Title Studies on Characterization of Variable Cell Responses to PrionAgent( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s) ELHELALY, Abdelazim Elsayed Abdelazim
Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 甲第397号 Issue Date 2013-09-24 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/47361 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本(国)籍) Abdelazim Elsayed Abdelazim ELHELALY (エジプト・アラブ共和国) 主 指 導 教 員 名 岐阜大学 教授 石 黒 直 隆 学 位 の 種 類 博士(獣医) 学 位 記 番 号 獣医博甲第397号 学 位 授 与 年 月 日 平成25年9月24日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第1項該当 研 究 科 及 び 専 攻 連合獣医学研究科 獣医学専攻 研究指導を受けた大学 岐阜大学
学 位 論 文 題 目 Studies on Characterization of Variable Cell Responses to Prion Agent
(プリオン因子に対する種々の細胞の反応特性に関 する研究) 審 査 委 員 主査 岐 阜 大 学 教 授 柳 井 徳 磨 副査 帯広畜産大学 教 授 古 岡 秀 文 副査 岩 手 大 学 教 授 御 領 政 信 副査 東京農工大学 教 授 渋 谷 淳 副査 岐 阜 大 学 教 授 石 黒 直 隆 学位論文の内容の要旨 プリオン病は, 神経性の致死的な疾患であり, ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD), ゲル ストマン・ストライスラー・シェインカー症候群(GSS), ク-ル-および家族性致死性不眠症(FFI), ヒツジやヤギのスクレイピー, シカやエルクの慢性消耗病(CWD), ウシの伝達性海綿状脳症(BSE) が知られている。プリオン病は, 宿主がコ―ドするプリオン蛋白質(PrPC)が構造変化してタンパ ク質分解酵素に抵抗性を示す異性体(PrPSc)となり神経組織にに蓄積して発症する。PrPCから PrPSc への変換や細胞内での蓄積および, 細胞間伝播に関して不明な点が多い。本研究では, 15 種類の 培養細胞を用いて細胞内での PrPScの蓄積や分解に影響を与える因子について解析した。 第 1 章では, 種々の細胞での PrPSc感染後の細胞内での蓄積や分解に関して, 短期的な培養と長 期的な培養を行い解析した。ヒトとマウス由来の神経系細胞, 免疫系細胞, 上皮系細胞および腸管 系細胞のを用い, PrPScのプリオン株(チャンドラー株および帯広株)を感染させて解析した。解 析に用いた細胞は, PrPScの伝達や蓄積および分解において様々な反応を示した。細胞の PrPSc の取り込み能力を間接蛍光顕微鏡法で解析した。すべての細胞で PrPSc粒子が細胞質および核周囲 に局在しているのが観察された。PrPScに対する細胞の分解力を知る目的で, 各々の細胞のプロテア ゾーム活性を解析したところ, その活性は神経系細胞では高く, 免疫系細胞では低かった。PrPScを 短期間感染した場合では, 多くの細胞で PrPScの分解は顕著で蓄積量は徐々に減少した。一方, PrPSc を長期間(最大で1 ヶ月間)感染させた場合, PrPScは次第に減少した後, チャンドラー株や帯広株 において 28 日までの培養期間中次第に増加することが観察された。また, PrPScが感染した細胞と 神経細胞を共培養した場合, 感染細胞から神経細胞への伝播が確認された。 第2 章では, プリオン感染におけるマクロファージの役割と PrPScに対する反応性を詳細に解析 (4)
した。マクロファージでは, PrPScが分解される前に, 培養 8~18 時間で特異的な一過性の蓄積が 観察された。3種類のマウス由来マクロファージ(Raw,J774,骨髄由来マクロファージ)と3種類 の PrPSc株(チャンドラー株, MHM2/チャンドラー株、帯広株)を用いて解析したところ, PrPScに 対する細胞の反応はほぼ同様であった。一過性に細胞内に蓄積した PrPScがマクロファージ由来の 産物であるかどうかをさらに詳細に解析したところ, 細胞内に蓄積する PrPScは, 接種時に加えた 脳乳剤の PrPScに由来し, 細胞自身が産生するものでないことが明らかとなった。さらに細胞内で の一過性の PrPScの蓄積と細胞の生存性, 代謝, PrPScの蓄積や分解に影響を与える温度などの因子 について解析した。37℃で培養した場合, PrPScは徐々に分解したのに比べて, 24℃で培養した場 合では添加 5 日後においても PrPScの分解はみられなかった。