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巻頭言 認知症予防のための臨床検査および認定認知症領域 検査技師の役割 深澤 恵治 1) 2) 1) 一般社団法人日本臨床衛生検査技師会 ) 日本認知症予防学会 要 東京都大田区大森北 旨 本特集号では 認知症予防に臨床検査がいかに役立つのかについて概説することに主

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巻頭言

認知症予防のための臨床検査および認定認知症領域

検査技師の役割

深澤 恵治

1)2) 1) 一般社団法人日本臨床衛生検査技師会(〒 143-0016 東京都大田区大森北 4-10-7)  2) 日本認知症予防学会 要 旨 本特集号では,認知症予防に臨床検査がいかに役立つのかについて概説することに主眼を置いている。もちろん認知症 対策において早期発見・早期治療はきわめて重要であり,その中で臨床検査も大きな役割を担っているのは明白である。 日臨技においても認知症領域における臨床検査の普及や望ましい実施体制の構築に力を入れるべく,2014 年度より「認定 認知症領域検査技師制度」を立ち上げ,認知症の早期発見・予防・治療に臨床検査技師が多面的に参画・貢献出来るよう に進めているところだ。この章では認知症予防に役立つ臨床検査の紹介や認定認知症領域検査技師の役割について最新の 知見も交えながら,論じてみたい。 キーワード 認知症,認定認知症領域検査技師,認知症疾患医療センター,認知症予防,日本認知症予防学会 I はじめに:認知症予防の概念 疾病予防の概念は健康を維持し,疾病を防ぎ,疾 病の進行を防ぐことであり,1 次予防,2 次予防,3 次予防の各ステージに大別される。1 次予防とは健 康的な段階で行う予防である。非特異的な予防とし て健康増進(栄養,運動,健康相談)があり特異的 な予防として病因が明らかな疾病に対する予防接種 がある。2 次予防とは,疾病が潜在的で不顕性のあ る段階で行う予防であり,早期発見・早期治療(健 康診断,集団検診など)がこれに当たる。3 次予防 とは,疾病が顕在している段階で行う予防であり, 疾病による能力低下・悪化の防止を行うことである。 もちろん,認知症も一つの疾患であるからには予防 の概念は同じであり,1 次予防,2 次予防,3 次予防 に分けられ,それぞれに定義されている。 II 認知症予防における各ステージと 臨床検査の役割 1次予防は認知症にならないよう発症を予防する ことであり,生活習慣の改善,生活環境の改善,健 康の増進を図ることと定義されている。この部分に 当てはまる検査は糖尿病,高血圧,高脂血症などの 生活習慣病を診断する一般の血液検査や主に動脈硬 化を判定する頸動脈超音波検査が有用とされている。 2次予防は認知症の早期発見・早期対処であり, 発生した疾病や障害を健診などにより早期に発見し, 治療や保健指導などにより進行を遅らせることであ る。これに該当する検査は神経心理検査,経頭蓋超 音波検査,近赤外分光法(near-infrared spectroscopy; NIRS),MRI などの画像検査,髄液中のアミロイド β蛋白,リン酸化タウ蛋白の測定,脳波検査そして 嗅覚検査などである。 3次予防は認知症と診断された方が人間の尊厳を もって暮らし続けられるようパーソン・センター・ ケアや地域包括ケアの下で治療,介護を行うもので,

