内部通報制度の整備・運用に関する
民間事業者向けガイドラインについて
平成29年5月30日
消費者庁消費者制度課
目次
1.公益通報者保護法の概要…3
2.
公益通報者保護制度の実効性向上に向けた取組
…8
3.企業経営と公益通報者保護制度の関係…13
4.改正ガイドラインの解説…16
(付録)改正ガイドラインの全文…35
2
1.公益通報者保護法の概要
※ なお、近年も、S社・A社による食品偽装(2007年)、 O社による損失隠し(2011年)、D社による特別背任(2011年)、 M社による防衛省等への不正請求(2012年)、A社による景品水増し(2013年)、T社による免震ゴム偽装(2015年)、T 社による不正会計(2015年)、K財団による製剤の不正製造(2015年)、S社による燃費データ不正(2016年)など、内 部通報制度が機能不全に陥っている事例や組織内部からの通報を契機として不祥事が発覚する事例が散見される。
4
公 益 通 報 者 保 護 法 の 制 定 の 経 緯
( 平 成 1 6 年 6 月 公 布 、 平 成 1 8 年 4 月 施 行 ) 1.食品偽装やリコール隠しなど、消費者の安全・安心を損う企業不祥事が、組織内部からの通報を契機 として相次いで明らかになった。 2.そこで、事業者等の法令遵守を推進し、国民の安全・安心を確保するため、① 事業者内部の違法行為 について通報を行った労働者に対する解雇等の禁止や、② 公益通報に関し事業者がとるべき措置等を定 めた「公益通報者保護法」が制定された。 (参考) 通報を契機として明らかになった主な不祥事の例 事業者概要(時期) 発端(通報の経路) 不正の内容 是正結果 M社(自動車) (2000年6月頃) 社員⇒ 旧運輸省 リコール隠し 道路運送車両法違反⇒ 行政措置、刑事告発 T病院(大学病院) (2001年12月) 病院内部⇒ 大学理事長、患者遺族 医療事故隠蔽、カルテ改ざん 証拠隠滅罪等⇒ 逮捕 Y社(食品) (2002年1月) 取引先⇒ 県警本部 食肉の偽装 JAS法等違反⇒ 行政措置 Z社(食品) (2002年3月) 匿名⇒ 生協 鶏肉の偽装 JAS法等違反 ⇒ 行政措置不正競争防止法違反 ⇒ 逮捕 K社(化学) (2002年5月) 匿名⇒ 東京都食品監視課 違法な物質を使用して香料を製造 食品衛生法違反⇒ 行政措置 D社(食品) (2002年5月) 社員⇒ 農林水産省 違法な物質を使用した食品を販売 食品衛生法違反⇒ 行政措置 N社(食品) (2002年8月) 関係者⇒ 農林水産省 食肉の偽装 詐欺罪⇒ 刑事告発 T社(電力) (2002年9月) 発電所検査業者元社員⇒ 旧通産省 自主点検作業記録に関する不正 電気事業法等違反⇒ 行政措置公益通報者保護法の概要①
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所定の要件に該当する通報を 行った「公益通報者」を、解雇 その他の不利益取扱いから保護。 ・解雇の無効 ・不利益取扱いの禁止 ・労働者派遣契約の解除の無効 食品偽装やリコール隠しなど、 消費者の安全・安心を損なう企 業不祥事が、事業者内部からの 通報を契機として相次いで明ら かに。 そこで、公益通報者の保護を 図るとともに、国民の生命、身 体、財産の保護に係る法令の遵 守を図ることを目的として制定。 (平成16年6月公布、平成18年4月施行) ① 労働者(公務員を含む)が ② 不正の目的でなく ③ 労務提供先について ④ 通報対象事実(※)が ⑤ 生じ又はまさに生じようとする旨を ⑥ 所定の通報先に ⑦ 所定の保護要件を満たして通報 をした場合に公益通報者として保護 (※)刑法、食品衛生法、金融商品取引法、JAS法、大気汚染 防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法、その他政令で定める対 象法律(29年4月末現在460法律)に規定する刑罰規定違反 2.公益通報の対象 3.公益通報者の保護 1.公益通報者保護法の目的 事 業 者 公益通報者 公益通報 (事業者内部への通報) ※内部通報制度 処分等の権限を 有する行政機関 行政機関への通報の保護要件 ア 通報対象事実が生じ、又は生ずる おそれがあると思料すること イ 通報内容に真実相当性があること 報道機関、消費者団体等 (被害の発生・防止等のた めに必要と認められる者) 公益通報 (報道機関等への通報) その他外部への通報の保護要件 ア 通報対象事実が生じ、又は生ずるお それがあると思料すること イ 通報内容に真実相当性があること ウ 以下のいずれかの要件を満たすこと ・内部通報では不利益な取扱いを受けると信 ずるに足りる相当の理由がある場合 ・内部通報では証拠隠滅のおそれがある場合 ・生命・身体への危害が発生する場合 等 内部窓口 (例 社内のコン プライアンス窓 口、社内のヘル プライン 等) 外部窓口 (例 事業者が予 め定めた法律事 務所、民間専門 機関、事業者団 体共通窓口 等) 公益通報 (行政機関への通報) 内部通報の保護要件 ア 通報対象事実が生じ、又は生ずる おそれがあると思料すること6
