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ア イ 資料を提示して 資料の読み取りを助ける板書 学習が心に残るようなインパクトのある板書 しかし 瀬戸真氏は 道徳の時間で板書を活用する際の視点として 次の 2 点を述べている 1 ねらいとする価値について 今までの自分はどうであったか等 自己を見つめるという道 徳授業の独自性をとらえ 板書を積

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Academic year: 2021

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魅力的な道徳の授業を進める指導の工夫

-板書の工夫を中心に-

大淀町立大淀桜ヶ丘小学校 教諭 福 本 ゆ み Fukumoto Yumi 要 旨 板書は、子どもにとって共有の思考の場である。これをより効果的に活用することで、 学習は深まる。そこで、道徳の時間における板書の工夫を通して、子どもの思考を助け、 道徳的価値の自覚を深めることができる学習の在り方や進め方について、板書構成を考え るための六つのポイントを整理し、授業研究を基に検証した。 キーワード: 道徳教育、道徳の時間、板書、道徳的価値の自覚 1 はじめに 教室には、子どもの正面にいつも考える場として黒板がある。学習の中で、分かる喜びを子どもが 感じたり、友達の考えに触れたりできる学級みんなにとってのノートである。しかし、この教具の生 かし方にはいつも難しいイメージが先立つ。十分な計画を立てずに授業を進めてしまいがちで、単に メモ的な板書になってしまったり、変わり映えのしない同じパターンの使い方に陥ったりしがちであ る。また、研究会等で、黒板全体を使って読み物資料(以下、資料と示す)の世界を表現したり、掲 示物に仕掛けがあって子どもの気を引いたりする板書に出会い、自分が授業を進める際にも、同じよ うな工夫ができればと考えていた。そのため、板書の準備と言えば提示物の作成に時間を費やすこと が多く、細かな計画を立てずに授業を進めてきたという反省がある。 そこで、板書をどのように整理し活用すれば、子どもの思考を助け、子どもが視覚を通して学べる 集団思考の場になるのか、そして、道徳の時間に限れば、道徳的価値の自覚を深められる板書になる のかなど、より効果的な板書の整理の仕方について、実践を通して考えることにした。 2 研究目的 板書を子どもの学習を深めるための教具として効果的に活用するための工夫について考察する。 3 研究方法 (1) 板書についての理論研究 (2) 道徳の学習を通しての実践と考察 4 研究内容 (1) 板書の役割と機能 道徳の時間は、豊かな心の成長をはぐくんでいく時間である。資料を使って、登場人物の思いを みんなで考え合いながら自分自身を振り返り、道徳的価値の自覚を深める時間である。板書につい て筆者がこれまでに大事にしていきたいと考えていた点は、次のようなことである。

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ア 資料を提示して、資料の読み取りを助ける板書 イ 学習が心に残るようなインパクトのある板書 しかし、瀬戸真氏は、道徳の時間で板書を活用する際の視点として、次の2点を述べている。 1 ねらいとする価値について、今までの自分はどうであったか等、自己を見つめるという道 徳授業の独自性をとらえ、板書を積極的に活用する。 2 児童の思考を補助する板書の役割について更に追求し工夫する。 これまで筆者は、子どもに分かりやすい授業、心に残る授業を進めていきたいという思いから、 資料にかかわる提示物の準備や主題の伝え方の工夫にばかりこだわり、道徳授業の中で最も大切に されなければならない「自己を見つめる」ためや「思考を深める」ために板書をどう生かすかとい う意識には至っていなかった。 更に、小松原知司氏は、道徳の学習では話合いのために板書は重要な働きをもっているとし、板 書の役割を次のように述べている。 話合いを活発にする役割、児童の意見を整理する役割、そして何よりも一時間の学習を終え たときに振り返ってみるという大きな役割もある。 子どもの学習を深めるために、自分が今まで十分に生かすことができていなかった板書の役割も 含め、より効果的な板書にするためのポイントを自分なりにまとめてみた。 「補助」……… 資料の読み取りを助ける。 「活発化」…… 話合いの焦点化を図り、子どもの話合いを活発にさせる。 「整理」……… 子どもの多様な考えを整理する。 「気付き」…… 自分を見つめて考え、自分と同じ考え方や違う考え方に気付かせる。 「明確化」…… 学習のねらいである道徳的価値を明確にする。 「振り返り」… 1時間の学習を終えて、学びの跡を振り返る。 続いて、これらの六つのポイントを意識した板書構成を考えていくために、これまでの板書を例 に挙げて検証を進めてみた。 (2) これまでの板書をふり返って 平成18年1学期に取り組んだ4年生の道徳授業とそのときの板書である(図1 。) 主題名 目標の達成 資料名 うれしい六着 中1-(3) ねらい 困難や苦しさを乗り越えて努力することによって、目標が達成できた大きな喜びを感 、 。 じることを知り 自分も困難に負けず目標をもって努力していこうとする態度を育てる

