• 検索結果がありません。

特集 イノベーションデザイン論

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "特集 イノベーションデザイン論"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)デザイン学研究特集号  Vol.25-1 No.97. 永井由佳里 Nagai Yukari 北陸先端科学技術大学院大学. Japan Advanced Institute of Science and Technology. 特集 イノベーションデザイン論 Preface: Theory on Innovation Design. 「イノベーションはデザインできるのでしょうか?」 この問いへの答えを求める過程で、イノベーションの意味をより深く考 え、デザインとは何かという問いを重ねることになる。私たちが最も重視し たいのは、こうした問いを立て、多面的にものごとの意味を考え、議論し続 けることである。なぜなら、その過程を経てこそ、新しいデザインの意味が 生まれてくると思われるからだ。 「考える力」とは何だろう。少なくとも、今の日本社会では、ひとりひとり が自由に考えることが許されている。自分の想像や夢を膨らませたり、工夫 を凝らして何かをつくったりすることは楽しいはずだ。しかし、自由が一番 難しいという声をしばしば耳にする。例えば、私が以前中学校で教えていた 美術で、 「自由画」となると「何を描けばよいか教えてください」という質問 が少なくなかった。好き勝手に描きたいものを描きたいように描けばよいの だが、本人たちは、どうしてよいのかわからないという。自由の中に放たれ ると「不安」になるのは、中学生も大人も共通かもしれない。自由が辛く感 じられるのは考えが定まらない状態がいつまで続くかわからないからだろう。 これに関連することが「デザイン思考」にある。グループワークによる課 題発見の方法としてデザイン思考の普及が著しいが、個人では難しいリフ レーミングが、グループの多様性によって比較的得やすくなることが魅力と なっている。デザイン思考はマインドや態度を重視しており、行動変容や自 己の成長を促す思考トレーニングだと考えられる。興味深いのが、アイデア が曖昧な段階での不安定さに耐え、保留できる態度が求められる点である。 一旦定まった考えは、新しい考えの芽生えを阻む場合がある。早急に解を定 めないこと、つまり「じっくり考える」ことが肝心だとされる所以である。 イノベーションデザイン論は、人間と未知の社会をつなぐデザイン学の新 しい考え方であり、自由な展開のためには既存知識だけでは不足である。イ ノベーション創出を目指す教育の場では、ものごとを深く考え、新しい意味 を見出す力や、グループで共創的に取り組むプログラムを実施している。こ うした教育や、企業等の現場から見いだされる知見が一対となり成長する理 論である。本特集では、よく検討されたプログラム例を取り上げ、それぞれ が基盤としているイノベーションデザイン論の特長と注目すべき知見を紹介 したい。. 3.

(2) 4. 特集:イノベーションデザイン論. 池本論文は、Project based learning 型教育において、マインドセットの重要. 性を指摘している。. ・事実に共感した上で、新たな問題提起をしようと常に考えていた ・対立を乗り越えて、全員が満足する結果を出そうと前向きに考えていた ・自分たちは、創造的なものづくりで、必ず成功できると確信していた ツールやそれを使いこなすスキルがあっても、このようなマインドセット がなければ、それを活かすことはできない。(p11). 松前論文は、野中の知識創造論を基盤に開発され、緻密に構成されたプロ. グラムを紹介し、イノベーション創出に必要な能力・行動特性を向上させ得 ることを報告している。 イノベーション教育プログラムのマネジメントは、如何にあるべきか。創 造性、自律性が不可欠なイノベーションの性質から、知識伝達型教育でみら れるような、管理的・受動的な教育マネジメントとは本質的に異なるマネジ メントが求められる。(p14). また、宮田らの論文では、知識創造としての「アイデアにより社会的に大. きな変革をもたらすモノゴトの創出」にむけた一連のプログラムが紹介され ているが、具体的な内容とともに受講生の自己評価が考察されているが、そ れを踏まえ、次なる課題が示されている。 本取組の今後の課題として、評価をどのように行うかという問題がある。 グループワーク全般に共通する問題と言えるが、共同の活動への貢献度をど のように測るかは非常に重要であるにもかかわらず、明確な手法は確立され ていない。(p38). 山岡・前川の論文は、「目利き力」が新しいデザインの視点であることを. 明確に述べている。協創においても目利き人材が必要であるとし、制約編集 の方法が提案されている。 このアプローチにおいては、デザイン対象事物の種類や状態の自由度が高 く、当然のことながら、考慮すべき制約や事物状態を定めるための制約が不 明・曖昧になる。結果として、さまざまな選択肢の中から正しい解を得るた めに、的確な外部制約と内部制約を選定し設定することがデザイン活動の要 点となる。(p45). 田浦・永井論文は、「創造性」と「イノベーションの質」に注目した、イ. ノベーションデザイン論を主張し、直感の意味を提起するとともに、そのデ ザインスクールを紹介している。 互いに関連のうすい概念をなかば強制的に結びつけてそこからアイデアを 考えさせる手法は、クリステンセンがイノベーション力を向上させるために 提案している手法に類似しているが、本手法では、その結びつけを「直感 力」に頼るところに特徴がある。(p61). 仲谷論文は、イノベーションが価値を生み出す構造を多面的にとらえ、そ. のマネジメントの方法を議論している。 イノベーションのマネジメントに成功している企業では、デザイン思考を 方法だけではなくそれを実践する人材や環境まで含めたマネジメントに取り くむことによって、意図せずともセレンディピティの「場」としての価値創 造プロセスを実践する仕組みを構築していると考えられる。(p74). 前川論文は、イノベーションデザインに必要な能力と大学院教育の事例を. 示し、新たな価値の発見を検討している。 新たな価値の発見とその新たな方法での満足を実現するには、所与の正解.

