新卒看護師を訪問看護ステーションで育成するための方策および課題
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(2) 目次 Ⅰ.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅱ.用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅲ.研究意義と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅳ.研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅴ.データ収集方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 Ⅵ.分析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 Ⅶ.倫理的配慮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 Ⅷ.結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 Ⅸ.考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 Ⅹ.謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 Ⅺ.結果資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13.
(3) はじめに 我が国の今後の超高齢・多死社会を見据えた医療上の政策として、在院日数の短縮化 が進められている。病気を抱えながら在宅で暮らす人々の拠点が医療機関から在宅へと 移行する傾向が一層顕著になって行く中で、在宅医療を支える訪問看護師の果たす役割 は大きい。訪問看護利用者数は、2020 年までには、2009 年時点から 149.1 千人分の利用 ニーズが増加する推計である 1)との報告もあり、在宅医療を支える訪問看護のニーズが 増大することは必至である。しかしながら、2009 年時点と比較すると、2020 年の時点で は、約 16,000 人の訪問看護師が不足する 1)と言われており、在宅療養を支える人材の確 保および定着は不可欠である。 厚生労働省は、今後、急激に増大していく訪問看護利用者に対応していくための訪問 看護師のマンパワー確保の対策として、新卒看護師の段階での訪問看護ステーションへ の就労を促進させる仕組みづくりを提案している。しかし、現状では、看護基礎教育の カリキュラムの内容は、病院主体の教育内容であり、新卒看護師の段階での訪問看護ス テーションへの就労は、極めて少ない。日本訪問看護振興財団が実施した 2009 年におけ る 968 カ所の訪問看護ステーションを対象とした調査 2)では、新卒者の採用は全体の 2% にとどまり、ほとんどの事業所では新卒看護師の採用は行われていなかったと報告され ている。さらに、病院看護師 235 名を対象とした筆者の調査では、新卒時に訪問看護ス テーションへの就労意思を有していた者は 10.2%であったが、病院看護師経験が 8 年以 内までは、訪問看護ステーションへの就労意思を有している 3)ことが明らかとなった。 新卒看護師の訪問看護ステーションへの採用における問題の一つとして、訪問看護ス テーションにおける新卒看護師を受け入れる体制が、教育面および経営面で整備されて いない現状がある4)。これらの教育体制に関する方策として、訪問看護ステーション、 大学、看護協会の連携のもと、新卒者を訪問看護師として採用し育成するという先駆的 な取り組みを行い始めた施設も存在する 5)。しかし、新卒看護師の採用は試行錯誤の段階 であり、新卒看護師を採用している訪問看護ステーションにおいても、教育プログラム の構築がなされていない状態で採用している施設も存在しており新卒看護師の受け入れ る環境は整備途上であるとされている 6)。 そこで、本研究では、実際に新卒看護師を訪問看護ステーション(以下:ステーショ ン)で育成している管理者および新卒看護師(以下:新卒)を対象に半構成的面接を行 い質的統合法(以下:KJ 法)で分析を行った。各ステーションにおける教育指針や教育 内容から現時点の管理者および新卒の課題および方策を明らかにした。 引用文献 1) 中島民恵子他:訪問看護利用者数および訪問看護師必要数の推計,厚生の指標, vol.58,No.11,P.30-37.2011.. 1.
