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希少生物に対する水族館の役割 : 海洋博公演のヤシガニについて(日本におけるヤシガニ研究の現在)

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Academic year: 2021

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白脳認定却: 回駒田(2011) C a rcinological Socie砂 0 1J.

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希少生物に対する水族館の役割一海洋博公園のヤシガニについて

T h e role o f a q u a r i u m for e n d a n g e r e d species: a case o f the coconut crab in O c e a n E x p o P a r k

松崎章平

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慎一郎

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Shohei Matsuzaki a n d Shin-ichiro O k a

. は じめに 沖縄美ら海水族館のある海洋博覧会記念公園( 以 下海洋博公園) の敷地内 ( 海岸線約3k m. 面積約 77 ha) には,かねてよりヤシガニが頻繁に確認さ れており,相当数が生息していると推察された. 沖 縄本島ではこのようなまとまった個体群の報告は無 く,分布のほぼ北限にある点においても貴重な個体 群であると判断された ヤシガニは迫力ある外観や貝殻を持たないヤドカ リ類である等の特徴から,沖縄美ら海水族館をはじ めとして各地の水族館で高い展示効果が期待できる 生物として扱われている. 囲内のヤシガニ資源が枯 渇に向かっている現状を考えると,情報発信の拠点 のひとつとしての水族館の利用は,一定の社会的効 果の期待できる保全啓蒙として位置づけられると考 えられる. 本報告では,希少生物に対して水族館がなすべき 役割を概説するとともに,海洋博公圏 内のヤシガニ 個体群に関する生態調査とその結果に配慮した水 族館の運用の展望について紹介したい. 1 ( 財) 海洋博覧会記念公園管理財団 沖縄美ら海 水族館 〒905-0206 沖縄県国頭郡本部町字石川424

Okinawa Churaumi Aquarium. 424 Ishikawa, Motobu,

Okinawa 905-0206, Japan

E-mail: s_m atsuzaki@ kaiyouhaku.orj.p

2 ( 財) 海洋博覧会記念公園管理財団 総合研究セ

ンター

干905-0206 沖縄県国頭郡本部町字石)[1888

Ocean Expo Research Center, 888 Ishikawa, Motobu, Okinawa 905-0206, Japan 園 水族館の役割 水族館が求められている役割としては,以下の4 つが挙げられるー ①収集・展示 水族館で飼育されている生物は,水族館内で繁殖 した個体を除き,そのほとんどが天然資源に依存し ている したがって,水族館は野外において水族を 収集し ,生き たまま搬入するための高い技術とその 継続的な研錆が求められている. 沖縄美ら海水族館 においては,ジンベエザメなどの大型魚類の運搬, 深海生物の採集・運搬等の技術開発が特筆すべき技 術であろう. また,飼育生物を効果的に展示するた めの工夫も並行して行われており,水槽規模やその 配置はもとより,より健康な状態で生物を観覧して もらえるよう,日々の飼育管理にも十分配慮する必 用がある ②調査 ・研究 水族館は各種水生生物やそれらに関する情報が数 多く寄せられる機関であるため,水生生物に関する 調査・研究に対しては有利な立場にある 調査の成 果は生物収集や飼育管理,論文や学会発表などを通 した知的生産,さらにはヤシガニなどの希少種やサ ンゴなどの生態系の基板となる重要な生物につい て,資源の現状や動態を把握するための貴重なd情報 となりうる等,多方面にわた って活用される ③教育 ・普及 水族館は展示を通して情報を発信しており,来館 者に水生生物を直に見て学習してもらうことを娯楽 とすることでその存在が成り立っている このた め,前述の「調査・研究

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の成果の発信による希少 生物の保全等に関する学習の機会を提供することも 重要な責務である ただし,水族館からの情報発信 日 本 甲 般 類 学 会 物 期 繍1 m

