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EU、オランダ、ベルギー、デンマークにおける遺伝子組換え作物と慣行・有機農業との共存に関する法制度的枠組みの動向 利用統計を見る

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全文

(1)

子組換え作物と慣行・有機農業との共存に関する法

制度的枠組みの動向

著者名(日)

大坂 恵里

雑誌名

東洋法学

54

2

ページ

127-151

発行年

2010-12-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000790/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

(2)

Ⅰ.はじめに   本稿は、平成二一年度農業環境技術研究所委託調査「海外諸国における共存に関する法制度的枠組みの動向の調 査 解 析」 の う ち、 二 〇 一 〇 年 一 月 時 点 に お け る 欧 州 連 合 (E U) 、 オ ラ ン ダ、 ベ ル ギ ー、 デ ン マ ー ク に お け る 遺 伝 子組換え作物と慣行・有機農業との共存に関する法制度的枠組みについて分析を行うものである。本委託調査にお いて、当初、筆者はEUのみの調査を担当していたが、共存に関する法制度的枠組みを構築するのはEUではなく 各構成国である。そこで、EUについては、その根拠となる欧州委員会の遺伝子組換え作物と慣行・有機農業との 共存に関するガイドライン ( Commission Recommendation of 23 July 2003 on guidelines for the development of national str ate gie s an d be st pr ac tic es to e ns ur e th e co -ex ist en ce o f g en eti ca lly m od ifie d cr op s w ith c on ve nt ion al an d or ga nic farmin ( 1) g )(以 下、 「共 存 ガ イ ド ラ イ ン」 と い う) に 関 す る 欧 州 委 員 会 の 役 割 に つ い て 簡 単 に 述 べ る に と ど め、 共 存 に 関 《 研究ノート 》

U、

ダ、

ー、

慣行・有機農業との共存に関する法制度的枠組みの動向

 

  

 

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する法制度的枠組みが既に構築されているかその過程にあるオランダ、ベルギー、デンマークの三か国を選択し、 共存政策のうち、共存から生じる経済的損失に対する責任・補償制度、その他に適用される可能性のある責任・補 償制度に焦点を当てることとし ( 2) た。 Ⅱ.EU   二〇〇三年七月、欧州委員会は、共存ガイドラインを公表した。共存ガイドラインは、遺伝子組換え作物と非遺 伝 子 組 換 え 作 物 と の 混 入 か ら 生 ず る 経 済 的 損 失 ( economic loss ) を 対 象 と し て お 3) り、 構 成 国 に 対 し て、 そ の よ う な 経済的損失に関わる責任ルールについて、民事責任に関する法令を調べることや、保険制度の適用や新たな制度の 構築について示唆している。   共存ガイドラインの法的性質は、構成国の一定の行為の実施を期待して欧州委員会が表明した「勧告」であるた め、 法 的 拘 束 力 を 有 す る も の で は な い。 そ う と は い え、 欧 州 委 員 会 は、 遺 伝 子 組 換 え 体 (以 下、 「G M O」 と い う) の混入から生じる経済的損失に関する責任・補償制度を各構成国が整備することにおいて、二つの重要な役割を果 たしている。   第 一 に、 構 成 国 が G M O 混 入 に 関 し て 国 家 補 償 制 度 を 導 入 す る 場 合、 E C 条 約 の 国 家 補 助 ( state aid ) 禁 止 規 4) 定 に 抵 触 す る 可 能 性 が あ る。 そ の た め、 欧 州 委 員 会 は、 構 成 国 か ら の 届 出 に 基 づ い て、 当 該 制 度 に つ い て 審 査 を 行 い、承認を与えるかどうかの決定を行わなければならない。   第二に、欧州委員会は、構成国の共存措置の履行状況について、欧州理事会及び欧州議会に定期的な報告を行っ

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て い る。 第 一 次 報 告 5) 書 は 二 〇 〇 六 年 三 月 に、 第 二 次 報 告 6) 書 は 二 〇 〇 九 年 四 月 に 公 表 さ れ た。 第 三 次 報 告 書 は 二〇一二年に公表予定である。また、欧州委員会は、各構成国の責任・補償制度に関する調査を外部に委託してお り、その結果も公表されてい ( 7) る。   なお、二〇一〇年一月時点でEU域内で商業栽培が認可されていたのは、Btトウモロコシのみであった。 Ⅲ.オランダ 1 .はじめに   共存ガイドラインに対して、オランダ政府は、新たに立法を行うのではなく、関係当事者に自主的に合意を形成 するよう呼びかけた。それに応えたのは、オランダ農業園芸組織連合会 ( LTO Nederland ) 、有機農家団体のビオロ ヒ カ ( Biologica ) 、 種 苗 栽 培・ 取 引 団 体 で あ る オ ラ ン ダ 種 苗 協 会 ( Plantum NL ) 、 小 規 模 農 家 団 体 で あ る Platform Arade Boer Consument で あ る。 農 業 自 然 食 品 安 全 大 臣 は、 こ れ ら 四 団 体 か ら な る 作 物 委 員 会 の 長 に J. van Dijk を任命し、二〇〇四年一一月、作物委員会は、バレイショ、トウモロコシ、テンサイの共存措置に関する合意案を 含む報告書を農業自然食品安全省及び住居国土計画環境省に提出し ( 8) た。この合意案に基づき、二〇〇五年一一月、 畑 作 作 物 に 関 す る 生 産 管 理 機 構 ( Hoofdproductschap Akkerbouw, HPA ) が、 共 存 規 9) 則 を 作 成 し た。 こ れ ら の 合 意 及 び共存規則において、補償基金を設立することは確定したが、誰がどのように基金に拠出するかについては後の協 議に持ち越されていた。そして、二〇〇八年九月、GMOの混入から生じる経済的損失のための補償基金の内容と 拠出のあり方について、関係当事者である農業自然食品安全省、ビオロヒカ、オランダ種苗協会、オランダ農業園

