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運動器障害に対する理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 47 巻第 3 号 289 ∼運動器障害の理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標 296 頁(2020 年). 289. 講  座 シリーズ 「理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標」. 連載第 2 回 運動器障害に対する理学療法評価・効果判定の. ためのアウトカム指標*. ─頸部障害患者の評価・アウトカム指標─. 葉   清 規 1). (バイオメカニクス)の観点から,その動作を分析する. はじめに. ことは,運動器障害を把握するために重要である。よっ. 1.運動器障害の現状. て,理学療法が対象とする運動器障害(関節機能障害).  厚生労働省の国民生活基礎調査. 1). において,頻度の. は,変性やその他の要因により,筋骨格系による運動性,. 高い自覚症状として腰痛,肩こり,関節痛が常に上位を. 安定性といった正常な関節機能が障害された状態である. 占めている。これらは運動器の部位であり,その原因の. と考える。. すべてが運動器にあるとは断定できないが,多くは運動.  運動器障害には,外傷や加齢により組織の変性が生じ. 器に対し,なんらかの障害が生じていることが推測され. ることで関節機能が障害される場合と,日常生活で繰り. る。また,Nakamura ら. 2). は,運動器の慢性痛の疫学. 返されるメカニカルストレス(物理的ストレス)により. 調査において, 「頸部痛,肩こり,腰痛,四肢の痛みなど,. 組織の機能になんらかの異常が生じて,関節機能が障害. 骨や筋肉,関節,神経に関連する痛みを経験したことが. される場合がある。前者は,組織の器質的問題であり,. ありますか」という質問に対して,「ある」と回答した. 理学療法においては,変性した組織のさらなる悪化を防. 者は 86%(9,891 例)であった,と報告している。これ. ぐこと,関節機能障害の代償として生じた異常な姿勢,. らのことから,運動器障害がいかに身近な障害であり,. 動作による他の組織へのメカニカルストレスを軽減させ. その多くは疼痛を伴う障害であることが推測される。. ることが必要となる。これらの障害は,変形性股関節症 患者にみられる,股関節障害を骨盤位置で代償すること. 2.運動器障害をどう捉えるべきか. で,腰椎部にメカニカルストレスが加わり,腰痛の発症.   運 動 器(locomotive organ) に は, 脊 柱, 骨 盤, 各. 原因となる hip-spine syndrome. 関節などの器官があり,骨,軟骨,靱帯,筋,腱,血. 床においても中高年代を中心に遭遇する機会が多い。後. 管,皮下組織,脊髄および末梢神経などの組織も含まれ. 者は,日常での姿勢や動作の分析から,どのようなメカ. る. 3). 。運動器の役割として,人々が生活の中で,座る,. 4). などが挙げられ,臨. ニカルストレスが生じているのか把握し,それを是正す. 立つ,歩くなどの動作を遂行するために,それぞれ連携. るためのエクササイズや姿勢指導を行うことが必要とな. して働き,体幹,四肢の機能を果たしている。運動器の. る。これらの障害は,器質的に明らかな原因が特定でき. 中では,筋骨格系が正常な関節機能を保つために重要と. ない非特異的腰痛. なる。筋骨格系の組織は,各動作を外力に抗して正常に. から中高年代まで幅広くみられる。また,関節機能障害. 遂行するための力を伝達する機能. 3). があり,生体力学. Assessment and Outcome Index of Physical Therapy for Locomotive Organ Disorders: To the Patients with Cervical Spine Disorders 1)医療法人社団おると会 浜脇整形外科リハビリセンターリハビリ テーション科 (〒 730‒0842 広島県広島市中区舟入中町 11‒7) Kiyonori Yo, PT, PhD: Department of Rehabilitation, Hamawaki Orthopaedic Clinic キーワード:頸部障害,関節機能評価,テストバッテリー. などの関節機能障害であり,若年. は疼痛の要因ともなる。国際疼痛学会の慢性筋骨格系疼 痛の分類. *. 5). 6). に,炎症,骨関節の構造的変化,神経疾患. による疼痛だけではなく,非特異的慢性筋骨格系疼痛が 挙げられていることからも,関節機能障害が長期間改善 されなければ,運動器の慢性疼痛へ移行する一因となる 可能性がある。  本邦では,医療施設において,医師の診断のもとに理 学療法が処方される。よって,疾患から考える障害をも.

