/child/

childhood/paediatric/adolescent/pre-school age/

school age」「immunization/vaccination/inoculation」,

「decision aid/decision aids/clinical decision support systems/computer assisted decision making/decision support techniques」をキーワードとして検索した。さ

らに「Human」「English」「Abstract available」で絞り込

み,4データベースで計111文献が検出された。各デー タベースで重複している文献を突き合わせ,タイトル とアブストラクトから関連が乏しいと思われる文献を 除外し,29文献の本文を入手した。そのうちのほとん どが,親の認識や医療者の意識を調査した研究であり, 中には介入研究も含まれていたが介入内容はリマイン ド(接種スケジュールの確認と勧奨)であり,意思決 定支援ではなかった。実際に意思決定支援を実施した 研究文献は,29文献中2文献のみであった。  上記以外に,関連文献中の引用文献やコクランの意 思決定支援に関するシステマティックレビュー内に含

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まれていた文献等,手検索で探した4文献を加えた。  このうち3文献は元々の検索条件に含めていなかっ た「医療者(親や患者以外)への予防接種を支援した研 究」であったが,DAを使用して意思決定支援を行っ た研究であったためレビューに含めることとし,最終 的に6つの海外文献が「予防接種のための意思決定支 援を実施した研究」として抽出された。 3.文献レビュー結果  抽出された6文献は,すべて先進国で行われた研究 であった(表1参照)。6文献中,Web版DAやコンピュー ターソフトを使っての意思決定支援を評価した文献が 4文献(表1,No.1, 4, 5, 6),冊子やセッション開催等 による意思決定支援効果を検証した文献が2文献(表1, No.2, 3)であった。  研究デザインでみると,6文献中4文献(No.1∼4) が意思決定支援の介入効果を測るRandomized Con-trolled Trial(RCT)であり,そのうち小児期の予防接 種を対象とした研究が2文献(乳児期対象ワクチン6種, MMRワクチン),医療者への予防接種を対象とした 研究が2文献(B型肝炎ワクチン,季節性インフルエ ンザワクチン)であった。RCT4文献のアウトカムの 設定は研究ごとに異なるが,すべての研究に接種の有 無を測る指標(接種率,接種行動,接種意図等)が含 まれていた。ただし,4研究中3研究では接種に至った か否かは副次的なアウトカムの位置づけで,むしろ心 理的指標(葛藤,不安,満足度,自信等)を主要アウ トカムとしていた。アウトカムに対する統計的な解析 結果は表1の「結果」欄に示されているが,ITT解析を 行っていないものについては研究者自身が再計算した ものを記載している。 4.文献レビュー結果の考察 1 ) 接種率に関するアウトカム  表1中のNo.1∼4のRCT文献の結果を見ると,意思 決定支援によって接種率向上の効果が確認されたのは 4文献中2件で(No.1, 2),残りの2件(No.3, 4)では有 意差が認められなかった。接種率向上に効果があった とする2研究のうち接種完了までを長期的に追跡した 研究は1つのみ(No.1)で,他1研究(No.2)では初回 ワクチンの適時接種率が介入群で有意に高い結果であ った。予防接種の接種勧奨時期には幅があり,また多 くのワクチンが間隔を置いた複数回の接種をもって完 了となるため,介入後に接種完了までを追跡調査する ことは実際には困難である。そのため,No.2のWroe らの研究では,初回ワクチンの適時接種率を指標とし て採用しているが,これは同国(ニュージーランド) の公衆衛生レポートによる 初回ワクチン接種の適時 性が2歳での接種完了率の予測因子である という報 告に根拠を置いている。  医療における意思決定支援のアウトカムは,その治 療や検査を実際に選択実行したか否かではなく,対象 者の価値観に基づいて質の高い意思決定がなされたか を問われる場合が多い。しかし感染症対策である予 防接種の場合,その支援は施策の目的である集団免 疫率の向上を目指して行われている。そのため,意思 決定に焦点を当てた支援であっても,接種率もしくは それに代わる指標をプログラムの評価に含むことにな る。把握が困難な接種率をどのようにアウトカム指標 に組み込むのか,代替となりうる指標には何が適切か, 接種率以外に健康への効果を評価する指標はあるのか, など本指標に関してはさらなる検討が必要と思われる。  No.5と6の文献に関しては,接種率に関連する指標 は測定されていない。どちらの研究もDA使用者の態 度変容をアウトカムに含めており,使用後に対象ワク チンの接種に対し肯定的な変化が確認されている。し かし,この態度変容が実際の接種行動に結びつくかど うかについては確認されておらず,中長期的な検証が 必要である。 2 ) 決定の質に関するアウトカム「 」内はOttawa Hos-pital Research Institute (OHRI) (2006), Patient Decision Aids. Ottawa Decision Support Framework (ODSF), Glossary for terms for the ODSFをもとに研究者が加 筆翻訳  OHRIの意思決定支援の概念枠組みでは,意思決定 支援を行うことで決定の質を向上させることが可能 で,決定の質とは 決定それ自体の質 と 決定プロセ スの質 から成ると説明されている。 決定それ自体の 質 は,「決定にあたって選択肢の利益とリスク,科学 的な不確実性(医学的に明確になっていないこと)が 十分に情報提供され,選択が対象者の価値基準にかな ったものである程度」を指す。 決定プロセスの質 は, 「対象者が以下のa)∼f)の各段階において支援を受け た程度:a)決定の必要性の認識,b)選択肢とその手 順・利益・リスク・確率・科学的な不確実性について の情報収集,c)決定に価値観が影響することを理解, d)選択肢の特性(利益・リスク・科学的な不確実性) の何が対象者自身にとって最も重要かを明確化,e)