公益通報者は、他人の正当な利益又は公共の利益 を害することのないよう努めなければならない。 公益通報を受けた事業者は、是正措置を講じたときは、遅 滞なく、通報者に通知するよう努めなければならない。 ① 公益通報を受けた行政機関は、必要な調査を行い、法令違反の事実があると認めるときは、法令に基づく 措置その他適当な措置をとらなければならない。 ② 通報者が、処分権限等を有しない行政機関に通報したときは、その行政機関は、処分権限等を有する行政 機関を教示しなければならない。 本制度は、労働契約法第16条(解雇権濫用に関す る一般法理)等の規定の適用を妨げない。 本制度は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由と する労働者に対する不利益な取扱を禁止する他の法令の 規定の適用を妨げない。 (解釈規定) 第六条 前三条の規定は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由として労働者又は派遣労働者に対して解雇その他不利益な 取扱いをすることを禁止する他の法令(中略)の規定の適用を妨げるものではない。 (行政機関がとるべき措置) 第十条 公益通報者から第三条第二号に定める公益通報をされた行政機関は、必要な調査を行い、当該公益通報に係る通報対象 事実があると認めるときは、法令に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。 (他人の正当な利益等の尊重) 第八条 第三条各号に定める公益通報をする労働者は、他 人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう努 めなければならない。 (是正措置等の通知) 第九条 書面により公益通報者から第三条第一号に定める公益通報 をされた事業者は、当該公益通報に係る通報対象事実の中止その他 是正のために必要と認める措置をとったときはその旨を、当該公益 通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、当該公益通報者に 対し、遅滞なく、通知するよう努めなければならない。 (教示) 第十一条 前条第一項の公益通報が誤って当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有しない行政 機関に対してされたときは、当該行政機関は、当該公益通報者に対し、当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告 等をする権限を有する行政機関を教示しなければならない。公益通報者保護法の概要②
1.通報者の努力義務 2.事業者の努力義務 3.行政機関の義務 4.一般法理による保護 5.他の法令による保護7
適格消費者団体
職場内の不正を知る従業員 からの情報伝達のイメージ 相 談 窓 口 認定 消費者委員会 (委員長:河上正二) ○独立した第三者機関 ○建議・勧告等を行う 独立行政法人 国民生活センター(理事長:松本恒雄) 地 方 自 治 体 消 費 生 活 セ ン タ ー ○ 「 消 費 生 活 相 談 員 」 消 費 者 庁 ~消費者行政の司令塔・エンジン役~ ○情報を一元的に集約し、調査・分析 ○情報を迅速に発信して、注意喚起 ○各省庁に対する措置要求 ○「すき間事案」への対応(勧告等) ○消費者に身近な諸法律を所管・執行 ○横断的な制度を企画立案各
省
庁
~中核的な実施機関~ ○支援相談、研修、商品テスト、 情報の収集・分析・提供、広報、ADR等 内閣府特命担当大臣(消費者) 799センター 3,393人 (平成28年 4月1日現在) 建議等 措置要求 ・勧告等 情報 支援 建議等 (※) 勧告は内閣総理大臣に対して行う 消費者安全調査委員会(委員長:宇賀克也) ○生命身体事故等の原因を調査 消費者教育推進会議(会長:西村隆男) ○消費者教育の推進について議論 1,009窓口 (平成28年 4月1日現在) 内 閣 総 理 大 臣 協力 公正取引委員会、経済産業局長等に 権限の一部を委任 情報 建議・ 勧告 (※)等 相談・苦情 消費者ホットライン (188)経由 助言 あっせん 啓発 相談・ 苦情 処分 ・指導 情報 従業員等 内部 通報事
業
者
消
費
者
消費者行政の体制における公益通報者保護制度の位置づけ
過去、各府省庁縦割りの仕組みの下、産業振興の間接的、派生的テーマとして、消費者行政が行われる中、悪質商 法・偽装表示等の被害を受ける消費者が続出し、製品や食品による不慮の消費者事故も表面化。 こうした社会状況を踏まえて、これまでの行政をパラダイム転換するため、消費者行政の司令塔・エンジンとして、 平成21年9月1日に消費者庁が発足。8
