インドネシアにおける電力需要の現状と展望
著者
木船 久雄
雑誌名
名古屋学院大学論集 社会科学篇
巻
31
号
3
ページ
187-213
発行年
1995-01-31
URL
http://doi.org/10.15012/00000790
Copyright (c) 1995 木船久雄名古屋学院大学論集 社会科学篇 第 31巻 第 3号 (1995.1) 187
イン ドネシア にお け る電力需要の現状 と展望
(1)木
船
久
雄
目次 は じ め に 1.イ ン ドネシアの経済
2.電
力需給の現状3.モ
デル開発 と電力需要予測4.政
策 インプ リケー シ ョン お わ り には じ め に
イン ドネシアは約2億
人の人 口を抱 え,政
府の積極的な外資導入策が引 き 金 となって急激 に経済開発が進んでいる国である。 日本 に とっては中国やべ トナム とな らんだ有望 な直接投資先であるばか りか,こ
れ まで 日本政府の開 発援助資金が最 も多 く注 ぎ込 まれて きた国で もある。 経済発展に連れてイン ドネシアの電力需要 は急増 し,現
在で も年率2桁
近 い伸び を示 している。 これは工業化 による産業用需要の拡大,政
府の電化政 策 を反映 した民生用の需要家増大 に由来 している。電力は経済活動 に不可欠 なインフラであ り,国
民生活の福祉 向上のために も電化が果たす役割 は大 き い。 本稿 で はこ う したイ ン ドネ シアの現状 を電力需要の分 野か ら分析 し,同
時 (1)筆者 は国際協力事業団 (JICA)「イ ン ド不シア・電力総合開発計画」プ ロジェク トに参 加 した。本稿 はその際の知見 を もとに執筆 しているが,ありうべ く誤謬 はJICAではな く 筆者 に帰せ られ る。188
名古屋学院大学論集 に将 来 の 見 通 しを行 う。 そ の た め の 道 具 だ て と して 「 電 力 需 要 予測 モ デ ル 」 を開 発 して い るの で,そ
れ も合 わせ て紹 介 す る。1.イ
ン ドネシアの経済
1.1経
済 成 長 イ ン ドネ シア は,ス
ハ ル ト大統 領 就 任 後 に提 出 され た第一次 五 ケ年計 画(REPELITA I:1969∼
1973年
度)以
降,着
実 な経 済 発展 を遂 げ て きた。1970年
代 か ら1980年
代初頭 にか けて は,実
質7%台
の経済 成 長 を達 成 して い る。 これ は,政
府 の 開発政 策 お よび三 度 の石 油 価 格 の 高騰 に よる海 外 か ら の所得移転 が影響 して い る (図1参
照)。1980年
代 に入 る と,世
界不 況 の深 刻 化 や 国 際 石 油 市 場 の低 迷 で逆 オ イル -10 -20 魏萬Z民間消費支 出 [三ヨ政府支 出1爾
爾 投資 EIヨ 輸 出 困醸目輸入(:資:米斗)IBirO Pusat Statistik,Indicator Econonli,several years
図
1
経 済 成 長 の項 目別 寄 与 率% 30
イン ド不シアにおける電力需要の現状 と展望 189 シ ョックに直面 した。石油 に依 存 しない経済運営 は長年 の悲願 で
,第
四次 五 ケ年計 画(REPELITA IV:1983∼
1988年
度)で
は,資
源輸 出依存 型の経済 か ら脱却 を図 るこ とが 目標 とされ た。具体的 には① 非石油製 品輸 出の拡大, ② 金融 改革,③
税 制 改革,④
経済 の 自由化 の実施 で あ る。 これ に よって,経
済 は1986年
か ら好転 し始 め た。 続 く,第
五 次計 画(REPELITA V:1989∼
1993度)で
は,引
き続 き,非
石油 製 品 に よる輸 出志 向型 の工業 化 を志 向 して きた。1992年
までの経済 成長 率 は,年
平均6.8%で
,計
画 目標(5.1%)を
上 回 る もの とな った。 この背景 に は積極 的 な外資導 入 に よる工業化 の進 展が あ る。 さ らに,1994年
か ら始 まった第六次五 ケ年計 画(REPELITA VI:1994∼
1998度
)で
は,経
済 成 長率6.2%を
目標 と して い る。 その ため に,こ
れ まで 以上 に外国投資 の積極 受 け入れが行 われ る。これ に関 して,1993年
10月に発 表 され た規制緩 和 の 内容 は次 の とお りで あ る。1)外
資導 入の規 制緩 和 ∼払 込資 本金 が200万
ドル 以上 で,原
材料,半
製 品,部
品製造企 業 に限 り,100%出
資 を認 め る。ただ し,20年
以 内 に は外資比率49%へ
低 下 させ るこ と。2)立
地許 可,建
設許 可の手続 きの簡素化 ∼地 方 自治体 の認可 を不要 と し,建
設 は届 出だ けで可能 とす る。3)輸
入関税 の引 き下 げ∼198品
日の輸 入関税 を 5∼15%引
き下 げ る。1.2産
業 構 造 産業 別 国内総生産(GDP)を
み る と,1991年
に製造業 が農林水産業 を抜 い て最 大 の産業 にな った。翌1992年
に は,製
造業 のGDPに
占め る割 合 は21%
と拡大 し,農
林 水 産業 の19%を
さ らに引 き離 して い る。これ に続 く産業 は, 商業 。観 光 が17%,石
油 。天然 ガ ス な どの鉱 業 が13%で
あ る。現在,原
油 の 生産量 は世 界13位
だが,先細 り傾 向 にあ り,21世
紀 初頭 に はその枯渇 さえ危 惧 され て い る。 また,輸
出品 目にお いて も脱石 油`脱
天然 ガ ス政 策 の結果 が伺 われ る。輸 出総額 に 占め る石油 や天然 ガ ス以 外 の 品 目割 合 は,1985年
に32%で
あ った も190 名古屋学院大学論集 のが
1992年
では68%へ
と拡大 している。非石油・天然ガス としての主要 な輸 出品 目は,そ
れ以前では1)一
次産品, 2)合
板, 3)ラ
タン製品であった が,現
在では, 1)繊
維・アパ レル, 2)電
子。電気機械, 3)ス
ポーツシュー ズである。非石油・天然ガス品 目輸 出に占め る工業製品の割合 は,1985年
の43%か
ら1992年
では84%へ
と大 きく拡大 している。 イン ドネシアにおいて経済開発 。工業化 は着実 に進展 して きた ということ が言 えよう。 しか し,今
後の経済開発の進め方には議論が多い。 イン ドネシ アの経済開発に手助 けを行 っている世界銀行 は,1993年
の年次報告で「過度 にハ イテク技術志向 に流れ る工業化路線 よ りも雇用吸収 力 に力点 をお くべ き」であ り,そ
の豊富な労働力 と相対的 に安い賃金か ら「労働集約型産業の 誘致 を」と勧告 しているRし
