41 (東京女医大誌 第25巻 第7号頁283−285昭和30年7月)
〔臨 床 実 験〕
膀胱帯状庖疹の一症例
東京女子医科大学 中山内科教室 (主任 中山教授) 西 ニシ 千 チ 鶴 ヅノレ 東京女子医科大学皮膚泌尿器科教室 (主任 中村教授) 助教授 梅 ウメ (受付 津 ツ 隆 リウ昭禾030年3月24日)
子 コ 膀胱帯状三三は膀胱粘膜に発する小水平群で薦 骨神経支配領域にみられ我国に於ては大正15年佐 谷氏の報告に始まり昭和2年に秋田氏,井尻氏の 各一1例,昭和3年武市氏の1例,昭和25年岩田氏 の報告等僅かに数十を見るにすぎなV・。私共は今 回血尿及び腎臓部疹痛を主訴とした患者で腎臓結 石と即断し詳細なる検索の結果,膀胱帯状癒疹でP
80 尿{ ある事を確認し得た症例に遭遇したのでここに報 告する。 症 例 患者=大○武 18才の男子 学生 既往歴;遺伝的関係に於て特記すべきものはない。 既往としては昭和廿九年六月某医に尿蛋白ある事を指 摘され,安静を守り塩分,蛋白の制限をして九月中旬 には蛋白陰性となり普通に通学していた。『
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1 F 1 } F 三 一一@288 一42 発病来歴:9月27日夜急激に右腎臓部に痛みを覚え 熱感があり,幾分尿意頻数を感じた。翌9月28日全身 倦怠及軽度の右腎臓部下痛があったが登校した処,午 前10時頃突然血尿を認めたので自宅に戻り臥床した。 この時浮腫は認められなかった。翌29日,筒血尿,落 丁が続いた為,某大学病院を訪れた所,膀胱結石の疑 いの下に膀胱鏡検査ならびに腎孟造影術を施行され結 石の存在は認められなかったが腎孟造影写真で右腎の 陰影を認めずttIC何等かの障害のあるのを思はしめ た。翌9月30日筒疹痛が軽減しない為,某医に鎮痛剤 の注射を受けた。10月1目右側腹部から腰部にかける 疹痛及血尿を主訴として当内科に入院した。 入院時所見;体格栄養中等度,体温38・7。C脈 搏83,やや不整,眼瞼結膜正常,舌は湿潤,咽頭 異常なく肺,心臓に異常なし,腹部は平坦,鼓腸 なく肝脾をふれす。右側腹部を双手触診すると軽 い抵抗あり圧痛を訴えた。その他に異常なく浮腫 も認められなV・。 入院時の尿は茶褐色,肉眼的血尿でなく中等度 に且つ禰蔓性に潅1濁し反応は弱酸性,比重1020,
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甲 状 疹 蛋白陽性,検鏡すると多数の赤血球白血球及び穎 粒状円柱を認めたが結核菌,その他の細菌並びに 尿石も認められなかった。 .血液所見;血色素数77%,赤血球数440万,白 血球数8,900,血液残余窒素37.7mg/d1 血圧,最大血圧168最低血圧110mm。 経過及び治療;入院後4日闇は樹38。C程度の 発熱,腎臓部疹痛を認めたが,入院後5日目頃よ り下熱し腎臓部疹痛も去り,8日目頃には全く自 覚症状は認められなくなった。 尿は入院翌日,樹少量の凝血を認めたが第5日 目には肉眼的には血尿なく蛋白も陰性となり顕微 鏡的に赤血球を認むるのみとなった。血圧も最大 血圧110最低血圧75mmに下降した。 第7日目,田村教授の診断では右回は立位で濟 より一横指半上部にふれ,膀胱部圧痛あり,前日 行いし静脈性腎孟造影の結果,右尿管拡張と位置 異常を認め,右尿管のうつ滞,並びに両側の遊走 腎のあることを確認した。 