2.公益通報者保護制度の実効性向上
に向けた取組
検 討 の 背 景 ○公益通報者保護法の施行から10年余が経過したが、近年 においても、企業の内部通報制度が機能せず、大きな不祥 事に発展した事例や、通報を受けた行政機関において不適 切な対応が行われた事例などが発生。 ○公益通報として保護されるための要件や不利益取扱いを抑 止するための効果の在り方等、同法の枠組みについても見 直しを行うべきとの意見(26年度有識者ヒアリング等)。 検 討 会 ・ W G の 開 催 ・消費者基本計画(閣議決定)等を踏まえ、制度の見直しを 含む必要な措置の検討を行うため27年6月に「公益通報者 保護制度の実効性の向上に関する検討会」を開催。 ・検討会第1次報告書(28年3月)で示された法改正に係 る各論点について、専門的な観点からより精緻な検討を行 うため、28年4月に「ワーキング・グループ」(WG)を 開催。28年11月にWG報告書、12月に最終報告書を公表。 ◆民間事業者の取組の促進 ①事業者向けガイドライン(GL)改正 ②事業者に対するインセンティブの導入 (認証制度、公共調達での評価) 等 ◆行政機関の取組の促進 ①行政機関向けGL改正 ②地方公共団体向けGL策定 ◆通報者保護の要件・効果 法改正に向けて検討すべき事項を整理(→WGで更に検討) ◆法改正の方向性と課題 検討会第1次報告書において示された法改正に係る各論 点(※)について検討を行い、制度の実効性を向上させる ための法改正の方向性や課題について、可能な限り明確化 (※)①通報者の範囲、②通報対象事実の範囲、③外部通 報の要件、④不利益取扱いに対する行政措置・刑事 罰、⑤守秘義務 等 2 W G 報 告 書 ◆WG報告書の評価等 WG報告書に示された方向性に沿って、法改正に向けた具体的な検討を進めるべき。とりわけ、 ①不利益取扱いからの保護・救済、通報に係る秘密保持の強化につきより充実した検討をすべき ②法の具体的内容が、国民にとってより理解しやすいものとなるよう所要の措置を講ずべき ③通報者への不利益取扱い等に対する刑事罰についても、引き続き検討すべき ◆消費者庁が果たすべき役割等 ①行政措置等を設けるに当たっては、関係省庁との役割分担や協力関係構築等、必要な体制整備を行うべき ②行政機関の適切な通報対応を促すため、消費者庁における一元窓口の設置、各行政機関の通報対応のモニタリング及び必 要な改善要請等を行うべき 等 ◆公益通報制度の実効性の向上に向けた今後の進め方 ①GLの改正・策定やインセンティブ導入等、制度の運用改善により対応可能なものについては早期に実現を図るべき ②法改正が必要なものについては、最終報告書の内容を広く周知して法改正に向けた議論を喚起するとともに、各関係団体 や国民からの意見の集約を図り、可能な限り早急に法改正の内容をより具体化していくべき 3 最 終 取 り ま と め 1 第 1 次 報 告 書 ※1、2、3を合わせて、本検討会の「最終報告書」として取りまとめた。
有識者検討会における検討結果の概要
9
10
(参考1)検討会・WG構成員/検討の経緯
検討会 WG 氏 名 (五十音順、敬称略、◎=座長) ○ - 井手 裕彦 読売新聞大阪本社編集局編集委員、羽衣国際大学客員教授 ◎ ◎ 宇賀 克也 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授 ○ - 川島 千裕 日本労働組合総連合会総合政策局長 ○ - 北城 恪太郎 経済同友会終身幹事、日本アイ・ビー・エム㈱相談役 ○ - 串岡 弘昭 通報経験者 ○ ○ 光前 幸一 弁護士 ○ - 今野 由梨 東京商工会議所特別顧問、ダイヤル・サービス㈱代表取締役社長 - ○ 佐伯 仁志 東京大学大学院法学政治学研究科教授 ○ ○ 島田 陽一 早稲田大学副総長・法学学術院教授 - ○ 田中 亘 東京大学社会科学研究所教授 ○ - 土田 あつ子 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 消費生活研究所主任研究員 ○ ○ 拝師 徳彦 全国消費者行政ウォッチねっと事務局長、弁護士 ○ ○ 升田 純 中央大学大学院法務研究科教授(※検討会は第11回、WGは第8回まで) ○ - 水尾 順一 経営倫理実践研究センター首席研究員、駿河台大経済経営学部教授 ○ ○ 山口 利昭 弁護士、日本内部統制研究学会理事 ○ - 若杉 敬明 東京大学名誉教授、日本コーポレート・ガバナンス研究所所長 有識者ヒアリング <1回~10回> (26年6月~ 27年3月) WG <1回~11回>(28年4月~11月) 最終取りまとめ (28年12月) 第1次報告書 (28年3月) (28年11月)WG報告書 検討会 <1回~10回> (27年6月~ 28年3月) 検討会 <11回> (28年7月) 検討会 <12回> (28年10月) <13回、14回>検討会 (28年11月~ 12月) 構 成 員 一 覧 検 討 の 経 緯 ヒアリング報告書 (27年3月)○ 運用改善により対応可能なものについては、早急に着手・実行 (→ 事業者のコンプライアンス経営・消費者志向経営の推進、通報を受けた行政機関に おける適切な対応の確保によって、通報者保護・法令遵守が図られることを期待) ○ 制度的手当が必要な事項については、引き続きWGで精緻な検討 1 通報者へのフィードバックと行政機関に対するモニタリング-ガイドライン改正 ※②③について、各省庁の通報窓口のほか消費者庁に通報窓口を 設置すること等、消費者庁が果たすべき役割を検討 2 地方公共団体の窓口整備 行政機関の取組の促進 <通報を受けた行政機関に おける過去の問題事例> ・ 通報の放置 ・ 不適切な調査 ・ 通報に係る秘密の漏洩 ① 通報者へのフィードバック等の充実 ② 行政機関の通報対応状況のモニタリング ③ 行政機関の通報対応に対する意見・苦情等の 受付体制の整備促進 市区町村における、外部の労 働者からの通報・相談窓口の 設置は、29%にとどまっている 消費者庁及び都道府県が市区町村の通報・相 談窓口の整備を支援促進 ※ 地方公共団体向けガイドラインの策定 ※ 地方消費者行政推進交付金も活用 1 事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項の具体化-ガイドライン改正 2 事業者の自主的な取組を促進するためのインセンティブの導入 従業員が安心して通報・相談できる環境を整備し、内部通報制度をコンプライアンス経営等 に積極的に活用する企業を評価する認証制度を設けることを検討。また、国の行政機関、 地方公共団体等に対し、調達・契約等において積極的に評価することを促す。 3 内部通報制度の更なる導入・取組の促進 内部通報制度に係る事業者の体制の整備・運用について、制度的手当を検討。 民間事業者の取組の促進 ・内部通報制度が機能せず企業 の自浄作用が発揮されなかっ た事案が見られる ・中小企業における内部通報制 度の導入割合は、40%にとど まっている ① 従業員等が安心して通報・相談できる内部 通報制度の整備促進 (匿名性確保・外部 窓口の活用、社内リニエンシー制度の導入、 経営幹部から独立した通報ルートなど) ② 中小企業では 、企業グループ、サプ ライ チェーン等を通じた取組を促進 ※ 地方消費者行政推進交付金も活用 1 通報者の範囲 2 通報対象事実 3 不利益取扱い禁止に違反した場合の効果 4 その他 通報者保護の要件・効果 現在は労働者のみ ※通報を受理しなかった理由として 退職者からの通報であることが考 慮された可能性がある事例などあり ①退職者、②役員、③取引事業者を加える ことについては、どのような法的効果を与え るべきかという観点も踏まえて検討すべき。 現在は対象法律(国民の生命、身体、 財産に関わるもの等)を政令で列挙 ※対象事実該当性が一般的に分か りやすいとは言えないとの指摘あり 通報対象事実を広げることについては、通 報者が判断しやすいメルクマールを設定す る必要性等も踏まえて検討すべき。 現在の解雇の無効等民事的な効果の みでは不十分との指摘あり ※裁判には多大な時間・労力・費用 がかかり負担が大きいとの指摘あり 抑止効を高める観点からは刑事罰・行政的 措置を導入することも考えられるが、 刑事罰については、可罰性や構成要件等を 詳細に検討すべき。 行政的措置については、①いかなる機関が、 ②いかなる措置をとるのか等を検討すべき。 以下の事項についても、引き続き検討すべき。 ・ 通報内容を裏付ける資料の収集・持出し行為の免責 ・ 外部通報の保護要件の緩和 (現在は、報道機関等の事業者外部への公益通報が保護さ れるためには、通報対象事実の真実相当性に加え、①通報したことを理由に不利益取扱 を受けるおそれ、又は、②証拠隠滅等のおそれ、等についての真実相当性も必要) ・ 通報と不利益取扱いとの間の因果関係の推定 ・ 通報に係る情報に関する守秘義務を設けること、当該守秘義務を負う者の範囲等 ※各論点について、問題の所在に対応した制度的手当の必要性 及び内容について、専門的観点からより精緻な検討が必要
(参考2)検討会第1次報告書の概要
(平成28年3月公表)
