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Vol. 66, 12, 特集 : 最新の表面 界面分析 回折格子を利用した小角 X 線散乱イメージング - 表面 界面構造解析へ向けて - 矢代 航 a,b a 東北大学多元物質科学研究所 ( 宮城県仙台市青葉区片平 2 1 1) b JST ERATO( 98

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(1)

1 .はじめに

 X 線は 1895 年にレントゲンにより発見されて以来,多く の計測技術に応用されてきた。X 線は波長が Å(10−10 m)程 度の電磁波であり,原子間距離と同程度であるため,小さい 方は原子スケールから,大きい方はマイクロメートルスケー ルに至る広いスケールの構造解析に利用されてきた(X 線回 折(X-ray Diffraction(XRD)), 小 角 X 線 散 乱(Small-Angle X-ray Scattering(SAXS))など)。また,物質との相互作用が 小さいため,透過力が高く,物体内部のイメージングにも広 く用いられてきた(X 線ラジオグラフィ,X 線トモグラフィ など)。表面計測技術については,X 線の屈折率が 1 よりわ ずかに小さいため,微小角入射配置で全反射させることによっ て侵入深さを抑制する方法がよく用いられる(微小角入射 X 線回折(Grazing-Incidence X-ray Diffraction(GIXD)),全反射蛍 光 X 線分析(Total Reflection X-ray Fluorescence(TXRF))など)。 鏡面反射を利用した X 線反射率法(X-ray Reflectivity(XRR)), 微小角入射配置で小角 X 線散乱強度を計測する微小角入射 小角 X 線散乱法(Grazing-Incidence Small-Angle X-ray Scattering (GISAXS)),結晶の二次元周期性に起因する散乱を利用す る CTR(Crystal Truncation Rod)散乱法などの代表的な構造解 析法が知られている。  これらの手法は主に回折・散乱 X 線の振幅を計測するも のであるが,近年,X 線の位相に着目した計測手法の開発が 盛んに行われている。X 線は電磁波であるため,振幅と位相 の情報を持っている。振幅の絶対値の二乗が測定される強度 に対応するため,通常は位相の情報は失われてしまうが,数 値計算により,あるいは実験的に位相の情報を得ることが可 能である。X 線回折における位相回復の利点は,電子密度分 布をモデルフリーに推定することができるようになることで ある。回折 X 線の位相は,オーバーサンプリングされたデー タに対して反復的位相回復のアルゴリズムを適用することで, 計算によって求めることができる1)。一方で,X 線イメージ ングにおいて位相を利用する利点は,高感度化が実現できる ことにある。すなわち,X 線の吸収の断面積は,位相のそれ に比べて数桁(軽元素に対しては 3 桁)大きいことが知られて いるため,非常に高感度なイメージングが可能となる。X 線 イメージングにおいて,X 線が試料を透過したときの位相の 変化(位相シフト)を利用するには,主に干渉計が用いられる。 したがって,干渉性の高い,すなわちコヒーレンス度(特に 空間コヒーレンス度)の高い第三世代の高輝度シンクロトロ ン放射光源が利用できるようになった 1990 年代半ばから, X 線位相イメージングの研究が盛んに行われるようになった2) 当初は,シンクロトロン放射光源を利用した方法が主であっ たが,今世紀に入って,回折格子を利用した X 線干渉計(X 線回折格子干渉計)が相次いで提案された3)。この方法は, 低輝度の実験室 X 線源でも実現できるため,医療応用や非 破壊検査など,汎用機器の研究・開発競争が世界的に盛んに 行われている。  本稿では,最近我々が開発を進めている X 線回折格子干 渉計を利用した新しい表面計測手法について紹介する。本手 法は,X 線回折格子干渉法の位相計測技術と,従来からある X 線反射率法の技術を融合したものであり,X 線反射率の実 空間分布だけでなく,微小角入射小角 X 線散乱に対応する, 表面に平行な方向の微小構造の実空間分布が可視化できる優 れた方法である。実験室の通常フォーカス低輝度 X 線源の 利用4)や,白色シンクロトロン放射光による高速動画5)の撮 影も原理的に可能であり,将来有望な手法と期待される。

