エンドオブライフケア提供者を対象とした対人援助研修の教育効果に関する研究
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(2) 1.課題名 エンドオブライフケア提供者を対象とした対⼈援助研修の教育効果に関する研究 2.背景 ⾝体的な痛みに限らず病による理不尽な苦しみにより、末期がん等の療養者は⾃⼰の存在価値の保 持、家族等周囲の⼈々への負い⽬を感じる(吉⽥ 2007)など、⾃尊⼼や⾃⼰肯定感の喪失に苦しみな がら⽣活をする。患者の終末段階に関わる医療・介護従事者(以下:ケア提供者)は、このような療養 者の社会⽂化的、⼼理的な背景を含む苦しみに対しては、どのように関わるべきか常に現場で⼿探り の状態を続け、いずれおとずれる死の苦しみを持った療養者との「対話」そのものに困難を感じてい る。緩和ケアに関わる看護師への調査では、看護師が受ける困難感とそれに相関する学習ニーズとし て、コミュニケーションを中⼼とした対⼈援助を上位に挙げている(⻄脇 2011) 。また介護⽼⼈保健 施設や特別養護⽼⼈ホーム等の介護職員では、 「終末期のコミュニケーション」の教育ニーズが⾼かっ た(平川 2013) 。また介護職員は療養者を看取りまで⽀え続けたいと思いながらも、消極的な姿勢に なる理由の1つとして看取りに対する⼼理的負担が強いことを挙げおり、看取りを⽬前にしたケア提 供者の対話そのものやあり⽅に対する準備性が不⼗分である(佐々⽊ 2016)ことから、最期までその ⼈らしい⼈⽣や⽣活を送ることを⽀えるケア(以下:エンドオブライフケア)が必要な療養者と対話が できるケア提供者の教育や⼈材育成のアプローチは、⾮常に重要である。 これまで各関連学会、職域、任意団体等の様々なレベルでケア提供者対象の教育研修プログラムが 実施されている。その内容は、参加者のケアに関する専⾨知識のブラッシュアップ、法的解説、臨床 倫理、職種間連携やコミュニケーションなど、講義や演習を織り交ぜるなどして実施し、参加したケ ア提供者への研修前後のアンケートから、ケア態度向上等の効果を⽰している。しかし研修会の多く は、各領域の熟練者や教育に熱⼼な⼀部の⼈々による知識・経験の伝達が中⼼で臨床現場における療 養者との関わり⽅やケア提供者のふるまいについては検討されてこなかった。また掲げた⽬標(アウ トカム)の達成に必要とされるケア提供者の能⼒(コンピテンシー) 、およびそのコンピテンシーを獲 得するための教育⽅略が不明瞭な場合が多く、研修後のパフォーマンスや到達度が適切な⽅法で評価 されていない。これは学習⽬標分類(Taxonomy:Bloom 1956, Revised Bloom's Taxonomy :Anderson 2000)と教育評価との関係からも⾒直す必要がある。ケア提供者が、苦しみに寄り添って<対話がで きる>ことをアウトカムとした場合、その評価は、対話に必要な知識習得やケア態度尺度のアンケー トによって確認するだけではなく、実際に対話の態度として表出する現象の変化も確認する必要があ る。その変化を計る妥当な評価⽅法の1つとして研修前後の発話の計量的分析がある。また実際にケ アを受けた療養者⾃⾝や家族等の当事者から、研修前後でケア提供者との対話を通して感じた変化に ついて評価してもらうことも本質的と⾔える。研修の⽬標とすべきアウトカムに対し、適切な教育⽅ 略や評価⽅法を選択することは、教育プログラムの質や効果を担保する上でも不可⽋である。 多様な苦しみを持つ在宅療養者に寄り添って対話することは、エンドオブライフケアの根幹であり、 教育・研修を通して苦しみに寄り添う意味を理解し、実際に対話ができるケア提供者を育成すること の緊急性は⾮常に⾼い。年々在宅で看取られる末期がんの療養者が増加する傾向(平成 27 年度⼈⼝動. 1.
(3) 態統計上巻 死亡の場所別にみた主な死因の性・年次別死亡数及び百分率)において、対話ができるケ ア提供者の教育・育成は、ケアの質向上の視点からも喫緊の課題である。 3.⽬的及び意義 本研究の⽬的は、エンドオブライフケアの教育プログラムを受講するケア提供者の受講前後における コミュニケーション(臨床現場の発話)の変化を、ケア提供者本⼈、患者・家族、および同施設職員によ る多⾓的評価を組み合わせて⽐較し、エンドオブライフケアに関わる対話能⼒の向上がみられるかを検 証することを⽬的とする。 結果及び考察から、既存の教育プログラムの課題を抽出し、汎⽤性、発展性のある有効なプログラ ムと運⽤⽅略を⽰す基礎データとなることから、エビデンスに基づく教育実施に結びつく意義がある と考える。 4.研究の科学的合理性 研修効果のような教育評価研究は、医療の場では決して多くない。特に臨床現場に出ている専⾨職 種においては、研修前後のアンケート調査によって各⾃の⾃⼰評価の変化をまとめるものが多く研修 効果を客観的にみたものではない。本研究では、研修前後の前向き観察研究のデザインにおいて、パ フォーマンスを直接測定している点で科学的合理性が⾼いと考えられる。 研修内容が援助的コミュニケーションであるため、主としてICレコーダーを⽤いて実臨床の場⾯ を記録し、その⽐較を質的データから量的データへ変換した分析を⾏った。 また本研究では、太⽥・千葉を中⼼とした量的調査(仙台、横須賀、⼤阪の 3 地点における研修前、 研修直後、研修 6 ヶ⽉後の 3 時点のターミナルケア態度の変化)を追加、補完的に別途先⾏してすす めたことで、最終的に質と量の双⽅の視点から援助的コミュニケーションの教育効果を推定できる。 5.実施体制 と役割 1)研究代表者(⽒名・所属・職位) :千葉宏毅・北⾥⼤学医学部 医学教育研究部⾨・助教 2)研究協⼒者(⽒名・所属・職位)※五⼗⾳順 :太⽥⼀樹(東京家政⼤学 家政学部栄養学科・教授)…量的研究担当(同時並⾏) :尾形倫明(東北医科薬科⼤学 医療管理学分野・助教)…質的データ分析の協同 :桵澤邦男(東北⼤学⼤学院医学系研究科 医療管理学分野・助教)…量的研究の協同 :森⾕就慶(東北⽂化学園⼤学 医療福祉学部・教授)…精神保健の視点からの考察 :守屋利佳(北⾥⼤学医学部 医学教育研究部⾨・准教授)…教育効果検証・考察の協同 :三澤仁平(⽇本⼤学医学部 社会医学系医療管理学分野・助教)量的・質的研究混合の協同. 2.
