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ポリープ様声帯の電子顕微鏡的観察

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原 著 〔東女医大誌 第60巻 第9号頁829∼836平成2年9月〕

ポリープ様声帯の電子顕微鏡的観察

東京女子医科大学附属第二病院耳鼻咽喉科(部長:荒牧 元教授) ウエ ハラ マ ユ ミ

上 原 真 由 美

(受付平成2年4月26日)

Electron Microscopic Observation of Polypoid Vocal Cords:Reinke,s Edema

Mayumi UEHARA

Department of Otolaryngology(Director:Prof. Halime ARAMAKI) Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital

From 1987 to 1988,16 patients of Reinke’s edema were treated with endolaryngeal microscopy at

Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital.

In this report,16 cases were referenced with light microscopy and transmission electron mlcroscopy・

The results are as follows:

1)The pathological change of Reinke’s edema was mainly observed at subepithelial layer.

2)Light microscopically,Reinke’sedema was classified into three types(edematous type, fibrous

type and mixed type).

3) Electron microscopically, Reinke’s edema was classified into edematous type, fibrous type and degenerative collagen type.

4) Spiraling collagen fibrils were observed in degenerative collagen type.

5)After hyperpermiability of capillary vessels, interstitial changes were divided in two ways:①

edematous type which changes for fibrous type,②degenerative cellagen type with spiraling collagen

fibrils. 緒 言 耳鼻咽喉科領域において榎声を来す良性疾患に は,声帯結節,声帯ポリープ,ポリープ様声帯が ある. ポリープ様声帯は,1891年にHajekによって Halek病として報告されたこと1)に始まる.それ 以後現在に至るまで,ポリープ様声帯の成因を含 めた病態に対しては,声帯ポリープの進展したも の2),声帯の浮腫変化によるもの3>など,一致した 見解はなく,未だ不明な点が多い. 今回,東京女子医科大学付属第二病院耳鼻咽喉 科でポリープ様声帯と診断され,ラリソゴマイク ロサージャリーを行った16例に対して,病変部の 一829 光学および電子顕微鏡的観察を行い,成因と病態 に関し若干の知見を得たので報告する. 対象と方法 1.対象 1987年10月から!988年10月までに東京女子医科 大学付属第二病院耳鼻咽喉科でポリープ様声帯と 診断され,ラリンゴマイクロサージャリーを受け た16例の声帯病変部である.対照例としては,喉 頭癌にて放射線治療後に喉頭摘出術を行った声帯 の肉眼的に健常部と思われる部分を用いた. 2.方法 組織標本に対しヘマトキシリソーエオシソ染色 (以下HE染色)を行い光学顕微鏡で観察した.電

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子顕微鏡用資料は病変部を2.5%グルタールアル デヒドおよびオスミウム酸固定し,型のごとく包 埋・超薄切片を作製した後,酢酸ウランとクエン 酸鉛による二重染色を行った.一部の切片につい