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芸 組 織 連 合 会、 オ ラ ン ダ 農 業 畜 産 労 働 組 合 ( Nederlandse Akkerbouw Vakbond ) 間 で 合 意 が な さ れ 10) た。 こ の 合 意 に 基づいて、既存の共存規則とは別に、補償に関する規則が制定される予定である。   なお、二〇一〇年一月時点で、オランダにおいて、遺伝子組換え作物の商業栽培はなされていなかった。 2 .共存措置及び補償に関する合意 ⒜   責任制度   GM作物の栽培者は、共存措置を順守している限り、GM作物の混入から生じる経済的損失に関して賠償請求さ れることはなく、その損失分は基金によって回復されることになる。   遺伝子組換え作物の栽培者は、栽培予定年の一月三一日までに、隣接するか隔離距離内にある農家に、遺伝子組 換 え 作 物 を 栽 培 す る 意 図 を 書 面 で 通 知 し、 協 議 し な け れ ば な ら な い (共 存 規 則 二 条 一 項) 。 遺 伝 子 組 換 え 物 質 を 拒 否 す る 市 場 (G M フ リ ー 市 場) に 上 げ る こ と を 意 図 し て い る 栽 培 者 (G M フ リ ー 栽 培 者) は、 遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 栽 培 者 に 対 し て、 二 条 一 項 に よ る 通 知 か ら 二 週 間 以 内 に 書 面 で そ の 旨 通 知 し な け れ ば な ら な い (二 条 二 項) 。 遺 伝 子 組 換え作物の栽培者は、二月一日までに、国の登録簿にその旨登録しなければならない (二条三項) 。   遺伝子組換え作物の栽培者、非遺伝子組換え作物の栽培者、GMフリー栽培者は、栽培、植え付け、収穫、圃場 内での移動ならびに貯蔵の全段階において、遺伝子組換え作物の混入を避けるために様々な措置―機器洗浄、隔離 栽培、交雑防止、隔離貯蔵―を取らなければならない (共存規則四条) 。   隔離距離は次のとおりである (共存規則三条) 。 バ レ イ シ ョ ― 遺 伝 子 組 換 え 作 物 が 栽 培 さ れ て い な い 地 域(G M フ リ ー ゾ ー ン) の 栽 培 鎖 か ら は 一 〇 メ ー ト ル、 そ の 他 の

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非GMバレイショからは三メートル。さらに、自生したものについては取り除く必要がある。 トウモロコシ―GMフリーゾーンの栽培鎖からは二五〇メートル、その他の非GMトウモロコシからは二五メートル テンサイ―GMフリーゾーンの栽培鎖からは三メートル、その他の非GMテンサイからは一・五メートル   これらの措置は、認証された適正農業規範 ( Good Agricultural Practice ) に含まれる。適正農業規範を遵守しない 栽培者は、その認証を失うことになり、その結果、納品許可 ( license to deliver ) を失うことになり、損害賠償責任 を負うことになる。さらには、HPAによって罰金を科されることになる (共存規則七条) 。 ⒝   因果関係   何をもって因果関係が証明されたとするのかは、共存規則の中でも、補償に関する合意案の中でも不明である。 今後制定される補償規則の中で明らかにされるであろう。 ⒞   損害と修復   補 償 基 金 の 合 意 案 で は、 補 償 基 金 は、 第 一 次 産 業 (農 業) に お い て G M O の 混 入 が 生 じ た も の の、 特 定 の 人 物 に 責任を課すことができない場合において、直接的に生ずる経済的損失を填補するものであり、派生損害は対象にな らないとされている。 ⒟   補償基金   補償基金の合意案によれば、基金による補償の対象は次の二種類となる。   ①器具補償   HPAの積立金によって賄われる。基金の窓口は、畑作作物に関する生産管理機構に委託される。   ②経済的損失の補償

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  補償基金の合意案によれば、トウモロコシ用、バレイショ用、テンサイ用と、別々に設立される。   農業自然食品安全省の管理の下、GMバレイショの混入による経済的損失には、バレイショ栽培者によって、そ してGMトウモロコシの混入による経済的損失にはトウモロコシ栽培者によって、金銭的ないし物的補償がなされ る。 こ こ で 注 意 し た い の は、 G M バ レ イ シ ョ 栽 培 者 (あ る い は G M ト ウ モ ロ コ シ 栽 培 者) と 限 定 し て い な い こ と、 す な わ ち、 非 G M バ レ イ シ ョ 栽 培 者 (あ る い は 非 G M ト ウ モ ロ コ シ 栽 培 者) も 補 償 基 金 に 拠 出 す る こ と が 合 意 さ れ た 点 で あ る。 こ の 手 段 が 実 行 可 能 で あ る と の 回 答 を オ ラ ン ダ 種 苗 協 会 か ら 得 た う え で の 結 論 で あ る が、 実 現 ま で の 間 は、生産管理機構による器具補償基金の積立金を用いる可能性がある。また、GMテンサイが商業目的で収穫され る予定は当面無いので、テンサイ用の補償基金の設立とその履行は延期されることになった。   補償基金の評価は、共存に関する他の取り決め同様、遺伝子組換え作物の最初の商業的収穫の開始から三年後に 行われることも合意された。 ⒠   その他の特別責任や補償制度との比較   GMO混入によって生じる経済的損失を補填する民間保険制度は存在しないため、加入の義務付けもない。 3 .一般的な責任制度またはその他の補償制度 ⒜   責任制度   遺伝子組換え作物の栽培者は、共存措置を遵守しなければ、GMOの混入から生じる経済的損失に関して過失に よる不法行為責任を負う可能性がある。   オランダ民法 ( Buergerlijk Wetboek ) のうち、不法行為の一般規定は以下のとおりである。