(4) 3)事務局は、北⾥⼤学医学部医学教育研究部⾨(医学部 M2 号館 4 階 403)に置く。調査対象者、 及び調査協⼒者の問合せ窓⼝として当該部⾨を書⾯で公開し、電話番号 042-778-8685、FAX 042-778-9228 を設けている。 4)対象者が研修を受ける状況 :⼀般社団法⼈エンドオブライフ・ケア協会(以下、EoL協会)が全国で実施するエンドオブラ イフ・ケア援助者養成基礎講座(以下、養成講座)である。開催地は札幌、仙台、富⼭、東京、 横浜、名古屋、⼤阪、福岡等である。 研修は同⼀内容であり、開催地によって異なることはない。. 6.⽅法 6−1.研究デザイン 混合研究法による変換型混合デザイン 先⾏して⾏った前向き追跡アンケート調査(以下:先⾏調査)を実施( (図1参照) )の後、ケア 提供者のパフォーマンス(質的データ)を、他者評価(量的データ)と組み合わせて分析する調 査(以下:主調査)を⾏った(図2参照) 。この際、対象者本⼈、患者、家族、対象者と同じ施設 の職員から受講前後のアンケート⾏い、多⾓的視点から効果を検討した(360 度評価) 。 6−2.研究期間 倫理委員会承認 2016 年 11 ⽉ 6 ⽇〜2019 年 12 ⽉ 31 ⽇ 6−3.対象者の選定⽅法 1)対象者の条件 ①EoL協会(理事:⼩澤⽵俊先⽣)が主催する養成講座に⾃由意志で受講した者。 ②医療・介護の免許をもち、⽇常的に実務に従事していること。想定は看護師、ソーシャルワ ーカー、ケアマネジャー、医師、介護員、薬剤師、理学療法⼠、作業療法⼠とするが、職種 は問わない。 ③エンドオブライフケアの必要な患者のケアに現時点で実務に関わっていること。 ④対象者の監督者によって了解が得られること。 ⑤対象者がケアにあたる患者・家族から評価アンケートの協⼒を得られること。また対象者が ケアをしている最中の発話録⾳に承諾が得られること。 ※評価の協⼒をする患者は、癌によるエンドオブライフケアが必要なもので、かつ⾃⾝で病 状を理解していること、⾃⾝で同意書やアンケートの回答が可能な段階であるものとする。 ⑥対象者が所属する他のスタッフからの評価アンケートを得られること。. 3.
(5) 2)対象者選定の⼿順 EoL協会が主催する養成講座に⾃由意志で受講申し込みを⾏ったすべての医療・介護専⾨職に 対し、主催側から研究の概要や対象者条件などメーリングリスト等を⽤いて配信してもらい、協⼒ を⾃ら名乗り出た者へ研究代表者⾃らが説明を⾏った。選定の際、対象者へ1)に⽰した基準に合 致するかを個別の確認を⾏い、条件に合致する場合のみとした。. 7.データの管理 7−1.データ収集 先⾏調査 1)仙台、横須賀、⼤阪の 3 か所で実施した養成講座を受講する直前に、ケア提供者に対しター ミナルケア態度に関する⾃⼰評価アンケート(プレテスト)を実施した。 2)2 ⽇間の当該講座受講した直後、1)と同様のターミナルケア態度に関する⾃⼰評価アンケー トを実施した(ポストテスト1) 。この際、受講 6 ヶ⽉後の追跡郵送調査に協⼒が得られるか等 の同意を得た。 3)当該講座受講の 6 ヶ⽉後に、指定された住所に1)と同様のターミナルケア態度に関する⾃ ⼰評価アンケートを郵送し、回答後に返信してもらった(ポストテスト2) 。 主調査 1)対象者の同意:当該研修会に⾃由意志で申し込んだ参加者のうち、協⼒に名乗り出た専⾨ 職(以下:対象者)に対し、直接説明を⾏い書⾯にて同意を得る。 ・対象者:当該研修を受講するケア提供者とする。 ・評価協⼒者:対象者がケアに当たっている患者および家族、また対象者と同施設に所属する専 ⾨職(普段の実務の様⼦が分かる職員)とする。 2)評価協⼒者の同意:対象者の評価を担う患者・家族、および同施設の職員に対して、対象ケ ア提供者以外の窓⼝担当者から説明してもらい、書⾯にて同意を得る。 3)録⾳の開始:研修開始⽇(対象ケア提供者によって異なる)の 3 週間⽉前からケア提供場⾯ の録⾳を開始し、研修直前まで継続する(鎌倉⼥⼦⼤学の倫理申請の中で表現するインタビ ューとは、この⾃然会話の録⾳を意味する) 。 4)研修前:研修⽇前⽇までに、対象ケア提供者は⾃⾝の⾃⼰評価アンケート(プレテスト)を回 答し、評価協⼒者は対象ケア提供者の援助的コミュニケーションについて評価ア ンケート(プレ調査)を回答し、研究者に直接郵送する。 5)研修直後:対象ケア提供者は、研修会(2 ⽇間)に参加する。 6)対象ケア提供者は、研修終了直後の⾃⼰評価アンケート(ポストテスト 1)を記⼊し研究者 へ直接郵送する。 7)研修後:対象ケア提供者は研修後 2 週間、録⾳を継続しその後レコーダーを研究代表者に 郵送する。. 4.
(6) 8)2 週間経過後、対象ケア提供者は⾃⼰評価アンケート(ポストテスト)を回答し、評価協⼒者 は対象ケア提供者の評価アンケート(ポスト調査)を回答し研究者あてに直接郵 送する。 ※先⾏調査、主調査とも、対象者の⾃⼰評価アンケートには、ケア提供者のケア態度を測定す るターミナルケア態度尺度⽇本語版[FATCOD ‒Form B-J ]を⽤いた。 7−2.データ管理⽅法 各同意書、各評価者のアンケート回答⽤紙は、郵送によって回収した後、原表は鍵付きキャビネ ットに⼊れて保管する。主調査で⾏ったICレコーダーを⽤いた⾳声データは、追跡可能な郵送⽅ 法にて回収することで紛失のアクシデントを回避する⼯夫をとった。 7−3.研究終了後のデータの処分 今後、論⽂化と学会発表等の全てが終了した際に、速やかに処分する。アンケート⽤紙等 はシュレッダーにて処分し、録⾳データは、電磁的に復元できないよう消去するものとする。. 8.データ分析 先⾏調査 FATCOD ‒Form B-J の得点について、統計的⼿法で解析した。 1)属性ごとの解析 2)3 時点の⽐較 3)3 地点の⽐較 主調査 質的データ(実臨床場⾯の専⾨職の発話)を研修前後に収集したものをテキスト化した。 1)当該協会の到達⽬標をもとにコーディングルールを作成し、テキストデータのフレーズ(患 者とのやり取りのターンごと)に、質的にコードを付与していった。このコーディングは複数 の研究者で実施し、⼀致と妥当性を図った。 2)アンケートによる属性データ、尺度データ、患者・家族、および同施設職員による評価を変数 として投⼊した。 3)計量テキスト分析を実施するコンピュータソフト(KH-Coder)を⽤いて、研修前後の発話に ついて多重対応分析を⽤いて、前後の違いを可視化した。また、対象ケア提供者⾃⾝が回答し たターミナルケア態度尺度⽇本語版の点数と発話の前後関係について、カイ⼆乗検定等を⽤い て差を分析した。 ※本分析の基本単位(nに相当)は、⼈の数ではなく研修前後のコミュニケーション回数で ある。また患者・家族の話は録⾳に含まれるが、書き起こさず可視化しなかった。. 5.