か し,当
のイン ドネシア側 は,航
空産業の設立 などハ ビビ国務大臣を筆頭 に「ハイテク産業」の誘致や先端技術の開発に重 点 を置 く政策 を採 ろ うとしている。 はか らず も,教
科書的な経済 開発 に関す る先進国の論理 と途上国のそれ と の対立がイン ドネシアにおいて も確認で きる。つ まり,先
進国は生産要素の 賦存か らみた比較優位産業の育成 こそが手順 をおった開発のあ り方であると 主張 し,当
の途上国は工業製品 を作 ること,
しか も将来的に需要拡大 を期待 で きる先端産業 こそが国の成長 を約束す ると考 えるのである。1.3国
民 生 活 高い経済成長 を辿 っているイン ドネシアではあるが,未 だ一人当た りGDP
では600ド
ル程度 (1991年)で
ある。 この値 は中国の約2倍
であるものの, フ ィリピン (723ド ル)よ りも小 さい。 また近隣の タイ (1,608ド ル),マ
レーシア
(2,478ドル
),シ
ンガポール
(14,782ドル
)と
比較 して も
,順
に
1/2,1/4,1/24程
度の水準にすぎない。それゆえ
,一
人当た り
GDPで
見 る限 り
,ASEAN諸
国の中では最貧国である。
しか し
,人日の多い分だけ総量 としての
GDP水
準は高い。1991年 のそれは
(2)ヽVOrid Bank(1993)イン ド不シアにおける電力需要の現状 と展望 191 名 目
1,110億
ドル で あ る。 これ は 日本の1/30で
あ る ものの,
シ ンガ ポール, マ レー シア,フ
ィ リピン等 の2倍
強 で あ り,タ
イの1.3倍
で あ る。 イ ン ドネ シア経済 の問題 点 と して,所
得分 配 の極 端 な片寄 りや 財 閥経済 が あ る。 その結果,国
民 の間で貧富 の格差 が極 め て大 きい。一 日の最低賃 金 は ジャカル タで3,000ル
ピア (約150円
)が
決 め られ て い るが,そ
れが貰 えな い人達 が3,000万
人 い る といわれ る0。 高級 車や 高級 ブ テ ィックヘ の需要 が あ る一 方で,そ
れ に全 く縁 の無 い人 間が多数 を占め る。経済成 長 とともに富 め る者 は益 々富 み豪奢 な住 宅 に住 まうが,一
方 で そ うで な いの は相 変 わ らず のバ ラ ック生活 を強 い られて い る。2.電
力需給 の現状
2.1電
力 供 給 ① 電気事業 の形態 もともと,イ
ン ドネシアの電力事業 はオ ラ ンダ人の経 営 す る私企業 が あち こちに分散 していた。それ を,1954年
に電 力国有化政策 が採 用 され,各
地 の 私 営 電力会社 は徐 々に公社化 され て いった。 現 在,最
大 の 電 力会 社 は1961年
に 設 立 され た イ ン ドネ シ ア 電 力 公 社(PLN)で
あ る(4)。PLNは
発 電・送 電 。配 電事業が垂 直的 に統 合 され た一貫 電 力会 社 と して,イ
ン ドネ シアの電力供 給 を支 えてい る。監督 官庁 は,鉱
山 エ ネル ギー省(MME:Ministry of Mining and Energy)の
電力・ エ ネル ギー開発総 局(1993年か ら)であ る。 また,PLN以
外 の公 的 電気事業機 関 と して は,協
同組 合省 が管轄 してい る(1)電化協 同組合(KLP)お
よび(ii)村落 単 位 協 同組 合(KUD)に
よる電気事業 が あ る。 これ らは,い
ず れ も僻地 の電 力 化 を推 進 す る母 体 で あ る。 さ らに,上
の ような公的電気事業 の他 に,企
業 が抱 え る 自家 発 電 (Captive (3)『週 間 ダイヤ モ ン ド」(1994) (4)│ヨ営 会社 で あ るPLNは
1994年9月に民営 化 され て い るが,現在 の ところ実態 は以 前 とほ とん ど変 わ って い ない。192 名古屋学院大学論集 とい う)がある。
Captiveに
よって生産 された電力は一般需要家 には売電で き ないが, PLNに
ヌ寸して缶p売 りを4予うことがで`きる。 建設の際の許認可データによれば,Captiveの
設備規模 は少な くて もPLN
と同規模程度あると鉱 山エネル ギー省では推計 している。その値 を1993年
3 月末でみ ると,PLNの
発電設備量 は1,085万
kWで
あるの に対 して,Cap― tiveのそれは1,116万
kWで
ある。アサハ ン・アル ミの水力発電,プ
ルタ ミ ナ (石油・ガス公社)等
の 自家発電設備規模 は大 きく,発
電量 も多い。 また, 外資導入 によって工業化が飛躍的 に進展 したここ数年 において も,PLNの
電力供給余力に限界があったために,自
前で発電設備 を抱 える工場建設 も少 な くなかった。 しか し,実
際の設備量や稼働状況 といった実態 は,ほ
とん ど 把握 されていなぃ(5)。 これ らに加えて,新
たな電力供給形態の事業 としてIPP(独
立系発電事業 者)が
ある。 この背景 には,1992年
7月 9日 の大統領令が示 した,民
間企業 の電気事業参入を可能 とした規制緩和策がある。一方で急増す る電力需要 に 直面 し,他
方で政府やPLNの
財政難 といった困難 な状況への対応策 として, この民間資本の活用策が登場 して きた。IPPは
自身で発電設備 を抱 え,発
電 した電力をPLNに
販売す る電力卸 しの専門会社である。すでに現段階で,Cikarang Listrindo(20.4万
kW)と
Tata JObOr(20万
kW)の
2件
については建設許可 を受 けた。 これには
,
日本企業 も資本参加 している。今後,IPPは
イン ドネシア電気事業 に不可欠 な存在 として位置づ け られ るこ とに なる。PLNの
計画で も,2002年
までに753万
kWの
IPPが
導入 され る見込 みである。 ② 発電設備Captiveに
関す る時系列の設備把握 は困難 なので,こ
こではPLNに
限定 して述べ る。現在,PLNが
保有す る発電設備は全体で1,085万
kW(1993年
3月)である。 この電源別構成は,石
油系が57%,水
力20%,石
炭16%,天
(5)つま り,鉱
山エ ネル ギー省が保有す る許認 可デー タは新規建設設備 に関す るフローの データであ り,保
有ス トックのデー タではない。設備の更新投資や拡張,廃
止等 はまっ た く不明なために,実
際のス トック設備量 は定かではない。イン ドネンアにおける電力需 要の現状 と展望 193 MW 12000 10000 8000 6()00 4000 2000 197() 1975 1980 1985 (資料)PLN,PLN Statistics,各 年版 図
