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精神異常を呈せる重症「ヂフテリア」の一例

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Academic year: 2021

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臨 床 實 験

〔欝謹誘1怨讐帯〕

精紳異常を呈ぜろ重症「ヂフテリア」

の.一例

東京女子留学二丁學校耳鼻咽喉科教室(主任.石原敏授) 今 イマ (受付 昭和16年6月28日)

西 隆

ニシ タカ

緒 言

「デフテリア」毒素の中毒素作用により起りたる精紳異常は甚だ稀なり。余は最近之に遭遇せり。 患者は初診時より重症,且つ牙關緊急ありて充分なる談話不能,附添ひも友入のみなりし爲詳細に 家族歴,既往歴等聞く事出隅す,煎ふるに市立可惜病院に入院希望にて,物欲屈を出したりしが夜 警かりし爲,翌朝自動車を廻すとの事にて,止むなく一晩入院せしめたるに翌朝既に精紳異常を帯 して狂暴性にな)tし等の事情にて,之を稜表するには不備の難多く遺憾とする所なるが,稀有なる 症例と考へ報告する次第なle’o

症 倒

患者 吉村某 42歳の男子 某局配給員。

初診昭和16年4月22日。

主訴 咽頭痛 牙關緊急。.

家曄父健在・既亡(姻不明)。患都ま15鞘繍せしも去坦2朋來妻e’eJtr居生瀧なし・子岱

もなし・遺傳的關係は叔父が渡緬申異常を來せし事ある槻在膳逓な陛・ 臨往歴 13年前徽毒7淋疾に罹患したYo2∼3年前紳輕衰弱にかNりたる事ありて眠られず,総々として Hを過し,何の療法もせぎりしが1ケ月位icて治癒せb。2ケ月前扁桃腺炎に罹患せしが2∼3’ gにて治癒せ りと。「ヂフテリアー)にかXbたる事なし。性質はZF素無口なる方にて当り交友もな・く,異常な程侮約家なり し出。 現病歴 4月20日より襲熱咽頭痛起りたるも又扁桃腺ならんと思ひ,解熱剤を服用し,氷にて咽頭部を 冷し,厭床し居たるも一向に解熱せざるのみならず・牙關緊急も加pt:る爲・朝2蹄午前龍礪働砂 病院にて診察を受け,「ヂフテリア」を疑はれ,夕刻本院を訪へり。 現症 艦温38.8℃,賑搏128,や瓦微弱にして不整なり。呼吸数22。髄格,榮養共に中等度,・ 一 64 一一

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317 顔面蒼白にして甚だしぐ苦悶歌なり。顎下淋巴腺爾香餌付紐頭大に腫脹す。・胸部に於て心置やN微 弱,雑上等なし。呼吸音正常d腹部著攣なし。全身盗血L斑なしd 鼻は正常にして義膜等なし。「 咽頭を診るだ雨側扁桃腺孫び咽頭後壁左側は友白色の厚き義膜にて掩はれ,咽頭後壁の‘部は壊 疽性にじて,’・和臭甚だしく3可成り高度の牙關緊急あり。塗抹標本にて.「ヂフテリア」菌を認む6 咽頭「ヂフテリア」「と診断。・.羽生届提出,市立白露病院ぺの動軸自動車の來る迄謡時當院傅染病 室に牧起す。’ 維過及び治療 初診時帥刻・「ヂフテリア」噛t清10000転位注射すσ夜間一一睡もせナ6 4月23日,早朝より興奮し,病室より飛び出し廊下を:無蓋かけ廻り.逃げ麟らんとし少し.も落付 かす6儲温38. 」r oC ,腿搏130。咽頭の義膜はやN減じ白色となれり。注射部位に盗1むし斑を認む○看 着せしむるに附添ひたる20年來の友人に向ひ,’“毒を飲ませてひどい”と盛に大聲にてどなり.暴 れ出したり。暫くして多少落付き,「ベット」に腰掛け,幾分話す事が理解出熱るがと思ほれる位に なりたりしが又段々悪化し,午後廻診に際し開口せす。甚だしく興奮し,「ベツb」の下にもぐり;全 身を振はせて嗜泣す。無理に「ベット」に乗せれば上に立ち上り,布團をかむりてくるぐると舞ふG. 又は「ペット」の下に入り込む。鎭静剤の注射をせんとすれども遂に如何ともする事能はす,たぐ看 覚し居たりしに,夕刻や玉静まり來れる所へ柔生患者が信頼せる育て親來りてすっと静まり1,漸く1た して「ベロナール」tg.を経口的}趨盲尋へ,「ルミトロ琶ン」0.8cc比較f・1勺おとなしく注射させた)1。J績 けて120%葡萄糖注射液に「ビトン」2cc,「ビタカンフアー」lccを加へ注射す。’静かになりてよ.. りはすつと猫短し趣け,手を痙攣性匠絶えす動かし疲:理性なり。睡眠は障碗iされ一睡もせざりぎ0 4・月’24日,』朝に至り『約1時間牛就眠す。その後は前同様に選り何事かさ瓦やけり。艦温38,6℃ 脈搏’1 38,依然としてやx微弱にして不整なりげ 午後精祠1科池田…敦授に受診。 當時の鼻歌は意識濯濁,運動性不安,幻日あ)1て誰妄状態なり。興奮酔態にて錨課せり。「ヂフ テリア」毒素によれる精神症厭にして,「ヂフテリ、ア」性精紳試論と診漏せらる。 なほ血清10000汚血追加注射せPl。膀胱麻痺起り,自然排尿なく,導尿を行Ot 1300cic.排出せり。 尿所見は赤福色.にして多少漏濁す。反慮は酸[生。蛋白質中等度陽性,「ウPビリノ:一ゲン」腸陽性に して,糖,「アセトン」なし。沈渣には圓嬉1覗野ypm位,白」血球2∼3個認む。その夜より意識や エ恢復せしが漸次今臓衰弱し,「チアノーゼ」來り,鼻翼呼吸を始めたり6 4.月’25日.朝導尿,750c.c.,尿所見は前日にほし“同じ。膿温38・4eCl,脈搏132にして甚だ微弱 となり,強心剤を蓮績注射せしが正午には昏睡状態に陥り,午後6時20分鬼籍に入れり。’

