在宅生活する医療ケアを要する子どもの母親の子育て観に関する研究
19
0
0
全文
(2) Ⅰ.はじめに 1.本研究の背景 近 年 、わ が 国 で は 慢 性 疾 患・医 療 的 ケ ア 児 等 の 医 療 ニ ー ズ の あ る 子 ど も が 急 増 し て い る 。 特 に 医 療 的 ケ ア 児 ( 0-19 歳 ) は こ の 10 年 間 で 約 2 倍 、 う ち 人 工 呼 吸 器 を 要 す る 子 ど も は 約 12 倍 と な っ て お り (厚 生 労 働 省 , 2017)、 世 界 で も 類 を み な い 事 態 を 迎 え て い る 。 こ れ らの子どもを育てる家族は、子どもの育児・ケアに伴うさまざまな影響を受けている。と り わ け 、 主 と し て 育 児 ・ ケ ア を 担 っ て い る 母 親 の 養 育 負 担 感 は 高 く (久 野 , 2006, 松 澤 , 2013)、 社 会 生 活 へ の 影 響 は 極 め て 大 き い 。 そ れ ゆ え に 、 こ れ ら の 子 ど も と 同 様 、 母 親 へ の包括的かつ専門性の高い支援が必要である。 これらの子どもと家族への支援について、主要概念である家族中心ケア・サービス ( Family-Centered Care & Services)を 踏 ま え て 考 え る と 、親 が 主 体 的 に 疾 患 ・ 障 が い ・ 医療ケアを要する子どもを育て、これらの子どもを含む家族としての生活を構築し、母親 が思う子育てができるよう支援する必要がある。そのためには、これらの母親自身がどの ように子育てしたいか、つまり「子育て観」に基づく支援が不可欠と考えられる。 子 育 て 観 は 1960 年 代 か ら 複 数 の 学 問 領 域 で 子 育 て 支 援 や 文 化 比 較 を 目 的 と し た 研 究 が 蓄 積 さ れ 、 健 康 な 子 ど も の 親 の 子 育 て 観 の 測 定 (大 月 , 2012, 陳 , 2006)、 育 児 不 安 へ の 影 響 (渡 辺 , 2005)等 が 報 告 さ れ て き た 。 一 方 、 障 が い 児 の 親 の 子 育 て 観 に 直 接 、 焦 点 を 充 てた研究は、国内では筆者の知る限り、これらの子どもの母親の子育て観に直接的に焦点 を 充 て た 研 究 は 少 な く 、就 学 中 の 重 度 障 害 児 の 母 親 29 人 の 質 的 研 究 (鈴 木 ,2009)、2 組 の 重 症 児 の 親 の 事 例 研 究 の み で あ り (藤 本 , 2001)、 こ の よ う な 母 親 の 子 育 て 観 は 未 だ 明 ら か になっていない。 さ ら に 育 児 に 関 す る 複 数 の 価 値 を 階 層 的・総 体 的 な 優 先 関 係 を も と に 体 系 化 し た 子 育 て 観 の 測 定 は 難 し く 、わ が 国 の 先 行 研 究 で も「 子 育 て 全 般 に 対 す る 価 値 観 や 信 念 、親 役 割 感 、 育児生活への印象」と「実際の自分自身の子育てに対する感情や思い」の異なる意味で用 い ら れ て い る (陳 , 2006)。 ま た 現 存 し て い る 育 児 観 の 尺 度 は 健 康 な 子 ど も の 親 を 対 象 と し ており、それらではこれらの子どもの母親の子育て観は捉えきれないと考えられる。その ため、これらの母親の子育て観の測定に向けた方法論的な工夫が必要である。. 2.本研究の目的・意義 本研究は、在宅生活する医療ニーズのある子どもの母親の子育て観を明らかにすること を目的とする。そして測定の難しいこれらの子どもの母親の子育て観を捉えるために、価 値 観 測 定 の 一 手 法 で あ る Q 分 類 法 を 用 い る 。こ れ ら の 母 親 が ど の よ う な 価 値 観 を も ち 、日 々 の子育てをしているかを明らかにすることは、母親への質の高い支援を可能にする。また こ れ は 近 年 、提 唱 さ れ る 価 値 観 に 基 づ く ア プ ロ ー チ( Value-based Approach)で あ り 、ま 1.
(3) た 家 族 全 体 を 捉 え た 支 援 ( Whole Family Approach) の 考 え 方 に も 合 致 す る 。 さ ら に 母 親 の子育て観が明確になり、それに基づく支援が可能になることは、医療ニーズのある子ど もの親のケア役割から親役割獲得へのパラダイム転換をはかることにつながる。. 3.用語の定義 わ が 国 に お け る こ れ ま で の 子 育 て 観 に 関 す る 先 行 研 究 で は 、複 数 の 子 育 て 観 の 定 義 が 用 い ら れ ( 表 1 )、 子 育 て 観 そ の も の の 概 念 が 必 ず し も 同 じ 概 念 と し て は 用 い ら れ て お ら ず 、 充 分 、概 念 の 内 容 が 明 ら か に さ れ て い な い 。山 城 (2016)の 子 育 て 観 の 概 念 規 定 の 整 理 に よ れ ば 、国 内 の 子 育 て 観 の 先 行 研 究 は 以 下 の 2 つ に 大 別 で き る 。一 つ は 陳 (2006)ら の「 乳 幼 児を育てることに対する個人の見解、価値観、認識、印象、期待の総体」のように、個人 の『 価 値 』に 重 点 を 置 く も の 、内 藤 (1998)ら の よ う に 、実 際 の 子 育 て に 対 す る 評 価 を 中 心 に、子どもが好きであるかどうかや子育てをすることで得られる社会との関わりを含めた 概念で構成する『態度』に重点を置くものである。この枠組みにならって考えると、鈴木 ( 2009) の 研 究 は 前 者 で あ る 『 価 値 』、 藤 本 ( 2001) の 研 究 は 後 者 で あ る 『 態 度 』 に 重 点 を 置 い て お り 、山 城( 2016)の 研 究 は こ れ ら の レ ビ ュ ー を 踏 ま え て 、そ の 両 方 を 包 括 す る 概念として子育て観を規定している。 本 研 究 で は こ れ ら の 先 行 研 究 に お け る 子 育 て 観 の 研 究 動 向 を 踏 ま え 、医 療 ニ ー ズ の あ る 子どもの母親の子育て観を「病気・障がいがある子どもの子育ておよび子育てにおける生 活に対する個人の考え・価値観・認識」と操作的に定義する。. 表1 わが国における子育て観の定義 著者(発行年) 山城(2016) 鈴木(2009) 陳(2006) 藤本(2001) 内藤(1998). 定義 実際の子育てに対する評価としての態度や子育てに対する個人の価値観 子育てに対する「喜びや楽しみ」「悩みや不安」「責任感」の下位概念とする枠組み 保護者の子育てへの考え 乳幼児を育てることに対する個人の見解、価値観、認識、印象、期待の総体 育児経験の意味づけや解釈 「子育て満足感」「生きがい感」「子育て負担感・不安感」「子どもイメージ」「社会性」を 下位概念とする枠組み. 2.