2 PLNの
発 電 設 備 1990 然ガス6%,そ
して地熱が2%で
ある。 第一次五ケ年計画が スター とした1969年
当時では,発
電設備 は石油入力(66%)と
水力(34%)に
のみ依存 していた。それが,1980年
代初頭か ら非 石油系エネルギーの重点的な開発 と利用が進め られ,石
炭や天然ガス・地熱 の大幅な導入が行われて きた。 この結果が現在の電力構成 をもた らしている (図2参
照)。 ③ 発電量PLNの
発電電力1量の推 移 をみ る と,1970年
の16億
kWhが
80年
にはそ の4.6倍
の75億
kWhへ
,そ して90年
には更 にその4.5倍
の340億
kWhに
拡大 している。加えて,そ
の2年
後の1992年
には1.2倍
の409億
kWhで
あ る。この間の年平均増加率は,70年
代16.5%,80代 16.3%,そ
して90年
代 が9.7%で
ある。 電源別にみた発電電力量の構成 は次の とお りである。1970年
では石油火力 と水力が順 に53%,47%と
分 け合 っていたが,1980年
になると石油火力が支 配的 とな り82%を
占めた。水力は発電量 は約2倍
に拡大 した ものの シェアは □石油1水
力 圏石炭 多天然 ガス 圏地熱194 名古屋学院大学論集
18%に
低 下 して い る。 これ は,急
増 す る需要へ の対処 が もっぱ ら石油系 の気 力や ガ ス ター ビ ン,内
燃 力発 電で行 われ て きた こ とを物 語 る。 しか し,80年
代 前 半 にス ター トした非石 油系 エ ネル ギーの重点 的 な開発政 策 に よって,電
源 の 多様 化 が進 め られ てゆ く。地熱 発 電の 第一 号機 は1982に 運 転 を開始 し,天
然 ガ スの汽 力 も1984年
か ら安定 した出力 を確保 し始 め る。 さ らに,石炭 火 力 は1985年
か ら戦列 に加わ った し,1986年
以 降 には大 型 の水 力発電 も登場 して きた。この結果,1992年
にお いて石油火 力の比率 は47%と
な り,石
炭 火 力26%,水
力21%,地
熱3%,天
然 ガ ス3%と
い う構 成 になっ て い る。 この ように,80年
代 後 半 か らの傾 向 は,非
石 油系 の石 炭や地熱 の増 大 傾 向が見 られ,石
油代 替 化政 策 の着 実 な実 行 を反映 させ た もの にな って い る。 また,PLNの
地 域 的 な発電設備 お よび発電電 力量 をみ る と,ジ
ャワ島 に集 中 して い る。発 電 設備 の70%,発
電量 の80%が
ジャワ島内であ る(1992年)。 ただ し,内
燃 力や ガ ス ター ビ ンに関 して は,
も と もと僻地 や 隔離 され た島 々 を対象 と した電源 で あ るため に,
ジャワ以外 での設置や その発電量 が 多い。 最 大 電 力 につ いて は,1980年
の158万
kWが
,そ れ以 降平均 年 率13.9%で
増大 し,1991年
で は648万
kWに
達 した。 負荷 率 は60%程
度 で あ る。 ④ 需給バランス また,1992年
のPLNの
需給バ ランスは表 1に 示 した。 これ をみ ると,他
社購入は総供給のわずか3%程
度で,残
りは全て 自身で 発電 していることがわか る。 また,所
内消費や送配電の ロスについては,総
供給 に対 して所内率4.3%,送
電損失2.9%,配
電損失9.8%で
ある。送電損 失率 に比べ,配
電損失が高いのは次の理由による。それ らは, 1)配
電系統 の未整備, 2)配
電設備の老朽化, 3)家
庭用では低圧需要家が多いこと,4)計
量器の不法改造,さ
らに5)盗
電 も多い と指摘 されている。イン ドネシアにおける電力需 要の現状 と展望 表
l PLNの
需給バ ランス (1992年) (出所)Ministry of Minning&Energy(1993年 ) 195GWh
70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 1975 1980 1985 1990 (資料)JICA資
料 図3
イ ン ドネ シ ア の電 力需 要 推 移(PLN+自
家発)2.2
電力需要 ① 電力需要の推移1992年
のイン ドネシアの総電力需要 は約600億
kWhで
ある (図3参
照)。 この需要量 は,Captiveと
言われ る自家発電 と公営電気事業者のPLNに
よ 生産 お よび購 入 イ意lkヽVh
%
販売 お よび損失 イ意lkヽVh
%
1.生
産 小 計 159 108 88 11 11 45.7 25.7 20.9 2.6 2.61.販
売 小 計 178 117 32 24 42.3 27.8 7.6 5.6 350 83.3 409 97.52.所
内消費 18 4.32.購
入 小 計 10 0 2.5 0.13.損
失 小 計 12 40 2.9 9.5 11 2.6 52 12.4 供 給 合 計 420 100.0 需 要 合 計 420 100.0 圏PLN %Captive
196 名 古屋学院大学論集 る供 給 に よって賄 われ る。
Captiveの
実態 は十分 把握 され て いな いが,筆者 ら の推 定で は同年 において,Captiveは
全需要 の41%の
250億
kWhを
供 給 し, 一 方PLNは
59%350億
kWhを
供 給 した0。Captiveに
よる電 力供 給量 は,1980年
代 央 に一 時 的 に400億
kWh近
くま で達 したが,1990年
には再 び200億
kWhの
水準 で,そ
れ以 降緩 や か に増 加 して い る。一 方のPLNの
電 力供 給量 は年率2桁
の増加率 を示 し,1989年
以 降PLNの
販売量 はCaptiveの
それ を上 回 って い る。Captiveに
よる電 力供 給 の全量 が産 業需 要 家 に よって消 費 され る「 自家 発 自家消 費」 で あ る と仮 定す る と,総
需要 の需要 家別構 成 は次 の ようにな る。1992年
の値 でみ る と,産
業 用 が 全体 の70%,家
庭 用20%,商
業・ ホテル 用7%,
さ らに公共 用で4%で
あ る。 Captiveを 除 き,PLNの
販 売量 に限 って需 要 の推 移 み れ ば次 の よ うにな る。PLNの
販売 電力量 は,1970年
の16億
kWhか
ら1980年
にはその4倍
の65億
kWhへ
,そ
して1990年
に は さ らに4.3倍
増 え て315億
kWhに
達 し た。2年
後 の1992年
は90年
の1.2倍
の350億
kWhで
あ る。この間の年 平均 増 加率 は,70年