これらの成績は, マクロファージで の PrPScの分解は, 細胞のプロテアゾーム活性に依存し, 最適温度より低い場合, 阻害されること が示された。Raw 株にコレステロールの輸送阻害剤である U18666A を加えて PrPScを作用させたと ころ, PrPScの取り込みと蓄積の減少が観察された。これらの成績は, 細胞内への PrPScの取り込み や蓄積の過程における PrPCの輸送と同様にコレステロール代謝と細胞内輸送の重要性を示してい る。マクロファージでの PrPScの蓄積とプリオン遺伝子の発現との関係をリアルタイム PCR で解析 した。プリオン遺伝子の発現量の上昇が, 感染 4 時間で通常の 2.5 倍に上昇したが, 蛋白質量に直 接影響するものではなく, PrPScの感染による特異的な反応ではなかった。 培養細胞を用いた今回の研究結果は, 様々な細胞が PrPScを長期間維持し, 時には細胞内で増幅 して, 神経細胞へ PrPScを伝達する可能性を秘めていることを示した。また, マクロファージなど の免疫系細胞は, プリオン病の防御として重要な役目を果たす一方, 細胞内のプロテアゾーム機 能が障害をされた場合, PrPScは増幅し他細胞へ伝播する可能性を示唆した。プリオン病でのマク ロファージについての役割を理解する上で, 本研究成果は重要な点を指摘した。 審 査 結 果 の 要 旨
学位申請者の Abdelazim Elsayed Abdelazim ELHELALY 君は, プリオン病の発症機序と病 態の解明を目的に, プリオンに対する種々の細胞の反応性を研究し, 細胞に応じて反応性 が異なること, さらに細胞内での蓄積は, 細胞内の種々の因子により影響を受けることな どの研究成果を得た。こうした研究成果をもとに提出された学位論文を審査した。 プリオン病は, ヒトおよび動物の致死性の神経疾患であり, 宿主がコードするプリオン 蛋白質(PrPC)が蛋白質分解酵素に抵抗性を示すプリオン(PePSc)に変換し, 神経組織に蓄 積して発症する疾患である。しかし, 細胞内での PrPScの挙動に関しては, 不明な点が多い。 本論文では, 種々の細胞での PrPSc の蓄積や分解, 細胞間での伝播に関して解析した。ヒト およびマウス由来の免疫系, 上皮系, 神経系, 腸管系の 15 種類の細胞にプリオン株(チャ ンドラー株と帯広株)を感染後, 細胞の PrPScの蓄積, 分解および他の細胞への伝播性を解 析した。その結果, 全ての細胞で PrPScの粒子が細胞質および核周囲に局在し, 取り込まれ ることを確認した。PrPScは, 短期間の培養ではプロテアゾームの働きにより分解されるが, 長期間(約1ヶ月ほど)培養した場合, PrPScは細胞内に長く維持され徐々に蓄積が増加する ことが明らかとなった。また, PrPScが感染した細胞と神経細胞を共培養した場合, 感染細 胞から神経細胞への伝播が確認された。細胞により PrPScの蓄積量は異なるが, 神経系細胞 以外の細胞でも長期培養により PrPScが細胞内に蓄積することが明らかとなった。 マクロファージに PrPScを感染した場合, 一過性の PrPScの蓄積が見られた後, 急速に分 解される。この一過性の蓄積機構を明らかにする目的で, 3 種類のマウス由来マクロファ
ージ(Raw, J774, 骨髄由来マクロファージ)と 3 種類の PrPSc株(チャンドラー株, MHM2/ チャンドラー株, 帯広株)を用いて解析したところ, PrPScに対する細胞の反応性はほぼ同 様であった。細胞のプロテアゾーム活性を温度で阻害した場合, PrPScの蓄積が増加したこ とから, PrPSc の分解は, プロテアゾーム活性により大きく左右されることが明らかとなっ た。また, 細胞のコレステロール代謝により, 細胞内への PrPScの取り込みも大きく影響さ れることから, コレステロール代謝と細胞内輸送は重要な要因であることが明らかとなっ た。 培養細胞を用いた今回の研究結果は, 種々の細胞が PrPScを保持あるいは蓄積し, 神経 細胞へ PrPScを伝達する可能性を示唆している。また, 細胞死や細胞外の因子により細胞の プロテアゾーム機能が阻害された時, 細胞内での PrPScの蓄積が起きて他細胞への PrPScの 拡散の可能性を示した。 以上について, 審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論 文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文
1)題 目:Alteration of cell responses to PrPSc in prolonged cell culture and
its effect on transmission of PrPSc to neural cells
著 者 名:Elhelaly A. E., Inoshima, Y. and Ishiguro, N. 学術雑誌名:Archives of Virology