てはタンニン酸染色とperiodic acid meth−

enamine silver染色(以下PAM染色)を行い, 透過型顕微鏡(日立H−800)を用いて観察した. 結 果 1.臨床統計(表1) 1)主訴 初診時に16例全例が嗅声を訴えて来院した. 2)性および年齢 性別では,16例中男性7例(44%),女性9例 (56%)と性差は認められなかった. 年齢は29歳から67歳で平均52歳であった.ピー ク!ま40歳台で6例(39%)であった.次いで50歳 台に多かった. 3)病悩期間 最も短いもので1ヵ月,最も長いもので10年で 平均5年であった.1年以上の症例は14例であり, 5年以上の症例は7例であった. 4)誘因 誘因は,不明例が多く14例(88%)であった. 他に,選挙の応援演説による音声の過剰使用1例 と感冒による1例であった. 喫煙については,8例にみられた.1日20本以 上の喫煙をしているものは2例であった. 日常の音声使用の多い職業は5例で,その内訳 は市場勤務2例,デパート勤務1例,寿司屋1例, 政治家秘書1例であった.またカラオケ愛好家1 例がみられた. 5)手術法 16例全例に切除法を施行した. 6)治療成績 14例は自覚症状の改善の時期には差があるもの の経過は良好であった.自覚症状の改善の遷延が あり,肉眼的にも声帯の浮腫性病変を再度認めた 2例に再手術を行った. 2.光学顕微鏡的観察 1)粘膜上皮 ポリープ様声帯上皮には著変はなかったが,16 −830 表1 ポリープ様声帯16例 症例 年齢 性 病悩期間 喫 煙 声の使用 1 T.K. 40 ♂ 8ヵ月 2 T.F. 52 ♂ 1年 20/day 市場勤務 3 M.K. 59 ♂ 1年 30/day 4 M.S. 57 ♀ 2年 5 F.K. 44 ♀ 7年 デパート勤務 6 K.S. 52 ♀ 10年 7 E.T, 65 ♂ 10年 30/day 市場勤務 8 Y.Y. 60 ♀ 10年 9 T,1. 67 ♀ 5年 10 M.N. 55 ♀ 10年 5/day 11 K.T. 47 ♀ 3年 12 K。・1. 29 ♂ 1年 10/day 寿司屋 13 N.S. 67 ♂ 6年 10/day 14 R。M. 41 ♂ 1ヵ月 政治家秘書 15 K.Y. 48 ♀ 3年 15/day 16 H.1. 48 ♀ 3年 10/day カラオケ愛好家 例中2例に角化を認め,2例に肥厚を認めた. 2)粘膜固有層 ポリープ様声帯の粘膜固有層の変化は,間質に 浮腫を強く認める浮腫型10例,線維化を強く認め る線維型3例,浮腫型とも線維型とも区別しにく い混合型3例を認めた. 3.電子顕微鏡的観察 1)粘膜上皮 ポリープ様声帯16例の上皮に特異的な微細変化 は認めなかった. 2)粘膜固有層 この部位は主に粘膜上皮直下について電子顕微 鏡で観察した. 健常声帯においては,毛細血管は無窓性であり, その周囲は2∼3層よりなる基底膜によって覆わ れていた(写真1,2).間質には多数のコラーゲ ン線維束が観察されるが,靱帯のように間質全体 がコラーゲン線維によって占められるのではな く,基質の豊富な像として観察された.また,コ ラーゲン線維束の周囲に弾性線維も認められた (写真2). ポリープ様声帯においては浮腫型の間質は粘液

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4 露、「∫1鮎. ・

写真1 健常声帯の粘膜固有層(二重染色,×3,400) 上皮直下に無窓性の毛細血管を認め,その基底膜は 2∼3層であった. 写真2 健常声帯の粘膜固有層(タンニン酸染色,× 1,900) 基質が豊富でそのなかにコラーゲン線維束(↑)お よび弾性線維(▲)を認めた,End:毛細血管. 様の物質で充満しており,電子顕微鏡では電子密 度の低いamorphousな物質として観察された. 赤血球の浸潤や線維芽細胞の変性像が観察された (写真3).コラーゲン線維が,毛細血管周囲にわ ずかに認められた(写真4),毛細血管の基底膜は 4∼5層認められた(写真4).また,コラーゲン 線維の崩壊像が一部観察された(写真5). ポリープ様声帯の線維型ではコラーゲン線維, 弾性線維共に正常に比して多くなっていた.線維 凝麟己、 鮫薮醗 野

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写真3 ポリープ様声帯症例4の粘膜固有層(二重染 色,×1,440) 間質は電子密度の低いamorphousな物質で充満し ていた,赤血球(↑)の浸潤や線維芽細胞(Fib)の 変性も認めた.

写真4 ポリープ様声帯症例3の粘膜固有層(PAM 染色,×2,200) 毛細血管周囲にわずかにコラーゲン線維(↑)を認 めるのみである. 芽細胞は正常に比して多数観察された(写真6). このコラーゲン線維には64nmの周期をもつ縞状 構造が観察された(写真7). ポリープ様声帯の混合型では,毛細血管の基底 膜が多数増生し5∼6層として観察された(写真 8).内皮細胞の細胞質突起および小空胞が多数出 現していた(写真8挿入写真).毛細血管周囲には 多数のspiraling collagen飾rilsカミ認められた (写真8,9).また血管周囲以外の間質の浮腫状 部分においても,この線維が認められた(写真10). 一831一

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写真5 ポリープ様声帯症例4の粘膜固有層(タンニ ン酸染色,x7,200) 間質はamorphousな物質が充満し,その中にコ ラーゲソ線維の崩壊像(↑)を認めた. 写真6 ポリープ様声帯症例8の粘膜固有層(タンニ ン酸染色,x3.000) コラーゲン線維(↑),弾性線維(↑)ともに正常に 比して多く,線維芽細胞(Fib)も多数観察された. spilaring collagen飴rilsには電子密度の高い物 質が付着しており,その影回構造も不明瞭であっ た(写真9,10).弾性線維は観察されなかった.