(2) 290. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. とに,治療展開を考えてきた。近年,本邦の理学療法に. る場合は,頸椎由来の症状か鑑別診断として,頸部の深. おいても,疾患にとらわれることなく,患者の障害を主. 部感覚(関節位置覚)や,バランス評価など,姿勢制御. 体に治療を展開していくことが考えられている。しか. に関連する評価も行うことが望ましい。. し,医療保険上,診断名を考慮せずに,障害のみを考え.  頸部障害における患者立脚型評価は,日本語への翻訳. た理学療法の展開が,現在の医療制度と矛盾しているこ. が報告されていない質問票もあり,本邦で使用されてい. とも事実である。これから先,我々理学療法士が取り組. る質問票は限られている。頸部痛は,再発や慢性化する. むべきことは,疾患と障害が一致するか否かを評価し,. ことが比較的多い. さらに疾患の中で運動器障害を細分化して治療展開して. 異なった複数の評価を組み合わせることによって,多面. いくことが必要であると考える。. 的(測定対象の異なる複数の特性に関すること)に患者.  以上のことより,運動器障害の評価・効果判定のアウ. の心理を把握するテストバッテリー. トカム指標は,疾患に留意しつつ,患者個々の日常での. と考える。テストバッテリーは,患者への負担を軽減す. 姿勢・動作における関節機能障害を改善するための評価. るために,評価の目的を明確にすること,各評価の長所. 指標が重要となる。本稿では,臨床で遭遇する機会が多. や短所を理解し,実施方法や評価結果の解釈に習熟して. い頸部障害の臨床指標を例にとり,臨床で効果判定とし. いること,必要最低限の評価の組み合わせで最大限の情. て使用される評価,テストバッテリーについて,その概. 報を得ること,などに配慮して実施することが望ましい。. 要と臨床的な観点からの有用性,今後の展開について検. そのためには,各評価がどのような概念をもっているの. 討した。. か把握して実施する必要がある。概念規定を明確にする. 頸部障害の評価,テストバッテリーの紹介・ 概要. 9)10). ことが報告されており,目的の. 11). は,有用である. ためには,定義が必要となる。実験や観察において定義 されるものは,操作的定義と呼ばれる. 12). 。臨床で使用. している評価がどのような定義で用いられているのか,.  運動器障害の中で,国民生活基礎調査 1)において有. 暗記科目のごとく,疾患に合わせた評価を実施するだけ. 訴率が高い自覚症状である肩こりについて,その定義は. では,患者の全体像を把握することは難しい。頸部障害. 7). は,肩こりに関. のテストバッテリーの有用性について,臨床で実施され. 連する文献を調査し,本邦では慢性的な頸部から肩甲. ており,日本語版が存在する質問票について検討した。. 様々な表現がなされている。篠崎ら. 骨にかけての張り感,重苦しい疼痛などの表現で,肩 こりに類似する症状の英語表現として,neck pain や. 1.関節機能評価(頸部障害). chronic non-specific neck pain を挙げており,頸部障害. 1)関節可動域. (頸部痛)を含む場合もあると考える。頸部障害を把握.  関節機能は,関節の可動範囲が保たれていることが. するためには,局所を評価する関節機能評価と,全体像. 必要であり,関節運動性を構成する評価のひとつとし. を評価する疾患特異的尺度などの患者立脚型評価を組み. て,一般的に使用されるのは頸部関節可動域(Cervical. 合わせることが望ましい。. Range of Motion:以下,CROM)である。治療効果の.  関節機能は,その運動性,安定性を評価するため,関. 指標として,簡易的であり,患者へのフィードバックも. 節可動域,筋機能,アライメントなどを評価する。これ. 容易である。頸部の自動運動の範囲を評価することで,. らの評価は,個々に考えるのではなく,姿勢や動作中に. 頸部障害が頸椎由来の原因と判別する手段になり,運動. 関節機能としての役割を果たしているのか分析すること. 強度など治療の目安ともなる。また,運動に対する耐性. が必要である。動作評価において,関節を包括的に捉え. や恐怖心など心理面の把握にもつながる。CROM の有. るための理論である joint by joint theory. 8). では,関節. 