(4) 2) 訪問看護振興財団:平成 20 年度新卒看護師の訪問看護ステーション受け入れおよび定着化に 関する調査研究事業,P70-98,2008. 3) 楢原理恵他:病院看護師の訪問看護ステーションへの就労意思に関する実態尾と関連要因, 大阪医科大学看護研究雑誌,Vol.4,P60-67,2014. 4) 日本看護協会:平成 23 年版看護白書,看護がつなぐ・ささえる在宅医療,P.94-128,2011. 5) 長江弘子他:「協会」「大学」「ステーション」で協働する千葉県の地域連携型人材育成の 試み-学習支援体制を現場でつくる, 「新卒訪問看護教育プログラム」の開発,Vol.18,Vol.18, No.4,P313-319. 6) 日本看護協会出版会:新卒看護師を育てる,コミュニティケア,Vol.15.No.4,P.46-61,2013.. Ⅱ.用語の定義 新卒看護師:「看護基礎教育(大学教育、専門学校)を終了後にステーションに就業した看 護師」とした。就業後からに経験年数や年齢については、問わないことにし た。 新人看護師:「病院看護師経験を経て、ステーションへ再就職した訪問看護師」とした。. Ⅲ.研究意義と目的 新卒をステーションで育成するための方策を得ることで、訪問看護師の人材確保につな がることが期待され、新卒がステーションで従事することを希望した看護職のキャリアの 選択の幅の広がりが見込まれる。 本研究の目的は、新卒がステーションで育成するための方策および課題を明らかにする ことである。. Ⅳ.研究方法 1. 対象者 看護職(新卒でステーションに就業した看護師5人、新卒が就業しているステーションの 管理者5人を予定した。5名にした理由については、データ数としては不十分であるが、2009 年度の調査では、ステーション数の約2%しか新卒を採用しておらず、全国で約19か所と極 少数5)であり、対象者の人数の確保が困難と予想されるため)、対象年齢は、20~60歳代、 対象性別は、男女とした。. 2.
(5) 2.対象人数 (1)新卒約5名およびその新卒を雇用しているステーションの管理者約5名を予定した。同 施設の新卒および管理者へのインタビューとするが、困難な場合は、どちらか一方で も同意が得られた新卒あるいは、管理者へのインタビューとした。 (2)研究協力者の選定については、新卒を雇用しているステーションは、極少数で公表は していないため、全国の看護協会に加入しているステーション管理者に新卒を雇用し ているステーションの紹介を得、地域は限定しなかった。看護協会より紹介を得られ たステーションの管理者へ電話にて研究の目的と内容を説明し同意を得た。新卒を雇 用している管理者へ研究の目的・趣旨・倫理的配慮についての説明を口頭および文書 で行い、同意が得られた者を対象とした。また、新卒へのインタビューについては、 管理者の内諾を得て行った。その際に、管理者から新卒へ研究協力についての強制力 が働かないように、新卒者への研究協力の依頼については、管理者からではなく、研 究者から行い研究の目的・趣旨・倫理的配慮について説明し同意を得た。. Ⅴ.データ収集方法 半構成的面接によるデータ収集を行った。新卒を採用しているステーションは、約2%に 留まっており、ステーション内のみで育成している教育や支援についての研究データが乏 しいので現状把握を行うため、半構造化面接を選択した。 (1) 面接の日時は、研究協力者と相談上決定し、研究協力者の職務や生活に支障をきたさな いよう調整した。面接時間は、1時間程度とし延長する場合は承諾を得るが、研究協力 の負担を考慮し時間内で終了するよう配慮を行った。 (2) 原則として、研究協力者1人につき1回の面接を実施する。面接後に確認したいことが生 じた場合は、研究協力者に連絡を取り、承諾が得られた場合に限り追加の面接を実施し た。 (3) 研究協力者のありのままを促せるように実施する。 (4) 話したくないことは、言わなくても良いことを伝えた。 (5) インタビュー内容 管理者:管理者の年数、ステーションの常勤換算、新卒を雇用した理由・支援は誰がど のように行ったのか・訪問したケア内容や疾患・育成するなかで成功(良かっ た)、失敗したエピソード、・雇用した前後で変化した内容(経営、看護の質、 スタッフのモチベーション等)、新卒を育成する上で自身のスキルアップや必 要な力量について。. 3.