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民法第六編第一六二条 第 一 項   他 人 に 対 し て 違 法 な 行 為 を し た 者 は、 そ の 違 法 行 為 が そ の 者 の 責 め に 帰 せ し め ら れ る 場 合 に、 そ れ に よ っ て そ の他人が被った損害を賠償することを義務づけられる。 第 二 項   権 利 の 侵 害 な ら び に 制 定 法 上 の 義 務 ま た は 社 会 生 活 上 の 書 か れ ざ る 法 に 反 す る 作 為 も し く は 不 作 為 は、 正 当 化 事由がない限り、不法行為とみなされる。 第 三 項   不 法 行 為 は、 行 為 者 が 有 責 に 不 法 行 為 を し た 場 合、 ま た は、 原 因 が 法 律 上 も し く は 社 会 通 念 上 そ の 者 の 危 険 領 域に属するとされるべきものである場合に、その者に帰せしめられ ( 11) る。   六 編 一 六 二 条 に 基 づ け ば、 G M O の 混 入 か ら 生 じ る 損 害 (経 済 的 損 失 を 含 む) は、 そ れ が 行 為 者 の 責 め に 帰 す べ き 違 法 な 行 為 に よ っ て 生 じ た 場 合 に、 そ の 行 為 者 は そ の 損 害 を 賠 償 す る 責 任 を 負 う こ と に な る。 そ し て、 六 編 一〇二条及び一六六条は共同不法行為について連帯責任を課し、六編一七〇条は使用者責任を課している。   また、オランダ民法には、五編三七条にニューサンスに関する規定があり、土地の管理者は、責めに帰すべき違 法な行為によって騒音、振動、悪臭、ばい煙のような害を生ぜしめた場合、賠償責任を負うことになる。 ⒝   因果関係   事実的因果関係については、 「あれなければこれなし」で判断される。   賠償の範囲については、法定の損害賠償義務について、次のとおり規定されている。 民法第六編第九八条 賠 償 が な さ れ る の は、 責 任 及 び 損 害 の 性 質 を 考 慮 し て、 債 務 者 が 責 め を 負 う べ き 出 来 事 と の 関 係 で そ の 結 果 と 評 価 さ れ うる損害に限定される。

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  因果関係の証明責任は、原則として請求権者が負担する。 ⒞   賠償されうる損害   損害賠償義務者が賠償しなければならない損害は、財産損害とその他の不利益を含むが、後者については、法律 がそれに関する請求権を付与する場合に限るとされている (六編九五条) 。財産損害には、被った損失ならびに喪失 し た 利 益 が 含 ま れ る (六 編 九 六 条) 。 被 害 者 が 損 害 に 寄 与 し た 場 合、 過 失 相 殺 が 認 め ら れ る (六 編 一 〇 一 条) 。 ま た、 裁 判 官 に は 賠 償 額 を 縮 減 す る 権 限 が あ り (六 編 一 〇 九 条) 、 立 法 に よ り 損 害 賠 償 額 の 上 限 を 定 め る こ と も 認 め ら れ て いる (六編一一〇条) 。 4 .小括   住居空間計画環境省からの聞き取り調査の際の情報によれば、オランダは、共存に比較的積極的であるが、その 時点で栽培が認可されているのはGMトウモロコシのみであったため、共存の実益はあまりないようであった。オ ランダはバレイショの消費量が多いため、食用・飼料用のGMバレイショが認可されれば、共存に対してより積極 的になるであろう。 Ⅳ.ベルギー 1 .はじめに   ベルギーは、一九九三年の憲法改正によって、三つの地域及び三つの共同体からなる連邦国家となった。三つの

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地 域 と は、 ブ リ ュ ッ セ ル 首 都 圏 地 域、 フ ラ ン ド ル 地 域、 ワ ロ ン 地 域 で あ り、 三 つ の 共 同 体 と は、 フ ラ ン ス 語 共 同 体、フラマン語共同体、ドイツ語共同体であるが、現在、フランドル地域とフラマン語共同体はフランドル地域共 同体に統合されている。これらの地域・共同体は、一定の分野で立法権・行政権を有する。GMOに関しては、食 品安全及び環境については連邦が規制し、共存及び拡散防止措置をとった利用については地域が規制している。フ ランドル地域共同体については、二〇〇九年四月三日に共存に関するデク ( 12) レが、ワロン地域については、二〇〇八 年六月一九日にデク ( 13) レ、二〇〇九年三月二七日にアレ ( 14) テが制定され ( 15) た。ブリュッセル首都圏地域に関しては未定で ある。   なお、二〇一〇年一月時点では、ベルギー全域において、遺伝子組換え作物の商業栽培はなされていなかった。 2 .フランドル地域共同体 ⒜   責任制度   遺伝子組換え作物の栽培を行う意向を有する農業従事者は、所轄決定機関にその意思を通知し、遺伝子組換え作 物 の 取 扱 い に 関 す る 研 修 を 受 け た 旨 の 証 明 書 を 提 出 し な け れ ば な ら な い (デ ク レ 五 条 一 項) 。 今 後、 各 遺 伝 子 組 換 え 作 物 に つ い て、 隔 離 距 離 と 届 出 距 離 が 定 め ら れ る こ と に な る が (デ ク レ 三 条 六 号 及 び 七 号) 、 届 出 距 離 内 の 農 業 従 事 者 等 に 対 し て も 通 知 を 行 う こ と が 義 務 付 け ら れ る (デ ク レ 五 条 二 項 四 号) 。 所 轄 決 定 機 関 は、 遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 栽 培登録を担当し、登録簿を公表する (デクレ一一条) 。   共存措置に関する基本的な科学知識を十分に備える有識者でバランスよく構成された、農業従事者の請求や災害 補 償 請 求 を 評 価 す る た め の 委 員 会 が 創 設 さ れ る こ と に な っ て お り (デ ク レ 三 条 一 三 号、 九 条) 、 届 出 距 離 全 体 ま た は