効性として,頸部痛に伴う機能障害度の把握に有効であ 13). ことや,慢性頸部痛患者では健常者と比較して,. はそれぞれ可動性(mobility)と安定性(stability)の. る. いずれかのひとつを主要な機能としてもち,それが交互. 頸部伸展の自動 ROM に有意な低下が認められる. に積み重なっているとされている。局所の病態を把握す. と,さらに,ケベック鞭打ち症関連障害において提唱さ. ることは,他の運動器障害でも同様であり,画像所見と. れた分類では,CROM は鞭打ち症の重症度を分類する. 理学所見が一致しているかなど,全体像を把握すること. 重要な要素. につながる。また,各理学所見においては,感度,特異. 保存治療患者の,治療 1 ヵ月後の日常生活機能障害の改. 度の問題により,必ずしも推測した結果が得られるとは. 善度に対して,頸部痛の強度および頸部伸展 ROM の改. 限らない。さらに,徒手的な評価であれば,検者による. 善度が関連していた. 信頼性についても把握しておく必要がある。また,頸部. とから,CROM は,頸部障害患者の運動性を評価する. 障害に合併して,眩暈や立ちくらみなど,姿勢制御にお. だけではなく,日常生活機能障害の評価においても有用. ける障害がみられることもある。これらの症状がみられ. な可能性がある。しかし,関連がある運動方向が限定さ. 15). 14). こ. とされている。著者らは,頸椎変性疾患. 16). ことを報告している。以上のこ.

(3) 運動器障害の理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標. 291. 活動を把握するのに有用であると考える。一瀬ら. 24). は,. CCFT 時の頸部深層屈筋である頸長筋の活動について 報告している。  ただし,上記の評価は機器を必要とするため,一般的 であるとは言い難い。よって,触診および,視診により, 各動作で頸部がどのような運動を行っているのか評価す ることが,頸部障害の筋機能評価では重要であると考 える。 3)アライメント  頸部障害において,姿勢や動作による頭頸部へのメカ ニカルストレスもその発症要因. 25). とされ,頸椎矢状面. アライメントは,加齢や脊椎変性による影響を受け,頸 図 1 頭頸部屈曲テスト(CCFT) プレッシャーバイオフィードバックを使用した頸部深層屈 筋の評価.頸部下にカフを設置し,指定された圧まで深層 屈筋を収縮させ保持させる.段階的に圧をあげていく.. 椎疾患の発生に影響を及ぼす. 26)27). ことも報告されてい. る。臨床では頸部障害を有する症例の静的アライメント として,矢状面上で頭頸部前方姿勢がよく観察される。 Chiu ら. 28). は,コンピュータ使用中の頭頸部前方姿勢. が頸部症状と有意に関連していたことを報告しており, McAviney ら. 29). は,頸部痛を有する群と有さない群で. れており,その他の運動方向と障害との関連は不明であ. は,頸椎前弯 20 度以下の場合に頸部痛を有することが. る。また,CROM は,日常生活障害や,身体障害の予. 多く,頸椎前弯 0 度以下で頸部痛の発生するリスクは. 17)18). との報告もある。日常生活におけ. 18 倍であったと報告している。これらのことから,頸. る頸部動作には,コップで水を飲むなどの上を向く(伸. 部障害の頸椎矢状面アライメントは,姿勢や動作を評価. 展)動作,デスクワークなど頭頸部を前傾して保持する. するうえで重要な要素であり,正しく把握することは有. 動作,後ろを振り向くなどの回旋動作がある。CROM. 用であると考える。頸椎矢状面アライメントは,単純 X. の障害は,頸部の最終可動域の疼痛により可動範囲が制. 線頸椎側面像を用いた測定が一般的である。その測定方. 限される場合と,可動中に疼痛が生じる場合がある。必. 法は複数報告されており(図 2),測定方法間での信頼. ずしも,生活習慣,就労上で影響がある運動方向が障害. 性についての報告. されるとは限らないため,限定的な評価指標であると考. できない場合は,視診での評価となり,各分節での可動. える。さらに検者内信頼性および,検者間信頼性の報. 範囲を視診で把握するには限界もあるため,頭頸部のグ. 測因子ではない. 告. 19) 20). において,必ずしも一致した見解ではないため,. 30)31). も散見される。画像所見が確認. ローバルアライメントを評価することが重要である。. 実際に使用する療法士で評価精度を確認しておく必要が.  