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◆平成12年~14年頃に相次いだ食品偽装やリコール隠し等の企業不祥事の多くが通報を契機に発覚したことから、平成16年に公益通報者保護法が制定。 ◆しかし、近年においても、企業の内部通報制度が機能せず、不祥事発生に至った事例や通報を受けた行政機関における不適切な対応も見られる。 ◆これらの事情等を背景として、平成26年度に実施した有識者ヒアリングの結果等も踏まえて、公益通報者保護制度の実効性向上の方向性について検討会を 開催(平成27年6月~平成28年3月合計10回)。(1) 現行法の課題 (2) 今後の方向性・課題 (1) 現行法の課題 (2) 今後の方向性・課題 (1) 現行法の課題 (2) 今後の方向性・課題 (1) 現行法の課題 (2) 今後の方向性・課題 1 通報者の範囲 2 通報対象事実の範囲 4 不利益取扱いに対する行政措置・刑事罰 現在は労働者のみ ⇒対象範囲が狭いとの指摘あり ※①退職者、②役員等、③取引先 事業者が通報をした結果、不利益 取扱いを受けた事例あり。また、 ④その他の者(労働者の家族等) による通報も存在 現在は、公益通報を理由とする不利益 取扱いを民事上違法とする民事ルール のみ規定 ⇒不利益取扱いの抑止効を高める観 点から、①行政措置や②刑事罰を 導入すべきとの指摘あり ①通報と不利益取扱いとの因果関係について立証責任の緩和等 ⇒訴訟実務との整合性や他法令との平仄等に留意しつつ、緩和等を行う方向で検討 ②通報内容を裏付ける資料の収集・持出行為の免責 ⇒裁判例収集・分析を踏まえ、責任減免が認められる事例等の類型化を図った上で、 不利益取扱いから通報者を保護する方向で検討(刑事免責については慎重に検 討) ③通報対象事実への関与に係る責任の減免(リニエンシー) ⇒慎重に検討 ④内部通報制度等の整備 ⇒内部通報制度を整備すべき対象者の範囲や履行確保のための制度的担保に留意 しつつ、内部通報制度等の整備を法定する方向で検討 など 現在は、対象法律(①国民の生命、 身体、財産等の保護にかかわる法 律で、②最終的に刑事罰の担保が あるもの)を政令で列挙 ⇒ 対象範囲が狭い 、一般の人に は分かりにくい、③条例が含ま れない等の指摘あり ①法律の目的による限定については、 事例分析等を通じて追加の必要性の 高い法律が認められれば、新たに追 加する方向で検討 ②刑事罰の担保による限定や③条例に ついては、公益性や明確性、実務上 の観点等を踏まえて、今後更に検討 ①行政措置については、現行制度上利 用できる救済手段に加えて導入するこ との適切性や救済手段としての相当性 等に留意しつつ、何らかの措置を設け る方向で検討(行政措置の種類ごとに 更に検討) ②刑事罰の導入については、不利益取 扱い抑止の手段として他に適当なもの がないか等の点を踏まえ、慎重に検討 ①退職者は含めることが適当 ②役員等は、労働者との性質の違い等 に留意しつつ、含める方向で検討 ③取引先事業者や④その他の者につい ては、労働者との性質の違いやその 多様性等を踏まえて、今後更に検討 (1) 現行法の課題 (2) 今後の方向性・課題 5 守秘義務 現在は、①行政機関への通報が保 護される要件として、真実相当性が 必要 ②行政機関以外の外部への通報が 保護されるための要件として真実相 当性に加えて、法に定める特定事由 に該当することが必要(通報したこと を理由に不利益取扱いを受けるおそ れ等) ⇒要件が厳しいとの指摘あり ①行政機関への通報については、どの ような要件を備えていれば保護に値する かを十分に検討した上で、真実相当性 の要件を緩和する方向で検討 ②行政機関以外の外部への通報につい ては、真実相当性の要件は維持するも のの、特定事由の対象範囲の拡大や追 加により緩和する方向で検討 ◆「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」第1次報告書(平成28年3月)において示された法改正に係る各論点について、法律の専門家か らなるWGにおいて、その方向性や課題等を検討。平成28年4月から11月までの計11回にわたって会議を開催し、WG報告書を取りまとめ。 ◆法の基本的な枠組みの在り方や施行状況等に関する評価は大きく分かれたが、制度の実効性を向上するための法改正の方向性や課題について、可能な限 り明確化。 ◆今後、WGにおける意見において指摘された法理論上の問題や運用上の課題も踏まえて、十分に検討することが必要。また、各論点の要件・効果は相互 に関連していることから、法改正に向けた具体的な検討に際しては、法の基本的な枠組み全体との関係に留意することが必要。 3 外部通報の要件 6 その他の論点 通報先のうち、行政機関は守秘義務を 負っているものの、①労務提供先、② 行政機関以外の外部通報先について は、通報に関する情報の守秘義務規 定が存在しない ⇒ 情 報 漏 え い の 不 安 か ら 、 安 心 し て通報できないとの指摘あり ①労務提供先については、守秘義務を 設けることを前提に、具体的な要件や 効果について更に検討 ②行政機関以外の外部通報先に守秘 義務を課すことは適当でない(一般法 理により保護)
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(参考3)WG報告書の概要
(平成28年11月公表)
13
内部通報制度とは?