(7) 9.副作⽤・有害事象 9−1.本研究の有害事象の可能性 本研究は、健康な医療介護従事者を対象としており、そのため診療に関連する⼀般的な有害事 象は発⽣しにくい。しかし、考えうる有害事象としては、対象者および、評価協⼒者の作業の物理 的負担(アンケート記⼊、録⾳など)がある。 ただし本研究では、対象ケア提供者への説明・同意の際に、患者・家族および同施設職員の協⼒ を得て評価アンケートを回答してもらうことを前提としているため、その前提が実現可能な場合 に限って調査を実施するため、上記有害事象ほとんど発⽣しないものと考えられる。 9−2.有害事象発⽣時の対応 9−1に該当する有害事象が仮に発⽣した際には、研究代表が説明に赴き説明することとした。 必要な場合はヒアリングし、状況の把握と同時に双⽅の理解を図り事態の鎮静化に努めることとした。. 10.調査の中⽌基準 1)対象であるケア提供者⾃⾝、およびケア提供者の評価を実施する患者・家族、および同施 設職員から調査協⼒同意の撤回が合った場合は、その理由を確認するとともに当該データ収集は 中⽌とすることとした。 2)対象であるケア提供者が研修会に参加できなかった場合、その後の当該データ収集は中⽌ した。 3)対象であるケア提供者、評価を実施する患者家族もしくは同施設職員の途中の死亡、転居、 退職など、データ収集の継続が困難な状況が発⽣した場合、その後当該症例における調査は 中⽌することとした。. 11.倫理的配慮、インフォームド・コンセントと個⼈情報保護 11−1.倫理委員会による承認 本調査は、鎌倉⼥⼦⼤学倫理委員会(太⽥の所属先、ただし 2018 年 4 ⽉より東京家政⼤学に 着任)より 2016 年 11 ⽉ 8 ⽇に承認を得た。また千葉が所属する北⾥⼤学医学部観察・疫学研 究審査にも審査を諮ったところ、鎌倉⼥⼦⼤学での倫理審査承認済みを有効とするため審査対象 外となった。 11−2.ケア提供者、患者・主介護者の同意 本研究において、対象者は健康な⼈であり、医療介護従事者へ対する教育効果の研究である。 その旨を直接⾯談によって説明し、書⾯によって同意を得ている。患者と家族、対象者と同施設の 職員は対象者の評価に関わる協⼒者であり、その趣旨についても⾯談し書⾯によって同意を得た。. 6.
(8) 同意は⾃由意志によるもので、説明後協⼒に同意しない場合であっても、その後何ら不都合がない ことを説明した。また同意後、調査中であっても撤回ができることを説明した。 11−3.個⼈情報の保護 質的データ(診療中の発話データ)の収集となるため、調査説明の時点では、対象者個⼈の⽒名 や所属、職種、当該研修の参加⽇の情報収集は必須となる。また対象者がケアにあたる患者・家族、 同施設の職員が記述する評価表(アンケート⽤紙)には、⽒名、年齢を含む個⼈情報が含まれる。し たがって対象者、評価協⼒者の個⼈情報部分は紙ファイルで管理し、鍵付きキャビネットに施錠し て管理を⾏った。分析は個⼈が特定されないように発話のテキスト化は、対象者の発語のみ⽂字起 こしを実施し、患者家族の発語はテキスト化しなかった。テキスト化はプライバシーマークを取得 している業者を選定し、個⼈情報保護を遵守したテープ起こしを⾏うことを明確にして契約を交わ した。収集した⾳声データにはパスワードロックをかけ、保存するUSBにもロックをかけ、ファ イルはコピーをせずに1つのデバイスとした。USBは事務局の鍵付きキャビネットに保存した。 ⾳声データは⽂字起こしが終了し分析が終了した時点で破棄するものとした。. 11.対象者に⽣じる予測されるリスクと対処 対象者に⽣じるリスクは極めて少ないが、発話録⾳時にピンマイクを襟元につけ、録⾳ボタンの オン・オフを操作するため、通常作業に負担をかける場合がある。しかし患者宅への訪問直前(⽞ 関先) 、病室への⼊室前に録⾳を開始し退室時に録⾳を終了することで、ケア提供時に操作すること がないようにしている。. 12.研究機関の⻑への報告 年に 1 回の研究経過の報告、および学会発表もしくは論⽂掲載時に報告することとした。. 13.研究資⾦源 研究の⼀切は、在宅医療助成勇美記念財団の研究助成⾦を⽤いた。. 14.情報公開の⽅法 研究成果は、学会発表および論⽂による公開を基本とする。論⽂は Palliative & supportive care、 Patient education and counselling 等を検討中である。学会発表は The Association for Medical Education in Europe(AMEE) 、⽇本医学教育学会、⽇本在宅医療連合学会を検討している。またこれ らの成果については、本学所属部⾨のホームページ、申請者と研究協⼒者が任意で構成した「⽣と死. 7.