頸部のアライメントに影響する因子として,上肢の重. ある。. 量,胸椎アライメント,肩甲骨アライメントなどが挙げ. 2)筋機能. られる。頸部と隣接する部位のアライメント異常は,頸.  筋機能は関節運動性,安定性に大きく関与し,定量的. 椎にメカニカルストレスを加える。座位の不良姿勢で. な評価では,MMT やハンドヘルドダイナモメーターに. は,胸椎後弯,肩甲骨外転位,上腕骨頭の前方変位がみ. よる等尺性筋力を評価することがある。しかし,頸部障. られ,頭頸部前方姿勢を助長していることが多い。頭. 害においては,動作に疼痛を伴うことが多く,疼痛によ. 頸部前方姿勢では,環椎後頭関節を支点とした場合に,. り固有筋力を発揮できないこともみられる。頸部障害の. C7/Th1 間を通る頸椎の屈伸軸との距離が大きくなるこ. 筋機能評価で,頭頸部の保持能力と持久力の評価とし. とで,頸部の屈曲トルクが増大し,頸部後方支持組織に. て,プレッシャーバイオフィードバック(図 1)を使用. は過剰な筋活動が強要され. した頸部深層屈筋群の機能評価である,頭頸部屈曲テス. ルストレスは増加する。頸椎,胸椎,肩甲骨の位置を評. 21). ト(Cranio-Cervical Flexion test:以下,CCFT). が. 用いられる。頸部痛患者に対する頸部深層屈筋群のエク ササイズの効果. 22)23). は散見され,頸部障害の関節安定. 32). ,椎間関節へのメカニカ. 価し修正することは,頸椎構成体にかかるメカニカルス トレスを軽減させることにつながる(図 3)。  日常生活では頸部をあらゆる方向へ動かすため,各運. 性の評価として有用であると考える。. 動方向での頸部の動的アライメントを確認することが必.  また,近年,運動器障害の筋活動における評価として,. 要である。頸部痛患者は,頸部屈筋群と伸筋群のインバ. 超音波診断装置が用いられることもある。超音波は,簡. ランス(筋の不均衡)により,頸部の屈曲,伸展動作. 便かつ無侵襲な機器であり,姿勢,動作における筋群の. で,頭頸部の並進運動(図 4)の増加が見られることが.

(4) 292. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. 図 2 頸椎矢状面アライメント測定法の例 a. Borden’s Method: 軸椎歯突起後縁と第 7 頸椎椎体後下縁を結ぶ線(A)と,第 2 頸椎椎体後面 から第 7 頸椎椎体後面に沿った線(B)の間で,距離が最大となる位置までの線(C)を測定する. b. Ishihara Index Method: 第 2 頸椎椎体後下縁(A)と第 7 頸椎椎体後下縁(B)を結ぶ線と,第 3-6 頸椎の各椎体後下縁の距離(a3-6)を加算したものを第 2 頸椎と第 7 頸椎椎体後下縁の距離で 除して算出する(頸椎弯曲指数:(a3+a4+a5+a6)/ AB × 100) . c. C2-7 Cobb Method: 第 2 頸椎椎体下縁の接線に垂直な線と,第 7 頸椎椎体下縁の接線に垂直な線 によってなす角を測定する. d. Posterior Tangent Method: Absolute Rotation Angle C2-7: 第 2 頸椎椎体後面の接線と第 7 頸椎 椎体後面接線とのなす角を測定する.. 多い。また,頸部障害患者では,頸椎の分節的運動にお いて,上下椎間の過少運動性(hypomobility)による代 償運動や,不安定性による過剰運動性(hypermobility) が生じている可能性もある。頸部障害における姿勢,動 作の改善には,頸椎のみならず,胸椎,腰椎など体幹機 能も含めたモーターコントロール(運動制御)による運 動学習. 33). が重要であり,関節可動域,筋機能など各姿. 勢,動作を構成する要素を評価し,なにが異常なのか分 析することが必要である。 4)理学検査  病態の鑑別は,理学検査と,その他の評価を組み合わ せて行うものである。理学検査は,運動器障害が骨関節 図 3 頭頸部前方姿勢 環椎後頭関節を支点とした垂線から,C7/Th1 間を通る頸 椎の屈伸軸の距離が大きくなることで,頸部後方支持組織 には過剰な筋活動が強要される.胸椎後弯,肩甲骨外転位, 上腕骨頭も前方変位しており,座位での不良姿勢を助長し ている.. の器質的問題(退行変性など)であるかを把握するため に必要な情報である。  頸部神経根刺激症状の評価で,簡便で臨床でよくみら れる理学検査として,Jackson test,Spurling test や上.