回折格子を利用した小角 X 線散乱イメージング

-表面・界面構造解析へ向けて-

矢 代   航

a,b a東北大学 多元物質科学研究所(〒 980︲8577 宮城県仙台市青葉区片平 2︲1︲1) b JST︲ERATO(〒 980︲8577 宮城県仙台市青葉区片平 2︲1︲1)

Small-Angle X-ray Scattering Imaging Using Gratings

Towards Surface and Interface Structure Analysis

-Wataru YASHIRO

a,b

a Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials(IMRAM), Tohoku University(2-1-1, Katahira, Aoba-ku, Sendai-shi,

Miyagi 980-8577)

b JST-ERATO(2-1-1, Katahira, Aoba-ku, Sendai-shi, Miyagi 980-8577)

Keywords : X-ray Imaging, Small-Angle X-ray Scattering, Grating Interferometry, Surface and Interface, X-ray Reflectivity

(2)

2 .原  理

 2.1 X 線回折格子干渉計  図 1 に X 線回折格子干渉計の実験配置の例を示す。この 光学系は X 線 Talbot 干渉計と呼ばれており,光源,試料, 二枚の回折格子から構成される。X 線回折格子干渉計におい ては,いわゆる Talbot 効果と呼ばれる現象を利用する。この 現象は 19 世紀にイギリスの H. F. Talbot により発見された現 象で,周期的な物体に空間的に可干渉な光を照射すると,下 流側の特定の距離にこの物体の像(自己像と呼ばれる)が形成 される現象である。X 線回折格子干渉計では,空間的に可干 渉な X 線を回折格子に照射する。その結果生じた回折格子 の自己像は,試料による X 線の屈折,すなわち試料による X 線の位相シフトに伴う伝播方向の変化に非常に敏感である。 従って,この自己像の変形を何らかの方法によって検出すれ ば,試料による X 線の位相シフトを画像として求めること ができる。自己像を直接解像して,この変形を検出すること も可能であるが,通常は大面積のイメージングをハイスペッ クの画像検出器を用いずに実現するために,自己像に吸収型 回折格子を重ねて,モアレ縞として検出する。  X 線回折格子干渉法は,低輝度実験室 X 線源でも機能す るなど多くの特長を有するが,マルチモダリティも特長の一 つである。すなわち,一回の撮影で複数枚の独立な情報を有 する画像を取得することができる。通常,これらの画像は縞 走査法6)か,あるいは Fourier 変換法7)により求める。図 2 に縞走査法の例を示す。縞走査法においては,回折格子 (Talbot 干渉計の場合は,二枚の回折格子のうちの一枚)を周 期より細かいステップで平行移動することを繰り返して,複 数の画像を得る。これらの画像から離散 Fourier 変換の計算 によって,図 2(c),(d),(e)のような三枚の画像が得られる。 すなわち,回折格子を走査したときの,画像検出器のある 1 画素における強度は,図 2(b)のように近似的にサイン関数 的に変化する。このサイン関数の平均値を画像化すれば,す なわち試料があるときのサイン関数の平均値の画像を試料が ない場合の画像で除することによって,透過率像(c)が求まる。 また,試料を挿入したことによるサイン関数の位相の変化を 画像化すれば,X 線の屈折による伝播方向の変化に比例する (位相シフトの微分(微分位相)に比例する)画像(モアレ位相 像,微分位相像;図 2(d))が求まる。さらに,近年注目され ているのが,図 2(e)のビジビリティコントラスト像(ダーク フィールド像,小角 X 線散乱コントラスト像などとも呼ば れる)である。この画像は,サイン関数の振幅を平均で除し たビジビリティと呼ばれる量(図 2(b)において(Imax- Imin)/