(4) Ⅱ.研究方法 1.研究デザイン 本研究は医療ニーズのある子どもの母 親の子育て観を捉えるため、Q 方法論を用 いる。Q 方法論とは、個人や組織の内面に ある捉えづらい価値観等を定量的に測定す るための分析方法であり、質的・量的研究 方 法 ( Quali-Quantitative Methods) と 位 置 づ け ら れ る (Watts, 2012)。 Q 方 法 論 と は 、簡 単 に い え ば あ る テ ー マ に 対 す る 価 値 観 が 書 か れ た 複 数 枚( 通 常 40 ~ 60 枚 )の カ ー ド を 最 も 重 要 視 す る も の か ら最も重要視しないものまで、価値観同士を比較し、並べ替えることで価値観の測定を試 み る 手 法 で あ る (Ellingsen.I, 2014)。 本 手 法 は 国 際 的 に は 多 分 野 で 用 い ら れ 、 国 外 で は 既 に さ ま ざ ま な 対 象 の 価 値 観 、認 識 や 感 情 等 の 個 人 や 組 織 の 内 面 の 測 定 に 利 用 さ れ て い る が 、 わ が 国 で は 本 手 法 は 紹 介 さ れ 始 め て い る も の の (岡 本 , 2011, 本 堂 , 2017)、 ま だ こ の 方 法を用いた研究は極めて少ない。. 2.研究協力者 本 研 究 協 力 者 は 、異 な る 属 性 の 対 象 を 含 む 設 定 が 望 ま し い と い う Q 方 法 論 の 特 徴 を 生 か し、かつ予備的調査であることを踏まえて、下記の基準に該当する対象者を研究協力者と して依頼した。 1)下記の基準に該当する在宅生活中の医療ケアがある子どもの母親 在宅での日常生活において先天性疾患・出生時の何らかの原因による医療ケア(人工呼 吸器・気管切開・胃チューブや胃ろうによる経管栄養、酸素療法、継続的な注射や導尿な ど)または医療ニーズを要する幼児または学童の主たる育児・ケアを担う母親。ただし、 子どもの障がい受容等を考慮し、乳児は除いた。 2)小児看護・母子保健の経験を5年以上もつ看護職(看護師または保健師). 3.
(5) 3.調査方法・内容 本研究における調査方法は、図2に示す5段階のプロセスを経て実施した。. 1)第一段階 本研究におけるステートメントの抽出にあたっては、理論的サンプリング、熟儀的サン プリング、探索的サンプリングのうち、理論的サンプリングを用いた。理論的サンプリン グとは既存の理論に基づいた分類や文献調査等を基に設定した複数の文章群をステートメ ントとするものであり、研究協力者はサンプリングに一切かかわらないため、テーマに対 する説明がステートメントの群によって網羅されていることが重要である。それを踏まえ て、医療ケアを要する子どもの母親の子育て・健康・生活に関する国内文献を網羅的に精 読した。同時に本研究協力者以外の母親 3 人に対してヒアリングを実施し、母親の子育て 観にかかわる内容の抽出を試みた。 対 象 と す る 論 文 の 抽 出 に あ た っ て は 、わ が 国 の 障 が い 児 、母 親 、家 族 に 関 す る 文 献 、Web 等 に よ る 資 料 を 網 羅 的 に 読 ん だ 上 で 、医 学 中 央 雑 誌 WEB デ ー タ ベ ー ス を 用 い て 、 「障がい 児 」「 母 親 」「 原 著 」「 2000 年 以 降 」 の 文 献 を 検 索 し た ( ア ク セ ス 日 2018 年 1 月 )。 こ の 検 索 条 件 に よ り 、 732 件 の 文 献 が 抽 出 さ れ 、 そ の う ち 、 下 記 の 基 準 に 該 当 す る 論 文 を 表 題 ・ 要旨等を読んだ上で除外した。除外基準は本研究の目的に照らして、①研究協力者が父親 や看護師を対象としている 視覚障害・聴覚障害. ②診断・治療に関すること. ③子どもの障がいが発達障害・. ④その他(入院中・外国・何らかの介入効果を評価するものなど). である。これらの基準に該当する文献を除外し、残った文献を対象とした。 4.
(6) 2)第2段階 次 に こ れ ら の 文 献 を 研 究 者 2 人 で 抽 出 さ れ た 文 献 の 全 文 を 精 読 し 、母 親 の 子 育 て 観 に 該 当する部分を抽出して、ステートメントを作成した。それらを確認し、重複等を除外し、 残 る ス テ ー ト メ ン ト に つ い て 複 数 回 の 校 正 を 実 施 し て 、最 終 の ス テ ー ト メ ン ト を 作 成 し た 。 3)第3段階 ス テ ー ト メ ン ト の 1 項 目 ず つ を 1 枚 ず つ の 名 刺 大 の カ ー ド に す べ て 記 述 し 、複 数 枚 の カ ー ド 、つ ま り 本 研 究 で 使 用 す る Q セ ッ ト を 作 成 し た 。そ の 上 で 、本 研 究 の テ ー マ を 踏 ま え て 、最 終 ス テ ー ト メ ン ト を 配 置 す る Q グ リ ッ ド を 作 成 し た 。Q セ ッ ト と は 本 研 究 の 分 析 に おいて研究協力者が選択する価値観の内容について書かれたカードの集合体である。Q グ リッドとは Q セットのカードを並べるピラミッド型のマトリックスの表である。. -5. -4. -3. -2. -1. 0. 1. 2. ← 最も同意できない. 3. 4. 5. 最も同意できる →. 最も大切ではない. 最も大切である. 図3 本研究におけるQ-グリッド. 4)第4段階 研 究 協 力 者 に 対 し て 、本 研 究 で 使 用 す る Q セ ッ ト 、本 研 究 の 調 査 方 法 を 書 い た 説 明 文 書 、 ステートメントの分類が終了した際に記述する記録用紙を郵送し、Q 分類を依頼した。本 研究の調査方法を書いた説明文書およびステートメントの分類が終了した際に記述する記 録用紙については、母親用と看護職用の2種類を作成した。記録用紙の内容は、Q グリッ ドおよび各ステートメントの配置の理由、研究協力者の基本属性として、母親に対しては 子どもの年齢・疾患・医療ケアの内容・母親の年代・家族構成、看護職に対しては年代・ 看護職としての経験年数、そのうち小児看護または母子保健に関する経験年数について記 入を求めた。. 4.データ分析 デ ー タ は 個 別 に ス コ ア 化 し た 上 で 、医 療 ニ ー ズ の あ る 子 ど も の 母 親 の 子 育 て 観 を 基 に し た 因 子 分 析 お よ び 主 成 分 分 析 を 実 施 し た 。 そ の 上 で 、 Yoshizawa (2016)ら の 方 法 に よ り 、 母親の子育て観についてマッピングを行い、可視化した。 5.