(9) のヘルスケア研究会(Well Study:http://haphap.wixsite.com/wellstudy) 」のホームページでも公開 する予定である。. 15.対象者及び関係者からの相談と対応 対象者やその施設の窓⼝となる職員からの問い合わせは、事務局(北⾥⼤学医学部医学教育研究 部⾨)とし、研究代表者および部⾨秘書が常駐するため電話を受けた。また研究代表者のメールア ドレスも調査開始前の説明時に⽰していたため、連絡を取る複数の⼿段を確保したことで混乱はな かった。. 16.対象者の経済的負担または謝礼等 対象者および、評価協⼒者への謝⾦はない。アンケート⽤紙の発送などは事前に配布する返信 ⽤封筒を使⽤してもらった。調査協⼒にあたって特段の経済的負担は発⽣しなかった。. 17.⽂献 (1)厚⽣労働省ホームページ「地域包括ケアシステム」 (2)Fearon K., Strasser F., Anker SD., et al. Definition and classification of cancer cachexia: an international consensus.Lancet Oncol. 2011;12(5):489-95. (3) 「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」 (平成 20 年 4 ⽉ 1 ⽇付健発第 0401016 号。厚⽣労働省健康局⻑通知) (4) 「がん医療に携わる看護研修」 (看護師に対する緩和ケア教育テキスト改訂版 平成 26 年 9 ⽉ 5 ⽇発⾏ 公益社団法⼈ ⽇本看護協会) (5)⽇本緩和医療学会 緩和ケア普及啓発事業ホームページ「⽇本緩和医療学会教育研修委員会 内 ELNEC-J 作業部会」 (6)Nahyeni Bassah N., Seymour J., et al. A modified systematic review of research evidence about education for pre-registration nurses in palliative care. BMC Palliative Care 2014, 13:56 (7)Chung HO., Oczkowski AJW., Hanvey L., et al. Educational interventions to train healthcare professionals in end-of-life communication: a systemic review and metaanalysis. BMC Medical Education 2016, 16:131 (8)中井 裕⼦, 宮下 光令, 笹原 朋代, 他、Frommelt のターミナルケア態度尺度⽇本語版(FATCOD B J)の因⼦構造と信頼性の検討. がん看護 2006;11(6): 723-729 (9)清⽔佐智⼦、看護学⽣向け緩和ケアの講義による終末期患者に対する態度育成の効果 FATCOD FormB-J を⽤いた講義前後の⽐較 - Palliatice Care Research 2015; 10(1):306-11. 8.
(10) 9.
(11) 18.結果(先⾏調査) 6 ヶ⽉の追跡調査:アンケート 192 名を対象に郵送し、全てのデータが揃ったものが 60 名分であった(回収率 31.3%) 。 1)得点の 3 時点⽐較 受講前(before) 、受講直後(after) 、受講 6 ヶ⽉後(6m-later)における受講者(=調査対象者) の FADCOD:ターミナルケア態度尺度の得点は、Friedman 検定の結果から受講前から受講直に 5.5 ポイント有意に上昇した(p=0.01) 。また受講前と 6 ヶ⽉後で 4 ポイント得点が上昇したが有意差 はなかった。受講直後と 6 ヶ⽉後では 1.5 ポイント統計的に有意(p=0.046)な減少が認められた。. FADCOD 130 123.5. 125 120. 122. 118. 115 110 105 100 before. after. 6m-later. 図3 Friedman chi-squared = 8.1126, df = 2, p-value = 0.01731 p-value. 6m-later. after. after. 0.046. -. before. 0.219. 0.001. 以上から、3 時点では受講によってケア提供者のターミナルケア態度は優位に上昇し、エンドオブ ライフケアの必要な患者への対応に関する⾃⼰効⼒感が上昇していることがわかった。ただし 6 ヶ⽉ 後は受講直後よりも効果が減少し、受講前と近似した状態に戻っていることがわかった。. 10.
(12) 2)年齢⽐較(n=59) 受講者の年齢は平均が 46.2 歳(sd=10.7) 、中央値が 48 歳であったため、48 歳未満、48 歳以上 の⼆群に分けて Mann‒Whitney U test で検討した(図4) 。その結果、48 歳未満では 123、48 歳 以上では 121 で年齢の⾼低による FADCOD の得点の有意差は認められなかった(p=0.802) 。. 図4 AGE. 0 = 48 歳未満(n=29) 、 1 = 48 歳以上 (n=30). 11.
(13) 3)実務経験年齢による⽐較(n=58) 実務者の実務経験年数は、平均 15.3 年(sd=10.2)中央値で 13 年であった。13 年未満、13 年以 上の 2 群で Mann‒Whitney U test で⽐較した結果(図 5) 、FADCOD の得点は 13 年未満が 121、 13 年以上が 123 で統計的有意差は認められなかった(p=0.132). 図5 Idr 0=13 年未満. 1=13 年以上. 12.
(14) 4)教育実践による⽐較(n=60) 研修後6か⽉間のうちに、 ⾃施設で職員や新⼈の教育に携わったかどうかについて、 携わった32、 携わらなかった 28 であった。携わった⽅を教育実施群、携わらなかった群のほうを教育未実施群 として、FADCOD の点数を Mann‒Whitney U test で⽐較した(図 6) 。その結果、得点は教育実施 群が 124.5、教育未実施群が 119.0 で、教育実施群の FODCOD 得点が有意に⾼いことが認められ た(p=0.019) 。. 図6 R6M.□.c. Educate. =受講後 6 ヶ⽉間に⾃施等で教育実施あり. Non-educate =受講後 6 ヶ⽉間に⾃施等で教育実施なし. 13.
(15) 5)看取り経験⼈数による⽐較(n=58) 研修後 6 ヶ⽉間のうちの看取り⼈数は、平均 4.5(sd=5.8) 、中央値が 3 であった。看取り⼈数を 3 ⼈未満と 3 ⼈以上の 2 群について Mann‒Whitney U test で⽐較した(図 7)。その結果、看取り経 験が 3 ⼈未満が 119、3 ⼈以上が 124 で、研修後 6 か⽉間の看取り経験が多い多いほうが、FADCOD の点数が有意に⾼い(p=0.05)ことが分かった。. 図7 X6M.□.d_R. 0 = 研修後 6 ヶ⽉間の看取り経験⼈数. 3 ⼈未満. 1 = 研修後 6 ヶ⽉間の看取り経験⼈数. 3 ⼈以上. 14.
(16) 6)地域別による⽐較(n=58) 研修実施場所における地域差について検討した。仙台、横須賀、⼤阪の 3 時点で研修 6 ヶ⽉後の FADCOD の得点を Kruskal-Wallis rank sum test で⽐較した結果(図 8) 、仙台は 123.0、横須賀は 122.5、⼤阪は 113.0 で、p=0.22 で統計的な有意差は認められなかった。Holm の多重検定によっ て 2 地域ずつ⽐較した結果を⾒ても、有意差は認められなかった。. 図8. 15.