(Imax+ Imin)で計算される値)を画像化に用いたものであり,

試料がある場合のビジビリティの画像を試料がない場合の画 像で除することによって求められる。図 2(c),(d),(e)は ミニトマトを撮像した例であるが,図 2(c),(d)では描出で きていない内部の繊維状の構造が図 2(e)では描出できてい るのが分かる。このように,ビジビリティコントラスト像は, 透過率像,微分位相像では描出できない構造が画像化できる ことから,医療診断や非破壊検査など,多くの応用が期待さ れている。

G1

X-rays

G2

Detector

pixel

0

th

order

1

st

order

Δx

図 1  X 線回折格子干渉計の一つである X 線 Talbot 干渉計 の光学系の例。

(a)

Image number

max

I

min

I

( )

I x y

,

1

2

3 4

5

1’

(b)

(c)

(d)

(e)

図 2  縞走査法による三枚の独立な画像の取得(5 ステップの場合の例)。(a)Talbot 干渉計で得られるモア レ縞。(b)モアレ縞に対して縞走査法を適用したときの,画像検出器 1 画素における強度変化。縞 走査法によって得られたミニトマトの(c)透過率像,(d)モアレ位相像(微分位相像に比例),および (e)ビジビリティコントラスト像(ただし(c),(e)は,それぞれ透過率,規格化ビジビリティの-ln の画像となっている)。

(3)