(6) 新卒. : ステーションへ就職した理由、これまで誰からどのように支援を受けたのか、 支援者からの声かけステーションで指導を受ける中で役に立ったこと、スキル を上げる上で努力したこと、これまで成功(良かった)、失敗(困惑)したエ ピソードについて、指導を受ける上で希望すること、訪問看護師としての継続 意思について。. Ⅵ.分析方法 分析は、質的統合法(以下:KJ 法)(山浦,2012)1)を用いた。KJ 法は、創案者である 川喜田によって発案され、その方法を山浦が KJ 法の実践・指導を通して独自に探究した手 法である(正木,2008)2)。本研究では、ステーション個々の規模や背景が異なるステー ションの管理者、新卒の思いや考えを抽出するためには、複数の個別群の集合に内在する 論理を発見できる特徴をもつ KJ 法(山浦,2008)3)が適していると判断した。分析は、 以下の手順で行った。 1.ラベル作成 逐語録より、対象者の考えや思いに関連した記述部分を広く抽出した。記述されたデー タを抽象化しすぎず、参加者が使用している言葉を出来るだけ残して要約し、60~200 字 程度の一文にして1枚のラベルとした。 2.グループ編成 ラベルすべてに目が行き渡るように一面に広げ、ラベルの文章全体の意味が類似してい るラベルを 2~4 枚収集しグループ編成を行った。集まったラベルの全体の意味をつかみ表 札として一文に要約した。このグループ編成を行っていくプロセスを 1 段階とした。表札 をつけたラベルと残ったラベルで同様の作業を繰り返しながら、段階が上がるごとに抽象 度を上げ,ラベルを統合する作業を行った。ラベルが 7 枚になった時点で最終ラベルの内 容を説明する「シンボルマーク」をつけた。 3.空間配置図およびストーリーの作成 グループ編成した最終ラベル間の関連性をつかみ空間配置図を作成した。さらに、空間 配置図を説明する文章を作成した。 4.信頼性と妥当性の確保 分析の信頼性と妥当性を確保するために、研究者自身が KJ 法の基礎訓練を受講した上で 分析を行った。分析結果については、KJ 法に精通している研究者にスーパーバイズを受け た。 引用文献 1)山浦晴男(2012).質的統合法入門考え方と手順.東京:医学書院.. 4.
(7) 2)正木治恵(2008).看護研究における質的統合法(KJ 法)の位置づけと学問的価値.看護研 究,41(1),3-10. 3)山浦晴男(2008).科学的質的研究のための質的統合法(KJ 法)と考察法の理論と技術,看 護研究,31(1),11-32.. Ⅶ.倫理的配慮 本研究は,大阪医科大学研究倫理委員会の承認を受け実施した.研究の実施においては, 対象者のプライバシーを守り,文書と口頭による研究の主旨の説明を行い,署名による同 意を得て行った.面接に際しては,語りたくない部分は控えても良いことを説明し配慮を 行った.. Ⅷ.結果 1.対象者の概要 対象者は、合計 4 箇所のステーションの管理者 4 名と教育プログラム立案者 1 名(全て 女性)、新卒 3 名(女性 1 名、男性 2 名)合計 8 名を対象とした。対象者の概要は、表1参 照。. 表1.研究対象者の概要 ステー ション. A. B. 管理 者 年数. 利用 者 人数 常勤 換 算数 ス テ ー シ ョ ンの 特徴. 利 用者 の 特徴. 新 卒年 齢 (入 職時 ) 就 業年 数. 17年間. ・利用者約110人 ・常勤換算8.9. ・小児多い ・ターミナル ・医療依存度が高い. 40歳、4年目. 11年間. ・利用者約160人 ・常勤換算9.6 ・ターミナル ・訪問看護認定看護師2人. 21歳、3年目 (現在産休中). ・認知症看護認定看護師1人. C. 5年間. ・利用者40人 ・常勤換算3.8 ・複合型サービス. ・ガン末期 ・難病 ・高齢者独居. 38歳、3年目. D. 3年間. ・利用者約130人 ・常勤換算5.6. ・精神疾患6割. 24歳、4年目. 5.