(17) 19.結果(主調査) 1)概要 札幌、仙台、東京、横浜、横須賀、富⼭、名古屋、⼤阪、福岡で開催されたEoL協会の養成講座に 申し込みのあった段階で、研究協⼒可能な者を⾃由意思のもとに募った。その結果、計 23 ⼈が協⼒を 表明した。23 ⼈のうち、1 ⼈で複数の患者を受け持つこともあるため、患者数としては 29 名分をエ ントリーした。最終的な実対象者数と、実患者数(症例数)は以下となった(表 1) 。 主調査では、対象1が養成講座を受講する受講者、対象2が対象1がケアを受け持っているがん患 者とその家族、対象3が対象1と同⼀施設の職員とした。調査の関連図(図 9) 、調査の流れ(図 10) を⽰す。1 症例分のデータは、①対象者 1.2.3 のプレテスト、②患者、家族のプレテスト、③施設職員 のプレテスト、④対象者の研修前の発話(2〜3回訪問分) 、⑤対象者の研修直後テスト、⑤対象者の ポストテスト、⑥患者、家族のポストテスト、⑦施設職員のポストテスト、⑧対象者の研修後の発話 (2〜3回訪問分)であり、①〜⑧の複合的なデータセットが揃ったものを 1 症例分となっている。. エントリー. エントリー. 対象者数. 患者・家族数. 対象1 仙台. 実対象者. 実患者数. 対象 2. 対象 1. 対象 2. 3. 6. 3. 3. 横浜. 1. 2. 1. 1. 富⼭. 9. 9. 6. 6. 名古屋. 1. 3. 0. 0. ⼤阪. 7. 7. 3. 3. 福岡. 2. 2. 1. 1. 計. 23. 29. 14. 14. 開催地域. 表1 患者データ 29 名のエントリーに対し、14 症例を収集できた(回収率 48.3%) 。調査開始後、体調不 良により対象1が養成講座に参加できなくなったケース、調査中に対象2がお亡くなりになるケース が複数あったため、脱落データとして扱い、14 症例には含めていない。本報告では、今後の論⽂化に よる公表を踏まえ、図表は 3 症例に絞った報告を⾏うこととする。. 16.
(18) 図9. 図 10(⼤阪開催の例). 17.
(19) 2)対象1(受講者)の研修前後の発話変化 発話データは 14 症例で、64 回の⾯談、2273 分であった。1 症例あたりの⾯談回数は研修前後で平 均は 4.6 回、163 分であった。 職種は医師 2 名、看護師 8 名、管理栄養⼠ 1 名、ケアマネジャー1 名、メディカルソーシャルワー カー2 名であった。 類似した意味を持つ複数の出現語について以下のコーディングによって、任意の 10 項⽬の出現傾向 を探索的に解析した。1)〜3)は明るい Positive な感情を⽰す⽤語、4)〜6)は Negative な感情を⽰す ⽤語である。7)は⾷事、睡眠、排泄に関する⽣活に関わる⽤語、8)は患者の⽣活に関わる⼈物に関す る⽤語、9)は相⼿に⾯倒や迷惑をかけることに関連する⽤語、10)は患者の最期や死に関する⽤語で ある。記号の|は or の意味をもつ。研修前後(before、after)の出現数を下記に⽰す。 1) Comfort 楽 | 気持ちいい | 落ち着く | 安らぐ | 優しい 2) Not-Anxiety 安⼼ | near(不安-ない) | near(⼼配-ない) | near(寂しい-ない) 3) Well 楽しい | たのしい | 嬉しい | うれしい | 楽しい | 楽しみ | 喜び 4) Suffering 痛い | 痛む | ⾟い | しんどい | 苦しい | だるい | 痺れ | 痺れる | 悪い | 傷む | ひどい | む かむか 5) Anxiety near(安⼼-ない) | 不安 | ⼼配 | 寂しい 6) Gloomy near(楽しい-ない) | near(たのしい-ない) | near(嬉しい-ない) | near(うれしい-ない) | near(楽しい -ない) | near(楽しみ-ない) | near(喜び-ない) 7) Living Act ⾷欲 | ⾷べる | たべる | ⽔分 | ⽔ | 飲む | 飲める | 摂る | 睡眠 | 寝る | 眠る | トイレ | おしっこ | うんち | 尿 | 便 8) Persons お⺟さん | 妻 | 奥さん | おばあちゃん | おばあさん | お⽗さん | 夫 | 旦那 | おじいちゃん | おじいさん | お⼦さん | ⼦ども | 息⼦ | 娘 | 孫 | 曾孫 | 叔⽗ | 伯⽗ | 叔⺟ | 伯⺟ 9) Nuisance 迷惑 | ⾯倒 10) Ending 死 | 死ぬ | 亡くなる | 逝く | 天国 | あの世 | ⽣きる | 最期. 18.
(20) 10 項⽬の出現回数は以下の通り、7)Living Act、次いで 4)Suffering、8)Persons の順に出現が多か った(表2) 。次に研修前後[Before、After]における 10 項⽬の出現頻度とその⽐較(表3)につい て⽰した。. コード名. 頻度. 1)Comfort. % 11. 0.95%. 2)Not-Anxiety. 6. 0.52%. 3)Well. 8. 0.69%. 4)Suffering. 49. 4.24%. 5)Anxiety. 10. 0.86%. 6)Gloomy. 3. 0.26%. 7)Living Act. 77. 6.66%. 8)Persons. 33. 2.85%. 9)Nuisance. 2. 0.17%. 10)Ending. 4. 0.35%. 974. 84.18%. #コード無し (⽂書数). 1157 表2(3 症例). Code. Frequency. before. (%). Frequency. 1)Comfort. (%). after Frequency. (%). 11. (0.95). 8 (1.33). 3 (0.54). n.s. 2)Not-Anxiety. 6. (0.52). 2 (0.33). 4 (0.72). n.s. 3)Well. 8. (0.69). 3 (0.50). 5 (0.90). n.s. 4)Suffering. 49. (4.24). 22. (3.65). 27. (4.86). n.s. 5)Anxiety. 10. (0.86). 1. (0.17). 9. (1.62). *. 6)Gloomy. 3. (0.26). 7)Living Act. 77. (6.66). 33. (5.48). 44. (7.93). n.s. 8)Persons. 33. (2.85). 9. (1.50). 24. (4.32). **. 9)Nuisance. 2. (0.17). 0. (0.00). 2. (0.36). n.s. 10)Ending. 4. (0.35). 2. (0.33). 2. (0.36). n.s. Total. 203. (17.54). #No Code. 954. (82.46). Number of sentence. 1 (0.17). 1157. 81 (13.46). 122 (21.98). 521 (86.54). 433 (78.02). 602. 555. 表 3(3 症例). 19. 2 (0.36). n.s.
(21) カイ⼆乗検定の結果を⽰した表 3 から、5)Anxiety に関する⽤語、および 8)Persons に関わる⽤語 が研修前と⽐べて研修後に有意に多く出現していることが分かった。また研修前後の出現⽤語を俯瞰 的に把握可能な対応分析(Corresponding Analysis)の結果から、研修前は⽣活動作、苦しさ・⾟さ に関する⽤語が⽐較的多めに出現していた。⼀⽅で研修後は不安や安⼼、他者との関係に関する⽤語 が特徴的に⽰されている。. 図 11(3 症例) ・発話の評価基準 養成講座の到達⽬標では、エンドオブライフケアの患者(家族)への援助的コミュニケーションと して、 「反復、問いかけ、沈黙」を⽤いながら患者家族が持つ苦しさ⾟さを受け⽌め、⽀援することを 表出すべき重要な⼿法と位置付けている。また左記の3つの表出においては、3 つの⽀え「関係性の存 在、時間的な存在、⾃律的な存在」と4つの苦しみ「⾝体的な苦しみ、精神的な苦しみ、社会的な苦し み、スピリチュアルな苦しみ」に伴う必要がある。また注意すべき表出としては「会話のかぶり、話題 のすり替え、話題の先読み」を挙げている。このような発語だけで解釈が難しく、⽂脈上のニュアン スも含めて判断すべき点に焦点をあてて分析を⾏った。そのため以下のルールでコーディングするこ ととした。. 20.