代14.8%,80年
代15.8%,至
近 の90年
代 が11.2%で
あ る(図4参
照)。PLN販
売 の需要 家別 の構 成 は,最
も大 きな ウ ェイ トを持 つ のが産 業 用 で51%,つ
いで家庭 用が33%,以
下,商
業 用9%,公
共 照 明他7%と
続 (6)Captiveの 実態 を示 したデータは存在 しない。そのため,ここでは関連続計から過去推 計 を行った。イン ドネシアではデータの信頼性はかな り落ちるが『工業統計表』が利用 で きる。この統計は大規模工場 を対象 とした調査であ り,そこには,①
燃料消費量,②
自家発電の発電量,③
売電量,④
購入電力量などのデータが存在する。一方,信
頼性の 高いデータとしてPLNの FPLN統
計』があ り,それにはPLNが
販売 した産業用合計 の値がある。そこで,PLNデ
ータの産業用合計 をコン トロール・トータルスとして扱い, 『工業統計表』の④購入電力量の産業合計 とを比較する。F工業統計表』の値がPLNの
それ と一致するように係数を求め,この係数を『工業統計表』の② 自家発電の発電量に 乗 じて,全
国大の Captive発 電量 とした。 また,PLNデ
ータでは産業用合計は把握で きるものの,業 種別の販売量は不明である ため,以
下の推計 を行 う。『工業統計表』による購入電力合計 に対する各業種の購入電力 のシェアを係数として扱い,この比率をPLNの
産業用合計に乗 して業種別に配分する。 こうした,手順は本稿末尾に図補1と して掲載 している。イン ドネンアにおける電力需要の現状 と展望 197 百万
kWh
50000 40000 30000 20000 10000 0 1970 1975 1980 1985 (資料)PLN,PLN Statistics,各 年版 図4 PLNの
電 力販 売 量 1990 く (1992年)。 ② 地域別需要構成 地域別の需要構成は,総
需要量(Captive+PLN)の
62%を
ジャワーバ リ 系統 (ジャワ島お よびバ リ島)で
占めている。ついで大 きな需要地 はスマ ト ラ島で24%あ
る。この二つの系統 でイン ドネシアの電力需要全体の85%を
占 め る。 イン ドネシア全体の人 口や所得の地域分布 を考慮すれば,こ
の ような 18 1992 16 41 人 口GDP
PLN販
売自家発
ジャワーバリ
圏 スマト
ラ
■ その他
地域別の人 口・GDPお
よび電 力構成 (1992年) □ 産業 ■ 家庭 圏 商業 閻 公共 図5198 名古屋学院大学論集 分布 も納得ゆ くものであろ う。つ ま り
,ジ
ャワーバ リとスマ トラの両者で, イン ドネシア全体の人 口の82%,IL帯
数の83%,GDPの
84%を
占めている (図5参
照)(7)。 ジャワーバ リ系統では,圧
倒的な需要家は産業用であるが,他
の地域 に比 べれば家庭や商業 といった需要の割合 も高い。これは,ジャカル タお よびジ ョ グ=ジ
ャカルタ,観
光地バ リといった大都市 を後背地 に もっているためであ る。1992年
の需要家別の構成 は,産業用63%,家
庭用24%,商
業・ホテル7%,
公共用5%で
ある。 一方,ス
マ トラ島では産業のウェイ トが高 く,
しか もCaptiveの
供給力が 大 きい。スマ トラはイン ドネシア全体 のCaptiveの
41%を
占めている。これ は,工
業化が進展 しつつ も,PLNに
よる供給力が十分でなかったために,自
家発 というCaptiveに
依存せ ざるをえない事情があった。スマ トラの電力需 要 における需要家別構成は産業用84%,家
庭用11%,商
業・ホテル3%,公
共用2%で
ある。 ジャワーバ リお よびスマ トラを除いたその他の地域では,イ
ン ドネシア全 体の総電力需要の15%を
占め るにす ぎない。多数の島か ら成 り立つために,PLNの
送電網 も行 き渡 らず,電
力供給 はCaptiveに
依存せ ざるを得 ない状 況である。需要家別の構成 は産業用78%,家
庭用15%,商
業・ ホテル4%,
公共用4%で
ある。 ③ 需要分析(i)産
業需要 CaptiveとPLNが
販売す る産業 向け需要が総電力需要 に占め る割合は,1980年
代央 を除いて,1970年
代か ら現在 までほぼ70%前
後で推移 して きた。 しか し,PLNの
販売量 に限定すれば,産
業用比率は大 きく上昇 している。 この値 は,1970代
初頭 にはPLN販
売全体の20%足
らずであったが,工
業化 につれて産業用需要 は拡大 し,1986年
以降,最
大の需要家 となった。その急 増す る需要の足跡 をみれば,70年
代19.0%,80年
代23.8%と
いう脅威的なE]原 単位
目
囲工業化
瞑多経済成長
イン ドネンアにおける電力需要の現状 と展望 199 % 40 30 20 10 -10 -20 1976 1981 1986 1991 注)要
因分析 は以下の式 を用 いた。 E=(E/VM)。(VM/GDP)・GDP
ここでEI電
力需要,VM:製
造業付加価値,GDP:国
民所得 この式 を偏微分すれ ば各要素の増加率の和が電力増加率 になる。 図6
産業用電 力需要 の要 因分析(PLN販
売) 増 加率 を示 して い る。 電 力需要 の増 加 を①経済 規模 の拡大(GDP),②
工 業化 の進 展,③
製 造業 付 加価値 当た り原単位 とい う3つ
の変数 を用 いて要 因分解す る と,次
の ように な る(図6参
照)。1980年
代 にお いて は増 加 の主 た る要 因 は,工
業化 の進 展 で あ った。それ に対 して,1990年
代 で は,経
済 活動 全体 の拡 大 が需要 を牽 引 じ て い る。 ()家
庭 需要 二番Flに大 きな需要家の家庭 用 は,70年
代9.8%,80年
代14.9%,そ
して90年
代 で も13.3%の 2桁
の年平均増 加率で あ る。 この増加の原因 を探 る と, 政 府 。PLNの
積 極 的 な電化 政 策 を通 じた需 要 家件 数 の増 大 が圧倒 的 な理 由 とな る。l件
当た りの消 費 原 単位 は,70年
代80年
代 と もに減 少傾 向 にあ る。1992年
200 名古屋学院大学論集 の世帯 あた り電力消 費量 は
1980年
の それの23%程
小 さい。この こ とは,電化 率 の進 展 に よって新 たに需要家 に組 み込 まれ た顧 客の電 力消費形 態が原因で あ る。つ ま り,新
規顧 客 は電力消費の用途 が照 明 に限 られ る ような需要規模 の小 さな需要家 で あ り,そ
の数が拡大 して きたので あ る。 家庭 用 電 力需要 を①世 帯数,②
電化率,③
世 帯 当た り原 単位 の3変