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一部の栽培圃場で経済損失を被った農業従事者は、次の場合に、委員会に対して、該当する作物の収穫年から二暦 年目の六月三〇日までに、経済的損失の補償の申請を行うことができる。   ①不利益を被る農業従事者が同じ種類の遺伝子組換え作物を栽培していなかった場合 (デクレ一五条一項一号) 。   ②不利益を被る農業従事者が同じ種類の非遺伝子組換え作物を栽培していなかった場合 (同二号) 。   遺伝子組換え作物を栽培する農家または届出距離内の圃場で遺伝子組換え作物の栽培を行う者が、定められた栽 培条件を遵守しない場合には、不法行為責任を負うことになる (デクレ一五条一項) 。 ⒝   因果関係   遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 届 出 距 離 内 に 栽 培 圃 場 ま た は そ の 一 部 が あ る 場 合 に、 基 金 の 補 償 対 象 と な る (デ ク レ 一 四 条 一項) 。   認定された経済的損失が遺伝子組換え作物の栽培によるものではないとする証拠を提示できない場合には、遺伝 子組換え作物の栽培が原因で混入が生じたとみなす (同項) 。 ⒞   損害と修復   GMOの (〇・九%以上の) 出現による市場価値の減少分が補償の対象となる (デクレ一四条一項) 。   栽培圃場または生産物、農業関連企業の一部もしくは全体が廃止もしくは停止されることにより損失がさらに拡 大 し た 場 合、 補 償 額 は 引 き 上 げ ら れ る (デ ク レ 一 四 条 二 項) 。 ま た、 生 産 物 の 種 類 に か か わ ら ず 収 穫 物 の 廃 棄 費 用 分 も補償される (デクレ一四条三項) 。 ⒟   補償基金   基金は、遺伝子組換え作物を栽培する農業従事者が、遺伝子組換え作物の種類別に、遺伝子組換え作物が栽培さ

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れる耕地面積に比例して拠出することが予定されている (デクレ七条) 。 ⒠   その他の特別責任や補償制度との比較   GMO混入によって生じる経済的損失を補填する民間保険制度は存在しないため、加入の義務付けもない。 3 .ワロン地域 ⒜   責任制度   遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 栽 培 を 行 う 農 業 従 事 者 は、 所 轄 決 定 機 関 に 栽 培 登 録 の 申 請 を し な け れ ば な ら な い (デ ク レ 四 条、 ア レ テ 六 条) 。 現 在 は、 ト ウ モ ロ コ シ の み に つ い て、 遺 伝 子 組 換 え の も の と 非 遺 伝 子 組 換 え の も の と の 隔 離 距 離 が 定 め ら れ て い る が (デ ク レ 二 条 一 一 号 及 び 一 四 条 一 号、 ア レ テ 付 録 一) 、 隔 離 距 離 内 の 農 業 従 事 者 等 に 対 し て も 通 知 を 行 う こ と が 義 務 付 け ら れ る (デ ク レ 五 条、 ア レ テ 三 条) 。 所 轄 決 定 機 関 は、 遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 栽 培 登 録 を 担 当 し、登録情報に基づく土地台帳を作成して保管する (デクレ二七条、アレテ二八条) 。   トウモロコシに関する隔離距離は以下のとおりである。   ①遺伝子組換え作物の栽培地に非遺伝子組換え作物による囲いがない場合は六〇〇メートル。   ②遺伝子組換え作物の栽培地が非遺伝子組換え作物により囲まれており、非遺伝子組換え作物の栽培部分は播種 機の通る広さで、最低六列ある場合は三〇〇メートル。   また、収穫の翌年に播種を行う前に作物が再生した場合、廃棄されなければならない。   遺伝子組換え作物の栽培者は、隔離距離を確保することに加えて、栽培、播種・植え付け、収穫、圃場内での移 動ならびに貯蔵の全段階において、GMOの混入を避けるために様々な共存措置を遵守することが義務付けられて

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いる (デクレ一四~一六条、アレテ八~一八条) 。   補 償 委 員 会 が 創 設 さ れ る こ と に な っ て お り (デ ク レ 二 三 条) 、 G M O 混 入 に よ る 経 済 的 損 失 を 評 価 す る 役 割 を 果 た す (デクレ二四条) 。   補償申請を行うことができるのは、GMO混入による経済的損失を受けた慣行作物または有機作物の栽培者及び 養 蜂 家 で あ る (デ ク レ 二 五 条) 。 経 済 的 損 失 を 受 け た 農 業 従 事 者 は、 政 府 が 作 物 毎 に 定 め る 補 償 申 請 期 限 前 に、 ま た、 い か な る 場 合 も、 G M O が 収 穫 物 の 中 に 混 入 し て か ら 四 五 暦 日 ま で に 申 請 し な け れ ば な ら な い (デ ク レ 二 六 条 二項) 。 ⒝   因果関係   隔離距離内で次のことが生じた場合、基金からの補償がなされる (デクレ二六条四項) 。   ①不利益を被る農業従事者が同じ種類の遺伝子組換え作物を栽培していない場合―その収穫物が経済的損失の原 因となった収穫物と同じGMOを有していることが証明され、かつ、種類毎に定められる期間この種の作物を栽培 していなかった場合 (デクレ二六条一項) 。   ②不利益を被る農業従事者が同じ種類の遺伝子組換え作物を現在または過去に栽培していた場合―その収穫物が 経済的損失の原因となった収穫物と同じGMOを有しており、かつ、栽培者が共存措置を遵守している場合が証明 された場合 (同項)   従って、遺伝子組換え作物の栽培者が、栽培条件を遵守しない場合には、不法行為責任を負うことになる。 ⒞   損害と修復   GMO混入により生じた経済的損失は、以下の場合にのみ補償される。

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  ① 慣 行 栽 培 作 物 ― 現 行 の 欧 州 法 の 下 で G M O を 含 む こ と を 示 す ラ ベ ル 表 示 が 必 要 と な る 場 合 (デ ク レ 一 七 条、 ア レテ一九条一項) 。   ② 有 機 栽 培 作 物 ― 有 機 生 産 及 び 有 機 生 産 物 の 表 示 に 関 す る 二 〇 〇 七 年 六 月 二 八 日 付 の 欧 州 理 事 会 規 則 (C E) 八三四/二〇〇七で定められた規格に当てはまらないGMOを含む理由で、有機栽培作物の栽培検査を行う承認団 体により収穫物が格下げされた場合 (デクレ一八条、アレテ一九条一項) 。   補償の対象となる損害は、次の三種類である。   ①GMOの (〇・九%以上の) 出現による市場価値の減少分 (デクレ一八条) 。   ②栽培圃場または生産物、農業関連企業の一部もしくは全体が廃止もしくは停止されることにより追加的に生じ た損失 (デクレ一九条) 。   ③生産物の種類にかかわらず、収穫物の廃棄費用 (デクレ二〇条) 。   申請者が混入防止措置を怠った場合には、補償金は二五~七五%の範囲で減額される (アレテ二二条) 。   一二五ユーロ未満の損失は補償されない (デクレ二六条二項) 。 ⒟   補償基金   遺伝子組換え作物の栽培を監督官庁に登録しようとする全ての生産者は、補償基金に一定の出資金を払わなけれ ばならない (デクレ九条) 。   補償基金への出資金には二種類のものがある (デクレ一〇条) 。   ①管理費   一 圃 場 毎 に 一 律 八 〇 ユ ー ロ が 検 査 手 数 料 の 中 に 含 ま れ、 そ の 他 に 品 種 毎 に 定 め ら れ た 金 額 が 加 算 さ れ る。 さ ら