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図1 「うれしい六着」の板書 これまで、筆者が板書で工夫してきたことは、資料の準備、チョークの色分け(マイナス思考は 青色、主題につながるような言葉は黄色や赤色で書く 、字の大きさ、資料の提示や板書する位置) (主人公の心情に合わせて掲示位置を変える)などであった。しかし、この板書を先ほどの6点を 基に検証してみると、 「補助」……… 提示物を用意しているのでお話の世界に入りやすい。 「活発化」…… どの場面に焦点を当てたのかがはっきりしていない。みんなで話し合いたい場面 がはっきりしないため、授業が単調になる。 「整理」……… 子どもの言葉をまとめているが、多様な考えを引き出せているとは言えない。 「気づき」…… 子どもの意見を羅列して書いているので、意見の違いが見えにくい。主人公の気 、 。 持ちにどれだけ共感し 自分を見つめるという意識をもてたかどうかに不安が残る 「明確化」…… 色チョークの使用は効果的だが、目標達成に至るまでの苦しさやその苦しさを乗 り越えるために主人公を支える思いや心情の高まりが、あまり強調されていない。 どのように価値に気付いていったのかのつながり(心の動き)が見えない。 「振り返り」… 色チョークが目立つだけで、学びの過程がつながりとして伝わりにくい。 といったことが見えてきた。更に、板書全体を見ていると、資料の流れを単に追いながら主人公の 気持ちを問い、その都度、子どもの発言を羅列して板書していく授業になっているといった、学習 の進め方についての課題も見えてきた。 永田孝哉氏は、このような学習の進め方を「各駅停車型授業」と名付け、途中の駅で時間を使い 過ぎてしまって目的地までたどりつけないことや、じっくり時間をかけたい大切な駅をとばしてし まうことが問題点であると述べている。 それでは、今回の学習がどのように板書で整理されていれば、6点のポイントを意識できていた と言えるのかを、考え直してみた(図2 。) 、 、 。 この資料で 子どもに最も考えさせたい場面は 15mを超えたときの苦しさと闘う場面である 主人公が苦しさに負けそうになりながらも、目標を達成するために自分の気持ちを高めていく様子 を子どもと共にじっくり考える。苦しさと頑張りの心情を分けて整理することで、主人公の心の様 子を分かりやすく訴える。その際、子どもは、つらかったけれど自分を向上させていくために努力 したこれまでの体験と重ね合わせながら、主人公の気持ちを考えるであろう。何としてもできるよ うになりたいという一生懸命な気持ちや周りの応援に支えられ努力した結果、大きな喜びが得られ ることを、心情曲線や矢印を使ってつないだり、黒板の上下の板書位置を工夫したりして、分かり やすく整理することで、道徳的価値の自覚へと発展させることができると考えた。 今 年 の 目 標 た か し 二 十 五 m 泳 ぎ た い が ん ば る ぞ お 母 さ ん を 喜 ば せ た い も う ち ょ っ と … … 死 に そ う 苦 し い 本 番 あ と 半 分 と 中 で 足 が つ い ち ゃ う か な ま だ か よ 苦 し い よ ・ 死 に そ う や っ た ー や っ と 着 い た 泳 げ た よ う れ し い あ き ら め な く て よ か っ た 六 位 で も う れ し い 努 力 1 5 m あきらめたくない と う 着 目 標 達 成 自 分 友 達