(5) 運動器障害の理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標. 293. 図 4 頸部屈曲時の頭頸部の位置 a :正常な屈曲動作:耳介と肩峰の位置が近い b:頸部痛患者の屈曲動作:耳介と肩峰の位置が遠い(頭頸部並進運動の増加). 図 5 メカニカル評価の例 a :反復運動検査:retraction(上位頸椎屈曲,下位頸椎伸展複合運動) b:姿勢保持検査:不良姿勢からの矯正. 肢緊張検査が用いられ,感度,特異度の報告もみられ る. 34)35). 。これらの検査のみで病態を把握することは難. 位や分布の変化は,症状が中枢へ移動(centralization) すると好ましい反応,末梢へ移動(peripheralization). しいが,その他の評価を組み合わせて,病態の推論や効. すると好ましくない反応として捉える。centralization. 果判定に利用するうえでは有用な情報となる。. が起こる患者は,起きない患者に比べて予後が良好であ.  メカニカル評価として,反復運動検査,姿勢保持検. る. 査. 36). が挙げられる(図 5)。反復運動検査は,頸椎の各. 37). といわれているが,その機序については明らかで. はない。. 運動方向へ 10 回程度最終域まで反復運動を行わせる。 運動中,または運動後に,疼痛,痺れなどの症状面や,. 2.患者立脚型評価. 関節可動域,筋力,感覚などの所見面に改善,または悪. 1)Neck Disability Index(以下,NDI). 化が生じるかを確認する検査で,どの運動方向で症状変.  NDI は,頸部痛による日常生活機能障害の評価とし. 化が生じたかにより,運動療法の内容を決定する。姿勢. て,多くの国々で利用されている質問票である。痛みの. 保持検査は,同一姿勢保持による症状悪化の訴えがある. 強度,セルフケア,挙上動作,読書,頭痛の強度,集中. 場合に行い,2 つの姿勢で症状を誘発するまで保持(5. 力,仕事,車の運転,睡眠,レクリエーションに関す. 分を上限)させる。その後,姿勢を元に戻して,疼痛な. る 10 項目からなる。各項目 0 ∼ 5 点で評点し,(合計点. どの症状面,関節可動域などの所見面に改善,または悪. / 50)× 100 =障害度(%)を求める。値が高いほど日. 化が生じるかを確認する検査である。また,症状面の反. 常生活における機能障害が重度であることを示してい. 応として,部位や分布の変化についても確認する。部. る。日本語版 NDI も含め,他の指標とも相関がみられ,.

(6) 294. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. 信頼性,妥当性,反応性を有することが明らかとなっ ている. 38)39). 。また,臨床的に意義のある最小変化量. (minimally clinical important difference:以下,MCID) の報告. 40)41). についても散見される。. 算出する。頸椎機能スコアにおいては,真上の天井を見 る,コップの水を飲む(伸展) ,後ろを向いて話をする (回旋),階段を下りるときに足元を見る(屈曲)などの 動作に関する質問であり,頸部の運動方向が推測できる.  著者らは,頸椎変性疾患患者の健康関連 Quality of Life. ものとなっている。効果判定の方法が明確になっている. (以下,QOL)は,自覚的症状との関連があり,特に. 点や,質問内容で頸部障害がみられる動作(運動方向). NDI の障害度が強く関連していた 43). 42). ことを報告してい. を把握できるため,有用であると考える。ただし,回答. は,NDI について複数の異なる言. が「できない」,「無理をすればできる」,「不自由なくで. 語でのバージョンを調査し,内的整合性や検者の信頼性. きる」となっており,動作の質の評価としては不十分で. は基準を満たしているが,心理面における健康状態には. あり,関節機能評価を組み合わせる必要があると考える。. る。一方,Yao ら. さらなる調査が必要であるとしており,Nakamaru ら. 39).  また,Takeshita ら. 45). は,頸部痛,神経根症,頸髄症. は,NDI と MOS 36-Item Short-Form Health Survey(以. を含む頸椎疾患患者の NDI と JOACMEQ との関連を調. 下,SF-36)の下位尺度との相関は,good から fair の範. 査し,有意な関連はみられていたが,相関係数は Original. 囲(‒ 0.25 ∼ ‒ 0.51)であったことを報告している。