Vol. 66, №12, 2015 −表面・界面構造解析へ向けて− 605  2.2 小角 X 線散乱イメージング  図 2(e)のビジビリティコントラスト画像は,2008 年に Pfeiffer らによってはじめて報告された8)。しかしながら, コントラストの起源についての理論的な説明がなく,コント ラストがどのように試料内部の構造と関係しているのか明ら かでなかった。その後の我々の理論的・実験的研究により9) コントラストが試料内の解像できないスケールのランダムな 微小構造によって生じることを証明した。またランダムな微 小構造とコントラストの関係を定量的に明らかにし,さらに 小角 X 線散乱強度の散乱角依存性との関係も明らかにした。  詳細な計算9)により,回折格子の間の距離,あるいは試料 位置を変えてビジビリティを測定することにより,小角 X 線散乱強度の散乱角依存性の Fourier 変換に対応する情報が 得られることが分かった。すなわち,ビジビリティコントラ ストは,微小構造によってランダムに乱された波面の自己相 関関数で表すことができる。式で表すと,試料がないときの ビジビリティを V0,試料があるときのビジビリティを V と して,規格化ビジビリティ V/V0は, VV0≈ exp(iΔφf (Δx)) ………(1) と与えられる。ただし,ここでは簡単のため,解像できない ランダムな微小構造による吸収は無視できるとした。式(1) のΔx は,図 1 のように 0 次回折波と 1 次回折波により幾何 学的に決まるパラメータで,回折格子間の距離を変えると, それに比例して変化する。またΔφfは,解像できない微小構 造によって生じる波面の位相のフラクチュエーションの成分 に対して定義されており,距離Δx だけ離れた二点の位相差 を表している。すなわち,規格化ビジビリティは,試料透過 後のランダムな波面成分の自己相関関数として与えられる。  図 3(a),(b)に回折格子の間の距離を変化させて規格化ビ ジビリティ(V/V0)を測定した例を示す9)。図 3(a)は直径が 既知の微小ポリスチレン球をグリセリン液中に分散させた試 料の例(図中のプロットが実験データ)で,Δx の増加ととも に V/V0が減少(-ln(V/V0)が増加)しているのが分かる。式(1) には Sinha のモデル10)がうまく適用できて,相関長ξ,Hurst 指数 H,分散σ2の三つのパラメータによる最小二乗フィッ ティングが可能となる(図中の曲線は最小二乗フィッティン グの結果)。ここでξは,-ln(V/V0)の曲線の幅を特長づける パラメータで,微小構造の平均サイズ(微粒子が互いに相関 なく分散している系に対しては微粒子の平均サイズ)と解釈 することができる。特に,微粒子が球の場合には,ξは球の 半径と一致することが解析的計算および数値計算により示さ れた。また H は,-ln(V/V0)のΔx 依存性の関数形を決定す るパラメータで,微小構造の平均形状と関係づけることがで きる。数値計算により9),微小構造が球に近い場合には H が 1 に近い値となることが示された。このとき-ln(V/V0)のΔx 依存性は,Δx が小さい領域で近似的にガウス関数のように なる(小角 X 線散乱における Guinier 近似に対応)。微小構造 の縦横比が 1 から離れるにつれて H の値は減少していき, 特に H が 0.5 のとき,Δx が小さい領域の-ln(V/V0)は指数 関数で近似できるようになる。さらにσ2は,ランダムな微 小構造で乱された波面の位相の分散であり,小角 X 線散乱 の散乱能に比例する(すなわち,マトリクスとの電子密度差, 濃度,厚さなどに依存する)。  表 1 に,図 3(a)の実験データに対して最小二乗フィッティ ングを行って求めた相関長ξ,Hurst 指数 H,分散σ2をまと める。相関長ξは,ポリスチレン球のサイズが大きいときには, ほぼ球の半径と一致することが確認された。サイズが小さい ときには,球どうしが凝集して,ξが半径よりも大きくなっ ていると考えられる。このことは,独立に行った小角 X 線 散乱強度の散乱角依存性の測定によっても確認された9)。一 方で,Hurst 指数 H については,ほぼ 1 となった。これは, 微小構造の縦横比が 1 に近いことを示しており,数値計算の Sample ξ[μm] H σ2[rad2 PS microsphere(2a = 2.5 μm) 2.3 ± 0.2 1.0 ± 0.1 3.1 ± 0.3 PS microsphere(2a = 4.4 μm) 3.3 ± 0.2 1.0 ± 0.1 2.1 ± 0.05 PS microsphere(2a = 6.3 μm) 3.8 ± 0.5 1.0 ± 0.1 2.1 ± 0.2 PS microsphere(2a = 10.0 μm) 4.9 ± 2 1.0 ± 0.2 1.8 ± 0.6 Melamine sponge(λ= 0.50 Å) 5.2 ± 0.7 0.71 ± 0.07 0.38 ± 0.03 Melamine sponge(λ= 0.73 Å) 5.7 ± 0.2 0.68 ± 0.01 0.91 ± 0.02 Melamine sponge(λ= 1.0 Å) 5.8 ± 1.9 0.7 ± 0.1 1.5 ± 0.4 表 1  図 3(a),(b)の実験データに対して最小二乗フィッティン グを行った結果,求められた相関長ξ,Hurst 指数 H,お よび(波面の)分散σ(a は球の半径,λは X 線の波長)2 9) 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -ln( V/ V0 ) 8 6 4 2 0 (µm) , : = 1.0 Å, d = 5.3 µm (SPring-8) : = 0.73 Å, d = 5.3 µm (Photon Factory) , : = 0.73 Å, d = 8.0 µm (Photon Factory) , : = 0.50 Å, d = 5.3 µm (SPring-8) 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 -ln( V/ V0 ) 6 5 4 3 2 1 0 (µm) , : 2a = 2.5 µm , : 2a = 4.4 µm , : 2a = 6.3 µm , : 2a = 10.3 µm

(a)

(b)

20 μm λ λ λ λ Δx Δx 図 3  規格化ビジビリティ(V/V0)のΔx(図 1 中に定義)依存性(プロット:実験結果,曲線:最小二乗フィッティ ングの結果)9)。(a)直径が既知のポリスチレン球をグリセリン中に分散させた試料の場合(a は球の半径)。 (b)メラミンスポンジ。

(4)

結果と一致した。  メラミンスポンジを試料として,同様に-ln(V/V0)のΔx 依存性を測定した結果を図 3(b)に示す。この試料は,光学 顕微鏡写真が示すように(図 3(b)のインセット),細長い形 状の微小構造を有している。したがって,Hurst 指数 H が小 さい値になることが予想された。実際,表 1 に示すように, 最小二乗フィッティングで求められた H は約 0.7 であり,数 値計算の結果と矛盾のないものであった。