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医療者と対象者自身の価値観について話し合う,f)対 象者の望む形で決定に参加」と説明されている。  決定の質を包括的に評価する指標はなく,個々の要 素を心理的な尺度項目に置き換えて測ることが多い。 例えば, 決定それ自体の質 を測るアウトカム指標と して多く用いられるものに,知識量の変化,利益・リ スク認知の変化,価値観と選択結果の合致度,などが ある(Stacey, Bennett, Barry, et al. 2011, pp.10-11)。本 レビューに含まれる文献中ではNo.2とNo.3に,知識 ・情報量,DAの有用性,利益・リスクの明確化,接 種の必要性の認識,が含まれていたが,意思決定支援 の介入効果として有意差が認められたものは疾病のリ スク認知の向上(No.2)のみであった。   決定のプロセスの質 を測るアウトカム指標とし てよく用いられる項目には,葛藤,満足度,不安感, 医療者とのコミュニケーション,決定への参加度,な どがある(Stacey, Bennett, Barry, et al. 2011, pp.11-14)。 本レビュー中の文献では,満足度,不安感,葛藤,懸 念,決定への自信,不確かさ(unsure),が評価され ており,満足感,不安感,自信,不確かさで有意差が みられている。  これらの心理的な指標項目が意思決定支援によって 改善した場合,その効果がどの程度持続し,実際の接 種行動にどう反映されるのか,接種に伴う物理的な障 壁(機会,アクセス,費用等)との関係性など,支援 効果の及ぶ範囲についてはレビュー文献中では明らか でなく,今後研究の集積とともに解明が必要である。 表1 文献レビューで抽出された6文献の内容 No. 文  献 研究デザイン 対象ワクチン対象者 内  容 アウトカム指標 結 果 1. Guiding Individual Decisions: A

Randomized, Controlled Trial of decision Analysis

Clancy et al. (1988), USA

RCT B型肝炎 病院の勤務医 n=1,280 「①紙媒体での情報提供+PCソフ トを使っての個別リスク分析」vs. 「②紙媒体での情報提供のみ」vs. 「③比較群(介入なし)」 1年後の抗体検査実施率とワクチン接 種率 介入群①で高い抗体検査実施率とワク チン接種率(1年後) ①176/753(23%)a ②40/264(15%) ③35/263(13%) 2. Evaluation of a decision-making

aid for parents regarding child-hood immunizations

Wroe et al. (2005), New Zealand

RCT 乳児対象のワク チン6種 妊娠後期の妊婦 n=100 「①予防接種の利益とリスクに関す る詳細な冊子(決定の心理的側面に 関する説明含む)」vs. 「②行政機関発行の冊子」 満足度,利益とリスクの明確化,有用 性,情報量,不安,接種率 介入群①で高い初回ワクチンの適時接 種率 ①45/50(90%)b ②35/50(70%) 介入群①で高い疾病リスク認知,決定 への満足度C 介入群①で高い不安軽減効果C