(7) 5.倫理的配慮 本研究は倫理的配慮として、研究協力者に対して、事前に書面にて本研究の目的・方法 等について説明を実施し、内諾を得た。また本研究へ参加しない場合も不利益を被ること はないこと、本研究の結果を公表する際、個人のプライバシーは完全に守られること等を 文書にて説明し、その上で本研究への協力について書面での同意を得た。また本研究は研 究実施前に研究者の所属機関の倫理審査委員会に申請し、承認を経た上で本調査を実施し た ( 承 認 番 号 : 2017-020)。. Ⅲ.結果 1.医療ニーズのある子どもの母親の子育て観のステートメント 医 学 中 央 雑 誌 WEB デ ー タ ベ ー ス を 用 い て 、「 障 が い 児 」「 母 親 」「 原 著 」「 2000 年 以 降 」 の キ ー ワ ー ド を 用 い て 検 索 し 、抽 出 し た 732 文 献 か ら 174 文 献 を 対 象 と し 、こ れ ら を 研 究 者 2 人 で 全 文 を 精 読 し 、母 親 の 子 育 て 観 に 該 当 す る 部 分 を 抽 出 し て 768 ス テ ー ト メ ン ト を 作 成 し た 。 こ れ ら を さ ら に 研 究 者 2 人 で 複 数 回 ・ 校 正 し 、 最 終 的 に 47 ス テ ー ト メ ン ト を 作 成 し た ( 表 2 )。 47 ス テ ー ト メ ン ト の 作 成 に あ た っ て は 、研 究 者 間 で 討 議 し 、Q 方 法 論 の 特 徴 に し た が っ て、 「 子 ど も 観 」、 「 子 ど も の 健 康 と 育 児 ・ ケ ア 」、 「 母 親 自 身 の 健 康 ・ 生 き が い 」、 「 家 族( 父 親 ・ き ょ う だ い ・ 家 族 全 体 )」、「 子 育 て へ の サ ポ ー ト 、「 子 育 て の 負 担 」 の 6 つ の 領 域 に な るよう配慮して絞り込みを行った。 そ の 上 で 、そ れ ぞ れ の ス テ ー ト メ ン ト に お け る 価 値 観 の 記 述 の 意 味 内 容 に つ い て 確 認 し 、 ま た Q 分 類 に か か る 所 要 時 間 を 確 認 す る た め に 、研 究 者 そ れ ぞ れ で 仮 ス テ ー ト メ ン ト に よ るプレテストを実施し、再度、ステートメントの校正を行って、最終版を完成させた。. 6.
(8) 表2 本研究における子育て観ステートメント 番号. ステートメント. 1. 病気や障がいがある子どもが、日々楽しく過ごせて、笑顔でいられる. 2. 病気や障がいがある子どもが、その子なりのペースで成長発達できる. 3. 病気や障がいがある子どもが、同じ年代の子どもと触れあえる. 4. 病気や障がいがある子どもをかわいいと感じる. 5. 病気や障がいがある子どもを育てることは大変である. 6. 病気や障がいがある子どもの健康状態が安定している. 7. 病気や障がいがある子どもの健康状態の変化に対応できる. 8. 病気や障がいがある子どもの健康状態を予測する. 9. 病気や障がいがある子どもの個性をありのままに受け止める. 10. 自分が育児・ケアできることは、自分自身で行いたい. 11. 子どものケアは他の人にまかせられない. 12. 病気や障がいがある子どもを中心とした生活をすべきである. 13. 母親や他の家族を犠牲にして、病気や障がいがある子どもの育児・ケアに全うすべきではない. 14. 育児・家事だけではなく、母親の仕事ややりたいことも充実させる. 15. 病気や障がいがある子どもの子育ては母親である自分の成長につながる. 16. 病気や障がいがある子どもと、父親やきょうだいなどの家族全体のバランスをとる. 17. 父親は育児・家事に積極的に協力すべき. 18. 子どもから離れて、母親自身のための時間をもつ. 19. 母親が自分自身の健康を維持する. 20. ストレス解消のために、気分転換・休息をとる. 21. 病気や障がいがある子どもの子育てのすべての責任は親にある. 22. 病気や障がいがある子どもの子育ては専門職と協働する. 23. 多くの人が子育てにかかわって、地域や社会とつながる. 24. できるだけ病気や障がいがある子どもを連れて外出したい. 25. 病気や障がいがある子どもを特別扱いせず、ふつうの子どものように関わってほしい. 26. 周囲の人々に病気や障がいがある子どもを理解してほしい. 27. 今後の病気や障がいがある子どもの育児・ケアに関する不安がある. 28. 父親と子育てにおける考えを共有し、一緒に子育てする. 29. 父親には育児・家事の協力よりも、母親を精神的に支えてほしい. 30. 育児や家事だけではなく、母親である自分の生きがいこそ大切にする. 31. 病気や障がいがある子どもときょうだいを平等に育てたい. 32. きょうだいには病気や障がいがある子どもの育児・ケアに参加してほしい. 33. きょうだいにはできるだけ病気や障がいがある子どもの育児・ケアの負担をかけたくない. 34. 緊急時、困った時は必要な支援がすぐ受けられる. 35. きょうだいには、できるだけ一人でできることは一人で行い、自立してほしい. 36. 祖父母や親族には、病気や障がいがある子どもを理解し、サポートしてほしい. 37. 子育てに関する悩みや不安は、家族で解決する. 38. 子育てに関する悩みや不安について専門職や身近な人の支援を得る. 39. 同じ病気や障がいのある子どもの母親と交流する. 40. 子育てについての話や相談ができる人や場所がほしい. 41. 病気や障がいがある子どもの子育てに関する情報がほしい. 42. 病気や障がいがある子どもにとって必要な情報を選択する. 43. 病気や障がいがある子どもがいる生活において、必要なサービスなどの社会資源を活用する. 44. 病気や障がいがある子どもの子育てのために我慢ばかりしている. 45. 病気や障がいがある子どもの子育ては、経済的負担が大きい. 46. 病気や障がいがある子どもがいることで、日々の生活に張り合いがある. 47. 病気や障がいがある子どもの育児・ケアで時間的に追われている. 7.