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に、 圃 場 毎 の 書 類 手 数 料 と し て 一 律 五 〇 ユ ー ロ が 必 要 で あ る (ア レ テ 八 条 一 号、 付 録 一) 。 ト ウ モ ロ コ シ に つ い て の 検査手数料は一〇〇メートルの囲いにつき五ユーロとなった。   ②補償金   栽 培 許 可 作 物 毎 の 関 連 費 用 は、 圃 場 毎 に 定 め ら れ て い る (ア レ テ 八 条 二 号、 付 録 一) 。 ト ウ モ ロ コ シ に つ い て は、 圃場毎の関連費用として、最初の五ヘクタールまでは一ヘクタールあたり四〇ユーロ、それ以上は一ヘクタールあ たり二五ユーロとなった。 ⒠   その他の特別責任や補償制度との比較   GMO混入によって生じる経済的損失を補填する民間保険制度は存在しないため、加入の義務付けもない。もっ とも、一般の営業責任保険 ( insurance RC exploitation ) に加入することができる。 4 .一般的な責任制度またはその他の補償制度 ⒜   責任制度   ベルギー民法 ( Code civil / Burgelijk Wetboek ) は、フランス民法とほとんど同じ条文からなりたっている。関連 しうる条文は次のとおりである。 第 一 三 八 二 条   他 人 に 損 害 を 生 ぜ し め る 人 間 の 所 為 は い か な る も の も、 そ の フ ォ ー ト に よ っ て そ の 損 害 を 生 ぜ し め た 者 に、その賠償義務を負わせる。 第 一 三 八 三 条   何 人 も、 そ の 所 為 に よ っ て 生 ぜ し め た 損 害 だ け で な く、 懈 怠 ま た は 軽 率 に よ っ て 生 ぜ し め ら れ た 損 害 に ついても責任を負う。

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第 一 三 八 四 条 第 一 項   自 己 の 行 為 に よ っ て 生 ぜ し め た 損 害 に つ い て だ け で は な く、 自 己 が 責 任 を 負 う べ き 者 に よ っ て 生 ぜしめられた損害、または、自己が保管する物によって生ぜしめられた損害についても責任を負 ( 16) う。   一三八二条のフォートは客観的に判断される。共同不法行為者は連帯責任を負う。自然力との競合については、 自然力が排他的原因でない限り、不法行為者は全損害について責任を負う。被害者に過失がある場合、過失不法行 為においては加害者の責任は減免されうるが、故意不法行為においては加害者の減免責は認められない。   ま た、 五 四 四 条 は、 近 隣 妨 害 ( troubles de voisinage ) に お い て、 通 常 の 不 便 の 限 度 を 超 え る 損 害 が 生 じ た 場 合 に、その賠償請求を認めている。近隣妨害の成立には、過失があることを要しない。 ⒝   因果関係   判 例 上、 「あ れ な け れ ば こ れ な し」 の 関 係 に 立 つ、 損 害 発 生 に 関 与 し た 全 て の 事 由 が 等 し く 原 因 と さ れ る (条 件 等 価 説( équivalence des conditions ) )。 加 害 行 為 に よ り 損 害 が 発 生 し た こ と の 高 度 の 蓋 然 性 を 証 明 す る 責 任 は、 損 害 賠償請求権者が負担する (一三一五条) 。 ⒞   賠償されうる損害   損害は、差額説的に判断される。GMO混入の文脈で言えば、GMO混入がなかった時の利益状態とGMO混入 が起こったことによって生じた利益状態の差である。発生する損害は、原則として確実なものでなければならない が、判例は、一部の事案において、期待権の喪失の理論を認めている。   被害者が損害に寄与した場合、過失相殺が認められる。また、損益相殺がなされる。   近隣妨害において、損害賠償請求権者が得られるのは、失われた衡平のための公平かつ適切な補償である。 ⒟   期間制限

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  契約以外から生ずる民事責任に関する損害賠償請求権は、被害者が、損害またはその悪化、かつ、責任を有する 者を知ったときから五年で消滅する。また、損害発生時から二〇年で消滅する。 5 .小括   フランドル政府農業漁業省における聞き取り調査の際の情報によれば、フランドル地域共同体は、ワロン地域と 比べて、遺伝子組換え作物の開発に積極的である分、共存政策についても積極的であるとのことであった。もっと も、オランダと同様、食用・飼料用のGMバレイショが認可されない限り、共存の実益はないとのことであった。 Ⅴ.デンマーク 1 .はじめに   デンマークは、二〇〇四年、構成国中で初の共存法である遺伝子組換え作物の栽培等に関する法 ( 17) 律を制定した。 同法に関しては、遺伝子組換え作物の栽培等に関する省 ( 18) 令及び近隣農家の補償に関する省 ( 19) 令が存在する。デンマー クは、欧州委員会に、共存法に基づく国家補償制度に関して届出を行い、二〇〇五年一一月二三日に承認 ( 20)( 21) を得た 。   共存法が制定される前には、デンマーク保険協会と食料農業漁業省との間で保険制度の創設について検討が行わ れたが、結局実現しなかったために、国家補償制度が構築されたという経緯がある。しかしながら、この国家補償 制度は将来的には民間保険によって代置されるものとの政治的合意がある。   なお、二〇一〇年一月時点では、デンマークにおいて、遺伝子組換え作物は、EUの研究プロジェクトの一環と

