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新等価回路を用いた3,300V フルSiCパワーモジュールの動特性解析

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Academic year: 2021

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(1)

エレクトロニクス

ワイドギャップ半導体であるシリコンカーバイド(SiC)はシリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界、電子飽和速度、熱伝導率が大きい、と いう優れた特性を持つことから、次世代のパワーデバイス材料として期待されている。従来のSiを材料とした場合、スイッチング損失 の小さい金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)では、鉄道車両や電力設備などのインフラ用途で需要の高い3,300 V耐圧 を実現するのが困難なため、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)やPN接合型ダイオード(PND)が広く用いられている。我々 は、SiCを用いた3,300 V耐圧のMOSFET、ショットキーバリアダイオード(SBD)及びこれらを搭載したモジュールを作製した。 SiC パワーモジュールでは、高速スイッチングのため、モジュール内部インダクタンスで発生する過大電圧が懸念される。内部インダクタ ンスを等価回路で表すことはその解析に有効である。筆者らはモジュール全体を表現する新たな等価回路を開発したのでここに報告 する。

Silicon Carbide (SiC) devices are promising candidates for high-power, high-speed, and high-temperature switches owing to their superior properties. We have been developing SiC-based 3,300-V class metal-oxide-semiconductor field-effect transistors (MOSFETs) and schottky-barrier diodes (SBDs). Stray inductance in the module and the great current changing rate with high-speed switching may cause excessive voltage overshooting. Although equivalent circuits are effective for stray inductance analysis, previous equivalent circuit studies covered only a partial area of the entire module. This paper proposes a new method for the dynamic characteristics analysis using the precise equivalent circuit of the entire module.

キーワード:SiC MOSFET、SiC SBD、SiCパワーモジュール、低インダクタンス、等価回路

新等価回路を用いた3,300V フルSiC

パワーモジュールの動特性解析

Dynamic Characteristics Analysis of 3,300-V Full SiC Power Module

by New Equivalent Circuit

初川 聡

豊島 茂憲

築野 孝

Satoshi Hatsukawa Shigenori Toyoshima Takashi Tsuno

御神村 泰樹

Yasuki Mikamura

1. 緒  言

地球温暖化に対する国際的な意識が大きな高まりを見 せ、CO2排出量削減の必要性が広く認識されてきており、 また石油等の化石燃料資源の枯渇が近づきつつあることか ら、省エネルギー技術の開発が重要視されている。電気エ ネルギーは、非常に使い勝手のよいエネルギーであること から全エネルギーに占める割合は年々増加しており、それ を効率的に運用する技術の開発は、省エネルギーに向けて の重要な柱と位置づけられている。電力エネルギーはさま ざまな変換を受けて用いられる。その変換におけるキーと なるデバイスが、電力機器向けの半導体素子すなわちパ ワーデバイスであり、省エネルギーのためにより優れたパ ワーデバイスの登場が望まれるようになってきた。 パワーデバイスは、高耐圧化、大電流化、高速・高周波 化されているが、そのほとんど全てが通常の半導体と同様 にシリコンの上に作製されている。Siパワーデバイス分野 では、パワー用金属酸化物半導体電界効果トランジスタ、 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタなどの素子が開発さ れ、適用範囲が広がってきた。しかし、その特性はすでに 絶縁破壊電界や電子飽和速度等の物性値から導出される理 論的限界に近づきつつあり、Siに変わる新しい半導体材料 を用いた高性能デバイスの開発が望まれる。 新しい半導体材料の有力候補がワイドバンドギャップ半 導体である炭化珪素である。SiCは研磨剤や放熱材料とし て用いられてきたが、高品質な単結晶の開発に伴い半導体 としての研究が活発化してきた。SiCは、Si に比べて、絶 縁破壊電界、電子飽和速度、熱伝導率が大きくパワーデバ イスに適用する上で優れた特性を有することから、より高 耐圧、高速動作、低オン抵抗のデバイスを目指して、SiC を用いたパワーデバイスの研究開発が精力的に行われてい る(1)~(3) SiCショットキーダイオードが、市販されたのに続き、 スイッチングデバイスについても精力的に開発が続けられ ており、特に縦型MOSFETの開発が盛んである。これは、 SiのMOSFETの構造、プロセスをそのまま適用できるこ とに加え、大電流、高耐圧のデバイスとして期待が大きい からである。 筆者らは、3,300 V 400 AのSiCパワーモジュールを開 発し、その優れた高速スイッチング特性を確認した(4)。高 速スイッチングに伴い電流変化率が増大することで、内部イ

