21世紀を安全に生活するための方策
著者名(日)
熊井 文孝
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
31
ページ
2-5
発行年
2009
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002026/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja21世紀を安全に生活するための方策
熊井文孝*
1.はじめに 豊かな社会とは,早さ,快適さ,便利さ,贅沢さを追 い求めることである.このような思いで20世紀は,産 業技術の発展と共に,それらの恩恵を亨受することがで きた.しかしながら21世紀が幕を開けると,私たちは, いま大きな問題に直面している. 私が少年の頃(半世紀前の頃)は,安心や安全という 言葉についてそれほど意識せずに過していた.それは, 前述の豊かな社会とは程遠いが,周りの人々と心の絆で しっかりと結ばれみんなの助け合いが普通に行われてい たからと思える.今はどうであろうか,周りの人たちと の絆も薄れ,白分の安全をどのように守り,どのように すれば安心を得られるのか,また安心して暮らせるのか はなはだ心細い気持ちになってしまう. そこで,地球規模的な問題も含め,私たちの身の回り の問題を考え,21世紀をどのような意識をもって暮らし たらより安全な暮らし方ができるのかを,労働安全コン サルタントとして,又日本技術士会の地震防災支援等の 活動を通じて,培ってきたことを述べてみたい. 2.私たちを取巻く問題 いま,私たちを取巻く問題は,多種多様であり,それ ぞれの人に共通して存在しているわけでは無いが,大き く区別すると自然災害等による身体や財産に影響を及ぼ す問題及び健康や老後の生活等精神的に影響を及ぼす問 題に区別されると思う. それぞれどのようなものがあるか以下に列挙してみる. 2.1 身体や財産に影響を及ぼす問題 (1)白然災害 台風,竜巻,集中豪雨による水害・t砂崩壊, 大規模地震災害等 (2)公害 地盤汚染,大気汚染,水質汚濁,騒音・振動等 (3)食の問題 毒物混入製品,世界的食料不足等 (4)犯罪 大量殺人等凶悪犯罪,振込め詐欺,子供虐待, IT犯罪等 (5)交通事故 子供・高齢者の被害,飲酒運転・ひき逃げ等 (6)その他人為的なもの 火災,爆発,飛行機事故,船舶事故,列車事故, 原発の放射線事故等 (7)労働災害 有害物による健康障害,墜落災害,機械による 巻き込まれ,高齢者の災害等 (8)テロ 集団的犯罪者による社会の破壊 等が上げられるであろう. 2.2 精神的に影響を及ぼす問題 (1)健康の維持 罹病等 (2)老後の生活 制度(年金,医療,介護)に関すること,独り になったときの日常生活等 (3)2・1に記述した被害を受ける不安等 が考えられであろう. また,上記二つの問題に区分されないが地球温暖化に よる気象異常は,世界的規模で今後の人類の生活及び生 活環境を破壊する大きな問題であると考えるがここでは 取り扱わないこととする. 2.3 問題の整理 2・1,2・2では,予測できる大きな問題を列記し たが,実際にはいくつかのものが複合した形で発生し被 害が拡大する場合が多いと思われる.従って,私たちは これらの問題がいつ具現化しても対応できるようにして おくことが望まれている. 以下に示す4項日 (1)公害 (2)食の問題 (3)その他人為的なもの (4)老後の生活に関する社会制度改革 については,個人の努力により影響を回避することが困 難な問題であり,これらの影響を最小限にするためには, 行政の努力が強力に求められる問題である. また,上記以外は,繰返し発生している問題かあるい は身近にある問題であり,これらを完全に防止すること は出来ないが,発生した場合にある程度白助努力によっ て被害を小さくできるものであると考えられる. 3.問題から受ける影響を小さくする 上述した2.3の(1)∼(4)以外の問題は,私た ちの身近に存在するものであり,リスク回避のために白 分白身の努力が必要である.公的機関が不測事態にいつ も援助してくれると思うのは危険である.従って,防災・ ’熊井技術1’・労働安全コンサルタント事務所代表一2一
東洋大学工業技術研究所報告熊井文孝
減災知識の向E,定期的な防災訓練の実施,耐火・耐震 化の促進,その他危険排除の対策等を事前に取り入れる ことで多くの危険から白分を守ることが出来るものであ る。 自分が被害者になるリスクは,今日大変多くなってい るので安心して幕らすためには,い美真剣に考える必要 がある. ここでは,問題から受ける影響を小さくするために具 体的にどのようにすれば良いか,地震災害を例にして述 べることにする, 3.1 地震災害への対応 H本に住んでいる限り私たちは地震を避けることは出 来ない.どこでも,又今日にも起こるかもしれない地震 にどのように向き合えばよいか具体的に考えてみる. 図一1は過去に発生した震度4以Eの分布図である.目 本は列島が見えないほど地震が発生していることがわか る. 写真3 写真5 写真7 写真4 写真6 し ヲへ ζ、メ\ン︵へ/
笛 〆ざ
ン
∀嬬プ㌻{一窪…
ぼw 1’. 鍼
趣ノニ
∨\ d−、、︵、]♂二二
澤輝,
誉×文鰺’ ’ ﹀ ψ、× ﹀ に“ ∼ ∨ 図1 震度4以ヒの発生分布図 また,最近発生したM6以上の地震を上げると (1)阪神淡路大震災:1995・1M7.2 写真1・2 (2)宮城県北部地震:2003・7 M6.2 写真3 (3)中越地震:2004・10 M6.8 写真4・5 (4)福岡県西方沖:2005・3 M7.0 (5)能登半島地震:2007・3 M6.9 (6)中越沖地震:2007・7 M6.8 写真6・7 (7)岩手宮城内陸地震:2008・6M7.2 と多くあり,過去5年間を見ても6件の大規模地震が発 生している. 写真1 写真2 ’ 〔 3、1.1 地震被害の時系列対応策 地震を避けることが出来ないとすれば,地震による被 害をできるだけ小さくするいわゆる減災が有効である. 大規模地震はかなり広域に甚大な被害が及ぶと予想さ れるので,白分の安全は白分自身で確保することが番 重要な事である.大規模災害になるほど公的機関の救助 をただちに期待することは不可能であることを認識し, 白助・共助というそれぞれの地域内で住民同士が連携し て地震災害からお互い助けAい復興に向けた対応が必要 になる. 時系列に対応するステージを考えると (1)地震発災前 (2)発災時 (3)避難期 (4)復興期 に分けられる. これらの各ステージにおける課題事項及び地域関係者 との連携について表・1に示した. 工業技術No.31(2009)一3一
表1 地震災害の防・減災と地域復興に関する対応と課題 嬬ステージ 肪裳力の エ醍因子