(9) 2.研究協力者の概要 本 研 究 協 力 者 の 基 本 属 性 等 を 表 3 に 示 す 。 研 究 協 力 者 10 人 の 内 訳 は 医 療 ニ ー ズ が あ る 子 ど も の 母 親 4 人 、こ れ ら の 子 ど も と 母 親 等 の 家 族 に 対 し て 5 年 以 上 の 看 護 実 践 の 経 験 が あ る 看 護 職 で あ る 。 医 療 ニ ー ズ が あ る 子 ど も の 母 親 の 基 本 属 性 は す べ て 40 代 で あ り 、 子 ど も は 5 歳 か ら 12 歳 、 神 経 疾 患 が 3 人 、 内 分 泌 疾 患 が 1 人 、 す べ て 何 ら か の 医 療 的 ケ ア を必要としていた。医療ニーズがある子どもと母親等の家族に対して、5 年以上の看護実 践 の 経 験 を 有 す る 看 護 職 の 基 本 属 性 は 、 す べ て 女 性 で あ り 、 20 代 が 1 人 、 30 代 が 1 人 、 40 代 が 1 人 、 50 代 が 3 人 で あ っ た 。 す べ て 看 護 職 の 経 験 、 小 児 看 護 お よ び 母 子 保 健 の 看 護 実 践 5 年 以 上 の 経 験 を も ち 、看 護 職 と し て の 勤 務 経 験 年 数 の 平 均 は 19.2 年 、小 児 看 護 お よ び 母 子 保 健 に 関 す る 勤 務 経 験 年 数 の 平 均 は 14.8 年 で あ っ た 。. 表3 本研究協力者の基本属性 事例. 年齢. 性別. 属性/職業. 協力者の特徴*. A. 40代. 女性. 母親. 神経疾患(5歳)経管栄養 . 4人家族(父・母・きょうだい). B. 40代. 女性. 母親. 神経疾患(11歳)バギー . 4人家族(父・母・きょうだい). C. 40代. 女性. 母親. 神経疾患(10歳)人工呼吸器・経管栄養 5人家族(母・祖父・祖母・きょうだい). D. 40代. 女性. 母親. 内分泌疾患(12歳)インスリンポンプ . E. 50代. 女性. 看護職. 看護職 28年 . 小児看護/母子保健 18年. F. 30代. 女性. 看護職. 看護職 9年 . 小児看護/母子保健 5年. G. 40代. 女性. 看護職. 看護職 14年 . 小児看護/母子保健 14年. H. 20代. 女性. 看護職. 看護職 5年 . 小児看護/母子保健 5年. I. 50代. 女性. 看護職. 看護職 27年 . 小児看護/母子保健 26年. J. 50代. 女性. 看護職. 看護職 32年 . 小児看護/母子保健 21年. 4人家族(父・母・きょうだい). *母親の場合、子どもの年齢・疾患および代表的な医療的ケアおよび医療ニーズの内容、家族人数・構成 看護職の場合、看護職としての経験年数、うち小児看護および母子保健の経験年数. 8.
(10) 3.医療ニーズがある子どもの母親の子育て観の特徴 本研究協力者のステートメントの分類. 表4 本研究協力者における因子負荷量. 結果を、主成分分析を用いて分析した結 研究協力者. 因子負荷量 Factor 1. Factor 2. J. 0.7917. 0.2545. F. 0.7205. 0.3049. G. 0.7087. 0.3076. E. 0.6033. 0.0411. 「病気や障がいがある子どもが、その子. D. 0.6017. 0.3614. な り の ペ ー ス で 成 長 発 達 で き る 」、26「 周. A. 0.5447. 0.1467. H. 0.2769. 0.7878. B. 0.4188. 0.5353. I. 0.2352. 0.4634. る子どもの個性をありのままに受け止め. C. 0.0144. 0.2851. る 」、 20 「 ス ト レ ス 解 消 の た め に 、 気 分. 寄与率. 30%. 16%. 果、2つの主成分が抽出され、2つの異 な る 因 子 の グ ル ー プ に 分 類 さ れ た( 表 4 )。 また本研究の結果、因子1において因 子負荷量が高かったステートメントは 2. 囲の人々に病気や障がいがある子どもを 理 解 し て ほ し い 」、 9「 病 気 や 障 が い が あ. 転 換 ・ 休 息 を と る 」、 23「 多 く の 人 が 子 育 て に か か わ っ て 、 地 域 や 社 会 と つ な が る 」 で あ っ た 。一 方 、因 子 負 荷 量 が 低 か っ た ス テ ー ト メ ン ト は 10「 自 分 が 育 児・ケ ア で き る こ と は 、 自 分 自 身 で 行 い た い 」、 21「 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も の 子 育 て の す べ て の 責 任 は 親 に あ る 」、12「 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も を 中 心 と し た 生 活 を す べ き で あ る 」、11「 子 ど も の ケ ア は 他 の 人 に ま か せ ら れ な い 」、 35「 き ょ う だ い に は で き る だ け 一 人 で で き る こ と は 一 人 で行い、自立してほしい」であった。 さ ら に 本 研 究 の 結 果 、 因 子 2 に お い て 因 子 負 荷 量 が 高 か っ た ス テ ー ト メ ン ト は 、 6「 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も の 健 康 状 態 が 安 定 し て い る 」、 8「 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も の 健 康 状 態 を 予 測 す る 」、 2「 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も が 、 そ の 子 な り の ペ ー ス で 成 長 発 達 で き る 」、 40「 子 育 て に つ い て の 話 が で き る 人 や 場 所 が ほ し い 」 で あ っ た 。 一 方 、 因 子 負 荷 量 が 低 か っ た ス テ ー ト メ ン ト は 、35「 き ょ う だ い に は で き る だ け 一 人 で で き る こ と は 一 人 で 行 い 、自 立 し て ほ し い 」、10「 自 分 が 育 児 ・ ケ ア で き る こ と は 自 分 自 身 で 行 い た い 」、29 「 父 親 に は 育 児 ・ 家 事 の 協 力 よ り も 、 母 親 を 精 神 的 に 支 え て ほ し い 」、 30「 育 児 や 家 事 だ け で は な く 、 母 親 で あ る 自 分 の 生 き が い こ そ 大 事 に す る 」 で あ っ た ( 表 5 ・ 6 )。. 9.