(3) デザイン学研究特集号  Vol.25-1 No.97. を効率よく求めるのとは全く異なる能力すなわち、既に顕在的な情報となっ た形式知ではなく、新たな暗黙知を獲得し活かす能力である。(p82). 小粥論文は、より基本的な姿勢で、アクティブラーニングを体系的に示. し、デザイン学への期待を述べている。 情報分野で最適化問題とも定義されたデザインは、「情報発信のメディア であった Web1.0の時代から、人々の集合知とともに進む Web2.0の時代へ移. 行」、Google や Facebook などによって「育てるデザイン」へと変貌した。デ ザインの対象は、人と道具の接点から、社会と技術の接点へと広がったので ある。(p95). 筒井論文は、デザイン学の展開を示唆するハイブリッドワークショップを. 紹介している。 今後の社会は、リアル社会と同時にオンライン社会とが併存する時代であ る。両者がスムーズにつながると同時に、両者の間で意思疎通の混乱が生じ ることもある。しかし、その混乱の中にこそ人間が越えるべき課題が明らか となる。(p107). 徐論文は、デザイン思考の歴史を取り上げ、そのルーツと創造性研究の関. 係を解説している。 アーノルド教授は「創造工学」を提唱していたが、アダムスは「創造的問 題解決」を提唱していた。両者の言葉は異なるが、本質は同じと思う。どち らも機械工学とデザインに創造という要素を入れ込んだのである。(p113). Junaidy 論文は、海外でのイノベーションデザイン事情、特に、急激な生. 活文化の変化を遂げている中での混乱と展望を示している。. Design is the representation of modern lifestyle. Design exists and develops. since the perspective of human being on needs in life is increasingly complex. The. perspective represents expectation of satisfaction in life which is more sub-individual.. (p116). これらの知見を総じると、デザインの可能性とヴィジョンが見いだされる。 デザイン学の次なる飛躍は、人間の真の創造性を発揮させることにある。 それはイノベーションを生みだす力にほかならず、未来を拓く人々の生き 方をつくるだろう。 本特集は、理論・実践・教育において、デザインの進むべき道を先導して いる方々に寄稿いただきました。心から感謝の意を表します。 特集号編集委員会、そして、本特集の読者の皆様へのお礼を申し上げます。. 5.

(4)

参照

関連したドキュメント

災害に対する自宅での備えでは、4割弱の方が特に備えをしていないと回答していま

  BCI は脳から得られる情報を利用して,思考によりコ

P.19 ・ペアで、自分の立場で答える形でチャンツを 言う。 【Let's Listen】P.20

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

最愛の隣人・中国と、相互理解を深める友愛のこころ

「欲求とはけっしてある特定のモノへの欲求で はなくて、差異への欲求(社会的な意味への 欲望)であることを認めるなら、完全な満足な どというものは存在しない

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

断するだけではなく︑遺言者の真意を探求すべきものであ