• 検索結果がありません。

高分子水溶液の結合水に関する研究(Ⅶ) 高分子物質の重合度とその水溶液中の結合水量との関係について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "高分子水溶液の結合水に関する研究(Ⅶ) 高分子物質の重合度とその水溶液中の結合水量との関係について"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

    高分子水溶液の結合水に関する研究(Ⅶ)

   高分子物質の重合度とその水溶液中の結合水量との関係について

       西    内    豊    道

      (教育学部職業科教室)

Studies

on

Bound

Water

in Aqueous

Solutions

of Polymers.

(Ⅶ)

  On

the relation between the degree of polymerization of Polymer

substance

      and

the quantity of Bound Water in the aqueous solution.

       Toyomichi NiSHIUCHI (Laboj-atoりof Poりnier Chemistり, Educa£ion Faculり3 Kochi Uni-uersiり)  高分子物質の重合度の相異によってその水溶液中の結合水丿登がどの様Rニ変化するかを検討する為,重合度を異 にする Na-PA,PAA,PVAの各水溶液について夫々ディラトメトリック法により結合水蚤を測定し次の結 果を得た.即ち高分子単位量当りの結合水mFはその重合度によって変化しない.又前報において見いだした 粘度と結合水蚤との間の関係式.=4・η.-゜の,重合度の異なる二種の各試料水溶液についてのグラフは, Na-PA では平行直線となり(即ち&は重合度に無関係の定数で,αは重合度に関係する数値となる).PAAではヂが 略々8以上で大体平行な折線となり,PVAではηΓ=1の点(即ち無限希釈水溶液)で交はり,y,が8で折れる 折線となる.       1. 緒     言  既報1).2)においてポリアクリル酸ソーダ(Na・PA),ポリアクリル酸(PAA),およびポリヴィニ ルアルコール(PVA)水溶液の結合水量をディラトメトリック法によって測定し種々の結果を得 た.然しながら高分子物質の適性として,これ等の物質は全て多分子性を示し,相当分子量の異な ったいくつかの製品が市販されている.従ってこれ等重合度の異なる試料の水溶液中の結合水量に 差があるかどうか,あればどの程度のものかを明らかにすることは,・これらの物質を保護膠質剤と して工業的に使用する場合に対しても意義が深い.本報では重合度を異にするNa-PA, PAA,お よびPVA各二種の市販品についてディラトメトリック法により各種濃度の水溶液中の結合水量を 測定し,且つ前報1)において見い出した粘度と結合水量との間の関係式y=a-irir ”について,重合 度の異なる試料に対して検討を加えたのでその結果について報告する.

2。1.試料

  第1.

         2. 実 験 方 法

東亜合成KK製Aron

C粗Na-PA).の重合度の異なるもの二種を既報2)の如く

試料の重合度と分子量     -    一 匹1 DP      M PΛA(L)   /z  (H) PAA(L)   //  (H) Na-PA(L)   //  (H) 350 1200 2400 4600 2400 4600 15,000 53,000 173,000 330,000 225,000 432,000

常法によりメタノールにより精製し,次いでイ

オン交換樹脂処理によりPAA試料とし,その

一部をとってNaOHで完全中和しNa-PA試料

とする.またPVAは市販品(粗PVA)の重

合度の異なるもの二種を80%メタノールで充分

洗諮し室温で減圧乾燥して試料とした.粘度の

測定からこれ等の重合度を求めた結果を表1に

示した.ここでNa-PA水溶液においては高橋,’

(2)

 6      高知大学学術研究報告 第11巻  自然科学 n 第2号        -林,香川の式s)〔η〕= 6.52×10-3Po.64(25°C,溶媒2N NaOH,濃度g/100 cc)を,またPVA水 溶液・についてはFlory等の式4)〔η〕=2×10 ̄4Mo76(但し25°C,濃度はg/lOOml)を使用した.  2.2.装置及び測定法  既報のディラトメーターを使用して全く同様に測定した.粘度はオス トワルド粘度計を使用し,25±0.01°Cで蒸溜水に対する相対粘度を求めた.なお蒸溜水の流下秒 数は31.8秒であった.

      ろ.実験結果及び考察

 5.1.重合度と結合水量との関係  重合度の異なる各試料の各種濃度の水溶液の結合水量を求

めた結果を表2から表7までおよび図1に示した.

 図1より明らかな様にPVA,

PAA,

Na-PAとも重合度の相異によってその水溶中の結合水量9

に全く差が無い.従って各種高分子試料の結合水量を比較する場合,同程度の重合度の試料を用い

て比較する必要はなく,かなり重合度に差のある試料を用いてもよいことが明らかとなった.この

ことはまた高分子試料について面倒な分別操作を必要としなくても結合水量の比較の出来ることを

意味する.