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取締役会
監査役
各部門・従業員による業務執行
内部通報制度とは、組織内の問題を知る従業員等からの情報を受付け、
情報提供者保護を徹底しつつ、調査・是正を図る仕組みをいう。
目的は、リスク情報を可及的早期に把握し、自浄作用を発揮することに
よってコンプライアンス経営を推進し、企業価値の維持向上を図ること。
職場内の不正等を知る 従業員からの情報伝達 のルートのイメージ 行政機関 報道機関 内部窓口(社内ヘルプライン等) 外部窓口(専門機関、法律事務所等) 捜査機関代表取締役
内部通報制度以外の通報先 ステークホルダー (消費者,株主,投資家,債権者, 取引先,地域社会.行政機関など) 制度の実効性 に高い関心 内 部 通 報 制 度 の イ メ ー ジ15
実効性の高い
内部通報制度の導入・運用を適切に行う事業者が増える
ことは、
コン
プライアンス経営の推進
、ひいては、消費者にとって
安全・安心な製品・サービス
の増加
につながる。
また、各事業者にとっても、消費者、取引先、株主等からの信頼の獲得につながり
、企業価値の向上や持続的成長に資する。
(1)食品偽装やリコール隠しなど、内部からの通報により初めて明るみに出た企業
不祥事も多い。組織内の一部の関係者のみが情報を持つ
隠蔽性・密行性が高い
不正は、通常の問題発見ルートでは容易に発覚しない
。
様々なリスクを早期に発見し、被害の発生・拡大防止を図るための、
特別の仕組みが必要
(2) 調査によれば、
不正発見の手段として、関係者からの「通報」の割合が最も高
い
。また、「内部通報制度」
導入の効果として、違法行為の抑止・自浄作用に
よる是正をあげる割合が高い
。
内部通報制度は、リスク管理に必要な情報を、経営陣が早期に入手し、
是正を図る仕組みとして有効
企業リスク早期発見のためのツールとしての内部通報制度の有効性
(参考1)事業者における不正発見の端緒
7.4% 5.8% 6.5% 7.2% 8.8% 11.4% 31.5% 37.6% 58.8% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% その他 行政機関による調査 偶然 外部監査 従業員に対するアンケート調査 取引先や一般ユーザーからの情報 上司による日常的なチェック 内部監査 内部通報不正発覚の端緒
不正発見の端緒の第1位は、内部通報。内部監査の約1.5倍に上る。
→ 通常の問題発見ルートでは容易に発覚し難い不正も多い。
内部通報制度は、リスクの早期把握のための非常に有効なツール。
出典:「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(消費者庁)(参考2)事業者における不正発見の端緒
(米国の調査結果)
0.5% 0.8% 1.1% 2.2% 2.6% 3.0% 4.2% 6.6% 6.8% 14.1% 16.0% 42.2% 0% 10% 20% 30% 40% その他 自白 IT統制 法執行機関からの通知 監視/監督 外部監査 書類審査 会計照合 偶然 内部監査 マネジメントレビュー 内部通報不正発覚の端緒(米国の調査結果)
米国の調査でも不正発見の端緒の第1位は内部通報。内部監査の約3倍。
出典:「REPORT TO THE NATIONS ON OCCUPATIONAL FRAUD AND ABUSE 2014」 (Association of Certified Fraud Examiners(ACFE)、p19)
→ 通常の問題発見ルートでは容易に発覚し難い不正も多い。
(参考3)内部通報制度導入の効果
24.2 30.4 43.3 43.3 49.4 0 10 20 30 40 50 株主や取引先等に対するアピール 内部規程に基づく適切な通報対応の確保 従業員が安心して通報できる環境整備 自浄作用による違法行為の是正機会の拡充 違法行為への抑止力として機能内部通報制度を導入した効果
(複数回答、単位%)→ 内部通報制度は、組織の自浄作用を高め、コンプライアンス経営を
推進していくための、非常に有効なツール。
制度導入の効果として、違法行為の抑止や自浄作用の向上を挙げる事業者
が多い。
出典:「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(消費者庁)(参考4)内部通報制度の実効性に対する利害関係者の関心度
86%
89%
82%
実効性の高い内部通報制度を
整備している企業の
商品・役務を購入したい
と回答した者の割合
実効性の高い内部通報制度を
整備している企業と
取引したい
と回答した事業者の割合
実効性の高い内部通報制度を
整備している企業に
就職・転職したい
と回答した者の割合
多くの消費者・事業者・労働者が、自らと関係を有する事業者の内部通報
制度の実効性に高い関心を有している。
→ 社会経済からの信頼を獲得し、企業価値の維持向上を図るためには、
制度の実効性を高め、ステークホルダーに証明していくことが必要。
(1,436/1,607社) (2,451/3,000人) (2,568/3,000人) 出典:「平成28年度 労働者における公益通報者保護制度に関する意識等のインターネット調査報告書」 「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」 (消費者庁)(参考5)内部通報制度の実効性と取引先の選定基準
29%
55%
12%
4%
取引先の選定に当たって
取引先の
内部通報制度の状況を
考慮している
• 既に、約3割
(29%)の事業者が、取引先の内部通報制度の整備・運用の
状況を、取引先の選定(CSR調達等)に当たって「考慮している」。
• 将来「考慮することを検討中」の事業者も、5割を超える
(55%)。
→ 取引先からの信頼を獲得するためには、内部通報制度の実効性を高め、
取引先に証明していくことが必要。
考慮することを検討中
考慮していない
無回答