3. Randomised cluster trial to sup-port informed parental decision-making for the MMR vaccine Jackson et al. (2011), U.K

RCT MMR1) 接種対象年齢児 をもつ親 n=142 「①冊子+両親へのセッション」vs. 「②冊子のみ」 葛藤,知識,態度,ワクチンの必要性への認識,懸念,不安,接種行動 介入群①と比較群②でアウトカム指標 に有意差なし 接種行動に関しては,ITT解析で介入 群①と比較群②に有意差なし ①27/71(38%) ②27/71(38%)*

4. Impact of the Ottawa Influenza Decision Aid on healthcare per-sonnel's influenza immunization decision: a randomized trial Chambers et al. (2012), Canada

RCT 季節性インフル エンザ 医療者 n=151 「①Web版教育冊子+DA2」」vs. 「②Web版教育冊子のみ」 決定への自信,接種意図介入群①で決定に対する高い自信d 不確かさ(unsure)の軽減e 介入群①と比較群②で接種意図には有 意差なし

5. Effects of a web based decision aid on parental attitudes to MMR vaccination: a before and after study

Wallace et al. (2006), Australia

前後研究 (比較群なし) MMRWeb版DA2) アクセスし質問 に回答した視聴 者 n=158 DA2)使用によるワクチンへの態度変容を使用前後にWeb内の質問で調査 WebベースのDA使用後に接種に肯定的な態度変容あり

6. Helping healthcare workers de-cide: evaluation of an influenza immunization decision tool McCathy et al. (2010), Canada

アンケート調査 季節性インフル エンザ 医療スタッフ n=225 使用者によるDA3)の有用性の評価 DA使用者のほとんどに「高いワクチ ンの重要性認知」,「高い知識」,「ニー ズの明確化」,「ワクチン接種に肯定 的」な結果が確認 使用者はDAの有用性を高く評価

a χ2-test:①vs.② p<0.01,b χ2- test:p<0.05,c t-test:p<0.01,d Wilcoxon rank sum test p=0.02,e OR=0.2(p=0.035) 研究者による再計算 1)MMR:麻疹・流行性耳下腺炎・風疹の混合ワクチン

2)MMR Decision Aid (The National Centre for Immunisation Research and Surveillance, Australia) 3)The Ottawa Influenza Decision Aid (Ottawa Hospital Research Institute (OHRI), Canada)

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Ⅳ.予防接種に関するWeb版意思決定支援

ツール(DA)の紹介

1.DAの種類  意思決定支援は,決定に葛藤やジレンマを伴うよう な,選択が困難な問題に対して必要となる場合が多い。 予防接種のDAも,接種決定に迷うようなワクチンに 特化して作成されており,現在Web上でアクセスで きる代表的なDAは表2に示すとおりである。  意思決定支援分野の研究において,国際的にも中 心的な役割を果たしている機関がカナダのOttawa

Health Research Institute(OHRI)で あ る。OHRIは オ

タワ病院の研究部門であり,オタワ大学と提携して 様々な医療上の決定に関するDAを発行しており,DA 開発のための基準作りや意思決定支援に携わる人材の 育成も担っている。このOHRIが開発発行している予 防接種関連のDAとして,前段の文献レビューにも含 まれていた医療施設で働く従事者向けの季節性イン フルエンザワクチンのDA(表2,No.1)と,他に思春 期の娘をもつ親向けのHPVワクチン(表2,No.2)の PtDAがある。OHRIのDAは基本的にPDFファイルな ので,Webページから印刷して読んだり書き込んだ りすることが可能である。  OHRI以外のものでは,アメリカの非営利企業であ るHealthwiseがHPVワクチン(表2,No.3),成人向け の帯状疱疹(表2,No.4)及び季節性インフルエンザワ クチン(表2,No.5)のPtDAを開発発行している。こ れらはWeb上で操作(尺度レバーを動かしたり質問に 回答チェックを入れたり)する仕様になっている。  これらに加えて,オーストラリアのNational Centre 表2 代表的な予防接種のためのDecision Aid(Web上で入手可能なもの) No. (タイトル)DA 対象者 対象ワクチン 発行元 仕様 簡易版IPDASチェックリストによる評価 (Yes項目数/評価項目数) 内 容 開発プロセス 有効性 1. The Ottawa Influenza

Decision Aid (OIDA) 医療者または医療施設勤務者 季節性インフルエンザ Canadian HealthcareInfluenza Immunization Network (CHIIN), Canada