また,. NDI とは ‒ 0.397,Modified NDI とは ‒ 0.369 であったと報. NDI は頸部痛による日常生活機能障害の程度を評価する. 告している。これは目的とする評価の概念が一部は重複. ものであるが,頸部障害には上肢症状を伴う症例も存在. しているためと考える。よって,NDI,JOACMEQ と. する。よって,NDI は日常生活機能だけではなく,包. もに実施することで,重複していない概念を評価し,よ. 括的な QOL にも関連する指標であり,頸部障害を評価. り患者の全体像を把握できると考える。. するうえで重要な評価であると考える。ただし,上肢症. 3)SF8 Health Survey(以下,SF-8) ,SF-36. 状を伴う症例や,慢性痛など心理面の問題により詳細な.  SF-8,SF-36 は,健康状態を測定し,包括的で多目. QOL 評価を必要とする症例も存在することから,他の疾. 的に使用できる質問票であり,信頼性,妥当性につい. 患特異的尺度や SF-36 などの健康関連 QOL 指標を組み. て報告されている. 合わせることが望ましいと考える。. 能(Physical Functioning:PF) ,日常役割機能・身体. 46)47). 。8 つの下位尺度である身体機.  また,総合得点から効果判定をするため,患者個々で. (Role Physical:RP) ,体の痛み(Bodily Pain:BP) ,全. 必要とされる生活機能の改善度と,NDI の改善度が一. 体 的 健 康 感(General Health:GH) , 活 力(Vitality:. 致していないこともある。さらに,各項目の回答は順序. VT),社会生活機能(Social Functioning:SF) ,日常役. 尺度であり,その動作の質がどのように変化したこと. 割機能・精神(Role Emotional:RE) ,心の健康(Mental. で疼痛が軽減したかは反映されていない。よって,NDI. Health:MH)と身体的サマリースコア(Physical Com-. の評価項目に関節機能評価を組み合わせて,理学療法を. ponent Summary:以下,PCS) ,精神的サマリースコ. 展開することが必要であると考える。. ア(Mental Component Summary: 以 下,MCS) ,役. 2)日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(Japanese. 割・社会的サマリースコア(Role・Social Component. Orthopaedic Association Cervical Myelopathy Eval-. Summary:RCS)が算出可能である。. uation Questionnaire:以下,JOACMEQ).  また,国民標準値との比較が可能であり,様々な要素.  JOACMEQ は,日本発の頸椎疾患評価質問票であり,. の健康関連 QOL が把握可能である。SF-8 は短縮版質問. 頸椎機能,上肢機能,下肢機能,膀胱機能,QOL の 5. 票であり,PCS,MCS までの算出が可能である。頸椎. つの因子グループごとにスコアを求める。その信頼性,. 疾患については,個人的,身体的,心理社会的側面がリ. 妥当性は検証されており. 44). ,国内で使用できる患者立. スク因子として報告されており. 9)48)49). ,包括的な尺度. 脚型評価である。頸椎椎間板ヘルニアを含む頸髄症にお. として健康関連 QOL を把握することは,臨床上有用で. いて,従来使用されていた日本整形外科学会頸髄症治療. あると考える。SF-8,SF-36 ともに,使用にはライセン. 成績判定基準(以下,JOA スコア)とも相関し,JOA. ス登録が必要である。. スコアでは評価できなかった頸椎機能や QOL を評価で.  上記の患者立脚型評価は,包括的な側面から疾患特有. きることが確認されている。各スコアはそれぞれ 0 ∼. な側面まで,幅広く評価をすることで患者像を詳細に捉. 100 ポイントの値をとり,値が大きいほど良好であるこ. え,治療に還元できることから,頸部障害のテストバッ. とを示す。治療効果の比較方法も規定されており,治療. テリーとして有用であると考える(図 6) 。しかし,そ. 前後の獲得スコアで比較したい場合は個人毎での獲得点. のために質問票を数多く実施することは,回答に時間を. 数で比較を行う。また,MCID も報告されており,有効. 要し,患者にとっては負担となる。回答するために,頭. 率で比較する場合は,獲得スコアが定められたポイント. 頸部は前傾位をとり,持続的に同じ姿勢をとる。当然,. 以上か否かで効果あり,効果なしの判定をして有効率を. 頸部組織に対してメカニカルストレスが加わり,治療の.