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ここでは病状進行の管理目的の臨床検査に現状はと どまる。検査としては神経心理検査(ADAS など総 合的認知機能を見る検査)MRI などの画像検査,髄 液中のバイオマーカーなどが考えられる。 今回のテキストでは認知症の発症予防・早期発見・ 進行遅延を目的に各章で認知症に特化した臨床検査 の基礎的知識を解説する。 III 国および日臨技の認知症対策と 認定認知症領域検査技師制度 日本は他の国に類を見ない速度で高齢化が進んで いる。厚生労働省の発表では 2025 年に日本の高齢者 人口は 3,500 万人に達するとする試算を打ち出して いる。これまでの高齢化の問題は高齢化の進展の早 さが問題とされてきたが,今後は高齢化の高さ(= 高齢者の多さ)が問題となってくると予想している。 もちろん高齢者が多くなるに比例して認知症の患者 も増加すると予想し 2025 年には約 800 万人の認知 症患者を抱える認知症大国となることも予想してい るところである。厚生労働省ではその認知症対策と して様々な施策を打ち出しているところだが,その 一つが「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラ ン)」(Figure 1)であり,もう一つの大きな施策は 「認知症疾患医療センターの整備」(Figure 2)と考 えている。そのように様々な認知症対策が打ち出さ れている中で,他の医療職種においては,認知症へ の具体的対応が着々と進められているが,我々臨床 検査技師においては取組みが始まったばかりである。 臨床検査技師がメディカルスタッフとして確固たる 立場を堅持するためには,日臨技の国家プロジェク トとして位置づけた認知症対策のもとでの取組みは 喫緊の課題であり,臨床検査技師の参画を加速する 必要があった。そして誕生したのが認定認知症領域 検査技師制度である。この制度は 2011 年 4 月に鳥取 大学医学部の浦上克哉教授を初代理事長とする日本 新オレンジプランの基本的な考え方(七つの柱) ①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進。 ②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供。 ③若年性認知症施策の強化。 ④認知症の人の介護者への支援。 ⑤認知症の人を含む高齢者に優しい地域づくりの推進。 ⑥認知症の予防・診断・治療法等の研究開発及びその成果の 普及推進。 ⑦認知症の人やその家族の視点の重視。 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)から ─認知症高齢者等に優しい地域づくりに向けて─ 新オレンジプラン Figure 1  早期診断・早期対応のための体制整備 (認知症疾患医療センターの構成) 【設置の目的】:認知症の疑いがある人は,速やかに鑑別診断が行われることが必要。 認知症疾患医療センターについては,都道府県ごとに地域の中で担うべき機能を明らかにした上で,計画的に整備を図る。 ― 検査体制 (*他の医療機関との 連携確保対応で可) BPSD・身体的合併症対応 医療相談室の設置 鑑別診断等 人員配置 設置医療機関 設置数(2015年12月28日現在) 基本的活動域 ・専門医(1名以上) ・専任の臨床心理技術者(1名) ・専任のPSWまたは保健師等 (2名以上) ・CT ・MRI ・SPECT(*) ・専門医(1名以上) ・専任の臨床心理技術者(1名) ・専任のPSWまたは保健師等 (2名以上) ・CT ・MRI(*) ・SPECT(*) ・専門医(1名以上) ・専任の臨床心理技術者(1名) ・専任のPSWまたは保健師等 (1名以上:兼務可) ・CT(*) ・MRI(*) ・SPECT(*) 専門的医療機能 基幹型 病院(総合病院) 14ヶ所 都道府県域 地域型 病院(単科精神病院等) 303ヶ所 診療所型 診療所 19ヶ所 必須 認知症の鑑別診断及び専門的医療機能 二次医療圏域 空床を確保 急性期入院治療を行える医療機関との連携体制を確保

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認知症予防学会が創設した“認知症専門臨床検査技 師制度”を発展的に継承した制度であり,病棟・クリ ニックなどの医療機関や在宅などで活躍する,一定 以上の認定認知症領域検査技師の創出が,認知症の 早期発見・早期治療に役立つと考えたからである。 IV 医療施設での認定認知症領域検査技師 の役割 前述のように認定認知症領域検査技師の役割は病 棟や在宅における認知症患者への様々な検査の実施 および診断,そして認知症患者への検査を行う上で の対応力の向上に期待するところだ。2016 年改定の 診療報酬算定においては認知症ケア加算が新しく盛 り込まれ「認知症ケアに係わる専門的知識を有した 多職種からなる医療チームを構成し取り組む必要性」 が算定要件となっている。もちろん各病院における 認知症ケアチームに臨床検査技師も積極的な参加を 促し,専門的な知識を駆使して積極的なチーム医療 を展開してもらいたい。また,前述の認知症疾患医 療センターには必ず一定以上の臨床検査技師の配置 を望んでいる。認知症疾患医療センターの大きな役 割(Figure 3)の中で“認知症疾患の鑑別診断・初期 対応”との項目が記載されているが,“認知症疾患の 鑑別診断・初期対応”には臨床検査技師が実施する多 くの臨床検査が含まれており,臨床検査技師の配置 がなければ実施できないのではと考えている。実際 に日臨技が 2015 年 10 月に実施した認知症疾患医療 センターへのアンケート(日臨技会員が所属する 206 のセンターへの活動状況などのアンケート調査を行 い 101 の施設から回答)からは職員の配置状況とし て専従・専任の程度は“看護師・介護士”と比較して, 臨床検査技師の専従・専任としての配属度合いが少 ないことが分かっている(Figure 4)。チーム医療が 当たり前のように実施される昨今の医療現場におい て,センターでの医療職種の配属状況は医療の質が 問われる問題と考えている。この大きな矛盾点に対 して,臨床検査技師はもっと積極的に関わっていく 必要があると考えている。 V 運転免許と認知症領域検査技師の期待 2014年 6 月 11 日の衆議院本会議において高齢ド ライバーの事故を防ぐために,道路交通法の改正が なされた。その中では 75 歳以上の高齢者が運転免許 を取得する際「認知症の疑いがある」と判定された 場合,医師の診断を義務化するというものである。 そこで医師から認知症と診断された者は,免許取り 消しまたは停止となる。また,警視庁によると高齢 者の死亡事故の 4 割に記憶力低下など認知機能に衰 えが疑われた。高速道路の逆走をはじめ高齢者が引 き起こす人身事故の多くで,認知症の関与が示唆さ れている。現在の運転免許試験場では,高齢者が運 転免許を取得する際に無資格者が簡便な認知症テス トを実施しているのが現状である。これでは正確な 認知症診断には繋がらず,結果として大惨事を引き 起こす可能性を危惧している。これを打開するには 運転免許試験場などにも有資格者である認定認知症 領域検査技師が常駐し,認知症簡易検査[物忘れ相 談プログラム,タッチパネル型認知症評価尺度(Touch Panel-type Dementia Assessment Scale; TDAS)等]を 実施するなど,法整備についても日臨技として指摘 していきたいと思っている。 認知症疾患医療センターの役割 1)認知症疾患に関する専門医相談 専門の相談員が認知症に関する不安や悩みのある方からの様々 な相談に対応し地域包括支援センター等と連携を図り,介護 サービスなどの調整を行う 2)認知症疾患の鑑別診断・初期対応 鑑別診断や治療方針の選定が必要な方には,認知症疾患の診 断検査(画像検査,心理検査,血液検査等)を行い,診断に 基づいた治療や初期対応等を行う 3)認知症疾患の合併症・周辺症状への急性期対応 合併症や周辺症状(幻覚,妄想,徘徊等)に対する診断や入 院治療を行うと共に,必要に応じて連携する医療機関で対応 する体制を確保する 4)その他 HPやパンフレット等により認知症に関する情報提供を行った り,関係機関に対して,認知症に関する知識の向上を図るた めの研修会を開催する 認知症疾患医療センターの役割 Figure 3 