(8) 2. 対象者ごとの空間配置図の説明 1) A ステーション管理者(図 1) 逐語録から作成したラベルは 53 であり、それらのラベルを意味の類似性によってグルー プ化し、全体の意味を捉え表札を作成した。さらに、6 段階の統合化作業を行った結果、管 理者は、「病院看護師時に新卒を教育した実績」から管理者に就任した時点から、ステーシ ョンで「新卒を育成することを希望」していた。一方で、「雇用した新卒の特徴」として、 「豊富な社会人経験で培った豊かな感性と対人関係能力の高さ」と、管理者の希望と新卒 の特徴の両面から支えられ、3 年目の現在、「心身のケア・看護技術の習得・保険制度の理 解と夜間の緊急訪問の実施」が可能な、 「一人前の訪問看護師としての成長」を遂げていた。 また、これらの特徴を基盤とする新卒を育成する上での主要な指導ポイントとして 4 つ が挙げられた。1 つ目は、看護技術のなかでも注射や点滴などの「看護技術習得の困難への 方策」として、「提携している医院との提携やシミュレーター学習」を取り入れ教育を行っ ていた。2 つ目は、 「同行訪問での教育方針」として、 「重症度の低い利用者の選定やモデル を示し看護実践能力の向上を図る」工夫が行われていた。さらに 3 つ目は、 「生活環境や会 話を通して対象者を捉える能力の育成」として、疾患の症状観察・フィジカルアセスメン トを環境面や会話から捉える能力を養うために、「新規の同行訪問や初期看護計画の立案」 を行う機会を設け指導を行っていた。 最後に、「ドロップアウト予防のための支援」として、「課題解決の指導・精神的サポー ト・技能評価と賞賛・目標設定」をスタッフおよび管理者が一団となり、敏感に新卒の言 動を察知しつつ、新卒を支援していた現状が明らかとなった。新卒をステーションで育成 するためには、これらの 4 つの内容を相互に指導を行った結果、 「一人前の訪問看護師とし ての成長」に繋がっていた。 2) A ステーション新卒(図 2) 逐語録から作成したラベルは 70 であり、それらのラベルを意味の類似性によってグルー プ化し、全体の意味を捉え表札を作成した。さらに、5 段階の統合化作業を行った結果、 新 卒の「就職の意図」は、 「看護基礎教育の影響と家庭環境」という訪問看護師への契機と「利 用者へ接する姿勢」として、 「寄り添うような言動と信頼関係の構築」という両側面から新 卒者が教育を受ける姿勢がみられた。 さらに、主な教育内容としては、「フィジカルアセスメント能力の向上への指導」として 「事例のリフレクションとステーション内のサポートシステム」の実践面への指導と、「訪 問看護師を継続できるための支援」として「受容的な指導や精神的支援」という両面から 新卒者の教育および支援が行われていた。 また、これらの教育プロセスの結果として、「訪問看護師としての継続意思」があるが、 「継続意思の裏側にある看護技術項目の不十分さへの不安」」が根底にあった。その理由と して、「看護基礎教育の課題」として、「訪問看護で行う看護技術項目や教授内容の不十分. 6.