(11) 表5 本研究協力者におけるステートメントと因子得点の関係. 2 26 9. FactorⅠ. ステートメント. 番号. 病気や障がいがある子どもが、その子なりのペースで成長 発達できる 周囲の人々に病気や障がいがある子どもを理解してほしい 病気や障がいがある子どもの個性をありのままに受け止め る. FactorⅡ. Q-SV. Z-SCR. Q-SV. 4. 2.15. 3. 1.45. 4. 1.26*. -1. -0.4. 0. 0.04. 3. 1.17*. Z-SCR. 20. ストレス解消のために、気分転換・休息をとる. 3. 0.73*. -2. -0.67. 23. 多くの人が子育てにかかわって、地域や社会とつながる. 3. 0.73*. -1. -0.59. 18. 子どもから離れて、母親自身のための時間をもつ. 2. 0.72*. -1. -0.58. 6. 病気や障がいがある子どもの健康状態が安定している. 1. 0.35*. 4. 1.93. 29 27 5 13 40 30. 父親には育児・家事の協力よりも、母親を精神的に支えて ほしい 今後の病気や障がいがある子どもの育児・ケアに関する不 安がある 病気や障がいがある子どもを育てることは大変である 母親や他の家族を犠牲にして、病気や障がいがある子ども の育児・ケアに全うすべきではない 子育てについての話や相談ができる人や場所がほしい 育児や家事だけではなく、母親である自分の生きがいこそ 大切にする. 0. 0.15*. -4. -1.83. 0. 0.12*. 2. 1.05. 0. 0.04. 2. 0.92. 0. -0.01. -2. -0.8. 0. -0.05*. 3. 1.26. -1. -0.11*. -4. -1.59. -0.13*. 4. 1.47. 8. 病気や障がいがある子どもの健康状態を予測する. -1. 41. 病気や障がいがある子どもの子育てに関する情報がほしい. -1. -0.25*. 2. 0.69. -1. -0.37. 2. 0.69. -3. -1.15. -5. -1.95. -4. -1.82*. -1. -0.61. -4. -2.09*. -2. -0.72. -4. -2.19. -3. -1.47. -5. -2.36. -4. -1.57. 38 35 11 12 21 10. 子育てに関する悩みや不安について、専門職や身近な人の 支援を得る きょうだいには、できるだけ一人でできることは一人で行 い、自立してほしい 子どものケアは他の人にまかせられない 病気や障がいがある子どもを中心とした生活をすべきであ る 病気や障がいがある子どもの子育てのすべての責任は親に ある 自分が育児・ケアできることは、自分自身で行いたい. *p<0.05. 10.
(12) 表6 本研究協力者におけるとステートメントと主成分負荷量の関係 番号. ステートメント. 主成分負荷量 第1主成分 第2主成分. 1. 病気や障がいがある子どもが、日々楽しく過ごせて、笑顔でいられる. -0.6353. -0.7046. 2. 病気や障がいがある子どもが、その子なりのペースで成長発達できる. -0.7411. -0.2320. 3. 病気や障がいがある子どもが、同じ年代の子どもと触れあえる. -0.3101. 0.2343. 4. 病気や障がいがある子どもをかわいいと感じる. 0.1198. 0.3697. 5. 病気や障がいがある子どもを育てることは大変である. 0.4008. -0.4078. 6. 病気や障がいがある子どもの健康状態が安定している. 0.5037. -0.6833. 7. 病気や障がいがある子どもの健康状態の変化に対応できる. 0.2996. -0.5174. 8. 病気や障がいがある子どもの健康状態を予測する. 0.7113. -0.2251. 9. 病気や障がいがある子どもの個性をありのままに受け止める. -0.2996. 0.1481. 10 自分が育児・ケアできることは、自分自身で行いたい. 0.7891. 0.0955. 11 子どものケアは他の人にまかせられない. 0.7346. 0.4162. 12 病気や障がいがある子どもを中心とした生活をすべきである. 0.9278. -0.1172. -0.3573. 0.4228. 14 育児・家事だけではなく、母親の仕事ややりたいことも充実させる. -0.5475. -0.3745. 15 病気や障がいがある子どもの子育ては母親である自分の成長につながる. 0.0715. 0.7846. 16 病気や障がいがある子どもと、父親やきょうだいなどの家族全体のバランスをとる. 0.1024. -0.3049. 17 父親は、育児・家事に積極的に協力すべき. -0.2792. -0.7423. 18 子どもから離れて、母親自身のための時間をもつ. -0.4895. -0.5821. 19 母親が自分自身の健康を維持する. 0.3332. -0.0316. 20 ストレス解消のために、気分転換・休息をとる. -0.8760. -0.2303. 21 病気や障がいがある子どもの子育てのすべての責任は親にある. 0.7141. 0.4550. 22 病気や障がいがある子どもの子育ては、専門職と協働する. -0.6038. 0.3764. 23 多くの人が子育てにかかわって、地域や社会とつながる. -0.6418. 0.2397. 24 できるだけ病気や障がいがある子どもを連れて外出したい. 0.0243. -0.0658. 25 病気や障がいがある子どもを特別扱いせず、ふつうの子どものように関わってほしい. -0.5920. 0.5092. 26 周囲の人々に病気や障がいがある子どもを理解してほしい. -0.3542. 0.4926. 27 今後の病気や障がいがある子どもの育児・ケアに関する不安がある. 0.4563. 0.2900. 28 父親と子育てにおける考えを共有し、一緒に子育てする. -0.2215. -0.8572. 29 父親には育児・家事の協力よりも、母親を精神的に支えてほしい. -0.8312. 0.1313. 30 育児や家事だけではなく、母親である自分の生きがいこそ大切にする. -0.8260. 0.0149. 31 病気や障がいがある子どもときょうだいを平等に育てたい. 0.1500. 0.5109. 32 きょうだいには、病気や障がいがある子どもの育児・ケアに参加してほしい. 0.2045. -0.2619. 0.3270. 0.5703. 34 緊急時、困った時は必要な支援がすぐ受けられる. 0.1051. -0.2395. 35 きょうだいにはできるだけ一人でできることは一人で行い、自立してほしい. -0.4620. -0.2975. 36 祖父母や親族には病気や障がいがある子どもを理解し、サポートしてほしい. -0.3292. -0.2961. 37 子育てに関する悩みや不安は、家族で解決する. 0.7233. -0.0390. 38 子育てに関する悩みや不安について、専門職や身近な人の支援を得る. 0.5526. -0.3009. 39 同じ病気や障がいのある子どもの母親と交流する. -0.0579. -0.3347. 40 子育てについての話や相談ができる人や場所がほしい. 0.2467. -0.7139. 41 病気や障がいがある子どもの子育てに関する情報がほしい. 0.4371. -0.1800. 42 病気や障がいがある子どもにとって必要な情報を選択する. 0.5522. -0.4792. -0.0117. -0.4163. 44 病気や障がいがある子どもの子育てのために我慢ばかりしている. -0.3270. 0.4345. 45 病気や障がいがある子どもの子育ては、経済的負担が大きい. -0.0086. 0.6644. 46 病気や障がいがある子どもがいることで、日々の生活に張り合いがある. -0.1161. 0.9014. 47 病気や障がいがある子どもの育児・ケアで、時間的に追われている. 0.1568. 0.6198. 13. 33. 43. 母親や他の家族を犠牲にして、病気や障がいがある子どもの育児・ケアに全うすべき ではない. きょうだいには、できるだけ病気や障がいがある子どもの育児・ケアの負担をかけた くない. 病気や障がいがある子どもがいる生活において、必要なサービスなどの社会資源を活 用する. 固有値. 11.2567. 9.4959. 寄与率. 23.9505. 20.2040. 累積寄与率. 23.9505. 44.1545. 11.