       表2. PVA(L)水溶液の濃度,結合水量,粘度

      濃   度、      結合水(g) 二二千年二言 0.22 0.52 0.83 1.35 1。 2. 4. 99 95 0.22 0.52 0.83 1.35 1.98 2.92 0.05 0.12 0.19 0.31 0.45 0.67 26.43 20.86 15.40 10.69 7.45 5.31 4.02  結合水・mol PVA(L)U.M.    (n)    64.61   ■ 50.99    37.64    26.13    18.21    12.98     9.83 結合水 -全水分   ηΓ*  ηゆ/c  (%)  8.50   1.07  0.32 10.90   1.19  0.37 12.89   1.36  0.43 14.63   1.63  0.47 15.06   2.05  0.53 15.98   2.96  0.66 16.59   4.47  0.87 01   3.96   0.91  *図2の曲線から求めた.以下同様. 濃 表3. PVA(H)水溶液の濃度,結合水l,粘度   度 → (g/100cc) - 0.17  0.22  0.31  0.62  0.71  0.95  1.15  1.43  1.63  1.94  2.58  2.91  3.39 (wt%) 0.17 0.22 0.31 0.62 0.71 0.95 1.15 1.42 1.62 1.91 2.56 2.84 3.35 g ° e q -0.04 0.05 0.07 0.14 0.16 0.22 0.26 0.32 0.37 0.43 0.58 0.65 0.76 結合水(g) PVA(H)(g)    (φ    25.25    27.89    23.27    19.97    18.19    12.82    12.73     8.74     8.60     7.72     5.44     5.30     4.38  結合水mol PVA(H)U. M.     (n)    61.72    68.18    56.88    48.82    44.29    31.34    31.12    21.40    21.02    18.87    10.30    12.96    10.71 結合水 一 全水分   η「 (%) 5。 6。 7. 12. 12. 12. 14. 12. 14. 15. 14. 15. 15. 2 2 2 5 1 5 3 9 8 0 3 0 8 4 8 0 1 5 0 3 2 8 5 0 5 5 3 8 1 1   I   I I I 1.24 1.59 1.69 2.05 2.36 2.89 3.40 4.22 6.90 8.30 13.30 l ) t p / c 0.76 0.82 0.77 0.95 0.97 1.09 1.17 1.31 1.46 1.66 2.26 2.51 3.57

(3)

濃 高分子水溶液の結合水に関する研究 (Ⅶ)   (西内)  表4. PAA(L)水溶液の濃度,結合水量,粘度 度 結合水(g) PAA(L)(g)    (φ    18.94    15.23    15.40    12.18    8.08    5.14 結合水(g) PAA(H)(g)    (9)    19.21    14.86    11.89    8.38    6.14    5.56    4.54  結合水mol PAA(L)U.M.     (n)    75.76    60.92    61.60    48.72    32.32    20.56  結合水mol PAA(H)U.M.    (n)    76.84    59.44    47.56 33. 24. 22. 18. 52 56 24 16

結合水

全水分

 (%)

- 4.75

 7.28

 6.95

10.41

12.48

13.26

結合水

-仝水分

 (%)

- 4.32

 6.55

 9.71

11.46

11.95

13.45

13.95

7 η r 1.95 2.14 2.19 2.70 3.80 6.40 3。 3. 4. 5. 8. 11. 19. η 「 0 1 6 5 6 9 4 8 8 5 3 2 2 8 (g/lOOcc) - 0.23  0.41  0.45  0.85  1.52  2.52 濃

(−ツノヤ升)

0.23 0.41 0.45 0.85 1.52 2.51 0.032 0.057 0.063 0.118 0.211 0.350 表5 PAA(H)水溶液の濃度,結合水量,粘度 (g/lOOcc) - 0.22  0.44  0.81  1.37  1.94  2.37  3.00   度 一一 (wt%) - 0.22  0.44  0.81  1.37  1.94  2.36  2.98 Z 0.031 0.061 0.113 0.190 0.269 0.329 0.417 表6. Na,PA(L)水溶液の濃度,結合水量,粘度  結合水(g) Na-PA(L)(g)     (ψ)    29.15    21.86    16.23    10.25     5.88     3.91  結合水mol Na-PA(L) U. M.     (n)    152.23    114.16     84.77     53.54     30.73     20.41 結合水 一全水分  (%) - 6.90  8.78  9.60 11.32 11.70 12.90 砂 17.3 22.7 30.0 50.0 93.0 174.0      濃  度 太一 (g/100cc) (wt%)  0.27     0.27  0.40    0.40  0.59     0.59  1.10     1.09  1.98     1.95  3.27     3.19

(やー)

0.029 0.043 0.063 0.117 0.211 0.348 表7 Na-PA(H)水溶液の濃度,結合水量,粘度 濃 結合水(g) Na,PA(H)(g)    (F)    42.11    23.09    17.58    12.39     7.89     4.80

 結合水mol

Na-PA(H)U.M.