(9) さ」と、「看護技術面の実施回数から生じる不安」として、「教育システムの希望」といっ た、訪問看護師として継続していくために継続して技術指導を受けられる場を求めている ことが明らかとなった。 3) B ステーション管理者(図 3) 逐語録から作成したラベルは 64 であり、それらのラベルを意味の類似性によってグルー プ化し、全体の意味を捉え表札を作成した。さらに、5 段階の統合化作業を行った結果、 「新 卒を採用した意図」は、新卒からの自発的なアプローチにおける、 「訪問看護への強い熱意」 があり新卒を採用した。さらに、「新卒を育成することの利点」として、新人と比較して異 なることは、新人はこれまで病院看護で培った価値観を修正する必要性に迫られるが、新 卒の場合はその必要がないため、訪問看護への「適応能力と成長スピードの速さ」があっ たという、これらの両面が新卒の特徴とする基盤であった。 「同行訪問での教育方針」として、 「5 人のスタッフの選定とプリセプターの導入」を行 い、新卒は積極的に疑問に思ったことなどを確認する姿勢がみられ、指導する側もリフレ クションの機会となり、双方が刺激しあえる関係性であったと管理者は認識していた。 新卒を育成するなかで新卒が、 「単独訪問が困難な事例」についての利用者の特徴は、 「情 報収集の困難さ・他職種との連携や調整」が必要な利用者であった。これらの対策として、 「利用者との関係性のなかで育成されるコミュニケーション能力」を育成するための同行 訪問や、「顔の見える他職種との関係作りで育成された他職種連携」を行うことで、他事業 所との連絡を行うことが可能になっていた。 これらの教育内容を踏まえた、「新卒育成後の改善点」として、「基礎看護技術やアセス メント能力を養うための診療所と連携した教育プログラムの構築」を行い、今後さらなる 新卒の育成を行うという方針を管理者は示していた。 4) C ステーション管理者・教育プログラム構築者(図 4) 管理者および教育プログラム構築者の両者からの逐語録から作成したラベルは合計 47 であり、それらのラベルを意味の類似性によってグループ化し、全体の意味を捉え表札を 作成した。さらに、5 段階の統合化作業を行った結果、教育を受ける側の「新卒の特徴」は、 「社会人経験豊富で教育プログラムを受ける一期生としての男性看護師」である。基盤と なる教育指針として「3 年間の教育プログラムの構築」を行い、 「教育システムと各期間の 到達目標の設定と評価」を行った。さらに、新卒として本教育プログラムに沿って教育を 受けた新卒は 1 人であったため、「新卒のドロップアウト予防の対策」として、「訪問看護 がゴールである事の目的意識」を持つよう支援することで、その他の新卒とは異なる病院・ ステーション・地域部門をローテーションによる看護経験の積み重ねであることの認識を 維持できるよう支援していた。 さらに、教育プログラムに関する具体的な内容は、 「教育プログラム構築者と指導者が異. 7.
(10) なることへの課題と対策」として、「指導内容と新卒の習得状況が困難・新卒の記録内容の 確認と指導者との連携」について、教育プログラム構築者が新卒と指導者との橋渡しを行 い指導していた。新卒が学んでいる、 「複合型サービスとしてのステーションの特徴と課題」 は、デイサービスでの看護業務と訪問業務に伴う「新卒の看護業務習得段階の複雑化」が 生じていると管理者は認識していた。 「現状の到達度と課題」については、 「症状観察やフィジカルアセスメントスキル習得・ 在宅療養に視点を置いた生活援助方法の不十分さ」が生じている。この状況を受けて、教 育プログラムに沿って教育した結果、「本教育プログラム内容での訪問看護師育成の不安」 として、「当初から病院看護主体とした教育プログラム構成」であるが、ステーションでの 教育を基盤にした教育内容の是非を思案しているという状況が明確となった。 5) C ステーション新卒(図 5) 逐語録から作成したラベルは 43 であり、それらのラベルを意味の類似性によってグルー プ化し、全体の意味を捉え表札を作成した。さらに、4 段階の統合化作業を行った結果、本 新卒は、新卒訪問看護師研修生として、新卒訪問看護師育成制度に参加した。研修プログ ラムとして、「1年目のローテーションでの研修内容」は、「病棟を主体とした短期間での ローテーションのおける基本的な知識や技術の習得」であった。その「短期間の病棟ロー テーションにおける苦悩」として、病棟の同期と比較すると、一箇所の病棟に留まらずロ ーテーションをしつつ研修した結果、 「看護業務内容が拡大しないことによる劣等感」を感 じていた。その「短期間の病棟ローテーションにおける苦悩への対処」として、現在は、 病棟でローテーションをしつつ将来的な目的として、「訪問看護がゴールであることの立ち 返りと周囲のサポート」によって、1 年目の研修における苦悩を乗り越えていた。 そして、現在は病棟研修を終了し、3 年目の現在はステーションでの研修を行っており、 「ステーションの特徴と利点」は、 「複合型サービスでの入居者への医療処置機会の豊富さ」 があげられ、看護技術習得の機会に恵まれていることを実感していた。そして、看護技術 の指導を受ける際、 「病院とステーションの指導者における指導内容の相違に対する戸惑い」 を感じていたが、その解決方法として、「基礎看護を基に在宅での応用力を養うことの必要 性」を感じていた。 現在の 3 年目の「到達状況」として、 「病棟ローテーションで培った判断力をベースとし た単独訪問や夜間緊急対応の実施」であった。「今後の目標とステーションでの就業意思」 については、 「国内外を視野に入れた在宅医療の提供と今後の就業意思の未確定」という上 場が明らかとなった。 6) D ステーション管理者(図 6) 逐語録から作成したラベルは 64 であり、それらのラベルを意味の類似性によってグルー プ化し、全体の意味を捉え表札を作成した。さらに、5 段階の統合化作業を行った結果、教. 8.