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図2 「うれしい六着」の構成し直した板書 このように板書構成を考え直すことで、更に板書計画を立てるときのポイントが見えてきた。 1 本時の学習のねらいを明確にし、板書の中に短い言葉で提示する。 2 本時の学習で、山になる部分(最も話し合いたいところ)を中心に板書を構成する。 3 資料の中の主人公や登場人物の学びの跡、考え方の変容などの心の動きが写し出せる構造 的な板書を考える。 また こうして板書を考えることで ねらいを明確にし 資料分析をしっかり行い 子どもとじっ、 、 、 、 くりと考え合いたい場面をはっきりさせたり、子どもの気持ちや考えを予想したりすることの大切 さが実感できたのも、大きな成果であった。 (3) 板書計画を立てて進める1時間の学習 これまではつい行き当たりばったりで進めがちだった板書計画をしっかりと立て、1時間の学習 に取り組んだ。以下は、4年生での実践例である。 主題名 本当の友達 資料名 絵はがきと切手 中2-(3) ねらい 友達に料金不足のことを伝えるかどうか迷った末、相手を信じ、相手のためを思い、 忠告する決心をした主人公の思いを考えることを通して、自分も信頼し合える友達関係 を築いていきたいという心情を高める。 ア ねらいの分析(別紙1ページ参照) 子どもの発達段階や内容項目の発展性を理解するため、ねらいにかかわる道徳内容(ここでは、 中2-(3)の信頼・友情)を表に整理し、この学年ではどんなねらいをもって学習を進めることが 大切かを明らかにした。中学年のねらいとしてポイントになる言葉(この学習では「信頼 )は板」 「 う れ し い 六 着 」 た か し 今 年 こ そ 絶 対 二 十 五 m 泳 ぐ ぞ ! 練 習 本 番 ( 十 五 m ) ( ゴ ー ル ) 目 標 達 成 今 年 の 目 標 う ま く い か な い し ん ど い 立 っ て し ま う 死 に そ う 泳 ぎ た い が ん ば る 約 束 ほ め ら れ た い ま だ か よ 苦 し い よ 死 に そ う と 中 で 足 つ い ち ゃ う か も あ と 半 分 あ き ら め た く な い 絶 対 行 く み ん な の お う え ん 母 の お う え ん や っ と つ い た 泳 げ た よ う れ し い あ き ら め な い で よ か っ た 六 位 で も う れ し い よ 練 習 中 の 絵 苦し い時 の絵 泳ぎきった絵

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書の中に取り入れ、子どもが気付けるようにしたいと考えた。 イ 資料分析(別紙2ページ参照) 資料「絵はがきと切手」は、転校していった仲良しの友達から大きな絵はがきをもらうが、料金 不足であったことから、主人公がそのことを友達に伝えるか伝えないかで迷う。そして、友達を信 頼し、伝えることを決心するお話である。子どもが自分だったらどうするだろうと、自分のことの ように考えられる効果的な資料である。友達のことを考えて迷う場面では、登場人物の心情や教室 、 。 の友達の考え方に触れながら 子ども自身の今の自分の価値観も意識できるように授業を進めたい 特に、この学習では、キーワードになる言葉として 「本当の友達 「信頼」を考えた。、 」 ウ 展開(別紙4ページ参照) 続いて、発問について考えた。発問は 「主人公はどうしたの?」とか「この後どうなった?」、 、「 」 、 と行為を尋ねていくのではなく 主人公はどんな思いだっただろう? というような尋ね方をし 行為を支える心の内面を考えられるようにした。それぞれの発問ごとに予想した子どもの意識は、 板書構成の中でしっかりと整理しておくよう心がけた。 オ 板書計画(図3) 図3 「絵はがきと切手」板書計画 この資料で子どもたちに最も考えさせたい場面は、主人公が友達のことを思って料金不足のこと を伝えるか伝えないかで迷う場面である。伝えない方がよいのではと考える気持ちと伝えた方がよ いと考える気持ちが比較できるよう、左右に分けて板書で整理する計画を立てた。そして、心情曲 線や矢印を使って、この学習における主題やねらいにつなげられるようにした。 板書の6点のポイントについては、下記のとおりである。 「補助」……… 絵はがきをもらった喜びに共感できるように、高原の紅葉の写真と心温まる文面 を大きく提示する。また、主人公の心情により迫れるように人物絵を準備する。 「活発化」…… 料金不足のことを伝えるか伝えないかで迷う場面に焦点を当て、話し合わせる。 「どうして伝えた方がよいと思うのか 「どうして伝えない方がいいかもと思って」 いるのか」という主人公の思いを考えさせた後、伝える理由と伝えない理由の共通 「 絵 は が き と 切 手 」 母 「 お 礼 だ け 言 っ て お い た ほ う が い い か も 」 せ っ か く 送 っ て く れ た の に い や な 思 い を さ せ る か も し れ な い き ら わ れ た ら ど う し よ う