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調

、冠 ・1癬 ヂノ 写真7 ポリープ様声帯症例8の粘膜固有層(タンニ ン酸染色,×8,700) コラーゲン線維は周期性のある縞状構造をしてお り,線維性をなしていた. 写真8 ポリープ様声帯症例1の粘膜固有層(PAM 染色,x1,500) 毛細血管の基底膜が多数増生していた.PAN染色 陽性spiraling collagen丘brilsカこ観察された(↑). 挿入写真(タンニン酸染色,×5,000):小空胞(↑) を示す. 考 察

ポリープ様声帯は1891年にHajekによって

Hajek病として初めて報告された1).その後声帯 の微細構造について初めて研究を行ったReinke にちなんで,Reinkeの浮腫と称されるようになっ た4).またポリープ様声帯,ポリープ様変性とも称 されるようになった.現在わが国ではポリープ様 声帯が一般的となっている,その定義について切

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曝榔.

鯵轟

ト ゆ 写真9 ポリープ様声帯症例1の粘膜固有層(タンニ ン酸染色,×5,700) 毛細血管周囲に多数のspirahng collagen丘brilsを 観察できた(↑).End:毛細血管. ゴミ驚

写真10 ポリープ様声帯症例7の粘膜固有層(タンニ ン酸染色,×3,900) spiraling collagen丘brils(↑)には電子密度の高い 物質が付着しており,縞壁構造は不明瞭となってい た. 替は,声帯のびまん性腫脹状態と述べている5}.ポ リープ様声帯は嘆声を来す良性の喉頭疾患の領域 に入り,諸家により臨床統計,治療や病理等の様々 な報告がなされているが,成因等の病態について は不明な点が多い.また,電子顕微鏡的観察につ いても今までTillmannら6〕とKoutsibelasら7)に より報告されているのみであり,充分な観察は行 われていない.そこで今回の電子顕微鏡的観察に より得られた知見を基に,ポリープ様声帯の成因 と病態について考察を行った. 1.臨床像について 1)主訴 諸家の報告にもみられるように主訴の大半は嘆 声である8)陶’1》.他に見られる症状として喉頭の違 和感,閉塞感,乾燥感,呼吸困難等がある.他科 にて,心不全や喘息と診断されている報告例もあ る.本報告では15例が七声を訴えていた.1例の み入院時に呼吸困難と咳声を訴えていた.主訴の みでみると比較的症状が軽度の内に来院している と考えられた. 2)性および年齢・ 性差についての諸家の報告はまちまちであ る8)覗》.本報告では,男性7例,女性9例で性差は みられなかった. 年齢については40歳以上に見られるという報告 が多い.本報告では40歳台にピークを認めた. 3)病悩期間 米川らによると,5年以上のものが約半数を占 めている11).本報告でも同様に慢性の経過をとる ものが多かった. 4)誘因について 諸家の報告をみると,喫煙12),声の酷使,年齢変 化や感冒などがあげられている.これらの報告を 総括して米川らは,外的因子として喫煙と日常の 過剰な音声使用等の慢性刺激が,内的因子として 加齢による声帯の層構造の変化がポリープ様声帯 の発症を引き起こすと推測しているm.本報告で も日常生活での喫煙や音声の過剰使用が比較的多 くみられた. 5)手術法 現在のポリープ様声帯の治療に関しては,保存 的治療の効果は乏しいとされており,外科的治療 としてマイクロサージャリーが主体をなしてい る.マイクロサージャリーの手術法としては,病 変部を切除する切除法,sucking techniquelo), squeezing法11}などがある.切除法に関しては,音 声の回復が遅いとする報告もある.しかしながら 経験的にsucking tec㎞iqueで}ま充分に病変部を 網羅できないことがあるため,我々は手術例も多 く確実な切除法を全例に行った.ただし切除法を 行うにおいても,声帯遊離縁の保存が必要である. 一833一

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2.光学顕微鏡的観察 平野らによると,光学顕微鏡レベルでの健常声 帯の構造は次のごとくである13). 声帯は粘膜上皮,粘膜固有層および声帯筋の3 部分より構成される.粘膜上皮の声帯遊離縁は重 層扁平上皮から成り,喉頭室側と声門下院側では 多列線毛上皮に移行している.粘膜固有層は浅層, 中間層と深層に分けられる.浅層は線維成分(コ ラーゲン線維と弾性線維)が少なく,基質の多い 疎性結合組織より成っている.中間層は弾力線維 が密に存在しており声帯靱帯を形成している.深 層はコラーゲン線維が最も密に存在している.一 般にReinke’s spaceといわれているのは浅層に 相当する. さらに声帯は年齢によって少しずつ変化を遂げ ている.栗田は,声帯の層構造が形成されてくる のが16歳頃,その後40歳台になると弾性線維の減 少,コラーゲン線維の乱れや限局性の増生が加齢 変化として出現してくると述べている14).