PDF 15/15 9/9 2/2

2. The Ottawa HPV

Decision Aid 親と子ども HPV Ottawa Hospital ResearchInstitute (OHRI), Canada PDF 15/15 4/9 0/2 3. HPV: Should My Child

Get the Vaccine? 親 HPV Healthwise, USA Webベース 10/14 8/9 1/2 4. Shingles: Should I Get a

Shot to Prevent Shingles? 患者 帯状疱疹 Healthwise, USA Webベース 10/14 8/9 1/2 5. Flu Vaccines: Should I

Get a Flu Vaccine? 患者 季節性インフルエンザ Healthwise, USA Webベース 10/14 8/9 1/2 6. MMR Decision Aid 親 MMR National Centre for

Immuni-sation Research and Surveil-lance, Australia (NCIRS)

Webベース 12/15 5/9 2/2 表3 IPDASチェックリストの構成 カテゴリー (3) 要素(12) オリジナル版(63)評価項目簡易版(30) 内容 選択肢についての情報の提供 選択結果の可能性の説明 価値観の表出と明確化 検討とコミュニケーションのためのガイド/コーチング 偏りのない情報と選択肢の提示** 13 8 3 3 ̶ 11 5 1 0 2 開発プロセス 体系的な開発プロセスの踏襲 偏りのない情報と選択肢の提示** 対象者のヘルスリテラシーレベルへの配慮 科学的エビデンスに基づく情報の提供 利益相反の開示 インターネットでの配信 ナラティブストーリーの活用 8 2 3 6 2 6 3 5 ̶ 1 2 1 0 0 有効性 有効性を示すエビデンスの有無 6 2 **「偏りのない情報と選択肢の提示」は,オリジナル版では開発プロセス(カテゴリー)に分類されていたが,簡易 版では内容(カテゴリー)に変更されている。

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for Immunisation Research and Surveillanceが シ ド ニ ー大学と連携し開発発行しているMMRワクチンの PtDA(表2,No.6)がある。これは,前段の文献レビ ュー中の前後研究(表1,No.5)で取り上げられていた Web版DAと同じものである。このPtDAは12ページ から成り,Web上で1ページずつクリックしながら読 み進めていく仕様である。最後に印刷して自身の価値 基準やその時点での決定を書き込むページも含んでい る。このMMRのPtDAは,オーストラリア版だけでな く,イギリスのリーズ大学と連携して開発された同内 容のイギリス版も存在する。  日本ではDAはまだ広く普及していないため,内容 の具体的なイメージがつかみにくいものと予想される。 そこで,紹介のために本稿ではOHRIが開発発行して いる「思春期の娘をもつ親向けのHPVワクチンのDA」 (表2,No.2)を研究者が翻訳したものを表4に示した。

表4 思春期の娘をもつ親向けのHPVワクチンのDecision Aid(Ottawa Patient Decision Aid Research Group)