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して栽培されていたが、商業栽培はなされていなかった。 2 .共存法令に基づく責任・補償制度 ⒜   責任制度   G M O の (〇・ 九 % 以 上 の) 出 現 に よ っ て 経 済 的 損 失 を 受 け た 農 家 は、 遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 栽 培 者 に 過 失 が あ ろ うともなかろうとも、基金から補償を受けることができる。   遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 栽 培 者 は、 共 存 措 置 を 遵 守 し な け れ ば な ら な い (栽 培 省 令 九 条) 。 共 存 措 置 は、 遺 伝 子 組 換 え 作物毎に行われる。   遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 栽 培 者 や 取 扱 業 者 等 は、 共 存 に 必 要 な 教 育 を 受 け、 食 料 農 業 漁 業 省 植 物 局 (以 下、 「植 物 局」 という) の承認を受けなければならない (栽培省令二条一項) 。   遺伝子組換え作物の栽培に関しては、作物別に隔離距離が定められている。   トウモロコシ―栽培について二二五メートル   テンサイ―採種用について二〇〇〇メートル、一般栽培について一五メートル   バレイショ―増殖用について二〇メートル、一般栽培について一五メートル   遺伝子組換え作物を栽培することを意図する者は、近隣農家に対して、春作であれば二月一日までに、冬作であ れ ば 七 月 一 日 ま で に、 そ の 旨 を 通 知 し な け れ ば な ら な い (栽 培 省 令 一 五 条) 。 取 扱 業 者 等 に 対 す る 情 報 提 供 義 務 も あ る (栽培省令一六条)   遺伝子組換え作物の栽培者は、毎年四月一日までに、栽培を行う圃場の登録のための情報を提供し、その情報は

(19)

公表されることになる (栽培省令一八条) 。   農家が受けた損失のうち補償基金で補償されない分については、農家はなお、責任を有する者に対して損害賠償 請 求 を 行 う こ と が で き る。 補 償 基 金 が 支 払 わ れ た 分 に 関 し て は、 植 物 局 が 代 位 請 求 権 を 行 使 す る こ と に な る (法 一一条、補償省令一二条) 。 ⒝   因果関係   植物局は、作物の中にGMOが出現したために経済的損失を受けている農家に対して、次の両条件に該当する場 合には補償を行う (法九条一項) 。   ①特定の地域内の同じ栽培期間に、同一または類縁種の遺伝子組換え作物が栽培されており、損失を受けている 農家の作物と交雑した可能性があること (法九条一項ⅰ号) 。   ② 損 失 を 受 け て い る 農 家 の 作 物 の 中 に G M O が 〇・ 九 % 以 上 確 認 さ れ る こ と (法 九 条 一 項 ⅱ 号、 同 六 項、 補 償 省 令 二条一項) 。   さらに、補償請求が認められるためには、隔離距離の一・五倍の範囲内に圃場を有していることが必要である。 証明責任に関しては、法令には明記されていないが、法九条の文言からは、損失を受けている農家が一項ⅰ号及び ⅱ号の事実を証明することになると思われる。   なお、特例として、認定有機農家が、播蒔用種子の中に遺伝子組換え種子が混入したことで損失を受けた場合、 食料農業漁業省は、法九条一項ⅰ号及びⅱ号にかかわらず、補償することになる (法九条四項) 。 ⒞   損害と修復   補償対象となるのは次の三種類の損失である。

(20)

  ①GMOの出現によって生じる作物の販売価格の減少分 (法九条三項ⅰ号、補償省令一〇条一項ⅱ号)   ②サンプリングと分析のための費用 (法九条三項ⅱ号)   ③ G M O が 存 在 し た た め に、 有 機 農 業・ 有 機 畜 産 に 戻 す た め に 生 じ た 損 失 (法 九 条 三 項 ⅲ 号、 補 償 省 令 一 〇 条 一 項 ⅱ号)   農家が、故意または過失により損失に寄与した場合、植物局による遺伝子組換え作物の栽培者に対する求償の見 込みを減らす行為を行った場合、補償額が減額されるか請求権を失う可能性もある (法九条五項) 。また、農家が責 任を有する者から損害賠償を受けた場合や損失が保険で補填された場合、植物局は、補償の一部または全部を拒否 することができ、既に支払われた場合には返還を請求することができる (補償省令一一条) 。   補 償 請 求 は、 植 物 局 に 対 し て、 混 入 を 知 っ た 時 ま た は 知 る べ か り し 時 か ら 一 四 日 以 内 に 行 わ れ な け れ ば な ら ず (法 一 〇 条 一 項、 補 償 省 令 四 条 二 項) 、 ま た、 収 穫 が 行 わ れ た 年 の 翌 年 八 月 一 日 ま で に 行 わ な け れ ば な ら な い (法 一 〇 条二項、補償省令四条三項) 。   補 償 に 関 す る 植 物 局 の 決 定 に 関 し て 行 政 救 済 を 受 け る こ と は で き な い (法 一 六 条 一 項、 補 償 省 令 一 三 条 一 項) 。 補 償決定に利害を有する当事者は、その決定について司法の場で争うことができるが、その場合には決定受領日から 四週間以内に植物局に要求しなければならず、その後、植物局が民事手続規則に従って法的手続を開始することに なる (法一六条二項、補償省令一三条二項) 。 ⒟   補償基金   植 物 局 は、 遺 伝 子 組 換 え 作 物 が 栽 培 さ れ る 耕 地 一 ヘ ク タ ー ル あ た り 毎 年 一 〇 〇 D K K を 徴 収 す る (法 一 二 条 一 項、 栽 培 省 令 一 九 条 一 項) 。 こ れ が 補 償 基 金 と し て 積 み 立 て ら れ る の で あ る が、 栽 培 面 積 は ご く わ ず か で あ る た め 徴

(21)