(11) 育を受ける「新卒の特徴」は、「積極的な学ぶ姿勢と豊かな感性」を有しており、看護基礎 教育の在宅看護学実習での実習先に就業した新卒である。看護技術習得については、病院 内の新人研修システムで 10 ヶ月のローテーション期間を設け、ステーションへ移行した。 その、「看護技術習得への研修システムと課題への対策」について、「病院内の新人研修へ の参加と同期と比較した不安や焦り」を感じていたが、不安な看護技術に対しては、病院 内の研修に参加する等の対策を行っていた。また、ステーション内の教育方針として、「同 行訪問での教育方針とサポート体制の強化」を行い、「段階を追った利用者の選定と相談し やすい体制」を整え指導を行っていた。 本ステーションの特徴として、精神疾患の利用者が6割を占めるが、 「精神疾患利用者の 看護の困難さ」が生じており、「精神疾患利用者との距離感による課題」に苦悩していた。 その苦悩は、 「精神疾患利用者との距離感の課題」であり、課題であった事例での「対応の 振り返りと真摯な受け止め」を行い、前向きに対処できるよう管理者やスタッフが支援を 行っていた。また、 「精神疾患利用者の看護の困難さ」による、他職種連携が必要とされる ため、「他職種への顔の見える関係性の構築」として、「地域への学習会の参加」を行いス ムーズな連携に繋がるよう努力していた。 5 年目の「現在の到達度と今後の展望」として、 「1人前のスタッフとしての貢献と看護 管理業務への関心」があり、現在も尚、積極的に学ぶ姿勢を持続しており、管理者や全ス タッフは新卒を支え成長を促していた。 7) D ステーション新卒(図7) 逐語録から作成したラベルは 28 であり、それらのラベルを意味の類似性によってグルー プ化し、全体の意味を捉え表札を作成した。さらに、5 段階の統合化作業を行った結果、 「就 業の動機」として、看護学生時の実習先であったが、就業している訪問看護師の「楽しそ うに就業している訪問看護師の姿」を見て就業していた。教育方針として、ステーション の前に 10 ヶ月の病棟ローテーション研修を行っていた。その、 「病棟でのローテーション 研修での学びと課題」として、ステーションの前に病棟ローテーションを行っているが、 業務を遂行することに必死でどのようなことが訪問看護に繋がるのか考えることが乏しか ったと新卒は振り返っており、 「病棟研修の時期の再検討」の必要性を認識していた。また、 療養型病棟では、排泄の援助など訪問看護で実施する、「基本的看護技術の習得」は可能で あったとしていた。しかし、病院勤務の同期と比較すると医療処置等の経験の少なさから 現在も尚、「医療処置の自信のなさ」を感じておりコンプレックスを抱いていた。医療の知 識や技術は利用者との、「信頼関係の構築の手段として経験を積むことの必要性」を認識し ていた。 さらに、病棟研修時は、週に 1 回、ステーションで管理者と同行訪問を行っているが、 その時から、「早期での単独訪問」を行っていた。そのことについて、「自身を信頼してく れた管理者への敬意と奮闘」として、全責任を追う管理者へ迷惑をかけないよう配慮し、. 9.