数 で要 因分解 を行 うと,以下 の ような傾 向が見 て取 れ る。1970年
代80年
代 を通 じて 電力化率 の上昇 が家庭 用需要増加の最 大の原 因で あ る。この20年
間 は小規模 需要 家へ の普 及が世帯 当た り電 力消費 を押 し下 げてい る(図7参
照)。 しか し,1990年
代 にはい る と需要増 加 の最 大 要 因 は電化 率の上昇 に相 違 ないが,所
得 増 に伴 う世帯 当た り電力消費原単位 も増 加 に転 じて い る。 さ らに,年
率2%
強 で拡大 す る世 帯数 は安定的 に電 力需要 を拡大 させ て きた。 加 えて,世 帯 当た りの電力消費量 の変化 につ いて も要 因分解 を してみ よう。 ここで は需要関数 を推計 しそれ を用 いてお り,結
果 は図8に
描 か れ る。近年 の契約 口あた りの電 力消費原 単位 と1980年
と比較 すれ ば明 らか に減 少 して -10 -20 1976 1981 1986 注)要
因分析 は図6の方法 に準 じた。 図7
家庭 用 電 力需要 の要 因分 析 % 30 20 10 実績増加率 [コ原単位杉珍 電力化率
層爾 世帯数 1991
イン ドネシアにおける電力需要の現状 と展望 201 kヽVh 3500 1975 1980 1985 1990 注
)要
因分解 に用 いた需要関数 は以下である。 推計期間 ■ 976-1992 log(世帯 あた り電力消費量)=-0.178-0.125 1og(実
質電力価格) (-2.14)(-3.80)+0.510 1og(世帯 あた り実質所得
)-0.1231og(電
化率)+0.894 1og(一期前 ラグ)(4.12) (-2.58) (9.00)
AR2=0.988 SD=0.020 DⅥ
/=2.228 図8
世帯 あた り電 力消費変化 の要因分析 い る。 この原因 は,所
得上昇 は電 力消費 を増 加 させ る要 因 とな ったが,80年
代 の 電 力料 金 の 引 き上 げ,お
よび 電化率 の進 展 とい う二 つ の要 因が世 帯 当た り電 力消費量 を押 し下 げて きた こ とがわか る。 電化率の減 少が世帯原 単位 を 低 下 させ た理 由 は,前
述 の ご と く需要規模 の少 さな顧 客 の増大 で あ る。 3。モデル開発 と電力需要予測
3。1
モ デ ル の 開 発 ① コンセプ ト 将来の電力需要 を予測す るために,今
回新 たにモデル開発 を行 った。開発 したモデルの特徴 は以下である。 00 00 00 00 00 00 30︲ 25 20 ︲5 ・0 5 電化率効果 ■ ‐一 実績202 名古屋学院大学論集 ・地域別 (15地域
)に
需要 が算 出 され るこ と 。需要家別 (産業・ 家庭・ 商業 。ホテル・ 公共)に
算 出 され るこ と 。ジャワーバ リ系統,お
よび スマ トラ島 に関す る産業 需要 に関 しては, 主要産業 別 に需要が算 出 され るこ と 。電化率が需要 に反映 され るこ と 。需要関数 は計量経済学的アプ ローチで推 定 してい るこ と 。価格や所得 といった変数が盛 り込 まれ るこ と 。外生変数 は最小 限に してい ること 。モデルの再構 成や変更が容易であるこ と また,電
力需要関数 は,一
般 財 で用 い られ る通 常の関数型 を採 用 してい る。 つ ま り,Etij=f(Ptij,Ytij,Et-l ij) (1)
こ こで,Etは
t期
の 電力需要 で あ り,Ptは
実質 電力価格,Ytは
実質所得水 準 (生産水準や ホテル の数 も需要 家 に よって は用 いてい る)で
あ り,iは
需要 家 区分,jは
地域 を示 してい る。ただ し,上
式 を基 本形 と したが,需
要 家 ご と にその形 は多少 変形 してい る。用 いたデー タ期 間 は 1975∼1992年
を基 準 と し,各
々の式 の適合度 に よって推計期 間 は変 えてい る。 外生 プロック 全 国 社会 。経済変数 率 ン ロ 格 化 GI 人 価 電 地域別 社会・ 経済変数 GDP 率 口 格 化 人 価 電 地域別 部 門別電力需要 用 用 用 用 ル 用 業 庭 業 テ 共 産 家 商 ホ 公 全 国 部 門別電力需要 図9
モデルの計算 フ ローイン ドネシアにおける電力需要の現状 と展望 203 ② 計算 フロー とテス ト モデルの計算 フローは図
9に
示 した。モデルは4つ
のプ ロックか ら構成 さ れている。それ らは,①
外生変数ブ ロック,②
地域別社会 。経済指標ブ ロッ ク,③
地域別電力需要推定プ ロック,④
全国集計プ ロックである。 第一の「外生変数プ ロック」ではモデル全体の外生変数 を取 り込む部分で ある。主要な外生変数 は,国
全体のGDP,人
口,電
化率,電
力価格,GDPデ
フ レータ,製
造業付加価値,サ
ー ビス業付加価値 といったマ クロ経済や社会 に関す る変数である。 第二の「地域別社会 。経済指標ブ ロック」では,一
国全体のマ クロ変数 を 基礎 として,地
域別の社会 。経済指標 を推計 している。 さらに,第
二の「地域別電力需要推定プ ロック」では,第
ニプ ロックで算 定 された地域別の社会 。経済指標 を説明変数 として,需
要家 ごとの電力需要 を推計す る。 こうして,推
計 された電力需要 を全国大 に集計 しているのが第四の「全国 集計ブ ロック」である。 第二の「地域別社会 。経済指標プ ロック」 を組み込んだ理由は,モ
デル全 体の外生変数 をで きるだけ少な くす るためであ り,不
確 かな外生変数の設定 を排除 しようとしたためである。 しか し,地
域 レベル までブ レークダウンさ れた国の長期開発計画が利用で きる場合 には,こ
のブ ロックを利用す る必要 はない。 モデル は外生変数53個
,内
生変数426個
,推
計式お よび定義式の合計 が426本
で構成 されている。極端 に大 きなモデルではないが,決 してコンパ ク ト な もので もない。 モデル全体のパ フォーマ ンスを見 るため に1986∼1992年
の期 間で最終 テ ス トを行 っている。この結果 は図 10に 示 した。テス ト期間平均の誤差率は次 の通 りで あ る。全国合計 でみ る と,PLN販
売合計 に関す る平均 誤差 率 は1.7%で
あ り,需
要家別では産業用1.5%,家
庭用1.0%,商
業3.0%で
ある。 一方の供給者である Captiveを み ると,テ
ス ト期 間平均 の誤差率は6.2%で
ある。204 名古屋学院大学論集
GWh
70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 図10
モデルの最終 テス トPLNに