月労 月光 金鼻i 戸斤 見 9Jo 9日膀胱鏡検査を施行した所見では,膀胱容量 150cc,粘膜は全体に軽度に充血し右尿管ロを中 心に後壁から側壁にかけて右側に偏して血性小水 一群を約10カ所認め,何れも紅景に囲まれてv・ た。当該水萢群に二って左側から怒張一血管の走行 がみられた。尿管口:右側は側方から小水庖によ って被われている為,その形は不明であるが,週 期的に活具な運動を認め透明な尿が噴出する。左 側はコンマ型を呈し異常はない。三角部:軽度の 充血を認める以外変化はなV・。尿管カテテリスム スにより容易にカテーテルは腎孟内に達し得た。 ・fンヂゴカルミン排泄は初発時間右4’54”,左3’ 53”。濃青時間,右5’11”,左4’ISttで略々正常。 本膀胱鏡検査により膀胱帯状萢疹のある事が確認 一 284 一43 された。以後膀胱洗瀞を繰返し10月21日次回膀胱 鏡検査を施行した所見では容量250cc,粘膜は依 然として軽度に充血し前回見られた小水萢群は大 部分紅量に囲まれ允粘膜下出血となっているが. 伺一部のものは一血性小水癒群として残っていた。 然し全体に扁平化して居り潰瘍疲痕等はない。■ ンヂゴカルミン排泄は初発時間右3’45”,左3’ 20”,濃青時間右4’10”,左4’40”。腎尿は:左 右共に特記する変化はみられなかった。 第皿回膀胱鏡検査(4/11)容量250cc,粘膜の充 血は去り発疹部は数コの充血斑を残すのみとなり 潰瘍,疲痕,出血等はない。■ンヂゴカルミン排 泄,初発時間右3’30”,左2’50”o濃青時間右4’ 09”,左3’20”で正常,逆行性腎孟撮影術では前 回の変化と大差なかった。全身状態も野良で自覚 症状もなく,尿には蛋白赤血球なく,経過良好で 11月5日退院した。 考 按 本症の診断は甚だ困難であるが臨床的特長を列 挙すれば,通常の帯状疸疹と同様に神経痛性疹痛 を以て始まり,他覚的には肉眼的野至顕微鏡的血 尿あるも膿尿はなく細菌も証明されなV・。皮膚の 帯状萢疹と合併することもあるが,単独に膀胱粘 膜にのみ見られる事もある。膀胱鏡検査ではその 左右何れかの偏側の膀胱粘膜(多くは膀胱底及び それに接続せる側壁)に紅量をめぐらせる数個の 小水萢群或V・はその剥離乃至潰瘍になった面より 出血する所見を見,凡そ10∼20臼後再検査すれば 治癒して搬痕をとどめるにすぎなV・のが普通であ る。 本例は腎臓部疹痛と血尿とを以って始まり,は じめは腎臓或V・は尿管結石乃至膀胱結石或いは腎 孟炎を思わしめたが膀胱鏡検査の結果,典型的な 水疽群を認め膀胱粘膜に単独に発した帯状癒疹の 一症例であった。 当院での腎孟造影写真で右腎孟並びに尿管の拡 張をみたのは遊走腎のため尿管の屈曲を来し,尿 のうつ帯によりおこったものであり,結石或V・は 腎孟炎を思わせた右腎臓部の疹痛は右尿管口が帯 状癒疹のため浮腫状に腫脹して尿管口が閉塞され て,尿のうつ帯によって腎孟内圧の上昇,腎うつ n’R,腎被膜の緊張を招来しておこったものと考え る。X線に結石陰影を認めなv・ことにより結石 を,尿中に細菌を認めす,右腎尿から透明尿の噴 出することによって腎孟炎:を除外し得た。 文 献 1)佐谷有tr :皮膚科泌尿科雑誌 26599 P 2) 秋田玉郎: tt 27 3)武市利雄: 〃 28 4) 井尻:皮膚科泌尿器科雑誌 35 101 (日召禾08年) 5)岩田正三:日本泌尿器科学会誌 41 146 (昭禾l125年) 6)谷奥喜平:臨床内科小児科 8 1,27 (昭和28年) 一一一 285 ’”=