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南三陸町の防災対策庁舎の保存に関する提言書

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Academic year: 2021

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(1)南三陸町の防災対策庁舎の保存に関する提言書. 南三陸町の防災対策庁舎の保存に関する提言書 今回、日本デザイン学会環境デザイン部会として本提言書を差し上げることと致しました。当部 会は、環境デザインの研究・発展に寄与することを目的に、研究会の実施や教育振興、成果の刊行 などの活動を行う全国規模の日本デザイン学会会員の集まりです。特に安心・安全は環境デザイン の重要な観点として、調査や提案、発表などを行っています。 今回の東日本大震災においては、宮城大学などの部会員と連絡を取りながら被災状況の共有に努 め、部会として昨年10月に震災後の視察を行い、南三陸町を訪れました。その折には宮城大学及 び南三陸町の方々の御厚意により、その実状を深く知ることが出来ました。その後、各メンバーは この経験を活かし、それぞれの立場でさまざまな活動・提案を行って来ました。 南三陸町の防災対策庁舎については、町で保存が提起された後に様々な議論が起こり、現在は保 存か取り壊しかの意見で町内が揺れ動いていることも報道等で知っております。今回この提言書を 日本デザイン学会環境デザイン部会の有志にて差し上げようと思ったのは、この防災対策庁舎の保 存の是非については、今では南三陸町だけでは判断出来ない部分があるのではないかと思われるか らです。 被災地域の方には、この庁舎で家族を亡くされた方もいらっしゃるでしょうし、津波被害の象徴 でもあることから、もう見たくないと思われる気持ちも充分理解出来ます。しかし残された方々の 見たくないという思いだけでなくしてしまってはいけないものもあります。それでは亡くなられた 方々の懸命な防災の努力をも、消し去ることにならないでしょうか。個人としては忘れてしまって もいいが、その地域の防災記憶として、また国家としては絶対忘れてはならないものもあるからで す。今回の南三陸町の防災対策庁舎は正にそのような、地域と国にとって残すべきものだと思われ ます。 本来的な祈念碑の役割は、災害であればその悲惨さを後世に伝え、後の世代が教訓と出来るもの だと思われます。そのような意味で、日本で祈念碑として最も成功しているものは広島の原爆ドー ムではないでしょうか。それは建造物自体が放つメッセージの強さ故です。被災地の祈念碑にはそ のような力強さが必要です。それは新たにきれいに作られたモニュメントなどにはとても表現出来 ないものです。今回の保存問題については、広島の原爆ドームがどのような経緯で残されたのかを 改めて考えてみる必要があります。あの建造物にしても当時は広島市民としてはもう見たくないも のだったのだと思います。ですが残されることによって後世の人々に強い思いを伝えていることが 今になってみれば解ります。そのことが残すことが正しかったことを証明しています。そのような 観点から南三陸町の防災対策庁舎は正に祈念碑としての価値があり、残すべきものと思われます。 南三陸町の防災対策庁舎の保存がなければ今後の国家の津波に対する指針は生まれません。視察 の際に印象に残った防災対策庁舎近くにあった津波警戒のサインも、このサインに表示されていた 高させいぜい2∼3m の津波高さの表示は逆に住民に安心感を与えていただけかもしれません。そ のようなものではなく、この防災対策庁舎が残ることになればそれはとてつもない津波が襲ったの だということを後世にずっと伝えることができます。これは南三陸町だけでなく、東北全域、また 常に津波の危険にさらされている日本全域への強いメッセージになると思われます。このような考 えは、今はまだ地元の方には判断が難しいかもしれませんが、将来、地元の方々にも理解して頂け るものと確信しております。. 2. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-1 No.89 2015.

(2) 以上のような観点から、私達は南三陸町の防災対策庁舎が東日本大震災の悲惨さを後世へ向けて 永続的に伝える価値を持ち、役割を担っているものとして保存すべきと考えます。ここにこの防災 対策庁舎が残されることを切願してこの提言書を差し上げることに致しました。 平成24年12月27日. 日本デザイン学会 環境デザイン部会有志 代表:清水泰博(東京藝術大学) 有志:氏名(所属等):五十音順    大野とも子(株式会社ランドスケープデザイン)    笠尾敦司(東京工芸大学/NPO 法人クリエイティブスマイル)    加藤三喜(Kato Design Office)    上綱久美子    北村義典(沖縄県立芸術大学)    黒川威人(金沢美術工芸大学名誉教授)    佐々木美貴(環境デザイナー/もうひとつの住まい方推進協議会)    清水忠男(千葉大学名誉教授/デザインスタジオ TAD)    杉下 哲(東京工芸大学)    平不二夫(筑波大学名誉教授)    武智 稔(環境デザイナー)    中井川正道(FIT 環境デザイン研究所)    中嶋猛夫(女子美術大学)    長谷高史(愛知県立芸術大学)    橋田規子(芝浦工業大学)    橋本和幸(東京藝術大学)    濱田光一(館の工房デザイン事務所)    平田圭子(広島工業大學)    平松早苗(株式会社 ars 設景研究所)    水野雅生(東海大学名誉教授)    森田昌嗣(九州大学)    山内貴博(山内設計事務所)    横山浩史(横山意匠設計事務所). 南三陸町町長 佐藤 仁様. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-1 No.89 2015. 3.

(3)

参照

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