収額も少な ( 22) く、また、補償も請求されていない。 ⒠   その他の特別責任や補償制度との比較   GMO混入によって生じる経済的損失を補填する民間保険制度は存在しないため、加入の義務付けもない。 3 .一般的な責任制度またはその他の補償制度 ⒜   デンマーク法の特徴   ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランドとともにスカンジナビア法圏を構成しているデンマー クは、大陸法系に属する国として分類されているが、大陸法の継受がなされたのが一九世紀後期以降と遅かったた め、法典化が進んでいない。こうした事情から、デンマークでは、裁判所が法を形成する役割を果たすことが強く 期待されている。もっとも、デンマークには、英米法系の特徴である先例拘束性の原理は存在しない。   GMOの混入によって生ずる経済的損失の賠償に関連する責任制度は、過失による不法行為責任と、相隣関係に 関する損害賠償責任がある。 ⒝   過失不法行為   前述のとおり、デンマークでは不法行為法も判例法として発展してき ( 23) た。過失の有無は、客観的に判断される。 加 害 行 為 と 損 害 と の 間 の 事 実 的 因 果 関 係 は、 「あ れ な け れ ば こ れ な し」 で 判 断 さ れ る。 加 害 行 為 に よ り 損 害 が 発 生 したことの蓋然性を証明する責任は、損害賠償請求権者が負担する。共同不法行為者は連帯責任を負う。相当因果 関係にある損害が賠償されうることになるが、その中には純粋経済損害も含まれる。 ⒞   相隣関係に関する損害賠償責任

(22)

  近隣関係にある者は、通常の範囲のささいな迷惑は互いに甘受しなければならないが、受忍の限度を超えた場合 に、判例は、被害者から加害者への賠償請求を認めている。近隣から何らかの迷惑を受けるリスクによって財産価 格が減少した場合も同様である。 4 .小括   植 物 局 に お け る 聞 き 取 り 調 査 の 際 の 情 報 に よ れ ば、 議 会 は 遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 認 可 に 消 極 的 で あ る と の こ と で あった。補償事例もないことから、本補償制度が今後も運用されていくのかどうか、注目していく必要がある。 Ⅵ.まとめ   本稿では、EUについて、共存ガイドラインの法的性格とガイドラインの発行元である欧州委員会の役割―国家 補助禁止規定に係る審査及び承認、欧州理事会及び欧州議会への定期報告―について簡単に言及した後で、オラン ダ、ベルギー、デンマークについて、共存から生じる経済的損失を対象とする責任・補償制度について分析を行っ た。これら三か国は、いずれも共存から生じる経済的損失に対する補償基金を設置したか設置する過程にある。ま ず、デンマークは、将来的には民間保険制度によって代置されることを前提としつつも、構成国中で初となる共存 法の下で遺伝子組換え作物栽培者からの拠出に基づく補償基金制度を確立した。ベルギーのフランドル地域共同体 もワロン地域も、遺伝子組換え作物栽培者からの拠出に基づく補償基金方式を採用し、設置に向かっているところ である。オランダも補償基金方式を採用した国であるが、関連団体の合意に基づいて規則が制定されていく点と、

(23)

遺伝子組換え作物栽培者だけでなく非遺伝子組換え作物栽培者も補償基金に拠出するという点が特徴的である。ま た、三か国とも、補償基金では対処できない場合において、従来の不法行為制度が機能することになる。共存から 生じる経済的損失に適用可能性がある不法行為責任として、過失不法行為ないし近隣妨害に関する無過失責任が存 在することも共通している。   EUについては、二〇一〇年七月に欧州委員会が新ガイドライ ( 24) ンを採択し、また、構成国に遺伝子組換え作物栽 培に関する決定権を与える内容の規則 ( 25) 案を出すなど、大きな動きがみられるため、本稿のフォローアップを早々に 行うことを予定している。 (注) ( 1 )  本 ガ イ ド ラ イ ン の 根 拠 と な る の は、 新 環 境 放 出 指 令( Directive 2001/18/EC of the European Parliament and of the Council on the deliberate release into the environment of genetically modified organisms and repealing Council Directive 90/220/EEC ) 第 二 六 a 条 で あ る。 同 条 は、 遺 伝 子 組 換 え 食 品・ 飼 料 に 関 す る 二 〇 〇 三 年 九 月 二 二 日 の 欧 州 議 会・ 理 事 会 規 則( Regulation ( EC ) No 1829/2003 of the European Parliament and of the Council of 22 September 2003 on genetically modified food and feed )第 四三条により挿入された。その文言は以下のとおりである。    第二六a条    第一項   構成国は、他の製品にGMOが非意図的に存在することを避けるために適切な措置を講ずることができる。    第 二 項   欧 州 委 員 会 は、 共 同 体 及 び 国 内 レ ベ ル で の 研 究 に 基 づ く 情 報 を 収 集 及 び 調 整 し、 構 成 国 に お け る 共 存 に 関 す る 整 備 を 観 察 し、 そ し て、 情 報 と 観 察 に 基 づ い て、 遺 伝 子 組 換 え 作 物、 慣 行 作 物 な ら び に 有 機 作 物 の 共 存 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン を 策 定 す る も

(24)