関 して は モ デ ル は 良 好 なパ フ ォーマ ンス を不 して い る もの の,Captiveに
つ いてはその精 度が劣 って い る。この原 因 は,前 述 の『工 業統計表』 をベ ー ス に過去推計 したデータに問題 が あ もの と考 え られ る。3.2
シ ミュ レーシ ョン①
ケース設定
モデルで行ったシミュレーションは以下の
3ケースである。それは
,①
基
準ケース
,②
高価格ケース
,③
低成長ケースである。
各ケースのイメージは以下である。①基準ケースは
,イ
ン ドネシア政府の
第二次
25ケ年計画
(PJP-2)の
経済成長率を前提 としたケースである。これ
に対 し
,②
高価格ケースは政策変数 として電力価格 を基準ケースに比べて年
率
2%上
昇 させた場合
,③低成長ケースは経済成長が
25ケ年計画を年率
2%
下回った場合 という前提で需要を想定 している。 これ ら二つのケースは
,い
わばモデルの感度分析 として用いられると同時に
,シ
ミュレーション結果の
比較 を通 じて電力政策上のインプ リケーションを抽出するため設定されてい
る。
各 々の ケー ス に関す る具体 的 な前提 条件 の主要 な もの を表2に
示 した。 3.7% テ ス ト 1.3 総電力需要 平均誤差: テ ス ト テ ス トイン ドネシアにおける電力需要の現状 と展望 205 表
2
主要前提緒元 単 位 実 績 1992 提 2000 2015 基 準 ケ ー ス 高価格ケース 低成長ケー ス 基 準 ケー ス 高価格 ケース 低成長ケース 人││ ^ 0 % 186,047 210,271 (1 5) 1司'1 (1 5) 同 左 (1 5) 251,071 (1 2) 同/[ (12) 同左 (12) GDP 10 9 Rupia 1987年価格 131.102 214,336 (6 3) 同左 (63) 187.655 (4 6) 629.314 (7 4) │」な (74) 415,648 (5 4) 政 府 支出 10^9 Rupia 1987年 価 格 12.819 18,528 (4 7) 同左 (4 7) 16.748 (3 4) 41.594 (5 5) │■た (55) 30,478 (4 1) 製造業付加価値額 10^9 Rupia 1987年価格 26,856 55,406 (9 5) 同左 (9 5) 45,778 (6 9) 207.623 (9 2) 同左 (92) 121,662 (6 7) サ ー ビス業 付 加 価 値 10 9 Rupia 1987年価格 4,497 7.29() (6 2) (62) 6.424 (4 6) 21,732 (7 6) 同左 (76) 14.492 (5 6) GDP デフ レータ 1987=100 1739 287 6 (6 5) (65) 同左 (65) 759 1 (6 7) 同左 (67) 「 I左 (67) 電 力 小売 価 格 家 庭 用(名日) Rupia/kWh 名‖ 128 8 213 0 (6 5) 242 9 (8 3) 同左 (65) 562 3 (6 7) 847 1 (8 7) 562 3 (6 7) 電 化 率 % 30 2 50 3 (6 6) 同 左 (66) 同左 (66) 89 7 (3 9) 同左 (3 9) 同 左 (39) 注)見
通 しの前提 の中には1993,1994は政府の実績推定な どを加味 してい る。 下段の( )内
の数値 は年平均増加率 ② 基準ケースの結果 上の ような前提 によって推計 された将来の電力需要 は以下である。 基準 ケースの見通 しでは,イ
ン ドネ シア全体 の電力総需要(PLN+Cap‐
tive)は 1992年
の596億
kWhが
,年
率9.7%で
増加 して2000年
には1,246 億kWhに
達す る。これは,1992年
の値の2.1倍
である。2000年
以降では, 年率8.9%で
増加 して2015年
の総需要 は1992年
のそれの7.6倍
の4,593億
kWhに
なると想定 された (図11参
照)。 この需要 を賄 う供給主体 はPLNと
Captiveで
ある。総需要 に対す るPLN
販売が 占める割合 は1992年
の59%か
ら2000年
では61%,2015年
では64%
とな り,徐
々にPLNが
シェアを増大す ると見込 まれ る。ただ し,こ の供給構 成の予測 はあ くまで も過去の トレン ドに基づ いている。実際 には,政
府が行 う電気事業 に対す る産業政策 に大 き く依存す る。卸 し電力市場の 自由化 を推 進す る最近の政策動向が,上
で見たシェア変化 を一段 と加速 させ る可能性が あることは否めない。206 名古屋学院大学論集 GⅥ′h 500000 400000 300000 200000 100000 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 図
11
基 準 ケ ース の想 定 結 果 さ らに,全
国 大 の 需 要 端 で み た最 大 電 力 は1992年
の1,126万
kWか
ら2000年
には2,354万
kWに
,2015年
には8,511万
kW達
す る と見込 まれ た。 この値 は,1992年
の 負荷 率で あ る60.4%と
い う値 を前提 と してい る。 また, これ に対 応 す る発 受 電 端 で み た最 大 電 力 は,1992年
の1,351万kWか
ら2000年
には2,824万
kWへ
,さ らに2015で
は10,209万kWに
増大 す る。発 電所 の所 内電 力 お よび送 配 電損 失 率 は1992年
実績 を将 来 と もに固定 して い る。 それ ゆえ,将
来,損
失 率 の低下 な どが織 り込 まれれば,発
電端 の最 大 電 力は この値以下 にな る。 ③ ケ ース・ ス タデ ィ 」1で述べた①基準ケースに対 して,②
高価格 ケース,③
イ11成長ケースの結 果 は以下の通 りである。 「高価格 ケース」の総需要 は2000年
までが年率9.3%,2000年
以降が8.5%
の増加率 を示 して,2000年
で 1,215億kWh,2015年
が4,118億
kWhと
想定 された。これ らの値 を基準ケースのそれ と比較す ると,2000年
で4%,2015
年で8%ほ
ど小 さい。モデル全体の価格弾力性 は-0.2程
度である。ただ し, 睡ヨ産業 (自家発) ■1産業 (PLN) RSホ テル 魏多公共用 圏目商業用E]家
庭用イン ドネシアにおけ る電力需要の現状 と展望 207 これ も地域 に依 ってその影響 の 出方 は異 な る。 ジャワーバ リが持 つ価格 弾 力 性 は
,ス
マ トラや その他の地域 に比べ て大 きな値 を示 してい る。 つ いで,「 低 成 長 ケー ス」の総需要 は2000年