兄 「 ち ゃ ん と 言 っ て あ げ た ほ う が い い 」 ま た 同 じ こ と を し た ら い や な 思 い を さ せ る か も し れ な い 自 分 だ っ た ら 伝 え て ほ し い 料 金 不 足 ど う し よ う 本 当 の 友 達 大 切 な 友 達 だ か ら 本 当 の こ と を 言 っ て も 怒 っ た り し な い き っ と わ か っ て く れ る 同 じ こ と を 繰 り 返 さ な い た め う れ し い ま た 会 い た い な 絵 は が き あ り が と う 絵 は が き 高 原 の 写 真 絵 は が き 文 面 大 切 な 友 達 信 じ る 心 伝 え る 伝えない 自 分 に と っ て 友 達 に と っ て

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点や相違点について意見を交流させる。 「整理」……… 発問に対して予想される子どもの意識や期待したい意識を考えておき、子どもの 言葉で整理しておく。意見の違いが分かりやすいように整理する。 「気付き」…… 伝える側の意見と伝えない側の意見を分けて整理して板書することで、意見の違 いを視覚に訴えられるようにする。 「明確化」…… 色チョークや矢印などを使ったり、文字の大きさを変えたりして主題を明確にと らえさせる。 「振り返り」… 資料の流れに沿いながら、主人公の心の動きや気付きがとらえられるように板書 全体を使って構造的に整理しておく。 カ 授業を終えて 板書計画を立てることにより、1時間の学習の中で子どもと共に考え合いたいことがより明らか となった。学習における時間配分も予想が立ち、特に、最も考え合いたい場面においては、子ども の思考が深まるように、前もって補助発問を準備しておくこともできた。学習の中で落ち着いて子 どもの反応に耳を傾け、板書に整理していくことができたように思う。子どもたちは、提示物とし て準備しておいた絵はがき(美しい高原の景色と文面)や主人公の顔の表情(迷っている顔とすっ きりとした顔 、心情曲線や矢印で結ばれていく主人公の心の動きを視覚で捉え、黒板に集中しな) がら一生懸命考えて学習に取り組むことができていたと思われる。 無計画に進めていたこれまでの板書と違い、学習を終えて振り返る板書は、1時間の学習の流れ を分かりやすく伝えられるものに整理できた。 ただ、板書計画はあくまでも計画である。前もって予想しておいた子どもの意識にとらわれすぎ て、子どもに押し付ける学習に陥らないように心がけなければならない。授業記録を整理している と、子どもを誘導するような場面があり、板書を意識し過ぎていたために折角の子どもの考えを生 かせなかった点は、今後の課題となった。 5 考察 道徳的価値を深めるための効果的な板書の活用法について研究を進めてきた。道徳の学習において 板書のもつ力がこれほど大きなものであったのかと改めて思い知らされた。 まず、板書は「道徳の学習を組み立てる場」である。ねらいの分析、資料分析、主題、展開などと 計画していく授業の組み立てがすべて板書に関連し、生かされていることが分かった。 また、板書は「道徳の学習を深める場」である。学習の中で、登場人物の心情を考えたり、教室の 友達の意見を聞いたりしながら、自分の考えを自覚し深めていく。その際、左上がりの心情曲線で気 持ちの高まりを表したり、対立する意見を左右に表示したりするなど、構造的な板書によって視覚に 訴えることで、子どもが自分の考え方を整理するのを助けることができたと考える。 人間は心の成長をなくして、よりよい人間にはなれない。みんなで気付き合えたり感動し合えたり できる黒板という教具を今後も効果的に活用しながら、魅力的な道徳の授業を進めていきたい。 参考文献 (1) 瀬戸 真 『自己を見つめる道徳の時間』 文溪堂 1989 (2) 小松原知司 発問づくり、短冊・板書の扱い方 『道徳教育 4月号』 明治図書 2001 (3) 永田孝哉 ほのぼの道徳の時間 『道徳教育 9月号』 明治図書 2006

参照

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