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VI 災害医療の現場での認定認知症領域 検査技師の役割 2016年 4 月 14 日に熊本県熊本地方を震央とする M6.5の地震(前震)および 4 月 16 日には M7.3 の 地震(本震)が発生し,熊本県各地で家屋の倒壊な どの被害が広がった。当時の被害状況を重く見た日 臨技は,即座に災害対策本部設置準備室を立ち上げ, 各種の支援の検討を開始,そしてそれを実行してき た。今回の支援活動で一番大きな功績としては 5 月 の GW に実施した深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)検診である。会員 270 名を動員し て被災県民を対象に DVT や D ダイマーの測定,弾 性ストッキングの説明・配布を実施(別名:がまだ せ熊本ブルドーザー作戦)である。この活動は現在 の熊本地震血栓栓塞症予防(Kumamoto Earthquake thrombosis and Embolism Protection; KEEP)プロジェ クトへと続いている。今回の日臨技の災害支援は発 災直後から仮設住宅へ移るまでの被災者の健康管理 についてであるが,以前から仮設住宅に移った後で の不自由な生活や,慣れない環境下での“生活不活 発病”が認知症患者発症リスクと言われている。日本 認知症予防学会でも,新潟中越地震や東日本大震災 からの経験をもとに得られたデータから,仮設住宅 における認知症患者発症リスクの高さを危惧して, 認知症予防学会内に災害対策委員会を立ち上げた。 今後,仮設住宅で不自由な暮らしを続けている多く 足並みをそろえながら,被災者への認知症予防のた めの簡易検査(物忘れ相談プログラム,TDAS など) の実施や予防啓発支援活動を実施する考えである。 VII おわりに 認知症対策は日本の高齢化社会における国家プロ ジェクトであり,多くの第一線の研究者が取り組む 課題となっており,新たなバイオマーカーの登場や 検査方法の確立も期待される。それらと相まって, 早期発見に伴う治療などが可能になれば,認知症予 防の風景も一変することだろう。軽度認知障害(mild cognitive impairment; MCI)やアルツハイマー発症前 段階などでの早期発見ができるようになるかもしれ ない。 本特集号は,認定認知症領域検査技師として知ら なければならない臨床検査の必須知識のみならず, 認知症患者への検査時の対応などについても各章で 言及できればと考える。各章の執筆者には,その点 も主眼に執筆依頼をお願いしている。もちろん,一 般の会員が日頃の検査業務で接しうる認知症患者へ の理解の向上にもつなげ,臨床検査技師として病棟 や在宅へ進出する場合でも,現場で混乱することな く業務を遂行するためのテキストとしている。認定 認知症領域検査技師認定試験の参考書としての位置 づけだけでなく,臨床検査技師として知らなければ ならない認知症における臨床検査技術の知識や認知 症患者への対応など,幅広い見識を身につけられる 施設数 0 10 20 30 40 50 60 70 把握していない 配属されていない 兼任 専任 専従 臨床検査技師 看護・介護 認知症疾患医療センターにおける看護・介護職員および臨床検査技 師の配置状況 Figure 4 

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■文献  1) 浦上 克哉:「認知症医療における臨床検査技師の役割」,メ ディカルテクノロジー,2013; 41: 252–255.  2) 日本認知症予防学会(監),浦上克哉,他(編):認知症予防 専門士テキストブック,メディア・ケアプラス,東京,2013.  3) 厚生労働省:認知症疾患医療センター運営事業.http:// www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/ 0000116705.pdf 本論文に関連し,開示すべき COI 状態にある企業等はありません。 Preface

Clinical check for dementia prevention and role of dementia territory

medical technologist

Keiji FUKASAWA1)2)

1)Japanese Association of Medical Technologists (4-10-7, Omori-Kita, Ota-ku, Tokyo 143-0016, Japan) 2)Japan Society for Dementia Prevention

Key words: dementia, dementia territory medical technologist, Dementia Disease Medical Center, dementia

参照

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