HPV感染および子宮頸がん予防のために何ができるでしょう? 13歳女子の両親・保護者のための意思決定支援 この意思決定支援ツールは: ・オンタリオ州のHPVワクチンの接種対象である13歳の娘さんをもつ両親/保護者の方を対象としたものです。 HPVとは? ・ヒトパピローマ(あるいはHPV)と呼ばれるウィルスで,子宮頸がんの原因になります。 ・HPVは男女両方に感染するウィルスで,感染者との性交渉を通じて移ります。 ・HPV感染はもっとも一般的な性感染症の一つで,80%の女性が生涯に一度は感染すると考えられており,そのほとんどが16∼24歳に起こります。 ・HPVには100種類以上のタイプ(型)があり,型によって陰部のイボや前がん状態,子宮頸がんやその他のがんの原因になります。 ・子宮頸がんは,20∼44歳のカナダ人女性の間で2番目に多いがんです。 HPVワクチンって何? ・カナダでは2006年7月に,ガーダシルというHPV6型,11型,16型,18型に効果のあるワクチンが認可されています。この4種類の型は,90%の陰部の イボおよび70%の子宮頸がんの原因になるウィルスです。 ・ガーダシルワクチンは,13∼26歳の女性を対象に3∼5年間の追跡調査を経て認可されています。 ・接種後どのくらいの期間ワクチンの予防効果が続くのかは,まだわかっていません。 ・2012年には,北欧がん登録協会の10年間の追跡調査の結果が発表される予定です。もしワクチンの効果が長く続かないという結果が出れば,今後追 加の接種が必要となるかもしれません。 ・カナダ保健省は,女子が性交渉を開始する年齢に達する前にHPVワクチンの接種をすすめています。 ・HPVワクチンには,すでにかかっている陰部のイボや前がん状態を治す効果はありません。 ・HPVワクチンを受けた女子の性交渉率が上がった,というデータはありません。 ・たとえワクチンを接種していても,性交渉開始後は,コンドームの使用と定期的な子宮頚がんの検診が必要です。 娘さんにはどんな選択肢があるのでしょう? ・今すぐに,学校で接種する。学校の保健部門で,接種(6か月の間に3回)が行われます。接種費用は公費で負担されます。 ・後で,診療所や専門クリニックで接種する。もう少し後で,接種(6か月の間に3回)を自分で予約する。接種費用は自己負担になるかもしれません。 費用は合計で$400ほどです。 ・接種を辞退する。HPVワクチンを受けない。 選択に際して他に考慮すべきことは? 以下のいずれかに当てはまる場合は,接種前にかかりつけ医にご相談下さい。 私の娘は… …すでにHPVワクチンの接種を完了している。 …酵母アレルギーもしくはワクチン成分にアレルギーがある。 …妊娠しているかもしれない。 ステップ1:それぞれの選択肢の良い点と悪い点は? 下記の数値は,最新の研究データをもとに,1万人の女性が異なる選択をした場合に何が起こりうるのかを計算したものです。下線部分は,該当者を表 します。あなたの娘さんが該当者になるかどうかは,今の時点ではわかりません。 良い点 未接種 接種 前がん状態になる数は,ワクチン接種をした女性の方が少ない 99人/10,000人(あり)9,901人/10,000人(なし) 1人/10,000人(あり)9,999人/10,000人(なし) 陰部のイボの発症は,ワクチン接種をした女性の方が少ない 251人/10,000人(あり)9,749人/10,000人(なし) 0人/10,000人(あり)10,000人/10,000人(なし)

上記の数値は4価ワクチンガーダシルに関する3つの研究(VillaらによるFuture I およびFuture II)データに基づいている。これらの研究は,15,532人の 女性を接種後3∼5年間追跡調査したものである。 軽度の副反応 偽薬を注射 ワクチンを接種 軽度の副反応(接種部位の赤み・痛み・腫れ,発熱,吐き気, めまい,頭痛)は,ワクチン接種をした女性に起こる 7,745/10,0002,255/10,000(あり)(なし) 8,641人/10,000人(あり)1,359人/10,000人(なし) 重度の副反応 血栓症および死亡者の数は,接種・未接種どちらのグループにも差はない。 ギランバレー症候群の数は,接種・未接種どちらのグループにも差はない。 ワクチンは,重症なアレルギー反応を引き起こすことがある。10万人の女性がHPVワクチンを受けた場合,うち1∼3人が 重症アレルギー反応を起こすかもしれない。但し,ワクチン接種を行う医療者はそうした反応への対処訓練を受けており, 今までのところ死亡に至る例は出ていない。

(8)

2.DAの質

 1999年時点では,欧米を中心に約15のDAが一部の 研究機関によって作られていたに過ぎなかったが,数 年のうちにその数は急増し,2006年にはさまざまな組 織によって作られた500を超えるDAが世界中に流布 している状態であった(Elwyn, O'Connor, Stacey, et al.

2006, p.1)。しかしこれらのDAの中には,明らかに内

容に偏りがあるものや記載情報の情報源が不明なも のなども混在し,その質はバラバラで統一基準も存 在していなかった。数が増加するにつれ,DAの質の 標準化を図る必要性が高まり,2005年にInternational