(883/1,607社) (466/1,607社) 出典:「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(消費者庁)4.改正ガイドラインの解説
ガイドライン制定(平成17年)の経緯
3.国会の附帯決議
公益通報者保護法案に対する国会の附帯決議
(平成16年5月衆議院内閣委員会)では、「いわゆるコ
ンプライアンス経営についての事業者の取組を積極的に促進する」ことについて「政府は
(中略)適切な措置を講ずべきである」とされた。
これらを受け、民間事業者が事業者内部からの通報に適切に対応するための指針として、
「公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドライン」が制定され、平成17年7月に、
内閣府国民生活局
(当時)によって公表された。
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2.公益通報者保護法の制定
これらの犯罪行為や法令違反行為の多くは、事業者内部からの通報を契機として明らかにさ
れたことなどから、通報者の保護を図るとともに、事業者の法令遵守を図り、もって国民生
活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的として、公益通報者保護法
(平成16年 法律第122号)が制定された
(平成16年6月公布、平成18年4月施行)。
1.消費者の信頼を裏切る企業不祥事の続発
平成12年頃より、食品の偽装表示事件や自動車のリコール隠し事件に見られるような、消
費者の信頼を裏切る企業不祥事が続発し、一部の事業者は市場からの撤退を余儀なくされた。
ガイドライン改正(平成28年)の背景
3.政府決定等
(制度の充実・強化に向けた取組促進が各方面から強く求められている)
世界一安全な日本創造戦略
(H25年12月10日 閣議決定):「公益通報者保護法の趣旨を踏まえ
(中 略)内部通報制度の整備導入を促進する」
日本再生ビジョン
(H26年5月23日 自由民主党日本経済再生本部):「内部通報制度の充実やその活用
に向けた制度の構築が
(中略)必要」
消費者基本計画
(H27年3月24日 閣議決定):「制度の見直しを含む必要な措置の検討を早急に
行った上で、検討結果を踏まえ必要な措置を実施する」
公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会第1次報告書
(H28年3月30日):「ガイド
ライン改正
(中略)などは、できる限り早期にその実現を図るべきである」
消費者基本計画工程表
(H28年7月19日 消費者政策会議(会長 内閣総理大臣)決定):「第1次報告書を
踏まえ
(中略)ガイドラインの改正
(中略)を可及的速やかに実施する」
これらを受け、
消費者庁において改正案の作成を進め
、パブリックコメント手続き等を経て、
平成28年12月に
改正ガイドラインを公表。
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2.企業の内部通報制度の機能不全
労働者における法の認知度は2割弱
※に止まり、「名前は聞いたことがある」を含めても計
4割程度に止まるなど、十分とはいえない状況にある。
(※平成28年度労働者における公益通報者保護制度に関 する意識等のインターネット調査 消費者庁) 国民生活の安全・安心を損なう近時の企業不祥事において、制度が機能せず事業者内部に通
報しても問題の是正が期待できないと思われる事案が散見される。
1.内部通報制度の重要性の高まり
適切な内部通報制度は、自浄作用の向上やコンプライアンス経営の推進に寄与し、企業価値
の向上につながるのみならず、国民生活の安全・安心の向上にも資するなど、社会経済全体
の利益を図る上でも重要な意義を有する。また、安心して消費できる環境を整備することは、
GDPの約6割を占める消費の拡大、更には経済の好循環の実現にとって大前提となる。
※「内部通報制度」とは、公益通報者保護法を踏まえ、不正を知る従業員等からの通報を受け付け、通報者の保護を図りつつ、適切な調査、是正及び再発防止策を 講じる事業者内の仕組みをいう。 主に通報窓口の設置、内部規程の整備及びそれらの運用からなる。 16.7 16.8 25.7 25.730.5 0 10 20 30 40 必要性を感じない 人手が足りない 法律上の義務とはされていない 導入の方法が分からない どのような制度なのか分からない 内部通報制度未導入の理由の第1位は、 基本的事項についての情報不足。(複数 回答、単位%) 40.2 99.2 0 50 100 中小企業 大企業 中小企業で「内部通報制度」の導 入が進んでいない。(単位%) 42.8 46.1 59.9 94.5 0 50 100 中小企業労働者 大企業労働者 中小企業(事業者) 大企業(事業者) 中小企業(事業者)及び労働者で 法の認知度が進んでいない 。( 単 位%) 27.5 32.8 39 44.3 27.2 29.6 34.2 45.3 0 10 20 30 40 50 導入事業者を高く評価する仕組みの整備 先進・優良事例の収集、紹介 事業者向けガイドライン等の整備周知 経営トップへの働きかけ 公益通報者保護制度を社会経済全体に浸透させてい くために必要だと思うことの第1位は、経営トップ への働きかけ(複数回答、単位%) 労働者 事業者 30.3 33.7 39.9 52.3 55.0 63.4 83.3 92.0 0 20 40 60 80 100 通報者へのフォローアップ 経営トップの役割・責務 利益相反行為の排除 秘密漏洩や不利益取扱いを行った者に対する懲戒処分等の措置 経営幹部からも独立性を有する通報ルート 是正措置・再発防止策 通報を理由とする不利益取扱いの禁止 通報者の秘密の保護 通報処理に関する社内規程に定められている内容 (複数回答、単位%) (2)内部通報制度の導入割合 (3)未導入の理由 (5)制度浸透のために政府・行政機関 が強化すべき取組 (4)内部通報制度導入事業者においても 整備状況は様々 (1)法の認知度 多くの事業者が、 利益相反の排除、 経営トップの責務、 フォローアップ等 の 重 要 な 事 項 に つ い て 内 規 に 規 定していない。 出典:「民間事業者における内部通報制度の実態調査」(平成28年度消費者庁) 「労働者における公益通報者保護制度に関する意識等のインターネット調査」(平成28年度消費者庁)