(22) 6 Output 3 Skills (研修によって獲得すべき対⼈援助の表出) +)反復/repetition. …原則として患者・家族が⾔った単語を含む、軽微な⾔い換えも含む。. +)問いかけ/asking. …Open-Q、Closed-Q に関わらず(内容は⽂脈判断). +)沈黙/stillness. …沈黙後の話はじめが患者の場合のみ採⽤(内容は⽂脈判断). 3 Faults (注意すべき対⼈援助の表出) −)会話かぶり/intersect. …患者家族が話を優先しない、⾃分の話を進めてしまうこと。. −)話題への置き換え/switch …つらい話に対して別な話題に置き換えること。 −)話題の先読み/premature …患者家族の話の端々から推測的に内容を述べる(要約する)こと。. 7 Input 3 Supports (患者がおだやかになるための「⽀え」となるもの) *⽀えとなる関係(関係存在:relation). ➡ 患者の⽀えになる関係性を確認し⽀援に活かす. *将来の夢(時間存在:future). ➡ 時間的な展望を確認し⽀援に活かす. *選ぶことができる⾃由(⾃律存在:choice) ➡ 患者が選択できるものを確認し⽀援に活かす 4 Sufferings (患者の⾟さ、苦しみに関するもの) *⾝体的(physical). ➡ ⾝体に関わる痛み、苦しみ、⾟さ、不便さ. *精神的(psychological). ➡ ⼼情や気分、気持ちに関わる⾟さ. *社会的(social). ➡ 環境や社会的な要因、制度に関する⼤変さや不便さ. *スピリチュアル(spiritual). ➡ ⾃⾝の存在、⾃⼰の価値、⽣死に関する苦しみ、⾟さ. 上記の組み合わせを⽤いて Coding する。6 つの Output × 7 つの Input = 42 項⽬を発話と対応 させて分類し、研修前後の変化を可視化することとする。. 21.
(23) 図 12(3 症例) 成分. 固有値. 寄与率. 1. 0.1510. 49.28. 2. 0.0977. 31.89. 3. 0.0439. 14.33. 4. 0.0095. 3.09. 5. 0.0043. 1.41. ⾚⾊の■は研修前後の関係を⽰し、⾚⾊の◆は Output の「反復(REPETITION)、問いかけ(ASKING)、 沈黙(STILLNESS)」を表す。⻘の●は出現⽤語の 10 項⽬を表したものである。いずれの図形の⼤きさ も出現頻度を表し、⼤きいほどより多く出現していることを⽰す。縦横軸の正負は意味を持たず⼆次 元の配置関係として近いものほど関係性が強いことを表す。 原点から「after」側の遠位に REPETITION が布置されている(図 12) 。これは研修後の特徴的な Output として REPETITION(反復)が⾒られることを表している。とくに●で⽰された Ending=死 や看取り、Nuisance=⾯倒や迷惑に関連した語を伴った「反復」が研修後の特徴として確認できる。 ASKING は、 「before」 「after」からの距離があまり変わらないことから、ASKING(問いかけ)で⾒ら れる⽤語は痛さや苦しさ⽣活動作の問いかけは前後で同程度と考えられる。. 22.
(24) 図 13(3 症例) 成分. 固有値. 寄与率. 1. 0.2032. 57.86. 2. 0.0979. 27.88. 3. 0.0488. 13.88. 4. 0.0013. 0.38. ⾚⾊の◆は、Output の「反復(REPETITION)、問いかけ(ASKING)、沈黙(STILLNESS)」と3つの ⽀え「関係存在(relation)、時間存在(future)、⾃律存在(choice)」の組み合わせである。after 側に多 く⾒られるのは、反復を⽤いた関係存在、反復を⽤いた⾃⽴存在であった。これは⼈⽣や過去の思い 出の⾔葉を伴って表れており、またお家に帰るという選択の際に、家族(配偶者)の話を伴って表れ ていた。また問いかけを⽤いて関係存在が表れており、家族の話、とくに孫・曾孫との関係について 表れていた。これは⼊院中の患者に対し、家に帰ってから(将来)の話として前向きな⾔葉を伴って 表れていた。. 23.
(25) 図 14(3 症例) 成分. 固有値. 寄与率. 1. 0.3554. 47.0.. 2. 0.2739. 36.24. 3. 0.0732. 9.69. 4. 0.0343. 4.54. 5. 0.0124. 1.64. 6. 0.0065. 0.87. before が布置された周辺では、⾝体的な苦しみ、⾝体に直結する⽣活活動の ASKING(問いかけ)、 そしてREPETITION(反復)の出現が主であったことが分かった。⼀⽅、after では、顕著ではないもの の、スピリチュアルな苦しみに対する REPETITION(反復)、精神的な苦しみに対する ASKING(問い かけ)が特⻑として現れていることが分かった。. 24.
(26) 3)患者・家族(対象 2)が⾏った受講者(対象 1)の研修前後評価 がん患者⾃⾝(14 名)とそのご家族:主たる介護者(11 名)が、対象1の援助的なコミュニケー ションをどのように感じたかについて、同時並⾏してアンケート調査を実施した。 協⼒を得た対象 2(患者、家族)の記述統計は以下の通りであった。 患者(n=13) 年齢. 平均 :72.3 歳 (標準偏差 9.12 、中央値:71.0). 性別. 男性 : 8. 介護⽉数. 平均 :5.7 ヶ⽉ (標準偏差 7.24 、中央値 1.5). 介護サービス. あり :7. 介護度. 要⽀援 2:1、要介護 1:1 要介護 2:2、要介護 3:3、要介護 4:1、. ⼥性 :6 なし :7. 要介護 5:1、申請中:4、申請無し:1 家族(n=11) 年齢. 平均 :63.2 歳 (標準偏差 12.98 、中央値 67.0). 性別. 男性 :2. ⼥性 :9. 属性. 配偶者:9. ⼦. 家族の健康状態. 良好:0 やや良い:2 どちらでもない:5 やや悪い:2 悪い:0. 家族の就業. 就業中:4. 就業梨:7. 他の介護者の有無. あり :4. なし :7. :2. 以下の 10 項⽬を 5 段階(50 点満点)で回答した。 1.スタッフの⾔葉遣いは適切ですか 2.スタッフの⾔葉は聞き取りやすいですか 3.スタッフに体や気持ちの状態のことを相談しやすいですか 4.スタッフに話すと、気持ちが楽になりますか 5.スタッフはあなたの不安や⼼配が和らぐよう対応していますか 6.スタッフあなたのお気持ちが落ち込んでいる時⽀えてくれていますか 7.スタッフはあなたの気持ちを分かってくれますか 8.スタッフはあなたにとっては信頼できる⼈ですか 9.スタッフはあなたが療養上知りたいことについてちゃんと説明してくれますか 10.スタッフは話すと今の⽣活を頑張る気持ちになりますか 患者の回答では、研修前のスコア平均値は 44.2、研修後は 45.8 で微増していたが、統計的な有意差 は認められなかった。患者の年齢、性別、介護度、介護サービス利⽤の有無などの違いによるスコア の有意な差は認められなかった。研修前後で話ぶりの変化を感じるかどうかについてたずねた結果、. 25.