(13) 本 研 究 の 結 果 、医 療 ニ ー ズ が あ る 子 ど も の 母 親 の 子 育 て 観 の 特 徴 と し て 、各 軸 に お け る 各ステートメントの意味内容を踏まえて、 「親がしっかり病気や障がいのある子どもの子育 て を 担 う 」「 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も だ け で は な く 、 自 分 自 身 も 大 切 に す る 」「 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も の 子 育 て は 負 担 だ が 、自 分 自 身 も 育 て る 」 「 共 に 子 育 て す る こ と で 、病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も が よ く 育 つ 」 と 名 称 を つ け た ( 表 7 )。. 表7 本研究協力者における主成分負荷量による母親の子育て観の特徴 軸の名称とステートメント. 番号. 主成分負荷量. 親がしっかり病気や障がいがある子どもの子育てを担う(横軸-正) 12. 病気や障がいがある子どもを中心とした生活をすべきである. 0.9278. 10. 自分が育児・ケアできることは、自分自身で行いたい. 0.7891. 11. 子どものケアは他の人にまかせられない. 0.7346. 37. 子育てに関する悩みや不安は、家族で解決する. 0.7233. 21. 病気や障がいがある子どもの子育てのすべての責任は親にある. 0.7141. 病気や障がいがある子どもだけではなく、自分自身も大切にする(横軸-負) 20. ストレス解消のために、気分転換・休息をとる. -0.8760. 29. 父親には育児・家事の協力よりも、母親を精神的に支えてほしい. -0.8312. 30. 育児や家事だけではなく、母親である自分の生きがいこそ大切にする. -0.8260. 2. 病気や障がいがある子どもが、その子なりのペースで成長発達できる. -0.7411. 多くの人が子育てにかかわって、地域や社会とつながる. -0.6418. 23. 病気や障がいがある子どもの子育ては負担だが、自分自身も育てる(縦軸-正) 46. 病気や障がいがある子どもがいることで、日々の生活に張り合いがある. 0.9014. 15. 病気や障がいがある子どもの子育ては母親である自分の成長につながる. 0.7846. 45. 病気や障がいがある子どもの子育ては、経済的負担が大きい. 0.6644. 47. 病気や障がいがある子どもの育児・ケアで、時間的に追われている. 0.6198. 33. きょうだいには、できるだけ病気や障がいがある子どもの育児・ケアの負担 をかけたくない. 0.5703. 共に子育てすることで、病気や障がいがある子どもがよく育つ(縦軸-負) 28. 父親と子育てにおける考えを共有し、一緒に子育てする. -0.8572. 17. 父親は、育児・家事に積極的に協力すべき. -0.7423. 40. 子育てについての話や相談ができる人や場所がほしい. -0.7139. 1. 病気や障がいがある子どもが、日々楽しく過ごせて、笑顔でいられる. -0.7046. 6. 病気や障がいがある子どもの健康状態が安定している. -0.6833. 12.
(14) 4.医療ニーズのある子どもの母親の子育て観の Q マッピングによる可視化 本 研 究 に お け る 医 療 ニ ー ズ の あ る 子 ど も の 母 親 の 子 育 て 観 の 特 徴 を 図 4 に 示 す 。マ ッ ピ ン グ に よ っ て 、研 究 協 力 者 の Q 分 類 法 の 結 果 を 重 ね あ わ せ た 結 果 、病 気・ 障 が い が あ る 子 どもの母親の子育て観に関する3つのグループが抽出された。最も多かったグループは、 病気や障がいがある子どもだけではなく、自分自身も大切にし、共に子育てするという子 育 て 観( グ ル ー プ 1 )、そ れ に 対 し て 、共 に 子 育 て す る が 、親 が し っ か り 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も の 子 育 て を 担 う と い う 子 育 て 観( グ ル ー プ 2 )、そ し て 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も の子育ては負担だが、自分自身も育てるので、親がしっかり病気や障がいがある子どもの 子 育 て を 担 う と い う と い う 子 育 て 観 で あ る ( グ ル ー プ 3 )。. 13.
(15) Ⅳ.考察 1.医療ニーズのある子どもの母親の子育て観の特徴 本研究では医療ニーズのある子どもの母親の子育て観を明らかにすることを目的として、 Q 方法論を用いた予備的調査を行った。その結果、3つのグループに分類される医療ニー ズのある子どもの母親の子育て観の特徴が明らかになった。 本 研 究 の 結 果 、医 療 ニ ー ズ の あ る 子 ど も の 母 親 の 子 育 て 観 と し て 最 も 多 か っ た の は 、グ ループ1であった。このグループの母親の子育て観の特徴は、病気や障がいがある子ども だけではなく自分自身も大切にし、共に子育てすることで病気や障がいがある子どもが育 つという子育て観である。何らかの病気や障がいがある子どもの育児・ケア役割を担うの は 9 割 以 上 が 母 親 で あ り (小 沢 , 2007)、 こ れ ら の 母 親 は 子 ど も に 障 が い が あ る こ と が わ か ると自責の念を感じ、障がい受容へのプロセスを辿りつつ、通常の子どもの育児以上のケ ア役割、家事やきょうだいの育児、家族全体の調整、また子どもがサービスを利用する場 合 は そ の 調 整 役 割 な ど 、多 重 な 役 割 を 担 い 、多 様 な 日 常 生 活 上 の 困 難 を 抱 い て い る (大 久 保 , 2016)。従 来 は こ の よ う な 育 児 の 経 験 の 中 で 、自 責 感 か ら 子 ど も と 一 体 化 し て 子 ど も の た め に頑張り、そして期待される障がい児の母親として生きようとしていることが報告されて き た (春 日 , 1992)。 し か し 近 年 、 最 大 限 、 情 緒 的 に 子 に 一 体 化 し 、 自 分 の す べ て を 子 に 預 ける状態が継続し、自己を喪失したような感覚や役割拘束や自分自身への人生への諦めな どの否定的感情をもっていても、ある契機に基づき自分の人生や生活をもつことを肯定で き (中 川 , 2003)、 子 ど も と 自 己 の バ ラ ン ス を と ろ う と し (中 川 , 2005)、 自 分 自 身 を 犠 牲 に せ ず 、 子 ど も の ケ ア を 他 者 に 委 託 で き る よ う に な る こ と が 報 告 さ れ て い る (石 井 , 2013)。 さらに これらの母親は子どもの育児・ケア役割を含む多様な役割を果たすと同時に、就 労 し た い (上 村 ,1999, 上 村 ,2000)、自 分 の 時 間 を も ち た い (高 ,2016)な ど の 希 望 を も っ て い る 。 し か し 実 際 に は 、 就 労 上 の 困 難 (江 尻 , 2013)な ど 、 自 分 自 身 の 生 き が い を 諦 め ざ るを得ない現状に直面している。また先行研究においては、生きがいや趣味をもたない母 親 で は 介 護 負 担 感 が 高 い 場 合 、主 観 的 健 康 状 態 が 低 い こ と が 報 告 さ れ て い る (矢 次 ,2013)。 つまり、このような母親の子育て観および母親が置かれている現状、これらの子どもの子 育てが長期に渡ることも踏まえて考えると、子どもだけではなく、母親自身の生活も大切 にしながら子育てができるよう支援することは重要と考えられる。 その他、本研究の結果、親がしっかり病気や障がいがある子どもの子育てを担いつつ、 共に子育てしていきたいという子育て観も明らかになった。病気・障がいのある子どもは 健康状態が不安定であるため、計画外の受診・入院も多く、母親のみではなく、きょうだ いを含む家族へのさまざまな影響がある。そのため、子ども自身の健康状態を維持するた めの注意深い観察と対処が必要であるが、特に子どもが医療的ケアを必要な場合、母親は 長時間にわたってこれらの役割を担うため、母親の育児・ケア役割を分担し、母親を支え 14.