Patient Decision Aids Standard (IPDAS) Collaboration1

によるDA開発のための基準チェックリストが作成さ れている。表3に示すとおり,IPDASチェックリスト は3つのカテゴリー項目(内容,開発プロセス,有効 性)の下に12の要素項目が連なり,さらに要素項目ご とに細目化された評価項目が設定されている。このカ テゴリー・要素・評価の各項目選定にあたっては,14 ステップ2:選択にあたって,あなたが最も重要と思うことは何でしょう? それぞれの選択肢を選ぶ場合の,主な理由を下記に挙げています。あなたにとってそれぞれの理由はどのくらい重要でしょうか。0∼5段階で マーク をつけてみて下さい。 0 は「全く重要でない」, 5 は「とても重要である」を表しています。 …はどのくらい重要か 重要でない とても重要 (ワクチン接種)選択肢 …娘さんが前がん状態にならずに済むことは? ①  ②  ③  ④  ⑤ 今すぐ  後で …娘さんが陰部のイボを発症しないことは? ①  ②  ③  ④  ⑤ 今すぐ  後で …ワクチン費用を負担しなくて済むことは? ①  ②  ③  ④  ⑤ 今すぐ  辞退 …長期的な効果(5年以上)に関する情報が出るまで待つ? ①  ②  ③  ④  ⑤ 後で   辞退 …娘さんが軽度の副反応(接種部位の赤み・痛み・腫れ,発熱,吐き気,めまい,頭痛) を起こすことは? ①  ②  ③  ④  ⑤ 辞退 …娘さんが重度の副反応(アレルギー反応など)を起こすことは? ①  ②  ③  ④  ⑤ 辞退 …接種するか決めるまでに,もう少し時間をかける? ①  ②  ③  ④  ⑤ 後で さあ,あなたにとって最も重要だった理由を踏まえて考えてみましょう。 どの選択肢が娘さんにとって望ましいと思いますか?□を入れてみてください。  □ 今すぐに,学校で接種する  □ 後で,診療所や専門クリニックで接種する  □ 接種を辞退する  □ わからない ステップ3:決定するために,他に必要なことは何でしょう? 知識 今までの説明の主なポイントについて,どのくらい理解できたでしょうか。最もあてはまると思われる□に を入れてください。 今すぐ接種 後で接種 接種しない わからない 1.子宮頸がんのリスクが最も低い選択肢は? □ □ □ □ 2.陰部のイボのリスクが最も低い選択肢は? □ □ □ □ 3.重度の副反応がおこるリスクが最も低い選択肢は? □ □ □ □ 1〜2年間 3〜5年間 6〜10年間 10年以上 4.ワクチンの効果は何年くらい続く? □ □ □ □ はい いいえ それぞれの選択肢の良い点と悪い点について,十分理解していると思いますか? □ □ 価値基準 良い点と悪い点の中で,どれがあなたにとって最も重要か,はっきりしていますか? □ □ 支援の有無 この意思決定支援ツール以外に,決定にあたって助言やサポートを受けることはできますか? □ □ 決定の確かさ 何があなたの娘さんにとって最適な選択か,に自信がありますか? □ □ ステップ4:次にすべきことは何でしょう? □を入れてみて下さい。  □ 学校から接種の連絡があれば,直ちに接種させることに決めた  □ もう少し後で,診療所か専門クリニックで接種させることに決めた  □ 接種させないことに決めた  □ かかりつけ医や家族と相談する必要がある  □ もう少し選択肢について情報を得る必要がある  □ その他(具体的に)______________________________________________ 注:この意思決定支援ツールは,医療者の助言に代わるものではありません。 1 IPDAS collaboration:2003年にDAの基準作りのために 設立された研究者・医療者・関係者から成る国際協同グ ループで,カーディフ大学教授の Glyn Elwyn(U.K)と オタワ大学教授の Dawn Stacey(Canada)が統括している。

(9)