(27) 「変化を感じる」 と回答した患者が 10 項⽬のスコアの前後差で 2 点ほど上昇しており、 「分からない、 変化を感じない」と回答した患者は、前後差で 0.5 点下がっていた。しかし統計的な有意差は認めら れなかった。 家族は、研修前のスコア平均値が 44.3、研修後は 45.3 で、こちらも微増であったが統計的な有意差 は認めらなかった。家族についても年齢、性別、続柄、健康状態、仕事の有無によるスコアの点数差は なかった。 「変化を感じる」と回答した家族は、スコアの前後差で 1.3 点ほど上昇しており、 「分からな い、変化を感じない」と回答した家族においてもスコアの前後差で 2.0 点上昇していた。しかしこれ も統計的な有意差は認められなかった。 ※患者と家族を合わせて対象 2 としている。. 4)同⼀施設職員(対象 3)が⾏った受講者(対象 1)の研修前後評価 対象 1 と同じ職場の職員等に、研修がどのように影響したかについて、アンケートによって評価を えることも研修効果を検討する上で重要なアウトカムの1つとなる。 対象 3 の記述統計量は以下の通りであった。 施設職員(n=14) 年齢. 平均 :46.8 歳 (標準偏差 10.19 、中央値:45.5). 性別. 男性 : 3. 臨床経験年数. 平均 :20.7 年 (標準偏差 10.89 、中央値 19.5). 現施設での⽉数. 平均 :85.6 ヶ⽉(標準偏差 74.58 、中央値 54). 対象1との関係. 上司・先輩等 :7. 研修前 6 ヶ⽉以内の. 平均 :9.2 ⼈ (標準偏差 15.6 、中央値 2). ⼥性 :11. 同僚・後輩等 :7. 看取り数(個⼈) 研修後 2 週間での. 平均 :3.6 ⼈ (標準偏差 5.45 、中央値 2). 看取り数(個⼈) アンケートは、以下の 17 項⽬を 6 段階のリッカート尺度でたずねた。 1. 「死にたい」と訴える患者に対する対応に困難を感じている。 2.病状や予後など「悪い知らせ」を伝えられた後の患者への対応が難しい 3.⼈⽣の最終段階を迎える⼈と、その家族と関わることは苦⼿である 4.⼈⽣の最終段階に共通する⾃然経過について、わかりやすく説明することができる 5.病状の進⾏とともに徐々に歩く距離が短くなるときに、どのような課題があるかを説明すること ができる 6. 「苦しんでいる⼈は、⾃分の苦しみをわかってくれる⼈(理解してくれる⼈)がいるとうれしい」 ということを、図を⽤いながら説明することができる. 26.
(28) 7.援助的コミュニケーションとして、反復、沈黙、問いかけがあることを知り、実践できる 8.苦しみの共通点を簡単に説明することができる 9. 4 つの苦しみ(⾝体的な苦しみ、精神的な苦しみ、社会的な苦しみ、スピリチュアルな苦しみ)に ついて説明することができる 10. 3 つの⽀え(将来の夢、⽀えとなる関係、選ぶことができる⾃由)について、簡単に説明し、例 を挙げることができる 11.グリーフケアに含まれる、以下のことを説明することができる。 (なぜ⼈は⼤切な⼈を失うと悲し むのか、⼤切な⼈を亡くした⼈への⽀援としてのグリーフケアの重要性) 12.苦しくて⾃分を好きになれない、家族に迷惑をかけるならば早くお迎えが来ないか、と考えてい た⼈が、こんな⾃分でも⽣きていてよいと思えるようになるために、どのような私たちであればよ いか説明することができる 13.苦しんでいる⼈の⽀えとなろうとする⾃分⾃⾝が、⽀えを必要としていることについて、⾃⾝の 例を挙げながら説明することができる 14.意思決定⽀援のプロセスに沿って、相談に乗ることができる 15.痛み・苦痛の評価を⾏うことができる 16.痛み・苦痛がある時、指⽰された対応ができる 17.事例を通じて、 「苦しみ」 「⽀え」 「⽀えを強める⽅策」を挙げ、関わる多職種それぞれの「⽀ え」を援助できる 17 項⽬のうち、研修前後で有意差があった項⽬は、1.「死にたい」と訴える患者に対する対応に困 難を感じている(p=0.009) 、2.病状や予後など「悪い知らせ」を伝えられた後の患者への対応が難し い(p=0.013) 、3.⼈⽣の最終段階を迎える⼈と、その家族と関わることは苦⼿である(p=0.003)であ った。これら 1〜3は設問内容が逆転しているため、研修後には 1.「死にたい」と訴える患者に対する 対応に困難を感じない、2.病状や予後など「悪い知らせ」を伝えられた後の患者への対応が難しくはな い、3.⼈⽣の最終段階を迎える⼈と、その家族と関わることは苦⼿ではない、という点で評価があった と⾔える。 また、概略評価として、受講者から患者・家族への影響についての影響については、良い影響があ った(n=12) 、分からない(n=1) 、回答なし(n=1)であり、良い影響があったと感じた職員が有 意に多かった(p=0.003) 。また受講者から施設や職員への影響については、良い影響があった(n=12) 、 分からない(n=2)で良い影響があったと感じた職員が有意に多かった(p=0.013) 。 受講者が、養成講座で習得したことは、総じて施設にとって有益だったかどうかについてたずねた 回答では、有益だった(n=12) 、分からないまたは有益でなかった(n=2)で、受講したことが有益だ ったと回答した職員が有意に多かった。. 27.