(参考1)内部通報制度の現状と課題
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【事例4】建設業法違反により25日間の営業停止処分を受けた事例 「多くの社員が不正を認識していながら上位者への報告を行わず通報等も行わなかったことについては、当社役員・社 員のコンプライアンスに対する意識が低かったということであり、内部統制システムの整備とコンプライアンスの徹 底を十分に行わなかった経営陣の責任は重い」 (D社 社内調査委員会「調査報告書」(平成28年7月26日)より抜粋)
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(参考2)内部通報制度が機能不全に陥っていた事例
国民生活の安全安心を損なう近時の企業不祥事において、内部通報制度が機能せず、
事業者内部に通報しても、問題の是正が期待できないと思われる事例が散見される。
【事例3】医薬品医療機器法違反により110日間の業務停止命令(過去最長)を受けた事例 「前理事長をはじめとする経営層自身が不整合や隠ぺいを指示又は承認するという状況では、内部監査や内部通報制度 等の内部統制システムは無力であり、このような誤ったトップダウンが血漿分画部門全体に広がりかつ継続する不整 合や隠ぺいの原因」 「ヘルプラインに(中略)情報が寄せられなかったことを踏まえ、役職員が通報窓口に対して通報した場合に、秘密が 確実に守られ、後に人事上の不利益を被らないという安心感や、迅速かつ的確に対応してもらえるという期待感を抱 くことができる通報制度に改善する必要がある」 (C社 第三者委員会「調査結果報告書」(平成27年11月25日)より抜粋) 【事例2】金融商品取引法違反により約73億円の課徴金納付命令(過去最高額)を受けた事例 「内部通報窓口が設置されて(中略)いたが、本案件に関係する事項は何ら通報されていなかった」 「内部通報制度等による自浄作用が働かなかったのは、会社のコンプライアンスに対する姿勢について、社員の信頼が 得られていないことも一因」 「内部通報制度は、内部統制制度の最後の砦ともいわれるものであり、通報者が信頼し、安心して意見を言える制度を 見直して、十分活用すべき」 (B社 第三者委員会「調査報告書」(平成27年7月20日)より抜粋) 【事例1】建築基準法違反により製品の認定取消、不正競争防止法違反の容疑で捜査された事例 「約1年間、上位の幹部及び経営陣への情報の伝達が遅れており、その間、複数の従業員が本件の問題行為の疑いにつ いて把握していたにもかかわらず、内部通報制度を利用した者はいなかった」 「内部通報制度についても、十分に機能が果たされなかったという反省の上で、活性化のための大幅な見直しが必要」 (A社 社外調査チーム「調査報告書」(平成27年6月19日)より抜粋)(参考3)内部通報制度に対する従業員からの信頼度 ①
47%
勤務先の不正を知った場合の
最初の通報先として、
“勤務先以外(行政機関、報
道機関等)を選択する”
と回答した労働者の割合
20.9 24.9 30.8 33.4 37.0 0 10 20 30 40 職場で嫌がらせを受けるおそれがある 行政機関に通報をした方がしっかり対 応してもらえる 通報受付窓口がない 不利益な取扱いを受けるおそれがある 通報しても十分対応してくれない最初の通報先として勤務先以外を選択する理由
(複数回答、単位%)・勤務先の不正についての最初の通報先として、勤務先以外(行政機関や
報道機関等)を選択する割合は、約半数に上る。
・主な理由は「十分対応してくれない」「不利益を受けるおそれがある」。
(804/1,710人)→ 内部通報制度を真に機能させ、自浄作用を発揮していくためには、
制度の客観的な信頼性を担保し、従業員に証明していくことが必要。
出典:「平成28年度 労働者における公益通報者保護制度に関する 意識等のインターネット調査報告書」(消費者庁) 内部通報窓口有の場合:30% 内部通報窓口無の場合:61%(参考4)内部通報制度に対する従業員からの信頼度 ②
67%
勤務先の不正を内部通報制
度を使って通報をする場合
“匿名で通報したい”
と回答した労働者の割合
6.8 21.9 59.4 66.9 0 10 20 30 40 50 60 70 通報窓口を信頼できない 不正の事実を伝えることに意味があり 通報者が誰であるかに意味はない 実名での通報には不安がある 不利益な取扱いを受けるおそれがある匿名で通報したい理由
(複数回答、単位%)→ 内部通報制度を真に機能させ、自浄作用を発揮していくためには、
制度の客観的な信頼性を担保し、従業員に証明していくことが必要。
(1,154/1,710人) 出典:「平成28年度 労働者における公益通報者保護制度に関する意識等の インターネット調査報告書」(消費者庁)・内部通報制度の利用に当たって、匿名希望の割合は約7割に上る。
・主な理由は「不利益を受けるおそれがある」「実名には不安がある」。
○ 帝国データバンクの調査によれば、2015年度のコンプライアンス違反倒産は、289件判明。 前年度比3割増で、過去最多を更新。 ○「内部統制制度の最後の砦」ともいわれる「内部通報制度」等を積極的に活用することで、経営陣が、 早期・未然に企業内のリスクを把握し、コンプライアンス経営を推進していくことが重要。 コンプライアンス倒産の件数 違反類型別の件数 出典:帝国データバンク「2015年度コンプライアンス違反企業の倒産動向調査」より https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p160402.pdf ※帝国データバンクでは、「粉飾決算」や「業法違反」、「脱税」などのコンプライアンス違反が取材により判明した企業の倒産 を、「コンプライアンス違反倒産」と定義。