   (n)

219.81 120.53 91.7・7 64.68 41.19 25.06 結合水 一全水分  (%) - 8.00  7.87  9.37 11.13 11.38 12.96 η r 17.49 31.26 47.82 75.93 121.22 230. 00 (g/lOOcc) - 0.19  0.34  0.53  0.89  1.43  2.67   度 一一 (wt%) - 0.19  0.34  0.53  0.89  1.42  2.63 g°性_  Z -0.020 0.036 0.056 0.095 0.152 0.284

(4)

8 八   ロ W 冷嘸柊鰯裏試  ︷oE頒如謔 高知大学学術研究報告 第11巻  自然科学 n 第i号

・1(紆L)

図・1 重合度の異なる各種濃度試料水溶液の結合水l

 なお'大体0.5(£7! ̄)戸上の水溶液濃

度では. PVA,

PAA,

Na・PAの結合水m

nは全く同一で,万且つ濃度によって殆んど

変化がないが,0.5(旦ヂL)∼0.15(jデ!)

の範囲でPVAはPAAやNa-PAよりも幾

分nが大きく.更に(7.1(旦7L)以下にな

るとNa-PAのnは急激に増大する.また

0.04(jデ!!)以下になるとPAAはPVA

よりもnが大きくなる.すなわちこれらの

事柄は強電解質であるNa・PAの希薄水溶

I液中における解離性増大に基づく高分子電

解質的特性によるものであり, また濃厚溶

液では解離性が殆んどなく,分子は三者共

同―形態をとる為と考えられる.尚PVA,

PAAの希薄濃度領域のnの増加は単に希

釈による分子の水相との接触面積の増加に

よるものであり,さらに極く希薄溶液では

PAAの解離性が増し,そのnがPVAの

それよりも大きくなるのであろう.

 以上の如く試料高分子の重合度の相異によってその結合水量は差がないので,前報に報告した濃

度と結合水量との間の関係式も重合度に関係なく成立することか明らかである.

ふ        濃 度(g/100cc) 図2 重合度の異なる各種濃度試料水溶液の粘度 6 S ,        ηr 図3 重合度の異なる各種濃度試料水溶  液の粘度と結合水との関係

 次に粘度は勿論試料高分子の重合度により図2に示す如く大きく変化するので,同じく前報に報

告した粘度と結合水量との間の関係は試料の重合度・によって若干変化を生ずる.すなわち重合度を

異にする高分子試料水溶液の結合水myと粘度やとの関係は図3に示す通り,

Na-PAでは略々平

行な直線となり,

PAAではψが略々8以上で大体平行な折線となり.

PVAでは恥=1すなわち

(5)

高分子水溶液の結合水に関する研究 (Ⅶ)   (西内) 9 無限希釈水溶液の点で交はり,y,が8程度で折れる折線となる.図3よりNa-PAではip=a--qr ̄゜ なる実験式が成立するか,重合度を異にする試料によって指数&は一定であり&=0.929,またαは や゛1,即ち無限希釈水溶液における9であるが,これは重合度に関係する数値であり, Na-PA(L) ではa = m, (H)ではa =660となる.  次にPAA,PVAでは比較的希薄溶液と濃厚溶液とで係数a. bの値が異なるが大体上記実験式 が成立する.然し重合度の異なる試料ではPAAの希薄溶液で平行線となる以外は特別の関係は示 さない.(昭和37年4月,日本化学会第15年会講演発表).  本実験において御指導賜った名古屋大学香川硫美教授,永沢満教授および高橋彰助教授並びに試料Aronの提 供を受けた東亜合成化学工業株式会社に厚く感謝します.又実験に協力願った平井愛子氏に感謝します. [ ] ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 )        文     献 西内豊道;高知大学教育学部研究報告, No. 14, 67. (1962). 西内豊道;高知大学教育学部研究報告, No. 12, 131 (1960). 高橋 彰,林 順彦,香川毎充美,工化, 60, 1056 (1957). Flory・ P・・ Leutner・ F・・ J. Polymer Sci., 3> 880 (1948).

(6)

参照

関連したドキュメント

水素爆発による原子炉建屋等の損傷を防止するための設備 2.1 概要 2.2 水素濃度制御設備(静的触媒式水素再結合器)について 2.2.1

 福島第一廃炉推進カンパニーのもと,汚 染水対策における最重要課題である高濃度

 汚染水対策につきましては,建屋への地下 水流入を抑制するためサブドレンによる地下

Q7 

原子炉水位変化について,原子炉圧力容器内挙動をより精緻に評価可能な SAFER コ ードと比較を行った。CCFL

平成 25 年4月5日、東京電力が地下貯水槽 No.2 の内側のシートと一番外側のシ ートとの間(漏えい検知孔)に溜まっている水について分析を行ったところ、高い塩 素濃度と

RO廃液 217基 溶接接合

昭和 61 年度から平成 13 年度まで環境局が実施した「水生生物調査」の結果を本調査の 結果と合わせて表 3.3-5 に示す。. 平成