(12) 単独訪問を行っていた。そのような環境下で新卒は、 「不安や疑問に対する自らの対処行動」 として、訪問前後にスタッフに疑問点等は、自身の納得がいくまで問い、質問の内容に的 確な返答が得られたという、 「自身を受け入れてくれる温かい組織風土」として、サポート を得られやすいスタッフ間の組織風土であったと認識していた。また、 「利用者との関係性 に苦悩」した時期もあったが、その時も、「スタッフの気遣いやサポート体制」が得られた と振り返っていた。 現在 5 年目を迎える、「今後の展望」として、管理者の行っている経営面等、「看護管理 への興味と関心」を寄せており、訪問看護の質向上のためには、経営面も重要であること を認識し積極的に管理者から学ぶ姿勢を有していた。. Ⅸ.考察 1. ステーションでの看護技術習得の困難さ 新卒の看護技術と離職およびバーンアウトの関連の先行研究では、より確かな看護技 術経験を持つことで、職場適応に影響があり1)、卒後、1 年以内では、一人でできない看護 技術が多いほど、バーンアウト得点が高かった2)報告されている。 本調査で 4 施設中 2 施設がステーション単独で育成を行っていた。ステーションの特徴 として、点滴や採血等の看護技術が必要な利用者が常時存在することは少なく、反復した 看護技術に習得が困難で、新卒の自信が得られる程、経験回数が少ないことが課題となっ ていた。 それに対し、シミュレーター教材を使用することや、スタッフの健診時の採血等を新卒 が行うという方法で補っていた。しかし、A ステーションの新卒は、「訪問看護師としての 継続意思の裏側にある看護技術項目の不十分さへの不安」や C ステーション・D ステーショ ンの新卒は、病院研修を通して看護技術の習得システムを設けていたが、それでも尚、「看 護技術の自信のなさ」を挙げていた。これらに関しては、管理者が想像する以上に新卒に とっては、負担に感じており、新卒の自信につながるよう定期的な看護技術の習得可能な システムを構築し、離職を予防することが喫緊の課題となろう。 さらに、病院看護と訪問看護の違いを明確にし、訪問看護の特徴を踏まえた利用者への 看護技術の介入方法の開発を行う等、訪問看護に誇りを持てるような看護展開がなされる ことも重要と考える。そのためには、個々の利用者にとっての看護の意味を理解した援助 方法を新卒が考えられるよう支援していくことも重要である。 2. 新卒の能力を見極めた教育方針と看護教育力 同行訪問による単独訪問の時期の基準については、新卒の自信が得られるまで同行した ステーションや 1 回目の同行訪問の後は、単独訪問とし、新卒の自信がない利用者につい ては、新卒が自発的に要望し同行訪問を行うステーションも存在した。新卒の特徴や能力. 10.