(7) 運動器障害の理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標. 295. 図 6 頸部障害のテストバッテリー. ための評価により,さらに頸部に過剰なストレスを加え るという本末転倒な状況になってしまう。そのような状 況では,患者が質問票への回答を拒否されることもある だろうし,治療者との信頼関係を損ねることにもつなが りかねない。よって,実施する評価の概念を考えて,そ の障害の評価として必要であるか判断し,その必要性を 患者に説明することも重要であると考える。. 今後の展開  運動器障害において,様々な関節機能評価や各種質問 票は,直接的,間接的な治療効果判定の手段として今後 も使用されるであろう。今後の理学療法評価について は,姿勢や動作の質的な部分を,どのようにして定量的 な評価につなげるかが重要になると考える。そのために は,まず患者がなにを求めているのか,自身の理学療法 がなにを目的にやっているのか,運動器障害の評価の概 念を考えて,関連のある評価を選択する臨床能力が必要 となる。そこには知識的なものだけではなく,評価を正 常に遂行できるだけの技術も必要となる。療法士の経験 年数,習得技術など質による差が生まれる可能性もあ る。よりよい評価をするためには,それを遂行するため の技術,その評価を吟味する臨床研究のための学術的知 識,ともに習熟した理学療法士の育成が望まれる。  本邦の臨床場面では,理学療法を実施する時間は規定 されており,評価に時間を要すると,治療まで展開する 時間が確保できない可能性もある。そこで姿勢や動作の 評価から,治療に結びつける展開をつくることが必要で あると考える。さらに,理学療法の視点から,患者の動 作(パフォーマンス)に直結するような評価指標を作成 していくことが必要であると考える。そして,評価はあ くまで治療のためにある,ということを念頭におき,運 動器障害の理学療法に取り組むことが重要であると考 える。. 利益相反  本稿について,開示すべき利益相反はない。 文  献 1)厚生労働省ホームページ 国民生活基礎調査.https:// www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html(2019 年 12 月 22 日引用) 2)Nakamura M, Nishiwaki Y, et al.: Prevalence and characteristics of chronic musculoskeletal pain in Japan. J Orthop Sci. 2011; 16: 432‒434. 3)馬場久敏:序章−整形外科とは,標準整形外科学(第 12 版).松野丈夫,中村利孝(編) ,医学書院,東京,2014, pp. 1‒4. 4)帖佐悦男:Hip-Spine Syndrome の定義と分類の問題点. 整外と災外.2003; 46: 917‒925. 5)日本整形外科学会,日本腰痛学会:腰痛診療ガイドライン 2012.日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,腰痛診 療ガイドライン策定委員会(編),南江堂,東京,2012, pp. 11‒14. 6)慢性疼痛治療ガイドラインワーキンググループ:慢性疼 痛治療ガイドライン.真興交易医書出版部,東京,2018, pp. 15‒26. 7)篠崎哲也,高岸憲二:肩こりの病態と症状.MB Orthop. 2006; 19: 1‒5. 8)本橋恵美:体幹運動療法の基本概念 Joint by Joint Theory とその実際.臨スポーツ医.2019; 36: 1102‒1107. 9)Leclerc A, Niedhammer I, et al.: One-year predictive factors for various aspects of neck disorders. Spine. 1999; 24: 1455‒1462. 10)Radhakrishnan K, Litchy WJ, et al.: Epidemiology of cervical radiculopathy: A population-based study from Rochester, Minnesota, 1976 through 1990. Brain. 1994; 117: 325‒335. 11)笠原 諭:慢性痛患者の評価,慢性疼痛疾患の手引き.日 本整形外科学会運動器疼痛対策委員会(編),南江堂,東 京,2013,pp. 64‒73. 12)根津 進:誰でも書ける研究論文.日総研出版,東京, 1994,pp. 94‒97. 13)Hanten WP, Olson SL, et al.: Total head excursion and resting head posture: normal and patient comparisons. Arch Phys Med Rehabil. 2000; 81: 62‒66. 14)Jordan A, Mehlsen J, et al.: A comparison of physical charac-.

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図 2 頸椎矢状面アライメント測定法の例
図 6 頸部障害のテストバッテリー

参照

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