(16) る役割もまた必要不可欠である。それゆえに、父親やきょうだいを含む家族全体への支援 の検討が必要と考えられる。. 2.医療ニーズのある子どもの母親の子育て観に基づく支援 本 研 究 の 結 果 、抽 出 さ れ た 母 親 の 子 育 て 観 を 踏 ま え 、医 療 ニ ー ズ の あ る 子 ど も の 母 親 の 支援を考えると、病気や障がいがある子どもだけではなく自分自身も大切にし、共に子育 てしたいという子育て観をもつグループ1の母親に対しては、病気や障がいのある子ども の健やかな成長発達や健康状態の安定に関する支援はもちろん、家族全体、そして母親自 身の健康や就労等の自己実現等に配慮した支援を行っていく必要がある。また親がしっか り病気や障がいがある子どもの子育てを担いつつ、共に子育てしていきたいという子育て 観をもつグループ2の母親に対しては、このような母親の考えを尊重しつつ、家族の意思 決定を踏まえた子育て生活が送れるようサポート体制を整備するなどの支援が必要であろ う。また病気・障がいがある子育てを負担と感じつつも、しっかり責任をもって子育てし たいという子育て観をもつグループ3の母親に対しては、このような母親の考えを尊重し つつ、必要な時に必要なサポートが得られるよう見守り、適切なタイミングでケア・サー ビス提供等の支援を積極的に提供していく必要があると考えられる。 ま た 本 研 究 の 協 力 者 は 、医 療 ニ ー ズ の あ る 子 ど も の 母 親 お よ び こ れ ら の 子 ど も と 家 族 に 対して看護実践の経験のある看護職であったが、分析結果をみると、類型化された3つの グ ル ー プ に は 、こ れ ら の 基 本 属 性 に よ る 差 は 認 め ら れ な か っ た 。中 川 (2003)は 専 門 職 の 意 識 や 価 値 観 が 母 親 へ の 影 響 力 が 少 な か ら ず あ る こ と を 指 摘 し て お り 、こ の こ と か ら す る と 、 医療ニーズのある子どもの母親の支援を提供する際、専門職は自分の価値観を一方的に提 供するのではなく、母親自身がもつ子育て観を踏まえ、子どもと母親、家族が必要な支援 を提供していくことが求められていると考えられる。. 3.本研究の限界と今後の課題 本研究は医療ニーズのある子どもの母親の子育て観を明らかにするための予備的調査を、 Q 方法論を用いて実施した。本研究は予備的研究という位置づけであったため、本研究の 限界として、研究協力者の少なさが挙げられる。これらのことから、本研究の結果をその ままこれらの対象に一般化することは難しいと考えられる。 今後の課題として、これらの子どもの母親の子育て観をより明らかにするため、研究協 力者を増やした上で検証し、それに基づき、これらの母親の子育て観に基づく支援のあり 方を検討していく必要があるだろう。. 15.
(17) Ⅴ.結論 本研究では医療ニーズのある子どもの母親の子育て観を明らかにすることを目的とし て、Q 方法論を用いた予備的調査を行った。その結果、3つのグループに分類される医療 ニーズのある子どもの母親の子育て観が明らかになった。本研究の結果、医療ニーズのあ る子どもの母親の子育て観の特徴として、病気や障がいがある子どもだけではなく、自分 自 身 も 大 切 に し 、共 に 子 育 て す る こ と で 病 気 や 障 が い が あ る 子 ど も が 育 つ と い う 子 育 て 観 、 親がしっかり病気や障がいがある子どもの子育てを担いつつ、共に子育てしていきたいと いう子育て観、病気・障がいがある子育てを負担と感じつつも、しっかり責任をもって子 育てしたいという子育て観が明らかになった。これらの結果から、医療ニーズのある子ど もの母親への支援を提供する際、専門職は母親自身がもつ子育て観の特徴を踏まえ、子ど もと母親、家族に必要な支援を提供していくことが必要である。. 謝辞 本 研 究 に ご 協 力 い た だ き ま し た 障 が い 児 を 育 て る お 母 さ ま 方 、な ら び に こ れ ら の 子 ど も と家族にかかわる看護職のみなさまに心からお礼申し上げます。また本調査の実施および 分析にあたって、多大なるご協力をいただきました大阪大学大学院医学系研究科・准教授 吉澤剛先生にお礼申し上げます。 本 研 究 を 実 施 す る に あ た り 、 公 益 財 団 法 人 在 宅 医 療 助 成 勇 美 記 念 在 団 ・ 2016 年 度 ( 後 期)一般公募「在宅医療研究への助成」の助成を得た。心からお礼申し上げます。. 利益相反 すべての著者において、利益相反に関する開示事項は存在しない。. 引用文献 陳 東 , 森 恵 美 , 望 月 良 美 , 他 ( 2006): 乳 幼 児 を 持 つ 親 に 対 す る 子 育 て 観 尺 度 の 開 発 : 信 頼 性 ・ 妥 当 性 の 検 討 , 千 葉 看 護 学 会 会 誌 , 12(2), 76-82. 江 尻 桂 子 ,松 澤 明 美( 2013): 障 害 児 を 育 て る 家 族 に お け る 母 親 の 就 労 の 制 約 と 経 済 的 困 難 障 害 児 の 母 親 を 対 象 と し た 質 問 紙 調 査 よ り ,茨 城 キ リ ス ト 教 大 学 紀 要 . II, 社 会・自 然 科 学 , 47, 153-160. Ellingsen.I T., Thorsen A, A., Størksen I.( 2014): Revealing Children’ s Experiences and Emotions, Child Development Research, 1-9. 藤 本 幹 ,八 田 達 夫 ,鎌 倉 矩 子( 2001):重 症 心 身 障 害 児 を 育 て る 両 親 の 育 児 観 の 分 析 と 家 族 援 助 の あ り 方 に つ い て の 考 察 , 作 業 療 法 , 20(5), 445-456. 久 野 典 子 ,山 口 桂 子 ,森 田 チ ヱ 子( 2006):在 宅 で 重 症 心 身 障 害 児 を 養 育 す る 母 親 の 養 育 負. 16.