(13) を見極め、教育指針を決定していた。 また、利用者の選定は、清潔援助等の訪問目的が明確で、家族から前回の訪問からの情 報収集が行える利用者、複雑な連携が必要でない利用者と共通していた。訪問看護の特徴 として、同じ疾患であっても疾患の症状や療養環境、家族環境等によって、看護介入方法 が異なる場合が多く、それらを理解することは、新卒の能力によっても幅が生じるであろ う。したがって、一律の教育プログラムおよび教育システムは必要であるが、新卒の育成 段階で支障が生じることが考えられ、新卒の成長の度合いによって、臨機応変に変更する 等の柔軟性も必要である。 さらに、看護教育に尽力した見藤は、暗黙知の存在に光りを当てると、看護への働きへ の意味づけがより容易になり、この知の存在を認識し、これを発揮させる方向に看護教育 は心を用いる必要性を述べている3)。したがって、新卒が訪問看護師の卓越した判断力や看 護技術をスムーズな理解が得られるためには、訪問看護師が行う看護実践を見て学ぶこと も重要であるが、並行して言語として暗黙知を伝えることや新卒の気づきを促す指導力等、 ステーション内の看護教育力のあるステーションが新卒を育成できる要であろう。 3. 病院研修での看護技術習得における時期と期間の検討の必要性 病院での看護技術習得を目標に研修を行ったステーションは、2 施設であった。いずれも 病院研修を経て、ステーションへという流れであった。坂本は、訪問看護は暮らしのなか にある医療であり、病院看護師とはまったく異なる景色のなかで育成されているという状 況があるため、訪問看護に踏み出す人は病院看護とは意識を切り替える努めがあると述べ ている4)。病院看護と訪問看護を比較すると、看護介入時の使用物品や清潔操作についての 観念も異なるため、病院看護で学んだ方法論が直接、訪問看護で活用できないことが多い ことが特徴である。本調査では、病院看護と在宅看護での指導者の説明の相違があり、困 惑したということが明確となった。 その対処法として、D ステーションの新卒が振り返っていたように、基盤とするステーシ ョンでの方法を学び、不足している看護技術教育を病院で学ぶという教育プログラムの方 が、新卒が混乱することなく、目的意識を明確とした内容が学べるため効率が良いと考え る。さらに、病院研修の期間は、長期に及ぶ程、病院看護の方法に偏り、訪問看護への発 想への転換が必要になるため、訪問看護での看護技術頻度が類似する療養病棟等に限定す る等も適切な方法ではないだろうか。病院研修期間については、ステーションでは訪問事 例の振り返りを行い、そこでフィジカルアセスメント能力や他職種連携等の能力も育成さ れ、新卒は習得できていることが明らかになった。したがって、病院研修期間は、短期間 で必要に応じて、頻度を多くする等、訪問看護での看護技術に不足と感じている内容を補 うという方法が理想なのではないかと示唆された。 引用文献. 11.
(14) 1). 稲垣美紀他(2002):学部学生の卒業時における看護技術の習得状況(第 1 報).大阪 府立看護大学紀要,8(1),47-52.. 2). 野口英子他(2011):新卒看護師の看護技術習得の実態と指導者・看護師長の期待に関 する研究:日本看護研究学会雑誌,VOL34,No4.2011.. 3). 見藤龍子:人を育てる看護教育.医学書院,3-29.2003.. 4). 坂本すが(2013):訪問看護の起業・経営の支援、そして人材確保への取り組み,訪問 看護と介護,393-397.. Ⅹ.謝辞 本研究は公益財団法人在宅医療助成優美記念財団による研究助成を受けて行いました。 深く御礼申し上げます。また、研究にご協力頂いた訪問看護師の皆様にも心より感謝申し 上げます。. 12.
(15) 図1.A ステーション(管理者)空間配置図 13.
(16) 図2.A ステーション(新卒)空間配置図 14.
(17) 図3.B ステーション(管理者)空間配置図 15.
(18) 図4.C ステーション(管理者)空間配置図. 16.
(19) 図5.C ステーション(新卒)空間配置図. 17.
(20) 図6.D ステーション(管理者)空間配置図. 18.
(21) 図7.D ステーション(新卒)空間配置図. 19.
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参加者:黒崎雅子 ( 理事:栃木、訪問看護ステーション星が丘 ) 、杉原幸子 ( 役員:君津中央病院医療連携室 ) 、大桐 四季子 ( 役員:ふたわ訪問看護ステーション
の 立病院との連携が必要で、 立病院のケース ー ーに訪問看護の を らせ、利用者の をしてもらえるよう 報活動をする。 の ・看護 ・ケア
では,訪問看護認定看護師が在宅ケアの推進・質の高い看護の実践に対して,どのような活動
〇齋藤会長代理 ありがとうございました。.