ポリープ様声帯は粘膜固有層のReinke’s

spaceの病変が主体であるということが,1895年 にReinkeによって報告されている4).その後ポ リープ様声帯の組織像はいくつかの型に分類され た.石井の報告では,上皮下組織の水腫のみとし ている8).尾形9),松尾10)は浮腫型,線維型と混合 型に分類している.さらに米川らは浮腫型,線維 型,肉芽型とに分け,その混合型として浮腫・肉 芽型,肉芽・線維型にまで分類し,特異的なもの として嚢胞を形成する例もあるとしている15).ま たFrenzelらは,浮腫の認められるgeratinous typeとsinus−like spaceの認められるtelan− gietatic typeに分類しているエ6).今回の我々の観 察でも諸家の報告と同様に,際立った粘膜上皮の 変化はなく,やはり粘膜固有層の変化が中心で あった.これらを間質の浮腫の強いもの(浮腫型) と線維化の強いもの(線維型),および両者の区別 がしにくいもの(混合型)に分類した. 3.電子顕微鏡的観察 正常声帯の電子顕微鏡像については,平野らに よって詳細に行われている13>.それによると,上皮 には最表層の多数のmicrovilliが存在しており平 滑な表面構造ではないこと,上皮細胞間隙は比較 的広く良く発達した細胞質突起を持って結合して いることが特徴である.これは,声帯の上皮が伸 展性,可動性を備えかつ強靱であることを裏付け ている.粘膜固有層については,それが1本1本 独立したコラーゲン線維,網状の弾性線維および 毛細血管により構成されていると述べている.特 に上皮に近い部分の毛細血管には,poreが認めら れたとしている.毛細血管の内皮細胞は非常に非 薄で,多数のpinocytotic vesicleが見られたとし ている.基底膜については明確に述べられてはい ない.他方Frenzelらは,毛細血管が無窓性で, かつ基底膜についてはそれが層状になっているこ とを観察している17). 今回我々が観察した声帯の健常部分は,平野の 報告に大略一致していたが,粘膜固有層の毛細血 管が無窓性で基底膜が厚い点では,Frenzelらの 観察した形態に一致していた. ポリープ様声帯の電子顕微鏡観察の報告はTiL lmannら6)とKoutsibelasら7)によるのみである. Tillmannらは,ポリープ様声帯で見られた上皮の 変化による基底細胞から有棘細胞にかけての細胞 間の拡大は,典型的な変化ではないとのべている. また上皮下に,大部分が線維芽細胞様の細胞に囲 まれる境界鮮明な拡張された間隙の形成という, 特徴的な病変があると指摘している6).しかしな がらKoutsibelasらの追試では,上皮細胞内に嚢 胞の形成と浮腫が1例報告で述べられている7). 我々は光学顕微鏡下の分類である粘膜固有層の 浮腫型,線維型と混合型にそって,さらに微細な 変化を観察するため電子顕微鏡による観察を行っ た.その際に一部の切片にPAM染色やタンニン 酸染色を施した.PAM染色は粘液多糖体を構成 する1,291ycol基の選択的染色法で,内皮下の基 底膜やコラーゲン線維をよく染める’8).タンニン 酸染色では弾性線維のエラスチンおよびコラーゲ ン線維が特異的に濃染される191.これら2種類の 染色法によって,二重染色よりもさらに間質の結 合織の変化を把握しやすくした. 浮腫型の間質は電子密度の低いamorphousな 物質で占められ,コラーゲン線維や弾性線維の消

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失を認めた.また,毛細血管周囲の基底膜の増生 (4∼5層)から血管透過性の充進が示唆された. 線維型では正常のコラーゲン線維や弾性線維が 増加していた. 浮腫型と線維型について表1より臨床的な検討 を行った.浮腫型は表1の症例2,3,4,9, 10,12,13,14,15,16でその病悩期間は5年以 内がほとんどであり,線維型は症例5,6,8で 病悩期間は5年以上であり,2つの型の間で病悩 期間に差がみられた.年齢をみると16例中15例が 40歳以上であった. これら2種の成因については以下のように考え られる.一般には40歳以上になると,正常声帯で も振動時のショックの負荷が増大する傾向にある といわれる14).その脆弱化した声帯に様々な誘因 で負荷がかかって,粘膜固有層の毛細血管に変化 を来し,透過性の充進が起こる.そして粘膜固有 層の間質に血管から血清成分が流入し,問質の結 合織が崩壊して浮腫を来す(浮腫型).その後,間 質の浮腫の修復機序として線維化が起こる(線維 型).松尾らは,ポリープ様声帯の内容物より酸性 糖蛋白のシアル酸と酸性ムコ多糖のピアルロン酸 を検出している20)が,今回観察されたamorphous な物質はこれらに一致するものと考えられる.こ の間質がacidosisに傾いているということば上 述の成因を傍証する. 次に混合型について考えてみる.電子顕微鏡の 所見においては,毛細血管周囲の基底膜;の増生お よび内皮細胞に小空胞が観察される血管の変化 と,spiraling collagen且brilsの出現が特徴であ