3 .X 線回折格子干渉計による GISAXS イメージング

 3.1  小角 X 線散乱イメージングの微小角入射配置への 応用  我々は 2.2 節で述べた小角 X 線散乱イメージングを,試 料表面構造の評価に利用できないか試みた。X 線を小さい視 斜角で試料表面に入射し,鏡面反射強度の視斜角依存性を測 定すれば,よく知られている X 線反射率測定が実現できる。 この場合,散乱ベクトルは表面に垂直であるため,深さ方向 の平均的な(表面に垂直な軸に投影された)密度分布の情報が, 実験データに対するフィッティングなどで求まることになる。 シート状の X 線ビームを用いれば,実空間分布を一次元的 な画像として可視化することが可能であり,トモグラフィが できることも既に報告されている11)  しかしながら,よく知られているように,X 線反射率の測 定だけでは,表面に平行な散乱ベクトル成分をもつ散乱強度 の情報を得ることができない。すなわち,表面に平行な方向 の構造の違いを区別することができない(例えば,X 線反射 率測定では,表面のラフネスと,深さ方向にグラデーション 状に分布する電子密度を区別できないことが知られている)。 そこで微小角入射小角 X 線散乱法(GISAXS)が用いられる。 この方法は,1989 年に Levine と Cohen によって提案された 方法で,平行度の高い X 線マイクロビームを小さい視斜角 で試料表面に照射し,ダイレクトビームの周辺に生じる小角 X 線散乱の強度から,表面に垂直な方向だけでなく,平行な 方向の構造の情報も取得するというものである。しかしなが ら,実空間の分布を画像として可視化するには,試料を微小 ビームに対して走査する必要がある。  しかしながら,X 線回折格子干渉計のビジビリティコント ラスト像を利用すれば,小角 X 線散乱強度の散乱角依存性 を Fourier 変換した情報を実験的に得ることができる。この 方法を用いれば,試料をマイクロビームに対して走査するこ となしに,シート状の X 線ビームを用いて,通常の GISAXS で取得できる表面に平行な方向の構造情報の実空間分布を画 像として取得可能である。本稿では,この画像を GISAXS コントラスト像と呼ぶことにする。以下では,そのような着 想に基づいて行った実験の結果について紹介する。  3.2 実  験  本稿では,シンクロトロン放射光施設で行った単色 X 線 による実験について紹介する。実験は SPring-8 の BL20XU(中 尺ビームライン)で行った。このビームラインでは,光源か ら約 240 m 下流に実験ステーションがあり,空間コヒーレン ス度が高く,かつ,通常のビームラインよりも大きいサイズ (2 mm × 4 mm)の X 線ビームが利用できる。図 4(a)に実験 配置を示す。X 線のエネルギーは 9 keV とした。空間コヒー レンス度の高い X 線ビームを有効利用するために,周期の 大きい(34.7 μm)のπ/2 位相型回折格子(G1)を用いた。  X 線検出器には,有効画素サイズ 4.3 μm のレンズカップル log Phase of Si SiO2 200 nm 10 nm

400 nm Line & Space

Contrast arising from unresolvable line & space

(c)

(d)

(e)

≪ 1 Reflected X-rays (self-image of G1) X-ray image detector π/2 phase grating (G1) with a pitch of 34.7 μm Sample X-rays 9 keV 4.37 m

(b)

(a)

図 4  (a)回折格子を用いた微小角入射 X 線散乱(GISAXS)イメージングの実験配置。(b)実験で用いた試料。(c)X 線反 射率像,(d)反射 X 線ビームの波面の微分像,および(e)GISAXS コントラスト像の視斜角依存性。

(5)