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松崎章平・間慎一郎 が幅広い年齢層の来館者に向けでほぼ一方的で、ある ため,発信する情報の正確さと平易さが常に要求さ れる. なお ,沖縄美 ら海水族館で、は, この「教育・ 普及」にも特に力を入れており,活魚車を使用して の移動水族館,出前講演,テーマを絞った各種展示 会なども逐次実施している ④保存・保管 (育成を含む) 水族館が持つ「水生生物が集められる」特性か ら,貴重な標本の保管・管理,希少種の保全を目的 とした生体の保全も水族館の重要な役割として挙げ られる 日本動物園水族館協会では,希少種の生体 の保全に関して種保存委員会を立ち上げ. 各水族館 が分担して希少種の保全育成に取り組んでおり,沖 縄美 ら海水族館ではタナゴモドキの人工繁殖等の成 果をあげている なお,ヤシガニを含めた甲殻類全 般は現在のところ保全育成の対象にはな っていない ものの, とりわけヤシガニについては現在の資源の 減少傾向を考えると,今後保全の対象として扱われ る可能性は高いと考えている. 圃海洋博公圏内こ生息するヤシガニの生態調査 冒頭にも述べたように ,沖縄本島では例のない規 模のヤシガニ個体群の保全に必要となる情報収集, さらには今後の公園管理 (保全事業や自然観察会の 実施等) にも有益な情報の取得を目的として, 2006 年から海洋博公園内に生息するヤシガニの生態調査 を実施している ここでは, 一連の調査の要点を概 説する なお,調査は現在も継続中であり,今後の 情報の蓄積により結果が異なる可能性があることを 注記しておきたい. 調査方法 公園内に設けた定線ルートを 2006 年 7 月から原 則として毎月踏査しヤ シガニの確認位置を記録し た また,公園内の目撃情報に関しでも整理した. 同時に前甲部の紋様を撮影するとともにサイズや体 重,調査実施時の気温を記録した 結 果 2009年までに計 157 個体のヤシガニが確認され, その大部分は 500g以下の個体であ った. ま た,メ 84 [ Can僧r20 (2011) スは最大で約 800 g であるのに対し,雄では 2 kg を 超える個体も確認され,雄が大型である傾向が明ら かであ った また ,抱卵個体の最小は 169g (胸長 約25m m) であり,ほぼ最大の個体まで断続的に 確認された 確認個体数 (ルートセンサス l 回あた りの確認数 の各月の平均値) の季節変動を見ると, 1- 3 月に はほとんど確認されておらず,

4

月以 降 漸 増 し 8- 10月に高い値を示した以降急減した (図 1). こ のような変動から,公園内でヤシガニを確認しやす い時期は 7- 10 月頃と判断された また,確認数と 調査時の気温との関係をみると,気温 19' C 以下で はヤシガニはまったく確認されず, 23' C 以上で多く の個体が確認されている傾向にあった. このよう に,気温の低い条件 (19' C 以下) ではヤシガニの活 動はほとんど停止し 23' C 以上で活発化する様子が 窺える (図 2). とりわけ,冬 早春季にはほとん ど活動していない状況は,分布の北限に近い当個体 群の特筆すべき特徴と 言 える. ヤシガニの確認位置は公園の西 南西部の樹林地 3 G書証

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10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月 図1 . 月別確認個体数.

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15 20 25 30 気温(OC ) 図 2, 気潰と確認個体数

(3)

海洋博公園のヤシガニ 図 3. ヤシガニの確認個所(. ) に集中する傾向にある一方,芝地や誘客施設周辺で は明らかに少なかった( 図 3) . このように,ヤシ ガニの生息には樹林地が重要であると判断された . なお,当樹林地および隣接する海岸は,海洋博公園 開設以降ほぼ自然の状態で維持されており,海洋博 公園にヤシガニが残存した大きな要因であることは 疑いない. ヤシガニの甲の紋様は多様であり ,飼育個体の脱 皮前後においてもその紋様は完全に転写されていた ことから,前甲部の紋様により個体識別が可能と判 断された これを全157個体について照合したとこ ろ. 18例の再捕が確認された 再捕前後における 各個体の移動距離は,再捕までの期間に関わらず概 ね20 0 m以内にあり,移動範囲はかなり限定され ている状況が窺えた さらに,標識・再捕による個 体数推定方法のひとつである Schnabel法による推 定生息数は約

780

個体と推定された ただし,紋様 による個体識別の再捕例は十分とは言えず,今後の 採捕例の増補が望まれる. 圃 ヤシガニ保全に向けての水族館の役割 海洋博公園は沖縄美ら海水族館,熱帯ドリームセ ンタ一等の誘客施設を含むレクリエーシヨン指向の 強い国営公園である . また,年間300万人余りの集 客効果もあり,情報発信による社会的影響力も強 い こういった条件を考慮すると. ヤシガニの北限 個体群の保全に際しては,保護区を設定し人的影響 を完全に排除する方策よりも,ヤシガニを保全しつ つ情報発信のシンボルとして活用することにより, 地域に根ざした保全活動を誘発させる手法が得策と 考える. また,ヤシガニの分布は公園の西 南西部 の沿岸樹林に集中しており,行動範囲は概ね200 m 以内に限定されている. このように,公園内での陸 域生活期は海岸樹林周辺で完結しており,この範囲 における適切な環境管理によってヤシガニの持続的 な保全が可能でエあることを示唆している また,比 較的コンパクトなゾーニングによる保全が可能な点 は,環境教育の場としての活用が容易である利点も 加わる. 海洋博公園の管理関係者の一員である沖縄 美ら海水族館として,ヤシガニを利用した環境教育 の運営にも着目していきたい さらには,ヤシガニ の調査 - 研究を通した情報に関しでも環境教育や展 示に積極的に活用し,ヤシガニの生態,資源の現 状,希少性に関する正確な情報を発信し続けること も重要な役割と認識している

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参照

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本報告書は、日本財団の 2015