る.spiraling collagen 且brilsは1971年に

Stephens21)により報告された.またFukudaらは パラコートに暴露された肺胞の間質にspiraiing collagen 丘brilsを観察している.そしてこれが collagen価rilsのbundleが分離された後に見ら れてくること,また新生コラーゲン線維が観察で きなかったことから,彼らはコラーゲン線維の変 性像と考えた22).今までにspiraling collagen 丘brilsは,皮膚のconnective tissue dysplasiaや

肺の丘broleiomyoma, lymphan−

gioleiolnyomatosis,特発性肺線維症などにみら れており,慢性間質変性と関連のあるものに特徴 的な所見であった22). これまで間質の変化が中心であるポリープ様声 帯にspiraling collagen丘brilsを観察したという 報告はない.さらには,浮腫型,線維型ではspira− ling collagen飾rilsは観察されていない.従って, 混合型の組織形態はこれら2つの型とは別個であ るものと考えられる.本報告においては表1の症 例1,7,11がこの型を呈している.これら3症 例は浮腫型,線維素と異なり病悩期間の統一性が ない.このことにspiraling collagen fibrilsの出 現経過を考え合わせると,これら3症例は従来の 浮腫型から線維化の過程をたどるものとは異なる と考えられる.粘膜固有層の血管病変が起こった 後,間質に血清成分が流入する.そこで本来なら 酵素の導入によりコラーゲン線維の崩壊が起こっ てくるはずであるが,間質内の酵素活性に必要な 環境が不十分であったり,コラーゲン線維の酵素 に対する反応性が低下しているために19),コラー ゲン線維は変性するにとどまりその結果spira−

ling collagen fibrilsカミ出現すると考えられる.ま

たspiraling collagen飾rilsをま一度出現すると長 期間観察される22).これは統一性のない雄心聴聞 をもつ3症例すべてに,spiraling collagen飾rils が観察されることを裏付けている. 以上述べてきたように,従来光学顕微鏡下に混 合型とされてきた組織型は,電子顕微鏡下でspir− aling collagen且brilsカミ観察できたことにより, 初めて独立した別個の型であることが判明し,こ の型を変性コラーゲン型と命名した. これにより,従来光学顕微鏡下に浮腫型,線維 型,混合型に分類されていたポリープ様声帯を, 電子顕微鏡下では,①浮腫型,②線維型,③変性 コラーゲン型の3型に分類できると結論した. ま とめ 1987年10月から1988年10月までに東京女子医科 大学付属第二病院でポリープ様声帯と診断され, ラリンゴマイクロサージャリーを受けた16例につ いて,光学顕微鏡および電子顕微鏡により病理組 織学的観察を行い,下記の結果を得た. 1)ポリープ様声帯の病理学的変化の主体は粘 一835一

(8)

膜固有層であった. 2)光学顕微鏡下における観察では,粘膜固有層 の変化は,従来どおり浮腫型,線維型と混合型に 分けられた. 3)電子顕微鏡下における観察では,粘膜固有層 の変化は,浮腫型,線維型と変性コラーゲン型に 分けられた. 4)変性コラーゲン型は,病理組織学的には混合 型に相当し,電子顕微鏡的観察により変性コラー ゲンであるspiraling collagen且brilsを認めた. 5)ポリープ様声帯の形成は,血管透過性充進が 起こった後に問質の浮腫を起こし,続いて線維化 を起こすもの(即ち浮腫型から線維型を呈してく るもの)とspiraling collagen丘brilsを認める変 性コラーゲン型を呈してくるものの2つに大別で きた. 稿を終わるにあたり,本研究の機会を与えご校閲を 賜った荒牧 元教授,直接ご指導を賜った日本医科大 学中央電子顕微鏡研究施設長 相原 薫教授,佐藤 茂助手に謹んで感謝の意を表します.また,本研究に 協力頂きました東京女子医科大学付属第二病院耳鼻 咽喉科各位,B本医科大学中央電子顕微鏡施設各位に 心より感謝致します. 文 献

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参照

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