Vol. 66, №12, 2015 −表面・界面構造解析へ向けて− 607 式 X 線画像検出器(10 μm 厚シンチレータ(P43:Gd2O2S:Tb+) に可視光用の sCMOS カメラ(浜松ホトニクス社製 ORCA Flash 4.0)をレンズカップリングさせたもの)を使用した。今 回使用した画像検出器の空間分解能は 10 μm 程度であるた め,本実験では Talbot 効果によって生じた G1 の自己像を直 接解像して,縞走査法を適用した。  図 4(b)に今回の実験で用いた試料を示す。Si ウェハの表 面を 200 nm の深さまで酸化し,電子ビーム描画装置などに より表面に 400 nm ライン・アンド・スペース(周期 800 nm), 深さ 10 nm の格子パターンを形成した12)。スリットで成形 したシート状の X 線ビームをこの試料の表面にすれすれに 入射し(視斜角θin≪ 1),反射 X 線に対して縞走査法を適用 した。シート状のビームを用いているため,得られる画像は 一次元的な実空間分布のデータであり,図 2(c),(d),(e) に対応する画像は,それぞれ X 線反射率像,反射 X 線の波 面( 位 相 )の 微 分 像,GISAXS コ ン ト ラ ス ト 像 と な る。 GISAXS コントラスト像は,図 3 の例のように,表面に平行 な方向の波面の自己相関関数(小角 X 線散乱強度の散乱角依 存性の Fourier 変換)の情報を含む。すなわち,これらの画像 から,通常の X 線反射率測定で得られる深さ方向の構造情 報だけでなく,表面の湾曲や,表面に平行な方向の構造情報 の実空間分布が画像として可視化できる。  図 4(c),(d),(e)はそれぞれ,縞走査法によって求めた 三枚の画像から,X 線反射率像,反射 X 線ビームの位相の 微分像,GISAXS コントラスト像の視斜角依存性を三次元的 に表示したものである。ここでは,試料表面の格子パターン のラインがθin= 0°において X 線ビームに平行になるように 配置した。また,格子パターンがある領域とない領域の境界 を意図的に視野内に含めた。図 4(c)は,通常の X 線反射率 の挙動を示しており,視斜角が臨界角を超えると反射率が急 激に減少しているのがみられる。しかしながら,格子パター ンあり/なしの境界はこの結果からはほとんど判別できない。 一方で,図 4(e)では,格子パターンあり/なしの境界をはっ きりみることができる。規格化ビジビリティの振動は,視斜 角の変化に伴って,格子ライン上面部と溝底面部からの反射 波の位相差が周期的に変化することに起因するものであり, この振動の周期は,格子パターンの溝の深さが 10 nm である ことから説明された。また,試料を G1 の下流で,光軸に沿っ て移動して,同様の視斜角依存性の測定を繰り返すことによ り,図 3 のΔx 依存性(通常の二枚回折格子の Talbot 干渉計に おいて,回折格子間の距離を変える測定で得られる結果)と 等価な情報を得ることができる。その結果,図 4(e)の視斜 角依存性が 800 nm 周期で変化することが確認された。すな わち,図 4(e)のコントラストは,確かに表面に平行な方向 の解像できない微小構造による小角 X 線散乱によって生じ ていることが示された。

4 .おわりに

 本稿では,近年世界的に注目を集めている X 線回折格子 干渉計の表面・界面構造解析(イメージング)への応用につい て紹介した。この方法は,X 線の強度のみの測定に止まって いた従来法に,波面計測(位相計測)という新しい概念を取り 入れたものであり,シート状のビームで,GISAXS イメージ ングが実現できる画期的なものである。すなわち,X 線によ る構造解析は,波面計測による実空間イメージングという新 時代を迎えつつあると言っても過言ではないであろう。また, X 線回折格子干渉計による通常の透過 X 線イメージングと 比べても,透過 X 線イメージングで得られる空間スケールは, 画像検出器や光源サイズの制約から,高くてもサブμm オー ダーであるが13),14),本稿で紹介した方法は,逆空間の情報 も含んでいるため,nm スケールの構造情報を容易に引き出 すことができる。大型のシンクロトロン放射光施設ではなく, 実験室の通常フォーカス X 線源でも実現できることから, 将来汎用性のある手法に発展すると期待される。さらに,広 いエネルギーバンド幅でも機能することから,非常に強力な 白色シンクロトロン放射光や,アンジュレータからの準単色 光の利用も可能で,マイクロ秒~ミリ秒の高速実空間分布測 定も近い将来には実現できるであろう。 (Received September 10, 2015)

文  献

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