まで8.2%,そ
れ以 降6.7%の
増 加率 を示 して,2000年
で1,122億
kWh,2015年
で2,984億
kWhと
想 定 さ れ た。この水準 を基準 ケースの それ と比較 す る と,2000年
で10%,2015年
で は33%ほ
ど小 さい。モデル に よる所得弾 力性 は,1.25で
あ る。地域 間で所得 弾 力性 を比較 すれば,ジ ャワーバ リは他地域 に比べ て小 さな値 を示 してい る。4.政
策 イ ンプ リケーシ ョン
4.1
政府 見通 しとの比較 上で も見たシ ミュレーシ ョン結果 をイン ドネシア政府の見通 しと比較 して み よう。政府見通 しとして扱 う予測 は鉱 山エネル ギーが行 った “RUKN 93/
94"で
ある(図12参
照)。RUKNと
基準ケースの結果 を比較す ると,次
の点 が大 きな差異 として特徴づ け られ る。GWh
600000 500000 400000 300000 200000 100000 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2o1 2015 図12
想 定 結 果 の比較 (電力需 要) l RυκⅣθθ/θ ` 低 成長 ケース 1高価格 ケースi車見通し
1
基準 ケース208 名古屋学院大学論集 第一 には
,Captiveと
PLNの
販 売量の合計 で あ る総 需要 はRUKNの
推 定 結 果 が基 準 ケース の それ よ りも総 じて大 きい こ とで あ る。RUKNに
よ る2000年
の総需要 は1,415億
kWhで
基準 ケー ス に比 べ て14%大
きい。また,RUKNで
は,そ
の予測最終年 (2008年)の
総 需要 は2,904億
kWhで
あ り, 基 準 ケースの同年 の予測値 に比べ て18%大
きい。 ただ し,Captiveに
関 して は この 限 りで はない。RUKNの
見通 しで は,Captiveは 1995年
まで ほ とん ど 増 加せ ず,そ
れ以 降急激 に立 ち上 が って くるように見通 してい る。 第 二 に はPLNの
販 売 量 の 想 定 に大 きな 違 い が 見 られ る こ とで あ る。RUKN見
通 しで は産業 を筆頭 に して家庭 。商業 。公共部門 十ホテル,す
べ て の需要分 野で本 モデル の基 準 ケース以上 の需要 を見込んでい る。両者の 2000 年 の値 を比較 す る と,RUKNの
値 は,基
準 ケー ス に比べ て,家
庭 用で23%,
商業 用44%,PLNの
産 業用 は51%ほ
ど大 きな値 を想定 してい る。RUKNに
お いて民 生系 の電 力需要 の増 加率 が基 準 ケース に比 べ て大 きい理 由の一 つ は,電
化 率の進捗速度 の違 いで あ る。RUKNで
は,2000年
の 電化率 を66.4%
MW
120000 100000 80000 60000 40000 20000 0 1997 2002 2007 図13
想 定 結 果 の比較 (最大 電 力) 基準 ケース 低 成長 ケー ス RυκⅣθθ/θイ 1992 2012イン ドネシアにおける電力需要の現状 と展望 209 と してい るが
,本
シ ミュ レー シ ョンで は2000年
で50%と
して い る。また,産
業 用 に関 して はCaptiveとPLNに
よる分 担 に関す る判 断 がRUKNと
本基 準 ケースが持 つ差 異 の原因の一つで あ る。 第二 に は,需
要 端 お よび 発 電端 にお け る最 大 電 力の見 方 で あ る (図13参
照)。 モデルの シ ミュ レー シ ョンでは,負
荷 率や 送 配 電損 失,所
内電力 な どの 想 定 は1992年
の実績 で固定 してい る。これ に対 してRUKNで
は,こ
う した 変 数 すべ て に関 して改 善 され る方 向 で数値 が 設 定 され て い る。 その ため,RUKN見
通 しの 電力需要 は本基 準 ケースの それ に比べ て大 きいが,最大 電力 に関 しては,需
要端 お よび発 電端 ともに本基準 ケース とほぼ同 じ値 で あ る。 この前提 の置 きか たにつ いては,さ
らに検 討が必要 で あろ う。新 型発 電所 や機 器の導 入 に よって,技
術 的 な所 内消費量や送配 電損失 の改善 は期 待 で き る。 しか し,運
転上 の問題,盗
電 問題 は別 の次元 の問題 で あ る。 また,将
来 の負荷 率が どうな るか は,将
来 の電 力消 費機 器の保有や使用形態 をさ らに検 討 した上 での判断が必要 で あ る。例 えば,日 本 の ように約30年
前 に73%あ
っ た負荷率が今や58%で
あ る。イ ン ドネ シアにお いて も,ク
ー ラーや民生用機 器 の普及 が進 む に連 れ て最大 電力の 出方 も夕方か ら昼 間へ とシフ トして来 る はずで あ る。4.2
ケ ー ス・ ス タデ ィか らの知見 また,幾
つ かのケーススタデ ィを通 じて次 の ようなイ ンプ リケー シ ョンを 得 るこ とが で きる。 第一 には電力価格政策 につ いてで あ る。電力価格 の需要へ の イ ンパ ク トは, 直接 的 な電カモデル 単体 での価格 弾 力性 と して-0.2程
度 が想 定 され た。 こ の こ とは,料金値上 げはPLNの
電 力収 入 を増大 させ,投資 の ための資金 不足 を解消 させ る方向 に働 くこ とにな る。仮 に10%の
料金値上 げ は8%の
収 入増 加 につ なが る。(もちろん,電
力価格 の値上 げが,マ
ク ロ経済 に負のイ ンパ ク トを及ぼ し,
さ らに電 力需要 を抑制 させ る状 況 も考 え られ,そ
う した動学的 な検 討 も必要 で あ る。)また,料
金値上 げは同時 に効率的 な電力消費の使 い方 や,高
効 率機 器の普及 につ いて もイ ンセ ンテ ィプ を与 え るこ とにな る。210 名古屋学院大学論集 表
3