悪性「ヂフテリア」は症ナYk猛烈を極め,病竈の進行蔓延する事迅速にしr(,獲病2∼3日にして その極に達し,「中毒症歌甚だしくダ.心臓麻痺め下に早期に死の蒋蹄をとるもの多しり義膜ば乳白色 一 60r’ .一

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乃至次白色より、は寧,汚繊なる曙鳶色を帯び,喉頭に下降進行する事は稀なりe・本例の義膜は初診時 咽頭後壁の一部は暗出色,壌疽性にして,他は次白色にて,喉頭には下降せざ})・き。一般に尿量減 少し,蛋白質,・圓椿,白血球及び赤血球を誰明する事多し。本例に於ても蛋白質中等度陽性,圓{藷 白血球を認めた尻特有なる事は顎下淋巴腺の高度の腫脹にして,周園組織の浮腫性腫脹を俘ひ, 甚だしき時は側頸部淋巴腺も腫脹し,恰も壷鐙の如き形駄を呈し,墜痛著明なり。この患者は爾側 顎下腺中指頭大にして浮腫は著明ならす。又皮膚深部に極めて小なる,多くは帽針頭大,或は誹種大 の暗青色の小出血斑を見る事も特有なり。之は全身に見らるx心あるも就中,背部より四肢に現は れ,又早期に注射部位に現はるNものにして,・多く豫後不良なる事を物語り,比較的早期に出現す るが故にその意義極めて大なり。本症例は入院2日目に上搏注射部位に現はれたり。悪性「ヂフテ リア」の最も特有なる著明な病攣は循環器系統,就中,心臓に存し,経過の長きもの程心筋の重篤 なる転化を秘す。省「ヂフテIJ’ア」毒素は心臓それ自身の他に心臓神経系に作用し,併せて血管蓮 動銀経囎卑を來し,血璽を下降せしむると櫓せられ,その血墜降下ぱ豫後に重大なる關係を有する

ものな%

急性傳染病によって躁病,緊張病,麻痺性療呆等の固有精紳病が誘起せらるX場合頗る多しと錐 も,亦他に急性重織病によりて精薄障擬を惹起する場合もあり。自Pち(1)意性傳染病Qための艦 温上昇に基き,(2)病原菌或は毒素の中毒作用により,(3)その病的機縛に因する組織分解産物に よる中毒により,(4)臥煙病による物質代謝異常により,(5)衰態,虚脱の結果として,(6)病原 菌毒素の後作用に基き,種kの精神作用を來すもの.なり。その中病原菌或は毒素の中毒作用により 起ψたるものは「チフス」に於て最も多く,その他「インフルエンザ」,「マラリア」,、天然痘,狂六 病,敗血疾患,小舞踏病等の時経る事あるも,「ぞフテリア」毒素により起りたるものは甚だ稀にし て,急激に誰妄の來るものなり。かエる精紳異常を來せるものは局所々見の如何に拘らす重症にし て豫後不良なり。 鑑別すべきものは徽毒によるものと熱性誰妄なり。徽毒によるものは急に誰妄來らす。熱性誰妄 は「チフス」,天然痘,狸紅熱,丹毒,聖節「ロイマチスムス」,肺炎等に見られ,400C以上の高熱に 謝るものなり。遺例にては39。C豪にして熱性誰妄の起るが如き高熱にあらす,叉既往歴に徽毒あ

llb・fe・“)しが購偉るもの購徽急激1醜蘇らす・この船輩「ヂフテリア」なりし爲「ヂ

フテリ1ア」毒素の中毒作用によれる精紳障凝と診断せられたり。 療法「ヂフテリア」治療潮岬の大量注射,葡萄糖溶液注射,ヴィタミンC及びBβ副腎皮質「ホ ルモン」を與へる等原因たる「ヂフテリア」の療法並に強心齋1につとめる事なり。その他は封症療 法にして,榮養を盛にし,鎭値踏を與へ出來得る限り安静を保たせるのは勿論なり。

輯録は42歳の男子にして,獲病4日目に急に「ヂフテリア」毒素の中毒作用によむ起りたる精 細障凝を來せるものにして,「ヂフテリア」ti1清200eo海温の注射を行ひ種々療法につとめた.りし.

一66一

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319 ・が効なく,獲病6日目,入院4日目に不幸なる轄編をとりたる例なり。 稿を終るに臨み終始御懇篤なる御指導,御絞閲を賜yたる石原教授,佐藤助教授並に精神科池 田教授に満腔の謝意を捧ぐO :文 蹴 1.唐澤光徳,和泉成之:「ヂフテリー」篇 日本内科全書 8谷 7班 昭和7年 :2.三宅鑛剛,松本高三郡=精紳病診臨及治療學 194頁Q 3・林 光 圏:悪性「ヂフテリー」に關する研究 日傳會誌 IO巻 7,11,12號 昭和11年 一一一 67 一

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