(18) 担 感 と そ れ に 影 響 を 与 え る 要 因 , 日 本 看 護 研 究 学 会 雑 誌 , 29(5), 59-69. 石 井 由 香 理 , 中 川 薫 ( 2013): 自 分 を 犠 牲 に し な い ケ ア. 重症心身障害児の母親の語りから. み る ケ ア 意 識 , 保 健 医 療 社 会 学 論 集 , 24(1), 11-20. 上 村 浩 子 ,高 橋 利 子 ,日 高 洋 子 ,他( 1999): 障 害 児 を 持 つ 母 親 の 子 育 て と 就 労 に 関 す る 意 識 調 査 , 横 浜 女 子 短 期 大 学 研 究 紀 要 , 14, 85-97. 上 村 浩 子 ,高 橋 利 子 ,日 高 洋 子 ,他( 2000): 障 害 児 を 持 つ 母 親 の 子 育 て と 就 労 に 関 す る 意 識 調 査 そ の 二 , 横 浜 女 子 短 期 大 学 研 究 紀 要 , 15, 41-52. 春 日 キ ス ヨ .( 1992): 障 害 児 問 題 か ら み た 家 族 福 祉 .101- 131. 野 々 山 久 也 編 : 家 族 福 祉 の 視 点―多様化するライフスタイルを生きる.ミネルヴァ書房. 厚 生 労 働 省( 2017) :医 療 的 ケ ア 児 、全 国 で 推 計 1.7 万 人 (厚 労 省 研 究 班 調 査 ),日 本 医 事 新 報 , 4836, 10. 松 澤 明 美 ,田 宮 菜 奈 子 ,柏 木 聖 代 ,他( 2013): 障 害 者 自 立 支 援 法 導 入 に よ る 在 宅 障 害 児 ・ 者 の 母 親 の 養 育 負 担 感 の 変 化 と そ の 関 連 要 因 , 小 児 保 健 研 究 , 72(1), 54-64. 内 藤 直 子 , 橋 本 有 理 子 , 杉 下 知 子 ( 1998): 0~ 3 歳 の 乳 幼 児 を 持 つ <専 業 母 親 >の 子 育 て 観 尺 度 開 発 に 関 す る 研 究 -CPS-M97 の 妥 当 性・信 頼 性 の 検 証 ,日 本 看 護 科 学 会 誌 ,18(3), 1-9. 中 川 薫( 2003):重 症 心 身 障 害 児 の 母 親 の「 母 親 意 識 」の 形 成 と 変 容 の プ ロ セ ス に 関 す る 研 究 社 会 的 相 互 作 用 が も た ら す 影 響 に 着 目 し て , 保 健 医 療 社 会 学 論 集 , 14(1), 1-12. 中 川 薫( 2005) :子 と 自 分 の バ ラ ン ス を と る. 重症心身障害児の母親の意識変容の契機とメカ. ニ ズ ム , 保 健 医 療 社 会 学 論 集 , 15(2), 94-103. 岡 本 伊 織( 2011):Q 分 類 法 に よ る 価 値 観 の 測 定 - い か に 捉 え づ ら い も の を 捉 え る か - ,赤 門 マ ネ ジ メ ン ト ・ レ ビ ュ ー , 10(12), 851-878. 小 沢 浩 ,加 藤 郁 子 ,尾 崎 裕 彦 ,他( 2007) :重 症 心 身 障 害 児 (者 ) の 家 族 介 護 の 現 状 と 課 題 , 脳 と 発 達 , 39(4), 279-282. 大 久 保 明 子 ,北 村 千 章 ,山 田 真 衣 ,他( 2016): 医 療 的 ケ ア が 必 要 な 在 宅 療 養 児 を 育 て る 母 親 が 体 験 し た 困 り ご と へ の 対 応 の 構 造 , 日 本 小 児 看 護 学 会 誌 , 25(1), 8-14. 大 月 恵 理 子 ,森 恵 美 ,柏 原 英 子 ,他( 2012): 家 族 育 成 期 の 日 本 人 の 子 育 て 観 に つ い て. 個. 人 特 性 に よ る 相 違 , 千 葉 看 護 学 会 会 誌 , 18(1), 19-25. 鈴 木 真 知 子( 2009) :在 宅 療 養 中 の 重 度 障 害 児 保 護 者 の 子 育 て 観 ,日 本 看 護 科 学 会 誌 ,29(1), 32-40. 高 真 喜( 2016) :在 宅 人 工 呼 吸 療 法 中 の 重 症 心 身 障 害 児 と 家 族 の 在 宅 生 活 の 現 状 と 支 援 の 検 討 , 日 本 小 児 看 護 学 会 誌 , 25(1), 15-21. 山 城 久 弥 ( 2016): 乳 幼 児 を 持 つ 親 の 子 育 て 観 尺 度 開 発 : 保 育 者 が 子 育 て 支 援 を 行 う 視 点 か ら , 厚 生 の 指 標 , 63(3), 8-13.. 17.
(19) 矢 次 佐 和 ,鈴 鴨 よ し み ,出 江 紳 一( 2013): 重 症 心 身 障 害 児 ・ 者 を 介 護 す る 母 親 の 生 産 的 社 会 活 動 が 介 護 負 担 感 と 主 観 的 健 康 状 態 と の 関 連 に 与 え る 影 響 ,日 本 公 衆 衛 生 雑 誌 ,60(7), 387-395. 吉 澤 剛 ( 2017) Q マ ッ ピ ン グ . 199-208 . 本 堂 毅 , 平 田 光 司 , 尾 内 隆 之 , 中 島 貴 子 編 : 科 学の不定性と社会-現代の科学リテラシー.信山社. Yoshizawa G., Iwase M., Okumoto M., et,al.( 2016): Q workshop: An application of Q methodology for visualizing, deliberating and learning contrasting perspectives , International Journal of Environmental and Science Education, 11(13), 6277-6302. 渡 辺 弥 生 , 石 井 睦 子 ( 2005): 母 親 の 育 児 不 安 に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 に つ い て , 法 政 大 学 文 学 部 紀 要 , 51, 35-46. Watts S. , Stenner P. ( 2012 ): Doing Q Methodological Research : Theor y, Method and Interpretation . Sage.. 18.
(20)
関連したドキュメント
教育・保育における合理的配慮
婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける 環境をつくる」、「多様化する子育て家庭の
1-1 睡眠習慣データの基礎集計 ……… p.4-p.9 1-2 学習習慣データの基礎集計 ……… p.10-p.12 1-3 デジタル機器の活用習慣データの基礎集計………
が作成したものである。ICDが病気や外傷を詳しく分類するものであるのに対し、ICFはそうした病 気等 の 状 態 に あ る人 の精 神機 能や 運動 機能 、歩 行や 家事 等の
母子保健・子育て支援の領域では現在、親子が生涯
子どもが、例えば、あるものを作りたい、という願いを形成し実現しようとする。子どもは、そ
在宅の病児や 自宅など病院・療育施設以 通年 病児や障 在宅の病児や 障害児に遊び 外で療養している病児や障 (月2回程度) 害児の自
ユース :児童養護施設や里親家庭 で育った若者たちの国を超えた交 流と協働のためのプログラム ケアギバー: 里親や施設スタッフ