(29) 20.考察 【先⾏調査より】 先⾏調査の結果から、当該研修の効果の解釈については以下のように⾔える。 1)研修前から研修直後においては、当該研修を受けることによって統計的に有意に⾼くターミナル ケア態度が上昇し、エンドオブライフケアの必要な患者に対するケアの⾃⼰効⼒感が⾼まっている ことが分かった。この結果は、研修前、直後の 1 地点の調査結果(尾形 2017、たらさわ 2017)と 同様の結果であった。 2)研究直後から 6 ヶ⽉間時間が経過した際に、受講者のターミナルケア態度は有意は下がっている ことが分かった。このことから時間経過に伴ってエンドオブライフケアの必要な患者に対するケア の⾃⼰効⼒感が低下することが分かった。また、この 6 か⽉後のスコアは、受講前とは有意な差が ないため、受講前に効果が戻ったと⾔い換えることもできる。このことから、受講後の取り組み⽅ として、研修のフォローアップの必要性が⽰唆された。 3)研修後 6 か⽉間の実務の様⼦と FADCOD との関係について、受講した内容を受講者の⾃施設 で教育として実施した場合、FADCOD の得点低下がそうでない場合と⽐べて優位に抑えられてい た。つまり、学習した内容を、⾃施設で教育としてアウトプットすることにより、受講者⾃⾝の整 理や復習につながったと推測できる。これは教育学的視点でも妥当な結果であり、受講者⾃⾝が教 育することによってターミナルケア態度が維持される可能性があると⾔える。 また研修後 6 か⽉間のうち、実務で看取りを経験した⼈数が 3 ⼈未満と⽐較し、3 ⼈以上で有意 に FADCOD が⾼くなっている結果から、実際に看取りに関わる経験によって、ターミナルケア態 度が維持されやすいことが⽰唆された。受講者の職種、および所属する施設の違いによって、看取 りの経験をしやすい場合とそうでない場合に分けて検討する必要がある。この点については、今後 検討を進めていく。 4)3 地点における地域差については、研修前、研修直後、6 ヶ⽉後の 3 時点で差が認められなかっ た。もともと本研修に参加する者⾃⾝が、改善を考え積極的に受講したものが圧倒的に多いことも あり、エンドオブライフケアの必要な患者に対するケアの⾃⼰効⼒感は⾼いことが推察できる。こ の点は、当該研修の受講とは関係のない集団、もしくは受講動機が低い(あくまで勤務の⼀環とし て受講した)者とのスコア⽐較を検討する必要がある。 【主調査より(先⾏調査も踏まえ) 】 <⾃⼰評価ではない客観的な変化> 講座受講によって、受講者本⼈のターミナルケア態度は向上し、エンドオブライフケアの必要な患 者家族に向き合う⾃⼰効⼒感は、受講直後に⾼まることが先⾏調査から分かった。このような内的な ⾃⼰効⼒感や⾃⼰評価ではない、客観的な変化として発話の⽐較を実施した結果、患者の⽀えとなる ような関係性を強めたり、⾃⽴を促す選択を強めるような患者が発した何気ない⾔葉の「反復」によ って現れていることがわかった。また患者⾃⾝が死や⾃⼰を喪失することの虚しさ、家族を残してい くことの無念さなどを⼝にした際に、 「反復」としてスピリチュアルな苦しみに対応している傾向が⾒. 28.
(30) られた。また精神的な苦しみに対する「問いかけ」が受講後に⾒られる傾向にあった。これは患者や 家族の苦しみや⾟さを認識し、それまで聞き逃していたもしくは、対峙できなかったわずかな発⾔に 対し、反復と問いかけを実践し患者家族に向き合った成果の1つと⾔える。また分析の上で統計的や 数値上では現れなかったが、時間存在における将来の話を前向きな⽤語( 「well」の分類)を⽤いてい る結果が⾒られた。これは苦しみが何かを把握しながらも、その患者がおだやかになる⽀えとなる先 の⾒通しについて、ポジティブな⽤語を⽤いて対応したと解釈できる。 ⼀⽅で、 「沈黙」は、受講者が⾃ら意識して⽤いることができるものではなく、患者(家族)の様⼦ に表れた時のみ対応することができるものであるため、場⾯が極めて限られている。研究の限られた データ内で押さえることが難しいという点もあり、今回の症例ではほとんど沈黙を⽤いて患者の苦し みや⾟さを受け⽌めるような場⾯はなかった。⼀⽅で望ましくない Output として⽰した、会話のかぶ りや話題のすり替え、話題の先読みなどはわずかにみられた。今後症例を増やしていく中で、沈黙、 会話のかぶりや話題のすり替え、話題の先読みが観察可能となると考えられる。 <アウトカムとしての患者家族、同施設職員> 患者家族の感じた受講前後の違いについては、1つひとつの項⽬については、統計的な差が認めら れなかったものの、患者、家族が快く感じる傾向を⽰すことができた。総じて受講による変化を主観 的に感じたかどうかについて、顕著にその差がなかった点はいくつか理由が考えられる。まず研修が 2 ⽇間と短く、実践的なトレーニング(例:ロールプレイ等)が⾏われた回数が少ないことが挙げられ る。コミュニケーションにおけるトレーニングは、医療的な⼿技等の練習と同様に構造的で継続的な 練習が必要(Ericsson 1993)とされることが分かっており、特に悪い知らせを伝えるような緊張を伴 うような話題においては、経験年数が⻑ければコミュニケーションに⻑けているとは⾔えず、ほとん ど差がないことが分かっている(Jan C. 2012) 。この観点から考察すると、エンドオブライフケアが必 要な患者・家族の苦しみや⾟さを受け⽌め、援助的なコミュニケーションを⾏えるようになるために は、2 ⽇間の研修では⼗分ではなく、継続したトレーニングと段階的なプログラムが必要であると考 えられる。ただし同じ施設の職員からの評価は、統計的にも有意に⾼評価の⼈数が多かった。これは 先⾏調査の結果からも推測できる。受講者が同施設内で教育を実践することの影響、また実際に看取 りに積極的に関わり、看取りの件数も多いことによって、ターミナルケア態度の減少も緩和させるこ とが可能になるため、施設にとってはケアの質を向上させる⼤きな要因に結びつくものと考えられる。 今後は、症例数を増やしながら、発話データとアウトカムの評価を連動させた多重の対応分析や共起 関係を探索的に分析し続けることが必要である。 在宅へのより円滑な移⾏や在宅における看取りについては、システムとしての体制整備のみにとど まらず、⽀援をするケア提供者⾃⾝やその施設によるケアの質向上を図ることが必要であるが、本研 究で対象としたような、個々の対⼈援助⼒向上につながる教育や実践研修を⼀定の客観性を持って検 証し、常に具体的な改善を講じていくプロセスが、今後ますます必要だと⾔える。 本研究は、公益財団法⼈ 在宅医療助成 勇美記念財団の助成によるものである。. 29.
(31)
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