(2)

ンダクタンスにより過大電圧が発生する懸念がある。その 対策として、1,200 V 100 AのSiC低インダクタンスパワー モジュールの開発も行った(5)。3,300 V 400 A SiCパワーモ ジュールに関しても同様の低インダクタンスモジュールの 開発のため、内部インダクタンスの解析を行っている。そ れにはパワーモジュールを等価回路で表現することが有効 であるが、これまではモジュールの素子とインダクタンス を代表値で表す手法が知られていた。筆者らはモジュール の個々の構成要素を表現する新たな等価回路作成手法を開 発し、実測値によく合う結果を得たので、ここに報告する。

2. SiCパワーモジュールの新モデル

図1に開発した、3,300 V 400 A SiCパワーモジュール を示す。モジュールは、インバータで使用される際、高圧 側アーム(D1-S1)と低圧側アーム(D2-S2)の2アームで 構成される2 in 1モジュールである。1アームの順方向オ ン特性を図2に示す。ゲート電圧(VGS)が20 V、ドレイン 電圧(VDS)が2 Vの時に、400 Aの定格電流が流れること が判る。図3に内部構造を示す。6個のSiC MOSFETチッ プと、6個のSiC SBDチップが、1枚の基板に搭載され、 2枚で1アーム、2アームで2 in 1モジュールを構成する。 1アームあたりSiC MOSFET と SiC SBDがそれぞれ12個 並列されている。 図4に従来のモジュール等価回路を示す。SiC MOSFET とSiC SBDおよび内部インダクタンスが各々統合された一 つの代表モデルで表わされている。 新たな等価回路作成に際し、まずSiC MOSFETとSiC SBDの単体チップのSPICE※1モデルを求めた。MOSFETは NMOSモデル、SBDはDモデルを用い、測定値と計算値 がフィットするように手動でパラメータを調整して作成し た。図5にSiC MOSFETとSiC SBDの1チップの順方向特 性について、作成したモデルの計算値と実測値を合わせて 示す。計算値は実測値をよく模擬できている。次に端子、 基板上パターン、ワイヤボンドなどの導体による内部イン ダクタンスは、ANSYS Q3D Extractorを用いて、等価回 路として表した。 以上のSiC MOSFETおよびSiC SBDモデルと、インダ クタンス等価回路を組み合わせ、モジュール内部の等価回 路を作成した。その一部を図6に示す。図6は1枚の基板 D1 S1 S2 D2 D1 S1 S2 D2 S2 D2 D1 S1 Stray Inductance 図1 3,300 V 400 A 2 in 1 SiCパワーモジュール (130×140 mm2 図2 3,300 V 400 A SiCパワーモジュールID-VDS順方向特性 図3 3,300 V 400 A SiC パワーモジュール内部構造 図4 モジュール従来内部等価回路

(3)

上のSiC MOSFET 6チップとSiC SBD 6チップとそのイ ンダクタンス回路を表わしている。図では省略している が、各インダクタンス間には相互インダクタンスが存在す る。作成した等価回路をLTspice IVで計算を行うと、エ ラーが出るか、非常に長い時間を要する結果となった。エ ラーの原因はインダクタンス等価回路が複雑で計算が煩雑 になったためであった。そこで、影響の小さいインダクタ ンスを自動で省くようなインダクタンス等価回路作成プロ グラムを開発した。 その等価回路と組み合わせることで、エラーが発生せ ず、また短時間で計算ができるようになった。 これまでは、モジュールの動特性をシミュレーションす るには、電磁界解析が必要であったため、本方式の開発に より短時間でのシミュレーションが可能になった。

3. SiCパワーモジュールモデルの評価

図7にSiCパワーモジュールの動特性評価回路を示す。 動特性は100 µHのリアクタンス負荷を用い、 室温で 行った。図8に電圧1,650 Vのときの動特性波形を示す。 0 10 20 30 40 50 0.0 1.0 2.0 3.0 ID Drain Curren t (A)

VDS Drain Source Voltage (V)

Measurement Spice Model VGS=15V VGS=20V 0 10 20 30 40 50 0.0 1.0 2.0 3.0 I F Forward Curren t (A) VF Forward Voltage (V) Measurement Spice Model

