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児童・生徒における読書能力の発達と個人差に関する研究 -俳句の創作と読みの語り合いが個人の読解に与える影響-

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Academic year: 2021

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児童・生徒における読書能力の発達と個人差に関する研究

J 俳句の創作ヒ読みの誇リ合いが個人の読解に与える彰響 ー 学校教育専攻 人間形成コース 大 黒 伸 介 【はじめに】 近年,児童・生徒の学力格差の問題が指摘さ れるようになっている。学力の基盤を成すのは 言語の力である。語と語,文と文の意味をどう 理解していくのか どこにつまずきがあるのか 探る必要がある。 本研究では児童・生徒の読書能力の発達と個 人差の現状を把握し,これまでの指導法の問題 点を検証し,改善点を検討する。そして,読書 能力を向上させる指導方法や教材について検討 していく。 【研究 1】 目的 児童・生徒の読書能力はどのように発達して し1くのか。また,他者を思いやる共感性や韻文 の短歌・俳句の鑑賞力とどのような関係にある のか。関連分析をおこない検討する。 方法 読書能力検査(教研式読書力診断検査 A形式 小学校中学年用,高学年用,中学校用),共感 性 検 査 ( 全22項目),短歌・俳句鑑賞検査(短 歌5首から 1首 を 選 択 し 俳 句 5匂から 1句を 選択し,感想、を自由記述)を公立小学校3年生 から公立中学校3年生までの742名に実施した。 3検査を全て受けたのは小学生401名,中学生3 16名であった。 結果及び考察 本研究によって,読書能力検査の総合から算 指導教官 皆 川 直 凡 出された読書学年で検討した結果,読書能力は, 学年が上がるとともに高い方に推移するが,同 時に読書能力の個人差も大きくなることが明ら かになった。小学校中学年でみられた個人差は, 小学校高学年で一度狭まるが,中学生になると しだいに拡大していく傾向がみられた。共感性 検査の共感得点と読書能力検査の各下位検査の 成績とは相関がなかった。短歌・俳句鑑賞検査 では,感想形式が無記述,絵のみ,絵と文,文 のみの4種類に分かれた。小学校5年生までは 絵と文が半数以上であったが,小学校6年生以 降は,文のみが半数以上になり,絵も大胆なも のから徽密なものに変化しており,この学年の 問に境目が確認された。短歌・俳句鑑賞検査と 共感性検査とでは,共感性の第2因子「他者の 情 動 表 出 に 対 す る 受 容 や 評 価J,第3因子「情 動の共有jの共感得点と短歌・俳句鑑賞検査と が関係していた。共感性の高い児童・生徒ほど 短歌・俳句の読み取りも深くなることが明らか になった。短歌・俳句鑑賞検査と読書能力検査 との間には弱し咋日関があった。関連分析の結果, 読書能力が高い児童・生徒であっても,短歌・ 俳句鑑賞検査では深い読み取りをするとはかぎ らないこと,読書能力が低いと深い読み取りが できないことが示された。 3検査の関連分析か ら文章を深く読むためには,共感性や背景知識 などの力を活用する読解の下位過程3の力が必 要になってくることが分かつた。 3つの下位過

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-6-程を刺激しながら,互いの読みを発表し合い, 相互作用が生まれる授業を展開する必要がある ことが分かつた。また,研究1の結果から教育 効果を検証する質問紙を作成した。 【研究2】 目的 俳句の創作と読みを中心とした授業をおこな うことで,生徒同士の読みが相互に関係し合い どう読みのイメージが広がり,言葉についての 認識が深められていくか検討する。 方法 中学校2年生の 1学級を教育群として俳句の 授業をおこない,もう 1学級を統制群として 2 つの学級に,教育効果を検証する質問紙を授業 の前後に 2回実施した。 授業は2日間,全4時間の計画で実施した。 1日目に 2回,創作の時間をとり 2日目の 2 時間は,生徒の作品に対する読みを発表し合う 授業を展開した。 結果及び考察 質問紙による分析では,共感性検査,読解・ 鑑賞力検査に影響はみられなかった。しかし, 俳句鑑賞検査では教育群において授業前後に変 化がみられた。特に項目,場面,発展,音数, 文数において有意な差があり,評価の得点が向 上していた。生徒の記述を個別に検討してみる と,授業前に比べて音数が増え,記述内容が広 がっていた。作品に描かれた場面が広がったり, 作者はどういう気持ちで書いていたのかといっ た,新しい視点をもつことができたために感想 に広がりがでたといえる。これは授業の中で読 みを発表し合うことにより 互いの読みの違い を発見する機会を得たためと考えられる。一方, 統制群では,共感性検査,読解・鑑賞力検査, 俳句鑑賞検査で有意な差はみられなかった。俳 句鑑賞検査では,音数が増えた生徒,減った生 徒とも4名ずつで,減った生徒の記述内容に変 化はみられず,記述が簡略化されていた。増え た生徒は,場面の記述は詳しくなっているが, 作者の気持ちを推測するような記述はみられな かった。明らかに俳句の創作と読みを中心とし た授業が,相互作用を生み出し,一つの作品に おいても影響を与えることが確認できた。 【総合考察】 研 究 2の授業の中では,作者のイメージした 場面の多くは,読者にとって意外な場面として とらえられていた。読者となった生徒は,作者 のイメージした場面の発表を開くたびに,自分 の読みを修正し 広げていった。作者や他の読 者の意見を取り入れることによって,推論の幅 を広げ,深い読みにつながっていったと考えら れる。読書能力は学年とともに上がっていくが, 小学校高学年で、の形式的操作期への移行が順調 におこなわれるかどうかによって,その後の読 書能力に大きな影響を与えると考えられるD 中 学校での個人差の広がりは,この時期の移行が スムーズにし¥かず 停滞している生徒と移行が スムーズにおこなわれた生徒との個人差の広が りであったといえるO 語と語の関係,文と文と の関係をつかむ力を十分身につけさせることが できるか,また,どう支援していくのか。読書 能力の育成は大きな課題である。読書能力を児 童一人ひとりに身につけさせ,個人差を解消し ていくには,具体的操作期から形式的操作期へ の移行をスムーズにさせる支援が大切になって くる。その一つの方法として,協同的学習を取 り入れ,相互作用を生かした授業を積み重ねて いくことが有効であるといえる。 本研究で得られた知見が,今後の教育実践に 生かされていくことが望まれる。

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