のとする。 ( 2 )  筆 者 は、 二 〇 〇 九 年 九 月 一 日 か ら 一 二 日 に か け て、 資 料 収 集 及 び ヒ ア リ ン グ の た め 海 外 調 査 を 行 っ た。 訪 問 先 は 以 下 の と お り である。    EU―欧州委員会保健・消費者保護総局、欧州委員会農業・農村開発総局、欧州環境庁    オランダ―住居空間計画環境省    ベルギー―フランドル政府農業漁業省    デンマーク―食料農業漁業省植物局、環境保護庁    NGO―ア・シード・ヨーロッパ、グリーンピース欧州ユニット    本 稿 は、 訪 問 先、 そ し て 筆 者 が 属 す る 調 査 グ ル ー プ の メ ン バ ー の ご 協 力 な く し て 完 成 し え な か っ た。 深 く 感 謝 申 し 上 げ た い。 ま た、 農 業 環 境 技 術 研 究 所 及 び 農 林 水 産 省 の 報 告 会 に お い て は、 出 席 者 か ら 貴 重 な ご 意 見 を 頂 戴 す る こ と が で き た。 御 礼 申 し 上 げ た い。ただし、本稿の意見に関わる部分は、筆者個人の見解であり、委託元の見解を示すものではない。 ( 3 )  共存による環境や健康への影響については、新環境放出指令が扱う。 ( 4 )  E C 条 約 八 七 条 一 項 は、 「本 条 約 に 特 段 の 定 め が あ る 場 合 を 除 き、 国 家 に よ り 又 は 国 家 の 財 源 に よ り 付 与 さ れ る 補 助 で、 一 定 の 事 業 者 又 は 一 定 の 産 品 の 生 産 を 優 遇 す る こ と に よ っ て 競 争 を 歪 め 又 は 歪 め る お そ れ の あ る も の は、 形 式 の い か ん を 問 わ ず、 構 成 国 間 の 貿 易 に 影 響 を 及 ぼ す 限 り、 共 同 市 場 と は 両 立 し な い」 と 規 定 し、 原 則 と し て 国 家 補 助 を 禁 止 し て い る が、 同 二・ 三 項 に お い て、 例 え ば「一 定 の 経 済 活 動 や 経 済 領 域 の 発 展 を 促 進 す る 補 助 で、 そ の よ う な 補 助 が 欧 州 の 共 通 利 益 に 反 し な い 範 囲 で 取 引 条 件 に 悪 影 響 を 与 え な い 場 合」 (三 項 c 号) な ど、 共 同 市 場 と 両 立 す る か 両 立 す る 可 能 性 の あ る 補 助 を 列 挙 し て い る。 欧 州 委 員 会 は、 各 構成国の補助制度について新規にかつ継続的に審査する権限を有する(八八条) 。 ( 5 )  C om m un ica tio n fro m th e C om m iss io n to th e C ou nc il an d th e E ur op ea n Pa rli am en t of 9 M ar ch 2 00 6 - R ep or t on th e

implementation of national measures on the coexistence of genet

ically modified crops with conventional and organic farming.

( 6 )  Report from the Commission to the Council and the European Parliament of 2 April 2009 on the coexistence of genetically

(25)

modified crops with conventional and organic farming. ( 7 )  B er nh ar d A . K oc h ( ed . ), Lia bil ity a nd C om pe ns ati on S ch em es fo r D am ag e R es ult in g fro m th e Pr es en ce o f G en eti ca lly

Modified Organisms in Non-GM Crops.

本稿における各国の一般的な責任・補償制度の記述は、本報告書を参考にした。

) 

Co-existence in Primary Sector: Main Text and Selected Appendic

es ( 1 November 2004 )(英訳版) 。 ( 9 ) 

HPA Regulation on the Coexistence of Crops 2005

( 10 November 2005 )(英訳版) 。 ( 10)   Directie Landbouw, Ministerie van Landbouw, Natuur en Voedselkwaliteit, Stand van zaken co-existentie restschadefonds ( DL.2008/2234 ) ( 10 September 2008 ). ( 11)   翻 訳 は、 ク リ ス テ ィ ア ン・ フ ォ ン・ バ ー ル 著 / 窪 田 充 見 編 訳『ヨ ー ロ ッ パ 不 法 行 為 法( 1 )』 (弘 文 堂、 一 九 九 八 年) 五 三 三 頁 を参考にした。 ( 12)   D éc re t p or ta nt l ’o rg an iza tio n de la c oe xis te nc e de c ult ur es g én éti qu em en t m od ifié es e t d e cu ltu re s co nv en tio nn ell es e t biologiques. ( 13)  

Décret relatif à la coexistence des cultures génétiquement modi

fiées avec les cultures conventionnelles et biologiques.

( 14)   A rr êt é du G ov er nm en t w all on r ela tif à la c oe xis te nc e de s cu ltu re s gé né tiq ue m en t m od ifié es a ve c le s cu ltu re s

conventionnelles et les cultures biologiques.

( 15)   ベルギーにおいて、地域や共同体が発するデクレは、連邦の定める法律と同等の効力を有する。 ( 16)   前掲注 11・『ヨーロッパ不法行為法( 1 )』五七三、五七五頁。 ( 17)  

Act on the Growing etc. of Genetically Modified Crops, Act No. 4

36 of 9 June 2004 (英訳版) 。 ( 18)   Ministerial Order on the Cultivation etc. of Genetically Modified Crops ( No. 220 of 31 March, 2005 )(英 訳 版) 。 同 省 令 は 二〇〇七年に改定された。 ( 19)   M in ist er ial O rd er o n C om pe ns ati on fo r Lo ss d ue to C er ta in O cc ur re nc es o f G en eti ca lly M od ifi ed M ate ria l ( N o. 11 70 o f 7 December, 2005 )(英訳版) 。

(26)

( 20)

 

European Commission Press Release

( IP/05/1458 ), 23 November 2005. ( 21)   経 緯 に つ い て の 詳 細 は、 立 川 雅 司・ 横 山 織 江「遺 伝 子 組 換 え 作 物 を め ぐ る E U の 共 存 政 策( 2 ) デ ン マ ー ク ― 欧 州 初 と な る 共 存政策の制定」農林経済九九九四号二― 六頁(二〇〇八年)を参照。 ( 22)   二 〇 〇 五 年 に デ ン マ ー ク 国 内 で 遺 伝 子 組 換 え 作 物 が 栽 培 さ れ た の は 一・ 一 ヘ ク タ ー ル の み で あ り、 徴 収 さ れ た の は 一 一 〇 D D Kのみであった。 ( 23)   た だ し、 人 身 被 害 を 対 象 と す る 損 害 賠 償 法、 製 造 物 責 任 法、 薬 害 に 関 す る 損 害 賠 償 法 な ど、 一 定 の 分 野 で 制 定 法 化 が な さ れ て いる。 ( 24)   Commission Recommendation of 13 July 2010 on guidelines for the development of national co-existence measures to avoid the unintended presence of GMOs in conventional and organic crops ( 2010/C 200/01 ). ただし、経済的損失に関する責任・補償 制度の整備を各構成国に任せるという点は、旧ガイドラインから変更されていない(新ガイドライン付属書二 ・ 五参照) 。 ( 25)   Proposal for a Regulation of the European Parliament and of The Council amending Directive 2001/18/EC as regards the

possibility for the Member States to restrict or prohibit the c

ultivation of GMOs in their territory.

―おおさか

 

参照

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