か国122名の専門家及び4つの関係団体がオンライン

上でDelphi法2を用いて意見の収束を行い決定に至っ

ている(Elwyn, O'Connor, Stacey, et al. 2006, p.3)。  2005年に作成されたオリジナル版チェックリスト は,計63項目に及ぶ包括的なものであったが,そ の 後 に 項 目 数 を30に 減 ら し た 簡 易 版(Abbreviated IPDAS checklist)が作られている(表3)。簡易版の評 価項目30は,オリジナル版作成時のDelphi法で参加 評価者の中央値が最高点(9点)で一致した項目のみ で構成されている(オリジナル版は7点以上で構成)。 OHRIのWebページ上では327のDAが入手可能である が(2013年6月時点),各DAはこの簡易版を使って個々 の評価項目を満たすか否か(Yes/No)でその質を評価 され,それぞれの結果スコアがYes項目数/評価項目 数で表示されている。DAの対象が治療なのか,検査 あるいはスクリーニングなのか,によって評価項目 30のうち該当しない項目も生じる。この非該当項目 はNA(not available)として処理され,評価項目数は 減数される。内容項目に関してはDA自体を見れば評 価可能であるが,開発プロセスや有効性の項目では, フィールドテストの結果やDAを使用した検証結果(有 効性を示すエビデンスの有無)を問う評価項目が含ま れており,DA自体あるいは関連文献中で言及されて いなければ不明(Unknown)として減点される。  表2最右欄に,予防接種関連の6つのDAが簡易版 IPDASチェックリストによって評価された結果を示 している。予防接種は「治療」の範疇に含まれるため, 内容項目中の「検査」・「スクリーニング」に特化した 評価項目は外されている。6つのDA中,全評価項目 を満たしているのはNo.1の1つのみである。他5つの DAの減点理由をみると,内容項目においては,各選 択肢を選んだ場合のアウトカム発生確率の説明が不十 分,開発プロセス項目においては,フィールドテス トの不足あるいはテスト結果が不明,記載情報の参 照元が未提示,利益相反の未開示,などである。有 効性項目での減点理由は,エビデンスの存在が不明 (Unknown)なためである。  IPDASチェックリストは有用な評価ツールではある が,Yes/Noの二値評定のため精緻な量的評価に向か ない,またDAの種類によって評価項目が減数される ため評価結果の比較がしにくい,という問題点がある (Elwyn, O'Connor, Bennett, et al. 2009, p.2)。これを解 消するために,カーディフ大学の研究グループを中心 に,オリジナル版IPDASチェックリストの項目を再 編成した別の評価ツールIPDASi(International Patient Decision Aids Standards Instrument)が開発検証され ている。IPDASiは第三者によるDAの質評価を行うた めの専用評価ツールで,10の要素項目(情報提供,結 果可能性の提示,価値基準の明確化,体系的なガイダ ンス,開発プロセス,エビデンス,利益相反開示,平 易な言葉の使用,評価結果の有無,スクリーニングテ ストに特化した要素項目)の下に47の評価項目(簡易 版は19項目)が連なり,各項目を4段階尺度(strongly

agree∼strongly disagree)で評価し,総得点を0∼100

点で表示する形式である。このIPDASiを用いた評定 用のWebアプリケーションもすでに存在し,DA開発 者あるいは特定のDAを使用予定の施設関係者などが 個々のDAの評価を申し込むと,トレーニングを受け た評価者グループがIPDASi基準に基づいた評点とコ メントをフィードバックするシステムが運営されてい る。このサービスはまだパイロット段階とのことであ るが,ユニバーサルな基準をもってDAを客観的に評 価し,その質を担保する動きが進んでいる。

Ⅴ.結   語

 意思決定支援を必要とする予防的な医療介入は比較 的少ないため,予防接種の決定支援を対象とした研究 数は限られており,支援効果も限定的である。効果的 な支援のタイミングやインターネットの活用を含めた 支援方法の探究とともに,支援効果を評価するための アウトカム指標に関する検討が必要である。  OHRIを中心にDAの質の標準化に向けた国際基準 設定の動きがあり,第三者機関によるシステム化し たDA評価を行う研究が進行中である。今後はこの IPDAS評価基準を念頭に置いて,意思決定支援DAの 開発や活用を行っていく必要がある。  欧米に比べると,日本の医療現場におけるDAの使 用はまだかなり限られているが,決定に困難を伴うよ うな検査や治療上の選択は,医療の複雑化とともに 今後も増えていくことが予想される。患者の意思決 定を支援する手段はDAのみにとどまらないが,DAは 決定の質 を高めるのに有効なツールである(Stacey, 2 Delphi法:アンケートの回答分布を収束させるための 技法のひとつ。関係者(専門家など)に対して一定の質 問に関するアンケートを行い,その回答結果の分布を参 考に,再度答えてもらうという過程を繰り返すことによ って,回答分布を収束させる(濱嶋・竹内・石川,1997, p.448)。

(10)

Bennett, Barry, et al. 2011)。欧米で開発されたDAの 導入にあたっては,日本文化や日本人の特性に適合す るものであるかどうか,内容を十分吟味する必要があ る。また実際に,誰がどのような対象者にどのような 場面でDAを活用できるのか,普及に至るには現場の 体制づくりや医療者のトレーニングも含めた包括的な 取り組みが求められる。 引用文献

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(11)

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参照

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