電 力需要見通 し (各ケース) 単 位 実 績 1992 基 準 ケー ス 高 価 格 ケ ー ス 低 成 長 ケー ス 2000 2015 2000 2015 2000 2015 PLN販売 家 庭 用 商 業 川 公 共 用 ホ テル 産 業 用 (PLN) 自家 発 (Capyive) 産 業 用 合 言│ 総 電 力需 要 需 要 端 最 大 電 力 発 電 端最 大 電 力 GWh % GヽVh % GWh % CWh % GヽVh % GWh % Gヽ「h % CWh % CWh % MヽヽI % MW % 34,964 11,671 3.185 2.353 707 17,048 24,621 41.669 59.584 11.261 13.508 76,121 (102) 24,810 (9 9) 6.427 (9 2) 3.752 (6 0) 1,494 (9 8) 39,639 (111) 48,448 (8 8) 88.098 (9 8) 124.569 (9 7) 23.543 (9 7) 28,240 (9 7) 289,216 (9 3) 87.951 (8 8) 15,433 (6 0) 9.865 (6 7) 5,375 (8 9) 170.592 (102) 161,106 (8 3) 331,7()8 (9 2) 450,352 (8 9) 85,110 (8 9) 102.()87 (8 9) 73.443 (9 7) 23.234 (9 0) 6,218 (8 7) 3.681 (5 8) 1.471 (9 6) 38,839 (108) 48.039 (8 7) 86.878 (9 6) 121,481 (9 3) 22,960 (9 3) 27 540 (9 3) 252,633 (8 6) 64,319 (7 0) 13.842 (5 5) 9,277 (6 4) 5,232 (8 8) 159.963 (9 9) 159.200 (8 3) 319.163 (9 1) 411,834 (8 5) 77.836 (8 5) 93.362 (8 5) 69.258 (8 9) 23,702 (9 3) 6,258 (8 8) 3.546 (5 3) 1,408 (9 0) 34,344 (9 1) 42.983 (7 2) 77.327 (8 0) 112.241 (8 2) 21.213 (8 2) 25,445 (8 2) 193,076 (7 1) 62.373 (6 7) 13,098 (5 0) 7.222 (4 9) 3,894 (7 0) 160.488 (7 8) 105,365 (6 2) 211,853 (6 9) 298.440 (6 7) 56.405 (6 7) 67.656 (6 7) 注)( )内
は年平均増加率 それ ゆ え,PLNの
電 力価格 が現在 の水準 で適正 で あ るか。コス ト割 れの状 態 で販売 して い るので はな いか を検 証 し,少
な くて も適正 な コス ト水準 に ま で料金 を引 き上 げ る必要 が あろ う。 第二 には,所
得 効果 か らみ た電 力需要 の 問題 で あ る。 電 力需 要 の所 得 弾 力 性 は1.25と比較 的高 い。その ため,将
来 の 電 力需要 の想 定幅 は,想
定 され る 経済 成長率の変動幅以上 に大 き く揺 れ る。前提 とす る経済 成長率 につ いて も 不確 実性 が高 い ため に,電
力需要 の想 定 はそれ以上 に こ まめ な レビュウが必 要 で あ る。 また,モ
デル で採 用 され た弾 力性 につ いて も,将
来 にわ た リー 定 で あ る筈 はな く,モ
デル 自身の見直 しも適 宜 必要 にな ろ う。 第二 に は,将
来想 定の前提 とな る外生値 の セ ッ トに関 す る問題 で あ る。 予 測結果 は外生値 に よって大 き く変化 す るため,そ
の値 の扱 いには慎 重,か
つ 予測 時 点 で もっ と も現 実的 と思 われ る値 を用 い るべ きで あ る。 と りわ け電源 開発計 画 に対 応 す る電 力需要予 測 は よ り現 実 に近 い想 定の値 を用 い るべ きでインド不シアにおける電力需要の現状と展望
211
あろ う。そのためには,電
力需要予測モデルだけではな く,マ
クロ経済 に関 したモデル開発 も重要な課題 となる。お わ り に
本稿 で は,イ
ン ドネ シアの電力需要 の現状 とそれ に関 したモデル化 お よび シ ミュ レー シ ョンを紹 介 して きた。今 回開発 しシ ミュ レー シ ョンに用 いたモ デル は地域 的 な経済 や社会指標 を取 り込 んで はい る ものの,
まだ まだ改良の 余地 が残 され て い る。その 多 くはデ ー タの アベ イ ラ ビ リテ ィに も依存 す るが, 次 の点 を指摘 して今後 の課題 と したい。 第一 には,本
ス タデ ィで も大 きな臨路 にな ったCaptiveに
関 す るデ ー タの 問題 で あ る。Captiveの
規模 はPLNと
同等程度 あ る と言 われなが ら も,実
態 はほ とん ど把握 され ていない。 その ため,今
ス タデ ィで は 『工業統計表』 お よび 『PLN統
計 』 をベ ース にCaptiveの
発 電 。消 費量 の過去推計 をお こな っ た。 しか し,デ
ー タの変動 か らみ る と,十
分 信頼 に足 りうる とは言 い切 れ な い。今 回の手法 以外 に過去推計 す る方法 と しては,物
量 あた りの原 単位 を設 定 し,そ
れ に基づ いて過去 デー タ を作成す るや り方が考 え られ る。 第二 に は,生
産物 の物量 デー タ,機
器 の普 及デー タ,機
器 の効 率 とい った デー タの利 用で あ る。 電力や エ ネル ギー消費量 は,産
業 用 で は付 加価値 額 の 生産 に リンクす るので はな く,鉄
や セ メ ン トを何 トン生産 したか,
とい った 物 量 単位 に依 存す る。 同様 に,家
庭 用の照 明電力量 は間接 的 には所得水準 に 依 存 す るが,直
接 的 には電球 の数,そ
の効率,そ
して稼働 時 間で決 まる。 こ う した ミクロの デー タの利 用可能性 は今 の ところ十分 で はないが,マ
ク ロ的 な今 回の ようなモデル検 討 と照合 しなが ら,
ミク ロ的 な積 み上 げモデルの重 要性 も看過 で きない。 第二 には,本
稿 の検 討範 囲 には入れていないが,供
給 サ イ ドや環境 問題 ヘ の イ ンパ ク トの考察で あ る。 イ ン ドネ シア は中国 とな らび大量 な直接投 資が 注 ぎ込 まれ,経
済 開発 が急激 に進 ん で い る国で あ る。 そのプ ロセス において 電 力 は必要不可欠 なイ ンフラで あ る。 ここ数年,電
力需要 は2桁
で増大 して212
名古屋学院大学論集ゆ くだ ろ うが
,そ
れ を賄 うための最 適 な供給構 造の検 討,同
時 に環境 負荷 ヘ の影響 な どは重要 な課題 で あ る。参考文献
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ジア各国か ら続 々進 出。 ライバル は中国 とベ トナム」『週間 ダ イヤモ ン ド』1993年12月 15日 号,58-61頁イン ド不シアにおける電力需要の現状 と展望 《家庭用》 《商業用》 《ホテル》《公共用》