(a) 3,300 V SiC MOSFET (1 chip) (b) 3,300 V SiC SBD (1 chip) 図5 順方向特性のモデルと実測値の比較 T1 T2 T3 T4 T5 T6 D2 D S S G D1 D3D4D5D6 図6 モジュール等価回路(1基板分) VDD = 1,650 V L=100 μH RG=2.2 Ω VGS VDS ID -5V 50 Pulse Generator 15V Module -5V -200 0 200 400 600 800 1000 1200 -5000 500 1000 1500 2000 0 10 20 30 40 50 ID ( A ) VDS ( V ) Time (μs) VDS ID VGS 50 0 V G S (V ) -200 0 200 400 600 800 1000 1200 -5000 500 1000 15002000 0 10 20 30 40 50 ID ( A ) VDS ( V ) Time (μs) VDS ID VGS 50 0 V G S (V ) (a) 実測波形 (b) モデルを用いた計算波形 図7 動特性評価回路 図8 動特性波形の比較(インダクタンス負荷スイッチング、電源電圧1,650 V)

(4)

図8(a)は実測波形で、図8(b)はSiCパワーモジュールモ デルを用いてLTspice IVで計算した結果である。実測値 では立ち上がり時間trと立ち下がり時間tfはそれぞれtr= 404 nsおよびtf=238 nsであるのに対し、計算値ではtr =402 ns およびtf=226 nsとよく一致する結果となっ た。また、VDSの共振周波数についても実測値で22.5 kHz に対し、計算値で23.2 kHzとこれについてもよく合う結 果となった。 次にモジュールを構成するSiCチップ毎の電圧電流の計 算を行った。このモジュールの動作側のアームは、図9に 示すように補助端子から見て、近接側と遠方側の二枚で構 成される。図10(a)にターンオン時、図10(b)にターンオ フ時の動特性計算結果を示す。チップ毎の各電圧VDSは等 しいが、電流IDについては、近接側が遠方側より大きい結 果となった。特に近接側にはターンオン時にオーバー シュートが発生しており最も電流が流れたN4チップでは 90 Aに達している。 近接側の電流が大きいのは、図10中でゲート電圧VGS が近接側では大きく遠方側では小さくなっており、これ が、MOSFETのオン抵抗の差を生じさせ、電流の差に現 れたと考えられる。また、近接側のオーバーシュートは、 遠方側のゲート回路のインダクタンスで信号が遅延し、近 接側のみに電流が集中したためと考えられる。 これらの結果から、各チップにゲート信号が同時に到達 するように、基板配線を改良する予定である。

4. 結  言

3.300 V 400 A SiCパワーモジュールの等価回路を作 成し、実測定波形をよく模擬できることを確認した。 今後は、このモデルを用いて、モジュール内での電流分 配を最適化し、オーバーシュートなどの異常波形を生じな い低インダクタンスモジュールの設計に生かす所存である。 用 語 集 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※1 SPICE

Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis: 1973年にカリフォルニア大学バークレー校で開発された 電子回路のアナログ動作をシミュレーションするソフト ウェア。

・ Q3D ExtractorはANSYS社の商標です。 ・ LTspice はLiner Technology社の商標です。

Sub terminals

Near side substrate Far side substrate SiC MOSFETs N1 N3 N4 N5 F1 F2 F3 F4 F5 F6 N2 N6 Source terminal Drain terminal

V

DS

I

D

V

GS

200ns

0

2kV

0

-10V

N1~N6

F1~F6

N1~N6

F1~F6

N1~N6

F1~F6

N1~N6

1kV

20A

40A

60A

80A

0

10V

20V

V

DS

I

D

V

GS

200ns

Overshoot Difference Delay

F1~F6

Delay

(a) ターンオン時

(b) ターンオフ時

図9 1アームのチップ配置図 図10 各チップ電流のスイッチング波形計算値(電源電圧1,650 V)

(5)

参 考 文 献

(1) M. Bhatnagar, B. J. Baliga, IEEE Trans. Electron Devices, 40 (1993) 645-655

(2) Z. Stum, A. V. Bolotnikov, et al., Mater. Sci. Forum., 679-680 (2011) 637-640

(3) A. Bolotnikov, P. Losee, et al., in Proc. ISPSD (2012) 389-392. (4) 酒井、豊島、和田、古米、築野、御神村、SEIテクニカルレビュー第187 号、pp.48-53 (2015) (5) 豊島、初川、平方、築野、御神村、SEIテクニカルレビュー第186号、 pp.75-78 (2015) 執 筆 者 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初 川     聡* :パワーデバイス開発部 主幹 豊 島   茂 憲 :伝送デバイス研究所 築 野     孝 :パワーデバイス開発部 グループ長 (理学博士) 御 神 村 泰 樹 :パワーデバイス開発部 技術部長 ---*主執筆者

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